(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101586
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】管積載装置、管積載方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B65G 57/18 20060101AFI20250630BHJP
【FI】
B65G57/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218538
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 侑和
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良
(72)【発明者】
【氏名】藤井 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
【テーマコード(参考)】
3F029
【Fターム(参考)】
3F029BA07
3F029CA58
3F029CA64
(57)【要約】
【課題】製造した管を機械的に積載する装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】管積載装置(100)は、管及び当該管の支持台を把持する把持部を備えるアーム部(10)と、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを検出する検出部(20)と、検出部により得られた情報を参照して、管及び支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御部(30)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管及び当該管の支持台を把持する把持部を備えるアーム部と、
供給された前記管と仮置きされた前記支持台のそれぞれの位置と向きを検出する検出部と、
前記検出部により得られた情報を参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するように前記アーム部を制御する制御部と、
を備える管積載装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記管の種類に関する識別情報を取得し、当該識別情報を参照して、前記管及び前記支持台の積載位置を決定する、請求項1に記載の管積載装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別情報を参照して、前記管の積載方向と積載間隔を決定する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別情報を参照して、積載する前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、前記支持台及び前記種類が変わった管の積載を最初から開始するように前記アーム部を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項5】
前記識別情報は前記管に紐付けされており、前記制御部は、共通する前記識別情報が紐付けられた前記管ごとに積載するように前記アーム部を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項6】
前記制御部は、1段あたりに積載する所定の数の前記管の積載が完了した後、当該管の上に新たに前記支持台を配置して、当該支持台の上に新たに前記所定の数の前記管を積載する制御を、所定の段数まで繰り返す、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項7】
前記検出部は、測距センサ及び撮像装置のうちの少なくともいずれかを含み、前記制御部は、当該測距センサ及び/又は撮像装置によって取得された情報を参照して、前記供給された管及び前記仮置きされた支持台の両端部の位置を算出し、当該管及び前記支持台の位置と向きを導出する、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項8】
前記把持部は、相対して配置された少なくとも2つの掴み部を備え、前記制御部は、当該少なくとも2つの掴み部の配列方向を参照して、前記管又は前記支持台を配置する向きを制御する、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項9】
前記掴み部は対向する2つの押圧面を有し、少なくとも一方の前記押圧面に窪みを有する、請求項8に記載の管積載装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記識別情報を参照して前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、それまでに積載されたすべての前記管を前記支持台とともに移動させるように積載管移動装置を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項11】
検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、
取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、
を含む、管積載方法。
【請求項12】
コンピュータに、
検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、
取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、
を実行させるための管積載プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管積載装置、管積載方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の管を製造する工場においては、製造した管は出荷するまで種類ごとに一時的に積載(段積み)保管しておく必要がある。しかし、管の種類はいろいろな種類がある。また、管を積載するためには、管を置く支持台も必要となる。そのため、機械的に管を積載することが難しく、クレーン等を用いて作業者が一本一本積み上げていくことが一般的に行われている。しかし、このような管の積載作業を作業者が行うことは手間がかかり、コストも増加するため、機械的に管を積載する方法が望まれている。
【0003】
特許文献1には、複雑な機構を要せずに種々の外径の管体を把持することが可能な把持装置が開示されている。しかし、製造した管を積載する装置は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の一形態は、製造した管を機械的に積載する装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る管積載装置は、管及び当該管の支持台を把持する把持部を備えるアーム部と、供給された前記管と仮置きされた前記支持台のそれぞれの位置と向きを検出する検出部と、前記検出部により得られた情報を参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するように前記アーム部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記の構成によれば、管と支持台を機械的に積載することができ、省人化を実現することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る管積載装置は、第1の態様において、前記制御部は、前記管の種類に関する識別情報を取得し、当該識別情報を参照して、前記管及び前記支持台の積載位置を決定する。
【0009】
前記の構成によれば、管の種類に応じて機械的に管及び支持台の積載位置を設定することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る管積載装置は、第2の態様において、前記制御部は、前記識別情報を参照して、前記管の積載方向と積載間隔を決定する。
【0011】
前記の構成によれば、管の種類に応じて機械的に管の積載方向と積載間隔を変更することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る管積載装置は、第2の態様において、前記制御部は、前記識別情報を参照して、積載する前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、前記支持台及び前記種類が変わった管の積載を最初から開始するようにアーム部を制御する。
【0013】
前記の構成によれば、機械的に管の種類が変わったことを検知して、新たな管の積載を1本目から始めることができる。従って、省人化を実現することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る管積載装置は、第2の態様において、前記識別情報は前記管に紐付けされており、前記制御部は、共通する前記識別情報が紐付けられた前記管ごとに積載するようにアーム部を制御する。
【0015】
前記の構成によれば、機械的に管の情報を取得し、同じ種類の管を所定の段数まで積載することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る管積載装置は、第1又は第2の態様において、制御部は、1段あたりに積載する所定の数の前記管の積載が完了した後、当該管の上に新たに前記支持台を配置して、当該支持台の上に新たに前記所定の数の前記管を積載する制御を、所定の段数まで繰り返す。
【0017】
前記の構成によれば、機械的に管の情報を取得し、同じ種類の管を所定の段数まで積載することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る管積載装置は、第1又は第2の態様において、前記検出部は、測距センサ及び撮像装置のうちの少なくともいずれかを含み、前記制御部は、当該測距センサ及び/又は撮像装置によって取得された情報を参照して、前記供給された管及び前記仮置きされた支持台の両端部の位置を算出し、当該管及び前記支持台の位置と向きを導出する。
【0019】
前記の構成によれば、機械的に管及び支持台の位置と向きを導出することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る管積載装置は、第1又は第2の態様において、前記把持部は、相対して配置された少なくとも2つの掴み部を備え、前記制御部は、当該少なくとも2つの掴み部の配列方向を参照して、前記管又は前記支持台を配置する向きを制御する。
【0021】
前記の構成によれば、把持部の掴み部が配列された方向に基づいて管及び支持台を把持するように機械的に制御することができる。さらに、長尺の管と支持台を安定して把持し、正確に配列することができる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る管積載装置は、第8の態様において、前記掴み部は対向する2つの押圧面を有し、少なくとも一方の前記押圧面に窪みを有する。
【0023】
前記の構成によれば、異なる径の円形の管を安定して把持することができる。
【0024】
本発明の第10の態様に係る管積載装置は、第2の態様において、前記制御部は、前記識別情報を参照して前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、それまでに積載されたすべての前記管を前記支持台とともに移動させるように積載管移動装置を制御する。
【0025】
前記の構成によれば、積載する管の種類が変わった場合に、機械的に積載済の管の全体を移動搬出し、別の種類の管の積載を最初から開始することができる。従って、省人化を実現することができる。
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管積載方法は、検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、を含む。
【0027】
前記の構成によれば、管と支持台を機械的に積載することができ、省人化を実現することができる。
【0028】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管積載プログラムは、コンピュータに、検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、を実行させるための管積載プログラムである。
【0029】
前記の構成によれば、管と支持台を機械的に積載することができ、省人化を実現することができる。
【0030】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる管積載装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、製造した管を機械的に積載する装置、方法及びプログラムを提供することができる。これにより、管と支持台を機械的に積載することができ、省人化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態1に係る管積載装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る管積載方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】アーム部が支持台を支持台仮置き場に移動させる工程を示す平面模式図である。
【
図5】支持台を2台のアーム部で配置する工程を示す平面模式図である。
【
図6】第1アーム部の把持部の詳細な構造を示す模式図である。
【
図7】第2アーム部が管を所定の積載位置に移動させる工程を示す模式図である。
【
図8】第2アーム部の把持部の詳細な構造を示す模式図である。
【
図9】第2アーム部の把持部の掴み部の構造を別方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔実施形態1〕
<管積載装置100>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係る管積載装置100の構成を示すブロック図である。管積載装置100は、管製造工場において製造された複数種類の管を、出荷するまで、あるいは別工程にかけるために搬出するまで、所定の仮置き場所に積載(段積み)する装置である。管はできるだけ密に保管できるように、段積み積載する。段積みとは、所定の本数の管を並べた上に支持台を置き、さらにその支持台の上に別の管を並べる操作を繰り返す積載方式である。
【0034】
図示するように、管積載装置100は、アーム部10と、検出部20と、制御部30と、を備える。アーム部10は、管と支持台を所定の場所に配置する装置である。管の材質と寸法は特に限定されない。管の材質は例えばダクタイル鋳鉄であり、長さは例えば数メートルであり、呼び径(外径)は例えば数十センチメートルである。
【0035】
アーム部10は、管及び管を支持するための支持台を把持する把持部を備える。アーム部10は、制御部30からの指令によって動作し、管と支持台を所定の位置に配置する動作を繰り返す。アーム部10は、独立した装置として構成され、1台でもよく、複数台であってもよい。アーム部10は、さまざまな向きの管と支持台を把持して所定の位置に配置する必要があるため、把持部をさまざまな向きに向けることが必要となる。そのため、アーム部10は、6個の関節を持つ6軸ロボットであってもよい。アーム部10は、固定されていてもよく、移動可能であってもよい。移動可能なアーム部10は、自走式であってもよく、レールなどの軌道上を移動するものであってもよい。
【0036】
検出部20は、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを検出する。位置とは、後述する積載場所の空間座標50における座標データである。向きとは、管によっては両端部の構造が異なるため、どちらの端部がどの方向を向いているか、というデータである。検出部20は、複数あってもよい。検出部20は、例えば測距センサを用いることができる。測距センサとして、レーザ光などを用いて対象までの距離を計測する3次元LiDAR(Light Detection and Ranging)、あるいはデプスカメラ等を用いてもよい。検出部20は、測距センサが取得したデータを解析する解析部(図示せず)を備えていてもよい。解析部は、対象までの距離を例えば点群データとして取得し、その点群データを解析することにより、供給された管及び仮置きされた支持台の両端部の位置を算出し、管及び支持台の位置と向きを取得することができる。また、検出部20として、撮像装置を用いてもよい。撮像装置で取得された画像を解析部が解析して、管と支持台の位置と向きを取得することができる。解析部は、制御部30が備えていてもよい。検出部20は、作業場所の全体を俯瞰できる位置に配置されていてもよい。あるいは、検出部20は、アーム部10に取り付けられていてもよい。
【0037】
制御部30は、検出部20により得られた情報を参照して、管及び支持台を所定の位置に積載するようにアーム部10を制御する。より具体的には、制御部30は、検出部20としての測距センサ及び/又は撮像装置によって取得された情報を参照して、供給された管及び仮置きされた支持台の両端部の位置を算出し、当該管及び支持台の位置と向きを導出することができる。制御部30は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)であってもよい。検出部20が解析部を備えていない場合は、制御部30が検出部20から取得した距離データ又は画像データを解析する解析処理を行ってもよい。
【0038】
制御部30は、管又は支持台の位置と向きを検出部20から取得して、あるいは、検出部20から取得した距離データ又は画像データを解析処理して管又は支持台の位置と向きを取得して、管又は支持台を1つずつ把持するようにアーム部10を制御する。次に、制御部30は、把持した管又は支持台を所定の積載位置に配置するようにアーム部10を制御する。所定の積載位置は、管の種類ごとに予め定められており、制御部30は次の管又は支持台を移動させる前に次の所定の積載位置のデータを取得する。そして、次の管又は支持台の仮置き位置と向きを取得して、その管又は支持台を把持して所定の積載位置に移動する。制御部30は、このようなシーケンス制御を、1つの種類の管をすべて積載するまで継続する。制御部30は、PLCに代えて、予め定められた手順で管及び支持台を積載する制御プログラムを内蔵したコンピュータであってもよい。
【0039】
以下、積載作業の具体的手順に従って、管積載装置100の各部が実行する作業工程を、図面を参照して説明する。
図3は、支持台41を移動させる第1アーム部11が支持台41を支持台仮置き場45に移動させる工程を示す平面模式図である。支持台41は、支持台置き場40にまとめて置かれている。支持台41は、管を載置するための台である。支持台41の形状は、管を安定して載置できる形状であればよく、例えば断面が長方形の棒状である。支持台41の両端部には、管が転がって落下しないように突起部(管止め)が設けられている。支持台41の材質は、管を安定して載置できる材質であればよく、例えば鉄製である。
【0040】
図示するように、第1アーム部11は、一例として、基台111、旋回部112、腕部113、及び把持部114を備える。基台111は、旋回部112を載せて移動可能なように構成されている。なお、基台111は固定されていてもよい。旋回部112は、腕部113を支持して基台111の上で旋回(回転)可能である。腕部113は、旋回部112を中心に上下方向に旋回可能であり、先端に把持部114が腕部113の軸回りに回転可能に支持されている。腕部113は、伸縮可能であってもよい。把持部114は、腕部113を中心として上下方向及びそれに直交する左右方向に旋回可能であるとともに、腕部113の軸回りに回転可能である。把持部114は、支持台41の両端部を把持可能に構成されているが、その詳細構造については後述する。
【0041】
腕部113の先端部付近に、検出部20として第1検出部21が配置されている。しかし前述のように、検出部20は腕部113に限らず、作業場を俯瞰できる位置に配置されていてもよい。第1検出部21が腕部113に配置されている場合は、腕部113が動くにつれて第1検出部21も動くため、対象の位置を導出するためには第1検出部21の位置も導出する必要がある。しかし検出部20が作業場を俯瞰できる位置に配置されている場合は、検出部20の位置が固定されているので対象の位置導出の計算量が少なくて済む。
【0042】
第1アーム部11は、支持台置き場40に置かれている支持台41を1つずつ把持して、支持台仮置き場45に移動させる。
図3では支持台仮置き場45に1つの支持台41を置いている状態を示しているが、支持台仮置き場45に複数の支持台41を置いていてもよい。
【0043】
図4は、管を積載する積載場所の空間座標50を示す模式図である。空間座標50は、管を積載する位置として予め設定される座標であり、この座標に基づいて管と支持台の配置位置が計算される。座標は、例えば原点Oを中心とするXYZ座標で表される。原点Oの位置は任意の位置であり、XY平面が水平面であり、Z軸は高さを表す。検出部20の解析部(又は制御部30)は、移動対象(管及び支持台)の位置又は配置を空間座標50における座標として導出する。検出部20の位置は、例えば作業場所のどこかに1次元又は2次元の基準マークを設けておき、その基準マークまでの方向と距離から検出部20の座標位置を計算する。そして、解析部が、検出部20と対象との方向と距離から対象の座標位置と向きを導出する。検出部20が固定されている場合は、解析部はその座標位置を用いて対象の座標位置を計算する。
【0044】
図5は、支持台41を2台のアーム部11,12で配置する工程を示す平面模式図である。支持台41は、例えば管51の両端側に1つずつ配置される。本実施形態では、2台のアーム部(第1アーム部11と第2アーム部12)を用いて支持台41を配置する。第1アーム部11は前述のとおりである。第2アーム部12は、図示するように基台121、旋回部122、腕部123、及び把持部124を備える。基台121、旋回部122、腕部123、及び把持部124の構成は、大きさは異なるが、前述した第1アーム部11の基台111、旋回部112、腕部113、及び把持部114の構成と同様である。なお、把持部124の構成は把持部114の構造と異なるが、その構造は後述する。第2アーム部12には、検出部20として第2検出部22が設けられているが、第2検出部22はなくてもよい。その場合は、第1検出部21のデータを用いて支持台41の位置と向きを取得する。
【0045】
図5に示すように、空間座標50の原点Oは、積載場所の一隅に設定されており、XY軸が図示するように設定されている。Z軸は省略している。第1アーム部11は、制御部30の制御信号を受信して、支持台仮置き場45に置かれた支持台41を、所定の位置に配置する。所定の位置は、
図5の支持台41Aとして示す位置である。一方、第2アーム部12も、制御部30の制御信号を受信して、支持台仮置き場45に置かれた支持台41を、所定の位置に配置する。所定の位置は、
図5の支持台41Bとして示す位置である。本実施形態では、支持台41Aの位置と支持台41Bの位置が離れているため、第1アーム部11と第2アーム部12でそれぞれの位置に支持台41を移動しているが、第1アーム部11又は第2アーム部12だけで支持台41を移動してもよい。
【0046】
なお、
図5では、1段分の管51がすべて配置された上に、支持台41が配置される場合を示している。実際の作業では、積載場所に管51が配置されていない状態でまず2つの支持台41を配置し、その上に管を並べて配置する必要がある。あるいは、支持台41を配置する前に、運搬台(図示せず)を置いてもよい。運搬台は、積載した管と支持台をまとめて移動(搬出)するための台である。例えば、搬出に無人運転フォークリフトを用いる場合は、運搬台はフォークリフトの爪(フォーク)を差し込む空間を有している。
【0047】
図6は、第1アーム部11の把持部114の詳細な構造を示す模式図である。把持部114は、少なくとも2つの掴み部115A,115Bを備える。
図6は、把持部114が備える2つの掴み部115Aと115Bを側面から見た図である。掴み部115A,115Bは、把持部114の下面(支持台を把持する側)の両端側に相対して配置されている。相対してとは、腕部113に対して対称的な位置に配置されているということである。これにより、管及び支持台を安定した状態で把持することができる。掴み部115A,115Bは、それぞれが支持台41の端部面を押圧するようにして把持する。具体的には、掴み部115Aは固定されており、掴み部115Bは、図中の矢印方向(掴み部115Aに近づく方向と離れる方向)に移動可能である。制御部30は、掴み部115Aと掴み部115Bとの間に支持台41が入るようにアーム部11を制御し、次に掴み部115Bを掴み部115Aに近づく方向に移動させて支持台41を挟み込む。こうして支持台41を把持することができる。
【0048】
以上のように、制御部30は、2つの掴み部115Aと115Bの配列方向、つまり把持部114の向きを参照することにより、支持台41の向きを制御して所定の積載位置に配置することができる。なお、本実施形態では、支持台置き場40に置かれている支持台41が密に保管されているため、把持部114は支持台41の両端部を挟んで把持することが可能な構造としているが、把持部114の構造はこれに限られない。
【0049】
図7は、第2アーム部12が管51を所定の積載位置に移動させる工程を示す模式図である。第2アーム部12は、支持台41を配置するだけでなく、管51を配置する役割を有する。製造した管51は、図示しない製造ラインから管仮置き台70まで搬送される。第2アーム部12は、管仮置き台70に供給された管51を把持部124で把持して旋回し、支持台41の上の所定の積載位置に配置する。管51は、X軸方向を長手方向にして配置される。
図7に示すように、管51は、一端部に継手構造を有する場合がある。このように両端部で構造が異なる場合は、段ごとに向きを変えて積載することで、より密に積載することができる。その場合、制御部30は、管51の向きも考慮して積載するように第2アーム部12を制御する。第2アーム部12は固定されていてもよく、又は移動可能に構成されていてもよい。
【0050】
制御部30は、管51の種類に関する識別情報を取得し、当該識別情報を参照して、管51及び支持台41の積載位置を決定してもよい。識別情報は、例えば管51の管種(継手形状など)、長さ、呼び径、材質、質量等を示す情報である。管51の継手形状、長さ、呼び径、材質等により、その管51の空間座標50内での積載位置、又は支持台上における積載位置が決められている。積載位置は、積載した管51と支持台41の全体が空間座標50の範囲内に収まるように設定される。また、管51の積載位置は、第2アーム部12によって配置可能であって、隣り合う管51が接触しない程度に離間して設定される。制御部30は、識別情報を参照して、管51及び支持台41の積載位置を設定することができる。
【0051】
また、制御部30は、管51の識別情報を参照して、管51の積載方向と積載間隔を決定してもよい。前述のように、両端部の形状が異なる場合は、管1本ごとに積載方向を変えてもよい。あるいは、段ごとに積載方向を変えてもよい。また、管51の呼び径によって、又は管51の端部の継手部分の外径によって、その積載間隔が決定されてもよい。
【0052】
図7に示すように1段分の管51を全て配置し終わると、次に2つの支持台41を管51の上に配置する。その作業は、
図5を用いて説明したとおりであるので説明は省略する。制御部30は、共通する識別情報が紐付けられた管51ごとに積載する。具体的には、制御部30は、1段あたりに積載する所定の数の管51の積載が完了した後、当該管51の上に新たに支持台41を配置して、当該支持台の上に新たに所定の数の同じ種類の管51を積載することを、所定の段数まで繰り返す。
【0053】
異なる種類の管51を混ぜて積載することは避けることが好ましい。そのため、制御部30は、管仮置き台70に置かれた管51の識別情報を取得し、積載する管51の種類が変わったか否かを判定してもよい。制御部30は、新たに管仮置き台70に供給された管51が、それまで積載した管51と同じ種類である(同じ識別情報を持つ)と判定した場合は、積載作業を継続する。制御部30は、新たに供給された管51の種類(識別情報)が変わったと判定した場合は、支持台41及び種類が変わった管51の積載を最初から開始する。最初から開始するとは、積載作業をいったん終了し、それまでに積載した管51の搬出作業を行い、空いた積載場所に新たな種類の管51の積載作業を開始することである。
【0054】
識別情報は、管51に紐付けされている。具体的には、識別情報は、例えば管51に刻印又は貼付されていてもよい。そして、検出部20がその識別情報を取得し、制御部30が検出部20から取得する。あるいは、識別情報は、管51の製造管理コンピュータに記録されているデータであってもよい。その場合は、制御部30は、新たな管51が管仮置き台70まで搬送されるたびに、製造管理コンピュータからその管51の識別情報を受信して取得してもよい。
【0055】
図8は、第2アーム部12の把持部124の詳細構造を示す模式図である。把持部124は、少なくとも2つの掴み部125,126を備える。
図8は、2つの掴み部125と126を、
図7に示すX軸の負側方向に見た図である。掴み部125,126は、把持部124の下面(管又は支持台を把持する側)に相対して配置されている。図中に点線で示すように、管51は、2つの掴み部125,126によって把持される。
【0056】
掴み部125,126は、それぞれ対向する2つの押圧面を有し、少なくとも一方の押圧面に窪みを有する。
図9は、掴み部126の構造を別方向から見た模式図である。具体的には、掴み部126を、
図7に示すY軸方向に見た図である。図示するように、掴み部126は、固定された支持板126Aと、矢印方向(支持板126Aに近づく方向と離れる方向)に移動可能な押圧板126Bを備える。支持板126Aでは、
図9における左側の面(押圧板126Bに向いた面)が押圧面となる。また、押圧板126Bでは、
図9における右側の面(支持板126Aに向いた面)が押圧面となる。
【0057】
制御部30は、支持板126Aと押圧板126Bとの間を広げた状態で管51を挟み、次に押圧板126Bを支持板126Aに近づく方向に移動させ、管51を押圧する。掴み部125も同様の構造を有している。掴み部125と掴み部126で管51を挟みこむことにより、管51を把持することができる。さらに、押圧板126Bの押圧面には、V字型の窪み127を有する。押圧板125Bも同様である。この窪み127によって、円筒形の管51を安定して把持することができる。また、V字型の窪み127によって、呼び径の異なる管全般を安定して把持することができる。
【0058】
前述のように、制御部30は、新たに供給された管51の種類(識別情報)が変わったと判定した場合は、支持台41及び種類が変わった管51の積載を最初から開始する。そのため、制御部30は、それまでに積載されたすべての管51を支持台41とともに移動させるように積載管移動装置を制御してもよい。積載管移動装置とは、例えば前述の無人運転フォークリフト(図示せず)である。制御部30は、無人運転フォークリフトを制御して、運搬台の上に積載されたすべての管51と支持台41を、運搬台ごと持ち上げて、出荷待ちの製品置き場、あるいは別の工程作業場所まで移動(搬送)する。積載管移動装置は、予め積載場所に配置された移動台車でもよい。移動台車の上に直接支持台と管を積載してもよい。移動台車は、軌道上を移動可能に構成されていてもよい。軌道が積載場所から所定の搬送先まで敷設されていれば、制御部30による積載管移動制御が容易になる。
【0059】
<管積載方法S1>
次に、管積載装置100が実行する管積載方法S1について、図面を参照して説明する。
図2は、管積載方法S1の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、管積載方法S1はステップS11とステップS12を含む。ステップS11は、管51および支持台41のそれぞれについて、位置と向きを取得する取得ステップである。具体的には、検出部20の解析部、又は制御部30は、検出部20からの信号(距離データ又は画像データ)に基づいて、供給された管51と仮置きされた支持台41のそれぞれの位置と向きを取得する。取得方法の詳細については前述のとおりである。
【0060】
ステップS12は、管51及び支持台41を所定の位置に積載するようにアーム部10を制御する制御ステップである。具体的には、制御部30は、取得した管51及び支持台41の位置と向きを参照して、管51及び支持台41を所定の位置に積載するようにアーム部10を制御する。制御方法の詳細については前述のとおりである。以上の管積載方法S1により、管と支持台を機械的に積載することができ、省人化を実現できる。
【0061】
〔ソフトウェアによる実現例〕
管積載装置100(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部30)としてコンピュータを機能させるための管積載プログラムにより実現することができる。
【0062】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0063】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0064】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10…アーム部(11…第1アーム部、12…第2アーム部)
111、121…基台
112、122…旋回部
113、123…腕
114、124…把持部
20…検出部(21…第1検出部、22…第2検出部)
30…制御部
40…支持台置き場
50…空間座標
70…管仮置き台
【手続補正書】
【提出日】2025-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管及び当該管の支持台を把持する把持部を備えるアーム部と、
供給された前記管と仮置きされた前記支持台のそれぞれの位置と向きを検出する検出部と、
前記検出部により得られた情報を参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するように前記アーム部を制御する制御部と、
を備え、
前記把持部は、相対して配置された少なくとも2つの掴み部を備え、前記制御部は、当該少なくとも2つの掴み部の配列方向を参照して、前記管又は前記支持台を配置する向きを制御する、
管積載装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記管の種類に関する識別情報を取得し、当該識別情報を参照して、前記管及び前記支持台の積載位置を決定する、請求項1に記載の管積載装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記識別情報を参照して、前記管の積載方向と積載間隔を決定する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別情報を参照して、積載する前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、前記支持台及び前記種類が変わった管の積載を最初から開始するように前記アーム部を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項5】
前記識別情報は前記管に紐付けされており、前記制御部は、共通する前記識別情報が紐付けられた前記管ごとに積載するように前記アーム部を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項6】
前記制御部は、1段あたりに積載する所定の数の前記管の積載が完了した後、当該管の上に新たに前記支持台を配置して、当該支持台の上に新たに前記所定の数の前記管を積載する制御を、所定の段数まで繰り返す、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項7】
前記検出部は、測距センサ及び撮像装置のうちの少なくともいずれかを含み、前記制御部は、当該測距センサ及び/又は撮像装置によって取得された情報を参照して、前記供給された管及び前記仮置きされた支持台の両端部の位置を算出し、当該管及び前記支持台の位置と向きを導出する、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項8】
前記掴み部は対向する2つの押圧面を有し、少なくとも一方の前記押圧面に窪みを有する、請求項1又は2に記載の管積載装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記識別情報を参照して前記管の種類が変わったか否かを判定し、前記管の種類が変わったと判定した場合は、それまでに積載されたすべての前記管を前記支持台とともに移動させるように積載管移動装置を制御する、請求項2に記載の管積載装置。
【請求項10】
検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、
取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、
を含み、
前記アーム部は、前記管及び前記支持台を把持する把持部を備え、前記把持部は、相対して配置された少なくとも2つの掴み部を備え、
前記制御ステップにおいて、前記少なくとも2つの掴み部の配列方向を参照して、前記管又は前記支持台を配置する向きを制御する、
管積載方法。
【請求項11】
コンピュータに、
検出部からの信号に基づいて、供給された管と仮置きされた支持台のそれぞれの位置と向きを取得する取得ステップと、
取得した前記管及び前記支持台の位置と向きを参照して、前記管及び前記支持台を所定の位置に積載するようにアーム部を制御する制御ステップと、
を実行させるための管積載プログラムであって、
前記アーム部は、前記管及び前記支持台を把持する把持部を備え、前記把持部は、相対して配置された少なくとも2つの掴み部を備え、
前記制御ステップにおいて、前記少なくとも2つの掴み部の配列方向を参照して、前記管又は前記支持台を配置する向きを制御する、
管積載プログラム。