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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101587
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】管加工装置および管加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/033 20060101AFI20250630BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20250630BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20250630BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
B24B27/033 Z
B24B27/00 A
B24B9/00 601E
F16L21/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218539
(22)【出願日】2023-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 侑和
(72)【発明者】
【氏名】杉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良
(72)【発明者】
【氏名】増田 純也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 智哉
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
【Fターム(参考)】
3C049AA04
3C049AA09
3C049AA11
3C049AA14
3C049AA18
3C049BA07
3C049BB02
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB01
3C158AA04
3C158AA09
3C158AA11
3C158AA14
3C158AA18
3C158BA07
3C158BB02
3C158BC02
3C158CA01
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】突部を有する挿し口の研削処理と、スパッタ除去とを行う管加工装置および管加工方法を提供する。
【解決手段】挿し口を有する管の加工を行う管加工装置(1)は、管の挿し口側の管端から突起部を含む領域を研削処理する挿し口研削処理部(10)と、管の直線部に付着しているスパッタを除去するスパッタ除去処理部(20)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿し口を有する管の加工を行う管加工装置であって、
前記挿し口の管外周面には、前記管外周面から突出した突起部と、前記突起部よりも前記挿し口側の管端から遠い側に位置する直線部とが設けられており、
前記挿し口側の管端から前記突起部を含む領域を研削処理する挿し口研削処理部と、
前記直線部に付着しているスパッタを除去するスパッタ除去処理部と、
を有する、
管加工装置。
【請求項2】
連結部が取り付けられたアームと、
前記連結部を回転可能に制御する連結制御部と、
を更に有し、
前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とは、前記連結部を介して前記アームに取り付けられている、
請求項1に記載の管加工装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記挿し口研削処理部の取り付け位置から前記連結部の位置までを結ぶ第1仮想線と、前記スパッタ除去処理部の取り付け位置から前記連結部の位置までを結ぶ第2仮想線とが交差するように、前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とを前記アームに取り付けている、
請求項2に記載の管加工装置。
【請求項4】
前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とは、管の管径方向に揺動可能とする揺動部を有する、
請求項3に記載の管加工装置。
【請求項5】
前記挿し口研削処理部は、第1ウェイトを有しており、
前記スパッタ除去処理部は、前記第1ウェイトよりも重い第2ウェイトを有している、
請求項3に記載の管加工装置。
【請求項6】
管の挿し口を、請求項1から5の何れか1項に記載の管加工装置を用いて加工する管加工方法であって、
前記挿し口の管外周面には、前記管外周面から突出した突起部と、前記突起部よりも前記挿し口側の管端から遠い側に位置する直線部とが設けられており、
前記挿し口側の管端から前記突起部を含む領域を研削処理する研削処理工程と、
前記直線部に付着したスパッタを除去するスパッタ除去処理工程と、
を含む、
管加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管加工装置および管加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄管の管端を処理するプロセスとして、管の挿し口部側の外周に、突部を形成する施工を行うことが知られている。この突部は、管の挿し口部と別の管の受口とを接合した場合に、管同士が離脱しないように設けられた離脱防止用の構造である。突部は、別の管の受口の内周面に設けたロック溝に嵌めたロックリングに係り合う構成である。
【0003】
特許文献1は、この突部を形成する施工技術について開示している。特許文献1では、軸方向の一端側に厚肉部を有し、軸方向の他端側に薄肉部が形成されたリングを、金属管の挿し口部の先端から距離を空けた位置の外周に装着し、前記薄肉部に溶接を行うことにより、前記薄肉部と前記金属管とが融解した溶接部を前記厚肉部上面から傾斜してかつ金属管の挿口先端から距離を空けた位置の外周表面に至る形状に形成する。また、溶接部の表面を研磨などして滑らかにする場合、溶接部の表面を、元々テーパ面である厚肉部テーパ面と連続したテーパ面となるように加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-253488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1のような挿し口部の外周の突部を含む領域の研磨は、作業者がグラインダーを用いて手作業で処理している。また、金属管の挿し口部の管端面(特許文献1における挿口先端でゴム輪が当接する面)についても、バリの除去や、管端の角を落としてラウンド加工する(いわゆるR加工)目的で、研削を行うが、従前、これらの研削処理も、作業者がグラインダーを用いて手作業で行っている。
【0006】
また、上述の特許文献1のように挿し口部の外周面に突部を溶接すると、突部よりも受口寄りの領域にスパッタが付着するが、このスパッタを除去する処理も、グラインダーと同様、作業者が手作業で行っている。
【0007】
このように研磨(研削)処理もスパッタ除去処理も、手作業で行っているため、作業員を確保する必要がある。また、作業員の技量による処理精度のバラツキを抑え、均一な精度で処理を実現することが求められている。
【0008】
そこで、本発明の一形態は、突部を有する挿し口の研削処理と、スパッタ除去とを行う管加工装置および管加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管加工装置は、挿し口を有する管の加工を行う管加工装置であって、前記挿し口の管外周面には、前記管外周面から突出した突起部と、前記突起部よりも前記挿し口側の管端から遠い側に位置する直線部とが設けられており、前記挿し口側の管端から前記突起部を含む領域を研削処理する挿し口研削処理部と、前記直線部に付着しているスパッタを除去するスパッタ除去処理部と、を有する。
【0010】
前記の構成によれば、挿し口側の管端から前記突起部を含む領域の研削処理と、直線部に付着しているスパッタの除去処理とを自動化することができる。これにより、作業員の削減を図ることが可能である。また、自動化により、手動による処理と比べて、加工精度および品質が安定する。
【0011】
本発明の一態様に係る管加工装置は、前記の構成において、連結部が取り付けられたアームと、前記連結部を回転可能に制御する連結制御部と、を更に有し、前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とは、前記連結部を介して前記アームに取り付けられていてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、連結制御部によって連結部を回転させることで、挿し口研削処理部と、スパッタ除去処理部との切り替え(配置替え)が可能となる。これにより、コンパクトな設計で管加工装置を実現することができる。また、同一ラインで処理することができるため、工程ごとの管の搬送の手間がなくなり、作業時間を短縮できる。
【0013】
本発明の一態様に係る管加工装置は、前記の構成において、前記連結部は、前記挿し口研削処理部の取り付け位置から前記連結部の位置までを結ぶ第1仮想線と、前記スパッタ除去処理部の取り付け位置から前記連結部の位置までを結ぶ第2仮想線とが交差するように、前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とを前記アームに取り付けていてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、アームの動きを最小限にでき、製造ラインにおける占有スペースを最小限にすることができる。また、前記の構成によれば、前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とが直線上に配置されないため、一方のツール(例えば、前記挿し口研削処理部)加工時に他方のツール(例えば、前記スパッタ除去処理部)の自重の影響を抑えることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る管加工装置は、前記の構成において、前記挿し口研削処理部と前記スパッタ除去処理部とは、管の管径方向に揺動可能とする揺動部を有していてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、管加工時に揺動することで、挿し口研削処理部の管に対する荷重、およびスパッタ除去処理部の管に対する荷重を、適切な荷重とすることが可能である。また、管加工時に揺動することで、管の変形(楕円)にも追従可能となる。
【0017】
本発明の一態様に係る管加工装置は、前記の構成において、前記挿し口研削処理部は、第1ウェイトを有しており、前記スパッタ除去処理部は、前記第1ウェイトよりも重い第2ウェイトを有していてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、ウェイトを備えることにより、必要な荷重をかけることが可能となり、良好に研削およびスパッタ除去を行うことができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る管加工方法は、管の挿し口を、前記の構成の管加工装置を用いて加工する管加工方法であって、前記挿し口の管外周面には、前記管外周面から突出した突起部と、前記突起部よりも前記挿し口側の管端から遠い側に位置する直線部とが設けられており、前記挿し口側の管端から前記突起部を含む領域を研削処理する研削処理工程と、前記直線部に付着したスパッタを除去するスパッタ除去処理を行う。
【0020】
前記の構成によれば、挿し口側の管端から前記突起部を含む領域の研削処理と、直線部に付着しているスパッタの除去処理とを自動化することができる。これにより、作業員の削減を図ることが可能である。また、自動化により、手動による処理と比べて、加工精度および品質が安定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、挿し口側の管端から突起部を含む領域の研削処理と、付着しているスパッタの除去処理とを自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る管加工装置の斜視図である。
図2図1の管加工装置の下面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る管加工装置の加工対象である管を説明する図である。
図4図1の管加工装置の側面図である。
図5図1の管加工装置の断面図である。
図6図1の管加工装置による管の研削の様子を説明する図である。
図7図1の管加工装置の側面図である。
図8図1の管加工装置による管のスパッタ除去の様子を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る管加工方法の処理フローの図である。
図10】本発明の一実施形態に係る管加工方法の各フローに対応させた管加工装置の姿勢を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔管加工装置〕
図1は、本発明の一実施形態の管加工装置1の上面斜視図である。図2は、管加工装置1の下面図である。なお、後述するように管加工装置1は、ロボットアーム5を介したロボット7による駆動により、三次元空間内を前後左右上下に自在に位置および姿勢を変えることができる。なお、以下において管加工装置1の各構成要素、その配置、位置関係を説明する際には、管加工装置1が基準姿勢にある状態に基づいて説明する。基準姿勢とは、管加工装置1が、ロボットアーム5に連結している連結部3が鉛直に延伸している配置をとっている状態であって、且つ、後述する第1ベース部と、第2ベース部とが水平に延設されている状態のこととする。また、説明の便宜上、鉛直に沿った軸をZ軸、水平面をXY平面とするXYZ系の三次元座標を用いて説明する。各図にもXYZ系の三次元座標を付記している。
【0024】
管加工装置1は、ロボットアーム5に取り付け可能な態様である。なお、ロボットアーム5およびロボットアーム5の基部に連結されたロボット7は、管加工装置1の構成要素としなくてもよい。すなわち、管加工装置1が、ロボットアームの先端に取り外し可能に取り付けられるアタッチメントに相当する構成として実現される。しかしながら、これに限らず、ロボットアームを、管加工装置1の構成要素として具備してもよく、更にロボットアームに加えてロボットも、管加工装置1の構成要素として具備してもよい。以下では、ロボットアーム5およびロボット7を、管加工装置1の構成要素として具備する態様を説明する。
【0025】
図1に示す管加工装置1は、ロボットアーム5(アーム)と、ロボットアーム5に連結する連結部3と、ロボットアーム5を介して連結部3を回転可能に制御するロボット7(連結制御部)と、連結部3を介してロボットアーム5に取り付けられている挿し口研削処理部10およびスパッタ除去処理部20とを有する。換言すれば、挿し口研削処理部10およびスパッタ除去処理部20は、ロボットアーム5の先端に、連結部3を介して吊り下げられたかたちで設けられている。
【0026】
連結部3の下端部には、上面視L字型を有する支持部30が、固定されている。図2に示すように、支持部30は、L字型を有し、L字の横線に沿った先端に、挿し口研削処理部10が支持されており、L字の縦線に沿った先端に、スパッタ除去処理部20が支持されている。換言すれば、支持部30を下端部に有した連結部3(図1)は、挿し口研削処理部10とスパッタ除去処理部20とをアーム5に取り付けるための連結機能を有していると言える。より具体的には、挿し口研削処理部10とスパッタ除去処理部20とは、挿し口研削処理部10の取り付け位置から連結部3の位置までを結ぶ第1仮想線V1(図2)と、スパッタ除去処理部20の取り付け位置から連結部3の位置までを結ぶ第2仮想線V2とが交差するように、アーム5に取り付けられている。
【0027】
管加工装置1は、ロボットアーム5を介したロボット7による駆動により、三次元空間内を前後左右上下に自在に位置および姿勢を変えて、管の挿し口の加工を行う。挿し口研削処理部10は、管の加工の一例である研削処理を行う。スパッタ除去処理部20は、管の加工の一例であるスパッタ除去処理を行う。
【0028】
<加工対象の管>
ここで、図3を用いて、管加工装置1の加工対象である管について説明する。図3の上側には、加工対象の管500の正面図を示し、図3の下側には、上側の正面図に示す囲み部分の拡大断面図を示している。
【0029】
図3に示す管500は、一例として、水道用耐震管等として利用されるダクタイル鉄管である。管500は、管500同士を連結するために、直管部503の両端部にそれぞれ受口501と挿し口502とを有している。通常、管500同士を連結する場合は、第1の管の受口501に、第2の管の挿し口502を挿入する。ここで、受口501の内周面には、管500同士を連結した際に離脱することを防止するためのロックリングを装着するための環状溝501aが形成されている。また、挿し口502の管外周面には、図3の下側に示すように、管外周面から突出した突起部505と、突起部505よりも挿し口側の管端502Eから遠い側に位置する直線部504とが設けられている。
【0030】
直線部504は、管500同士の離脱防止、管軸方向への管の伸縮、振動を吸収して、水密性を担保するためのリング(不図示)が配設される領域である。リングは、管500同士を連結する際に後入れされて、直線部504に配置される。一例として、リングは、ゴム製のリングである。
【0031】
ここで、突起部505は、先述したような別の管との連結におけるロックリングへの押圧を行うための構造である。突起部505を管500の管外周面に形成する施工技術については、先述した通りであり、突起部505を管500の管外周面に対して溶接する手法が採用される。具体的には、リング状の突起部505を、管500の挿し口502の管端502Eから距離を空けた位置の管外周部分に装着した後、溶接を行い、溶接部を形成する。そして、仕上げに、溶接部の表面を滑らかにするために研磨する。この研磨処理を、挿し口研削処理部10が行う。
【0032】
<挿し口研削処理部10>
挿し口研削処理部10は、図1および図2に示すように、研削部14を有する。挿し口研削処理部10は、研削部14によって、管外周面における、管500の挿し口側の管端502Eから突起部505を含む領域M1(図3)を、研削処理する。この研削処理により、表面の研磨処理に加えて、挿し口側の管端502Eおよび突起部505を含めた領域M1の研削処理を行うことができる。以下、研磨処理も研削処理も纏めて研削処理と称することがある。
【0033】
また、研削部14による研削処理には、テーパ加工処理が含まれる。テーパ加工処理の処理対象箇所としては、挿し口側の管端502Eと、突起部505における管端502E側の端部とがある。更に、突起部505の溶接箇所の溶接部表面を、突起部505のテーパ面と連続したテーパ面となるように加工するテーパ加工処理も含まれる。なお、突起部505は、管500に後入れされる段階で厚肉部と薄肉部とがあってよい。
【0034】
また、研削部14による研削処理には、管端502Eの角、溶接部の角および突起部505の角を、ラウンド加工する(いわゆるR加工)することも含まれる。それぞれの角については、図3の下側に示す502E´、502E´´、505´、505´´の位置にある。
【0035】
研削部14は、回転砥石を先端に備えたグラインダーを採用することができる。回転砥石は、一例ではペーパー砥石を用いることができるほか、ダイヤモンド砥石を用いることも可能である。
【0036】
図4は、挿し口研削処理部10の側面図である。図5は、図2の第1仮想線V1において管加工装置1を切断した状態を模式的に示す断面図である。図4および図5に示すように、挿し口研削処理部10は、第1ベース部12を更に有している。
【0037】
第1ベース部12は、X軸に沿って延設された板状の構造体である。第1ベース部12の上面は、支持部30の下面に対向する面である。第1ベース部12の下面(図3)の先端には、研削部14が取り付けられている。
【0038】
第1ベース部12の上面と、支持部30の下面との間には、第1揺動部16が配されている。挿し口研削処理部10は、第1揺動部16を介して支持部30に支持されていると換言することができる。第1揺動部16は、挿し口研削処理部10(より具体的には第1ベース部12の研削部14側の端部)を、管500の管径方向に揺動可能とする。管500の管径方向の一例を、図5の矢印で示している。第1揺動部16は、第1ベース部12の上面と、支持部30の下面との双方の面に配された軸受部16bと、軸受部16bに挿通された軸部16aにより実現できる。軸部16aは、基本姿勢において、Y軸に沿った軸である。
【0039】
挿し口研削処理部10は、第1ベース部12の上面において、第1揺動部16の配設側端部とは反対側の端部に、第1ウェイト11を載積している。
【0040】
第1ウェイト11は、第1ベース部12において、研削部14の回転砥石が配設されている先端の上方に取り付けられている。ここで、管加工装置1は、ロボット7(図1)のロボットアーム5によって研削部14の位置調整および位置制御を行うことを基本とするが、第1ウェイト11があることにより、管500に対する回転砥石の押し付け力(荷重)を所定の荷重とすることができる。また、このように荷重をかけることにより、管500が管の周方向に沿って一定の管径を有していないような変形した管である場合(理想的には管の断面は真円であるところ、楕円に変形している場合)であっても、第1ウェイト11によって所定の荷重がかかるため、研削部14の回転砥石が管の周方向に沿って管外周面に追従することができる。
【0041】
第1ベース部12の上面に対する、第1ウェイト11の固定方法は特に問わないが、例えば、これまで加工していた管とは異なる管径の管を加工することになった場合であっても適切な荷重がかけられるように、重さの増減ができるように複数のウェイトを組み合わせてなる構成であることが好ましい。一例として、図5に示すように複数枚のディスク状のウェイトを適切な枚数載積した態様によって第1ウェイト11を実現できる。
【0042】
先述のように、挿し口研削処理部10は、ロボットアーム5によって、研削部14を、管500の研削対象箇所に対して、角度を変えて当接させることができる。これを模式的に示す図が、図6である。なお、図6では、研削部14の回転砥石が管軸500Cに沿って管外周面の異なる複数の箇所(図6ではY軸方向において互いに異なる4箇所)に位置したときの様子を示しており、各位置における研削部14の回転砥石の回転軸14Cと、管軸500Cとがなす角度が異なっている様子を模式的に示している。なお、研削部14の回転砥石の回転軸14Cに沿った軸と、管軸500Cとがなす角度は、図6に示すYZ平面内において異なる場合に限らず、研削対象箇所を良好に研削できるように、三次元空間内において適切な角度に設定される。角度は、ロボット7に予めプログラムされていればよい。
【0043】
挿し口研削処理部10は、図1図4および図5に示すように、第1ベース部12の上面に、第1リミットスイッチ15の端部が連結している。第1リミットスイッチ15は、支持部30の上面に配設された本体部15K(図1および図4)を有している。第1リミットスイッチ15は、第1揺動部16により揺動した第1ベース部12が所定の位置(所定の傾き)になったときにリミットが作動して停止する構成となっている。
【0044】
このように、挿し口研削処理部10は、ロボットアーム5の先端に、支持部30を介して吊り下げられたかたちで設けられている。ロボット7(図1)は、研削部14が、管500の挿し口側の管端502Eから突起部505を含む領域M1(図3)を、良好に研削処理できるように、第1ウェイト11の重さと、挿し口研削処理部10の自重とが考慮されたプログラムに従い、挿し口研削処理部10(研削部14)の位置および姿勢を制御する。
【0045】
挿し口研削処理を行う際には、管500の管軸500Cの延設方向と、第1仮想線V1とが上面視において交わるように管500と挿し口研削処理部10とが配置される。この状態で、管500は、図示しない管支持装置に支持された状態で、管回転装置によって管500の管軸500Cを中心に回転している。そして、回転中の管500の挿し口502の管外周面に対して、図5のように挿し口研削処理部10の研削部14の回転砥石が接触する。このとき、回転砥石は、回転軸14Cを中心に回転しており、管500の挿し口502の領域M1の研削処理が行われる。また、先述したR加工、テーパ加工処理が行われる。
【0046】
<スパッタ除去処理部20>
先述のように、突起部505を溶接する際には、例えば図3の直線部504を含む領域にスパッタが付着する。スパッタは、後入れするゴム製のリングを傷つける恐れがあるため、除去することが好ましい。スパッタ除去処理部20は、このスパッタ除去を行う。
【0047】
スパッタ除去処理部20は、図2に示すL字型の支持部30のL字の縦線に沿った先端に配置している。換言すれば、スパッタ除去処理部20は、支持部30を下端に有する連結部3(図1)を介して、ロボットアーム5に取り付けられている。
【0048】
スパッタ除去処理部20は、Z軸負方向に突出した除去用チップ24を有する。図2に示すように、除去用チップ24は、第2仮想線V2に直交する方向に沿って並んでいる。図2の例では、3つの除去用チップ24が並んでいる。除去用チップ24は、突出した先端を、直線部504の管外周面に当接する構成となっている。当接する構成については、後述する。
【0049】
図7は、スパッタ除去処理部20の側面図である。なお、図7では、説明の便宜上、管軸500CがX軸に沿った方向に延びている管500を併せて図示している。
【0050】
スパッタ除去処理部20は、図7に示すように、第2ベース部22を更に有している。第2ベース部22は、Y軸に沿って延設された板状の構造体である。第2ベース部22の上面は、支持部30の下面に対向する面である。第2ベース部22の下面(図3)の先端に、除去用チップ24が取り付けられている。
【0051】
第2ベース部22の上面と、支持部30の下面との間には、第2揺動部26が配されている。スパッタ除去処理部20は、第2揺動部26を介して支持部30に支持されていると換言することができる。第2揺動部26は、スパッタ除去処理部20(より具体的には第2ベース部22の除去用チップ24側の端部)を、図7の矢印で示す方向に揺動可能とする。この図7の矢印で示す方向は、管500の挿し口502の管外周面における直線部504に当接させる際に、管500の管径方向に沿った方向となる。第2揺動部26は、第1ベース部12の上面と、支持部30の下面との双方の面に配された軸受部26bと、軸受部26bに挿通された軸部26aにより実現できる。軸部26aは、基本姿勢において、X軸に沿った軸である。
【0052】
スパッタ除去処理部20は、第2ベース部22の上面において、第2揺動部26の配設側端部とは反対側の端部に、第2ウェイト21を載積している。
【0053】
第2ウェイト21は、第2ベース部22において、除去用チップ24が配設されている先端の上方に取り付けられている。ここで、管加工装置1は、ロボット7(図1)のロボットアーム5によって除去用チップ24の位置調整および位置制御を行うことを基本とするが、第2ウェイト21があることにより、管500に対する除去用チップ24の押し付け力(荷重)を所定の荷重とすることができる。また、このように荷重をかけることにより、管500が管の周方向に沿って一定の管径を有していないような変形した管である場合(理想的には管の断面は真円であるところ、楕円に変形している場合)であっても、第2ウェイト21によって所定の荷重がかかるため、除去用チップ24が管の周方向に沿って管外周面に追従することができる。
【0054】
第2ベース部22の上面に対する、第2ウェイト21の固定方法および第2ウェイト21の具体的構成については、第1ウェイト11と同じ構成を採用することができる。ここで、第2ウェイト21の重さは、第1ウェイト11よりも重いものを採用することが好ましい。これは、除去用チップ24に比べ、グラインダーによって構成されている研削部14のほうが相対的に重いため、挿し口研削処理部10と、スパッタ除去処理部20との平衡をとることによって、ロボット7による両方の位置制御を簡易に行うことができる。
【0055】
図8は、管500の挿し口502の管外周面における直線部504に、除去用チップ24が当接している状態を示しており、図8の左側が、管軸500Cに沿った管500の断面図であり、図8の右側が、図8の左側に示す切断線B-Bにおける管500の挿し口502の矢視断面図である。図8に示すように、除去用チップ24が、管軸500Cを中心に回転する管の挿し口502の直線部504に当接することにより、直線部504に付着したスパッタRを除去することができる。具体的には、除去用チップ24が直線部504に付着したスパッタRを削り落としている。
【0056】
このように、スパッタ除去処理部20は、ロボットアーム5の先端に、支持部30を介して吊り下げられたかたちで設けられている。ロボット7(図1)は、除去用チップ24が、管500の挿し口502の直線部504からスパッタを除去できるように、第2ウェイト21の重さと、スパッタ除去処理部20の自重とが考慮されたプログラムに従い、スパッタ除去処理部20(除去用チップ24)の位置および姿勢を制御する。
【0057】
〔管加工方法〕
本実施形態の管加工方法の処理フローを、図9を用いて説明する。また、図10には、各フローに対応させた管500と管加工装置1の配置関係を模式的に示す。
【0058】
管加工方法S10は、上述の管加工装置1によって行い、図9に示すように、研削処理工程S11と、スパッタ除去処理工程S12とを含む。
【0059】
研削処理工程S11は、管加工装置1の挿し口研削処理部10によって、挿し口側の管端502Eから突起部505を含む領域M1(図3)を研削処理する工程である。研削処理工程S11を行う際の、管500と、管加工装置1との位置関係について、図10中の(i)に示す。研削処理の内容については、上述の研削部14において説明した通りである。
【0060】
なお、研削処理工程S11が行われる前工程として、管500が管軸500Cを略水平にした状態で、図示しない搬送装置によって管加工装置1近傍に搬送される。搬送された管500は、管軸500Cを略水平にした状態で支持されて、回転装置によって管軸500Cを中心に所定の回転速度で一方向に回転する。管500がこのように回転している状態において、ロボット7に予め設定されたプログラムに基づいて、研削部14の回転砥石を回転させながら領域M1(図3)に当接する。
【0061】
領域M1(図3)を研削および研磨する研削部14は、一例として、管軸500Cに沿ってY軸正方向に位置を変えながら、所定箇所を研削および研磨していく。なお、Y軸正方向に位置を変える態様に限らず、Y軸正側からY軸負方向に向かって位置を変える態様であってもよいし、一度通り過ぎた箇所に戻るように位置を変えて研削および研磨する態様であってもよい。
【0062】
研削処理工程S11では、挿し口側の管端502E(図3)の端面(図3の502E´を含む部分)も、研削および研磨する。
【0063】
次いで、スパッタ除去処理工程S12では、管加工装置1のスパッタ除去処理部20によって、挿し口502の直線部504に付着したスパッタを除去する。スパッタ除去処理工程S12を行う際の、管500と、管加工装置1との位置関係について、図10中の(iii)に示す。
【0064】
なお、図10には、スパッタ除去処理工程S12の前段である研削処理工程S11の図10中の(i)の配置から、図10中の(iii)に示す配置に変化する途中の段階を、図10中の(ii)に示す。図10中の(i)の配置から、図10中の(ii)を経て、図10中の(iii)の配置に至るまでには、挿し口研削処理部10とスパッタ除去処理部20とが、アーム5に連結した連結部3を中心に回動する。先述のように連結部3に固定された支持部30は上面視L字型であることから、図10中の(i)の配置においてY軸に沿って配置されたスパッタ除去処理部20は、回動によって、図10中の(iii)の配置においてX軸に沿って配置される位置に移動する。この移動も、ロボット7によって行う。ロボット7は、アーム5を介して、上面視において支持部30を、連結部3を中心に90度回転させることによって、図10中の(i)の配置から(iii)の配置に管加工装置1の姿勢を変える。
【0065】
スパッタ除去処理工程S12は、図8を用いて説明したとおりである。なお、スパッタ除去処理工程S12では、直線部504にスパッタ除去処理部20の除去用チップ24を当接した状態で、管500が少なくとも一回転すれば、直線部504に付着したスパッタを除去できる。
【0066】
なお、スパッタ除去処理工程S12では、直線部504に付着したスパッタの除去だけに限らず、直線部504に隣接した直管部503に付着したスパッタ、あるいは、領域M1から突起部505を除いた領域に付着したスパッタも、除去用チップ24によって除去することができる。これらの領域のスパッタを除去するためには、例えば、図10中の(i)の配置において、スパッタ除去処理部20(除去用チップ24)を、Y軸方向に移動させればよい。
【0067】
なお、本実施形態では、研削処理工程S11と、スパッタ除去処理工程S12とが、この順で実施される。しかしながら、研削処理工程S11の前に、スパッタ除去処理工程S12を行うことも可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、挿し口側の管端から突起部505を含む領域M1の研削処理と、直線部504に付着しているスパッタの除去処理とを自動化することができる。従前はこれらの処理を手作業で行っていたが、自動化できることにより、作業員の削減を図ることが可能である。また、自動化により、手動(手作業)による処理と比べて、加工精度および品質が安定するというメリットがある。
【0069】
また、本実施形態の管加工装置1によれば、ロボット7によって連結部3を回転させることで、挿し口研削処理部と10、スパッタ除去処理部20との切り替え(配置替え)が可能となる。これにより、コンパクトな設計で管加工装置1を実現することができる。また、同一ラインで処理することができるため、工程ごとの管の搬送の手間がなくなり、作業時間を短縮できる。
【0070】
また、本実施形態の管加工装置1によれば、挿し口研削処理部10の取り付け位置から連結部3の位置までを結ぶ第1仮想線V1と、スパッタ除去処理部20の取り付け位置から連結部3の位置までを結ぶ第2仮想線V2とが交差、より具体的には直交するように、挿し口研削処理部10とスパッタ除去処理部20とをアーム5に取り付けている。これにより、アーム5の動きを最小限にでき、管製造ラインにおける占有スペースを最小限にすることができる。また、本実施形態の管加工装置1によれば、挿し口研削処理部10とスパッタ除去処理部20とが直線上に配置されないため、一方のツール(例えば、挿し口研削処理部10)加工時に他方のツール(例えば、スパッタ除去処理部20)の自重の影響を抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態の管加工装置1は、第1揺動部16および第2揺動部26を有していることから、挿し口研削処理部10の管500に対する荷重、およびスパッタ除去処理部20の管500に対する荷重を、適切な荷重とすることが可能である。また、管加工時に揺動することで、管の変形(楕円)にも追従可能となる。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 管加工装置
3 連結部
5 ロボットアーム(アーム)
7 ロボット(連結制御部)
10 挿し口研削処理部
11 第1ウェイト
12 第1ベース部
14 研削部
14C 回転軸
15 第1リミットスイッチ
16 第1揺動部(揺動部)
20 スパッタ除去処理部
21 第2ウェイト
22 第2ベース部
24 除去用チップ
26 第2揺動部(揺動部)
30 支持部
500 管
500C 管軸
501 受口
502E 管端
504 直線部
505 突起部
M1 挿し口側の管端から突起部を含む領域
S11 研削処理工程
S12 スパッタ除去処理工程
V1 第1仮想線
V2 第2仮想線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10