(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101588
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】処理剤収容部用清掃装置および処理剤収容部の清掃方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/087 20060101AFI20250630BHJP
B08B 1/16 20240101ALI20250630BHJP
【FI】
B08B9/087
B08B1/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218540
(22)【出願日】2023-12-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平ノ上 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大
(72)【発明者】
【氏名】柿▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】塚本 学
(72)【発明者】
【氏名】中田 涼介
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 貞徳
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 智哉
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB53
3B116BA05
3B116BA14
3B116BA32
3B116CD42
3B116CD43
(57)【要約】
【課題】圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置および清掃方法を提供する。
【解決手段】清掃装置(1)は、ロッド部(10)と、位置調整機構(13)と、ロッド部挿入機構(13)と、ロッド部回転機構(12)とを備え、ロッド部(10)の先端には付着物を除去するための除去部材(11)が取付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力添加装置が備える処理剤収容部の清掃装置であり、
前記清掃装置は、
前記処理剤収容部の開口部から前記処理剤収容部内に挿入されるロッド部と、
前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の位置を調整する位置調整機構と、
前記ロッド部を前記処理剤収容部内に挿入するロッド部挿入機構と、
前記ロッド部を回転させるロッド部回転機構と、
を備え、
前記ロッド部の先端には、前記処理剤収容部内の付着物を除去するための除去部材が取付けられている、
ことを特徴とする圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項2】
前記除去部材は鎖状であることを特徴とする、請求項1に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項3】
前記処理剤収容部の前記開口部を撮像して、前記開口部を被写体として含む画像データを生成する撮像装置と、
前記画像データに基づいて、前記処理剤収容部内への前記ロッド部の挿入の可否を判定するロッド部挿入可否判定部と、
をさらに備え、
前記撮像装置は、前記ロッド部の軸の延長線上の位置に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項4】
光源をさらに備え、
前記光源は、前記光源からの光を前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に対して斜めから照射できるように、前記開口面に対して傾けて配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項5】
前記位置調整機構は、前記ロッド部挿入可否判定部による判定結果に基づき、前記ロッド部を前記処理剤収容部内へ挿入可能なように、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の相対位置を調整することを特徴とする、請求項3に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項6】
前記位置調整機構は、前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に沿う方向に前記ロッド部の前記先端を移動させることで、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の相対位置を調整し、
前記ロッド部挿入機構は、前記開口面と交わる方向に前記ロッド部の前記先端を移動させることで、前記ロッド部を前記処理剤収容部内に挿入する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項7】
前記処理剤収容部は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有することを特徴とする、請求項6に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置を用いて、圧力添加装置が備える処理剤収容部を清掃する方法であり、
前記処理剤収容部の開口部に対する前記ロッド部の先端の位置を調整する位置調整工程と、
前記ロッド部を、前記処理剤収容部内に挿入するロッド部挿入工程と、
前記ロッド部の軸を回転させるロッド部回転工程と、
を含むことを特徴とする、圧力添加装置の処理剤収容部の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理剤収容部用清掃装置および処理剤収容部の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶融金属が入った取鍋を第1容器と第2容器とが形成する中空部に収容した状態で、当該中空部に圧力を添加可能である圧力容器と、前記第1容器を、前記第2容器に対して当接する当接位置と、当該当接が解除される当接解除位置との間で移動させる第1駆動部と、前記第2容器を、前記圧力が添加される圧力添加位置と、前記取鍋を設置する当該圧力添加位置とは異なる取鍋設置位置との間で移動させる第2駆動部と、前記圧力添加位置にて、前記中空部に前記取鍋を収容した状態で前記第1容器と前記第2容器とを締結する締結部と、前記締結され且つ前記圧力が添加された状態で前記溶融金属に処理剤を浸漬して当該溶融金属を撹拌する浸漬部と、を備えることを特徴とする圧力添加装置が開示されている。また、特許文献1には、当該圧力添加装置を用いて溶解炉で溶解された溶湯をダクタイル鋳鉄に溶製する際に、前記浸漬部が有する収容部に処理剤を収納し、溶融金属の脱硫および黒鉛球状化を行なう技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融金属の脱硫および黒鉛球状化処理後には、当該処理によって生じた副生成物が収容部内壁に付着し、その結果、処理剤を収容するための空間が狭窄状態となることがある。このため、前記処理後に、収容部内の前記付着物を除去する作業が必要である。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の圧力添加装置の収容部は高所に位置しているため、収容部内の付着物を除去する作業は高所での作業となる。この作業を作業者が手作業で行う場合は危険を伴い、さらには作業性にも劣る。
【0006】
そこで、本発明の一形態は、圧力添加装置が備える処理剤収容部の清掃装置および清掃方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、圧力添加装置が備える処理剤収容部の清掃装置であり、前記清掃装置は、前記処理剤収容部の開口部から前記処理剤収容部内に挿入されるロッド部と、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の位置を調整する位置調整機構と、前記ロッド部を前記処理剤収容部内に挿入するロッド部挿入機構と、前記ロッド部を回転させるロッド部回転機構と、を備え、前記ロッド部の先端には、前記処理剤収容部内の付着物を除去するための除去部材が取付けられている構成である。
【0008】
前記の構成によれば、処理剤収容部内の付着物を自動で取り除くことが可能となるため、処理剤収容部の清掃作業の安全性及び作業性が向上する。
【0009】
本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、前記の構成において、前記除去部材は鎖状である構成としてもよい。
【0010】
前記の構成によれば、除去部材が鎖状であるため、付着物による狭窄によって処理剤収容部の開口部が狭まっていたとしても、ロッド部を挿入可能である。これにより、付着物の付着量に関わらず、処理剤収容部の清掃が可能である。
【0011】
前記処理剤収容部の前記開口部を撮像して、前記開口部を被写体として含む画像データを生成する撮像装置と、前記画像データに基づいて、前記処理剤収容部内への前記ロッド部の挿入の可否を判定するロッド部挿入可否判定部と、をさらに備え、前記撮像装置は、前記ロッド部の軸の延長線上の位置に配置されている構成としてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、開口部の画像に基づくロッド部挿入可否判定処理を行なうことで、処理剤収容部内に、より精度よくロッド部を挿入することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、前記の構成において、光源をさらに備え、前記光源は、前記光源からの光を前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に対して斜めから照射できるように、前記開口面に対して傾けて配置されている構成としてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、処理剤収容部の開口部の画像のコントラストを向上させることができ、開口部の位置がよりわかりやすくなる。その結果、処理剤収容部内に、より精度よくロッド部を挿入することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、前記の構成において、前記位置調整機構は、前記ロッド部挿入可否判定部による判定結果に基づき、前記ロッド部を前記処理剤収容部内へ挿入可能なように、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の相対位置を調整する構成としてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、開口部の画像に基づくロッド部挿入可否判定部による判定結果に基づき、ロッド部の先端の位置を調整するので、処理剤収容部内に、より精度よくロッド部を挿入することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、前記の構成において、前記位置調整機構は、前記処理剤収容部の前記開口部が設けられた開口面に沿う方向に前記ロッド部の前記先端を移動させることで、前記処理剤収容部の前記開口部に対する前記ロッド部の先端の相対位置を調整し、前記ロッド部挿入機構は、前記開口面と交わる方向に前記ロッド部の前記先端を移動させることで、前記ロッド部を前記処理剤収容部内に挿入する構成としてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、開口面に沿う方向のロッド部の位置調整と、開口面と交わる方向のロッド部の位置調整とを別の機構によって調整することができる。
【0019】
また、ロッド部の挿入方向が一軸方向であるため、ロッド部挿入機構の制御が容易である。このような清掃装置は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する処理剤収容部への適用に特に適している。このような形状を有する処理剤収容部に対しては、処理剤収容部内でロッド部を一軸方向に出し入れするというシンプルな動作で、処理剤収容部内の付着物をもれなく取り除くことができるためである。
【0020】
本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置は、前記の構成において、前記処理剤収容部は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する構成としてもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る清掃装置は、開口面に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有する処理剤収容部への適用に特に適している。このような形状を有する処理剤収容部に対しては、処理剤収容部内でロッド部を一軸方向に出し入れするというシンプルな動作で、処理剤収容部内の付着物をもれなく取り除くことができる。
【0022】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部の清掃方法は、本発明の一態様に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置を用いて、圧力添加装置が備える処理剤収容部を清掃する方法であり、前記処理剤収容部の開口部に対する前記ロッド部の先端の位置を調整する位置調整工程と、前記ロッド部を、前記処理剤収容部内に挿入するロッド部挿入工程と、前記ロッド部の軸を回転させるロッド部回転工程と、を含む方法である。
【0023】
前記の構成によれば、処理剤収容部内の付着物を自動で取り除くことが可能となるため、処理剤収容部の清掃作業の安全性及び作業性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、圧力添加装置が備える処理剤収容部の清掃装置および清掃方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置の主要部分の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る清掃装置を用いた、圧力添加装置の処理剤収容部清掃方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態2に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置の主要部分の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る清掃装置を用いた、圧力添加装置の処理剤収容部清掃方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態に係る圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置について、詳細に説明する。説明の便宜上、「圧力添加装置の処理剤収容部」を、単に「処理剤収容部」と呼ぶことがある。また「圧力添加装置の処理剤収容部用清掃装置」を、単に「清掃装置」と呼ぶことがある。
【0027】
図1は、本実施形態の清掃装置1の主要部分の構成を示す図である。
図1において、清掃装置1のロッド部10の先端が、処理剤収容部2の開口部20から処理剤収容部2内に挿入されている様子を表している。なお、図面には、必要に応じて、基準軸(処理剤収容部2の開口部20が設けられた面21に直交する方向)をX軸とし、水平面をXY平面に定め、鉛直方向をZ軸としたXYZ系の三次元座標を併せて示す。なお、
図1では、説明の便宜上、処理剤収容部2をX軸に沿った断面視で示している。また、
図1中の矢印A1は、処理剤収容部2内でのロッド部10の移動方向を表している。
【0028】
<清掃装置1>
清掃装置1は、ロッド部10と、ロッド部回転機構12と、ロボットアーム13と、ロボット制御装置14と、を備える。
【0029】
ロッド部10は、処理剤収容部2を清掃するために、処理剤収容部2の開口部20から処理剤収容部2内に挿入される。ロッド部10の先端には、処理剤収容部2内の付着物Pを除去するための除去部材11が取付けられている。一方、ロッド部10の先端とは反対側の端部(以下、「基部」という)は、ロッド部回転機構12に連結されている。
【0030】
図1に示すように、除去部材11は鎖状の部材である。鎖状の除去部材11は、ロッド軸の周囲に所定の間隔で複数個設けられている。ロッド部10が回転していないときは、鎖状の除去部材11は重力に従って垂れ下がっている。一方、ロッド部10が回転すると、鎖状の除去部材11は、回転によって生じる遠心力によって、ロッド軸を中心に放射状に広がる。回転している鎖状の除去部材11を、処理剤収容部2の内壁に付着している付着物Pに接触させることで、回転によって生じる力によって付着物Pを内壁から除去することができる。
【0031】
除去部材11が鎖状であることには次のような利点がある。具体的には、除去部材11が鎖状であることで、付着物Pによる狭窄によって処理剤収容部2の開口部20が狭まっていたとしても、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入可能である。これにより、付着物Pの付着量に関わらず、処理剤収容部2の清掃が可能となる。
【0032】
ロッド軸の周囲に設けられる鎖状の除去部材11の数は特に限定されず、1本または複数本とすることができる。また、鎖状の除去部材11の長さは特に限定されず適宜調節することができる。
【0033】
鎖状の除去部材11としては、従来公知の工業用チェーンを用いることができ、例えば、標準チェーン、ローラーチェーン等を挙げることができる。鎖状の除去部材11の材質は、例えば、クロムモリブデン鋼(SCM)等であることが好ましい。
【0034】
ロッド部回転機構12は、ロッド部10を回転させる。ロッド部回転機構12により、ロッド部10がロッド軸を中心に回転することができる。ロッド部10の回転に伴い、除去部材11がロッド軸周りに回転する。
【0035】
ロッド部10およびロッド部回転機構12としては、ロッドと当該ロッドを回転させる回転機構とを備えた従来公知の回転工具を用いることができる。
【0036】
図1に示すように、ロッド部回転機構12およびロッド部10は、ロボットアーム13のアーム先端部分に取り付けられている。
【0037】
ロボットアーム13は、位置調整機構およびロッド部挿入機構として機能する。ロボットアーム13は、位置調整機構として、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の位置を調整する。また、ロボットアーム13は、ロッド部挿入機構として、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0038】
より詳細に説明すると、開口部20が設けられた面21(以下、「開口面21」という)に直交する方向をX軸方向と定め、開口面21に沿う方向をYZ平面と定めたときに、ロボットアーム13は、位置調整機構として、YZ平面上においてロッド部10の先端の位置を移動させて、開口部20に対するロッド部10の先端の位置を調整する。また、ロボットアーム13は、ロッド部挿入機構として、ロッド部10の先端のX軸方向の位置を移動させて、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0039】
ロボットアーム13としては、従来公知の産業用ロボットアームを採用することができ、例えば、
図1に示すような6軸垂直多関節型のロボットアームを用いることができる。
【0040】
ロボット制御装置14は、ロボットアーム13の動作を制御する。例えば、ロボット制御装置14は、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の位置に応じてロボットアーム13の動作を制御して、ロッド部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の相対位置を調整する。例えば、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端のYZ平面上の位置を少なくとも調整する。
【0041】
処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の位置情報は、例えば、レーザー光を用いた距離センサ等の従来公知の位置検出センサによって取得することができる。ここで、前記位置情報は、例えば、ロッド部10の先端がYZ平面上のどの位置にあるかを示す情報であり、例えば、YZ平面における座標データである。
【0042】
本実施形態の清掃装置1によれば、処理剤収容部2内の付着物Pを自動で取り除くことが可能となるため、処理剤収容部2の清掃作業の安全性及び作業性が向上する。
【0043】
<清掃装置1を用いた清掃方法>
次に、
図2を参照して、清掃装置1を用いた清掃方法の一例について以下に説明する。
図2は、清掃方法S1の流れを示すフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS11の位置調整ステップにおいて、ロボット制御装置14は、ロッド部10の先端の位置に応じてロボットアーム13の動作を制御することで、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の相対位置を調整する。例えば、位置検出センサ等から取得した処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端のYZ平面上の位置情報に基づきロボットアーム13の動作を制御して、ロッド部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端のYZ平面上の位置を少なくとも調整する。
【0045】
ステップS12では、ロッド部10の先端の位置に応じて、ロッド部10の先端が開口部20の正面に来るように、処理剤収容部2が接続されているロッド22の軸周りのロッド部10の先端の位置をさらに調整してもよい。
【0046】
続いて、ステップS12のロッド部挿入ステップにおいて、ロボット制御装置14は、ロボットアーム13の動作を制御することで、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入する。具体的には、X軸方向にロッド部10の先端を移動させることで、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入する。
【0047】
続いて、ステップS13のロッド部回転ステップにおいて、ロボット制御装置14は、ロッド部回転機構12を駆動させて、ロッド部10を回転させる。ロッド部10の回転によって、処理剤収容部2内の付着物Pを除去することができる。
【0048】
ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入した後に、処理剤収容部2内でのロッド部10の先端の位置を、X軸方向に前後に(
図1中の矢印A1の方向に)変化させてもよい。これにより、処理剤収容部2内の付着物PをX軸方向に沿ってもれなく除去することができる。また、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入した後に、処理剤収容部2内で、ロッド部10の先端のY軸方向およびZ軸方向の位置を変化させてもよい。これにより、処理剤収容部2内の四隅の付着物Pをもれなく除去することができる。例えば、処理剤収容部2内でのロッド部10のX軸方向の移動は、ロッド部挿入機構としてのロボットアーム13の動作によって行い、ロッド部10のY軸方向およびZ軸方向の移動は、ロボットアーム13の軸による位置制御によって行なうことができる。
【0049】
なお、
図2では、ロッド部10を処理剤収容部2内に挿入後にロッド部回転ステップを開始する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ロッド部回転ステップは、ロッド部挿入ステップの前から開始してもよく、ロッド部挿入ステップと同じタイミングで開始してもよい。
【0050】
以上の清掃方法S1により、処理剤収容部2内の付着物Pを自動で取り除くことが可能となるため、処理剤収容部2の清掃作業の安全性及び作業性が向上する。また、清掃方法S1では、ロッド部10の処理剤収容部2への挿入方向が一軸方向(X軸方向)であるため、ロボットアーム13によるロッド部10の挿入動作の制御が容易である。
【0051】
<清掃対象となる処理剤収容部2>
図1では、本実施形態の清掃装置1による清掃対象となる処理剤収容部2の一例として、一端部に開口部20と、内部に処理剤を収容するための収容空間とを有する角パイプ形状の部材を示したが、本実施形態の清掃装置1によって清掃される対象となる処理剤収容部2の形状はこれに限定されない。圧力添加装置が有している処理剤収容部であり、開口部と、処理剤を収容するための収容空間が設けられている構造を有するものであれば、本実施形態の清掃装置1による清掃対象となり得る。そのような処理剤収容部2としては、例えば、特許文献1(特開2022-95366号公報)の圧力添加装置が有している浸漬部の添加用ロッドの下端に設けられた収容部を挙げることができる。
【0052】
また、
図1に示すように、処理剤収容部2は、開口面21に直交する方向の収容空間の断面積が一定である形状を有することが好ましい。清掃装置1の内、処理剤収容部2内に挿入されるロッド部10は直線形状の部材であるため、上記のような形状は、ロッド部10を内部に出し入れし易い形状である。また、処理剤収容部2内で清掃装置1のロッド部10を一軸方向に前後させるというシンプルな動作で、処理剤収容部2内の付着物Pをもれなく取り除くことができる。このため、本実施形態の清掃装置1は、上記のような形状を有する処理剤収容部2への適用に特に適している。
【0053】
<清掃対象となる付着物P>
本実施形態の清掃装置1による清掃対象となる処理剤収容部2内部の付着物Pの種類は特に限定されない。付着物Pは、例えば、圧力添加装置を用いて溶解炉で溶解された溶湯をダクタイル鋳鉄に溶製する際に、溶融金属の脱硫および黒鉛球状化処理によって生じた副生成物である。
【0054】
<除去部材11の変形例>
除去部材11は鎖状の部材に限定されない。回転させながら付着物Pに接触させたときに、付着物Pに対して物理的な力を与えることができる形状を有している部材を好適に採用することができる。そのような除去部材11として、例えば電着ダイヤモンド砥石等を挙げることができる。
【0055】
<位置調節機構の変形例>
図1では、ロボットアーム13が、位置調整機構としてのロッド部の位置調節動作を行なう例を説明したが、本発明はこれに限定されない。清掃装置1は、ロボットアーム13の代わりに、位置調節機構としてラックピニオン、リニアレール等の公知の移動機構を備える構成としてもよい。
【0056】
<ロッド部挿入機構の変形例>
図1では、ロボットアーム13が、ロッド部挿入機構としての挿入動作を行なう例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロッド部回転機構12の基部側(ロボットアーム13に取り付けられている側)に、スライド駆動部のような機構を設けることで、ロボットアーム13による挿入動作に依らずに、ロッド部10の処理剤収容部2内への挿入動作を実現することができる。
【0057】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0058】
図3は、本実施形態の清掃装置1aの主要部分の構成を示す図である。
図3に示すように、清掃装置1aは、実施形態1に係る清掃装置1が備える各構成に加えて、撮像装置15、ロッド部挿入可否判定部16、および光源17を備えている。なお、
図3は、説明の便宜上、処理剤収容部2はX軸に沿った断面視で示している。また、
図3中の矢印A2は、光源17からの光の照射方向を表している。
【0059】
清掃装置1aが備える各構成のうち、撮像装置15、ロッド部挿入可否判定部16、および光源17以外の構成は、実施形態1に係る清掃装置1が備える各構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
撮像装置15は、処理剤収容部2の開口部20を撮像して、開口部20を被写体として含む画像データを生成する。撮像装置15は、ロッド部10の軸の延長線上の位置に配置されている。これにより、ロッド部10の先端と開口部20と位置関係を示す画像データを取得することができる。撮像装置15としては、例えば、カメラ等の従来公知の撮像装置を用いることができる。
【0061】
ロッド部挿入可否判定部16は、撮像装置15が撮像した画像データを取得し、当該画像データに基づいて、処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入の可否を判定する。ロッド部挿入可否判定部16が開口部20の画像に基づくロッド部挿入可否判定処理を行なうことで、ロッド部10の先端に対する処理剤収容部2の開口部20の向きおよび位置をより精度よく把握することができるため、処理剤収容部2内に、より精度よくロッド部10を挿入することができる。ここで、開口部20の向きとは、ロッド部10の先端に対して開口部20がどの方向を向いているか、というデータである。
【0062】
光源17は、処理剤収容部2の開口面21に対して光を照射する。光源17は、処理剤収容部2の開口面21に対して斜めから光を照射できるように、開口面21に対して傾けて配置されている。前記の構成によれば、処理剤収容部2の開口部20の画像のコントラストを向上させることができ、画像データにおける開口部20の向きおよび位置がよりわかりやすくなる。その結果、処理剤収容部2内に、より精度よくロッド部を挿入することができる。
【0063】
図3では、光源17が処理剤収容部2の開口面21に対して下斜め方向(
図3中の矢印A1の方向)から光を照射する態様を説明したが、本発明はこれに限定されない。光源17は、処理剤収容部2の開口面21に対して斜めから光を照射できればよく、処理剤収容部2の開口面21に対して上斜め方向から光を照射してもよい。
【0064】
ロボット制御装置14は、ロッド部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、ロボットアーム13の動作を制御する。具体的には、ロボット制御装置14は、ロッド部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、ロッド部10を処理剤収容部2内へ挿入可能なように、処理剤収容部2の開口部20に対するロッド部10の先端の相対位置を調整する。前記の構成によれば、開口部20の画像に基づくロッド部挿入可否判定部16による判定結果に基づき、ロッド部10の先端の位置を調整するので、処理剤収容部2内に、より精度よくロッド部10を挿入することができる。
【0065】
図3では、ロボット制御装置14とは別にロッド部挿入可否判定部16を備える例を示したが、この構成に限定されない。例えば、ロボット制御装置14によりロッド部挿入可否判定部16の機能を実現してもよい。
【0066】
<清掃装置1aを用いた清掃方法>
次に、
図4を参照して、清掃装置1aを用いた清掃方法の一例について以下に説明する。
図4は、清掃方法S2の流れを示すフローチャートである。
【0067】
まず、ステップS21の画像データ取得ステップにおいて、ロッド部挿入可否判定部16は、撮像装置15が撮像した画像データを取得する。
【0068】
続いて、ステップS22のロッド部挿入可否判定ステップにおいて、ロッド部挿入可否判定部16は、取得した画像データに基づいて、処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入の可否を判定する。ステップS22の判定は、例えば、以下のように行なう。取得した画像データにおいてロッド部10が処理剤収容部2の開口部20以外の部位に干渉せずに挿入できる位置にある場合に、処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入が可能と判定する。一方、取得した画像データにおいてロッド部10が処理剤収容部2の開口部20以外の部位に干渉する位置にある場合に、処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入が不可能と判定する。
【0069】
ロボット制御装置14は、ロッド部挿入可否判定部16の判定結果に従って、次の処理を実行する。ステップS22において、ロッド部挿入可否判定部16が処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入が可能と判定した場合、ロボット制御装置14は、ステップS23のロッド部挿入ステップを実行し、次いでステップS24のロッド部回転挿入ステップを実行する。
【0070】
一方で、ステップS22において、ロッド部挿入可否判定部16が処理剤収容部2内へのロッド部10の挿入が不可能と判定した場合、ロボット制御装置14は、ステップS25の位置調整ステップを実行し、その後、ステップS23のロッド部挿入ステップおよびステップS24のロッド部回転挿入ステップを実行する。なお、位置調整ステップ、ロッド部挿入ステップおよびロッド部回転挿入ステップについては、実施形態1において説明したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0071】
以上の清掃方法S2では、開口部20の画像に基づくロッド部挿入可否判定ステップS25を行なうので、清掃方法S1による効果に加えて、ロッド部10の先端に対する処理剤収容部2の開口部20の向きおよび位置をより精度よく把握することができるため、処理剤収容部2内に、より精度よくロッド部10を挿入することができる。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1、1a 清掃装置
2 処理剤収容部
10 ロッド部
11 除去部材
12 ロッド部回転機構
13 ロボットアーム(位置調整機構およびロッド部挿入機構)
14 ロボット制御装置
15 撮像装置
16 ロッド部挿入可否判定部
17 光源