(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101596
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/42 20060101AFI20250630BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20250630BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20250630BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
C08G77/42
C08K5/17
C08L53/00
C08F293/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218555
(22)【出願日】2023-12-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】平林 和彦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J246
【Fターム(参考)】
4J002BP03W
4J002BP03X
4J002EG047
4J002EN016
4J002FD157
4J002GH01
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4J026HA11
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4J246AA11
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4J246BA020
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4J246HA28
4J246HA32
(57)【要約】
【課題】力を受けても変形しにくい硬化物を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る硬化性組成物は、成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A、成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B、成分C:硬化触媒および成分D:多価アミンを含んでいる。成分Aおよび成分Bは、シリル基の分布において異なっている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A~Dを含んでいる、硬化性組成物:
成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A;
成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B;
成分C:硬化触媒;
成分D:多価アミン;
ここで、上記成分Aは、
XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で1.2個以下であり、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下であり、
上記成分Bは、
XブロックおよびYブロックを有するXYXトリブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下である。
【請求項2】
上記成分Aおよび/または上記成分Bは、CH2=C(R1)COOR2(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数が9個以上の基である)に由来する繰り返し単位を1重量%以上含んでいる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記成分Aおよび/または上記成分Bの数平均分子量は、2,000~50,000である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリル基を有する重合体分子は、シリル基が加水分解することにより、他の重合体分子との間でシロキサン結合を形成する。この架橋反応により、ゴム状の硬化物が得られる。このような重合体分子を含有している硬化性組成物は、シーリング材、接着剤、塗料などに使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来技術に開示されている硬化性組成物には、硬化物を高モジュラス化させる余地が残されていた。
【0005】
本発明の一態様は、力を受けても変形しにくい硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化性組成物は、下記成分A~Dを含んでいる:
成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A;
成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B;
成分C:硬化触媒;
成分D:多価アミン;
ここで、上記成分Aは、
XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で1.2個以下であり、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下であり、
上記成分Bは、
XブロックおよびYブロックを有するXYXトリブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、力を受けても変形しにくい硬化物を与える硬化性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、下記の各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更を施してよい。異なる実施形態に記載されている技術的手段を組合せた実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。本明細書において特記しない限り、「シリル基」とは、「加水分解性シリル基」を意味する。一実施形態において、シリル基は、アルコキシシリル基である。
【0010】
〔1.硬化性組成物の成分〕
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A、成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B、成分C:硬化触媒および成分D:多価アミンを含んでいる。硬化性組成物は、任意成分として、上記以外の成分を含んでいてもよい。これらの各成分は、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上を含んでいてもよい。成分Aおよび成分Bは、シリル基の分布において異なっている。
【0011】
[1.1.成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A]
成分Aは、シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体Aである。成分Aは、シリル基含有(メタ)アクリル系エステルモノマーに由来するシリル基を有している。成分Aは、シリル基の出現頻度が高いXブロックと、シリル基の出現頻度が低いYブロックとを有しており、分子中に1個のXブロックを有している。成分Aは、例えば、重合の途中でモノマー組成を変化させることにより重合できる。
【0012】
[1.1.1.成分Aの構造]
成分Aは、XブロックおよびYブロックを有しており、分子中にXYジブロック構造を含んでいる。なお、成分Aの分子全体の構造は、XYジブロック構造を含んでいれば特に限定されず、例えばXYXYテトラブロック構造であってもよい。
【0013】
ここで、「XYジブロック構造」とは、当業者間で一般に言われている「ABジブロック構造」を意味する。成分BにおけるX/Yの比は、(5/95)~(60/40)が好ましく、(15/85)~(40/60)がより好ましい。
【0014】
一実施形態において、成分Aの分子はXYジブロック構造である。XYジブロック構造の分子において、Xブロックとは、分子の一方の末端から40%以下、30%以下または25%以下の領域でありうる(分子に含まれる全繰返し単位を100%とする)。ここで、Xブロックは、シリル基が相対的に多く分布している側のブロックである。
【0015】
成分Aは、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位を有している。シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに相対的に多く含まれている。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で1.2個以下である。一方、Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満である。
【0016】
Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均して1.2個以下であり、1.1個以下が好ましい。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の下限は、例えば、平均して0.7個以上または0.8個以上でありうる。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0.5重量%以上が好ましく、2.0重量%以上がより好ましく、3.0重量%以上がさらに好ましい。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の上限は、90重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0017】
Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位の上限は、Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準として、5重量%未満であり、4重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位の下限は、Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準として、0重量%以上が好ましく、0重量%超がより好ましい。
【0018】
成分Aに導入されているシリル基の数は、分子全体として、平均して1.2個以下、1.1個以下または1.0個以下でありうる。成分Aに導入されているシリル基の数の下限は、分子全体として、平均して0.7個以上または0.8個以上でありうる。シリル基の数が上記の範囲であれば、良好な物性の硬化性組成物および硬化物が得られる。
【0019】
シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0020】
成分Aは、側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰返し単位を含んでいてもよい。本明細書において、「側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマー」とは、式:CH2=C(R1)COOR2で表されるモノマーである。式中、R1は、水素原子またはメチル基である。R2は、炭素数が9個以上の基である。
【0021】
側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、成分Aに含まれる全構成単位のうち、1重量%以上であることが好ましい。このような繰返し単位を含んでいる成分Aは、ポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が改善されたり、得られる硬化物の物性が改善されたりすることがある。側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰返し単位の含有量の上限は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下がより好ましい。含有量が上記の程度であれば、成分Aの製造コストを極端に高騰させずに済む。
【0022】
側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸リノレイル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。
【0023】
上述したモノマーの中では、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸オレイルおよび(メタ)アクリル酸リノレイルから選択される1種類以上が好ましい。これらのモノマーには、常温で液体であり、重合安定性が高いという利点がある。また、これらのモノマーを配合することにより、ポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が高い(メタ)アクリル酸系重合体が得られる。
【0024】
本明細書において、「側鎖が長鎖でない(メタ)アクリル系モノマー」とは、上記式において、R2が炭素数8個以下の基であるモノマーを表す。このようなモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸1-エチルシクロペンチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。
【0025】
上述したモノマーの中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルから選択される1種類以上が好ましい。これらのモノマーは調達コストが低く、成分Aの製造コストを低減する目的に適している。
【0026】
さらに、ガラス転移点の観点からは、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルから選択される1種類以上が好ましい。これらのモノマーから得られる成分Aはガラス転移点が低く、重合体の粘度が低重合体の粘度が低くなる。そのため、低温環境下での使用が容易な硬化性組成物が得られる。
【0027】
成分Aは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーに由来する繰返し単位を有していてもよい。成分Aにおいて、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する繰返し単位が占める割合は、成分Aの全重量の50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0028】
[1.1.2.成分Aが有しているシリル基]
成分Aが有しているシリル基は、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来であってもよい。一実施形態において、シリル基は下記一般式(1)により表される。
-[Si(R3)2-b(Y)bO]m-Si(R4)3-a(Y)a・・・(1)
【0029】
式(1)中、R3およびR4は、独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、メトキシメチル基、または(R’)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基である。R’は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。3個存在するR’は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R3またはR4が2個以上存在するとき、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を表している。加水分解性基の例としては、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基が挙げられる。一実施形態において、Yは、水酸基、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基である。1つのシリル基にXが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。成分Aの1分子中に複数のシリル基が含まれている場合、Yは、シリル基ごとに異なっていてもよい。aは、0、1、2または3である。bは、0、1または2である。mは、0~19の整数である。ただし、a+mb≧1の関係を満たしている。
【0030】
シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体的な構造は、特に制限されない。一例として、下記一般式で示されるモノマーが挙げられる。
H2C=C(R5)C(=O)-O-(CH2)m-SiR6
n(OR7)3-n
【0031】
式中、R5は、水素またはメチル基である。R6およびR7は、水素、メチル基およびエチル基からなる群より選択される1種類以上である。R6および/またはR7が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは、0~10の整数である。nは、0~2の整数である。
【0032】
シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0033】
[1.1.3.成分Aの物性]
一実施形態において、成分Aの数平均分子量の下限は、2,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらに好ましい。成分Aの数平均分子量の上限は、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。成分Aの数平均分子量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、充分な作業性を確保できる。
【0034】
一実施形態において、成分Aの分子量分布は、1.8以下であり、好ましくは1.5以下、1.4以下、1.3以下または1.2以下である。分子量分布が上記の範囲であれば、重合体の粘度が低下し、作業性が向上する傾向にある。分子量分布とは、「重量平均分子量÷数平均分子量」で与えられる値である。
【0035】
重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPC測定には、移動相としてクロロホルム、固定相としてポリスチレンゲルカラムを用いる。測定により得られる分子量は、標準ポリスチレン換算の分子量である。
【0036】
[1.1.4.成分Aの製造方法]
成分Aの重合方法は、特に限定されず、公知の重合方法を用いることができる(ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法など)。SGO(Solid Grade Oligomer;高温連続塊状重合)と呼ばれる重合方法は、重合溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤などをほとんど使用せずに成分Aが得られる方法であるため、好ましい。重合体分子の末端近傍に官能基を導入でき、分子量分布の小さい成分Aを合成できることから、リビング重合法が好ましい。リビング重合法の例としては、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法が挙げられ、その中でもリビングラジカル重合法が(メタ)アクリル系モノマーの重合に適している。リビングラジカル重合法の例としては、以下が挙げられる。
・原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization;ATRP(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5614; Macromolecules. 1995, 28, 1721を参照))
・一電子移動重合(Sigle Electron Transfer Polymerization;SET-LRP(J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14156; JPSChem 2007, 45, 1607を参照))
・可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization;RTCP(「有機触媒で制御するリビングラジカル重合」『高分子論文集』68, 223-231 (2011); 特開2014-111798を参照))
・可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合)
・ニトロキシラジカル法(NMP法)
・有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)
・有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)
・有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)
・ヨウ素移動重合法
【0037】
成分Aにシリル基を導入する方法の例としては、特開2018-162394号公報に記載の方法が挙げられる。同文献に開示の方法は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合することにより、成分Aにシリル基を導入する。より詳細には、リビング重合の進行段階に応じてシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの投入量を制御することにより、成分A分子の末端近傍にシリル基を導入する。これらの方法によって得られる成分Aは、分子の末端または末端近傍に局所的にシリル基を有しうる。
【0038】
[1.2.成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B]
成分Bは、シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体Bである。成分Bは、シリル基含有(メタ)アクリル系エステルモノマーに由来するシリル基を有している。成分Bは、シリル基の出現頻度が高いXブロックと、シリル基の出現頻度が低いYブロックとを有しており、分子中に2個以上のXブロックを有している。成分Bは、例えば、重合の途中でモノマー組成を変化させることにより重合できる。成分Bを配合することにより、強度および伸びが高い硬化物を得られる。
【0039】
[1.2.1.成分Bの構造]
成分Bは、XブロックおよびYブロックを有しており、分子中にXYXトリブロック構造を含んでいる。なお、成分Bの分子全体の構造は、XYXトリブロック構造を含んでいれば特に限定されず、例えばXYXYテトラブロック構造であってもよい。
【0040】
ここで、「XYXトリブロック構造」とは、当業者間で一般に言われている「ABAトリブロック構造」を意味する。成分BにおけるX/Yの比は、(5/95)~(60/40)が好ましく、(15/85)~(40/60)がより好ましい。
【0041】
一実施形態において、成分Bの分子はXYXトリブロック構造である。XYXトリブロック構造の分子において、Xブロックとは、分子の末端から40%以下、30%以下または25%以下の領域でありうる(分子に含まれる全繰返し単位を100%とする)。ここで、Xブロックは、分子の両末端に位置しているブロックである。
【0042】
成分Bは、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位を有している。シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに相対的に多く含まれている。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多い。成分Aが1分子中に2つ以上のXブロックを有している場合は、複数のXブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の個数を合計した値が、平均で2.0個より多い。一方、Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満である。
【0043】
Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均して2.0個超であり、2.1個以上が好ましく、2.2個以上がより好ましく、2.3個以上がさらに好ましく、2.5個以上が特に好ましい。同じく、Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0.5重量%以上が好ましく、2.0重量%以上がより好ましく、3.0重量%以上がさらに好ましい。Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の上限は、90重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0044】
Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位の上限は、Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準として、5重量%未満であり、4重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位の下限は、Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準として、0重量%以上が好ましく、0重量%超がより好ましい。
【0045】
成分Bに導入されているシリル基の数は、分子全体として、平均して2.0個超、好ましくは2.2個以上、より好ましくは2.6個以上、さらに好ましくは3.0個以上、特に好ましくは3.4個以上である。(メタ)アクリル系重合体に導入されているシリル基の数の上限は、10.0個以下が好ましく、8.0個以下がより好ましく、6.0個以下がさらに好ましく、5.0個以下が特に好ましい。シリル基の数が上記の範囲であれば、良好な物性の硬化性組成物および硬化物が得られる。
【0046】
成分Bを構成する繰り返し単位が由来するモノマーの例は、成分Aと同じであり、[1.1.1]節に記載の通りである(シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー、側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマー、側鎖が長鎖でない(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーなど)。好適なモノマーの種類および組成も、[1.1.1]節に記載の通りである。そのため、本節では再度の説明を省略する。
【0047】
一実施形態において、成分Bは、式:CH2=C(R1)COOR2で表されるモノマーに由来する繰返し単位を含んでいる。式中、R1は、水素原子またはメチル基である。R2は、炭素数が9個以上の基である。この式で表されるモノマーに由来する繰返し単位の含有量は、成分Aに含まれる全構成単位のうち、1重量%以上であることが好ましい。このような繰返し単位を含んでいる成分Bは、ポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が改善されたり、得られる硬化物の物性が改善されたりすることがある。この式で表されるモノマーに由来する繰返し単位の含有量の上限は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下がより好ましい。含有量が上記の程度であれば、成分Bの製造コストを極端に高騰させずに済む。
【0048】
[1.2.2.成分Bが有しているシリル基]
成分Bが有しているシリル基の例は、成分Aと同じであり、[1.1.2]節に記載の通りである。そのため、本節では再度の説明を省略する。
【0049】
[1.2.3.成分Bの物性]
成分Bの物性の例は、成分Aと同じであり、[1.1.3]節に記載の通りである。そのため、本節では再度の説明を省略する。
【0050】
一実施形態において、成分Bの数平均分子量の下限は、2,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらに好ましい。成分Bの数平均分子量の上限は、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。成分Bの数平均分子量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、充分な作業性を確保できる。
【0051】
[1.2.4.成分Bの製造方法]
成分Bの製造方法の例は、成分Aと同じであり、[1.1.4]節に記載の通りである。そのため、本節では再度の説明を省略する。
【0052】
[1.3.成分C:硬化触媒]
硬化触媒の例としては、錫系硬化触媒が挙げられる。錫系硬化触媒の具体例としては、ジアルキル錫カルボン酸塩類(ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレートなど);ジアルキル錫オキサイド類(ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの混合物など);4価錫化合物(ジアルキル錫オキサイド、ジアルキル錫ジアセテートなど)とシリル基含有低分子ケイ素化合物(テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなど)との反応物;2価の錫化合物類(オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫など);モノアルキル錫類(モノブチル錫化合物(モノブチル錫トリスオクトエート、モノブチル錫トリイソプロポキシドなど)、モノオクチル錫化合物など);アミン系化合物と有機錫化合物との反応物または混合物(ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物または混合物など);キレート化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジオクチル錫ビスアセチルセトナート、ジブチル錫ビスエチルアセトナート、ジオクチル錫ビスエチルアセトナートなど);錫アルコラート類(ジブチル錫ジメチラート、ジブチル錫ジエチラート、ジオクチル錫ジメチラート、ジオクチル錫ジエチラートなど)が挙げられる。
【0053】
この中でも、キレート化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナートなど)および錫アルコラート類は、シラノール縮合触媒としての活性が高い点が好ましい。また、ジブチル錫ジラウレートは、硬化性組成物に添加しても着色が少なく、廉価であり、入手が容易である点が好ましい。
【0054】
[1.4.成分D:多価アミン]
成分Dは、多価アミンである。多価アミンとは、アミノ基または置換アミノ基を合計で2個以上を有している化合物である。成分Dの例としては、アミノ基または置換アミノ基を2個有している化合物(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど);アミノ基または置換アミノ基を3個有している化合物(ジエチレンペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、エチレンイミンの3量体など);アミノ基または置換アミノ基を4個以上有している化合物(トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、エチレンイミンの4量体など)が挙げられる。成分Dは、アミノ基または置換アミノ基を多数有しているポリマーであってもよい。
【0055】
[1.5.その他の成分]
硬化性組成物は、上述した成分以外にも、種々の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤を含有させることによって、硬化性組成物および硬化物の諸物性を調節することができる。添加剤の例としては、以下が挙げられる。これらの添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0056】
(接着性付与剤)
硬化性組成物は、接着性付与剤を含んでいてもよい。接着性付与剤を添加することにより、シーリング材がサイディングボードなどの被着体から剥離する危険性を低減できる(この剥離は、外力により目地幅などが変動することによって生じる)。また、接着性を向上させるためのプライマーを使用する必要性がなくなる場合もある。この場合は、施工作業の簡略化が期待される。
【0057】
接着性付与剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、イソシアネート基含有シラン類(γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなど);アミノ基含有シラン類(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランなど);メルカプト基含有シラン類(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど);カルボキシシラン類(β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(β-カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなど);ビニル型不飽和基含有シラン類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランなど);ハロゲン含有シラン類(γ-クロロプロピルトリメトキシシランなど);イソシアヌレートシラン類(トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。また、シランカップリング剤を変性させた誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステルなども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0058】
接着性付与剤の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0059】
(充填材)
硬化性組成物は、充填材を含んでいてもよい。充填材の例としては、木粉;補強性充填材(パルプ、木綿チップ、アスベスト、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、カーボンブラックなど);充填材(重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛、シラスバルーンなど);繊維状充填材(石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなど)が挙げられる。
【0060】
充填材の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、5~5000重量部が好ましく、10~2500重量部より好ましく、15~1500重量部が特に好ましい。
【0061】
(物性調整剤)
硬化性組成物は、硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を含んでいてもよい。物性調整剤を用いることにより、硬化物の硬度を上げたり、逆に硬化物の硬度を下げて伸びを上げたりすることができる。
【0062】
物性調整剤の例としては、アルキルアルコキシシラン類(メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシランなど);アルキルイソプロペノキシシラン(ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランなど);官能基を有するアルコキシシラン類(ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど);シリコーンワニス類;ポリシロキサン類が挙げられる。
【0063】
物性調整剤の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.1~80重量部が好ましく、0.1~50重量部がより好ましい。
【0064】
(チクソ性付与剤(垂れ防止剤))
硬化性組成物は、垂れを防止し、作業性を良くするために、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含んでいてもよい。
【0065】
チクソ性付与剤の例としては、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;金属石鹸類(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなど)が挙げられる。
【0066】
チクソ性付与剤の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.1~50重量部が好ましく、0.2~25重量部がより好ましい。
【0067】
(光硬化性物質)
硬化性組成物は、光硬化性物質を含んでいてもよい。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間で化学変化をおこし、物性的変化(硬化など)を生ずる物質である。光硬化性物質を含有させることにより、硬化物表面の粘着性(残留タック)を低減できる。典型的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近など)に、1日間、室温にて静置することにより硬化させることができる。光硬化性物質には、有機単量体、オリゴマー、樹脂およびこれらを含んでいる組成物など、多くのものが知られており、その種類は特に限定されない。光硬化性物質の例としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂が挙げられる。
【0068】
不飽和アクリル系化合物の具体例としては、低分子量アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコールなど)の(メタ)アクリル酸エステル類;酸(ビスフェノールA、イソシアヌル酸)または低分子量アルコールなどを、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどで変性させた、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸エステル類(主鎖がポリエーテルであり末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオール、主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系または(メタ)アクリル系共重合体であり主鎖中に水酸基を有するポリオールなど);エポキシ樹脂(ビスフェノールA型やノボラック型など)と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートなどを反応させることにより得られる分子鎖中に、ウレタン結合および(メタ)アクリル基を有する、ウレタンアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0069】
光硬化性物質の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.01~30重量部が好ましい。
【0070】
(酸化防止剤および光安定剤)
硬化性組成物は、酸化防止剤および/または光安定剤を含んでいてもよい。酸化防止剤および光安定剤は、各種のものが知られている。例えば、[猿渡健市 他『酸化防止剤ハンドブック』大成社、1976年][大沢善次郎 監『高分子材料の劣化と安定化』シーエムシー、1990年、235-242ページ]などに記載された物質が挙げられる。
【0071】
酸化防止剤の例としては、アデカスタブ PEP-36、アデカスタブ AO-23などのチオエーテル系酸化防止剤(以上、全て株式会社ADEKA);Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP-EPQ(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ)などリン系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;が挙げられる。上述した中では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0072】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、モノ(またはジもしくはトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]o-クレゾール、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール(分子量約300)縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート挙げられる。
【0073】
市販されている酸化防止剤の例としては、ノクラック200、ノクラックM-17、ノクラックSP、ノクラックSP-N、ノクラックNS-5、ノクラックNS-6、ノクラックNS-30、ノクラック300、ノクラックNS-7、ノクラックDAH(以上、全て大内新興化学工業株式会社);アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-616、アデカスタブ AO-635、アデカスタブ AO-658、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-15、アデカスタブ AO-18、アデカスタブ 328、アデカスタブ AO-37(以上、全て株式会社ADEKA);IRGANOX-245、IRGANOX-259、IRGANOX-565、IRGANOX-1010、IRGANOX-1024、IRGANOX-1035、IRGANOX-1076、IRGANOX-1081、IRGANOX-1098、IRGANOX-1222、IRGANOX-1330、IRGANOX-1425WL(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ);SumilizerGM、SumilizerGA-80、SumilizerGS(以上、全て住友化学株式会社)が挙げられる。
【0074】
光安定剤の例としては、紫外線吸収剤(チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ)などのベンゾトリアゾール系化合物;チヌビン1577などトリアジン系光安定剤;CHIMASSORB81などのベンゾフェノン系化合物;チヌビン120(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)などのベンゾエート系化合物;ヒンダードアミン系化合物)が挙げられる。上述した中では、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0075】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリディニル)エステルが挙げられる。
【0076】
市販されている光安定剤の例としては、チヌビン622LD、チヌビン144、CHIMASSORB944LD、CHIMASSORB119FL;(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、アデカスタブ LA-52、アデカスタブ LA-57、アデカスタブ LA-62、アデカスタブ LA-67、アデカスタブ LA-63、アデカスタブ LA-68、アデカスタブ LA-82、アデカスタブ LA-87(以上、全て株式会社ADEKA);サノールLS-770、サノールLS-765、サノールLS-292、サノールLS-2626、サノールLS-1114、サノールLS-744、サノールLS-440(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ)が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤および光安定剤を、併用してもよい。これらを併用することにより、それぞれの効果がさらに向上し、硬化物の耐熱性、耐候性などが向上することがある。例えば、耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物(HALS)とを組合せることできる。この組合せは、それぞれの薬剤の効果をより向上させることができ、好ましい。
【0078】
酸化防止剤および/または光安定剤の含有量は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、それぞれ、0.1~20重量部が好ましい。
【0079】
〔2.硬化性組成物の組成〕
硬化性組成物において、成分A/成分Bの重量比の下限は、30/70以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、50/50以上がさらに好ましく、60/40以上がよりさらに好ましく、70/30以上が特に好ましい。成分A/成分Bの重量比の上限は、99/1以下が好ましく、95/5以下がより好ましく、90/10以下がさらに好ましい。上記の範囲で各成分を配合すれば、強度の高い硬化物が得られる傾向にある。
【0080】
硬化性組成物において、成分Cの含有量の下限は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.01重量部以上が好ましく、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましく、0.5重量部以上が特に好ましい。成分Cの含有量の上限は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、10重量部以下が好ましく、8重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。
【0081】
硬化性組成物において、成分Dの含有量の下限は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、0.01重量部以上が好ましく、0.05重量部以上がより好ましい。成分Dの含有量の上限は、成分Aおよび成分Bの含有量の合計を100重量部とすると、7重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。
【0082】
〔3.硬化性組成物の形態〕
成分A~Dを含んでいる硬化性組成物は、1成分型であってもよいし、多成分型であってもよい。1成分型の硬化性組成物とは、全ての配合成分を予め配合した後、密封保存したものである。1成分型の硬化性組成物は、使用後に環境中の湿分により硬化する。多成分型の硬化性組成物においては、硬化触媒とそれ以外の成分を別々に用意し、使用時に両者を混合する。多成分型の硬化性組成物は、上記成分の他に、任意構成である他の剤(着色剤など)を備えていてもよい。
【0083】
硬化性組成物を多成分型として調製すると、各成分の混合時に、着色剤をさらに添加することができる。着色剤は、例えば、顔料、可塑剤、必要に応じて充填材を混合し、ペースト化したものが、作業性が高く好ましい。
【0084】
また、多成分型の硬化性組成物は、主剤および硬化剤の混合時に遅延剤を添加することができる。これにより、硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
【0085】
〔4.硬化物〕
上述の硬化性組成物から、公知の方法によって、硬化物が得られる。例えば、上述の硬化性組成物は、周囲の湿分を吸収して自発的に硬化物へと変化しうる。硬化物の用途は、特に限定されない。一例として、建築用および工業用のシーリング剤、電気・電子部品材料(太陽電池裏面封止剤など)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材など)、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、塗料、コーティング材、缶蓋などのシール材、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、注型材料、各種成形材料、人工大理石、網入りガラスまたは合わせガラスの切断部の防錆・防水用封止材、防水剤が挙げられる。
【0086】
一実施形態において、硬化物は、膜状である。製造される膜の厚さの下限は、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、5mm以上または10mm以上でありうる。製造される膜の厚さの上限は、100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下または50mm以下でありうる。
【0087】
膜状の硬化物は、例えば、硬化性組成物を基材に塗布した後に硬化させることによって製造できる。基材から膜を剥離した状態で使用してもよいし、基材と膜とが一体になった状態で使用してもよい。膜状の硬化物の用途の例としては、シーリング材、コーティング剤、接着剤が挙げられる。
【0088】
〔5.まとめ〕
本発明には、下記の態様が含まれている。
<1>
下記成分A~Dを含んでいる、硬化性組成物:
成分A:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A;
成分B:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体B;
成分C:硬化触媒;
成分D:多価アミン;
ここで、上記成分Aは、
XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で1.2個以下であり、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下であり、
上記成分Bは、
XブロックおよびYブロックを有するXYXトリブロック構造を分子中に有しており、
上記Xブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、
上記Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
分子量分布(Mw/Mn)は1.8以下である。
<2>
上記成分Aおよび/または上記成分Bは、CH2=C(R1)COOR2(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数が9個以上の基である)に由来する繰り返し単位を1重量%以上含んでいる、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>
上記成分Aおよび/または上記成分Bの数平均分子量は、2,000~50,000である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4>
<1>~<3>のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【実施例0089】
〔測定方法〕
[数平均分子量]
数平均分子量の測定には以下の装置を用いた。測定値は、ポリスチレン換算分子量である。
・送液システム:HLC-8120GPC(東ソー株式会社)
・カラム:TSK-GEL Hタイプ(東ソー株式会社)
・溶媒:THF
【0090】
[末端シリル基の導入率]
1H-NMR測定の結果から、末端シリル基の導入率を計算した。1H-NMR測定には以下の装置を用いた。
・測定器:JNM-LA400(日本電子株式会社)
・溶媒:CDCl3
【0091】
[硬化物の引張特性]
硬化性組成物を、23℃、50%RH条件下にて硬化させて、硬化物を得た。JIS K 6251に準拠し、硬化物から3号ダンベル形状の試験片を得て、引張特性を測定した。引張特性の測定は、オートグラフを使用して、23℃、55%RHにて実施した。評価項目は、100%伸長時の応力、破断時の応力および破断時の伸びとした。
【0092】
[硬化物の引裂強度]
JIS K 6252に準拠し、硬化物からクレセント型試験片を得て、引裂強度を測定した。引裂強度の測定は、オートグラフを使用して、23℃、55%RHにて実施した。
【0093】
〔材料〕
実施例および比較例で使用した材料は、下記の通りである。
●成分A
・製造例1で得たシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)
●成分B
・製造例2で得たシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)
●成分B’
・比較製造例で得たシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(B’)
●成分C
・硬化触媒(ネオスタンU-220H、日東化成株式会社、ジブチル錫)
●成分D
・多価アミン(D-1)(H30、三菱ケミカル株式会社、ケチミン、アミン当量:20.7)
・多価アミン(D-2)(FXL-8074-D、株式会社T&K TOKA、変性脂肪族ポリアミン:445)
●接着性付与剤
・接着性付与剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-187、MOMENTIVE)
●脱水剤
・ビニルトリメトキシシラン(Silquest A-171、MOMENTIVE)
【0094】
〔製造例1:(メタ)アクリル系重合体(A)の合成〕
(準備)
1. 2000mLの3つ口フラスコを用意した。108gのアクリル酸エチル(株式会社日本触媒)、707gのアクリル酸n-ブチル(株式会社日本触媒)、186gのアクリル酸ステアリル(大阪有機化学工業株式会社)を混合した。この混合物を、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物」と称する。
2. 別の攪拌容器を用意した。18mgの臭化第2銅(CuBr2)、18mgのヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(Me6TREN)18mg、0.61gのメタノールを攪拌容器に仕込み、窒素気流下にて、均一溶液になるまで攪拌した。この均一溶液を「銅溶液」と称する。なお、銅溶液に含まれている銅は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の全量に対して5ppmに相当する。
3. さらに別の攪拌容器を用意した。35mLのメタノール、1gのアスコルビン酸、および1.6mLのトリエチルアミンを攪拌容器に仕込み、窒素気流下にて、30分間攪拌して均一溶液とした。
(第1工程)
4. 攪拌機に154gのメタノール(和光純薬化学工業株式会社)、5.8gのα-ブロモ酪酸エチル、13.9gの3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、全量の20重量%分の(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物、および上記で調整した第二臭化銅の溶液の全量を入れ、30分間攪拌し、均一溶液とした。このとき使用した攪拌機は、ジャケット温調付攪拌装置であり、ジャケット温度は55℃に設定した。
5. 重合系内の温度が50℃以上になった時点で、アスコルビン酸溶液を連続滴下することにより、重合反応を開始させた。このときのアスコルビン酸溶液の滴下速度は、1時間あたり80mgのアスコルビン酸が重合系に投入される速度とした。
6. 重合系内の温度をモニターしたところ、アスコルビン酸溶液の滴下開始と同時に温度が上昇し、最大温度に到達した後、徐々に温度が低下していていった。重合系の温度からジャケット温度を減じた温度差が2℃になった時点で、重合系内の反応溶液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフで分析した。その結果、最初に投入した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物のうち81%が消費されていることが確認された。
(第2工程)
7. 第1工程で投入しなかった(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の残り(全量の80重量%分)を90分間かけて、重合系に連続的に滴下した。モノマーの滴下終了後に、逐次サンプリングを行い、ガスクロマトグラフで分析した。滴下した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物のうち、98重量%が消費されるまで重合を行った。
8. ジャケット温調付攪拌反応装置のジャケット温度を80℃に変更してから、溶媒を脱揮した。脱揮には、最初はダイヤフラムポンプを用い、次いで真空ポンプを用いた。脱揮終了後に、ジャケット温度が60℃以下になるまで冷却した。
(精製)
9. ジャケット温調付攪拌装置に、酢酸ブチル1000gを投入して、脱揮を終えたポリマーと均一溶液になるまで混合攪拌した。この均一溶液に、吸着剤を加えて1時間攪拌した。吸着剤としては、10gのキョーワード500SH(協和化学工業株式会社)および10gのキョーワード700SEN-S(協和化学工業株式会社)を用いた。
10. 攪拌終了後に、バグフィルター濾布を敷いた濾過器に、吸着剤スラリー溶液を全量濾過し、清澄なポリマー溶液を得た。この溶液をダイヤフラムポンプ、真空ポンプの順に80℃で溶媒脱揮し、(メタ)アクリル系重合体(A)を得た。
【0095】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、XY型のブロック共重合体であり、数平均分子量:40,000、分子量分布:1.20、1分子あたりに導入されたシリル基の数:1.0個であった。また、(メタ)アクリル系重合体(A)のXブロックは、重合体1分子あたり、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位を平均で1.0個有していた。(メタ)アクリル系重合体(A)のYブロックは、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位を1.1重量%有していた(Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準とする)。なお、Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位は極端に少ない。そのため、有効数字2桁で計算すると、分子全体に含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位も、Xブロック全体に含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位も、いずれも1.0個となっている。
【0096】
〔製造例2:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)の合成〕
製造例1において、工程7、8を下記の工程に置換えた。それ以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体(B)を得た。
(第2工程)
7a. 第1工程で投入しなかった(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の残り(全量の80重量%分)を、90分間かけて、重合系に連続的に滴下した。このときのアスコルビン酸溶液の滴下速度は、1時間あたり48mgのアスコルビン酸が重合系に投入される速度とした。また、逐次的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフで分析した。そして、重合系に投入した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物全量のうち、88重量%が消費されるまで重合させた。
(第3工程)
8a. 15.3gの3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを重合系に投入した。アスコルビン酸溶液を1.5時間かけて重合系に滴下した。このときのアスコルビン酸の滴下速度は、1時間あたり80mgのアスコルビン酸が重合系に滴下されるように調整した。その後、アスコルビン酸溶液の滴下を終了し、重合を終了させた。
8b. ジャケット温度を80℃に変更してから、溶媒を脱揮した。脱揮には、最初はダイヤフラムポンプを用い、次いで真空ポンプを用いた。脱揮終了後に、ジャケット温度が60℃以下になるまで冷却した。
【0097】
得られた(メタ)アクリル系重合体(B)は、XYX型のブロック共重合体であり、数平均分子量:39,000、分子量分布:1.3であった。また、(メタ)アクリル系重合体(B)のXブロックは、重合体1分子あたり、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位を平均で2.2個有していた。(メタ)アクリル系重合体(B)のYブロックは、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位を1.1重量%有していた(Yブロックに含まれている全ての繰返し単位の重量を基準とする)。なお、Yブロックに含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位は極端に少ない。そのため、有効数字2桁で計算すると、分子全体に含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位も、Xブロック全体に含まれているシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰返し単位も、いずれも2.2個となっている。
【0098】
〔比較製造例:シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(B’)の合成〕
下記の手順により、(メタ)アクリル系重合体(B’)を合成した。
1. 2Lフラスコに、8.39gの臭化第一銅および112mLのアセトニトリルを仕込み、窒素気流下、70℃にて30分間加熱攪拌した。
2. 17.6gの2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル、224mLのアクリル酸ブチルおよび17.6gのジエチル2,5-ジブロモアジペート(開始剤)をフラスコに加えて、70℃にて45分混合した。混合後、0.41mLのペンタメチルジエチレントリアミンを加えて、重合反応を開始させた。
3. 重合反応開始から80分経過後、断続的に160分間かけて、895mLのアクリル酸ブチルを滴下し、重合反応を進行させた。このとき、1.84mLのペンタメチルジエチレントリアミンを適宜添加した。重合反応に際しては、反応温度を70℃に保ち、混合を続けた。
4. 重合開始から375分後、288mLの7-オクタジエンおよび4.1mLのペンタメチルジエチレントリアミンを重合系に加えた。この際も、反応温度を70℃に保ち、混合を続けた。
5. 重合開始から615分後、加熱を停止し、重合系をトルエンで稀釈してから濾過した。
6. 得られた濾液を減圧加熱して、粗生成物を得た。粗生成物は、数平均分子量:24100、分子量分布:1.27、重合体1分子あたりのアルケニル基の個数:2.6個であった。分子量は、ゲル透過クロマトグラフィにより測定した(移動相:クロロホルム、ポリス悲恋換算)。アルケニル基の個数は、1H-NMRにより測定した。
7. 窒素雰囲気下にて、粗生成物、11.9gの酢酸カリウムおよび900mLのN,N-ジメチルアセトアミドを2Lフラスコに仕込んだ。その後、100℃にて11時間加熱攪拌した。
8. 溶液を減圧加熱してN,N-ジメチルアセトアミドを除去した後、トルエンを加えて濾過した。
9. 得られた濾液に200gの吸着剤(キョーワード700PEL、協和化学工業株式会社)を加えて、窒素気流下、100℃にて3時間加熱攪拌した。吸着剤を濾別した後、さらにトルエンを減圧留去した。
10. 工程7~9を再度繰返して、精製重合体を得た。
11. 648gの精製重合体、25.5mLのジメトキシメチルヒドロシラン、7.54mLのオルト蟻酸メチル、および0価白金の1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン錯体を1L耐圧反応容器に仕込んだ。白金触媒の使用量は、重合体のアルケニル基に対するモル比が3×10-3当量となる量とした。
12. 反応系を100℃にて2時間加熱攪拌した。反応系から揮発成分を減圧留去して、末端にシリル基が導入された(メタ)アクリル系重合体(B’)を得た。
【0099】
(メタ)アクリル系重合体(B’)は、ポリ(アクリル酸-n-ブチル)の主鎖の両末端を変性させてシリル基を導入させた重合体である。そのため、XYX型ブロック共重合体ではなく、成分Bには該当しない。(メタ)アクリル系重合体(B’)は、数平均分子量:29600、分子量分布:1.9、1分子あたりに導入されたシリル基の平均数:1.9個であった。
【0100】
〔実施例1~4、比較例2〕
下記の手順により、物性評価用のサンプルを作製した。
1. 各成分を表1に記載の分量(単位:g)だけ用意した。
2. 各成分を150ccのプラスチックカップに投入し、薬匙で攪拌した。
3. 遊星式攪拌脱泡装置(ARE-310、株式会社シンキー)を用いて、攪拌(1600rpm×90秒)および脱泡(2200rpm×300秒)して、硬化性組成物を得た。
【0101】
【0102】
実施例に係る硬化性組成物は、成分Bを含んでいる。比較例に係る硬化性組成物は、成分Bではなく成分B’を含んでいる。表1から分かるように、実施例に係る硬化物は、比較例に係る硬化物と比較して、100%伸長時の応力が上昇していた。また、実施例に係る硬化物は、比較例に係る硬化物と比較して、破断時の応力、破断時の伸びおよび引裂強度が同程度であるか、値が上昇していた。このことから、成分A~Dを組合せた組成の硬化性組成物は、他の物性を同程度以上に保ちつつ、力を受けても変形しにくい硬化物を与えることが示唆された。