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2025-101668温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101668
(43)【公開日】2025-07-07
(54)【発明の名称】温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 23/00 20060101AFI20250630BHJP
   G05D 23/19 20060101ALI20250630BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20250630BHJP
【FI】
G05D23/00 B
G05D23/19 J
F24H4/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218677
(22)【出願日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 翔
(72)【発明者】
【氏名】小俣 隆士
(72)【発明者】
【氏名】沼田 将成
【テーマコード(参考)】
3L122
5H323
【Fターム(参考)】
3L122AA03
3L122AA23
3L122AA33
3L122AA62
3L122DA21
5H323AA06
5H323BB17
5H323CA08
5H323CB22
5H323CB44
5H323DA01
5H323FF03
5H323GG01
5H323MM06
5H323NN03
(57)【要約】
【課題】熱媒体の急激な温度変化を防止することができる温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法を提供すること。
【解決手段】温度調整システム100は、流路11b、11cを変更可能な第1循環回路11と、第2熱媒体を循環させる際に第2熱媒体を圧縮又は膨張させて第2熱媒体の温度を変化させるヒートポンプ130と、それらを制御するECU140を備える。温度調整システム100は、チラー31に第1循環回路11から第1熱媒体を流入させ、第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行って、第1熱媒体の温度を調整する。ECU140は、第1循環回路11における流路11b,11cの変更が決定された際、当該流路11b,11cの変更によってチラー31に流入する第1熱媒体の温度変化量を予測する温度予測部142と、温度予測部の予測結果に基づいて、流路11b,11cの変更制御を実施する流路制御部144と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱媒体が循環する第1循環回路(11)であって、当該第1熱媒体の流路(11b、11c)を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器(31)と第2熱交換器(32)との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器(33,34)を有するヒートポンプ(130)と、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システム(100)の温度制御装置(140)において、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測部(142)と、
前記温度予測部の予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御部(144)と、を備えた温度制御装置。
【請求項2】
前記温度予測部は、前記流路の変更前における前記第1熱交換器の流入口における第1熱媒体の温度(T1)と、変更によって前記第1熱交換器に接続される予定の流路の流出口における第1熱媒体の温度(T2,T3)とを取得して、温度予測モデルに入力することにより、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記第1循環回路の各流路には、前記第1熱媒体の冷却対象又は加熱対象であるコンポーネント(12,13,14,15,16)が1又は複数配置され、
前記温度予測部は、それぞれの前記コンポーネントからの発熱量又は前記コンポーネントの吸熱量を予測し、予測した発熱量又は吸熱量を前記温度予測モデルに入力する請求項2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記コンポーネントからの発熱量又は吸熱量は、前記コンポーネントの状態に相関する値及び前記コンポーネントの動作を制御する制御値に相関する値のうち少なくともいずれかに基づいて予測される請求項3に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記温度予測部により予測された予測温度又は温度変化量が所定範囲内であるか否かに基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部(143)を備え、
前記流路制御部は、前記判定部の判定結果が肯定の場合、前記流路の変更制御を実施する、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記循環回路の各流路には、前記第1熱媒体の冷却対象又は加熱対象であるコンポーネントが配置され、
前記判定部は、予測温度又は温度変化量が所定範囲外である場合には、前記流路の変更を許可しないと判定し、
前記判定部によって、前記流路の切り替えを許可しないと判定された場合、前記予測温度又は前記温度変化量が前記所定範囲内に近づくように、前記コンポーネントの動作を制御する制御値を指示する指示部(145)を備える、請求項5に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記温度調整システムは、第3熱媒体が循環する第2循環回路(21)をさらに備え、
前記ヒートポンプは、前記第2循環回路から流入した前記第3熱媒体を前記第2熱交換器に対して熱的に接続させることにより、前記第2熱媒体と前記第3熱媒体との間で熱交換を行って、前記第3熱媒体の温度を調整するように構成され、
前記温度予測部は、前記第3熱媒体の温度変化量を予測するように構成され、
第1熱媒体の温度変化量、及び第3熱媒体の温度変化量に基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部を備える、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項8】
前記第3熱媒体の目標温度と現在温度を取得するように構成されており、
前記判定部は、少なくても前記第3熱媒体の目標温度と現在温度の差、第1熱媒体の温度変化量、及び第3熱媒体の温度変化量が、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、前記流路の変更を許可する、請求項7に記載の温度制御装置。
【請求項9】
2つ以上の前記流路が合流する合流部分には、流量調整弁(50)が設けられており、
前記流量調整弁が制御されることにより、それぞれの前記流路から前記第1熱交換器の流入口に流入する第1熱媒体の流量割合が変更されるように構成されており、
各流路の流路割合を決定する流路決定部を備え、
前記温度予測部は、前記流量割合の変更が決定された際、前記流量割合と、各流路における第1熱媒体の温度に基づいて、前記第1熱交換器と第1熱媒体との間における熱交換量(Q1)を予測し、当該熱交換量を温度予測モデルに入力して、前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測し、
前記流路制御部は、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内である場合には、流路割合を変更するように前記流量調整弁を制御し、
前記流路決定部は、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内でない場合には、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内となるまで、前記流量割合を再設定する、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項10】
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、前記温度予測部により予測された前記第1熱媒体の前記予測温度又は前記温度変化量から、前記第1熱交換器を介して前記第1熱媒体に熱的に接続される前記第2熱媒体の状態を予測する状態予測部と、
前記温度予測部の予測結果、及び前記状態予測部により予測された前記第2熱媒体の状態に基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部(143)を備えた、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項11】
前記状態予測部は、前記温度予測部により予測された前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量と、変更前における第2熱媒体の温度と、前記圧力変換器の動作を指令する圧力制御量とを、前記第2熱媒体の状態を予測する状態予測モデルに入力して、前記第2熱媒体の状態を予測する、請求項10に記載の温度制御装置。
【請求項12】
第1熱媒体が循環する第1循環回路(11)であって、当該第1熱媒体の流路(11b、11c)を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器(31)と第2熱交換器(32)との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器(33,34)を有するヒートポンプ(130)と、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システム(100)の温度制御装置(140)が実施する温度制御プログラムにおいて、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測ステップの予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を実施させる温度制御プログラム。
【請求項13】
第1熱媒体が循環する第1循環回路(11)であって、当該第1熱媒体の流路(11b、11c)を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器(31)と第2熱交換器(32)との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器(33,34)を有するヒートポンプ(130)と、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システム(100)の温度制御装置(140)が実施する温度制御方法において、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測ステップの予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を備えた温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒が流れる流路を切り替えることにより、所望の対象装置を冷却又は加熱して温度を調整する温度調整システムが存在している。このようなシステムは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5983187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような温度調整システムにおいてヒートポンプを利用して、低温水回路と、高温水回路の間で熱を移動させることが考えられている。
【0005】
しかしながら、低温水回路と高温水回路のいずれかの一方の回路で流路が切り替えられた場合、一方の回路を流れる熱媒体の温度が急激に変化し、ヒートポンプの能力を超えてしまい、他方の回路を流れる熱媒体に影響を及ぼしてしまう可能性がある。例えば、流路の切り替えに基づいて低温水回路における熱媒体の温度が急低下することに伴い、ヒートポンプの温度調節機能の能力を超えてヒートポンプの冷媒温度が低下してしまうと、高温水回路を流れる熱媒体の温度が低下してしまう場合がある。この場合、例えば、高温水回路に接続されているヒータの温度が低下してしまうといったことが考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱媒体の急激な温度変化を防止することができる温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、第1熱媒体が循環する第1循環回路であって、当該第1熱媒体の流路を変更可能な第1循環回路と、第1熱交換器と第2熱交換器との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器(33,34)を有するヒートポンプと、を備え、前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システムの温度制御装置において、前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測部と、前記温度予測部の予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御部と、を備えた。
【0008】
このように、流路の変更によって第1熱交換器に流入する第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測し、その結果に基づいて流路の変更制御を行うため、熱媒体の急激な温度変化を防止することができる。
【0009】
上記課題を解決するための第2の手段は、第1熱媒体が循環する第1循環回路であって、当該第1熱媒体の流路を変更可能な第1循環回路と、第1熱交換器と第2熱交換器との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器を有するヒートポンプと、を備え、前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システムの温度制御装置が実施する温度制御プログラムにおいて、前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、前記温度予測ステップの予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を実施させる。
【0010】
このように、流路の変更によって第1熱交換器に流入する第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測し、その結果に基づいて流路の変更制御を行うため、熱媒体の急激な温度変化を防止することができる。
【0011】
上記課題を解決するための第3の手段は、第1熱媒体が循環する第1循環回路であって、当該第1熱媒体の流路を変更可能な第1循環回路と、第1熱交換器と第2熱交換器との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器を有するヒートポンプと、を備え、前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システムの温度制御装置が実施する温度制御方法において、前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、前記温度予測ステップの予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を備えた。
【0012】
このように、流路の変更によって第1熱交換器に流入する第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測し、その結果に基づいて流路の変更制御を行うため、熱媒体の急激な温度変化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】温度調節システムの構成を示すブロック図。
図2】関数f(X,Xmin,Xmax)をグラフ化した図。
図3】流路制御処理のフローチャート。
図4】第2実施形態におけるECUの機能を説明するブロック図。
図5】第2実施形態における指示処理のフローチャート。
図6】第2実施形態における温度調節システムの構成を示すブロック図。
図7】第3実施形態における流路制御処理のフローチャート。
図8】第4実施形態における流路制御処理のフローチャート。
図9】変形例における温度調節システムの構成を示すブロック図。
図10】変形例における温度調節システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本開示に係る温度制御装置、温度制御プログラム、及び温度制御方法は、この実施形態において、車両(電気自動車やハイブリッド車などを含む)に適用されている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、温度調節システム100は、低温回路部110と、高温回路部120と、低温回路部110と高温回路部120との間に配置されるヒートポンプ130と、温度調節システム100を制御する温度制御装置としてのECU140と、を備える。
【0016】
低温回路部110は、低温の冷却水(クーラント)などの冷媒である第1熱媒体が循環する第1循環回路11を備え、車両に搭載されたコンポーネントのうち、冷却対象となるコンポーネントを冷却するためのものである。冷却対象となるコンポーネントには、例えば、充放電可能な蓄電池12、電池用ヒータ13、インバータ14、モータ15、ラジエータ16などが存在する。
【0017】
また、低温回路部110の第1循環回路11には、第1熱媒体を循環させるための第1ポンプ17と、ヒートポンプ130を構成する第1熱交換器としてのチラー31が配置されている。本実施形態の第1循環回路11は、チラー31と第1ポンプ17が直列に配置された第1流路11aに対して、電池用ヒータ13と蓄電池12が直列に配置された第2流路11bと、インバータ14、モータ15、及びラジエータ16が直列に配置された第3流路11cが並列に配置されている。つまり、第1流路11aは、途中で第2流路11bと第3流路11cに分岐している。チラー31から流出した第1熱媒体は、第1ポンプ17により、第2流路11b及び第3流路11cに送られるようになっている。本実施形態の第2流路11b及び第3流路11cにおいて、第1ポンプ17を基準として、第1ポンプ17から流出する側を、上流側と示し、それとは反対側(流入する側)を下流側と示す。図では、上流側から下流側に向かう矢印を示す。
【0018】
第2流路11b及び第3流路11cの下流側において、第2流路11bと第3流路11cとが合流する地点(接続地点)では、流路変更装置としての切替弁18が設けられている。この切替弁18を切り替えることにより、第2流路11b及び第3流路11cのうちいずれかを、第1流路11aに接続することができるようになっている。なお、本実施形態において、第2流路11bに切り替えられている状態、つまり、第2流路11bが第1流路11aに接続されている状態を、第2流路切替状態と示す。同様に、第3流路11cに切り替えられている状態、つまり、第3流路11cが第1流路11aに接続されている状態を、第3流路切替状態と示す。第1循環回路11は、第2流路切替状態と第3流路切替状態のうち、いずれか一方の状態を取りうる。電池用ヒータ13やインバータ14などのコンポーネントや、切替弁18は、ECU140に接続され、ECU140により制御される。
【0019】
高温回路部120は、低温回路部110の第1熱媒体に比較して高温の第3熱媒体が循環する第2循環回路21を備え、車両10に搭載されたコンポーネントのうち、対象のコンポーネントを加熱(若しくは冷却)するためのものである。第3熱媒体は、冷却水(クーラント)や冷媒ガスなどである。対象となるコンポーネントには、例えば、カーエアコン(図示せず)を構成するヒータコア22などが存在する。ヒータコア22は、ECU140に接続され、ECU140により制御される。
【0020】
また、高温回路部120の第2循環回路21には、第3熱媒体が流れる流路21aと、流路21aにおいて第3熱媒体を循環させるための第2ポンプ23と、ヒートポンプ130を構成する第2熱交換器としての水冷コンデンサ32が配置されている。第3熱媒体は、第2ポンプ23により、ヒータコア22と水冷コンデンサ32との間を循環させるようになっている。
【0021】
ヒートポンプ130は、炭酸ガス等の第2熱媒体が循環する流路30と、チラー31と、水冷コンデンサ32と、圧縮機33と、膨張弁34を備える。チラー31と、水冷コンデンサ32と、圧縮機33と、膨張弁34は、流路30において、チラー31→圧縮機33→水冷コンデンサ32→膨張弁34→チラー31の順番で配置され、この順番で第2熱媒体が循環する。チラー31から水冷コンデンサ32に第2熱媒体が送られる際、圧縮機33は、第2熱媒体を圧縮して第2熱媒体の温度を上昇させることが可能となっている。逆に水冷コンデンサ32からチラー31に第2熱媒体が送られる際、膨張弁34は、第2熱媒体を膨張させて第2熱媒体の温度を低下させることが可能となっている。圧縮機33及び膨張弁34は、ECU140に接続され、ECU140により制御される。
【0022】
次に、ECU140について説明する。ECU140は、CPUなどのプロセッサ、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの記憶装置等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。このECU140は、各種情報を取得可能に構成されている。
【0023】
また、図1に示すように、ECU140は、流路決定部141としての機能や、温度予測部142としての機能、判定部143としての機能、流路制御部144としての機能など、各種機能を備える。ECU140は、取得した各種情報に基づき、これらの各種機能を実行する。これらの機能は、ECU140が備える記憶装置(記憶用メモリ)に記憶されたプログラムがプロセッサにより実行されることで、各種機能が実現される。このプログラムが、本発明に係るプログラムに相当する。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。また、ECU140は、1つのハードウェアで構成される必要はなく、複数のハードウェアにより構成し、互いに協働して各種機能を実現してもよい。
【0024】
以下、ECU140が備える各種機能について説明する。
【0025】
流路決定部141は、第1循環回路11の流路を決定する機能である。例えば、流路決定部141は、第3流路切替状態であるとき、第2流路11bを流れる第1熱媒体の温度が、第2流路11bにおいて流れる第1熱媒体の温度として許容される第2許容温度の範囲外である場合、第2流路11bに切り替える(第3流路11cから第2流路11bに変更する)ことを決定する。例えば、流路決定部141は、第2流路11bを流れる第1熱媒体の温度が、第2許容温度の上限値よりも高い場合又は下限値よりも低い場合、第2流路11bに切り替えることを決定する。ここで、第2流路11bを流れる第1熱媒体の温度は、第2水温センサSE2によって検出され、ECU140に入力されるようになっている。第2水温センサSE2は、第2流路11bにおいて、切替弁18と、蓄電池12との間に設定されているが、第2流路11bであれば、その位置を任意に変更してもよい。
【0026】
同様に、流路決定部141は、第2流路切替状態であるとき、第3流路11cを流れる第1熱媒体の温度が、第3流路11cにおいて流れる第1熱媒体の温度として許容される第3許容温度の上限値よりも高い場合又は下限値よりも低い場合、第3流路11cに切り替える(第2流路11bから第3流路11cに変更する)ことを決定する。ここで、第3流路11cを流れる第1熱媒体の温度は、第3水温センサSE3によって検出され、ECU140に入力されるようになっている。第3水温センサSE3は、第3流路11cにおいて、切替弁18と、ラジエータ16との間に設定されているが、第3流路11cであれば、その位置を任意に変更してもよい。
【0027】
本実施形態において、第2許容温度の範囲及び第3許容温度の範囲は、それぞれ予め決められているが、変更可能に構成してもよい。例えば、車両の状況や、コンポーネントの状況により、第2許容温度の範囲及び第3許容温度の範囲を変更してもよい。
【0028】
ところで、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度と、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度との間に大きな温度差が生じている場合、流路11b,11cを切り替えると、第1流路11aに流れる第1熱媒体の温度が急上昇又は急低下する可能性がある。急激に変化してもヒートポンプ130の性能を超えなければ問題はないが、性能を超えてしまうと、水冷コンデンサ32の側に影響を与え、結果として、第2循環回路21における第3熱媒体の温度を所望の値に制御できなくなる可能性が生じる。その結果、カーエアコンのヒータコア22に影響を与え、車内を十分に温められない、若しくは、車内を十分冷却できない可能性が生じる。そこで、本実施形態では、流路決定部141によって第1循環回路11における流路11b、11cの変更が決定された場合、第1熱媒体の温度がどのように変化するか予測し、予測結果に基づいて流路を変更する、若しくは変更しないようにしている。以下、そのための各種機能について説明する。
【0029】
温度予測部142は、流路決定部141によって第1循環回路11における流路11b、11cの変更が決定された際、その流路11b、11cの変更によってチラー31に流入する第1熱媒体の温度変化量を予測する。ここで、チラー31に流入する第1熱媒体の温度は、第1水温センサSE1によって検出され、ECU140に入力されるようになっている。第1水温センサSE1は、第1流路11aにおいて、切替弁18と、チラー31の間に設定されている。
【0030】
温度変化量の予測について詳しく説明する。温度予測部142は、流路決定部141により、流路11b,11cの変更が決定された場合、温度変化量dT1/dtを、次の(式1)により算出する。また、温度変化量dT2/dtを、次の(式2)により算出する。また、温度変化量dT3/dtを、次の(式3)により算出する。また、温度変化量dT4/dtを、次の(式4)により算出する。
【数1】
【0031】
ここで、(式1)、(式2)、(式3)、(式4)が、温度変化量を予測するための温度予測モデルとなる。これらの温度予測モデルは、ECU140の記憶部に予め記憶されている。
【0032】
また、第1水温センサSE1によって検出される第1熱媒体の温度が「T1」であり、第2水温センサSE2によって検出される第1熱媒体の温度が「T2」であり、第3水温センサSE3によって検出される第1熱媒体の温度が「T3」であり、第4水温センサSE4によって検出される第3熱媒体の温度が「T4」である。それぞれ媒体温度T1~T4と示す。検出された媒体温度T1~T4は、ECU140の記憶部に記憶される。本実施形態の第4水温センサSE4は、第2循環回路21の流路21aにおいて、水冷コンデンサ32の下流側であって、水冷コンデンサ32とヒータコア22の間に配置されているが、任意にその位置を変更してもよい。
【0033】
第1水温センサSE1によって検出される第1熱媒体の温度変化量が、「dT1/dt」であり、第2水温センサSE2によって検出される第1熱媒体の温度変化量が、「dT2/dt」であり、第3水温センサSE3によって検出される第1熱媒体の温度変化量が、「dT3/dt」であり、第4水温センサSE4によって検出される第3熱媒体の温度変化量が、「dT4/dt」である。それぞれ温度変化量dT1/dt~dT4/dtと示す。なお、各温度変化量dT1/dt~dT4/dtは、予測値であり、実測値ではない。
【0034】
また、第1流路11aにおける熱容量が「C1」であり、第2流路11bにおける熱容量が「C2」であり、第3流路11cにおける熱容量が「C3」であり、第2循環回路における流路21aにおける熱容量が「C4」である。それぞれ熱容量C1~C4と示す。各熱容量C1~C4は、実験やシミュレーションなどにより測定され、ECU140の記憶部に記憶されている。
【0035】
また、第1熱媒体とチラー31との間における熱交換量は「Qh1」であり、第3熱媒体と水冷コンデンサ32との間における熱交換量は「Qh2」である。第1熱媒体と蓄電池12との間における熱交換量が「Qbat」であり、第1熱媒体と電池用ヒータ13との間における熱交換量が「Qbh」である。第1熱媒体とインバータ14との間における熱交換量が「Qinv」であり、第1熱媒体とモータ15との間における熱交換量が「Qmg」であり、第1熱媒体とラジエータ16との間における熱交換量が「Qrd」である。第3熱媒体とヒータコア22との間における熱交換量が「Qhc」である。それぞれ熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcと示す。
【0036】
また、流路11b,11cが変更された際、第1流路11aにおいて、変更先となる第2流路11b(又は第3流路11c)との間における熱交換量を「Q1」と示す。流路11b,11cが変更された際、第2流路11bにおいて、第1流路11aとの間における熱交換量を「Q2」と示す。流路11b,11cが変更された際、第3流路11cにおいて、第1流路11aとの間における熱交換量を「Q3」と示す。それぞれ熱交換量Q1,Q2,Q3と示す。
【0037】
熱交換量Q1,Q2,Q3は、どのように流路を変更するかによって、算出方法が異なる。ここで、熱交換量Q1,Q2,Q3の算出方法について説明する。流路決定部141により第3流路11cから第2流路11bに変更することが決定された場合、温度予測部142は、熱交換量Q1,Q2,Q3をそれぞれ(式5)、(式6),(式7)から算出する。ここで、第1流路11aを流れる第1熱媒体の流量を「V」と示す。以下、単に流量Vと示す。流量Vは、第1ポンプ17の制御量や電流量などから推測可能となっている。なお、流量Vを測定する流量センサを設け、流量センサから流量を取得してもよい。また、調整係数をK1~K3と示す。これらの(式5)、(式6),(式7)が、第3流路11cから第2流路11bに変更する場合における熱交換量Q1,Q2,Q3の予測モデル(熱交換量予測モデル)である。
【数2】
【0038】
一方、流路決定部141により第2流路11bから第3流路11cに変更することが決定された場合、温度予測部142は、熱交換量Q1,Q2,Q3をそれぞれ(式8)、(式9),(式10)から算出する。これらの(式8)、(式9),(式10)が、第2流路11bから第3流路11cに変更する場合における熱交換量Q1,Q2,Q3の予測モデル(熱交換量予測モデル)である。
【数3】
【0039】
また、熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcについて補足する。各熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcは、熱媒体と冷却対象又は加熱対象となるコンポーネントの発熱量又は吸熱量により変化する。そこで、温度予測部142は、まず、コンポーネントの状態及びコンポーネントの動作を制御する制御値のうち少なくともいずれかに基づいてコンポーネントの発熱量又は吸熱量を予測する。そして、温度予測部142は、予測された各コンポーネントの発熱量又は吸熱量に基づいて熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcを予測するようにしている。なお、コンポーネントの状態の代わりに、コンポーネントの状態に相関する値を取得してもよく、コンポーネントの動作を制御する制御値の代わりに、コンポーネントの動作を制御する制御値に相関する値を取得してもよい。
【0040】
詳しく説明すると、温度予測部142は、チラー31を通過する第2熱媒体の温度及び流量に相関する値をECU140から取得する。そして、温度予測部142は、取得した値を熱交換量Qh1の予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体とチラー31との間における熱交換量Qh1を予測する。
【0041】
なお、ECU140は、チラー31を制御する際、第2熱媒体の温度を測定し、測定された第2熱媒体の温度が目標温度となるように、膨張弁34の開度を制御することにより、チラー31を通過する第2熱媒体の流量を制御する。温度予測部142は、測定された第2熱媒体の温度を、チラー31を通過する第2熱媒体の温度に相関する値として取得する。また、温度予測部142は、膨張弁34の開度を制御するための制御値を、チラー31を通過する第2熱媒体の流量に相関する値であるとして取得する。
【0042】
同様に、温度予測部142は、水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の温度及び流量に相関する値をECU140から取得する。そして、温度予測部142は、取得した値を熱交換量Qh2の予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体と水冷コンデンサ32との間における熱交換量Qh2を予測する。
【0043】
なお、ECU140は、水冷コンデンサ32を制御する際、第2熱媒体の温度を測定し、測定された第2熱媒体の温度が目標温度となるように、圧縮機33による吐出圧力などを制御することにより、水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の流量を制御する。温度予測部142は、測定された第2熱媒体の温度を、水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の温度に相関する値として取得する。また、温度予測部142は、圧縮機33の吐出圧力を制御するための制御値を、水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の流量に相関する値であるとして取得する。
【0044】
同様に、温度予測部142は、蓄電池12の状態に相関する値を示す蓄電池12の充放電量をECU140から取得する。そして、温度予測部142は、熱交換量Qbatの予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体と蓄電池12との間における熱交換量Qbatを予測する。蓄電池12の充放電量は、電流センサから取得すればよい。
【0045】
また、温度予測部142は、電池用ヒータ13の状態として、電池用ヒータ13の温度を取得する。そして、温度予測部142は、取得した値を熱交換量Qbhの予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体と電池用ヒータ13との間における熱交換量Qbhを予測する。電池用ヒータ13の温度は、電池用ヒータ13の温度を測定する温度センサがあれば、温度センサから取得すればよい。また、電池用ヒータ13を制御する制御装置(ECU140など)、又は電池用ヒータ13から電池用ヒータ13の温度(現在温度又は目標温度)を取得してもよい。この場合、電池用ヒータ13の温度を制御するための値(制御値)を取得し、制御値に基づいて熱交換量Qbhを予測することとなる。
【0046】
また、温度予測部142は、インバータ14の動作を制御する制御値を取得し、取得した制御値を熱交換量Qinvの予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体とインバータ14との間における熱交換量Qinvを予測する。インバータ14の動作を制御する制御値は、例えば、インバータ14への入力電圧や、入力電流量、動作周期(インバータ14を構成するスイッチの切り替え周期)のいずれか、又は全てであってもよい。
【0047】
同様に、温度予測部142は、モータ15の動作を制御する制御値を取得し、取得した制御値を熱交換量Qmgの予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体とモータ15との間における熱交換量Qmgを予測する。モータ15の動作を制御する制御値とは、モータ15の回転速度や、出力トルク、モータ15への入力電圧、入力電流量のいずれか、又はそれらの組み合わせ、又は全てであってもよい。
【0048】
同様に、温度予測部142は、ラジエータ16の温度を熱交換量Qrdの予測モデル(熱交換量予測モデル)に入力し、第1熱媒体とラジエータ16との間における熱交換量Qrdを予測する。ラジエータ16の温度は、ラジエータ16の温度を測定する温度センサなどから取得すればよい。
【0049】
次に、判定部143について説明する。判定部143は、温度予測部142の予測結果に基づいて、流路の変更を許可するか否かを判定するものである。より詳しくは、判定部143は、第3熱媒体の目標温度と現在温度の差、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、流路の変更を許可する。以下、具体的に説明する。
【0050】
本実施形態の判定部143は、予測結果を評価関数モデルに入力し、評価関数モデルを利用したモデル予測制御(最適予測制御)を行い、その結果、流路の変更を許可するか否かを判定する。モデル予測制御とは、各時刻で未来の応答を予測しながら最適化を行う制御手法である。評価関数モデルΦは、次の(式11)に示す。なお、Φthは、温度に関する評価項で、(式12)に示すものであり、Φthvarは、温度変化に関する評価項で、(式13)に示すものである。
【数4】
【0051】
ここで、「T4a」は、第3熱媒体の目標温度であり、ECU140により設定される。判定部143は、ECU140からECU140から第3熱媒体の目標温度T4aを取得する。また、「L1min」は、第1循環回路11における第1熱媒体の温度変化量の許容範囲の下限値を示す値であり、「L1max」は、第1循環回路11における第1熱媒体の温度変化量の許容範囲の上限値を示す値である。これらの値は、第1循環回路11における流路の構成(容量など)、各コンポーネントの規格などにより予め定められている。同様に、「L2min」は、第2循環回路21における第3熱媒体の温度変化量の許容範囲の下限値を示す値であり、「L2max」は、第2循環回路21における第3熱媒体の温度変化量の許容範囲の上限値を示す値である。これらの値は、第2循環回路21における流路の構成(容量など)、各コンポーネントの規格などにより予め定められている。
【0052】
(式13)で使用されている関数f(X,Xmin,Xmax)を、(式14)に示す。Xの値により、使用される数式が場合分けされている。この(式14)を図2に示す。
【0053】
図2に示すように、関数fに入力されるXの値(引数)が所定範囲内(X1<X<X2)である場合、出力値(戻り値)がゼロ又はそれに近い値が出力される。また、関数fに入力されるXの値が、許容範囲内(Xmin<X<Xmax)であっても、上限値又は下限値に近くなるほど、出力値が指数関数的に大きくなっていく。また、許容範囲外(X<X1,X2<X)の場合、上限値又は下限値に近くなるほど、ゼロに近くなり、上限値又は下限値から遠ざかるほど、出力値が指数関数的に大きくなっていく。
【0054】
以上により、(式12)によれば、第3熱媒体の温度と目標温度との差が小さいほど、Φthの値が小さくなる。つまり、(式12)によれば、第3熱媒体の温度と目標温度との差が所定範囲内であれば、Φthの値は、十分小さくなる。また、(式13)及び(式14)によれば、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが、それぞれ所定範囲内であれば、Φthvarの値が十分小さくなる。
【0055】
そして、判定部143は、評価関数モデルΦの出力値(戻り値)が、所定の閾値以下(例えば、1以下)である場合、流路11b、11cの変更(切り替え)を許可する。一方、判定部143は、評価関数モデルΦの出力値が、所定の閾値よりも大きい場合、流路11b、11cの変更を許可しない。
【0056】
流路制御部144は、判定部143により流路11b、11cの変更が許可された場合、流路決定部141の決定に従って、流路11b、11cを変更すべく、切替弁18を制御する。
【0057】
次に、流路制御に関する流路制御処理について図3を参照して説明する。流路制御処理は、所定のタイミングで、ECU140により実行される。例えば、所定周期ごとに流路制御処理を実行してもよい。流路制御処理が実行されることにより、本実施形態における温度制御方法が実現されることとなる。
【0058】
流路制御処理を実行すると、ECU140は、流路決定部141としての機能を実施し、第1循環回路11の流路11b,11cを変更するか否かを決定する(ステップS101)。つまり、ECU140は、第3流路切替状態であるとき、媒体温度T2が、第2許容温度の範囲外である場合、第3流路11cから第2流路11bに変更することを決定し、第2許容温度の範囲内である場合には、変更しないことを決定する。一方、ECU140は、第2流路切替状態であるとき、媒体温度T3が、第3許容温度の範囲外である場合、第2流路11bから第3流路11cに変更することを決定し、第3許容温度の範囲内である場合には、変更しないことを決定する。
【0059】
ステップS101の判定結果が否定の場合(変更しないことを決定した場合)、ECU140は、流路制御処理を終了する。ステップS101の判定結果が肯定の場合(変更することを決定した場合)、ECU140は、温度予測部142としての機能を実施し、各コンポーネントの状態や制御値などを取得し(ステップS102)、各熱交換量Q1,Q2,Q3,Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcを算出する(ステップS103)。そして、ECU140は、温度変化量dT1/dt~dT4/dtを算出する(ステップS104)。算出方法は、前述したとおりである。本実施形態では、ステップS104が、温度予測ステップに相当する。
【0060】
その後、ECU140は、判定部143としての機能を実施し、温度予測部142の予測結果に基づいて、流路11b,11cの変更を許可するか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、前述したようにECU140は、評価関数モデルΦの出力値が、所定の閾値以下(例えば、1以下)である場合、流路11b,11cの変更を許可する。一方、判定部143は、評価関数モデルΦの出力値が、所定の閾値よりも大きい場合、流路11b,11cの変更を許可しない。
【0061】
この判定結果が否定の場合(流路11b,11cの変更を許可しない場合)、ECU140は、流路制御処理を終了する。ステップS105の判定結果が肯定の場合(流路11b,11cの変更を許可した場合)、ECU140は、流路制御部144としての機能を実施し、流路決定部141の決定に従って、流路11b、11cを切り替えるべく、切替弁18を制御する(ステップS106)。つまり、ECU140は、第3流路切替状態であるとき、第3流路11cから第2流路11bに変更するように切替弁18を制御する。一方、ECU140は、第2流路切替状態であるとき、第2流路11bから第3流路11cに変更するように切替弁18を制御する。そして、流路制御処理を終了する。本実施形態では、ステップS106が、流路制御ステップに相当する。
【0062】
以上のように構成したことにより、本実施形態では、以下の優れた効果を有する。
【0063】
ECU140は、温度予測部142の予測結果に基づいて、流路11b,11cを変更するか否かを判定し、変更すると許可された場合、流路11b,11cの変更制御を実施する。このため、流路11b,11cの変更に伴う、第1熱媒体の急激な温度変化を防止することができる。よって、ヒートポンプ130や、第2循環回路21の側における温度調整に悪影響が生じることを防止できる。
【0064】
温度予測部142としてのECU140は、流路11b,11cの変更前におけるチラー31の流入口における第1熱媒体の温度(媒体温度T1)と、変更によってチラー31に接続される予定の流路11b、11cの流出口における第1熱媒体の温度(媒体温度T2,T3)とを取得して、温度予測モデルに入力することにより、第1熱媒体の温度変化量dT1/dtを予測する。詳しく説明すると、ECU140は、第3流路11cから第2流路11bに変更することが決定された場合、媒体温度T1と、媒体温度T2を(式5)に入力して、熱交換量Q1を算出し、熱交換量Q1を、(式1)に入力して、温度変化量dT1/dtを予測(算出)する。これにより、流路11b,11cの変更による影響を考慮して、温度変化量dT1/dtを適切に予測することができる。
【0065】
また、温度予測部142としてのECU140は、各コンポーネントからの発熱量又は吸熱量を予測し、予測した発熱量又は吸熱量を温度予測モデルに入力し、温度変化量dT1/dtを予測(算出)する。詳しくは、ECU140は、第1熱媒体とチラー31との間における熱交換量Qh1を予測し、熱交換量Qh1を、(式1)に入力して、温度変化量dT1/dtを予測(算出)する。これにより、コンポーネントの影響を考慮して、温度変化量dT1/dtを適切に予測することができる。
【0066】
また、温度予測部142としてのECU140は、コンポーネントの状態に相関する値及びコンポーネントの動作を制御する制御値に相関する値のうち少なくともいずれかに基づいてコンポーネントからの発熱量又は吸熱量を予測する。本実施形態においては、ECU140は、測定された第2熱媒体の温度を、チラー31の状態に相関する値として取得する。また、ECU140は、膨張弁34の開度を制御するための制御値を、チラー31の動作に相関する値であるとして取得する。これにより、チラー31の吸熱量を適切に予測し、温度変化量dT1/dtを適切に予測することができる。
【0067】
ECU140は、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtに基づいて、流路11b,11cの変更を許可するか否かを判定する判定部143としての機能を備える。このため、第3熱媒体の温度変化量dT4/dtを考慮して、流路11b,11cの変更を許可することができ、第2循環回路21の側への悪影響を抑えることができる。
【0068】
より詳しくは、ECU140は、第3熱媒体の目標温度T4aと現在の媒体温度T4を取得し、それらの差、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、流路11b、11cの変更を許可する。目標温度T4aと媒体温度T4との差が小さい場合、流路11b,11cの変更を許可することができ、目標温度T4aを維持することができる。
【0069】
(第2実施形態)
第1実施形態の温度調節システム100の構成を一部変更した第2実施形態について説明する。第1実施形態において、ステップS105の判定結果が否定の場合(流路11b,11cの変更を許可しない場合)、ECU140は、流路制御処理を終了していたが、このままでは、いつまでも流路11b,11cの変更が許可されない可能性がある。そこで、ECU140は、コンポーネントの動作を制御する制御値を指示する指示部145としての機能を備え、ステップS105の判定結果が否定の場合、次に示す指示処理を実行する。以下、詳しく説明する。
【0070】
まず、指示部145としての機能について説明する。図4に示すように、ECU140は、指示部145としての機能を備える。指示部145は、各コンポーネントに対して動作を制御する制御値を出力して、動作を制御することができる。例えば、指示部145は、ヒートポンプ130の膨張弁34の開度を指示する制御値を出力することにより、チラー31に流入する第2熱媒体の温度及び流量を制御することができる。つまり、第1熱媒体に対するチラー31の発熱量や吸熱量を制御することができる。
【0071】
同様に、指示部145は、ヒートポンプ130の圧縮機33の吐出圧力を指示する制御値を出力することにより、水冷コンデンサ32に流入する第2熱媒体の温度及び流量を制御することができる。つまり、第3熱媒体に対する水冷コンデンサ32の発熱量や吸熱量を制御することができる。また、指示部145は、電池用ヒータ13の温度を指示する制御値を出力することにより、電池用ヒータ13の温度を制御することができる。つまり、第1熱媒体に対する電池用ヒータ13の発熱量を制御することができる。
【0072】
また、指示部145は、モータ15の回転速度又は出力トルク(回生トルク)を指示する制御値を出力することにより、モータ15や、モータ15を駆動させるインバータ14、並びにモータ15に電力を供給する蓄電池12の充放電量などを制御することができる。つまり、第1熱媒体に対するモータ15の発熱量や、インバータ14の発熱量、蓄電池12の発熱量などを制御することができる。
【0073】
次に、図5を参照して、指示処理について説明する。指示処理は、ステップS105の判定結果が否定の場合(流路11b,11cの変更を許可しない場合)、ECU140により実行される。
【0074】
まず、ECU140は、第3流路切替状態であるか否かを判定する(ステップS201)。すなわち、流路決定部141により、第3流路11cから第2流路11bへの変更が決定されたにもかかわらず、判定部143により変更が許可されなかったか否かを判定する。
【0075】
この判定結果が肯定の場合、指示部145としてのECU140は、温度変化量dT1/dtが小さくなるように、蓄電池12の発熱量及び電池用ヒータ13の発熱量のうち少なくともいずれか一方を減少又は増加させるように制御値を出力する(ステップS202)。例えば、媒体温度T2が高いために流路変更が許可されなかった場合、ECU140は、電池用ヒータ13の発熱量を抑えるように、電池用ヒータ13の温度を指示する制御値を出力する。それとともに、又はそれに代えて、ECU140は、蓄電池12の発熱量を抑えるため、蓄電池12の充放電量を下げるように、モータ15の回転速度又は出力トルク(回生トルク)を指示する制御値を出力する。なお、モータ15以外の電気負荷が蓄電池12に接続されている場合、ECU140は、当該電気負荷の動作(消費電力)を抑制する制御値を出力してもよい。
【0076】
つまり、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度が第2許容温度の上限値よりも高いことから、流路11b,11cの変更が決定されたにもかかわらず、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度が高すぎることから、変更が許可されなかった場合、ECU140は、ステップS202において、蓄電池12の発熱量及び電池用ヒータ13の発熱量のうち少なくともいずれかを抑制して、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度を下げるようにしている。これにより、温度変化量dT1/dtを小さくすることができ、変更が許可されやすくなる。
【0077】
一方、媒体温度T2が低いために流路変更が許可されなかった場合、ECU140は、電池用ヒータ13の発熱量を増加させるように、電池用ヒータ13の温度を指示する制御値を出力する。それとともに、又はそれに代えて、ECU140は、蓄電池12の発熱量を増加させるため、蓄電池12の充放電量を上げるように、モータ15の回転速度又は出力トルク(回生トルク)を指示する制御値を出力する。なお、モータ15以外の電気負荷が蓄電池12に接続されている場合、ECU140は、当該電気負荷の動作(消費電力)を増加させる制御値を出力してもよい。
【0078】
つまり、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度が第2許容温度の下限値よりも低いことから、流路11b,11cの変更が決定されたにもかかわらず、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度が低すぎることから、変更が許可されなかった場合、ECU140は、ステップS202において、蓄電池12の発熱量及び電池用ヒータ13の発熱量のうち少なくともいずれかを増加させて、第2流路11bにおける第1熱媒体の温度を上げるようにしている。これにより、温度変化量dT1/dtを小さくすることができ、変更が許可されやすくなる。
【0079】
一方、ステップS201の判定結果が否定の場合、指示部145としてのECU140は、モータ15の発熱量及びインバータ14の発熱量のうち少なくともいずれか一方を増減させるように制御値を出力する(ステップS203)。すなわち、流路決定部141により、第2流路11bから第3流路11cへの変更が決定されたにもかかわらず、判定部143により切り替えが許可されなかった場合、モータ15の発熱量及びインバータ14の発熱量のうち少なくともいずれか一方を減少又は増加させるように制御値を出力する。
【0080】
例えば、媒体温度T3が高いために流路変更が許可されなかった場合、ECU140は、ECU140は、モータ15やインバータ14の発熱量を抑えるように、モータ15の回転速度又は出力トルク(回生トルク)を指示する制御値を出力する。
【0081】
つまり、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度が第3許容温度の上限値よりも高いことから、流路11b,11cの変更が決定されたにもかかわらず、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度が高すぎることから、変更が許可されなかった場合、ECU140は、ステップS203において、モータ15の発熱量及びインバータ14の発熱量を抑制して、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度を下げるようにしている。これにより、温度変化量dT1/dtを小さくすることができ、変更が許可されやすくなる。
【0082】
一方、媒体温度T3が低いために流路変更が許可されなかった場合、ECU140は、ECU140は、モータ15やインバータ14の発熱量を増加させるように、モータ15の回転速度又は出力トルク(回生トルク)を指示する制御値を出力する。
【0083】
つまり、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度が第3許容温度の下限値よりも低いことから、流路11b,11cの変更が決定されたにもかかわらず、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度が低すぎることから、変更が許可されなかった場合、ECU140は、ステップS203において、モータ15の発熱量及びインバータ14の発熱量を増加させて、第3流路11cにおける第1熱媒体の温度を上げるようにしている。これにより、温度変化量dT1/dtを小さくすることができ、変更が許可されやすくなる。
【0084】
ステップS202又はステップS203の処理後、ECU140は、指示処理を終了する。なお、第3熱媒体の現在温度と目標温度との差が大きい場合や、第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが大きい場合も、流路11b,11cの変更が許可されない。しかしながら、ヒートポンプ130が正常に制御されているのであれば、時間経過とともに、第3熱媒体の現在温度は目標温度に近づき、第3熱媒体の温度変化量dT4/dtも小さくなるはずであるため、特別な制御は行っていない。つまり、一般的な制御を行って、時間経過を待つこととなる。
【0085】
上記第2実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0086】
ECU140は、流路11b,11cの変更を許可しないと判定された場合、温度変化量dT1/dtが所定範囲内に近づくように、つまり、小さくなるように、モータ15などのコンポーネントの動作を制御する制御値を出力する指示部145を備える。これにより、第1熱媒体の急激な温度変化が予測される場合、コンポーネントの動作を制御して、発熱量を調整し、温度変化量dT1/dtが所定範囲内に近づくようにすることができる。このため、第1熱媒体の急激な温度変化を防止しつつ、流路11b,11cを変更することが可能となる。
【0087】
(第3実施形態)
第1実施形態の温度調節システム100の構成を一部変更した第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図6に示すように、流路が合流する合流部分には、切替弁18の代わりに、流量調整弁50が設けられている。流量調整弁50は、第2流路11bから第1流路11aに流入する流量と、第3流路11cから第1流路11aに流入する流量との割合を調整する弁である。流量調整弁50は、ECU140により制御される。
【0088】
この変更に伴い、流路決定部141は、流量調整弁50による流量割合の変更を決定する機能となっている。具体的には、流路決定部141は、第2流路11bを流れる第1熱媒体の媒体温度T2が、第2許容温度の上限値よりも高い場合、第2流路11bに流れる第1熱媒体の流量を増やすように、流量調整弁50による流量割合の変更を決定する。一方、流路決定部141は、第3流路11cを流れる第1熱媒体の媒体温度T4が、第3許容温度の上限値よりも高い場合、第3流路11cに流れる第1熱媒体の流量を増やすように、流量調整弁50による流量割合の変更を決定する。一方、流路決定部141は、媒体温度T2が第2許容温度の上限値より低く、かつ、媒体温度T3が第3許容温度の上限値よりも低い場合、流量調整弁50による流量割合を変更しないことを決定する。
【0089】
また、流路決定部141は、流路割合の変更を決定した場合、変更後の流量割合を決定する。その際、どのように流量割合を変更するのかは、任意に設定してよい。例えば、所定割合だけ増減するように変更してもよいし、第2許容温度(又は第3許容温度)との温度差に応じた割合だけ増減するように変更してもよい。つまり、第2許容温度(又は第3許容温度)との温度差が大きい場合には、大きく変更するように流量割合を変更してもよい。
【0090】
また、上記変更に伴い、温度予測部142は、熱交換量Q1,Q2,Q3をそれぞれ(式15)、(式16),(式17)から算出することとなる。ここで、第2流路11bを流れる第1熱媒体の流量を「V2」と示し、第3流路11cを流れる第1熱媒体の流量を「V3」と示す。流量V2+流量V3が、第1流路11aを流れる第1熱媒体の流量Vと一致する。なお、流量Vと、流路決定部141により決定された流量調整弁50による流量割合によって、流量V2と流量V3を算出することもできる。各流量V2,V3は、流量割合の変更後の流量である。
【数5】
【0091】
第3実施形態の流路制御処理について図7を参照して説明する。流路制御処理は、所定のタイミングで、ECU140により実行される。例えば、所定周期ごとに流路制御処理を実行してもよい。
【0092】
流路制御処理を実行すると、ECU140は、流路決定部141としての機能を実施し、流量割合を変更するか否かを決定する(ステップS301)。ステップS301の判定結果が否定の場合(変更しないことを決定した場合)、ECU140は、流路制御処理を終了する。
【0093】
ステップS301の判定結果が肯定の場合(変更することを決定した場合)、ECU140は、流量割合をどのように変更するか決定する(ステップS302)。そして、ECU140は、温度予測部142としての機能を実施し、各コンポーネントの状態や制御値などを取得し(ステップS303)、各熱交換量Q1,Q2,Q3,Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcを算出する(ステップS304)。なお、各熱交換量Q1,Q2,Q3の算出方法は、前述したとおりであり、それ以外の熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcの算出方法は、第1実施形態と同様である。そして、ECU140は、温度変化量dT1/dt~dT4/dtを算出する(ステップS305)。算出方法は、第1実施形態と同様である。
【0094】
その後、ECU140は、判定部143としての機能を実施し、温度予測部142の予測結果に基づいて、流量割合の変更を許可するか否かを判定する(ステップS306)。すなわち、前述したようにECU140は、評価関数モデルΦの出力値が、所定の閾値以下(例えば、1以下)である場合、流路割合の変更を許可する。一方、判定部143は、評価関数モデルΦの出力値が、所定の閾値よりも大きい場合、流路割合の変更を許可しない。
【0095】
ステップS306の判定結果が肯定の場合(流路割合の変更を許可した場合)、ECU140は、流路制御部144としての機能を実施し、流路決定部141の決定に従って、流路割合を変更すべく、流量調整弁50を制御する(ステップS307)。そして、流路制御処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS306の判定結果が否定の場合(流路割合の変更を許可しない場合)、ECU140は、流路割合を再設定する(ステップS308)。ステップS308においては、前回設定された流路割合の変更幅に比較して変更幅が小さくなるように変更後の流路割合を再設定する。例えば、ステップS302において、流路割合を30%から70%に変更すると設定されていた場合、ステップS306においては、流路割合を30%から50%に変更すると再設定する。その後、ECU140は、ステップS303以降の処理を再び実行する。
【0097】
上記第3実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0098】
流路割合を変更することができるため、温度変化量dT1/dtが所定範囲内とすることができる。また、各コンポーネントの状態や、各流路における第1熱媒体の温度(媒体温度T1~T3)に応じて、細かく流量を調節することができる。
【0099】
また、温度変化量dT1/dtが所定範囲内でない場合、流路決定部141としてのECU140は、ステップS306において、流量割合を再設定する。このため、温度変化量dT1/dtが所定範囲内となるように、流量割合を適切に設定することができる。
【0100】
(第4実施形態)
第1実施形態の温度調節システム100の構成を一部変更した第4実施形態について説明する。上記実施形態において、判定部143としてのECU140は、第3熱媒体の目標温度T4aと現在の媒体温度T4の差、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、流路11b、11cの変更(又は流量割合)を許可していた。第4実施形態では、これに加えて、ヒートポンプ130における第2熱媒体の状態を考慮して、流路11b、11cの変更(又は流量割合)を許可するかを決定している。
【0101】
詳しく説明する。ヒートポンプ130において利用する第2熱媒体として、例えば、炭酸ガスなどの冷媒ガス(気体)を利用する場合、流路11b,11cの変更に伴い、第2熱媒体の温度変化量が大きいと、第2熱媒体が気体から液体に状態変化してしまう可能性がある。そして、第2熱媒体の状態が変化してしまうと、それ以降、ヒートポンプ130において、第2熱媒体の温度及び圧力制御を適切に行うことができなくなってしまう可能性がある。
【0102】
そこで、第4実施形態では、図8に示すような流路制御処理を実行している。この流路制御処理は、前述同様、所定のタイミングで、ECU140により実行される。
【0103】
流路制御処理を実行すると、ECU140は、前述したステップS101と同様に、流路決定部141としての機能を実施し、第1循環回路11の流路11b,11cを切り替えるか否かを決定する(ステップS401)。
【0104】
ステップS401の判定結果が否定の場合(変更しないことを決定した場合)、ECU140は、流路制御処理を終了する。ステップS401の判定結果が肯定の場合(変更することを決定した場合)、ECU140は、ステップS102~ステップS104と同様に、温度予測部142としての機能を実施し、温度変化量dT1/dt~dT4/dtを算出する(ステップS402~ステップS404)。
【0105】
その後、ECU140は、判定部143としての機能を実施し、ステップS105と同様に、温度予測部142の予測結果に基づいて、流路11b,11cの変更を許可するか否かを判定する(ステップS405)。
【0106】
この判定結果が否定の場合、ECU140は、流路制御処理を終了する。ステップS405の判定結果が肯定の場合、ECU140は、チラー31を介して第1熱媒体に熱的に接続される第2熱媒体の状態を予測する(ステップS406)。具体的には、ECU140は、第1熱媒体の温度変化量dT1/dtと、流路変更前においてチラー31を通過する第2熱媒体の温度と、膨張弁34による開度を、第2熱媒体の状態を予測するための状態予測モデルに入力する。なお、膨張弁34による開度は、第2熱媒体の圧力又は流量に相関する制御値である。第2熱媒体の状態とは、例えば、冷媒湿度である。
【0107】
次に、ECU140は、予測された第2熱媒体の状態が適切か否かを判定する(ステップS407)。つまり、ECU140は、予測された第2熱媒体の状態が気体である場合には、肯定判定し、液体(一部液化を含む)である場合には、否定判定する。
【0108】
ステップS407の判定結果が否定の場合、ECU140は、流路11b、11cの変更を行わずに、流路制御処理を終了する。一方、ステップS407の判定結果が肯定の場合、ECU140は、ステップS106と同様に、流路制御部144としての機能を実施し、流路決定部141の決定に従って、流路11b、11cを切り替えるべく、切替弁18を制御する(ステップS408)。そして、流路制御処理を終了する。
【0109】
以上のように構成したことにより、第3実施形態では、以下の優れた効果を有する。
【0110】
ヒートポンプ130における第2熱媒体の状態も考慮して流路を変更することができ、ヒートポンプ130や第2循環回路21の側における温度調節に異常が生じることを防止できる。
(変形例)
上記各実施形態における温度調節システム100の構成の一部を変更した変形例について以下に示す。
【0111】
・上記実施形態において、Φthを算出する時、第3熱媒体の現在温度が目標温度以上である場合、Φthの値をゼロ、すなわち、現在温度と目標温度との間に差がない、としてもよい。なお、第3熱媒体の現在温度が目標温度以上である場合、ヒータコア22の温度が上昇してしまうこととなるが、一般的には、外気を混ぜることにより、エアコンの温度を調整することが可能となっている。このため、第3熱媒体の現在温度が目標温度以上である場合、現在温度と目標温度との間に差がない、としてもよい。
【0112】
・上記実施形態において、圧縮機33の動作を制御する制御値は、圧縮機33の回転数や電流量などであってもよい。
【0113】
・上記第4実施形態において、第2熱媒体の状態は、圧力値によって把握してもよい。
【0114】
・上記実施形態において、温度予測部142は、各流路11a~11cにおける第1熱媒体の温度や流路21aにおける第3熱媒体の温度を予測してもよい。その際、温度変化量dT1/dtが必要であれば、第1流路11aにおける第1熱媒体の予測温度と、媒体温度T1から算出すればよい。なお、温度変化量の代わりに予測温度を利用して、流路変更の許可を判定してもよい。
【0115】
・上記実施形態において、判定部143は、温度予測部142により予測された温度変化量(又は予測温度)が所定範囲内であるか否かに基づいて、流路11b,11cの変更を許可するか否かを判定してもよい。
【0116】
・上記実施形態において、判定部143は、評価関数モデルを利用しなくてもよい。単純に、判定部143は、第3熱媒体の目標温度と現在温度の差、第1熱媒体の温度変化量dT1/dt、及び第3熱媒体の温度変化量dT4/dtが、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、流路の変更を許可してもよい。
【0117】
・上記実施形態において、判定部143は、上記条件に加えて、温度変化量dT2/dtや温度変化量dT3/dtも、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、流路の変更を許可してもよい。
【0118】
・上記実施形態において、判定部143は、第3熱媒体の媒体温度T4と、目標温度T4aの差を考慮するため、評価関数モデルに入力していたが、媒体温度T4と、目標温度T4aの差を考慮しなくてもよい。同様に、判定部143は、第3熱媒体の温度変化量dT4/dtを考慮するため、評価関数モデルに入力していたが、温度変化量dT4/dtを考慮しなくてもよい。すなわち、判定部143は、温度変化量dT1/dtだけを考慮して、つまり、評価関数モデルに入力して流路11b,11cの変更を許可するか否かを判定してもよい。
【0119】
・上記実施形態において、第1循環回路11に配置されるコンポーネントの種類及び数は、任意に変更してもよい。また、第2流路11b及び第3流路11cに配置されるコンポーネントの種類及び数は、任意に変更してもよい。また、第2循環回路21に配置されるコンポーネントの種類及び数は、任意に変更してもよい。また、これらのコンポーネントの配置は任意に変更してもよい。
【0120】
・上記実施形態において、第1循環回路11の流路の分岐は、任意に変更してもよい。例えば、図9図10に示すような流路構成にしてもよい。図9では、高温回路部120において、流路が分岐しており、流量調整弁50により流量割合が変更可能に構成されている。図10では、流路11c,11d,11eが並列に接続され、切換弁18bにより、切り替え可能に構成され、第2流路11bに対して、流路11c,11d,11eの接続体が並列に接続され、切換弁18aにより、第1流路11aに対して切り替え可能に構成されている。図10において、各流路11a~11eにそれぞれ第1水温センサSE1~第5水温センサSE5が配置されている。なお、図9図10において、コンポ150は、コンポーネントのことであり、コンポーネントの種類及び数は任意に変更してもよい。
【0121】
・上記実施形態において、流路決定部141は、媒体温度T2と媒体温度T3の両方の温度を考慮して、いずれの流路11b、11cに変更するかを決定してもよい。例えば、媒体温度T2が第2許容温度よりも高い場合であって、かつ、媒体温度T3が第3許容温度よりも高い場合、第2許容温度の上限値と媒体温度T2との差、及び第3許容温度の上限値と媒体温度T3との差とを比較して、差が大きい方の流路11b,11cに変更することを決定してもよい。
【0122】
・上記実施形態において、流路11b、11cの変更が頻繁に実行されないように、流路決定部141は、流路11b、11cの変更を決定した場合、所定時間経過した後、流路11b、11cを変更するか否かを再び決定するようにしてもよい。
【0123】
・上記実施形態において、第2許容温度の上限値及び下限値は、第2流路11bに配置されているコンポーネントの状態や車両状態などにより変更してもよい。車両状態とは、例えば、外気温や車両温度である。具体的には、蓄電池12や車両の温度が低い場合、(冷間始動である場合)、蓄電池12の温度上昇を補助するように、第2許容温度の下限値を上げてもよい。第3許容温度の上限値及び下限値も同様に、第3流路11cに配置されているコンポーネントの状態や車両状態などにより変更してもよい。
【0124】
・上記実施形態において、温度予測モデルは、実験又はシミュレーションにより求められた数式であるが、実験又はシミュレーションによりマップを生成し、マップにより予測するようにしてもよい。あるいはディープラーニングによる学習を行い、推論モデルを構築し、当該推論モデルを温度予測モデルとしてもよい。
【0125】
同様に、熱交換量予測モデルは、実験又はシミュレーションにより求められた数式であってもよいし、実験又はシミュレーションにより生成されたマップにより予測するものであってもよい。あるいはディープラーニングによる学習を行い、推論モデルを構築し、当該推論モデルを熱交換量予測モデルとしてもよい。
【0126】
同様に、状態予測モデルは、実験又はシミュレーションにより求められた数式であってもよいし、実験又はシミュレーションにより生成されたマップにより予測するものであってもよい。あるいはディープラーニングによる学習を行い、推論モデルを構築し、当該推論モデルを状態予測モデルとしてもよい。
【0127】
・上記実施形態において、各コンポーネントの熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcは、予め決められた値であってもよい。
【0128】
・上記実施形態において、各コンポーネントの熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcは、熱媒体の流量や、熱媒体の温度、熱媒体と対象となるコンポーネントとの温度差、コンポーネントの発熱量(又は吸熱量)などにより変化する。このため、温度予測部142は、これらの変数を入力して、熱交換量Qh1,Qh2,Qbat,Qbh,Qinv,Qmg,Qrd,Qhcを予測してもよい。
【0129】
例えば、温度予測部142は、媒体温度T1と、チラー31を通過する第1熱媒体の流量と、チラー31を通過する第2熱媒体の温度及び流量を、熱交換量Qh1の熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体とチラー31との間における熱交換量Qh1を予測してもよい。なお、チラー31を通過する第1熱媒体の流量は、第1流路11aの流量Vに等しい。チラー31を通過する第2熱媒体の温度及び流量は、センサを設けて測定してもよいし、膨張弁34の制御量(開度など)から推測してもよい。また、熱交換量Qh1を予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。
【0130】
同様に、温度予測部142は、媒体温度T4と、水冷コンデンサ32を通過する第3熱媒体の流量と、水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の温度及び流量を、熱交換量Qh2の熱交換量予測モデルに入力し、第3熱媒体と水冷コンデンサ32との間における熱交換量Qh2を予測してもよい。水冷コンデンサ32を通過する第3熱媒体の流量は、流路21aを流れる第3熱媒体の流量に等しい。このため、流量Vと同様に、第2ポンプ23の制御量や電流量などから第3熱媒体の流量を推定すればよい。なお、第3熱媒体の流量を測定する流量センサを設け、流量センサから流量を取得してもよい。水冷コンデンサ32を通過する第2熱媒体の温度及び流量は、センサを設けて測定してもよいし、圧縮機33の制御量(目標温度など)から推測してもよい。また、熱交換量Qh2を予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。
【0131】
また、温度予測部142は、媒体温度T2、蓄電池12を通過する第1熱媒体の流量、蓄電池12の温度、及び蓄電池12を流れる電流量を、熱交換量Qbatの熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体と蓄電池12との間における熱交換量Qbatを予測してもよい。なお、第1流路11aと第2流路11bとが接続されている場合、蓄電池12を通過する第1熱媒体の流量は、流量Vに等しく、接続されていない場合、流量はゼロとなる。蓄電池12の温度及び電流量は、図示しない温度センサや電流センサから取得する。したがって、蓄電池12の状態(電池温度や電流量)によって発熱量が変更し、熱交換量Qbatも増減することとなる。具体的には、蓄電池12の電池温度や電流量から、発熱量が多いと推定される場合には、熱交換量Qbatも多くなりやすい。また、熱交換量Qbatを予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。蓄電池12を通過する第1熱媒体の温度を測定する温度センサを設け、当該温度センサから取得した温度を、媒体温度T2の代わりに採用してもよい。
【0132】
また、温度予測部142は、媒体温度T2、電池用ヒータ13を通過する第1熱媒体の流量、電池用ヒータ13の温度(又は制御量)を、熱交換量Qbhの熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体と電池用ヒータ13との間における熱交換量Qbhを予測してもよい。電池用ヒータ13を通過する第1熱媒体の流量は、蓄電池12を通過する第1熱媒体の流量と同じである。電池用ヒータ13の温度は、電池用ヒータ13の制御量(目標温度など)により推定される。したがって、電池用ヒータ13の制御量によって、熱交換量Qbhも増減することとなる。具体的には、電池用ヒータ13の制御量から、発熱量が多いと推定される場合には、熱交換量Qbhも多くなりやすい。なお、電池用ヒータ13の温度を測定するセンサを設けて、当該センサから電池用ヒータ13の温度を取得してもよい。また、熱交換量Qbhを予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。また、電池用ヒータ13を通過する第1熱媒体の温度を測定する温度センサを設け、当該温度センサから取得した温度を、媒体温度T2の代わりに採用してもよい。
【0133】
また、温度予測部142は、媒体温度T3、インバータ14を通過する第1熱媒体の流量、インバータ14の温度(又は制御量)を、熱交換量Qinvの熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体とインバータ14との間における熱交換量Qinvを予測してもよい。なお、第1流路11aと第3流路11cとが接続されている場合、インバータ14を通過する第1熱媒体の流量は、流量Vに等しく、接続されていない場合、流量はゼロとなる。インバータ14の温度は、インバータ14の温度を測定する温度センサ(図示略)から取得してもよいし、インバータ14の制御量などに基づいて推測してもよい。インバータ14の制御量とは、インバータ14への電流量や、インバータ14を構成するスイッチの切り替え周期などに相関する値である。また、熱交換量Qinvを予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。また、インバータ14を通過する第1熱媒体の温度を測定する温度センサを設け、当該温度センサから取得した温度を、媒体温度T3の代わりに採用してもよい。
【0134】
同様に、温度予測部142は、媒体温度T3、モータ15を通過する第1熱媒体の流量、モータ15の温度(又は制御量)を、熱交換量Qmgの熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体とモータ15との間における熱交換量Qmgを予測してもよい。モータ15を通過する第1熱媒体の流量は、インバータ14を通過する第1熱媒体の流量と同じである。モータ15の温度は、モータ15の温度を測定する温度センサ(図示略)から取得してもよいし、モータ15の制御量などに基づいて推定してもよい。モータ15の制御量とは、例えば、モータ15の回転速度や出力トルクなどの目標値のことである。モータ15の制御量に基づいてモータ15の温度を推定してもよい。なお、モータ15への電流量などに基づいてモータ15の温度を推定してもよい。モータ15の温度の代わりに、発熱量を採用してもよい。また、熱交換量Qmgを予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。また、モータ15を通過する第1熱媒体の温度を測定する温度センサを設け、当該温度センサから取得した温度を、媒体温度T3の代わりに採用してもよい。
【0135】
同様に、温度予測部142は、媒体温度T3、ラジエータ16を通過する第1熱媒体の流量、ラジエータ16の温度を、熱交換量Qrdの熱交換量予測モデルに入力し、第1熱媒体とラジエータ16との間における熱交換量Qrdを予測してもよい。ラジエータ16を通過する第1熱媒体の流量は、インバータ14を通過する第1熱媒体の流量と同じである。また、熱交換量Qrdを予測するための上記変数の種類及び数は任意に変更してもよい。また、ラジエータ16を通過する第1熱媒体の温度を測定する温度センサを設け、当該温度センサから取得した温度を、媒体温度T3の代わりに採用してもよい。
【0136】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0137】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
【0138】
[構成1]
第1熱媒体が循環する第1循環回路(11)であって、当該第1熱媒体の流路(11b、11c)を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器(31)と第2熱交換器(32)との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器(33,34)を有するヒートポンプ(130)と、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システム(100)の温度制御装置(140)において、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測部(142)と、
前記温度予測部の予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御部(144)と、を備えた温度制御装置。
【0139】
[構成2]
前記温度予測部は、前記流路の変更前における前記第1熱交換器の流入口における第1熱媒体の温度(T1)と、変更によって前記第1熱交換器に接続される予定の流路の流出口における第1熱媒体の温度(T2,T3)とを取得して、温度予測モデルに入力することにより、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する構成1に記載の温度制御装置。
【0140】
[構成3]
前記第1循環回路の各流路には、前記第1熱媒体の冷却対象又は加熱対象であるコンポーネント(12,13,14,15,16)が1又は複数配置され、
前記温度予測部は、それぞれの前記コンポーネントからの発熱量又は前記コンポーネントの吸熱量を予測し、予測した発熱量又は吸熱量を前記温度予測モデルに入力する構成1又は2に記載の温度制御装置。
【0141】
[構成4]
前記コンポーネントからの発熱量又は吸熱量は、前記コンポーネントの状態に相関する値及び前記コンポーネントの動作を制御する制御値に相関する値のうち少なくともいずれかに基づいて予測される構成3に記載の温度制御装置。
【0142】
[構成5]
前記温度予測部により予測された予測温度又は温度変化量が所定範囲内であるか否かに基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部(143)を備え、
前記流路制御部は、前記判定部の判定結果が肯定の場合、前記流路の変更制御を実施する、構成1~4のうちいずれかに記載の温度制御装置。
【0143】
[構成6]
前記循環回路の各流路には、前記第1熱媒体の冷却対象又は加熱対象であるコンポーネントが配置され、
前記判定部は、予測温度又は温度変化量が所定範囲外である場合には、前記流路の変更を許可しないと判定し、
前記判定部によって、前記流路の切り替えを許可しないと判定された場合、前記予測温度又は前記温度変化量が前記所定範囲内に近づくように、前記コンポーネントの動作を制御する制御値を指示する指示部(145)を備える、構成5に記載の温度制御装置。
【0144】
[構成7]
前記温度調整システムは、第3熱媒体が循環する第2循環回路(21)をさらに備え、
前記ヒートポンプは、前記第2循環回路から流入した前記第3熱媒体を前記第2熱交換器に対して熱的に接続させることにより、前記第2熱媒体と前記第3熱媒体との間で熱交換を行って、前記第3熱媒体の温度を調整するように構成され、
前記温度予測部は、前記第3熱媒体の温度変化量を予測するように構成され、
第1熱媒体の温度変化量、及び第3熱媒体の温度変化量に基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部を備える、構成1~6のうちいずれかに記載の温度制御装置。
【0145】
[構成8]
前記第3熱媒体の目標温度と現在温度を取得するように構成されており、
前記判定部は、少なくても前記第3熱媒体の目標温度と現在温度の差、第1熱媒体の温度変化量、及び第3熱媒体の温度変化量が、それぞれ予め定められた所定範囲内である場合、前記流路の変更を許可する、構成7に記載の温度制御装置。
【0146】
[構成9]
2つ以上の前記流路が合流する合流部分には、流量調整弁(50)が設けられており、
前記流量調整弁が制御されることにより、それぞれの前記流路から前記第1熱交換器の流入口に流入する第1熱媒体の流量割合が変更されるように構成されており、
前記温度予測部は、前記流量割合の変更が決定された際、前記流量割合と、各流路における第1熱媒体の温度に基づいて、前記第1熱交換器と第1熱媒体との間における熱交換量(Q1)を予測し、当該熱交換量を温度予測モデルに入力して、前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測し、
前記流路制御部は、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内である場合には、流路割合を変更するように前記流量調整弁を制御し、
前記流路決定部は、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内でない場合には、前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量が所定範囲内となるまで、前記流量割合を再設定する、構成1~8のうちいずれかに記載の温度制御装置。
【0147】
[構成10]
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、前記温度予測部により予測された前記第1熱媒体の前記予測温度又は前記温度変化量から、前記第1熱交換器を介して前記第1熱媒体に熱的に接続される前記第2熱媒体の状態を予測する状態予測部と、
前記温度予測部の予測結果、及び前記状態予測部により予測された前記第2熱媒体の状態に基づいて、前記流路の変更を許可するか否かを判定する判定部(143)を備えた、構成1~9のうちいずれかに記載の温度制御装置。
【0148】
[構成11]
前記状態予測部は、前記温度予測部により予測された前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量と、変更前における第2熱媒体の温度と、前記圧力変換器の動作を指令する圧力制御量とを、前記第2熱媒体の状態を予測する状態予測モデルに入力して、前記第2熱媒体の状態を予測する、構成10に記載の温度制御装置。
【0149】
[構成12]
第1熱媒体が循環する第1循環回路であって、当該第1熱媒体の流路を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器と第2熱交換器との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器を有するヒートポンプと、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システムの温度制御装置が実施する温度制御プログラムにおいて、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測部の予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を実施させる温度制御プログラム。
【0150】
[構成13]
第1熱媒体が循環する第1循環回路であって、当該第1熱媒体の流路を変更可能な第1循環回路と、
第1熱交換器と第2熱交換器との間で第2熱媒体を循環させるものであって、前記第2熱媒体を循環させる際に前記第2熱媒体を圧縮又は膨張させて前記第2熱媒体の温度を変化させる圧力変換器を有するヒートポンプと、を備え、
前記第1熱交換器に前記第1循環回路から前記第1熱媒体を流入させ、前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行って、前記第1熱媒体の温度を調整する温度調整システムの温度制御装置が実施する温度制御方法において、
前記第1循環回路における前記流路の変更が決定された際、当該流路の変更によって前記第1熱交換器に流入する前記第1熱媒体の予測温度又は温度変化量を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測部の予測結果に基づいて、前記流路の変更制御を実施する流路制御ステップと、を備えた温度制御方法。
【符号の説明】
【0151】
11…第1循環回路、11a…第1流路、11b…第2流路、11c…第3流路、12…蓄電池、13…電池用ヒータ、14…インバータ、15…モータ、16…ラジエータ、18…切替弁、21…第2循環回路、22…ヒータコア、31…チラー、32…水冷コンデンサ、33…圧縮機、34…膨張弁、50…流量調整弁、100…温度調節システム、110…低温回路部、120…高温回路部、130…ヒートポンプ、140…ECU、141…流路決定部、142…温度予測部、143…判定部、144…流路制御部、145…指示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10