(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010182
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させる方法
(51)【国際特許分類】
F28F 13/00 20060101AFI20250109BHJP
F28F 3/00 20060101ALI20250109BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20250109BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20250109BHJP
F28F 11/00 20060101ALI20250109BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F28F13/00
F28F3/00 311
F28F3/08 311
F28D9/02
F28F11/00 A
G21D1/00 Q
G21D1/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024187095
(22)【出願日】2024-10-24
(62)【分割の表示】P 2023558185の分割
【原出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】アイヒェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホァ,メイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイツラー,パーヴェル
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,マチュー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,サミュエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フォルマー,ジェームズ エム.
(57)【要約】
【課題】多孔質熱絶縁層における熱伝達係数を簡易的に制御できる方法を提供する。
【解決手段】熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させる方法は、高温流路を提供すること、低温流路を提供すること、前記高温流路と前記低温流路との間に多孔質熱絶縁層を提供すること、制御ガスを前記多孔質熱絶縁層に流すこと、及び制御ガスの混合物を変化させることによって前記熱交換器の熱エネルギー伝達効率を制御することを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させる方法であって:
高温流路を提供すること;
前記高温流路から流体的に分離された低温流路を提供すること;及び
前記高温流路と前記低温流路との間に多孔質熱絶縁層を提供すること;を含み、
前記多孔質熱絶縁層を提供することは、前記多孔質熱絶縁層の一方の側部に入口を提供すること及び前記多孔質熱絶縁層の他方の側部に出口を提供することをさらに含み、
制御ガスを前記入口から、前記多孔質熱絶縁層を通って、そして前記出口を通って流すことをさらに含み、
前記制御ガスの混合物を変化させることによって前記熱交換器の熱エネルギー伝達効率を制御することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記多孔質熱絶縁層を提供することは、前記高温流路と前記低温流路との間に金属の開放細孔構造を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御ガスはアルゴンとヘリウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱交換器内の漏れ物質の存在について前記制御ガスをテストすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱交換器は、運転中の原子炉の炉心から二次流体への熱エネルギー伝達を可能にする装置であり、そこでは熱エネルギーが取得され、有用な目的に利用される。場合によっては、熱エネルギーは蒸気発生に利用され、これは蒸気タービンを介してなど発電に利用される。
【0002】
多くの場合、熱交換器は、熱交換器のコンポーネントに熱応力を引き起こす可能性がある大きな温度勾配にさらされる。温度勾配が十分に高い場合、熱応力は、2つの作動流体の混合を促進する漏れ引き起こす可能性がある。場合によっては、熱交換器を通過する2つの作動流体は、混合が許される場合好ましくない反応を示す可能性がある。
【0003】
さらに、場合によっては、熱交換器を通過する作動流体が、作動流体の凍結温度より下の温度に達すると、それは凝固し始め、熱エネルギーを伝達する熱交換器の有効性を低下させる可能性がある。
【0004】
熱交換器の周期的な熱応力に耐えるようにさらに強度を高め、2つ以上の作動流体の漏れ及び混合を抑制し、作動流体が凍結するのを抑制することによってなど、上記の問題が対処される場合利点になる。
【0005】
これらの利点及びその他の利点は、以下の説明及び添付図を参照することによって明らかになる。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態によれば、原子炉で使用され得る熱交換器が記載される。熱交換器は、高温流路(hot flow channel);高温流路から流体的に分離された低温流路(cold flow channel);及び高温流路と低温流路との間に配置された多孔質熱絶縁層;を含む。多孔質熱絶縁層は、入口;出口;及び入口と出口との間の流体通路;を含み得;多孔質熱絶縁層は、流体通路を通って制御ガスを流すように構成され、制御ガスは、多孔質熱絶縁層の熱エネルギー伝達効率に影響を及ぼすように構成される。
【0007】
場合によっては、制御ガスは第1流体、第2流体、又は両方の漏れ検出に使用される。言い換えると、高温流路又は低温流路に裂け目(breach)がある場合、制御ガスは制御ガスの出口流(exit stream)内の流体の存在について監視され得る。場合によっては、制御ガスは、例えばトリチウムなどの核分裂生成物又は放射化生成物(activation product)を捕捉する(captures)ために使用される。
【0008】
制御ガスは2つ以上のガスの混合物であり得、混合制御が、多孔質熱絶縁層の熱エネルギー伝達効率を変化させるように2つ以上のガスの混合物を変化させるために提供され得る。場合によっては、制御ガスはアルゴンとヘリウムの混合物である。混合制御を、制御ガス内のアルゴンとヘリウムの割合を変化させるために使用することができ、これはまた制御ガスの熱伝導特性も変化させる。
【0009】
いくつかの実施形態では、多孔質熱絶縁層は、金属又は金属合金で形成され、開放細孔(open pore)構造を規定する(defines)。代替的には、セラミック材料で形成され得る。多孔質熱絶縁層は、積層造形プロセス(additive manufacturing process)によって形成され得る。積層造形プロセスは、3Dプリント又は成形を含み得る。
【0010】
場合によっては、多孔質熱絶縁層は、高温流路から低温流路への熱エネルギー伝達効率を低下させる。
【0011】
熱交換器は、高温プレート及び低温プレートを含むプレート熱交換器であり得、高温流路は、高温プレートの表面に第1ガイド流路として形成され、低温流路は、低温プレートの表面に第2ガイド流路として形成される。他の場合、熱交換器は、シェル及びチューブ熱交換器であり得る。
【0012】
プレート熱交換器の場合、多孔質熱絶縁層は高温プレートと低温プレートとの間に配置され得る。多孔質熱絶縁層は、高温流体と低温流体の混合を抑制する追加の境界を提供し得る。
【0013】
例えば、多孔質熱絶縁層は、高温流路と冷却流路をさらに分離し得、高温流路と冷却流路が熱交換器にわたって存在する熱勾配に独立に反応することを可能にする。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させる方法が、高温流路を提供すること;高温流路から流体的に分離された低温流チャンネルを提供すること;及び高温流路と低温流路との間に多孔質熱絶縁層を提供すること:を含む。
【0015】
多孔質熱絶縁層を提供することは、高温流路と低温流路の間に金属の開放細孔構造を提供することを含み得る。この方法は、さらに、多孔質熱絶縁層の一方の側部に入口を提供すること及び多孔質熱絶縁層の他方の側部に出口を提供することを含み得る。
【0016】
制御ガスが、入口から、多孔質熱絶縁層を通って、そして出口を通って導入され得る。
【0017】
場合によっては、この方法は、制御ガスの混合物を変化させることによって熱交換器の熱エネルギー伝達効率を制御することを含む。例えば、制御ガスは2つ以上のガスの混合物であり得、制御ガスの混合物を変化させることによって、熱交換器の熱エネルギー伝達効率を変更することができる。場合によっては、制御ガスはアルゴンとヘリウムの混合物であるが、任意の適切なガス又はガスの混合物が使用され得る。
【0018】
いくつかの例では、制御ガスは、熱交換器内の漏れ物質の存在についてテストされ得る。漏れ物質は、第1流体、第2流体、又は両方であり得る。この方法は、トリチウムを引き付けて捕捉するために制御ガスを選択することも含み得る。制御ガスは、熱交換器を通って流れた後に捕捉されることができ、トリチウムが除去され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面を参照して詳細な説明が記載される。図中、参照番号の左端の桁(複数可)は、その参照番号が最初に現れる図を示す。異なる図における同じ参照番号の使用は、類似又は同一のコンポーネント又は特徴を示す。
【0020】
【
図1A】いくつかの実施形態による、熱エネルギーを高温流体から低温流体に伝達するためのプレート熱交換器の概略図である。
【0021】
【
図1B】いくつかの実施形態による、流路を備えた高温流プレートの概略図である。
【0022】
【
図1C】いくつかの実施形態による、プレート熱交換器内の高温流プレートと低温流プレートとの間に配置され得る多孔質層の概略図である。
【0023】
【
図1D】いくつかの実施形態による、流路を備えた低温流プレートの概略図である。
【0024】
【
図2】いくつかの実施形態による、高温流プレートと低温流プレートとの間に多孔質層を備えたプレート熱交換器の概略図である。
【0025】
【
図3A】いくつかの実施形態による、熱交換器内で使用できる例示的な多孔質層を示す。
【0026】
【
図3B】いくつかの実施形態による、熱交換器内で使用できる例示的な多孔質層を示す。
【0027】
【
図3C】いくつかの実施形態による、熱交換器内で使用できる例示的な多孔質層を示す。
【0028】
【
図3D】いくつかの実施形態による熱交換器内で使用できる例示的な多孔質層を示す。
【0029】
【
図4】いくつかの実施形態による熱交換器内の層として使用できる多孔質構造の走査電子画像を示す。
【0030】
【
図5】いくつかの実施形態による、シェルとチューブとの間に多孔質層を備えた二重シェル及びチューブ熱交換器の断面図を示す。
【0031】
【
図6】いくつかの実施形態による熱交換器の熱伝達効率を低減するためのプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、概して、熱交換器装置に関する。熱交換器は、第1流体と第2流体との間の熱エネルギー伝達が望まれるあらゆる用途に使用することができる。以下の開示の大部分は原子炉に関連して提供されるが、熱交換器を利用するほぼあらゆる用途が、本明細書に記載され請求項に記載される実施形態から利益を得ることができることが理解されるべきである。本発明はまた、熱交換器の効率を低下させ、それによって熱交換器全体にわたる熱応力及び温度勾配を減らすことができる構成にも関する。熱交換器の効率を改善するためにかなりの量の研究が行われてきたが、表面積を増加させて伝導を促進するために発泡材料を使用することさえあるが、いくつかの実施形態によれば、多孔質材料の層が高温流経路と低温流経路との間に位置して熱伝達を減少させ、それによって熱交換器の熱エネルギー伝達効率を低下させる。多孔質層を提供することは、1つ又は複数のコンポーネントの故障の原因となるとともに作動流体の混合を許す熱交換器に付与される熱応力をよりよく吸収するために熱交換器に柔軟性を提供するというさらなる利点を有する。
【0033】
場合によっては、熱交換器内の作動流体は、異なる流体であり、塩とナトリウムを含み得る。例えば、溶融塩炉(MSR)では、燃料塩は燃料と炉心の一次冷却材の両方を提供する。場合によっては、燃料塩は第1作動流体であり、二次冷却材は燃料塩から熱エネルギーを受け取る。二次冷却材は、例えば、塩、ナトリウム、又はいくつかの他の所望の冷却材などの任意の適切な冷却材であり得る。
【0034】
いくつかの原子炉では、ナトリウムは、原子炉内の一次冷却材であり、炉心から熱エネルギーを受け取る。ナトリウムは、第1作動流体として熱交換器に入り、ナトリウム、塩、又は他の適切な冷却材であり得る第2作動流体に熱エネルギーを供給する。
【0035】
本明細書で使用するとき、「一次冷却材」という用語は、広義の用語であり、炉心温度を管理するために炉心から熱エネルギーを受け取る流体を指す。一次冷却材は、例えば、塩、ナトリウム、鉛、鉛ビスマス共晶、重水、軽水、ガス、又はいくつかの他の適切な冷却材などの任意の適切な冷却材であり得る。原子炉容器内の一次冷却材は、本明細書では熱交換器内の第1作動流体とも呼ばれる。例示的な実施形態は、一例として単一の熱交換器を参照するが、原子炉は、一次冷却材から二次冷却材へ熱エネルギーを伝達するように機能する任意の数の熱交換器を含むことができることが理解され、認められるべきである。さらに、熱交換器は、すべてが原子炉の熱負荷を処理するために協力するいくつかの熱交換器コアから作られ得る。これらの構成のいずれも本明細書の開示に等しく適用可能であるが、効率のために、例示的な実施形態を説明する際に単一の熱交換器を使用する。この説明を通して、熱交換器内の第1流体及び/又は第2流体についても言及する。「第1流体」及び「第2流体」という用語は、「一次冷却材」及び「二次冷却材」という用語と同じ意味で使用され得ることが理解されるべきである。
【0036】
いくつかの実施形態では、小型の熱交換器が、原子炉の原子炉容器内に設けられ、炉心内の一次冷却材から二次冷却材に熱を伝達する。場合によっては、熱交換器はナトリウムから塩に熱エネルギーを伝達する。例えば、ナトリウム冷却高速炉(「SFR」)では、ナトリウムが原子炉容器内の一次冷却材として使用され得る。ナトリウムが、自然循環、1つ以上の循環ポンプ、又は循環モダリティの組み合わせのいずれかによって原子炉容器全体を循環するので、反応性の高い領域に近いナトリウムは、熱エネルギーを受け取り、加熱される。加熱されたナトリウムは熱交換器を通って流れ、熱エネルギーは一次ナトリウム冷却材から二次冷却材(場合によってはナトリウム、塩、又は他の二次冷却材)に伝達される。
【0037】
溶融塩炉(MSR)では、燃料塩は、燃料及び自然循環を介して、1つ又は複数のポンプ、又はその組み合わせによって、原子炉容器を循環する一次冷却材の両方として使用される。燃料塩は炉心を通過し、そこで核分裂反応からの熱エネルギーを受け取るにつれて加熱される。燃料塩は熱交換器に送られ、そこで熱交換器は熱エネルギーを二次冷却材(塩、ナトリウム、又は熱交換器を循環する他の冷却液)に伝達する。場合によっては、二次冷却材は燃料塩よりも高い熱伝導率を有し得る。例として、ナトリウムは多くの冷却塩よりも約100倍高い熱伝導率を有する。塩からナトリウムへの熱交換器では、塩からナトリウムへの熱エネルギーの伝達を制御することが望ましい。例えば、熱伝達が効率的すぎると、燃料塩は、その凝固点より下に冷却され、粘度が増加し始める及び/又は熱交換器を通る流れが減少し、熱交換器内での燃料塩の凍結の問題を悪化させる可能性がある。もちろん、一次冷却材が熱交換器を流れるのを止めると、特に原子炉容器内の熱蓄積など、他の望ましくない問題をもたらす可能性がある。
【0038】
したがって、いくつかの例では、一次冷却材から二次冷却材への熱交換器内の熱エネルギーの伝達を制御、制限、減速、又はその他の影響を与えることが重要であり得る。
【0039】
プレート熱交換器が、一次冷却材から二次冷却材に熱エネルギーを伝達するために使用され得る。場合によっては、プレート熱交換器は、2つの入口と2つの出口を有し得る。例えば、プレート熱交換器は、一次冷却材用の入口と出口、及び二次冷却材用の入口と出口を有し得る。これらの液体の流れ経路は、熱交換器のそれぞれのプレート内の流路によって規定され得、プレートは冷却材を流体的に分離した状態に保ち、プレートが高温流体から低温流体に熱エネルギーを伝達するように熱伝達を維持する。
【0040】
場合によっては、一次冷却材と二次冷却材との間の分離を維持することが望ましい。例えば、場合によっては、一次冷却材と二次冷却材は、混合されると反応することがある。プレート熱交換器は通常、一次冷却材流経路と二次冷却材流経路との間の分離を提供する。しかし、熱交換器に適用される周期的な熱応力のために、一次冷却材と二次冷却材の混合を可能にする塑性変形によってなど、プレート間の分離が失敗する可能性がある。多くのプレート熱交換器では、高温流路がプレートの一方の表面に形成され、低温流路がプレートの反対側に形成される。その結果、プレートの厚さが高温流体と低温流体との間の分離を提供する。1つ又は複数のプレートが故障した場合、流体は混合できる。
【0041】
したがって、例えば、熱交換器に適用される熱応力を低減すること、流体流経路間のさらなる分離を提供すること、及び/又は周期的な熱応力を補償するために熱交換器内の弾性変形を許容することによってなど、冷却材の混合をさらに抑制することが望ましい。いくつかの実施形態によれば、これらの利点のすべては、高温流路と低温流路との間に多孔質層を形成することによって提供される。
【0042】
図1A~1Dは、プレート熱交換器100の層を示す。いくつかの実施形態によれば、プレート熱交換器は、互いに接合された複数の金属プレートから形成される。流体通路は、高温流体及び低温流体のための流体流通路を形成するために、プレートの表面に形成される。高温流プレート102及び低温流プレート104は、典型的には、伝導によってなど熱伝達関係にあり、熱エネルギーは、高温流プレート102から低温流プレート104に伝達される。多くの場合、高温流プレート102及び低温流プレート104は、互いに直接接合されるが、他の場合には、単一のプレートが、プレートの両方の表面に形成されたチャネル(channel(流路))を有し、高温流通路の1つの表面部分を有し、反対側の表面は低温流路の一部を形成する。
【0043】
この配置の1つの潜在的な懸念は、周期的な熱応力が、1つ又は複数のプレートの弱体化及び最終的な故障を引き起こすことがあり、一次冷却材と二次冷却材の混合を許すことがあることである。したがって、いくつかの実施形態では、多孔質層106が高温流プレート102と低温流プレート104との間に配置される。これは、高温流プレート102と低温流プレート104との間の分離を提供し、これは一次冷却材と二次冷却材との混合に対する追加の障壁を提供する。例えば、一次冷却材と二次冷却材が混合するためには、高温流プレート102と隣接する低温流プレート104の両方の同時故障がなければならない。
【0044】
多孔質層106は、任意の適切な多孔質材料であってもよいが、場合によっては、多孔質金属である。多孔質層106は、任意の適切なプロセス及び任意の適切な材料によって形成され得る。例えば、多孔質層106は、いくつかの例を挙げると、積層造形プロセス(例えば、3Dプリント)、焼結、溶射、発泡、粉末冶金又は射出成形の1つ又は複数によって形成され得る。場合によっては、多孔質層106は、孔が相互に接続されてその間に流体通路を形成する開放細孔構造を形成する。場合によっては、多孔質層106は、熱交換器100の多孔質層106を通って第3流体を通過させるための第3流体入口及び第3流体出口を有する第3流体通路を形成する。
【0045】
多孔質層106は、積層造形又は成形によって形成され得る規則的パターンなどの任意のパターンを有するように形成され得る。多孔質層106は、焼結、溶射、粉末冶金、発泡、又は他の適切なプロセスを介してなど、ランダムなパターンで追加的に又は代替的に形成され得る。
【0046】
場合によっては、第3入口及び出口が設けられることができ、第3流体流経路は多孔質層106によって規定される。第3流体は、いくつかの目的、例えば、一次冷却材又は二次冷却材のいずれかの熱交換器における漏れを検出するため、核分裂生成物又は放射化生成物(例えば、トリチウム)を除去するため、熱交換器の熱伝達特性を変更するため、又は他の目的のいずれかのために設けられ得る。場合によっては、水素が、熱交換器内の第3流体として使用され得る。場合によっては、CO2が熱交換器内の第3流体として使用され得る。場合によっては、ヘリウムが熱交換器内の第3流体として使用され得る。場合によっては、アルゴンが熱交換器内の第3流体として使用され得る。場合によっては、ガスの混合物が熱交換器の多孔質層を通って供給される。
【0047】
いずれの場合も、第3流体は漏れ検出に使用され得る。例えば、1つ以上の検出器が熱交換器の下流にある第3流体の流れに配置され得、第3流体は、熱交換器に入る前には第3流体に存在しなかった1つ以上の物質の包含についてテストされ得る。例えば、第3流体は、熱交換器を通過した後に塩についてテストされることができ、第3流体中の塩の存在(液体の形態であるか蒸気の形態であるかを問わない)は、熱交換器内の塩の漏れの指示(indication)であり得る。
【0048】
高温流プレート102及び低温流プレート104は、その中に形成された流体流路を有し得、この流体流路は機械加工、化学エッチング、レーザーエッチング、又はいくつかの他の適切なプロセスによって形成され得る。プレートは、材料伝導等を通じてなど、一次冷却材と二次冷却材との間の熱伝達を提供し得る。場合によっては、プレートは、モノリシック構造を形成するように融合され得る。図示されているように、一次原子炉冷却材は入口110から熱交換器に入り、そこでプレート内の流路112を通って流れ、出口114で熱交換器の反対側から出る。
【0049】
図1Dは、二次冷却材流体のための第2入口116を有する低温流プレート104を示す。二次冷却材流体出口118が、二次冷却材が熱交換器100から出ることを可能にする。場合によっては、二次冷却材ループは、内側パイプが外側パイプを通って延びる同軸パイプを含む。内側パイプは熱交換器の入口に結合され得、外側パイプは熱交換器の出口に結合され得、この場合、低温プレート104の入口と出口は熱交換器の同じ側に形成され得る。
【0050】
適切な熱交換器100は、限定されるものではないが、プリント回路熱交換器、プレート熱交換器、成形プレート熱交換器、又はハイブリッド熱交換器を含み、この場合、2つ以上の媒体が1つ以上の接合プレートの反対側の側部上を流れる。冷却媒体は高圧下にあり得るが、いくつかの実施形態では低圧である。いくつかの実施形態では塩及びナトリウムである作動流体は、2D又は3Dプレートパターンを通って1つ以上の接合プレートの両側上を流れるようにされ得る。2D又は3Dプレートパターンは、所望の熱長(thermal length)及び圧力降下を生成するように構成することができる。
【0051】
原子炉は、本明細書に記載された実施形態によって可能な改善を利用するための任意の適切な原子炉であり得る。例えば、限定されることなく、記載された実施形態は、SFR、MSR、又は任意の他の原子炉と共に使用することができ、原子炉は、プール型又はループ型原子炉であり得る。もちろん、他のタイプの原子炉が使用され得、任意の適切な一次及び二次冷却材が使用され得る。場合によっては、記載された熱交換器は、塩が一次冷却材であり、ナトリウムが二次冷却材である塩/ナトリウム熱交換器である。その他の場合、熱交換器は、塩/塩熱交換器、ナトリウム/塩熱交換器、ナトリウム/ナトリウム熱交換器、塩/鉛熱交換器、鉛/塩熱交換器、ナトリウム/水熱交換器、塩/鉛ビスマス共晶熱交換器又は鉛ビスマス共晶から塩への熱交換器である。もちろん、任意の2つの作動流体が、実施形態による熱交換器内で使用され得、作動流体は、同一又は異なる流体であり得る。
【0052】
熱交換器100は、プレート102が互いに接合されるときに一連の流路を形成するように互いに隣接して配置される表面溝112を有する一連の平行なプレート102,104から形成され得る。表面溝112は、プレートの表面に光化学的にエッチングされる、機械的に形成される、又は何らかの他のプロセスによって形成され得、流体経路長及び圧力降下などの所望の流れ特性を提供するようにサイズ決めされ得及び配置され得る。
【0053】
多くの場合、プレート102,104は互いに拡散接合されており、これは接合を親金属強度に戻し、優れた高温流動性能を可能にし、熱交換器100を通る2D及び/又は3D流体通路の設計最適化を可能にする固体溶接プロセスである。しかしながら、場合によっては、多孔質層106が各高温流プレートの各々と低温流プレートとの間に設けられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ヘッダー(header)又はマニホールド(図示せず)が、熱交換器100のすべての層を同時に通る流体連通経路を提供する流体入口110又は出口114に取り付けられ得る。代替的に、又は追加的に、ポートを熱交換器100に一体のヘッダーを提供するためにプレート形成段階中に構成することができる。場合によっては、熱交換器100は、マニホールドによって接続されたヘッダーとポートの混在を備えた半ポートにされ(semi-ported)得る。
【0055】
許容可能な圧力降下を指定することができ、より低い圧力降下は、通常、資本コストと運転コストを削減するために望ましい。いくつかの実施形態では、熱交換器100の一次冷媒流経路にわたる圧力降下は、約6psi未満、又は約5psi未満、又は約4psi未満、又は約3psi未満である。より低い圧力降下は、典型的には、短い流れの長さ及び冷媒の低い粘度を必要とし、これは熱伝達係数に直接影響を及ぼす。圧力降下は、流れの長さ、流体粘度、及び/又は流れ経路の幅と深さの寸法を変えることによって調整することができ、全体的な熱伝達は、層の数と熱伝達面積を変えることによって同様に影響を受けることができる。
【0056】
プレート表面タイプは、特定の目的のために調整することができ、表面密度と熱伝達係数を高めるために形成され得、鋸歯状、ヘリンボーン状、又は穿孔状などの任意の適切な配置を有するフィンとして形成され得る。もちろん、他の配置も可能であり、本明細書で意図される。組み合わせて、又は代替的に、通路は、任意の適切な方法によってプレート内に直接形成され得、場合によっては、光化学エッチングによって形成される。
【0057】
通路は、任意の適切なサイズ及び断面形状であり得る。いくつかの実施形態では、形成された流路は、約0.5mm、又は約0.75mm、又は約1mmの半径を有する半円形である。もちろん、熱交換器の設計フローパラメータに従って、他の適切な断面形状及びサイズが考えられる。
【0058】
図2は、交互の高温流プレート102、低温流プレート104、及び多孔質層106を互いに接合することによって形成された熱交換器100を示す。示されるように、多孔質層106は、高温流プレート102と低温流プレート104との間に分離を形成する。このように、単一のプレートの故障は、一次冷却材と二次冷却材との混合をもたらすことはなく、むしろ、漏れた流体が多孔質層106によって形成された空間に入ることを可能にする。
【0059】
さらに、場合によっては、多孔質層106は制御ガスを含み得る。制御ガスは、任意の適切なガス又はガスの混合物であり得る。場合によっては、制御ガスは、例えば、アルゴン又は窒素などの不活性ガスの混合物である。制御ガスの混合率は、多孔質層における熱伝達係数を制御するためになど変化させることができ、これは、一次冷却材と二次冷却材との間の熱伝達効率の微調整を可能にする。
【0060】
例えば、場合によっては、制御ガスはアルゴンとヘリウムの混合物であり、混合物は多孔質層の有効伝導率に影響を与えるように制御され得る。ガスへの熱エネルギー伝達は多孔質層を通る伝導と比較して比較的低くなり得る;しかし、制御ガスの混合を変えることにより、多孔質層を通る熱エネルギー伝達効率をアクティブに制御することが可能である。例としてアルゴンとヘリウムの混合物を用いると、適切な混合物は100%アルゴンと100%ヘリウムの間、又はその間の任意の混合率であり得る。場合によっては、混合物は約50%アルゴンと50%ヘリウムであり得る。一般に、ヘリウムはアルゴンよりもはるかに熱伝導性が高く、ヘリウムのより高い割合を有する制御ガスが向上した熱伝達特性を提供し、ヘリウムのより低い割合は低下した熱伝達特性を提供する。制御ガスは任意の適切な混合ガスであり得、窒素、アルゴン、ヘリウム、CO2、又は他の不活性ガスなどのいくつかのガスのいずれかを含み得る。実施された実験室試験によれば、多孔質層106内の制御ガス混合物を変化させることにより、熱伝達は最大10%以上の影響を受けることが観察された。多孔質層106内で使用される制御ガスに依存して、高温流プレート102と低温流プレート104との間の熱エネルギー伝達効率を10%以上低下させることができる。
【0061】
多孔質層は、高温流プレート102を低温流プレート104に直接接合する場合と比較して熱伝達効率を低下させる高温流プレート102と低温流プレート104との間のガス分離を提供する。言い換えれば、多孔質層106は、高温流プレート102と低温流プレート104との間に断熱材を作り、それによって熱エネルギー伝達効率を低下させる。
【0062】
さらに、制御ガスを、監視して、1つ以上の高温流プレート102又は低温流プレート104の故障をテストするために監視することができる。例えば、制御ガスは、一次冷却材又は二次冷却材の漏れについて監視されることができる。制御ガスが熱交換器から出るとき、熱交換器内で故障が発生したかどうかを決定するために、一次冷却材、二次冷却材、又はその両方の存在をテストすることができる。前述のように、一次冷却材と二次冷却材の間に追加の境界を提供する多孔質層によって、一次冷却材と二次冷却材の混合が抑制される。
【0063】
熱交換器によって示される熱応力は、高温流プレート102と低温流プレート104との間の熱勾配と熱伝達の効率に正比例する。場合によっては、熱応力は深刻であり、温度勾配を経験するときに熱交換器の異なる部分の熱膨張と収縮を引き起こすことがある。多くの典型的な熱交換器では、コンポーネントが固く結合されており、熱応力が熱疲労亀裂及び致命的な故障につながる可能性がある。熱交換器材料の機械的特性は、材料が一定温度より上にさらされると時間とともに劣化する。同様に、材料の最終的な強度は、高温での材料の老化(aging)により低下する。これは、熱疲労における塑性変形の発生を悪化させる。
【0064】
多孔質層106は、熱応力による高温流プレート102と低温流プレート104との間の相対的な移動を可能にする追加的な利点を提供する。多孔質層106は、高温流プレート102が低温流プレート104から独立して大きく変形することを可能にするコンプライアンスを提供する。言い換えれば、多孔質層106は、熱交換器100によって経験される過度な応力を吸収するクッションである。実験を通じて、多孔質層が個々の細孔を弾性的に崩壊させ、熱応力及び歪を吸収することが観察された。場合によっては、多孔質層106は、高温流プレート102及び低温流プレート104が独立して伸縮することを可能にする十分な柔軟性を提供する。これは、とりわけ、高温流プレート102及び低温流プレート104が、所望により異なる材料で形成されることを可能にする。場合によっては、高温流プレート102は第1材料で形成され、低温流プレート104は第1材料とは異なる第2材料で形成される。場合によっては、第2材料は第1材料とは異なる熱膨張係数を有する。場合によっては、第2材料は第1材料よりも高い熱膨張係数を有する。
【0065】
図3A~3Dは、本明細書に記載される実施形態と共に使用され得る例示的な多孔質層106である。
図3A及び3Bは、ランダムな細孔構造を備えた多孔質層106を示す。ランダムな細孔構造は、発泡、焼結、粉末冶金、噴霧、又は他の適切なプロセスなど、任意の適切な技術によって形成され得る。多孔質層106は、任意の適切な材料から形成され得、場合によっては、金属、セラミック、又はその組み合わせから形成される。場合によっては、多孔質層は、ニッケルベースの合金又は鋼から形成される。
【0066】
図3C及び3Dは、均一な細孔分布を有する多孔質層106を示す。均一な細孔分布は、材料除去、又は材料積層造形技術などの任意の適切なプロセスによって提供され得る。例示的な製造技術は、3Dプリント、金属粉末融着、電子ビーム溶解、射出成形、及びその他の適切な技術を含む。
【0067】
本明細書に記載された実施形態のいずれかにより、多孔質層は、圧力降下、密度、圧壊強度(crush strength)又は他の特性などの設計基準に従って形成され得る。場合によっては、気孔率(degree of porosity)が制御されて、隣接する細孔が相互に接続されて多孔質層を通る流体経路を提供する開放細孔構造をもたらす。場合によっては、多孔質層106は、最大95%多孔質、又は最大85%多孔質、又は最大約75%多孔質、又は最大約70%多孔質、又は最大約60%多孔質、又は最大約50%多孔質、又は最大約40%多孔質である。場合によっては、多孔質層106の多孔性(porosity)は、約40%多孔質から約70%多孔質の範囲内である。場合によっては、気孔率は、多孔質層106の結果として生じる圧壊強度に対して均衡する。加えて、気孔率が大きいほど、多孔質層106を通る熱伝導は少なくなり、制御ガスの選択は、多孔質層106を通る全体的な熱伝達効率に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0068】
いくつかの実施形態では、多孔質層106は、多孔質層の一方の側の入口に制御ガスを供給する入口マニホールド又はプレナムと流体連通している。出口は、多孔質層106の反対側に形成され得、これは出口マニホールド又はプレナムであり得る。多孔質層に入口及び出口を設けることは流れ方向を定め、本明細書に記載される実施形態のいずれかと同様に、制御ガスは、多孔質層106を通過し、漏れ検出に使用され得る。さらに、多孔質層は一次冷却材を二次冷却材からさらに分離する。制御ガスが熱交換器から出るとき、一次冷却材及び/又は二次冷却材材料の包含についてテストすることができる。例えば、ヘリウムは、多孔質層を通過でき、その出口で一次冷却材及び/又は二次冷却材の存在についてテストすることができる。
【0069】
場合によっては、制御ガスを選択し、核分裂生成物又は放射化生成物を捕捉するために使用され得る。例えば、制御ガスは、例えばトリチウムなどの生成物を、一次冷却材から二次冷却材に移動する前に、熱交換器から捕捉し、除去するために使用され得る。
【0070】
制御ガスは、経時的に変化してもよいことを理解されるべきである。例えば、多孔質層106の熱エネルギー伝達効率を制御するために、2つのガスの混合物が変化し得、混合物の割合は、次のように時事変化し得る。さらに、第1制御ガスは、第2制御ガスを注入することによってパージされ得、第2制御ガスは、第1制御ガスとは異なり得る。換言すれば、1回目に第1制御ガスが導入され得、1回目より後の2回目に第2制御ガスが導入され得る。
【0071】
いくつかの実施態様では、多孔質層は連続形状ではなく、むしろ、粒子間の流れ経路を定める離散粒子によって形成され得る。一例として、多孔質層は、本明細書に記載される多くの利点及び利益を提供するために、高温流プレート102と低温流プレート104との間に小石材料、粉末、又は球状粒子を凝集することによって形成され得る。
【0072】
場合によっては、多孔質層106は、高温流プレート102及び/又は低温流プレート104に接合されなくてもよい。例えば、高温流プレート102及び低温流プレート104は、熱交換器シェルに接合されて、高温流プレート102及び低温流プレート104との間の空間を画定し得、それらの間の空間は、多孔質層材料で充填され得、それは、多孔質層106を通る流れ経路を提供するための開口孔構造を提供するいくつかの他の適切な形態を持つ粉末、小石又は粒子であり得る。
【0073】
図4は、金属多孔質層400に形成された開放細孔構造の拡大図を示す。金属多孔質層400は、本明細書に記載された任意の実施形態と共に使用されて、記載された利点及び利益を提供し得る。いくつかの例では、金属多孔質層400は、適切な金属から形成され、約30%~80%の間の多孔質、又は40%~70%の間の多孔質、又は50%~60%の間の多孔質であり得る開放細孔構造で形成される。
【0074】
いくつかの例では、多孔質層400は、多孔質構造を形成する金属リガメント(metal ligaments)402から構成される。金属リガメント402は、高温流プレートと低温流プレートとの間の熱膨張と収縮の差に対応する弾性を提供し得る。金属リガメント402は、多孔質金属層400のサイズ及び形状を維持するのに十分な圧壊強度を提供し得る。金属リガメントは、熱交換器が作られる材料とは異なり得る任意の適切な材料で形成され得る。金属リガメント402は、例えば、延伸、スピニング、発泡、プリンティング、焼結、バブリング、又は任意の他の適切なプロセスなどの任意の適切なプロセスによって形成され得る。
【0075】
図5は、多孔質層506を備えた二重パイプ及びシェル熱交換器500の断面図を示す。例は、シェル内の単一のチューブを示しているが、任意の数のチューブがシェルを通過し得ることが理解されるべきである。高温流チューブ502が、一次冷却材のための流路を提供し、低温流シェル504は、二次冷却材のための低温流路508を提供するように構成される。多孔質層506は、高温流チューブ502と低温流シェル504との間に設けられて、本明細書に記載される利点を提供し得る。例えば、多孔質層506は、一次冷却材と二次冷却材との混合を抑制する二重封じ込め障壁を提供し;熱交換器500を横切る温度勾配によって生じる熱応力に応答して、高温流チューブ502と低温流シェル504の独立した伸縮を可能にする柔軟性を提供し;熱交換器の熱伝達効率を制御し、一次冷却材及び/又は二次冷却材の漏れをテストし、核分裂及び/又は放射化生成物を除去することなどの制御ガスを導入するための第3流路を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、熱交換器500の構造支持(structural supports)を提供するために、高温流チューブ502と低温流シェル504の壁の間に延びる構造支持がある。場合によっては、構造支持は、多孔質層が高温流チューブ502と低温流シェル504との間に配置されることを可能にするために、高温流チューブ502と低温流シェル504との間の所望の間隔を維持する。場合によっては、多孔質層506は、高温流チューブ502と低温流シェル504との間の熱交換器500に加えることができる粒子状物質、粉末、又は他の緩い構造から形成され得る。
【0077】
図6は、熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させるための一例のプロセスを示す。ブロック602において、熱交換器は、一次冷却材を収容するためのなど高温流路を備える。
【0078】
ブロック604において、熱交換器は、一次冷却材と同じ又は異なり得る二次冷却材を収容するためのなど、低温流路を備える。
【0079】
ブロック606において、多孔質熱絶縁層が、高温流路と低温流路との間に設けられる。多孔質熱絶縁層は、熱絶縁を提供し、熱交換器の熱エネルギー伝達効率を低下させるために、高温流路と低温流路との間にガスギャップを提供する。
【0080】
オプションで、ブロック608において、制御ガスが多孔質絶縁層を通過させられ得る。制御ガスは、単一のガスであってもよいし、2つ以上のガスの混合物であり得る。
【0081】
オプションで、ブロック610において、制御ガス混合物は、高温流路と低温流路との間の熱エネルギー伝達効率に影響を与えるように変化させられ得る。例えば、制御ガスがそれぞれ異なる熱伝導率を有する2つのガスを含む場合、ガスの一方の割合を増加させると熱交換器の熱エネルギー伝達効率が減少し、他方のガスの割合を増加させると熱交換器の熱エネルギー伝達効率が増加する。
【0082】
本開示は例示的な実施形態を示すものであり、したがって、本開示の実施形態及び添付の特許請求の範囲の範囲をいかなる方法でも限定することを意図するものではない。実施形態は、特定のコンポーネント、機能、及びそれらの関係の実装を示す機能的構成要素の助けを借りて上述した。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜のためにここで任意に定義されている。代替の境界を、指定された機能とその関係が適切に実行される範囲で定義することができる。
【0083】
特定の実施形態の前述の説明は、他の者が、当業者の知識を適用することにより、過度の実験を行うことなく、開示の実施形態の一般的概念から逸脱することなく、当該特定の実施形態を種々の用途に容易に修正及び/又は適応させることができる本開示の実施形態の一般的な性質を完全に明らかにするであろう。したがって、そのような適応及び修正は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の均等の意味及び範囲内にあることが意図されている。本明細書の表現又は用語は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに照らして関連技術の当業者によって解釈されるように、記載の目的のためのものであり、限定されるものではない。
【0084】
開示の実施形態の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の請求項及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0085】
特に、「できる」、「できる」、「可能性がある」、又は「し得る」のような条件付き言語は、特に明記されていない限り、又は使用される文脈の中で他に理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の機能、要素、及び/又は動作を含むことができるが、他の実装には特定の機能、要素、及び/又は操作は含まないことを伝えることを意図している。したがって、このような条件付き言語は、一般に、機能、要素、及び/又は動作が1つ以上の実装に必要であること、又は1つ以上の実装が、これらの機能、要素、及び/又は動作が特定の実装に含まれるかどうか、又は実行されるかどうかを、ユーザー入力又はプロンプトの有無にかかわらず決定するためのロジックを必然的に含むことを意味するものではない。
【0086】
当業者であれば、本明細書に開示されている任意のプロセス又は方法が多くの方法で変更可能であることを認識するであろう。本明細書に記載及び/又は図示されたステップのプロセスパラメータ及びシーケンスは、例としてのみ与えられ、必要に応じて変更することができる。例えば、本明細書に記載及び/又は図示されたステップは、特定の順序で示され又は説明され得るが、これらのステップは、必ずしも図示又は説明された順序で実行される必要はない。
【0087】
本明細書に記載及び/又は図示される種々の例示的な方法は、本明細書に記載又は図示されるステップの1つ以上を省略してもよく、又は開示されるステップに加えて追加のステップを含んでもよい。さらに、本明細書に開示される任意の方法のステップは、本明細書に開示される任意の他の方法の任意の1つ以上のステップと組み合わせることができる。
【0088】
もちろん、本開示の様々な特徴を記載する目的で、考えられるすべての要素及び/又は方法の組み合わせを記載することはできないが、当業者は、開示された特徴のさらに多くの組み合わせ及び順列が可能であることを認識している。したがって、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示に様々な修正を加えることができる。さらに、本開示の他の実施形態は、明細書及び添付図面の検討、ならびに本明細書に提示される開示された実施形態の実施から明らかであり得る。明細書及び添付図面に提示された例は、すべての点において、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。ここでは特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0089】
特に明記されていない限り、明細書で使用されている用語「接続された」及び「結合された」(及びそれらの派生物)は、直接的及び間接的(すなわち、他の要素又は構成要素を介した)接続の両方を許可するものと解釈される。さらに、明細書で使用される「1つの(「a」又は「an」)という用語は、「少なくとも1つの」を意味するものと解釈される。最後に、使用を容易にするため、明細書で使用されている「含む」及び「有する」(及びその派生語)という用語は、「有する」という用語と交換可能であり、同じ意味を持つ。上記及び添付図面から、具体的な実施形態が例示の目的のために本明細書に記載されているが、添付の特許請求の範囲及びそこに記載されている要素の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。さらに、特定の態様が特定の請求項の形態で以下に提示されるが、発明者は、利用可能な任意の請求項の形態において様々な態様を熟考する。例えば、現在、いくつかの態様のみが特定の構成において具体化されているとして記載され得るが、他の態様も同様に具体化され得る。本開示の利益を有する当業者にとって自明であろう様々な修正及び変更がなされ得る。そのような修正及び変更を全て包含することが意図されており、従って、上記記載は、限定的な意味ではなく例示的な意味であるとみなされるべきである。
【0090】
本発明の態様1に係る熱交換器は、原子炉用熱交換器であって:
高温流路;
前記高温流路から流体的に分離された低温流路;及び
前記高温流路と低温流路との間に配置された多孔質熱絶縁層であって、前記多孔質熱絶縁層は:
入口;
出口;及び
前記入口と前記出口との間の流体通路;を有し、
前記多孔質熱絶縁層は、前記流体通路を通って制御ガスを流すように構成され、前記制御ガスは、前記多孔質熱絶縁層の熱エネルギー伝達効率に影響を及ぼすように構成される、
多孔質熱絶縁層;を有する。
【0091】
本発明の態様2に係る熱交換器では、前記態様1において、前記制御ガスは、第1流体、第2流体、又は両方の漏れ検出に使用される。
【0092】
本発明の態様3に係る熱交換器では、前記態様1において、前記制御ガスは、核分裂生成物又は放射化生成物を捕捉するために使用される。
【0093】
本発明の態様4に係る熱交換器では、前記態様3において、前記制御ガスは、トリチウムを捕捉する。
【0094】
本発明の態様5に係る熱交換器では、前記態様1において、前記制御ガスは、2つ以上のガスの混合物である。
【0095】
本発明の態様6に係る熱交換器は、前記態様5において、前記多孔質熱絶縁層の前記熱エネルギー伝達効率を変化させるために前記2つ以上のガスの前記混合物を変化させるように構成された混合制御をさらに含む。
【0096】
本発明の態様7に係る熱交換器では、前記態様5において、前記制御ガスは、アルゴン及びヘリウムを含む。
【0097】
本発明の態様8に係る熱交換器では、前記態様1において、前記多孔質熱絶縁層は、金属又は金属合金から形成され、開放細孔構造を規定する。
【0098】
本発明の態様9に係る熱交換器では、前記態様1において、前記多孔質熱絶縁層は、積層造形プロセスによって形成される。
【0099】
本発明の態様10に係る熱交換器では、前記態様1において、前記多孔質熱絶縁層は、前記高温流路から前記低温流路への熱エネルギー伝達効率を低下させる。
【0100】
本発明の態様11に係る熱交換器では、前記態様1において、前記熱交換器は、高温プレート及び低温プレートを有するプレート熱交換器であり、前記高温流路は、前記高温プレートの表面の第1ガイド流路として形成され、前記低温流路は、前記低温プレートの表面の第2ガイド流路として形成される。
【0101】
本発明の態様12に係る熱交換器では、前記態様11において、前記多孔質熱絶縁層は、前記高温プレートと前記低温プレートとの間に配置される
【0102】
本発明の態様13に係る熱交換器では、前記態様1において、前記多孔質熱絶縁層は、前記高温流路と前記低温流路とを分離し、前記高温流路と前記低温流路が、前記熱交換器にわたって存在する熱勾配に独立に反応することを可能にする。
【0103】
本発明の態様14に係る方法は、熱交換器における熱エネルギー伝達効率を低下させる方法であって:
高温流路を提供すること;
前記高温流路から流体的に分離された低温流路を提供すること;及び
前記高温流路と前記低温流路との間に多孔質熱絶縁層を提供すること;を含む。
【0104】
本発明の態様15に係る方法では、前記態様14において、前記多孔質熱絶縁層を提供することは、前記高温流路と前記低温流路との間に金属の開放細孔構造を提供することを含む。
【0105】
本発明の態様16に係る方法では、前記態様14において、前記多孔質熱絶縁層を提供することは、前記多孔質熱絶縁層の一方の側部に入口を提供すること及び前記多孔質熱絶縁層の他方の側部に出口を提供することをさらに含む。
【0106】
本発明の態様17に係る方法では、前記態様16において、制御ガスを前記入口から、前記多孔質熱絶縁層を通って、そして前記出口を通って流すことをさらに含む。
【0107】
本発明の態様18に係る方法では、前記態様17において、前記制御ガスの混合物を変化させることによって前記熱交換器の熱エネルギー伝達効率を制御することをさらに含む。
【0108】
本発明の態様19に係る方法では、前記態様18において、前記制御ガスはアルゴンとヘリウムの混合物である。
【0109】
本発明の態様20に係る方法では、前記態様17において、前記熱交換器内の漏れ物質の存在について前記制御ガスをテストすることをさらに含む。