(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101875
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】火災検出システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/12 20060101AFI20250701BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20250701BHJP
G06T 7/536 20170101ALI20250701BHJP
G06V 10/40 20220101ALI20250701BHJP
【FI】
G08B17/12
G08B17/00 C
G06T7/536
G06V10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218950
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉夫
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
5L096
【Fターム(参考)】
5C085AA12
5C085AB01
5C085AC11
5C085BA36
5C085CA08
5G405AA01
5G405AB05
5G405AC02
5G405BA01
5G405CA09
5G405CA31
5G405FA25
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】撮像画像から監視領域における実際の火災の発生位置を特定することを可能とし、更には火災による炎や煙が撮像画像に写っていなくとも火災の検出を可能とする。
【解決手段】火災検出システム1は、撮像装置10により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出し、監視領域で発生した火災により監視領域に存在する所定の面に生じる事象を撮像画像に基づいて検出する事象検出部24と、事象検出部24による事象の検出結果に基づき火災の発生位置を特定して火災を検出する火災検出部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出する火災検出システムであって、
前記監視領域で発生した火災により前記監視領域に存在する所定の面に生じる事象を前記撮像画像に基づいて検出する事象検出部と、
前記事象検出部による事象の検出結果に基づき火災の発生位置を特定して火災を検出する火災検出部と、
を備えたことを特徴とする火災検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の火災検出システムであって、
前記火災検出部は、前記火災の発生位置として、前記監視領域における所定の一方向となる火災の発生位置の奥行方向の位置を特定することを特徴とする火災検出システム。
【請求項3】
請求項2記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、撮像画像内の事象を検出する面の所定の領域に対して画像内事象検出領域を設定し、当該画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
前記火災検出部は、前記事象検出部による画像内事象検出領域における事象の検出結果に基づき前記火災の発生位置の奥行方向の位置を特定する火災検出システム。
【請求項4】
請求項3記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、撮像画像内の前記画像内事象検出領域に対して、撮像画像における何れかの座標軸の軸方向を前記奥行方向に略一致させる所定の画像処理を行うことで射影画像を生成し、当該射影画像により前記画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
前記火災検出部は、前記射影画像において前記事象検出部により検出された事象の奥行方向の位置を特定することにより、前記火災の発生位置の奥行方向の位置を特定することを特徴とする火災検出システム。
【請求項5】
請求項4記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、更に前記奥行方向において所定幅で分割することで前記射影画像を複数の射影分割領域に分け、射影分割領域毎に事象及び事象の特徴量を検出することで前記画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
火災検出部は、複数の射影分割領域のうち、前記事象検出部により最も事象らしい特徴量が検出された領域の奥行方向の位置、或いは事象らしい特徴量が検出された領域の中央部となる奥行方向の位置を前記火災の発生位置の奥行方向の位置と特定することを特徴とする火災検出システム。
【請求項6】
請求項5記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、更に事象が検出された相互に隣接する射影分割領域における画像ゆらぎの相関を判定し、前記画像ゆらぎの相関が高いと判定した射影分割領域に対しては事象が生じていると判定し、前記画像ゆらぎの相関が低いと判定した射影分割領域に対しては事象以外の非火災要因が生じていると判定することを特徴とする火災検出システム。
【請求項7】
請求項2記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、前記監視領域に存在する複数の面の各々に対して事象を検出する処理を行い、
前記火災検出部は、前記事象検出部による複数の面における事象の検出結果に基づき火災の発生位置として、前記火災の発生位置の奥行方向の位置を含む複数の方向における火災の発生位置を特定することを特徴とする火災検出システム。
【請求項8】
請求項1記載の火災検出システムであって、
前記事象検出部は、前記事象として、火災の炎により監視領域に存在する所定の面に生じる照り返しを検出することを特徴とする火災検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出する火災検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置で撮像した監視領域の撮像画像に対して所定の画像処理を施し、火災により発生した炎や煙を撮像画像から検出することで火災を検出できるようにした様々な火災検出装置や火災検出システムが提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
また、火災検出システムでは、火災を検出するときに撮像画像の炎や煙の位置から火災の発生位置を特定することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-114930号公報
【特許文献2】特開2020-057236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、撮像画像における火災の発生位置(炎や煙の位置)が特定できたとしても、撮像画像は3次元空間である監視領域を透視投影法で撮像した2次元画像であることから、撮像画像における火災の発生位置の座標が監視領域における実際の高さ方向の成分及びその高さ方向に直行する奥行方向の成分の各々をどの程度含んでいるかまでは特定できず、監視領域における実際の火災の発生位置や規模を正確に特定するのが困難であった。
【0006】
また、従来の撮像画像を用いた火災の検出では撮像画像内に炎や煙が写っている必要があり、火源が遮蔽物等により遮蔽され撮像画像に炎や煙が写らない場合には、炎や煙を撮像画像から検出することができずに正しく火災を検出することができない問題があった。また、撮像画像に炎や煙が写っていないため、当然に火災の発生位置を特定することもできない。
【0007】
本発明は、撮像画像から監視領域における実際の火災の発生位置を特定することを可能とし、更には火災による炎や煙が撮像画像に写っていなくとも火災の検出を可能とする火災検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(火災検出システム)
撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出する火災検出システムであって、
監視領域で発生した火災により監視領域に存在する所定の面に生じる事象を撮像画像に基づいて検出する事象検出部と、
事象検出部による事象の検出結果に基づき火災の発生位置を特定して火災を検出する火災検出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
(監視領域における奥行方向の位置の特定)
火災検出部は、火災の発生位置として、監視領域における所定の一方向となる火災の発生位置の奥行方向の位置を特定する。
【0010】
(画像内事象検出領域)
事象検出部は、撮像画像内の事象を検出する面の所定の領域に対して画像内事象検出領域を設定し、当該画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
火災検出部は、事象検出部による画像内事象検出領域における事象の検出結果に基づき火災の発生位置の奥行方向の位置を特定する。
【0011】
(射影画像)
事象検出部は、撮像画像内の画像内事象検出領域に対して、撮像画像における何れかの座標軸の軸方向を奥行方向に略一致させる所定の画像処理を行うことで射影画像を生成し、当該射影画像により画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
火災検出部は、射影画像において事象検出部により検出された事象の奥行方向の位置を特定することにより、火災の発生位置の奥行方向の位置を特定する。
【0012】
(射影分割領域)
事象検出部は、更に奥行方向において所定幅で分割することで射影画像を複数の射影分割領域に分け、射影分割領域毎に事象及び事象の特徴量を検出することで画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、
火災検出部は、複数の射影分割領域のうち、事象検出部により最も事象らしい特徴量が高く検出された領域の奥行方向の位置、或いは事象らしい特徴量が検出された領域の中央部となる奥行方向の位置を火災の発生位置の奥行方向の位置と特定する。
【0013】
(画像ゆらぎによる事象の判定)
事象検出部は、更に事象が検出された相互に隣接する射影分割領域における画像ゆらぎの相関を判定し、画像ゆらぎの相関が高いと判定した射影分割領域に対しては事象が生じていると判定し、画像ゆらぎの相関が低いと判定した射影分割領域に対しては事象以外の非火災要因が生じていると判定する。
【0014】
(複数の面に対する事象の検出)
事象検出部は、監視領域に存在する複数の面の各々に対して事象を検出する処理を行い、
火災検出部は、事象検出部による複数の面における事象の検出結果に基づき火災の発生位置として、火災の発生位置の奥行方向の位置を含む複数の方向における火災の発生位置を特定する。
【0015】
(火災による照り返しの検出)
事象検出部は、事象として、火災の炎により監視領域に存在する所定の面に生じる照り返しを検出する。
【発明の効果】
【0016】
(火災検出システムの効果)
撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出する火災検出システムであって、監視領域で発生した火災により監視領域に存在する所定の面に生じる事象を撮像画像に基づいて検出する事象検出部と、事象検出部による事象の検出結果に基づき火災の発生位置を特定して火災を検出する火災検出部と、を備えるようにしたため、火災により監視領域の所定の面に生じる事象(例えば、火災の炎により所定の面に生じる照り返し)及びその位置情報等を利用することで、火災の発生位置をより正確に特定することを可能とする。
【0017】
特に、所定の一方向(奥行方向)に延在するトンネルや建物の廊下等では、火災の発生位置の特定として、その延在する方向における位置を特定できることが重要であるため、火災検出システムは火災の発生位置として、監視領域における所定の一方向となる火災の発生位置の奥行方向の位置を特定することを可能としている。
【0018】
また、火災の検出は火災の炎や煙による検出ではなく、火災により監視領域の所定の面に生じる事象を撮像画像から検出することで行われるため、遮蔽物等により撮像装置で炎や煙が撮像できなくとも火災を検出することを可能とする。
【0019】
(画像内事象検出領域の効果)
また、事象検出部は、撮像画像内の事象を検出する面の所定の領域に対して画像内事象検出領域を設定し、当該画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、事象検出部による画像内事象検出領域における事象の検出結果に基づき火災の発生位置の奥行方向の位置を特定するようにしたため、事象の検出が困難な領域を検出領域に含むことなく、事象が検出可能な領域だけを検出領域とすることが可能となり、事象の検出精度を向上させることを可能とする。また、事象を検出する面の一部を検出領域とすることができるため、事象の検出処理に掛かる負荷を軽減することを可能とする。
【0020】
(射影画像の効果)
また、事象検出部は、撮像画像内の画像内事象検出領域に対して、撮像画像における何れかの座標軸の軸方向を奥行方向に略一致させる所定の画像処理を行うことで射影画像を生成し、当該射影画像により画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、射影画像において事象検出部により検出された事象の奥行方向の位置を特定することにより、火災の発生位置の奥行方向の位置を特定するようにしたため、監視領域における奥行方向の距離が画像内において一定の距離となる射影画像を用いて事象の検出処理を行うことになり、火災の発生位置の奥行方向の位置をより正確かつ容易に特定することを可能とする。
【0021】
(射影分割領域の効果)
また、事象検出部は、更に奥行方向において所定幅で分割することで射影画像を複数の射影分割領域に分け、射影分割領域毎に事象及び事象の特徴量を検出することで画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、複数の射影分割領域のうち、事象検出部により最も事象らしい特徴量が高く検出された領域の奥行方向の位置、或いは事象らしい特徴量が検出された領域の中央部となる奥行方向の位置を火災の発生位置の奥行方向の位置と特定するようにしたため、射影画像をより細分化した射影分割領域を用いて事象の検出処理を行うことになり、火災の発生位置の奥行方向の位置をより正確かつ容易に特定することを可能とする。
【0022】
(画像ゆらぎによる事象検出の効果)
また、事象検出部は、更に事象が検出された相互に隣接する射影分割領域における画像ゆらぎの相関を判定し、画像ゆらぎの相関が高いと判定した射影分割領域に対しては事象が生じていると判定し、画像ゆらぎの相関が低いと判定した射影分割領域に対しては事象以外の非火災要因と判定するようにしたため、例えば火災の炎により所定の面に生じる照り返しのように炎と同様のゆらぎ周波数を持つ事象を、炎に近い色彩の面や照明等の非火災要因とより区別して検出することを可能とし、火災の誤検出を抑制・防止することを可能とする。
【0023】
(複数の面に対する事象の検出による効果)
また、事象検出部は、監視領域に存在する複数の面の各々に対して事象を検出する処理を行い、火災検出部は、事象検出部による複数の面における事象の検出結果に基づき火災の発生位置として、火災の発生位置の奥行方向の位置を含む複数の方向における火災の発生位置を特定するようにしたため、火災の発生位置の奥行方向に加えて、例えば奥行方向に直行する左右方向の位置を特定することができ、火災の発生位置の位置をより正確に特定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】火災検出システムの構成の一例を示した説明図である。
【
図3】画像内事象検出領域が設定された撮像画像の一例を示した説明図である。
【
図4】射影画像及び分割した射影分割領域の一例を示した説明図である。
【
図5】照り返しが生じたときの射影分割領域の概念図を示した説明図である。
【
図6】火災検出動作の一例をフローチャートで示した説明図である。
【
図7】
図6に示した火災検出動作における事象検出動作の一例をフローチャートで示した説明図である。
【
図8】右壁面及び左壁面に対して画像内事象検出領域が設定された撮像画像の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る火災検出システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0026】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出する火災検出システムに関するものである。尚、「火災検出システム」は、「火災検出設備」及び「火災検出装置」としての概念を含むものである。
【0027】
ここで、「監視領域」とは、監視の対象となる領域であり、一定の広がりをもった屋外或いは屋内の空間であり、火災検出システムが監視領域に存在する所定の面に生じる事象を検出することから、「監視領域」には壁、床、天井等の所定の面を有する構造物が存在しており、例えば建物の部屋、廊下、階段等の領域を含む概念であり、特にトンネルや廊下等の一方向に延在する空間を監視領域の対象としている。
【0028】
また、「撮像装置」とは、監視領域に設置され、監視領域を撮像するものであり、例えばITVカメラなどの動画を撮像するテレビカメラや監視カメラ等の概念を含むものである。
【0029】
そして、実施形態の火災検出システムは、撮像装置により監視領域を撮像した撮像画像に基づいて火災を検出するために、事象検出部と火災検出部を備えることを特徴とする。
【0030】
「事象検出部」は、監視領域で発生した火災により監視領域に存在する所定の面に生じる事象を撮像画像に基づいて検出するものであり、「火災検出部」は、事象検出部による事象の検出結果に基づき火災の発生位置を特定して火災を検出するものである。
【0031】
ここで、事象検出部により事象を検出する「所定の面」は、1つの面に限られず、監視領域に複数の面が存在するのであれば複数の面を対象に事象を検出しても良く、例えばトンネルや廊下のように進行方向を除く各方向が囲まれた空間にあっては、進行方向を奥行方向とした場合に、上下方向に存在する天面及び床面、左右方向に存在する壁面から任意の面が選択される。
【0032】
また、事象検出部により検出される「事象」は、監視領域で発生した火災に起因して監視領域に存在する所定の面に生じるものであれば任意であり、例えば火災の炎により監視領域に存在する所定の面に生じる「照り返し」等が含まれる。
【0033】
また、火災検出部により特定される「火災の発生位置」は、厳密に火災の発生位置を特定するものに限らず、例えば監視領域における所定の一方向となる火災の発生位置の奥行方向の位置を特定するものであっても良い。特に、監視領域がトンネルや廊下のように一方向に延在する空間にあっては、火災の発生位置を特定するにあたり、その延在する方向における位置を特定するのが重要であり、延在する方向に直行する他の2方向についての位置が特定されない場合であっても、十分に火災の発生位置を特定したことになることから、所定の一方向となる火災の発生位置の奥行方向の位置を特定する火災検出部であっても、その火災検出部は火災の発生位置を特定する機能を十分に有していることになる。尚、「奥行方向」とは、3つの軸が相互に直行する3次元空間における1つの軸における軸方向であり、監視領域における「奥行方向」をどの方向に設定するかは任意であり、「奥行方向」以外の2つの軸方向は「高さ方向」及び「左右方向」と呼ぶこととする。
【0034】
また、火災検出部が火災の発生位置の特定及び火災の検出に用いる「事象検出部による事象の検出結果」は、事象が生じているか否かの判定結果、その判定結果を判定するに至るために算出された所定の情報等、火災検出部による火災の発生位置の特定及び火災の検出に必要な任意の情報を含むものである。
【0035】
また、事象検出部は、撮像画像内の事象を検出する面の所定の領域に対して画像内事象検出領域を設定し、当該画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、事象検出部による画像内事象検出領域における事象の検出結果に基づき火災の発生位置の奥行方向の位置を特定するものである。
【0036】
ここで、「画像内事象検出領域」の数やサイズは任意であり、「画像内事象検出領域が設定される所定の領域」は、事象を検出する面の全域であってもその面の一部の領域であっても良く、また、複数の面に設定されても良く、例えばトンネルのように車両が通行する監視領域にあっては、通行する車両により妨げられる領域や照明が設置される領域等については画像内事象検出領域から除外するように設定しても良い。
【0037】
また、事象検出部は、撮像画像内の画像内事象検出領域に対して、撮像画像における何れかの座標軸の軸方向を奥行方向に略一致させる所定の画像処理を行うことで射影画像を生成し、当該射影画像により画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、射影画像において事象検出部により検出された事象の奥行方向の位置を特定することにより、火災の発生位置の奥行方向の位置を特定するものである。
【0038】
ここで、「撮像画像における何れかの座標軸の軸方向を奥行方向に略一致させる所定の画像処理」とは、2次元平面である撮像画像における2つの座標軸(X軸、Y軸)の何れかの軸方向を監視領域における奥行方向に略一致させて、実際の奥行方向の所定の距離が画像内の奥行方向に合わせた何れかの座標軸の軸方向において一定の距離となる画像に補正する処理であり、例えば公知の射影変換等を含むものである。
【0039】
また、事象検出部は、更に奥行方向において所定幅で分割することで射影画像を複数の射影分割領域に分け、射影分割領域毎に事象及び事象の特徴量を検出することで画像内事象検出領域に生じる事象を検出し、火災検出部は、複数の射影分割領域のうち、事象検出部により最も事象らしい特徴量が高く検出された領域の奥行方向の位置、或いは事象らしい特徴量が検出された領域の中央部となる奥行方向の位置を火災の発生位置の奥行方向の位置と特定するものである。
【0040】
ここで、分割される「射影分割領域」の数やサイズは任意であり、サイズ(奥行方向における幅)を小さくし、射影分割領域の数が増えるほど、火災の発生位置の奥行方向の位置をより正確に特定することを可能とする。
【0041】
また、「事象の特徴量」は、事象が生じているか否かを判定するために算出された、事象の検出結果に含まれる所定の情報の1つであり、特徴量が検出対象の事象の特徴量の値に近い程、事象が生じている可能性が高いことを示すものである。例えば、検出する事象が「火災による照り返し」である場合には、炎により発生する「照り返し」は炎に似た特徴を有することから、事象検出部は「炎らしい色」や「炎らしいゆらぎ」に関する特徴量を算出し、照り返しが生じているか否かを検出する。
【0042】
また、事象検出部は、更に事象が検出された相互に隣接する射影分割領域における画像ゆらぎの相関を判定し、画像ゆらぎの相関が高いと判定した射影分割領域に対しては事象が生じていると判定し、画像ゆらぎの相関が低いと判定した射影分割領域に対しては事象以外の非火災要因が生じていると判定するものである。
【0043】
例えば火災による照り返しのように検出する事象が炎に似た特徴を有する場合には、事象が「炎らしいゆらぎ」の特徴を有していることになり、「炎らしいゆらぎ」の特徴は撮像画像や撮像画像を画像処理した射影画像において画像ゆらぎとして現れることになる。このため、事象が検出された射影分割領域において、本当に照り返しが生じている場合には、「炎らしいゆらぎ」に対応した画像ゆらぎが生じているのに対して、照明等の非火災要因を事象と検出している場合には「炎らしいゆらぎ」に対応した画像ゆらぎは生じていないことになり、これを相互に隣接する射影分割領域における画像ゆらぎの相関として判定することで区別し、非火災要因を事象として検出することを抑制・防止している。
【0044】
また、事象検出部は、監視領域に存在する複数の面の各々に対して事象を検出する処理を行い、火災検出部は、事象検出部による複数の面における事象の検出結果に基づき火災の発生位置として、火災の発生位置の奥行方向の位置を含む複数の方向における火災の発生位置を特定するようにしても良い。
【0045】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、対象とする監視領域が「奥行方向に延在するトンネル」であり、事象検出部により検出する事象が「火災による照り返し」である場合で説明する。
【0046】
[実施形態の具体的内容]
火災検出システムの実施形態について、以下のように分けて説明する。
a.火災検出システム
b.事象検出部
b1.画像内事象検出領域設定部
b2.射影画像生成部
b3.射影画像分割部
b4.事象判定部
c.火災検出部
c1.火災発生位置特定部
c2.火災判定部
d.火災検出動作
e.複数の面に対する事象の検出
e1.事象検出部
e2.火災検出部
f.本発明の変形例
【0047】
[a.火災検出システム]
まず、火災検出システムの構成について説明する。当該説明にあっては、火災検出システムの構成の一例を示した
図1を参照する。
【0048】
火災検出システム1は、監視領域となるトンネルを撮像した撮像画像に基づき、トンネルで発生した火災をその発生位置を特定して検出するシステムであり、
図1に示すように、撮像装置10と火災検出装置20を備えている。尚、撮像装置10と火災検出装置20は一体化した1つの装置としても良い。
【0049】
撮像装置10は、例えばトンネル内の所定の位置に設置された監視カメラであり、火災検出装置20との間で通信可能に接続されている。撮像装置10と火災検出装置20との間での通信は有線であっても無線であってもよく、USBケーブルを介した通信や無線LANによる通信等の任意の通信方法が採用される。
【0050】
また、撮像装置10は、監視領域を逐次、例えば毎秒30フレーム又は毎秒60フレームのフレーム速度で撮像したカラーのフレーム画像の連続からなる動画を撮像しており、撮像した動画から毎秒30フレーム又は毎秒60フレームとなる監視領域のRGBフレーム画像(撮像画像)の画像データを火災検出装置20に送信している。ここで、撮像装置10から火災検出装置20に送信される画像データのサイズは任意であるが、例えば1920×1080ピクセルとする。また、カラーのフレーム画像のカラー画素は、R画素、G画素、B画素から構成され、それぞれ8ビットデータであることから、1カラー画素の画素値は24ビットデータとなる。
【0051】
火災検出装置20は、ハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、画像取得部22、事象検出部24、火災検出部26、表示操作部28及び記憶部30を備えている。
【0052】
画像取得部22は、撮像装置10から送信される撮像画像の画像データ(以下、撮像画像と呼ぶ)を受信し、例えば事象検出部24及び表示操作部28に対して受信した撮像画像を送信する。その他にも、例えば記憶部30に撮像画像を送信して、記憶部30で撮像画像を記憶させるようにしても良い。なお、撮像画像については、射影変換やHough変換、消失点検出等の後述する処理において精度が良くなることから、レンズ歪みの補正を行うことが好適である。
【0053】
事象検出部24は、撮像画像に基づき、トンネルで発生した火災の炎によりトンネルに存在する所定の面に生じる火災による照り返し(事象)を検出するものであり、その機能を実現するために、画像内事象検出領域設定部2410、射影画像生成部2420、射影画像分割部2430及び事象判定部2440を備えている。
【0054】
火災検出部26は、事象検出部24による照り返しの検出結果に基づき、火災を検出すると共に火災の発生位置を特定するものであり、その機能を実現するために、火災発生位置特定部2610及び火災判定部2620を備えている。尚、事象検出部24及び火災検出部26の詳細について、別途後述する。
【0055】
表示操作部28は、画像取得部22から受信した撮像画像を表示し、その他にも火災検出やその設定に必要な所定の情報を表示する表示部と、火災検出システムの準備段階で行う設定やその他必要な操作を行う操作部を備えている。記憶部30は、事象検出部24による事象の検出、火災検出部26による火災の検出及び火災の発生位置の特定に必要な判定条件等や事象や火災の検出結果等を記憶しており、その他にも火災検出やその設定に必要な所定の情報を記憶する。
【0056】
[b.事象検出部]
続いて、事象検出部について説明する。事象検出部24は、前述した通り、撮像画像に基づき、トンネルで発生した火災の炎によりトンネルに存在する所定の面に生じる照り返し(事象)を検出するものである。
【0057】
ここで、撮像装置10により撮像されたトンネル出入口55付近の撮像画像40の一例を示した
図2のように、トンネルは、天面51、床面52、左壁面53及び右壁面54により囲まれており、事象検出部24で照り返しを検出する所定の面は、これら4つの面から1又は複数の面が選択されることになり、事象検出部24の説明にあっては、右壁面54を対象に照り返しを検出する場合で説明する。
【0058】
また、トンネルにおける3次元空間の方向については、
図2に示すように、車両の進行方向を奥行方向とし、相互に直交する3つの方向は左右方向、奥行方向、高さ方向(上下方向)とする。また、上、下、右、左、手前(前)、奥(後)についても同様に
図2で示すように定義される。
【0059】
(b1.画像内事象検出領域設定部)
まず、事象検出部の画像内事象検出領域設定部について説明する。当該説明にあっては、
図2の撮像画像に画像内事象検出領域を設定した撮像画像を示した
図3を参照する。尚、
図3の(A)は画像内事象検出領域が設定された撮像画像を示し、(B)は画像内事象検出領域における奥側の検出限定座標の設定段階を示している。
【0060】
事象検出部24が右壁面54に生じる照り返しを検出できるようにするために、火災検出システム1を動作させる前の準備段階で、画像内事象検出領域設定部2410により、撮像画像40に写っている右壁面54の領域において、照り返しを検出する画像内事象検出領域60を予め設定しておき、記憶部30に記憶させている。画像内事象検出領域60は、撮像画像40に写っている右壁面54の全ての領域を網羅している必要はなく、任意の領域を設定することができる。
【0061】
そして、画像内事象検出領域設定部2410による画像内事象検出領域60の設定方法は任意あるが、以下にその設定方法の一例を示す。
【0062】
一例で示す設定方法では、画像内事象検出領域設定部2410により設定される画像内事象検出領域60は、
図3の(A)に示すように、検出限界座標6010~6040の4点により囲まれた斜線で示す領域となる。
【0063】
画像内事象検出領域60は、例えば右壁面54上部の手前側から奥側を網羅する領域を対象として設定されており、通行する車両等の影響を受けやすく、事象検出部24で照り返しの検出が妨げられる右壁面54の下部については、照り返しの検出領域から除外している。また、トンネルで発生した火災の発生位置を特定するにあたり重要になるのは、車両の進行方向であり、かつトンネルの延在している方向でもある奥行方向における位置であることから、画像内事象検出領域60は、奥行方向における位置を特定できるように手前側から奥側に掛けて網羅されるように領域設定されている。
【0064】
そして、
図3の(A)に示す画像内事象検出領域60を設定するにあたり、まず手前側の検出限定座標6010、6020を設定する。手前側の検出限定座標6010、6020の設定方法としては、例えば表示操作部28に撮像画像40を表示して手動操作により、検出限定座標6010、6020とする座標を設定する。
【0065】
また、その他にも、監視領域に撮像画像40で検出可能なマーカーを現場に設置し、画像内事象検出領域設定部2410又は人為的に撮像画像40上でマーカーを検出し、その検出位置の座標を検出限定座標6010、6020として設定するものや、撮像画像40における端付近や通行等により照り返しの検出が妨げられる恐れのある所定の領域を検出不可領域として設定しておき、当該検出不可領域に検出限定座標を設定できないようにした上で検出限定座標6010、6020を設定するもの等、適宜の方法により手前側の検出限定座標6010、6020を設定すればよい。
【0066】
手前側の検出限定座標6010、6020を設定した後に、奥側の検出限定座標6030、6040を設定する。奥側の検出限定座標6030、6040についても、手前側の検出限定座標6010、6020と同様に手動操作により設定しても良いが、例えば画像内事象検出領域設定部2410が撮像画像40における消失点を求め、消失点と手前側の検出限定座標6010、6020を利用して設定する方法もある。
【0067】
ここで、撮像画像40は3次元空間であるトンネル内を透視投影法で撮像した2次元画像であり、撮像画像40に存在する直線の無限遠は2次元平面では所定の消失点に収束することになる。そして、奥側の検出限定座標6030、6040を設定するために必要な消失点は、奥行方向に対して略平行の直線が収束する消失点である。
【0068】
この消失点を求めるために必要な奥行方向に対して略平行となる直線を抽出するにあたり、撮像画像40内に存在する直線を検出する方法として、例えば公知のHough変換を用いた直線検出がある。Hough変換を用いた直線検出は、カラー画像である撮像画像40をグレー画像に変換するグレースケール化を行い、グレー画像に変換された撮像画像40に対してエッジを検出するエッジ処理を行い、検出されたエッジ情報を持つエッジ画像に対して行われる。
【0069】
また、Hough変換を用いた直線検出によりエッジ画像から検出された直線には、奥行方向に対して略平行の直線以外にも様々な直線が含まれていることから、所定の条件により消失点を求めるために必要な奥行方向に対して略平行となる直線を抽出する。
【0070】
例えば、Hough変換を用いた直線検出により検出される直線には、
図3の(B)に示す直線61~63等の直線が含まれており、直線61、62は奥行方向に対して略平行の直線であり、消失点を求めるために必要な直線であるが、直線63のように左右方向に対して略平行、即ち奥行方向に対して略直交している直線については除外する必要があり、直線63のような左右方向或いは高さ方向に延在する直線については除外するように抽出条件を設定する。
【0071】
そして、
図3の(B)に示すように、直線61、62等の奥行方向に対して略平行となる直線から求められた消失点64に対して、手前側の検出限定座標6010、6020の各々から補助線65を引き、例えばトンネルの出入口55付近のトンネルの外側と内側の境界辺りに引いた境界線66との交点2箇所の座標を奥側の検出限定座標6030、6040として設定することで、検出限定座標6010~6040の全てが設定され、画像内事象検出領域60となる領域が定まることになる。
【0072】
また、画像内事象検出領域設定部2410は、火災検出システム1が火災検出を行うときには、画像取得部22から受信した撮像画像40に設定された画像内事象検出領域60を加えることになる。
【0073】
(b2.射影画像生成部)
次に、事象検出部の射影画像生成部について説明する。当該説明にあっては、射影画像及び射影分割領域を示した
図4を参照する。尚、
図4の(A)は領域内に照明を含んだ画像内事象検出領域が設定された撮像画像を示し、(B)は(A)の画像内事象検出領域から生成された射影画像及び射影分割領域を示している。また、
図4に示す撮像画像及び射影画像では、画像上の座標位置情報を示すためのX座標軸(X1座標軸又はX2座標軸)及びY座標軸(Y1座標軸又はY2座標軸)が示されており、画像の左上の画素の座標を(0、0)としている。
【0074】
火災検出装置20では、火災の検出と共に火災の発生位置を特定できるように、照り返しを検出すると共にその照り返しの発生位置、具体的には奥行方向における照り返しの発生位置を特定できるように必要がある。そのため、射影画像生成部2420は、奥行方向における照り返しの発生位置の特定を容易とする画像を生成するために、撮像画像40内の画像内事象検出領域60に対して、所定の画像処理として、例えば公知の射影変換を行って射影画像を生成する処理を行う。尚、奥行方向における照り返しの発生位置の特定を容易とする画像処理であれば、その処理方法は限定されない。
【0075】
射影画像生成部2420による射影変換は、例えば画像内事象検出領域60が存在する撮像画像40のX1座標軸の軸方向をトンネルにおける奥行方向となるX2座標軸に略一致させると共に、Y1座標軸の軸方向をトンネルにおける高さ方向となるY2座標軸に略一致させた画像に変換する処理である。具体的には、3行3列からなる所定の射影変換行列を用いて、X1座標とY1座標で表せる撮像画像40における検出限定座標6010~6040の各座標を、X2座標(奥行方向における座標)とY2座標(高さ方向における座標)で表せる射影画像の座標に変換することで、撮像画像40における画像内事象検出領域60を奥行方向における座標と高さ方向における座標で表現した画像に変換する。
【0076】
射影変換行列は、撮像画像40(X1座標とY1座標で表せる画像)における4点の座標と、射影画像(X2座標とY2座標で表せる画像)における対応する4点の座標から求めることができるため、例えば現場にマーカーを設置する等をして監視領域における4点の位置を指定しておき、その4点について撮像画像40における座標と、射影画像における座標を特定し、その各画像の4点の座標から射影変換行列を予め求めて記憶部30に記憶しておく。
【0077】
また、射影画像生成部2420により生成される射影画像は、上記以外の射影変換を行っていてもよい。実施形態にあっては、例えば
図4の(B)に示すように、射影変換を行った後に、画像内事象検出領域60の手前側が左側に位置し、奥側が右側に位置するように反転させ、画像内事象検出領域60の左上に位置する検出限定座標6010の座標が(0、0)となるように補正した、サイズ800x100でカラー画像の射影画像70が生成するような処理を含む射影変換の処理が行われる。
【0078】
また、撮像画像40は、3次元空間であるトンネル内を透視投影法で撮像した2次元画像であることから、トンネル内の奥行方向における所定の距離が撮像画像40上の手前側では長く、奥側では短くなるように写り、
図4の(A)に示すように、画像内事象検出領域60に等間隔で設けられている同一のサイズの照明56は手前側ではサイズが大きく、照明56間の間隔が広く写るのに対して、奥側ではサイズが小さく、照明56間の間隔が狭く写ることになる。
【0079】
これに対して、射影画像70では、奥行方向における所定の距離が射影画像70上で位置に掛かわらず同じ距離で表現されることから、
図4の(B)に示すように、画像内事象検出領域60の奥側に位置する画像である程、撮像画像40と比較してX2座標軸の軸方向(奥行方向)に間延びした画像となり、X2座標軸の軸方向における照明56の幅及び照明56間の間隔は位置に掛かわらず、略均一に変換されている。
【0080】
また、実施形態の射影画像70にあっては、X2座標軸の軸方向(奥行方向)における100ピクセル分の距離がトンネル内の奥行方向における5m分の距離に相当するようになっており、例えば射影画像70におけるX2座標0の位置とトンネル内の位置関係、及び射影画像70のX2座標軸の軸方向における距離と実際のトンネル内の奥行方向における距離との対応関係(100ピクセル=5m等の情報)を予め記憶部30に記憶しておくことで、射影画像70で検出された照り返しの位置から実際のトンネル内の奥行方向における照り返しの発生位置を特定することを可能にしている。
【0081】
(b3.射影画像分割部)
次に、事象検出部の射影画像分割部について説明する。当該説明にあっては、引き続き
図4を参照する。
【0082】
射影画像分割部2430は、前述した射影画像生成部2420が撮像画像40内の画像内事象検出領域60から生成した射影画像70を奥行方向となるX2座標軸の軸方向において所定の幅で分割することで、射影画像70を複数の射影分割領域に分ける。
【0083】
ここで、分割される射影分割領域の数や各射影分割領域のサイズは任意であり、実施形態では
図4の(B)に示すように、X2座標軸の軸方向における幅が100ピクセル(5m分)となるように、射影画像分割部2430は、射影画像70を8つの射影分割領域7010~7080に分割する。
【0084】
(b4.事象判定部)
次に、事象検出部の事象判定部について説明する。
【0085】
事象判定部2440は、射影画像分割部2430により分割された8つの射影分割領域7010~7080の各々に対して照り返しが生じているか否かを判定する。また、照り返しは火災の炎により生じる事象であることから、従来の火災検出システムでも用いられる炎の判定と同様に、炎らしい特徴の特徴量を算出し、その特徴量に基づき照り返しが生じているか否かを判定する。
【0086】
一例として、実施形態では、事象判定部2440が、炎らしい特徴として「色」及び「ゆらぎ」の特徴量に基づき照り返しが生じているか否かを判定する場合で説明する。
【0087】
まず、事象判定部2440は、8つの射影分割領域7010~7080から1つの射影画像分割領域、例えば射影分割領域7010を選択し、射影分割領域7010から所定の抽出条件に基づき、炎らしい色が示されている領域である照り返し候補領域を抽出する。
【0088】
事象判定部2440による照り返し候補領域の抽出は、射影分割領域7010における色情報に基づいて行われ、射影分割領域7010の色情報がRGBにて表現されているため、例えば事象判定部2440は、所定の抽出条件として、赤色成分となるRが所定の閾値を超える色情報をもつ領域を照り返し候補領域として抽出する。また、照り返し候補領域の抽出は、Rを条件とした抽出に限られたものではなく、RGBで表現される射影分割領域7010を、色情報を「色相」(H:Hue)、「彩度」(S:Saturation)、「明度」(V:Value)の三つの要素の強弱の組み合わせで表現するHSVの画像に変換し、その色相Hや彩度Sを条件として照り返し候補領域を抽出するようにしても良い。
【0089】
また、事象判定部2440は、照り返し候補領域を抽出したときに、合わせて射影分割領域全体の画素数(領域画素数)と照り返し候補領域の画素数(照り返し候補画素数)との比率(=照り返し候補画素数/領域画素数)を算出する。
【0090】
続いて、事象判定部2440は、照り返し候補領域が抽出されたときには、照り返し候補領域の抽出後に、照り返し候補領域において、炎らしいゆらぎの特徴量として、照り返し候補領域における画像ゆらぎのゆらぎ周波数を算出する。ゆらぎ周波数の算出方法としては、例えば時系列的に連続する射影分割領域7010の照り返し候補領域における所定の閾値を超える輝度の総和の時系列変化をフーリエ変換することにより算出するものがある。
【0091】
事象判定部2440は、算出されたゆらぎ周波数が炎のゆらぎ周波数と見做せる所定の周波数条件を充足する場合には、射影分割領域7010に照り返しが生じていると判定する。このように、炎の色に関する特徴に合わせて炎のゆらぎに関する特徴に基づき照り返しが生じているか否かを判定することで、炎の色に近似した塗装や照明等の非火災要因を照り返しと誤判定することを防止することを可能とする。
【0092】
事象判定部2440は、射影分割領域7010と同様に、射影分割領域7020~7080についても炎の色及び炎のゆらぎに関する特徴に基づき照り返しが生じているか否かを判定し、全ての射影分割領域の判定が終了したときには、算出した領域画素数と照り返し候補画素数との比率やゆらぎ周波数(特徴量)、及び各射影分割領域の判定結果を含む、照り返しの検出結果を火災検出部26に送信する。
【0093】
また、事象判定部2440は、1つの射影分割領域で照り返し候補領域の抽出及びゆらぎ周波数の判定が終了した段階で照り返しが生じているか否かを判定せずに、全ての射影分割領域で照り返し候補領域の抽出及びゆらぎ周波数の判定が終了した後に、照り返し候補領域が抽出された射影分割領域について、隣接する射影分割領域のゆらぎについて相関を判定し、ゆらぎの相関の判定結果を踏まえた上で、射影分割領域の各々に照り返しが生じているか否かを判定するようにしても良い。
【0094】
例えば射影分割領域7040~7060の3つの射影分割領域で照り返し候補領域が抽出され、ゆらぎ周波数が算出されたとすると、事象判定部2440は、射影分割領域7040と射影分割領域7050のゆらぎ及び射影分割領域7050と射影分割領域7060のゆらぎの相関をゆらぎ周波数に基づき判定し、ゆらぎの相関が所定の閾値を超えて高い場合には照り返しが生じていると判定し、ゆらぎの相関が所定の閾値以下で低い場合には非火災要因と判定する。尚、射影分割領域7050については、隣接する射影分割領域が2つあり、ゆらぎの相関として、射影分割領域7040とのゆらぎの相関及び射影分割領域7060とのゆらぎの相関の2つあることから、例えばゆらぎの相関の平均値に基づき判定されるものとする。
【0095】
尚、射影分割領域7040~7060の各々で算出されたゆらぎ周波数が炎のゆらぎ周波数と見做せる所定の周波数条件を充足しているのであれば、ゆらぎの相関が所定の閾値以下で低い場合であっても、非火災要因と判定するのではなく、「照り返しが生じている」との判定よりも照り返しの確度が低いことを示す「照り返しが生じている可能性あり」と判定するようにして、照り返しの確度を区別した判定を行うようにしても良い。
【0096】
このように、ゆらぎの相関を判定条件に加えることで、より精度良く照り返しが生じているか否かを判定することを可能とする。
【0097】
[c.火災検出部]
続いて、火災検出部について説明する。火災検出部26は、前述した通り、事象検出部24から送信された照り返しの検出結果に基づき、火災の発生位置を特定すると共に火災を検出するものである。
【0098】
(c1.火災発生位置特定部)
まず、火災検出部の火災発生位置特定部について説明する。当該説明にあっては、照り返しが生じたときの射影分割領域の概念図を示した
図5を参照する。尚、
図5に示す射影分割領域では、射影分割領域7040の右側、射影分割領域7050の全域及び射影分割領域7060の左側で照り返しが生じているものとする。
【0099】
火災発生位置特定部2610は、照り返しが生じていると判定された射影分割領域から、例えば事象検出部24から送信された照り返しの検出結果に含まれる、領域画素数と照り返し候補画素数との比率に基づき火災の発生位置を特定する。
【0100】
図5に示す射影分割領域に対する照り返しの検出結果から火災の発生位置を特定する場合では、事象検出部24の事象判定部2440による判定処理において、照り返しが生じている射影分割領域7040~7060については、照り返し候補領域7090が抽出されているため、照り返し候補領域7090の抽出に合わせて領域画素数と照り返し候補画素数との比率が算出されており、全域で照り返しが発生している射影分割領域7050の領域画素数と照り返し候補画素数との比率が最も高く算出されている。そのため、火災発生位置特定部2610は、領域画素数と照り返し候補画素数との比率が最も高い射影分割領域7050の奥行方向の位置を奥行方向における火災の発生位置として特定する。
【0101】
また、その他にも、火災が発生していない通常状態での射影分割領域の画素値から火災が発生したときの射影分割領域の画素値の変化量に基づき、火災の発生位置を特定するようにしても良い。
【0102】
例えば、事象検出部24の画像内事象検出領域設定部2410が火災検出システム1を動作させる前の準備段階で画像内事象検出領域を設定しているが、このときに、射影画像生成部2420が設定された画像内事象検出領域から射影画像を生成し、射影画像生成部2430が射影画像を射影分割領域に分割し、事象判定部2440が射影分割領域の各々に対して領域全体の平均画素値を算出し、記憶部30に基準画素値として記憶させておく。
【0103】
そして、火災検出システム1の火災検出中に事象検出部24の事象判定部2440で照り返し候補領域の抽出が行われたときに、合わせて射影分割領域全体の平均画素値を算出するようにし、当該射影分割領域全体の平均画素値についても事象検出部24から送信される照り返しの検出結果に含むようにする。
【0104】
火災発生位置特定部2610は、例えばRの画像値について、照り返しの検出結果に含まれる射影分割領域全体の平均画素値と基準画素値との比較を行い、最も変化量が大きかった射影分割領域の奥行方向の位置を奥行方向における火災の発生位置として特定する。尚、カラー画像として処理するのでなく、画像をグレースケール化した上で処理するようにしても良い。
【0105】
(c2.火災判定部)
次に、火災検出部の火災判定部について説明する。
【0106】
火災判定部2620は、例えば事象検出部24から送信された照り返しの検出結果に含まれる、各射影分割領域の判定結果に「照り返しが生じている」と判定されている射影分割領域が含まれている場合には火災と判定し、何れの射影分割領域の判定結果においても「照り返しが生じている」とする判定結果が含まれない場合には非火災と判定する。
【0107】
また、火災判定部2620は、火災か否かを判定する条件として、事象検出部24から送信された照り返しの検出結果以外の要素を条件としても良い。例えば、従来の火災検出システムと同様に、火災判定部2620が火災の炎や煙を更に撮像画像から検出できるようにし、これらの火災の炎や煙の検出結果と照り返しの検出結果を組み合わせた条件により火災か否かを判定するようにしても良い。
【0108】
例えば、撮像画像から火災の炎や煙が検出できるのであれば、火災の炎や煙の検出結果に基づく判定と照り返しの検出結果に基づく判定の双方の判定を行うが、火災の炎や煙の検出結果に基づく判定結果に比重をおいて双方の判定結果を総合的に判断して火災か否かを判定し、撮像画像から火災の炎や煙が検出できない場合には照り返しの検出結果に基づき火災か否かを判定するものであっても良い。
【0109】
[d.火災検出動作]
続いて、火災検出装置による火災検出動作について説明する。当該説明にあっては、火災検出動作の一例をフローチャートで示した
図6、及び
図6に示した火災検出動作における事象検出動作の一例をフローチャートで示した
図7を参照する。
【0110】
図6に示すように、火災検出装置24は、火災検出を開始する前の準備段階で、画像内事象検出領域設定部2410によりトンネルに存在する所定の面に対して画像内事象検出領域60を設定し、記憶部30に記憶させる(ステップS1)。
【0111】
画像内事象検出領域60の設定が完了した後、火災検出装置24は、火災検出を開始し、所定の検出タイミングで、射影画像生成部2420が撮像画像40内の画像内事象検出領域60に対して所定の画像処理を行って射影画像を生成し、射影画像分割部2430が生成された射影画像を奥行方向で射影分割領域に分割する(ステップS2~S5)。
【0112】
ここで、所定の検出タイミングは任意のタイミングであり、例えば画像内事象検出領域60全体の平均画素値が所定の閾値を超えて変化したとき、所定の周期、人為的な操作を検出したときなど、任意の条件を検出タイミングとして設定すれば良い。
【0113】
続いて、事象判定部2440が分割された射影分割領域の各々に対して照り返しの検出動作を行う(ステップS6)。事象判定部2440による照り返しの検出動作は、
図7に示すように、まず射影画像分割部2430により分割された射影分割領域から未処理である1つの射影分割領域を選択し、選択された射影分割領域が所定の抽出条件を充足するかを判定する(ステップS11~S12)。
【0114】
事象判定部2440は、所定の抽出条件を充足した場合には、照り返し候補領域を抽出すると共に、領域画素数と照り返し候補画素数との比率を算出し、続いて、時系列的に連続する射影分割領域の照り返し候補領域からゆらぎ周波数を算出し、算出されたゆらぎ周波数が炎のゆらぎ周波数と見做せる所定の周波数条件を充足するかを判定する。(ステップS13~S16)。一方、事象判定部2440は、所定の抽出条件を充足せずに照り返し候補領域を抽出しなかった場合には、無事象と判定する(ステップS19)。
【0115】
事象判定部2440は、算出されたゆらぎ周波数が所定の周波数条件を充足する場合には照り返しと判定し、算出されたゆらぎ周波数が所定の周波数条件を充足しない場合には非火災要因と判定する(ステップS17、S18)。
【0116】
以上により、1つの射影分割領域に対する判定処理が完了し、事象判定部2440は、未処理の射影分割領域があるかを判定し、未処理の射影分割領域がある場合には、未処理の射影分割領域がなくなるまでステップS11~S19の処理を繰り返し、未処理の射影分割領域がない場合には、算出した領域画素数と照り返し候補画素数との比率やゆらぎの周波数(特徴量)、及び各射影分割領域の判定結果を含む、照り返しの検出結果を生成して火災検出部26に送信する(ステップS20、S21)。
【0117】
再び
図6に戻り、事象判定部2440から照り返しの検出結果を受信した火災判定部26は、火災発生位置特定部2610により、例えば事象検出部24から送信された照り返しの検出結果に含まれる、領域画素数と照り返し候補画素数との比率に基づき火災の発生位置を特定する(ステップS7)。
【0118】
続いて、火災判定部26は、事象検出部24から送信された照り返しの検出結果に含まれる、各射影分割領域の判定結果に基づき火災か否かを判定し、照り返しと判定されている射影分割領域の判定結果が含まれている場合には火災と判定し、何れの射影分割領域の判定結果においても照り返しの判定結果が含まれない場合には非火災と判定し、火災発生位置特定部2610により特定された火災の発生位置や火災判定部2620により判定された判定結果を含む火災の検出結果を、例えば表示操作部28による表示等により報知する(ステップS8、S9)。
【0119】
その後、火災検出装置24は、所定の検出終了タイミングを検出し、一連の検出動作を終了し、再びステップS3前に処理が戻る(ステップS10)。ここで、所定の検出終了タイミングは任意であり、例えば火災復旧の完了を検出したとき、人為的な操作を検出したときなど、任意の条件を検出終了タイミングとして設定すれば良い。
【0120】
また、ステップS8或いはステップS9の後に、火災の検出結果や事象の検出結果等を所定の外部装置に送信するようにしても良く、外部装置で火災や事象の検出結果の確認、表示や音声による報知を可能にしても良い。
【0121】
[e.複数の面に対する事象の検出]
続いて、複数の面に対する事象の検出について説明する。当該説明にあっては、右壁面及び左壁面に対して画像内事象検出領域が設定された撮像画像の一例を示した
図8を参照する。
【0122】
ここまでの火災検出システム1の説明では、事象検出部24により火災による照り返し(事象)を検出する面は1つの面である右壁面54を対象とし、火災判定部26により特定する火災発生の位置は奥行方向における位置を対象としてきたが、事象検出部24により照り返しを検出する面は1つの面に限られたものではなく、事象検出部24により複数の面で生じる照り返しを検出することで、火災判定部26は奥行方向における位置だけでなく、他の方向における位置を特定することを可能とする。
【0123】
(e1.事象検出部)
事象検出部24は、照り返しを検出する面として、例えば左壁面53及び右壁面54を対象とする。
【0124】
画像内事象検出領域設定部2410は、火災検出システム1を動作させる前の準備段階で、
図8に示すように、左壁面53に対して第1画像内事象検出領域80を設定し、右壁面54に対して第2画像内事象検出領域82を設定する。また、第1画像内事象検出領域80と第2画像内事象検出領域82は、奥行方向における領域がほぼ同一となるように設定されている。
【0125】
尚、画像内事象検出領域設定部2410による画像内事象検出領域の設定方法は、2つの画像内事象検出領域を設定すること以外は、「b1.画像内事象検出領域設定部」で説明した内容と同じになることからその説明を省略する。また、第1画像内事象検出領域80と第2画像内事象検出領域82は必ずしも同一サイズとする必要はなく、それぞれ任意のサイズとして設定可能である。
【0126】
射影画像生成部2420は、撮像画像40内の第1画像内事象検出領域80及び第2画像内事象検出領域82の各々に対して、所定の画像処理として、例えば公知の射影変換を行って第1射影画像及び第2射影画像を生成する処理を行う。生成される第1射影画像及び第2射影画像は、基本的に
図4に示した射影画像70と同様であることから、その説明は省略する。
【0127】
射影画像分割部2430は、第1射影画像及び第2射影画像の各々を奥行方向となるX2軸方向で分割することで、第1射影画像を複数の第1射影分割領域に、第2射影画像を複数の第2射影分割領域に分ける。
【0128】
事象判定部2440は、射影画像分割部2430により分割された第1射影分割領域及び第2射影分割領域の各々に対して照り返しが生じているか否かを判定し、全ての射影分割領域に対して判定処理が終了した後に、第1射影分割領域で算出された領域画素数と照り返し候補画素数との比率やゆらぎの周波数(特徴量)及び各第1射影分割領域の判定結果を含む、照り返しの第1検出結果と、第2射影分割領域で算出された領域画素数と照り返し候補画素数との比率やゆらぎの周波数(特徴量)及び各第2射影分割領域の判定結果を含む、照り返しの第2検出結果を火災検出部26に送信する。尚、事象判定部2440による事象の判定方法は、2つの画像内事象検出領域に対し判定処理すること以外は、「b4.事象判定部」で説明した内容と同じになることから、その説明を省略する。
【0129】
尚、1つの事象検出部24が2つ画像内事象検出領域に対する事象の検出を行っているが、1つの画像内事象検出領域に対して1つの事象検出部を備えるように火災検出装置12を構成しても良い。画像内事象検出領域と事象検出部を1対1で対応させておくことで、画像内事象検出領域に対する照り返しの検出処理を平行して行うことを可能とする。
【0130】
(e2.火災検出部)
火災検出部26は、事象検出部24から送信された照り返しの第1検出結果及び第2検出結果に基づき、火災の発生位置を特定すると共に火災を検出することになるが、火災の発生位置として、奥行方向における位置に加えて、左右方向における位置を特定する。
【0131】
火災発生位置特定部2610は、例えば事象検出部24から送信された照り返しの第1検出結果に含まれる、第1射影分割領域における領域画素数と照り返し候補画素数との比率のうち、比率が最も高い第1射影分割領域の位置を奥行方向における照り返しの第1発生位置として特定する。また、同様に、照り返しの第2検出結果に含まれる、第2射影分割領域における領域画素数と照り返し候補画素数との比率のうち、比率が最も高い第2射影分割領域の位置を奥行方向における照り返しの第2発生位置として特定する。
【0132】
そして、火災発生位置特定部2610は、奥行方向における火災の発生位置を、例えば奥行方向における照り返しの第1発生位置と照り返しの第2発生位置との中間位置として特定する。
【0133】
続いて、火災発生位置特定部2610は、例えば各第1射影分割領域で抽出された照り返し候補領域の合計画素数(第1合計画素数)と各第2射影分割領域で抽出された照り返し候補領域の合計画素数(第2合計画素数)との比較に基づき、左右方向における火災の発生位置を特定する。
【0134】
ここで、左右方向における火災の発生位置の特定について、どの程度の解像度で行うかは任意であるが、例えば「左側」、「中央」及び「右側」の3つの区分により特定するものとする。「左側」、「中央」及び「右側」の3つの区分の特定としては、例えば第1合計画素数と第2合計画素数との比率(=第1合計画素数/第2合計画素数)が1よりも大きい所定の第1閾値を超える場合には、第1射影分割領域側、即ち左壁面53側に炎が存在するとして、左右方向における火災の発生位置を「左側」と特定し、第1合計画素数と第2合計画素数との比率が1を下回る所定の第2閾値を下回る場合には、第2射影分割領域側、即ち右壁面54側に炎が存在するとして、左右方向における火災の発生位置を「右側」と特定し、第1合計画素数と第2合計画素数との比率が第1閾値と第2閾値との間に収まる場合には、「中央」として特定する。
【0135】
また、その他にも第1合計画素数と第2合計画素数の比(=第1合計画素数:第2合計画素数)に基づき、左右方向における火災の発生位置を特定するものであっても良い。例えば第1合計画素数と第2合計画素数の比が7:3であった場合には、左右方向における火災の発生位置は、火災の発生位置から左壁面53までの距離と火災の発生位置から右壁面54までの距離の比が3:7となる位置として特定する。
【0136】
また、その他にも合計画素数ではなく、通常状態から火災が発生したときの画素値の合計変化量に基づき左右方向における火災の発生位置を特定するものであっても良い。
【0137】
火災判定部2620は、例えば事象検出部24から送信された照り返しの第1検出結果又は第2検出結果に含まれる、各第1射影分割領域又は第2射影分割領域の判定結果に照り返しと判定されている射影分割領域の判定結果が含まれている場合には火災と判定し、何れの射影分割領域の判定結果においても照り返しの判定結果が含まれない場合には非火災と判定する。
【0138】
以上のように、事象検出部24により左壁面53及び右壁面54で生じる照り返しを検出し、火災判定部26により奥行方向及び左右方向における火災の発生位置を特定することで、より精度良く火災の発生位置を特定することを可能とする。
【0139】
[f.本発明の変形例]
本発明による火災検出システムの変形例について説明する。本発明の火災検出システムは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0140】
(監視領域)
実施形態では、監視領域をトンネルとしたが、監視領域はトンネルに限らず、火災により所定の事象が生じる面が存在する監視領域であれば本発明の火災検出システムは適用できるものである。
【0141】
(火災検出システム)
実施形態では、1つの撮像装置と1つの火災検出装置を備える構成であったが、対象とする監視領域を複数の区画に分け、各区画に撮像装置を設置するようにしても良い。また、撮像装置を複数とする場合に、火災検出装置は1つであっても、撮像装置の数に対応して複数の火災検出装置を備えるものであっても良い。また、複数の火災検出装置を備える場合に、全ての火災検出装置の動作を管理する上位装置を備えるようにしても良い。
【0142】
(火災検出装置)
実施形態では、火災検出装置は、表示操作部及び記憶部を備えるものであったが、火災検出装置が表示操作部及び記憶部を備えるのではなく、外部に表示操作装置及び記憶装置を設け、火災検出装置に対して表示操作装置及び記憶装置を接続自在としても良い。また、火災の検出結果を表示操作部による表示により報知しているが、音声出力部を設けて、音声により報知できるようにしても良い。
【0143】
(画像内事象検出領域の設定)
実施形態では、基本的にトンネルの進行方向となる奥行方向における位置を特定することを可能とするために、奥行方向に延在した画像内事象検出領域として説明したが、高さ方向の位置を特定するために高さ方向に延在した画像内事象検出領域や、左右方向の位置を特定するために左右方向に延在した画像事象検出領域を監視領域に存在する所定の面に設定しても良い。また、奥行方向に延在した画像内事象検出領域と左右方向に延在した画像事象検出領域といったように複数の画像内事象検出領域を設定することで、複数方向における位置を特定可能とするようにしても良い。
【0144】
(検出する事象)
実施形態では、事象検出部で検出する監視領域に存在する所定の面に生じる事象は火災による照り返しであったが、検出する監視領域に存在する所定の面に生じる事象は火災による照り返しに限られたものではなく、例えば撮像画像を温度が検出できる熱画像とし、火災による所定の面の表面温度の変化を事象として検出するものや、火災による所定の面に施されたコーティング・塗装の変化を事象として検出するものであっても良い。
【0145】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実 施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0146】
1:火災検出システム
10:撮像装置
20:火災検出装置
22:画像取得部
24:事象検出部
2410:画像内事象検出領域設定部
2420:射影画像生成部
2430:射影画像分割部
2440:事象判定部
26:火災検出部
2610:火災発生位置特定部
2620:火災判定部
28:表示操作部
30:記憶部
40:撮像画像
51:天面
52:床面
53:左壁面:
54:右壁面
55:トンネル出入口
56:照明
60:画像内事象検出領域
6010~6040:検出限定座標
61~63:直線
64:消失点
65:補助線
66:境界線
70:射影画像
7010~7080:射影分割領域
7090:照り返し候補領域
80:第1画像内事象検出領域
82:第2画像内事象検出領域