(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101979
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/04 20060101AFI20250701BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20250701BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B23Q7/04 R
B23Q7/04 M
B23Q3/155 A
B23B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219110
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和哉
【テーマコード(参考)】
3C002
3C033
3C045
【Fターム(参考)】
3C002DD06
3C002FF09
3C002GG02
3C002KK01
3C033BB05
3C033HH05
3C033HH15
3C045BA07
3C045CA05
(57)【要約】
【課題】作業ロボットを機内に備えた工作機械を提供すること。
【解決手段】機体幅方向の一方においてベッドに固定された固定側主軸装置と、主軸同士が前記固定側主軸装置と同軸になるように対向配置され、前記ベッドに対して主軸方向に移動可能に組付けられた可動側主軸装置と、前記可動側主軸装置を挟んで前記主軸と直交する方向に配置され、工具が取り付けられたタレット刃物台が、前記主軸に対して平行方向および直交方向に移動するように構成された、前記可動側主軸装置より高い位置の上側タレット装置および、前記可動側主軸装置より低い位置の下側タレット装置と、前記上側タレット装置または前記下側タレット装置の前記タレット刃物台を前記主軸に対して平行方向に移動させるためのガイドレールに組付けられ、前記固定側主軸装置の近傍を待機場所として同方向に移動可能な作業ロボットと、を有する工作機械。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主軸チャックによって把持したワークに回転を与えるものであり、機体幅方向の一方においてベッドに固定された固定側主軸装置と、
第2主軸チャックによって把持したワークに回転を与えるものであり、主軸同士が前記固定側主軸装置と同軸になるように対向配置され、前記ベッドに対して主軸方向に移動可能に組付けられた可動側主軸装置と、
前記可動側主軸装置を挟んで前記主軸と直交する方向に配置され、前記第1主軸チャックや前記第2主軸チャックに把持されたワークの加工に使用する工具が取り付けられたタレット刃物台が、前記主軸に対して平行方向および直交方向に移動するように構成された、前記可動側主軸装置より高い位置の上側タレット装置および、前記可動側主軸装置より低い位置の下側タレット装置と、
前記上側タレット装置または前記下側タレット装置の前記タレット刃物台を前記主軸に対して平行方向に移動させるためのガイドレールに組付けられ、前記固定側主軸装置の近傍を待機場所として同方向に移動可能な作業ロボットと、
を有する工作機械。
【請求項2】
前記固定側主軸装置の前記第1主軸チャック、前記可動側主軸装置の前記第2主軸チャック、前記上側タレット装置および前記下側タレット装置の各々の前記タレット刃物台が配置され、ワークに対する加工作業が行われる閉空間の加工室と、
前記作業ロボットの待機場所として前記加工室の側壁によって仕切られた待機室と、
を有する請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記加工室の側壁に形成された開口部に開閉可能な側面シャッタが設けられ、前記開口部を通して前記作業ロボットが前記待機室と前記加工室との間を移動可能な請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記作業ロボットは、先端部に交換可能な作業用チャックを備えた多軸ロボットである請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記作業ロボットは、前記固定側主軸装置の前記第1主軸チャックおよび前記可動側主軸装置の前記第2主軸チャックに対するワークの受け渡し、前記上側タレット装置および前記下側タレット装置の各前記タレット刃物台に対する工具の着脱を行うものである請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ロボットを機内に備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、固定工具を用いた旋削機能と回転工具を用いたミーリング機能とを有する工作機械が開示されている。その工作機械は、第1主軸台と第2主軸台とが対向配置され、その上方には工具主軸が配置され、下方には刃物台が配置されている。更に、その工作機械には付加加工用ヘッドおよびワーク把持部の装着が可能なロボットアームが設けられている。ロボットアームの移動機構は、支柱固定されたベース部材に対して水平なリニアガイドおよびラックが設けられ、そのほかピニオンやサーボモータによってロボットアームが直線往復移動するよう構成されている。そして、予め除去加工用の工具を装着した状態で下刃物台または工具主軸を待機させておくことが可能であり、付加加工から除去加工に移行する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例の工作機械は、加工エリアと外部エリアとが仕切られ、移動機構は、その間をロボットアームが移動するよう構成されている。そして、エリアを仕切る側面カバーには開閉可能なシャッタが設けられている。この工作機械は、加工時にはロボットアームが外部エリアへと退避するようになっているが、作業時には機内へと入り込む必要があるため、その移動機構が機内でのスペースを大きくとってしまっている。すなわち、機内の天井にはロボットアームを移動させるリニアガイドが配置され、そのロボットアームが作業位置に移動する範囲までを囲むように、側面カバーが加工エリア内にまで張り出した構造になってしまっている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、作業ロボットを機内に備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械は、第1主軸チャックによって把持したワークに回転を与えるものであり、機体幅方向の一方においてベッドに固定された固定側主軸装置と、第2主軸チャックによって把持したワークに回転を与えるものであり、主軸同士が前記固定側主軸装置と同軸になるように対向配置され、前記ベッドに対して主軸方向に移動可能に組付けられた可動側主軸装置と、前記可動側主軸装置を挟んで前記主軸と直交する方向に配置され、前記第1主軸チャックや前記第2主軸チャックに把持されたワークの加工に使用する工具が取り付けられたタレット刃物台が、前記主軸に対して平行方向および直交方向に移動するように構成された、前記可動側主軸装置より高い位置の上側タレット装置および、前記可動側主軸装置より低い位置の下側タレット装置と、前記上側タレット装置または前記下側タレット装置の前記タレット刃物台を前記主軸に対して平行方向に移動させるためのガイドレールに組付けられ、前記固定側主軸装置の近傍を待機場所として同方向に移動可能な作業ロボットと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、固定側主軸装置において第1主軸チャックに把持されたワークや、対向配置された可動側主軸装置において第2主軸チャックに把持されたワークに対し、旋回割り出しされた上側タレット装置や下側タレット装置の工具によって所定の加工が可能であり、更に固定側主軸装置の近傍を待機場所として同方向に移動可能な作業ロボットによる所定の作業が可能である。そして、作業ロボットの移動を、下側タレット装置のタレット刃物台を移動させるためのガイドレールを利用することにより、作業ロボットに対する専用の移動スペースを機内に確保する必要がなく、工作機械の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】工作機械の一実施形態を示した外観斜視図である。
【
図2】工作機械の一実施形態にいてその内部構造を示した斜視図である。
【
図3】工作機械の一実施形態にいて作業ロボットが組み込まれた内部構造を示した斜視図である。
【
図4】作業ロボットがワーク自動搬送装置として機能している状態を示した工作機械の斜視図である。
【
図5】作業ロボットが移動する状態を示した工作機械の一部拡大図である。
【
図6】作業ロボットが主軸チャックへワークを受け渡しさせる状態を示した工作機械の一部拡大図である。
【
図7】作業ロボットが自動工具交換装置として機能している状態を示した工作機械の一部拡大透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態の工作機械の示した外観斜視図である。
図2および
図3は、本実施形態の工作機械の内部構造を示した斜視図であり、特に
図3には作業ロボットが組み込まれた状態が示されている。この工作機械1は、ワークを加工するための各種加工用装置が、前傾したスラント型のベッド2上に組付けられた小型NC旋盤である。工作機械1は、工具によってワークを加工する閉空間が加工室10として構成され、機体全体が機体カバー9で覆われている。
【0010】
その加工室10内には、各種加工用装置のうちワークに直接関連する部分がシール構造を介して配置されている。工作機械1は、正面から見たベッド2の左右に、ワークを回転可能に把持する第1主軸装置3と第2主軸装置4とが対向配置され、第2主軸装置4の前後には、ワーク加工を行う複数の工具を備えた上側タレット装置5と下側タレット装置6とが配置されている。なお、
図2および
図3では、各種加工用装置における加工室10内の配置が分かるように、第1主軸装置3側の側壁や天井部分などが省略された表現になっている。
【0011】
第1および第2主軸装置3,4は、それぞれの主軸が機体幅方向に水平であり、対向配置によって主軸同士が同軸上に位置している。本実施形態では、この第1および第2主軸装置3,4の主軸に平行な方向(ベッド2の左右の幅方向)をZ軸として説明する。そして、第1主軸装置3に対して同軸である第2主軸装置4は、主軸方向(機体幅方向)に移動するよう構成されている。すなわち、第1主軸装置3は、主軸台がベッド2に固定された固定側主軸装置であるのに対し、第2主軸装置4は、Z軸方向に移動可能な可動側主軸装置である。
【0012】
第1主軸装置3は、ケーシングにスピンドルが回転自在に設けられ、そのスピンドルと一体の第1主軸チャック11がスピンドルモータによって回転するよう構成されている。従って、加工室10内では、第1主軸チャック11に把持されたワークWに所定の回転が与えられるようになっている。第2主軸装置4も同じく、ケーシングに回転自在なスピンドルが設けられ、そのスピンドルと一体の第2主軸チャック13がスピンドルモータによって回転するよう構成されている。第2主軸チャック13は、加工室10内において第1主軸チャック11の反対側に位置し、第1主軸チャック11から受け取ったワークWに回転が与えられるようになっている。
【0013】
工作機械1は、2タレットの対向2軸旋盤であり、第2主軸装置4を挟むようにして上側タレット装置5と下側タレット装置6とが配置されている。工作機械1は、ベッド2が前傾しているため、機体奥の上側タレット装置5が第2主軸装置4よりも高い位置にあり、機体手前側の下側タレット装置6が第2主軸装置4よりも低い位置に配置されている。上側および下側タレット装置5,6は同じ構造であって、円盤状のタレット刃物台15,16に複数の工具(タレット工具)Tが円周方向に等間隔で配置され、着脱可能な状態で取り付けられている。
【0014】
上側および下側タレット装置5,6は、工具Tを備えたタレット刃物台15,16が加工室10内に位置し、旋回によって加工に使用される工具Tが割り出しされるようになっている。更に、そのタレット刃物台15,16は、加工室10内をZ軸方向および、そのZ軸に直交する鉛直方向と、ベッド2上面の傾きと同じ45度の方向に移動するよう構成されている。本実施形態では、この鉛直面な方向をY軸とし、ベッド2の傾きの方向をX軸として説明する。
【0015】
Z軸方向に移動可能な構造をもつ第2主軸装置4、上側および下側タレット装置5,6は、いずれもベッド2に対してZ軸に平行な2本ずつのガイドレールが固定され、そこに各装置を搭載したZ軸テーブルのガイドブロックが噛み合うことによってリニアガイドが構成されている。また、移動自在な各装置のZ軸テーブルに対しては、サーボモータの回転出力を直線移動に変換するボールネジ機構が組み込まれている。更に、上側および下側タレット装置5,6は、Y軸方向とX軸方向とにタレット刃物台15,16を移動させる構成が重ねて設けられている。各軸方向の移動機構は、Z軸方向と同様にリニアガイドとボールネジ機構とによって構成されている。
【0016】
工作機械1のような構造の2タレットの対向2軸旋盤では、対向する第1主軸装置3および第2主軸装置4の上下(機体前後方向でもある)に、上側および下側タレット装置5,6が配置される。本実施形態では、
図2に示すように、可動側主軸装置である第2主軸装置4側を挟んで配置されている。
【0017】
上側および下側タレット装置5,6が第2主軸装置4側に配置されることにより、機体カバー9によって覆われた機内には、第1主軸装置3側の上下部分に空きスペースが設けられる。逆の配置であれば第2主軸装置4側上下部分に空きスペースが設けられることとなる。そして、第1主軸装置3側(第2主軸装置4側でも同じ)にできた空きスペースは、上側および下側タレット装置5,6におけるタレット刃物台15,16がZ軸方向に移動する延長上にある。
【0018】
そこで、本実施形態では、
図2に示す第1主軸装置3下側の空きスペースが、
図4に示すように、機体カバー9内に設けられた待機室20となり、そこには
図3に示す作業ロボット7が配置されるようになっている。待機室20は、閉空間として構成されている加工室10との間に側壁101があるため(
図4参照)、作業ロボット7は、その側壁101を貫くようにして待機室20と加工室10との間を行き来できるよう構成されている。そのため、タレット刃物台16を移動させるように設けられたガイドレール21が、加工室10部分を超えて待機室20部分にまで延びている。
【0019】
作業ロボット7は、Z軸テーブル22に搭載され、第2主軸装置4などと同様にZ軸方向に移動可能な構成がとられている。そのZ軸テーブル22には下面にガイドブロック固定され、それがガイドレール21と噛み合うことによって摺動可能なリニアガイドが構成されている。また、移動自在なZ軸テーブル22には下面にナット部材が固定され、そこにサーボモータ23の回転軸と連結されたネジ軸24が通されることでボールネジ機構が構成されている。こうして作業ロボット7は、第2主軸装置4の2本のガイドレール21を共有し、その間にはボールネジ機構のネジ軸24,25が軸受け26,27によって同軸上に回転支持されている。
【0020】
作業ロボット7は、Z軸テーブル22に固定された旋回部71に第1アーム72と第2アーム73とが連結され、さらに先端部に作業用チャック74が取り付けられた6軸制御ロボットである(
図6参照)。従って、作業ロボット7は、移動時や待機時には各関節部分を折るようにコンパクトな移動姿勢や待機姿勢、また、作業時には第1アーム72と第2アーム73とが延びた作業姿勢をとることができるようになっている。工作機械1では、この作業ロボット7が、ワークWの搬入及び搬出を行うワーク自動搬送装置として機能し、さらには上側および下側タレット装置5,6に対する自動工具交換装置としても機能するようになっている。
【0021】
作業ロボット7がワーク自動搬送装置として機能する場合、
図4乃至
図6に示すように、工作機械1には待機室20と空間が連続するようにしてワークストッカ50が設置される。ここで、
図4は、作業ロボット7がワーク自動搬送装置として機能している状態を示した工作機械1の斜視図である。
図5は、作業ロボット7が移動する状態を示した工作機械1の一部拡大図である。そして、
図6は、作業ロボット7が第2主軸チャック13へワークを受け渡しする状態を示した工作機械1の一部拡大図である。
【0022】
ワークストッカ50は、ワークWを搭載する複数の搬送パレット51が円周方向に連続して配置され、一列になって一体的に移動するよう構成されている。その円周上には作業ロボット7とのワーク受け渡し位置が設定され、任意の搬送パレット51が当該位置に位置決めされるようにした制御が可能になっている。図面のワークストッカ50は、分かりやすく上部がフレーム52のみで表現されているが、箱型の本体は天井や側面を構成するカバーによって覆われている。一方、
図1に示すように、工作機械1は、待機室20が位置する機体前面には開閉シャッタ18が設けられている。従って、
図4に示すように、工作機械1とワークストッカ50との間でワークWの受け渡しを可能にするためには、ワークストッカ50側の側面に設けられた不図示の開閉扉と、工作機械1の開閉シャッタ18とが開けられ、両空間が連続することになる。
【0023】
作業ロボット7は、こうして待機室20とワークストッカ50内の両空間を通して作業を行うほか、待機室20から加工室10内へと移動して各種作業を行う。そこで、加工室10の側壁101には作業ロボット7が通過可能な開口部111が形成され、そこに開閉可能な側面シャッタ28が設けられている。開口部111は、コンパクトな移動姿勢になった作業ロボット7が通過可能であって、加工室10の傾斜した床面部に対応して形成されている。その開口部111を塞ぐ側面シャッタ28は、詳しく図示しないが、開いた際に
図5に破線で示す位置へと配置されるように、円弧状に開閉移動する開閉機構が構成されている。
【0024】
続いて、本実施形態の工作機械1について作用を説明する。工作機械1におけるワーク加工は、第1主軸装置3側のワークWに対する第1加工と、第2主軸装置4側のワークWに対する第2加工とが可能である。第1加工は、後述するように作業ロボット7によって搬入されたワークWが第1主軸チャック11に把持される。そして、そのワークWに対して上側および下側タレット装置5,6の一方または双方の工具Tにおける所定の加工が行われる。
【0025】
上側および下側タレット装置5,6は、タレット刃物台15,16の旋回によって加工に使用される工具Tがそれぞれ割り出しされる。そして、その工具TがワークWに対する加工位置に送られるように、タレット刃物台15,16が加工室10内を移動する。タレット刃物台15,16は、Z軸方向の移動によって加工室10内を右から左へ第1主軸装置3側に近づき、さらにX軸方向およびY軸方向の移動によってワークWに刃先が当てられる。これにより回転するワークWの旋削加工などが行われる。工作機械1は、こうした第1加工の終了後に、第2主軸装置4へのワークWの移し換えによって第2加工が行われる。
【0026】
第2主軸装置4は、加工室10内を第1主軸装置3へと移動することにより、第2主軸チャック13が加工済みのワークWを反対側から把持し、第1主軸チャック11の解放動作によってワークWの受け渡しが完了する。第2主軸チャック13がワークWを受け取った第2主軸装置4は、そこから加工室10内を右側に移動して加工位置に戻り、そこで上側および下側タレット装置5,6の一方または双方の工具Tによって所定の第2加工が行われる。
【0027】
次に、最初に行われる第1加工に対しては、作業ロボット7によって機外のワークストッカ50から所定のワークWが第1主軸装置3の第1主軸チャック11へと運ばれる。ワークストッカ50には、円周上に複数のワークWが配置されているが、それらは加工前のワークWや加工処理された加工済みのワークWが存在する。その中から所定のワークWがワーク受け渡し位置へと送られて位置決めされる。
【0028】
待機室20内の作業ロボット7は、開閉シャッタ18が開いた機体前面側からワークストッカ50内へと延び、該当するワークWを先端の作業用チャック74によって把持する。その作業ロボット7は、
図5に示すように、ワークWを受け取ったまま移動姿勢になって向きを変えるなどし、加工室10への移動が行われる。工作機械1では、待機室20内で作業ロボット7が待機あるいは作業を行っている場合には、側面シャッタ28などが閉じられて加工室10内で飛び散るクーラントや切粉の影響が防止できている。一方、作業ロボット7が加工室10で作業を行う場合には、側面シャッタ28が開いて側壁101の開口部111の通過が可能になる。
【0029】
開口部111の下をガイドレール21が通っているため、サーボモータ23の駆動によってネジ軸24に所定の回転が与えられ、Z軸テーブル22に搭載された作業ロボット7が、
図5に示す待機室20内の位置から、
図6に示す加工室10内の位置へと移動することができる。なお、加工室10の床面はクーラントが機体前部へと流れ落ちるようにカバーが敷設されている。特に、上側タレット装置5と第2主軸装置4の上段および中段は、各装置を搭載したZ軸テーブルと一体になってZ軸方向に移動する可動カバー31,32が設けられている。また、下段は下側タレット装置6と作業ロボット7とが独立して移動するため、両装置のZ軸テーブルには伸縮可能なテレスコピック式カバー33が連結された構成となっている。
【0030】
加工室10内に移動した作業ロボット7は、
図6に示すように作業姿勢となって先端の作業用チャック74に把持されたワークWが第1主軸チャック11に受け渡しされる。一方、第2主軸装置4では第2加工が終了しているため、作業ロボット7は、第2主軸装置4側へとさらに移動し、第2主軸チャック13から加工済みのワークWを受け取る。ワークWを把持した作業ロボット7は、
図5に示すように移動姿勢となって開口部111を通り、加工室10から待機室20側へと戻る。作業ロボット7によるワーク搬出は、ワーク搬入とは逆の動作によって、加工済みのワークWが待機室20へと運ばれ、さらにワークストッカ50の空いた搬送パレット51へと戻される。
【0031】
ところで、作業ロボット7は、前述したようにワーク自動搬送機能を有するほかに、タレット刃物台15,16に対する自動工具交換機能も有している。
図7は、作業ロボット7が自動工具交換装置として機能している状態を示した工作機械1の一部拡大透視図である。工作機械1は、中央部分に位置する加工室10に対応して、機体カバー9に開閉扉17が設けられ、左右両方向にスライド開閉が可能な構造となっている。一般的にタレット型旋盤での段替え作業は、作業者が開閉扉を開け、タレット刃物台に対する工具交換が行われる。そうした場合、前傾したスラント型のベッド2に組付けられた2タレットの工作機械1は、上側タレット装置5が機体奥に位置することになり、作業者は加工室10内の深い位置で作業しなければならなくなる。
【0032】
この点、工作機械1では、工具Tの取り扱いが可能な作業用チャック75を取り付けることで、作業ロボット7が自動工具交換装置となることが可能になる。作業ロボット7に対する作業用チャック75への交換は、待機室20が加工室10と仕切られているため、工作機械1が稼働中であっても開閉シャッタ18を空けることによって行うことができる。なお、複数の工具Tを収納するツールマガジンについて詳しく図示しないが、例えば待機室20が位置する工作機械1の左側面に配置され、該当する工具Tの選択制御が可能な構成を有している。
【0033】
工作機械1は、作業ロボット7によって該当する工具Tをツールボックスとタレット刃物台15,16との間で着脱を伴う受け渡しが行われる。その際、作業ロボット7は、前述したワークの受け渡しと同様に、コンパクトな移動姿勢となって待機室20と加工室10との間を移動し、各々の空間において作業姿勢によって所定の作業が行われる。例えば、
図7に示すように、第1アーム72と第2アーム73とが延びることにより、先端の作業用チャック75が機内の奥に位置するタレット刃物台16にもとどくため、工具Tの着脱が行われる。
【0034】
よって、工作機械1は、第2主軸装置4をZ軸方向に移動可能にするガイドレール21を利用することにより、作業ロボット7がZ軸方向に移動できるよう構成されているため、作業ロボット7を移動させる専用の移動スペースを機内に確保する必要がなくなり、機体全体の大型化を抑えることができる。2タレットの対向2軸旋盤である工作機械1は、作業ロボット7の存在しない
図2に示すような状態であったとしても加工機本来の機能を発揮するものであるが、そこに大幅な改良を施すことなく、効果的な機能を加えた作業ロボット7の組み付けが可能になる。また、作業ロボット7の待機室20が確保できるため、工作機械1を大型させることもない。
【0035】
作業ロボット7を備えた工作機械1は、ストッカ50との組み合わせることにより、ワークWの自動搬送が可能になり、一定数のワークWに関する連続した自動加工が可能になる。また、工作機械1は、ツールマガジンを組み合わせることにより、工具交換の段替え作業を自動化させることができる。工作機械1は、タレット型のベッド2に構成されたものであることに加え、前述したように作業ロボット7の搭載に関して待機室20は空きスペースが利用されているため、機体全体がコンパクトに構成されている。さらに、ベッド2が前傾していることにより、待機室20の上方には作業ロボット7が干渉することなく動作するための空間が確保できる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、各種加工用装置の配置は変更可能であり、固定側主軸装置と可動側主軸装置の配置を逆にしたようなものであってもよい。
また、前記実施形態では、作業ロボット7が下側タレット装置6のガイドレール21を利用して移動する構成になっているが、上側タレット装置5のガイドレールを利用した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…工作機械 2…ベッド 3…第1主軸装置 4…第2主軸装置 5…上側タレット装置 6…下側タレット装置 7…作業ロボット 10…加工室 11…第1主軸チャック 13…第2主軸チャック 15,16…タレット刃物台 20…待機室 21…ガイドレール 23…サーボモータ 28…側面シャッタ 101…側壁 111…開口部 W…ワーク