(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025101996
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】カズラ監視システムおよびカズラ監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20250701BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20250701BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20250701BHJP
【FI】
G06Q10/20
H02G7/00
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219134
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕士
【テーマコード(参考)】
5G367
【Fターム(参考)】
5G367AD09
(57)【要約】
【課題】どのくらいの期間でカズラが電線に達するかを知得可能にする。
【解決手段】電線Lが架設された電柱P周りを撮影する撮影装置2と、電柱Pに巻き付いたカズラWの上昇速度を含むカズラ情報を記憶し、撮影装置2で撮影された画像に基づいて、カズラWが電柱Pに巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、撮影された画像とカズラ情報とに基づいて、このカズラWがこの電柱Pの電線Lに達するまでの期間を判定する監視サーバ3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が架設された電柱周りを撮影する撮影手段と、
電柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含むカズラ情報を記憶するカズラ情報記憶手段と、
前記撮影手段で撮影された画像に基づいて、カズラが電柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするカズラ監視システム。
【請求項2】
前記カズラ情報に、電柱の支柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含み、
前記判定手段は、前記画像に基づいて、カズラが電柱の支柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項3】
前記電柱の設置地域の気象情報を取得する気象情報取得手段を備え、
前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報と前記気象情報とに基づいて、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報と現在の季節とに基づいて、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記画像に基づいて、電柱周辺の樹木を含む周辺物にカズラが巻き付くか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項6】
前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報が入力されると、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項7】
前記撮影手段が移動体に配設され、
前記撮影手段は、複数の前記電柱周りを連続的に撮影する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカズラ監視システム。
【請求項8】
コンピュータを、
電柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含むカズラ情報を記憶するカズラ情報記憶手段と、
電線が架設された電柱周りが撮影された画像に基づいて、カズラが電柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する判定手段、
として機能させることを特徴とするカズラ監視プログラム。
【請求項9】
前記カズラ情報に、電柱の支柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含み、
前記判定手段は、前記画像に基づいて、カズラが電柱の支柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載のカズラ監視プログラム。
【請求項10】
前記判定手段は、前記画像に基づいて、電柱周辺の樹木を含む周辺物にカズラが巻き付くか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載のカズラ監視プログラム。
【請求項11】
前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報が入力されると、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデルを用いる、
ことを特徴とする請求項8に記載のカズラ監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カズラ(つる草)の電線への接近を監視するカズラ監視システムおよびカズラ監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヤブガラシやクズなどのカズラが電柱や支線(電柱が倒れないように支持する線)に巻き付いて電線に接触すると、停電の原因となるおそれがある。このため、従来、電柱を巡視点検して、電線に接触するおそれがあるカズラを除去・撤去していた。一方、監視装置を電柱に設置して、つる植物(カズラ)と配電線との離隔距離の状況を撮影する、という技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来行っていた巡視点検には、時間と労力を要し、しかも、広域にわたって配設されている多数の電柱を巡視点検するには、多大な時間と労力、費用を要していた。また、従来の巡視点検では、電線へのカズラの接近状況を確認するだけであり、どのくらいの時間・期間でカズラが電線に接触するかは、人が判断しなければならず、適正な判断が困難であった。このため、広域にわたるカズラの除去作業を適正に計画することが困難であった。同様に、特許文献1に記載の監視装置を電柱に設置しても、カズラと電線との離隔距離の状況がわかるだけであり、どのくらいの期間でカズラが電線に接触するかを適正に判断することは困難である。
【0005】
そこで本発明は、どのくらいの期間でカズラが電線に達するかを知得可能なカズラ監視システムおよびカズラ監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電線が架設された電柱周りを撮影する撮影手段と、電柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含むカズラ情報を記憶するカズラ情報記憶手段と、前記撮影手段で撮影された画像に基づいて、カズラが電柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する判定手段と、を備えることを特徴とするカズラ監視システムである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記カズラ情報に、電柱の支柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含み、前記判定手段は、前記画像に基づいて、カズラが電柱の支柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記電柱の設置地域の気象情報を取得する気象情報取得手段を備え、前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報と前記気象情報とに基づいて、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間を判定する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報と現在の季節とに基づいて、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間を判定する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記判定手段は、前記画像に基づいて、電柱周辺の樹木を含む周辺物にカズラが巻き付くか否かを判定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報が入力されると、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1に記載のカズラ監視システムにおいて、前記撮影手段が移動体に配設され、前記撮影手段は、複数の前記電柱周りを連続的に撮影する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、コンピュータを、電柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含むカズラ情報を記憶するカズラ情報記憶手段と、電線が架設された電柱周りが撮影された画像に基づいて、カズラが電柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する判定手段、として機能させることを特徴とするカズラ監視プログラムである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載のカズラ監視プログラムにおいて、前記カズラ情報に、電柱の支柱に巻き付いたカズラの上昇速度を含み、前記判定手段は、前記画像に基づいて、カズラが電柱の支柱に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、前記画像と前記カズラ情報とに基づいて、該カズラが該電柱の電線に達するまでの期間を判定する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項8に記載のカズラ監視プログラムにおいて、前記判定手段は、前記画像に基づいて、電柱周辺の樹木を含む周辺物にカズラが巻き付くか否かを判定する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項8に記載のカズラ監視プログラムにおいて、前記判定手段は、前記画像と前記カズラ情報が入力されると、前記カズラが前記電柱の電線に達するまでの期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデルを用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項8に記載の発明によれば、カズラが電柱に巻き付いている場合に、電柱周りの画像と電柱に巻き付いたカズラの上昇速度とに基づいて、カズラが電線に達するまでの期間(到達期間)が自動的に判定、予測される。つまり、撮影時からあとどのくらいの期間で、カズラが電線に達するかを知得することが可能となり、この到達期間に基づいて、カズラの除去作業を適正に計画(電線に達する前にカズラを除去)することが可能となる。しかも、電柱に巻き付いたカズラの上昇速度と現状に基づいて到達期間を判定するため、適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0018】
請求項2および請求項9に記載の発明によれば、カズラが電柱の支柱に巻き付いている場合に、電柱周りの画像と支柱に巻き付いたカズラの上昇速度などとに基づいて、到達期間が自動的に判定される。このように、カズラが支柱に巻き付いている場合でも、到達期間を判定、知得して、カズラの除去作業を適正に計画することが可能となる。しかも、支柱に巻き付いたカズラの上昇速度や電柱に巻き付いたカズラの上昇速度に基づいて到達期間を判定するため、適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、電柱の設置地域の気象情報に基づいて到達期間が判定されるため、気象によるカズラの成長度合いを考慮した適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、現在の季節に基づいて到達期間が判定されるため、季節によるカズラの成長度合いを考慮した適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0021】
請求項5および請求項10に記載の発明によれば、電柱周辺の樹木を含む周辺物にカズラが巻き付くか否かが判定され、カズラが周辺物に巻き付くと判定された場合には、カズラが電線に達しないことになる。このように、カズラが電線に達しない場合も判定、予測されるため、カズラの除去作業を適正に計画することが可能となる。
【0022】
請求項6および請求項11に記載の発明によれば、機械学習されたカズラ監視用学習モデルを用いて到達期間が出力されるため、より適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、撮影手段が移動体で移動しながら、複数の電柱周りが連続的に撮影されるため、広域にわたって配設されている多数の電柱周りを容易かつ短時間に撮影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態に係るカズラ監視システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1のカズラ監視システムの監視サーバを示す概略構成ブロック図である。
【
図3】この発明の実施の形態において、カズラが電柱の支線に巻き付いた状態を示す図である。
【
図4】この発明の実施の形態において、電柱に巻き付いたカズラが周辺の樹木に向かって伸びた状態を示す図である。
【
図5】
図2の監視サーバのカズラ監視用学習モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態に係るカズラ監視システム1を示す概略構成図である。このカズラ監視システム1は、カズラWの電線Lへの接近を監視するためのシステムであり、撮影装置(撮影手段)2と、監視サーバ3と、を備える。ここで、電柱Pの腕金P1を介して電線Lが架設され、電柱Pには、電柱Pが倒れないようにするための支柱を備えるものがあり、この支柱には、柱状のもののほかに、図示のような線状の支線(地支線)P2も含まれる。この実施の形態では、主に、支線P2を備える場合について説明する。なお、図中符号P3は、支線P2を覆って注意を喚起するための筒状の支線カバーである。
【0027】
撮影装置2は、電柱P周りを撮影する撮影設備であり、この実施の形態では、車両(移動体)Cの上部に配設され、移動しながら複数の電柱P周りを連続的に撮影する。すなわち、カメラとGPSを備え、電柱Pを含む周辺の状態が撮影できるように車両Cに配設されている。そして、車両Cで移動しながらカメラで電柱P周り(電柱P、電線L等を含む)を連続的に撮影し、各時刻における撮影した画像と位置情報(緯度、経度)とを逐次記憶することで、各画像がどの電柱Pの画像であるかがわかるようになっている。また、撮影、記憶した画像と位置情報と撮影日時を逐次、あるいは所定のタイミングで監視サーバ3に送信する。
【0028】
ここで、電柱P周りの状況やカズラWの生育状況などを適正に撮影できる速度で、車両Cが走行する。このように、この実施の形態では、車両Cで移動しながら複数の電柱P周りを連続的に撮影するが、人が個々の電柱P周りを撮影し、撮影した画像と電柱Pの識別情報(電柱番号や位置情報)を監視サーバ3に送信してもよい。
【0029】
監視サーバ3は、電柱Pなどに巻き付いたカズラWが電線Lに達するまでの期間・時間を判定・予測したりするコンピュータであり、この実施の形態では、電柱Pや電線Lを管理する一般送配電事業者の管理事務所に配置されている。この監視サーバ3は、
図2に示すように、主として、入力部31と、表示部32と、通信部33と、記憶部34と、気象情報取得タスク(気象情報取得手段)35と、判定タスク(判定手段)36と、学習タスク37と、これらを制御などする中央処理部38と、を備える。
【0030】
入力部31は、各種情報や指令などを入力するためのインターフェイスであり、具体的には、後述するカズラ情報データベース342にカズラ情報を入力したり、判定タスク36の起動指令を入力したりする。表示部32は、各種データや情報などを表示するディスプレイであり、具体的には、撮影装置2から受信した画像を表示したり、判定タスク36による判定結果を表示したりする。通信部33は、インターネット網や電話通信網などを介して外部と通信するためのインターフェイスであり、具体的には、撮影装置2から画像や位置情報を受信したり、後述する気象情報サーバ4から気象情報を受信したりする。
【0031】
記憶部34は、主として、電柱データベース(電柱情報記憶手段)341と、カズラ情報データベース(カズラ情報記憶手段)342と、カズラ監視用学習モデル343と、カズラ監視用実績データベース344と、を備える。ここでは、データベース341、342について説明し、カズラ監視用学習モデル343とカズラ監視用実績データベース344については後述する。
【0032】
電柱データベース341は、監視対象の各電柱Pに関する情報を記憶するデータベースである。具体的には、電柱Pの識別情報(電柱番号)ごとに、設置地域や位置情報(緯度、経度)、撮影装置2から受信した画像と撮影日時、判定タスク36による判定結果などが記憶されている。ここで、上記のようにして、撮影装置2から受信した画像と位置情報とに基づいて、受信した位置情報に該当する電柱Pに対応付けて、受信した画像を記憶する。
【0033】
カズラ情報データベース342は、カズラWに関する情報(カズラ情報)を記憶するデータベースである。具体的には、電柱Pに巻き付いたカズラWの上昇速度(電柱Pを登っていく速度)V1や、電柱Pの支線P2に巻き付いたカズラWの上昇速度(支線P2を登っていく速度)V2などが記憶されている。また、これらの上昇速度V1、V2が気象情報(天候、気温など)や季節などによってどのように変化するか、などが記憶されている。例えば、通年よりも気温が高い日が続くと上昇速度V1、V2が上がること(上がる程度%)や、雨季から夏季にかけて上昇速度V1、V2が上がること、海沿いの地域の方が山間地域よりも上昇速度V1、V2が下がること(下がる程度%)などが記憶されている。ここで、このような上昇速度(例えば、1日でどのくらい登か)V1、V2などは、実際の現場での観察や実験などで得られた結果に基づいている。
【0034】
気象情報取得タスク35は、電柱Pの設置地域の気象情報を取得するタスク・プログラムである。この実施の形態では、後述する判定タスク36で起動され、判定タスク36における判定対象の電柱Pが設置されている地域の気象情報を取得する。具体的には、各地域の気象情報・気象予測を提供する気象情報サーバ4に通信部33を介してアクセスし、電柱Pの設置地域における短期、中期および長期の気象情報・気象予測を取得する。ここで、気象情報には、予測される温度、湿度、降雨量、日射・日照りなど、カズラWに影響を与える情報が含まれる。
【0035】
判定タスク36は、撮影装置2で撮影された画像に基づいて、カズラWが電柱Pや支線P2に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、画像とカズラ情報とに基づいて、このカズラWがこの電柱Pの電線Lに達するまでの期間・時間(到達期間)を判定するタスク・プログラムである。すなわち、入力部31で起動指令が入力されると起動されたり、定期的に起動されたりし、判定対象の電柱Pの最新の画像を電柱データベース341から取得して、カズラWが電柱Pや支線P2に巻き付いている場合に、このカズラWがこの電柱Pの電線Lに達するまでに、最新の撮影日時からあとどのくらいの期間・時間を要するかを判定・予測する。
【0036】
ここで、判定対象の電柱Pとは、起動時に指定された電柱Pや、起動時に指定された地域に属する電柱Pなどが対象となる。また、定期的に起動される場合には、予め設定された条件に該当する電柱Pが対象となる。例えば、起動時点で最新の撮影日時の画像に対して判定タスク36による判定が行われていないすべての電柱Pを対象とする。そして、このような判定対象のすべての電柱Pに対して、到達期間を判定する。
【0037】
具体的には、まず、電柱P周りの画像を画像解析して、カズラWが電柱Pや支線P2に巻き付いているか否かを判定する。そして、カズラWが電柱Pに巻き付いていると判定した場合、カズラWが電柱P上において達している位置・高さから、この電柱Pに架設されている電線Lまでの距離D1を、画像解析して算出する。次に、算出した距離D1と、電柱Pに対するカズラWの上昇速度V1とに基づいて、カズラWが電線Lに達するまでの到達期間を算出、判定する。
【0038】
また、
図3に示すように、カズラWが電柱Pの支線P2(支線カバーP3を含む)に巻き付いていると判定した場合、カズラWが支線P2上において達している位置・高さから、この支線P2の上端部(電柱Pとの接合部)までの距離D2を、画像解析して算出する。次に、算出した距離D2と、支線P2に対するカズラWの上昇速度V2とに基づいて、支線P2の上端部に達するまでの期間K1を算出、判定する。続いて、支線P2の上端部(電柱Pとの接合部)から電線Lまでの距離D3を、画像解析して算出する。次に、算出した距離D3と、電柱Pに対するカズラWの上昇速度V1とに基づいて、支線P2の上端部から電線Lに達するまでの期間K2を算出、判定する。そして、支線P2の上端部に達するまでの期間K1と、その後電線Lに達するまでの期間K2とに基づいて、カズラWが電線Lに達するまでの期間(K1+K2)を算出、判定する。
【0039】
このような到達期間を基本とし、次のような事項を考慮して、より適正な到達期間を算出、判定する。
【0040】
第1に、気象情報取得タスク35を起動して、判定対象の電柱Pの設置地域の気象情報を取得し、取得した気象情報に基づいて到達期間を算出、判定する。例えば、設置地域における気象情報が、今後通年よりも気温が高い日が続くと予測される場合や、今後日照りが続くと予測される場合には、カズラ情報データベース342に記憶されたカズラ情報に基づいて、上昇速度V1、V2を上げて到達期間を算出、判定する。また、電柱Pの設置地域が海沿いの地域の場合には、カズラ情報データベース342に記憶されたカズラ情報に基づいて、上昇速度V1、V2を下げて到達期間を算出、判定する。
【0041】
第2に、現在・判定時の季節に基づいて到達期間を算出、判定する。例えば、現在・判定時の季節が雨季から夏季である場合には、カズラ情報データベース342に記憶されたカズラ情報に基づいて、上昇速度V1、V2を上げて到達期間を算出、判定する。同様に、現在・判定時の季節が冬季の場合には、カズラ情報データベース342に記憶されたカズラ情報に基づいて、上昇速度V1、V2を下げて到達期間を算出、判定する。
【0042】
第3に、電柱P周りの最新の画像とそれよりも以前の画像とに基づいて、その電柱P周辺におけるカズラWの成長速度・上昇速度を解析・算出し、この成長速度・上昇速度に基づいて到達期間を算出、判定する。
【0043】
さらに、カズラWが電柱Pや支線P2に巻き付いている場合であっても、電柱P周りの画像に基づいて、電柱P周辺の樹木Tを含む周辺物にカズラWが巻き付くか否かを判定する。すなわち、
図4に示すように、電柱P周りの画像において、電柱Pや支線P2に巻き付いたカズラWが周辺の樹木Tなどに向かって伸びている場合には、今後カズラWが周辺物に巻き付く(電線Lに達しない)可能性があると判定する。また、電柱Pや支線P2に巻き付いたカズラWが、その先で実際に周辺の樹木Tなどに巻き付いている場合にも、同様な判定を行う。なお、これらの場合、同時に到達期間を算出してもよい。
【0044】
このような判定タスク36は、電柱P周りの画像とカズラ情報などが入力されると、カズラWが電柱Pの電線Lに達するまでの期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデル343を用いる。このカズラ監視用学習モデル343は、学習タスク37によって作成される。
【0045】
すなわち、学習タスク37は、カズラ監視用実績データベース344に記録・蓄積されている過去の実績データを用いて、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムによりカズラ監視用学習モデル343を作成する。このカズラ監視用実績データベース344は、入力情報としての電柱P周りの画像、カズラ情報、設置地域、気象情報、季節に基づいて、カズラWの監視・管理に関する有識者や熟練者などが判定・予測した到達期間、あるいは、実際に到達した期間を含む実績データが記録・蓄積されているデータベースである。なお、過去の実績データには、実際の画像やカズラ情報などと、有識者・熟練者が実際に判定・予測した到達期間、あるいは、実際に到達した期間に基づいて作成されたデータの他、事前訓練などで作成されたデータなどが含まれる。
【0046】
この学習タスク37は、
図5に示すように、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習を用い、カズラ監視用実績データベース344に記録されている実績データに基づいて、例えば、画像、カズラ情報、設置地域、気象情報、季節を入力層、到達期間を出力層、入力層から出力層への解析処理を中間層とするニューラルネットワークを作成する。そして、学習タスク37は、カズラ監視用学習モデル343の実績データを学習データとして用いて、中間層における各種パラメータについて学習を行う。すなわち、学習タスク37は、画像、カズラ情報、設置地域、気象情報、季節に基づいて、適正な到達期間が出力されるように、中間層における各種パラメータの学習を行う。
【0047】
また、電柱Pや支線P2に巻き付いているカズラWが周辺物に巻き付くか否かについても、同様にカズラ監視用学習モデル343を用いて判定する。
【0048】
そして、このようにして算出、判定した到達期間を電柱Pの識別情報ごとに表示部32に表示するとともに、予め登録された管理者の携帯端末などに送信する。さらに、算出、判定した到達期間が所定の期間よりも短い場合には、急を要する電柱Pとして、表示部32に表示したり、管理者の携帯端末などに送信したりする。また、カズラWが周辺物に巻き付くと判定した場合にも、表示部32への表示等を行う。
【0049】
以上のように、このカズラ監視システム1によれば、カズラWが電柱Pに巻き付いている場合に、電柱P周りの画像と電柱Pに巻き付いたカズラWの上昇速度V1とに基づいて、カズラWが電線Lに達するまでの期間(到達期間)が自動的に判定、予測される。つまり、撮影時からあとどのくらいの期間で、カズラWが電線Lに達するかを知得することが可能となり、この到達期間に基づいて、カズラWの除去作業を適正に計画(電線Lに達する前にカズラWを除去)することが可能となる。しかも、電柱Pに巻き付いたカズラWの上昇速度V1と現状に基づいて到達期間を判定するため、適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0050】
また、カズラWが電柱Pの支線P2に巻き付いている場合に、電柱P周りの画像と支線P2に巻き付いたカズラWの上昇速度V2などとに基づいて、到達期間が自動的に判定される。このように、カズラWが支線P2に巻き付いている場合でも、到達期間を判定、知得して、カズラWの除去作業を適正に計画することが可能となる。しかも、支線P2に巻き付いたカズラWの上昇速度V2や電柱Pに巻き付いたカズラWの上昇速度V1に基づいて到達期間を判定するため、適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0051】
また、電柱Pの設置地域の気象情報に基づいて到達期間が判定されるため、気象によるカズラWの成長度合いを考慮した適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。同様に、現在の季節に基づいて到達期間が判定されるため、季節によるカズラWの成長度合いを考慮した適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0052】
さらに、機械学習されたカズラ監視用学習モデル343を用いて到達期間が出力されるため、より適正な到達期間を判定、知得することが可能となる。
【0053】
また、電柱P周辺の樹木Tを含む周辺物にカズラWが巻き付くか否かが判定され、カズラWが周辺物に巻き付くと判定された場合には、カズラWが電線Lに達しないことになる。このように、カズラWが電線Lに達しない場合も判定、予測されるため、カズラWの除去作業を適正に計画することが可能となる。
【0054】
一方、撮影装置2が車両Cで移動しながら、複数の電柱P周りが連続的に撮影されるため、広域にわたって配設されている多数の電柱P周りを容易かつ短時間に撮影することが可能となる。
【0055】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、監視サーバ3が一体のサーバで構成されているが、複数のコンピュータやサーバなどで構成し、それらを異なる場所に配置してもよい。
【0056】
一方、次のようなカズラ監視プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、上記のようなカズラ監視システム1や監視サーバ3を構成してもよい。
【0057】
すなわち、コンピュータを、電柱Pや支線P2に巻き付いたカズラWの上昇速度を含むカズラ情報を記憶するカズラ情報記憶手段(カズラ情報データベース342)と、電線Lが架設された電柱P周りが撮影された画像に基づいて、カズラWが電柱Pや支線P2に巻き付いているか否かを判定し、巻き付いていると判定した場合に、電柱P周りの画像とカズラ情報とに基づいて、該カズラWが該電柱Pの電線Lに達するまでの期間(到達期間)を判定する判定手段(判定タスク36)、として機能させるプログラムであり、判定手段は、電柱Pの設置地域の気象情報や現在の季節に基づいて到達期間を判定し、また、電柱P周りの画像に基づいて、電柱P周辺の樹木Tを含む周辺物にカズラWが巻き付くか否かを判定するとともに、電柱P周りの画像とカズラ情報が入力されると、到達期間が出力されるように、過去の実績データに基づいて機械学習されたカズラ監視用学習モデル343を用いる。
【符号の説明】
【0058】
1 カズラ監視システム
2 撮影装置(撮影手段)
3 監視サーバ
341 電柱データベース(電柱情報記憶手段)
342 カズラ情報データベース(カズラ情報記憶手段)
343 カズラ監視用学習モデル
344 カズラ監視用実績データベース
35 気象情報取得タスク(気象情報取得手段)
36 判定タスク(判定手段)
4 気象情報サーバ
W カズラ
L 電線
P 電柱
P2 支線(支柱)
C 車両(移動体)