(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102001
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】推定装置、推定システム、推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20250701BHJP
G01N 33/02 20060101ALI20250701BHJP
G01N 5/02 20060101ALN20250701BHJP
【FI】
G01N1/00 C
G01N33/02
G01N1/00 101S
G01N5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219140
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼本 浩行
(72)【発明者】
【氏名】山川 菜摘
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA24
2G052AA39
2G052AB26
2G052AD42
2G052GA23
2G052HB08
2G052HC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物から発生する少なくとも1つの物質の検出結果に基づいてより精度よく対象物の特性を把握する。
【解決手段】推定装置は、対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得する取得部と、前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定する推定部とを備えてよい。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得する取得部と、
前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定する推定部と
を備える推定装置。
【請求項2】
前記基準物が、予め定められた条件を満たす前記対象物と同一種類の物質、または水である請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記センサは、前記対象物から発生する前記少なくとも1つの物質に応じた物理的な変化の特性が異なる複数の感応部を有し、
前記取得部は、前記検出期間において前記複数の感応部のそれぞれから出力される複数の信号を取得し、
前記推定部は、前記複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせに基づいて、前記対象物の状態を推定する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記感応部は、前記少なくとも1つの物質が吸着し、内部に拡散することで変形する感応膜を含む、請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記感応膜は、有機無機ハイブリッド材料を含む、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記信号の波形の特徴量は、前記信号の波形を予め定められた間隔で分割することで得られる複数の分割波形の各振幅、前記複数の分割波形の各振幅の合計、前記複数の分割波形の各振幅の各変化率、前記複数の分割波形の各振幅の各変化率の合計、及び前記複数の分割波形の各振幅の各変化率の平均値の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の推定装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせは、前記少なくとも2つの信号の波形を予め定められた間隔で分割することで得られる前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の合計値同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率の合計同士の比、及び前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の平均値同士の比の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の推定装置。
【請求項8】
前記対象物は、食品である、請求項1に記載の推定装置。
【請求項9】
前記対象物は、液状の物質である、請求項1に記載の推定装置。
【請求項10】
前記推定部は、前記対象物に異物が混入している状態か否かを、前記対象物の状態として推定する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記対象物に異物が混入していると推定する場合、信号の波形の特徴量と前記異物の種類との関係を示す関係情報と、前記信号とに基づいて、前記異物の種類をさらに推定する、請求項10に記載の推定装置。
【請求項12】
前記推定部は、前記対象物が劣化している状態か否かを、前記対象物の状態として推定する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項13】
前記推定部は、前記対象物が劣化している状態と推定する場合、信号の波形の特徴量と前記対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係状態と、前記信号とに基づいて、前記対象物の劣化状態の度合いをさらに推定する、請求項12に記載の推定装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1つに記載の推定装置と、
前記センサと、
前記対象物を収容する収容部の内部の空間に連通し、前記センサが前記基準物に曝される前記第1状態と前記対象物に曝される前記第2状態との切り替えを行う切替機構と
を備える推定システム。
【請求項15】
前記切替機構は、
前記収容部の内部の空間と連通する第1配管と、
前記収容部の外部の空間と連通する第2配管と、
前記第1配管及び前記第2配管の一方に切り替え可能に連通する第3配管と
を含み、
前記センサは、前記第3配管内に配置され、
前記第3配管が、前記第2配管と連通する場合、前記センサは前記第1状態となり、前記第3配管が、前記第1配管と連通する場合、前記センサは前記第2状態となる、請求項14に記載の推定システム。
【請求項16】
対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得する段階と、
前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定する段階と
を備える推定方法。
【請求項17】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得させ、
前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定システム、推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-3には、固形発酵物の臭い検出値に基づいて固形発酵物の品質値または発酵状況情報を出力することが記載されている。特許文献4には、空気中に監視対象物質が存在しないかを監視する監視システムおよび監視システムで用いる検出装置が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2022-157743号公報
[特許文献2] 特開2022-157744号公報
[特許文献3] 特開2022-157745号公報
[特許文献4] 国際公開第2018/225776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
対象物から発生する少なくとも1つの物質の検出結果に基づいてより精度よく対象物の特性を把握することが望まれている。しかしながら、温度または湿度といった外的な妨害要因により、例えば対象物内に少量含まれる微量成分による異物の判別は困難なことが多い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る推定装置は、対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得する取得部を備えてよい。前記推定装置は、前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定する推定部を備えてよい。
【0005】
前記推定装置において、前記基準物は、予め定められた条件を満たす前記対象物と同一種類の物質、または水でよい。
【0006】
いずれかの前記推定装置において、前記センサは、前記対象物から発生する前記少なくとも1つの物質に応じた物理的な変化の特性が異なる複数の感応部を有してよい。前記取得部は、前記検出期間において前記複数の感応部のそれぞれから出力される複数の信号を取得してよい。前記推定部は、前記複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせに基づいて、前記対象物の状態を推定してよい。
【0007】
いずれかの前記推定装置において、前記感応部は、前記少なくとも1つの物質が吸着し、内部に拡散することで変形する感応膜を含んでよい。
【0008】
いずれかの前記推定装置において、前記感応膜は、有機無機ハイブリッド材料を含んでよい。
【0009】
いずれかの前記推定装置において、前記信号の波形の特徴量は、前記信号の波形を予め定められた間隔で分割することで得られる複数の分割波形の各振幅、前記複数の分割波形の各振幅の合計、前記複数の分割波形の各振幅の各変化率、前記複数の分割波形の各振幅の各変化率の合計、及び前記複数の分割波形の各振幅の各変化率の平均値の少なくとも1つを含んでよい。
【0010】
いずれかの前記推定装置において、前記少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせは、前記少なくとも2つの信号の波形を予め定められた間隔で分割することで得られる前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の合計値同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率同士の比、前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率の合計同士の比、及び前記少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の平均値同士の比の少なくとも1つを含んでよい。
【0011】
いずれかの前記推定装置において、前記対象物は、食品でよい。
【0012】
いずれかの前記推定装置において、前記対象物は、液状の物質でよい。
【0013】
いずれかの前記推定装置において、前記推定部は、前記対象物に異物が混入している状態か否かを、前記対象物の状態として推定してよい。
【0014】
いずれかの前記推定装置において、前記推定部は、前記対象物に異物が混入していると推定する場合、信号の波形の特徴量と前記異物の種類との関係を示す関係情報と、前記信号とに基づいて、前記異物の種類をさらに推定してよい。
【0015】
いずれかの前記推定装置において、前記推定部は、前記対象物が劣化している状態か否かを、前記対象物の状態として推定してよい。
【0016】
いずれかの前記推定装置において、前記推定部は、前記対象物が劣化している状態と推定する場合、信号の波形の特徴量と前記対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係状態と、前記信号とに基づいて、前記対象物の劣化状態の度合いをさらに推定してよい。
【0017】
本発明の一態様に係る推定システムは、いずれかの前記推定装置と、前記センサと、前記対象物を収容する収容部の内部の空間に連通し、前記センサが前記基準物に曝される前記第1状態と前記対象物に曝される前記第2状態との切り替えを行う切替機構とを備える。
【0018】
前記システムにおいて、前記切替機構は、前記収容部の内部の空間と連通する第1配管と、前記収容部の外部の空間と連通する第2配管と、前記第1配管及び前記第2配管の一方に切り替え可能に連通する第3配管とを含んでよい。前記センサは、前記第3配管内に配置されてよい。前記第3配管が、前記第2配管と連通する場合、前記センサは前記第1状態となり、前記第3配管が、前記第1配管と連通する場合、前記センサは前記第2状態となってよい。
【0019】
本発明の一態様に係る推定方法は、対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得する段階を備えてよい。前記推定方法は、前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定する段階を備えてよい。
【0020】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有するセンサが、基準物に曝される第1状態から、前記対象物に曝される第2状態に切り替わってから、再び前記第2状態から前記第1状態に切り替わるまでの検出期間において、前記センサから出力される信号を取得させ、前記信号の波形の特徴量に基づいて前記対象物の状態を推定させてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る推定システムの全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図2】推定装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3A】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3B】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3C】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3D】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3E】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3F】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3G】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図3H】センサを基準物として空気に曝した検出準備状態から、センサを対象物である水、オレンジジュース、及びエタノール混入のオレンジジュースのそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4A】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4B】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4C】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4D】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4E】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4F】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4G】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図4H】センサを対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサを基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図5】基準物に曝した場合のセンサの各チャネルの信号の振幅と、エタノール混入のオレンジジュースに曝した場合のセンサの各チャネルの信号の振幅との差を示す図である。
【
図6】センサのチャネル1から出力される信号の波形の一例を示す図である。
【
図7】センサのチャネル2から出力される信号の波形の一例を示す図である。
【
図8】センサのチャネル3から出力される信号の波形の一例を示す図である。
【
図9】対象物への異物の混入の有無を推定する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】対象物の劣化状態を推定する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11A】各信号の特徴量を導出する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11B】各信号の特徴量を導出する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12A】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12B】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12C】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12D】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12E】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12F】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12G】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図12H】センサを対象物としてアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13A】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13B】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13C】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13D】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13E】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13F】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13G】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図13H】センサを対象物としてタバコ混入の水に曝した状態と、センサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す図である。
【
図14】センサを対象物として、飲み口に口を付けて飲んだ飲み残しの水に曝した状態、センサを対象物として意図的に唾液を混入させた水に曝した状態、及びセンサを基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す図である。
【
図15】センサを対象物として製造から1週間後の牛乳に曝した状態、センサを対象物として3週間後の牛乳に曝した状態、及びセンサを基準物として製造直後の牛乳に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す図である。
【
図16】センサを対象物として、アールグレイティ、ウーロン茶、ほうじ茶、緑茶、麦茶、濃緑茶に曝した状態、及びセンサを基準物として水に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る推定システム10の全体構成の機能ブロックの一例を示す図である。推定システム10は、対象物から発生する少なくとも1つの物質の検出結果に基づいて、対象物の状態を推定する。対象物は、例えば、食品である。対象物は、液状の物質でよい。すなわち、対象物は、液体でよい。推定システム10は、対象物に異物が混入しているか状態か否かを、対象物の状態として推定してよい。推定システム10は、対象物が劣化している状態か否かを、対象物の状態として推定してよい。
【0025】
推定システム10は、容器20、容器22、切替機構30、センサ50、及び推定装置100を備える。容器20は、飲料食品などの対象物を収容する。容器22は、センサ50による対象物の状態を推定するためにセンサ50から基準を示す信号を出力させるためにセンサ50により検出される物質である基準物を収容する。基準物は、対象物の特性、対象物の種類、対象物が気体、液体、または固体のいずれかなどに応じて、対象物の代わりセンサ50に曝された場合に、センサ50が存在する環境、例えば、湿度、または温度の変化がない、または変化量が予め定められた範囲に収まる予め定められた条件を満たす物質でよい。基準物は、例えば、水、または予め定められた条件を満たす正常状態の対象物と同一種類の物質でよい。
【0026】
容器20及び容器22には、切替機構30が連結されている。切替機構30は、容器20の内部空間と連通する配管31と、容器22の内部空間と連通する配管32と、配管31及び配管32に切替弁34を介して接続され、配管31及び配管32のいずれか一方と連通する配管33とを有する。切替弁34は、配管33と容器20または容器22との間を連通させる弁を含む。配管31には、容器20の内部空間に存在するガスが通る。配管32には、容器22の内部空間に存在するガスが通る。容器20の内部空間に存在するガスは、対象物から発生する少なくとも1つの物質を含む。容器22の内部空間に存在するガスは、基準物から発生する少なくとも1つの物質を含む。
【0027】
対象物を構成する物質によって、発生するガスの量または種類が異なる。よって、発生するガスの種類、及び量の少なくとも一方を特定することで、対象物の状態を推定することが可能である。
【0028】
センサ50は、配管33の内部に設けられ、配管33を通るガスを検出する。センサ50は、いわゆる嗅覚センサでよい。上記に示す切替機構30の構成は一例に過ぎない。切替機構30は、センサ50が基準物から発生する少なくとも1つの物質に曝されている検出準備状態(第1状態)と、センサ50が対象物から発生する少なくとも1つの物質に曝されている検出状態(第2状態)とを切り替え可能な機構であれば、任意の機構でよい。切替機構30は、配管33の内部に容器22内の基準物から発生する少なくとも1つの物質を含むガスを噴射することで、センサ50の周囲のガスをパージする噴射部を有してもよい。配管33に、容器20または容器22の内部空間に存在するガスが効率的に供給されるように、切替機構30は、配管33にガスを吸引する吸引機構を有してもよい。
【0029】
センサ50は、嗅覚センサとして機能する膜表面型応力センサでよい。膜表面型応力センサは、基準物または対象物から発生する少なくとも1つの物質に反応して物理的に変化し、物理的な変化に応じた信号を出力する感応部を有する。感応部は、少なくとも1つの物質が吸着し、内部に拡散することで変形する感応膜を含む。感応膜は、有機無機ハイブリッド材料を含んでよい。
【0030】
有機無機ハイブリッドは、湿度のある環境下での感度及び安定性の観点から、RSiO3/2で表される構造を含み、ここで、「R」は有機官能基を表す。
【0031】
本実施形態において、有機官能基が1種類以上の芳香環(芳香環構造)を含むことが好ましい。芳香環を含む場合、耐湿度性がより向上する傾向にある。芳香環としては、センサーの用途等を考慮して適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-アミノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換芳香族炭化水素基、3-フリル基、3-チエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等の複素環炭化水素基、フェロセニル基等のメタロセン等が挙げられる。本実施形態における有機官能基は、上述した芳香環を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0032】
容器20及び容器22内には、環境センサ40が設けられてよい。環境センサ40は、容器20または容器22内の環境状態を検出する。環境センサ40は、容器20または容器22内の環境状態として温度及び湿度を検出し、温度情報及び湿度情報を含む環境情報を推定装置100に提供してよい。
【0033】
図2は、推定装置100の機能ブロックの一例を示す。推定装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、中央処理装置(CPU)で構成されてよい。
【0034】
推定装置100は、コンピュータで構成されてよい。コンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。コンピュータは、推定装置100の推定処理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。コンピュータは、仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。コンピュータを用いる場合、推定装置100は、コンピュータによりプログラムを実行することによって実現される。
【0035】
制御部110は、取得部112と、推定部114と、通知部116を備える。取得部112は、センサ50が、基準物に曝される検出準備状態から、対象物に曝される検出状態に切り替わってから、再び検出状態から検出準備状態に切り替わるまでの検出期間において、センサ50から出力される信号を取得する。
【0036】
センサ50は、基準物または対象物から発生する少なくとも1つの物質に応じた物理的な変化の特性が異なる複数の感応部を有してよい。複数の感応部は、特性が異なる複数の感応膜を有してよい。センサ50は、複数の感応部のそれぞれからの信号を出力する複数のチャネルを有してよい。
【0037】
対象物の状態によって、発生するガスの量及び種類は異なる。したがって、センサ50の複数のチャネルから出力される信号も異なる。すなわち、対象物の状態によって、それぞれの信号の波形の特徴量は異なる。
【0038】
ここで、検出準備状態において、センサ50を空気に曝した状態にすることが考えられる。しかし、センサ50は、温度または湿度に敏感であり、同じ物質に曝されたとしても、温度または湿度が変化することで、出力される信号に変化が生じる。そのため、例えば、対象物が、飲料などの液状の物質である場合、センサ50が空気に曝された状態から、対象物に曝された状態に切り替わると、センサ50が存在する空間の湿度が大きく変化し、センサ50から出力される信号に大きく影響を与える可能性がある。このような場合、センサ50から出力される信号から、例えば、対象物内に少量含まれる微量成分による異物の判別は困難な場合がある。
【0039】
図3A~
図3Hは、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を基準物として空気に曝した検出準備状態から、センサ50を対象物である水、オレンジジュース、及び100ppmのエタノールが混入されたオレンジジュース(「エタノール混入のオレンジジュース」と称する場合がある。)のそれぞれに曝した検出状態に切り替えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す。
【0040】
図3A~
図3Hに示す信号の波形は、検出準備状態である0秒から120秒までの間、センサ50を基準物である空気に曝した後、検出状態である120秒から240秒までの間、センサ50を対象物である水、オレンジジュース、及びエタノール混入のオレンジジュースのそれぞれに曝した状態を2分周期で30分間、繰り返し、0秒の時点を開始点として0mVに規格化した場合のセンサ50の各チャネルが出力する各信号の波形である。
【0041】
図3A~
図3Hに示すように、水の信号の波形と、オレンジジュースの信号の波形とは違いが現れるチャネルが存在する。しかし、オレンジジュースの信号の波形と、エタノール混入のオレンジジュースの信号の波形とはほとんど違いが現れない。したがって、基準物として空気を用いた場合、オレンジジュースに微量のエタノールが含まれるか否かをセンサ50の信号から推定することは難しい。
【0042】
図4A~
図4Hは、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物としてエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサ50を基準物としてオレンジジュースに曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す。
【0043】
図4A~
図4Hに示す信号の波形は、0秒から120秒までの間、センサ50をエタノール混入のオレンジジュースに曝した後、120秒から240秒までの間、センサ50をオレンジジュースに曝した状態を2分周期で30分間、繰り返し、0秒の時点を開始点として0mVに規格化した場合のセンサ50の各チャネルが出力する各信号の波形である。
【0044】
図4A~
図4Hに示す信号の波形では、センサ50をエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態では、各信号の振幅は上昇傾向にあり、オレンジジュースに曝した状態では、各信号の振幅は下降傾向にある。すなわち、センサ50をエタノール混入のオレンジジュースに曝した状態と、センサ50をオレンジジュースに曝した状態とでは、センサ50の各チャネルが出力する信号には、明らかな差があることがわかる。すなわち、基準物として空気を用いる場合よりも、オレンジジュースを用いた場合のほうが、エタノール混入のオレンジジュースに曝した場合のセンサ50の各チャネルの信号との差が表れやすくなる。
【0045】
図5は、各基準物に曝した場合のセンサ50の各チャネルの信号の振幅と、エタノール混入のオレンジジュースに曝した場合のセンサ50の各チャネルの信号の振幅との差を示す。
図5に示すように、基準物が空気の場合、エタノールに相当する振幅がマイナスになり、エタノールの混入をセンサ50の各チャネルの信号から検出することができない。これは、空気の場合と、エタノール混入のオレンジジュースの場合とで、センサ50が曝される空間の湿度に違いが生じ、その影響がセンサ50の各チャネルの信号に表れていることに起因する。一方、基準物が水、または対象物と同じ物質であるオレンジジュースである場合、センサ50が曝される空間の湿度に違いが少なく、微少量であったとしてもエタノールの混入をセンサ50の各チャネルの信号から検出することができる。
【0046】
そこで、本実施形態では、検出準備状態と検出状態とで湿度の変化を抑制すべく、検出準備状態において、センサ50を空気ではない基準物に曝す。基準物は、水、または予め定められた条件を満たす正常状態の対象物と同一種類の物質である。予め定められた条件は、対象物が複数の工場で製造されている食品であれば、基準物は、例えば、基準となる工場で製造された対象物と同一の食品でよい。
【0047】
このように、検出準備状態と検出状態とで湿度の変化を抑制しておくことで、検出準備状態から検出状態に切り替わったことにより生じるセンサ50の信号の変化は、湿度の変化による影響ではなく、対象物から発生する少なくとも1つの物質による影響である可能性が高い。つまり、センサ50から出力される信号から、対象物内に少量含まれる微量成分による異物の存在を判別しやすくできる。また、センサ50から出力される信号から対象物が劣化することにより対象物から発生する微少量成分も判別しやすくできる。なお、検出準備状態と検出状態と温度の変化がある場合にも、センサ50から出力される信号に大きな差が生じる。したがって、検出準備状態と検出状態とで温度の変化を抑制しておくことが好ましい。
【0048】
そこで、取得部112は、センサ50が、予め定められた条件を満たす対象物と同一種類の物質、または水である基準物に曝される検出準備状態から、対象物に曝される検出状態に切り替わってから、再び検出準備状態から検出状態に切り替わるまでの検出期間において、センサ50から出力される信号を取得する。推定部114は、センサ50からの信号の波形の特徴量に基づいて対象物の状態を推定する。
【0049】
推定部114は、対象物に異物が混入している状態か否かを、対象物の状態として推定してよい。推定部114は、対象物に異物が混入していると推定する場合、信号の波形の特徴量と異物の種類との関係を示す関係情報と、センサ50からの信号とに基づいて、異物の種類をさらに推定してよい。
【0050】
推定部114は、対象物が劣化している状態か否かを、対象物の状態として推定してよい。推定部114は、対象物が劣化している状態と推定する場合、信号の波形の特徴量と対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係状態と、センサ50からの信号とに基づいて、対象物の劣化状態の度合いをさらに推定してよい。
【0051】
図6は、センサ50の1つのチャネル(チャネル1)から出力される信号の波形の一例を示す。推定部114は、信号S1の波形を予め定められた間隔tで分割することで複数の分割波形の各振幅s1~s5を導出してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅s1~s5の合計(s1+s2+s3+s4+s5=s_total)を導出してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅s1~s5の各変化率(s2-s1)/t=Δs1,(s3-s2)/t=Δs2,(s4-s3)/t=Δs3,(s5-s4)t=Δs4を導出してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅の各変化率の合計(Δs1+Δs2+Δs3+Δs4)を導出してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅の各変化率の平均値((Δs1+Δs2+Δs3+Δs4)/4)を導出してよい。
【0052】
取得部112は、検出期間において複数の感応部のそれぞれから出力される複数の信号を取得してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅s1~s5のうちの最大の振幅が予め定められた閾値以上である場合、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅s1~s5の合計が予め定められた閾値以上である場合、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅の各変化率の合計が予め定められた閾値以上である場合、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。推定部114は、複数の分割波形の各振幅の各変化率の平均値が予め定められた閾値以上である場合、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。
【0053】
推定部114は、複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせに基づいて、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。
【0054】
少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせは、少なくとも2つの信号の波形を予め定められた間隔tで分割することで得られる少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の合計値同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率の合計同士の比、及び少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の平均値同士の比の少なくとも1つを含んでよい。
【0055】
推定部114は、少なくとも2つの信号の波形を予め定められた間隔tで分割することで得られる少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の合計値同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率同士の比、少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の変化率の合計同士の比、及び少なくとも2つの信号のそれぞれの複数の分割波形の各振幅の平均値同士の比の少なくとも1つが、予め定められた数値範囲に含まれる場合、対象物に異物が混入している、あるいは対象物が劣化していると推定してよい。
【0056】
推定部114は、複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせと異物に相当する物質との関係を示す関係情報と、複数の信号とに基づいて、対象物に混入している物質を推定してよい。推定部114は、複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせと対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係情報と、複数の信号とに基づいて、対象物に混入している物質を推定してよい。
【0057】
図7は、センサ50の他の1つのチャネル(チャネル2)から出力される信号S2の波形の一例を示す。推定部114は、例えば、
図6のチャネル1の信号S1の分割波形の振幅s1~s5と
図7のチャネル2の信号S2の分割波形の振幅m1~m5との比(s1/m1,s2/m2,s3/m3,s4/m4,s5/m5)を導出してよい。推定部114は、信号S1の分割波形の振幅s1~s5の合計(s1+s2+s3+s4+s5=s_total)と、信号2の分割波形の振幅m1~m5の合計(m1+m2+m3+m4+m5=m_total)との比(s_total/m_total)を導出してよい。推定部114は、信号S1の分割波形の各振幅s1~s5の各変化率(Δs1,Δs2,Δs3,Δs4)と、信号S2の分割波形の各振幅m1~m5の各変化率(Δm1,Δm2,Δm3,Δm4)との比(Δs1/Δm1,Δs2/Δm2,Δs3/Δm3,Δs4/Δm4)を導出してよい。推定部114は、信号S1の分割波形の振幅s1~s5の平均値(s_total/4)と、信号S2の分割波形の各振幅m1~m5の平均値(m_total/4)との比(s_total/m_total)を導出してよい。
【0058】
図8は、センサ50のさらに他の1つのチャネル(チャネル3)から出力される信号S3の波形の一例である。
【0059】
センサ50からさらに他の1つのチャネル(チャネル3)から信号S3が出力される場合には、推定部114は、信号S1の波形の特徴量と信号S2の波形の特徴量との組み合わせに加えて、信号S1の波形の特徴量と信号S3の波形の特徴量との組み合わせ及び信号S2の波形の特徴量と信号S3の波形の特徴量との組み合わせについて、それぞれ振幅同士の比、振幅合計同士の比、振幅の変化率同士の比、振幅の変化率の合計同士の比、及び振幅の平均値同士の比を導出してよい。
【0060】
推定部114は、1つの信号の波形の複数の特徴量の組み合わせと、異物の種類または対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係情報と、センサ50からの信号とに基づいて、異物の種類または対象物の劣化状態の度合いを推定してよい。あるいは、推定部114は、少なくとも2つの信号の波形の複数の特徴量の組み合わせと、異物の種類または対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係情報と、少なくとも2つの信号とに基づいて、異物の種類または対象物の劣化状態の度合いを推定してよい。
【0061】
このように、推定部114は、1つ以上の信号の波形の特徴を示す複数のパラメータを導出して、それぞれのパラメータの組み合わせに基づいて、異物の種類または対象物の劣化状態の度合いを推定してよい。これにより、1つの信号に対して1つのパラメータに基づいて異物の種類または対象物の劣化状態の度合いを推定するよりも精度よく異物の種類または対象物の劣化状態の度合いを推定できる。
【0062】
推定部114は、信号の波形の特徴量と対象物の状態との関係を示す関係情報、あるいは複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせと対象物の状態との関係を示す関係情報として、教師あり学習により生成された学習モデルを用いて、対象物の状態を推定してよい。推定部114は、信号の波形の特徴量と異物の混入との関係を示す関係情報、あるいは複数の信号のうちの少なくとも2つの信号の波形の特徴量の組み合わせと異物の混入との関係を示す関係情報として、教師あり学習により生成された学習モデルを用いて、対象物への異物の混入の有無を推定してよい。
【0063】
推定部114は、信号の波形の特徴量、信号の波形の少なくとも2つの特徴量、または2つの信号の波形の特徴量の複数の組み合わせを説明変数として、かつ対象物の状態を目的変数として、教師あり学習のアルゴリズムに従って機械学習を行うことにより、信号の波形の特徴量、または2つの信号の波形の特徴量の複数の組み合わせから、対象物の状態を推定する学習済み学習モデルを生成し、記憶部120に格納してよい。アルゴリズムは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、重回帰分析、決定木、ガウス過程などの任意の方式のアルゴリズムでよい。また、推定部114は、基準物にセンサ50が曝された状態の場合にセンサ50から出力される信号の波形と対象物にセンサ50が曝された状態の場合にセンサ50から出力される信の波形との違いを示すために主成分解析、クラスタリング、またはOCSVM等の異常検知アルゴリズムを用いて、対象物の状態、例えば、対象物への異物の混入、または対象物の劣化状態の度合いを推定してよい。
【0064】
通知部116は、推定部114により推定された対象物の状態、例えば、対象物への異物の混入、または対象物の劣化状態の度合いを外部に通知する。
【0065】
図9は、対象物への異物の混入を推定する手順の一例を示すフローチャートである。取得部112は、切替機構30の切替弁34及び切替弁35を制御することで、基準物を収容する容器22の内部空間にセンサ50を曝した検出準備状態から対象物を収容する容器20の内部空間にセンサ50を曝した検出状態に切り替える(S100)。取得部112は、基準物を収容する容器22に連通する配管32のみが配管33と連通する状態から、対象物を収容する容器20に連通する配管31のみが配管33と連通する状態になるように、切替弁34及び切替弁35を制御する。
【0066】
推定装置100は、センサ50により容器20の内部空間の物質の検出を開始する(S102)。取得部112は、切替機構30の切替弁34を制御することで、センサ50を容器20の内側の内気に曝した検出状態から容器22の内側の内気に曝した検出準備状態に切り替える(S104)。次いで、取得部112は、センサ50の各チャネルから検出状態にある検出期間において検出された各信号を取得する(S106)。
【0067】
推定部114は、各信号の波形の特徴量を導出する(S108)。推定部114は、各信号の波形の特徴量に基づいて、対象物への異物の混入の有無を推定する(S110)。異物の混入がある場合、推定部114は、各信号の波形の特徴量と、各信号の波形の特徴量と異物の種類との関係を示す関係情報とに基づいて、異物の種類を推定する(S112)。
【0068】
通知部116は、対象物に異物が混入した異常状態であること及び異物の種類を外部に通知する(S114)。推定部114が対象物に異物が混入していないと推定した場合、通知部116は、対象物が正常状態であることを外部に通知する(S116)。
【0069】
図10は、対象物の劣化状態を推定する手順の一例を示すフローチャートである。取得部112は、切替機構30の切替弁34及び切替弁35を制御することで、基準物を収容する容器22の内部空間にセンサ50を曝した検出準備状態から対象物を収容する容器20の内部空間にセンサ50を曝した検出状態に切り替える(S100)。取得部112は、基準物を収容する容器22に連通する配管32のみが配管33と連通する状態から、対象物を収容する容器20に連通する配管31のみが配管33と連通する状態になるように、切替弁34及び切替弁35を制御する。
【0070】
推定装置100は、センサ50により容器20の内部空間の物質の検出を開始する(S102)。取得部112は、切替機構30の切替弁34を制御することで、センサ50を容器20の内側の内気に曝した検出状態から容器22の内側の内気に曝した検出準備状態に切り替える(S104)。次いで、取得部112は、センサ50の各チャネルから検出状態にある検出期間において検出された各信号を取得する(S106)。
【0071】
推定部114は、各信号の波形の特徴量を導出する(S108)。推定部114は、各信号の波形の特徴量に基づいて、対象物が劣化状態か否かを推定する(S120)。対象物が劣化状態である場合、推定部114は、各信号の波形の特徴量と、各信号の波形の特徴量と対象物の劣化状態の度合いとの関係を示す関係情報とに基づいて、対象物の劣化状態の度合いを推定する(S122)。
【0072】
通知部116は、対象物が劣化状態であること及び対象物の劣化状態の度合いを外部に通知する(S124)。推定部114が対象物が劣化状態ではないと推定した場合、通知部116は、対象物が正常状態であることを外部に通知する(S126)。
【0073】
図11A及び
図11Bは、各信号の特徴量を導出する手順の一例を示すフローチャートである。推定部114が、対象物への異物の混入の有無、対象物の劣化状態などの対象物の状態の推定に用いる関係情報は、対象物の種類によって異なる場合がある。そこで、推定部114は、対象物の状態の推定に用いる関係情報が、対象物の状態に対応付けて示す各信号の各波形の特徴量の種類を対象物の種類に応じて特定する。推定部114が異物の種類を推定する場合にも、対象物の種類によって、混入する可能性がある異物の種類が異なることが考えられる。よって、推定部114は、異物の種類の推定に用いる関係情報が、異物の種類に対応付けて示す各信号の各波形の特徴量の種類を、対象物の種類に応じて特定してよい。推定部114は、ユーザから入力される対象物に関する情報に基づいて、対象物の種類を特定してよい。
【0074】
推定部114は、容器20内のガスに対する各チャネルの各信号を取得部112を介して取得する(S200)。推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅を導出するかどうかを判断する(S202)。
【0075】
各振幅を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各信号の各振幅を導出することで特徴量群yc1を生成する(S204)。
【0076】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅の合計値を導出するかどうかを判断する(S206)。各振幅の合計値を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各信号の各振幅の合計値を導出することで特徴量群yc2を生成する(S208)。
【0077】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅のチャネル間比を導出するかどうかを判断する(S210)。各振幅のチャネル間比を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各信号の各振幅のチャネル間比を導出することで特徴量群yc3を生成する(S212)。
【0078】
次いで、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅の合計値のチャネル間比を導出するかどうかを判断する(S214)。各振幅の合計値のチャネル間比を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各信号の各振幅の合計値のチャネル間比を導出することで特徴量群yc4を生成する(S216)。
【0079】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅の変化率を導出するかどうかを判断する(S218)。各信号の各振幅の変化率を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各信号の各振幅の変化率を導出することで特徴量yc5を生成する(S220)。
【0080】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅の変化率の合計値を導出するかどうかを判断する(S222)。各信号の各振幅の変化率の合計値を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの各振幅の変化率の合計値を導出することで、特徴量群yc6を生成する(S224)。
【0081】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、各信号の各振幅の変化率の平均値を導出するかどうかを判断する(S226)。各信号の各振幅の変化率の平均値を導出するのであれば、推定部114は、間隔tごとの変化率の平均値を導出することで、特徴量群yc7を生成する(S228)。
【0082】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、温度の平均値及び標準偏差を導出するかどうかを判断する(S230)。温度の平均値及び標準偏差を導出するのであれば、推定部114は、容器20内の温度を示す温度情報を取得し、間隔tごとの温度、温度の平均値、温度の標準偏差を導出することで、特徴量群yt1、yt2、yt3を生成する(S232)。
【0083】
次いで、推定部114は、特定された各信号の特徴量の種類に基づいて、湿度の平均値及び標準偏差を導出するかどうかを判断する(S234)。湿度の平均値及び標準偏差を導出するのであれば、推定部114は、容器20内の湿度を示す湿度情報を取得し、間隔tごとの湿度、湿度の平均値、及び湿度の標準偏差を導出することで、特徴量群yh1、yh2、yh3を生成する(S236)。
【0084】
以上の処理より、推定部114は、対象物の状態などの推定に用いる特徴量群を導出する。なお、
図11A及び
図11Bに示す特徴量群の種類及び導出順は一例に過ぎない。
【0085】
本実施形態に係る推定装置100によれば、センサ50が置かれる環境の湿度または温度などの変化を抑制することでセンサ50から出力される信号の波形に環境の変化による影響を与えることを抑制することができ、対象物に微少量の物質が含まれるか否かなどをセンサ50から出力される信号に基づいて推定できる。
【0086】
図12A~
図12Hは、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物として38ppmのアセトンが混入された牛乳(「アセトン混入の牛乳」と称する場合がある)に曝した状態と、センサ50を基準物として異物が混入していない正常な状態の牛乳に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す。
【0087】
図12A~
図12Hに示す信号の波形は、0秒から120秒までの間、センサ50をアセトン混入の牛乳に曝した後、120秒から240秒までの間、センサ50を正常な状態の牛乳に曝した状態を2分周期で30分間、繰り返し、0秒の時点を開始点として0mVに規格化した場合のセンサ50の各チャネルが出力する各信号の波形である。
【0088】
図12A~
図12Hに示す信号の波形では、センサ50をアセトン混入の牛乳に曝した状態では、各信号の振幅は上昇傾向にあり、牛乳に曝した状態では、各信号の振幅は下降傾向にある。すなわち、センサ50をアセトン混入の牛乳に曝した状態と、センサ50を牛乳に曝した状態とでは、センサ50の各チャネルが出力する信号には、差があることがわかる。すなわち、基準物として空気を用いる場合よりも、牛乳を用いた場合のほうが、アセトン混入の牛乳に曝した場合のセンサ50の各チャネルの信号との差が表れやすくなる。
【0089】
図13A~
図13Hは、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物としてたばこが混入された水(「タバコ混入の水」と称する場合がある)に曝した状態と、センサ50を基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態とを交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形の様子を示す。
【0090】
図13A~
図13Hに示す信号の波形は、0秒から120秒までの間、センサ50をタバコ混入の水に曝した後、120秒から240秒までの間、センサ50を正常な状態の水に曝した状態を2分周期で30分間、繰り返し、0秒の時点を開始点として0mVに規格化した場合のセンサ50の各チャネルが出力する各信号の波形である。
【0091】
図13A~
図13Hに示す信号の波形では、センサ50をタバコ混入の水に曝した状態では、各信号の振幅は上昇傾向にあり、正常な状態の水に曝した状態では、各信号の振幅は下降傾向にある。すなわち、センサ50をタバコ混入の水に曝した状態と、センサ50を正常な状態の水に曝した状態とでは、センサ50の各チャネルが出力する信号には、差があることがわかる。すなわち、基準物として空気を用いる場合よりも、水を用いた場合のほうが、たばこ混入の水に曝した場合のセンサ50の各チャネルの信号との差が表れやすくなる。
【0092】
図14は、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物として、飲み口に口を付けて飲んだ飲み残しの水に曝した状態、センサ50を対象物として意図的に唾液を混入させた水に曝した状態、及びセンサ50を基準物として異物が混入していない正常な状態の水に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す。
【0093】
図14に示す主成分解析の結果から、唾液が混入した水と、唾液が混入していない正常な状態の水とを区別できることがわかる。すなわち、推定部114は、基準物である水に曝される検出準備状態から、対象物である水に曝される検出状態に切り替わってから、再び検出準備状態から検出状態に切り替わるまでの検出期間において、センサ50から出力される信号の波形の主成分解析を行い、主成分解析の結果に基づいて、対象物の水を唾液が混入しているか否かを推定してよい。推定部114は、信号の波形の複数の特徴量を説明変数として、第1主成分及び第2主成分を目的変数として、信号の波形の複数の特徴量に対して多変量解析の一種である主成分解析を行い、第1主成分をX軸及び第2主成分をY軸とした2次元上に対象物をプロットすることで得られる主成分解析の結果を導出する。推定部114は、二次元上のどの領域に対象物のプロットが存在するかで、対象物の水に唾液が混入しているか否かを推定してよい。
【0094】
図15は、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物として製造から1週間後の牛乳に曝した状態、センサ50を対象物として3週間後の牛乳に曝した状態、及びセンサ50を基準物として製造直後の牛乳に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す。
【0095】
推定部114は、センサ50から出力される信号の波形の主成分解析の結果として得られる2次元上のプロットの位置を特定することで、対象物の牛乳の製造日からの経過期間を推定することができる。
【0096】
図16は、センサ50として、8種類(8チャンネル)の感応膜アレイからなる膜表面型応力センサを用いて、センサ50を対象物として、アールグレイティ、ウーロン茶、ほうじ茶、緑茶、麦茶、濃緑茶に曝した状態、及びセンサ50を基準物として水に曝した状態を1分周期で15分間、交互に切り換えた場合の各チャネルの信号の波形について主成分解析した結果を示す。
【0097】
推定部114は、センサ50から出力される信号の波形の主成分解析の結果として得られる2次元上のプロットの位置を特定することで、対象物の種類を推定することができる。
【0098】
図17は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化してよいコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0099】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0100】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CD-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記録媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記録媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0101】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0102】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0103】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0104】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0105】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM(登録商標))、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0106】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードの何れかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、プログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。
【0107】
ここで、コンピュータは、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このような複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムは分散コンピューティングシステムとも呼ばれ、広義のコンピュータである。分散コンピューティングシステムにおいては、複数のコンピュータのそれぞれがプログラムの一部ずつを実行し、必要に応じてコンピュータ間でプログラム実行中のデータを受け渡すことによって、複数のコンピュータが集合的にプログラムを実行する。
【0108】
プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。コンピュータは、1つのプロセッサまたは複数のプロセッサを備えてよい。複数のプロセッサを備えるマルチプロセッサシステムにおいては、それぞれのプロセッサがプログラムの一部ずつを実行し、必要に応じてプロセッサ間でプログラム実行中のデータを受け渡すことによって、複数のプロセッサが集合的にプログラムを実行する。例えば、マルチタスクの実行において、複数のプロセッサのそれぞれは、タイムスライス毎にタスクスイッチすることにより各タスクの一部分ずつを細切れに実行してよい。この場合、各プロセッサが1つのプログラムのうちどの部分を実行するかは、動的に変化する。また、複数のプロセッサのそれぞれがプログラムのどの部分を実行するかは、マルチプロセッサを意識したプログラミングにより静的に定められてもよい。
【0109】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0110】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0111】
10 推定システム
20,22 容器
30 切替機構
31,32,33 配管
34,35 切替弁
40 環境センサ
50 センサ
100 推定装置
110 制御部
112 取得部
114 推定部
116 通知部
120 記憶部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1230 ROM