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特開2025-10203PD-L1およびTGF-Βを標的とする二機能性分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010203
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】PD-L1およびTGF-Βを標的とする二機能性分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250109BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250109BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250109BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250109BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/00 ZNA
C12N15/62 P
C12N15/13
C12N15/12
C07K14/705
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 C
C12P21/00 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K47/55
A61K47/62
A61K47/68
A61K38/17
C07K16/00
C07K19/00 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】36
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024187749
(22)【出願日】2024-10-24
(62)【分割の表示】P 2023505901の分割
【原出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/105286
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/098476
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521543336
【氏名又は名称】レプ バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴン ウェンツ
(72)【発明者】
【氏名】トウ イーウェイ
(57)【要約】
【課題】PD-L1およびTGF-Βを標的とする二機能性分子の提供。
【解決手段】PD-1およびPD-L1相互作用のブロッキングにおいて優れた活性を有する抗PD-L1抗体を提供する。ヒトTGF-β受容体2型の細胞外ドメインに融合した抗PD-L1抗体またはその断片を含む多機能性分子も提供される。本開示は、いくつかの実施形態では、PD-L1タンパク質およびTGF-βの両方を標的とする二機能性分子を提供する。抗PD-L1抗体から構成される開示されたPD-L1標的化ユニットは、TGF-βのトラップとして機能するヒト形質転換成長因子-β(TGF-β)受容体IIの細胞外ドメインに融合される。実験データは、これらの新しい二機能性分子が、臨床開発における現在のリード候補であるM7824よりも有効であることを示している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその抗原結合断片およびヒトTGF-βRII(TGF-β受容体2型)の細胞外ドメインを含む多機能性分子であって、
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片が、前記ヒトPD-L1タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含み、
前記ヒトTGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号72のアミノ酸配列を含み、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片に融合されている、多機能性分子。
【請求項2】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片が、前記VHを含む重鎖と、前記VLを含む別個の軽鎖とを含む、請求項1に記載の多機能性分子。
【請求項3】
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖に融合されている、請求項2に記載の多機能性分子。
【請求項4】
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖のC末端に融合されている、請求項3に記載の多機能性分子。
【請求項5】
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、ペプチドリンカーを介して前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖に融合されている、請求項3または4に記載の多機能性分子。
【請求項6】
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号72を含み、配列番号71のアミノ酸残基24~48の少なくとも部分的な欠失を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項7】
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号61および73~78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、配列番号74について、Xが、K、SまたはNを除く任意のアミノ酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項8】
配列番号72と前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片との間に少なくとも30個のアミノ酸残基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項9】
配列番号72と前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片との間にアルファヘリックスモチーフを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項10】
前記VHが、配列番号31~37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号38~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の多機能性分子。
【請求項11】
前記VHが配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号43のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の多機能性分子。
【請求項12】
前記VLおよび軽鎖定常領域を含む軽鎖、ならびに前記VH、重鎖定常領域、ペプチドリンカー、および前記TGF-βRII細胞外ドメインを含む重鎖を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項13】
前記重鎖定常領域が、配列番号59のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の多機能性分子。
【請求項14】
ヒトPD-L1(プログラム死リガンド1)タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片であって、前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記VHが、配列番号31~37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号38~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記VHが配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号43のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
ペプチドリンカーを介して配列番号72のアミノ酸配列のN末端に融合した抗体またはその抗原結合断片を含む、多機能性分子。
【請求項18】
前記ペプチドリンカーは、柔軟性リンカーおよび/またはIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFP(配列番号89)の置換ペプチドを含み、前記置換ペプチドは配列番号89とは異なる、請求項17に記載の多機能性分子。
【請求項19】
前記置換ペプチドが、IPPHVQXXVNNDMIVTDNXGAVKFP(配列番号88)のアミノ酸配列を含み、Xが、K、S、またはNを除く任意のアミノ酸である、請求項18に記載の多機能性分子。
【請求項20】
前記置換ペプチドが、配列番号88と少なくとも50%の配列同一性を有する、請求項19に記載の多機能性分子。
【請求項21】
前記置換ペプチドが、TAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)のアミノ酸配列、または配列番号87と少なくとも75%の配列同一性を有するバリアントを含み、前記バリアントが、少なくとも4つのGを含み、PPジペプチドを含まず、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群から選択される3個以下の疎水性アミノ酸残基を含む、請求項18に記載の多機能性分子。
【請求項22】
前記バリアントが、少なくとも5つのGと、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群から選択される1個以下の疎水性アミノ酸残基とを含む、請求項21に記載の多機能性分子。
【請求項23】
前記柔軟性リンカーが、Sおよび少なくとも50%のGを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項24】
前記柔軟性リンカーが、1またはそれを超えるGGGGS(配列番号86)単位を含む、請求項23に記載の多機能性分子。
【請求項25】
前記抗体またはその抗原結合断片のC末端が、配列番号72のアミノ酸配列のN末端から少なくとも20個のアミノ酸残基である、請求項17~24のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項26】
EEYNTSNPD(配列番号90)の配列全体を少なくとも含まない、請求項17~25のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項27】
前記抗体またはその抗原結合断片が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、TIM 3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、BTLA、CD4、CD2、CD8、CD47およびCD73からなる群より選択される抗原に特異的である、請求項17~26のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項28】
前記抗体またはその抗原結合断片がFc断片を含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の多機能性分子。
【請求項29】
前記ペプチドリンカーが、前記Fc断片のC末端に融合されている、請求項28に記載の多機能性分子。
【請求項30】
請求項1~13および17~29のいずれか一項に記載の多機能性分子または請求項14~16のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項31】
請求項1~13および17~29のいずれか一項に記載の多機能性分子または請求項14~16のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項1~13および17~29のいずれか一項に記載の多機能性分子または請求項14~16のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片と、薬学的に適切な担体とを含む組成物。
【請求項33】
がんを処置するための医薬品を製造するための、請求項1~13および17~29のいずれか一項に記載の多機能性分子または請求項14~16のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片の使用。
【請求項34】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための組成物であって、有効量の請求項1~13および17~29のいずれか一項に記載の多機能性分子または請求項14~16のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片を含む、組成物。
【請求項35】
前記がんが固形腫瘍である、請求項33に記載の使用または請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、請求項33もしくは35に記載の使用または請求項34もしくは35に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
近年のがん免疫療法におけるエキサイティングな進歩は、腫瘍学におけるパラダイムの転換をもたらした。最も注目すべき結果は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、遺伝子操作されたT細胞および二重特異性抗体(BsAb)を含むT細胞ベースの治療であった。T細胞は、優れた特異性および長期記憶を有する免疫監視および腫瘍根絶の主要なクラスを表す。しかしながら、腫瘍微小環境では、T細胞は疲弊するかまたは腫瘍細胞に寛容になり得る。T細胞疲弊は、プログラム死受容体-1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン-3(TIM-3)、IL-10受容体、およびキラー免疫グロブリン受容体を含む阻害性受容体の過剰発現に一般的に関連する。
【背景技術】
【0002】
これらのチェックポイント分子に対抗するためのモノクローナル抗体(mAb)に基づく治療は、腫瘍浸潤T細胞を抑制するブレーキを取り除くことができ、それによって異なる悪性腫瘍において有意な臨床的利益を達成する。例えば、PD-1/PD-L1相互作用をブロッキングすることにより、免疫正常化を強化し、抗がん応答を強化することができる。しかしながら、PD-1/PD-L1遮断の顕著な欠乏は、同様の腫瘍特性を有する均一な試験集団にわたって一貫性がない。また、PD-1/PD-L1遮断処置はまた、一部の患者において特定の炎症性副作用を引き起こし得る。PD-1/PD-L1遮断による単独療法の限界および有望な代替物の欠如により、抗腫瘍免疫を活性化し、処置有効性を高めることができる併用処置方法を探求することが必要となっている。
【0003】
M7824(ビントラフスプ アルファ(bintrafusp alfa))は、ヒト形質転換成長因子-β(TGF-β)受容体IIの細胞外ドメインに融合したプログラム死リガンド1(PD-L1)に対するモノクローナル抗体で構成される二機能性タンパク質であり、3つすべてのTGF-βアイソフォームに対する「トラップ」として機能する。PD-L1部分は、メルケル細胞癌および尿路上皮がんの処置に承認されているアベルマブに基づく。しかしながら、現在の臨床データは、M7824の使用が望ましくない皮膚成長に関連し、HPV陽性悪性腫瘍を有する患者に対する第II相試験において全奏効率がわずか約35%~40%であったことを示している。したがって、改善された治療が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示は、いくつかの実施形態では、PD-L1タンパク質およびTGF-βの両方を標的とする二機能性分子を提供する。抗PD-L1抗体から構成される開示されたPD-L1標的化ユニットは、TGF-βのトラップとして機能するヒト形質転換成長因子-β(TGF-β)受容体IIの細胞外ドメインに融合される。実験データは、これらの新しい二機能性分子が、臨床開発における現在のリード候補であるM7824よりも有効であることを示している。
【0005】
したがって、本開示の一実施形態によれば、提供されるのは、抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片およびヒトTGF-βRII(TGF-β受容体2型)の細胞外ドメインを含む多機能性分子であって、抗PD-L1抗体またはその断片が、ヒトPD-L1タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号7~12または配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、またはVH CDR1が配列番号19を含み、VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、VH CDR3が配列番号21を含み、VL CDR1が配列番号22を含み、VL CDR2が配列番号23を含み、VL CDR3が配列番号24または93を含み、ヒトTGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号72のアミノ酸配列を含み、抗PD-L1抗体またはその断片に融合されている、多機能性分子である。
【0006】
一実施形態では、提供されるのは、ヒトPD-L1タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片であって、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3はそれぞれ、配列番号7~12または配列番号13~18のアミノ酸配列を含むか、またはVH CDR1が配列番号19を含み、VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、VH CDR3が配列番号21、VL CDR1が配列番号22を含み、VL CDR2が配列番号23を含み、VL CDR3が配列番号24または93を含む、抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片である。
【0007】
配列番号72のアミノ酸配列のN末端にペプチドリンカーを介して融合された抗体またはその抗原結合断片を含む多機能性分子も提供され、ペプチドリンカーは、(a)少なくとも30個のアミノ酸残基長であるか、または(b)少なくとも25個のアミノ酸残基長であり、アルファヘリックスモチーフを含む。
【0008】
本開示の分子のいずれかでがんを処置するための使用および方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、47C6A3、67F3G7および89C10H8がヒトPD-L1に高親和性で結合し得ることを示す。
【0010】
図2図2は、47C6A3、67F3G7および89C10H8抗体が哺乳動物細胞上に発現されたPD-L1に強力に結合することができることを示す。
【0011】
図3図3は、47C6A3、67F3G7および89C10H8抗体は、カニクイザルPD-L1に高親和性で結合することができるが、ラットまたはマウスPD-L1には結合することができないことを示す。
【0012】
図4図4は、47C6A3、67F3G7及び89C10H8がヒトPD1へのヒトPD-L1の結合を効率的に阻害できることを示す。
【0013】
図5図5は、組換えPD-L1に対する47C6A3、67F3G7および89C10H8の結合動態を示す。
【0014】
図6-1】図6A図6Cは、試験した全てのヒト化抗体が、キメラ抗体としてヒトPD-L1に匹敵する結合効率を有することを示す。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
【0015】
図7図7は、試験されたヒト化抗体が、キメラ抗体と同様の、哺乳動物細胞上に発現されたPD-L1に高効率で結合し得ることを示す。
【0016】
図8-1】図8A図8Cは、いくつかのヒト化抗体がヒトPD1へのヒトPD-L1の結合を効率的に阻害することができることを示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
【0017】
図9-1】図9A図9Cは、いくつかのヒト化抗体がヒトPD-L1のヒトCD80への結合を効率的に阻害することができることを示す。
図9-2】同上。
図9-3】同上。
図9-4】同上。
【0018】
図10図10は、組換えヒトPD-L1に対するLP008-06、LP008-06a、LP008-06a-DAおよびLP008-06a-ESの結合動態を示す。
【0019】
図11図11は、ヒトPD-L1およびヒトTGF-β1に対するLP008-02の結合動態を示す。
【0020】
図12図12は、LP008-02およびLP008-06a-ESが、M7824よりも高親和性でPD1およびPD-L1相互作用を遮断することができることを示す。
【0021】
図13図13は、M7824、LP008-02およびLP008-06a-ESがTGF-βカノニカルシグナル伝達を効果的にブロックすることができることを示す。
【0022】
図14図14は、LP008-02およびLP008-06a-ESがヒトPD-L1に高親和性で結合することを示す。
【0023】
図15図15は、LP008-02およびLP008-06a-ESがカニクイザルPD-L1により高親和性で結合することができるが、ラットPD-L1またはマウスPD-L1には結合することができないことを示す。
【0024】
図16図16は、LP008-02およびLP008-06a-ESが、M7824と同等のヒトTGF-βに対する結合効率を有することを示す。
【0025】
図17図17は、LP008-02及びLP008-06a-ESが、M7824と同様のカニクイザルTGF-β、マウスTGF-β及びラットTGF-βと同等の結合効率を有することを示す。
【0026】
図18-1】図18A図18Bは、動物モデルにおけるLP008-02およびLP008-06a-ESの薬物効果を示す。
図18-2】同上。
【0027】
図19図19は、全ての試験した修飾二機能性分子が、LP008-02-1と同等のヒトTGF-βに対する結合効率を有したことを示す。
【0028】
図20図20は、全ての試験された修飾二機能性分子がTGF-βカノニカルシグナル伝達を効果的にブロックすることができることを示す。
【0029】
図21図21は、全ての試験した修飾二機能性分子が、LP008-02-1と同等のヒトTGF-βに対する結合効率を有したことを示す。
【0030】
図22図22は、全ての試験された修飾二機能性分子がTGF-βカノニカルシグナル伝達を効果的にブロックすることができることを示す。
【0031】
図23図23は、抗体MPDL3280A、47C6A3、Hu67F3G7-22およびHu89C10H8-7が、PD1およびPD-L1相互作用を高親和性で遮断することができることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
「a(1つの、ある)」または「an(1つの、ある)」実体という用語は、1またはそれを超えるその実体を指すことに留意されたい。例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1またはそれを超える抗体を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1またはそれを超える」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識して結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体および任意の抗原結合断片またはその単鎖であり得る。したがって、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子を含む。そのようなものの例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)もしくはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域もしくはその任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも1つの部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体断片は、インタクトな抗体によって認識される同じ抗原と結合する。「抗体断片」という用語は、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmer)、およびダイアボディを含む。「抗体断片」という用語はまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する任意の合成または遺伝子操作されたタンパク質を含む。
【0035】
抗体という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範なクラスのポリペプチドを包含する。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラスがあることを十分に理解する(例えば、γ1~γ4)。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgGなどは、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾バージョンは、本開示を考慮して当業者に容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本開示の範囲内であり、以下の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。4つの鎖は、典型的には、「Y」配置でジスルフィド結合によって結合され、ここで、軽鎖が「Y」の口から始まり可変領域を通って続く重鎖を支える。
【0036】
「特異的に結合する」または「特異性を有する」とは、一般に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間の何らかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、その抗原結合ドメインを介して、ランダムな無関係のエピトープに結合するよりも容易に、そのエピトープに結合する場合、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、本明細書では、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対親和性を限定するために使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも所与のエピトープに対して高い特異性を有すると見なされ得るか、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対してそれが有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的または予防的手段の両方を指し、目的は、がんの進行などの望ましくない生理学的変化または障害を予防または減速(軽減)することである。有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であろうと検出不能であろうと、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状況、疾患進行の遅延または遅延、病状の改善または緩和、および寛解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味し得る。処置を必要とする者には、既に状態もしくは障害を有する者、ならびに状態もしくは障害を有する傾向がある者、または状態もしくは障害を予防すべき者が含まれる。
【0038】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、飼育動物、農場動物および動物園動物、スポーツ動物またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」などの語句は、例えば検出のため、診断手順および/または処置のために使用される本開示の抗体または組成物の投与から利益を得るであろう対象、例えば哺乳動物対象を含む。
多機能性分子
【0040】
添付の実験例において明らかにされるように、本発明者らは、抗PD-L1単位およびTGF-β標的化単位を含むいくつかの二機能性融合タンパク質を同定することができた。実施例14に示されるように、例えば、試験された二機能性タンパク質、LP008-02およびLP008-06a-ESの両方が、MC38マウスモデルにおいてM7824よりも大きい有効性を示した。M7824は、HPV陽性悪性腫瘍を有する患者について現在第II相臨床試験中のPD-L1/TGF-β二重標的化融合タンパク質である。M7824の抗PD-L1単位は、主要なPD-L1抗体であり、メルケル細胞癌および尿路上皮がんの処置に承認されているアベルマブに基づく。したがって、M7824と比較して、新たに開示された二機能性タンパク質の優れた性能は驚くべきことである。
【0041】
さらに、実施例12に示すように、即座に開示される二機能性タンパク質は、より良好な種特異性を有する。同様にマウスおよびラットPD-L1と反応するM7824とは異なり、新しい二機能性タンパク質は、その優れたPD-L1結合活性に加えて、ヒトおよびカニクイザルPD-L1のみに結合する。
【0042】
したがって、一実施形態では、本開示は、少なくとも抗PD-L1単位(unit)およびTGF-β標的化単位を有する多機能性分子を提供する。抗PD-L1単位(unite)は
、本開示の抗PD-L1抗体または断片を含むことができる。TGF-β標的化ユニットは、好ましくは、ヒト形質転換成長因子-β(TGF-β)受容体II(TGF-βRIIまたはTGFBR2)の細胞外ドメインである。
【0043】
TGF-βRIIは、2つのアイソフォームを有する。アイソフォームA(NP_001020018.1;配列番号70)は、アイソフォームB(NP_003233.4;配列番号71)よりも長い細胞外断片を有するが、それらは同じコア外部ドメイン(配列番号72)を共有する。それらの配列を以下の表Aに示す。
表A TGF-βRIIに関連する配列(下線および太字:コア外部ドメイン、下線および斜体:アイソフォーム間の異なる残基、下線のみ:変異)
【表A-1】
【表A-2】
【0044】
いくつかの実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、コア外部ドメイン(配列番号72)ならびにいくつかの隣接残基を含む。例えば、実施例8~16で試験したバリアント1(配列番号61)は、N末端側にさらに25個の残基を含み、C末端側に9個の残基を含む。別のバリアント、バリアント2(配列番号73)は、9個のC末端隣接残基のみを含む。バリアント4~7(配列番号75~78)などの他のバリアントは、配列番号61のN末端配列の一部を置き換える代替リンカーを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、配列番号61の最初の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個のアミノ酸を含まない。いくつかの実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、配列番号61の最後の1、2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸を含まない。
【0046】
さらに別のバリアントであるバリアント3は、バリアント1に基づくが、N末端部分内のX位置に少なくともアミノ酸置換を含む(配列番号88)。これらのX位置は、潜在的なグリコシル化部位である。したがって、置換は、K、SおよびN以外のアミノ酸によるものである。置換の例は、R、A、G、Q、I、L、DまたはEであるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態では、ani-PD-L1単位は、下記にさらに記載されるような抗PD-L1抗体またはその断片(an anti-PD-L1 antibodyof fragment thereof)から構成される。抗体または断片は、限定するものではないが、従来の完全なIgG形式、Fab断片、単鎖断片、または単一ドメイン抗体などの任意の抗体形式をとることができる。抗体またはその断片が軽鎖および別個の重鎖を有する場合、TGF-βRII細胞外ドメインは、軽鎖または重鎖のいずれかに融合され得る。抗体又はその断片が1本のタンパク質鎖(例えば、scFv)上に軽鎖及び重鎖を有する場合、TGF-βRII細胞外ドメインは、軽鎖又は重鎖のいずれかにより近接して融合され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、抗PD-L1単位の鎖のN末端に融合される。いくつかの実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、抗PD-L1単位の鎖のC末端に融合される。好ましい実施形態では、TGF-βRII細胞外ドメインは、必要に応じてペプチドリンカー(例えば、配列番号60、または1つ、2つ、もしくは3つのGGGGS(配列番号86)リピート)を介して、抗PD-L1単位の重鎖のC末端に融合される。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1単位は、VH(重鎖可変領域)およびVL(軽鎖可変領域)を含む。VHおよびVL領域には、VH CDR1、VH CDR2、VH
CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3が含まれ、例えば、表1A~表1Cに示されるものが含まれる。
【0050】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、SDYAWN(配列番号7)、YIIYSGSTSYNPSLKS(配列番号8)、STMIATNWFAY(配列番号9)、KASQDVSLAVA(配列番号10)、WASTRHT(配列番号11)およびQQHYITPWT(配列番号12)の配列を含む。そのようなVH配列の例は、配列番号25(マウス)および26~28(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号29(マウス)および30(ヒト化)に提供されている。例示的なヒト化抗体には、配列番号26または27または28のVHおよび配列番号30のVLを有するものが含まれる。
【0051】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれDFWVS(配列番号13)、EIYPNSGVSRYNEKFKG(配列番号14)、YFGYTYWFGY(配列番号15)、RASKSVSTYMH(配列番号16)、SASHLES(配列番号17)およびQQSNELPVT(配列番号18)の配列を含む。そのようなVH配列の例は、配列番号31(マウス)および32~37(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号38(マウス)および39~43(ヒト化)に提供されている。例示的なヒト化抗体には、配列番号34のVHおよび配列番号39、40もしくは43のVLを有するもの、配列番号35のVHおよび配列番号39のVLを有するもの、または配列番号37のVHおよび配列番号39のVLを有するものが含まれる。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号34のVHおよび配列番号43のVLを含む。
【0052】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。あるいは、VH CDR2は、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)またはSITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)を含み得る。あるいは、VL CDR3はSQYQSGNT(配列番号93)であり得る。
【0053】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。
【0054】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。
【0055】
そのようなVH配列の例は、配列番号44(マウス)および45~49(ヒト化)および57~58(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号50(マウス)および51~55(ヒト化)および56(ヒト化)に提供されている。
【0056】
例示的なヒト化抗体には、配列番号49のVHおよび配列番号52もしくは54のVLを有するもの、または配列番号48のVHおよび配列番号53もしくは54のVLを有するものが含まれる。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号48のVHおよび配列番号53のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号48のVHおよび配列番号56のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号57のVHおよび配列番号56のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号58のVHおよび配列番号56のVLを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、重鎖定常領域(例えば、CH1、CH2および/またはCH3)および/または軽鎖定常領域(例えば、CL)をさらに含む。例示的な重鎖定常領域が配列番号59に提供され、例示的な軽鎖定常領域が配列番号67に提供される(残基108~214)。
TGF-βRII x抗体融合物
【0058】
異なる融合タンパク質設計(例えば、表15)による試験は、TGF-βRIIのコア外部ドメイン(配列番号72)のみが活性に必要であることを実証した。さらに、TGF-βRIIの細胞外ドメインは、抗体に直接融合されるべきではない。ペプチドリンカーによって提供される十分な距離があるべきである。
【0059】
外部ドメインに関して、ペプチドリンカー(これは完全に人工リンカーであり得るか、または外部ドメインに対してN末端の細胞外断片の一部を含み得る、配列番号89)は、最小長を有するべきである。距離が短すぎると、融合タンパク質の安定性または活性が低下する。最小長は、いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40個のアミノ酸残基(residents)である。いくつかの実施形態では、リンカーは、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、170または200個以下のアミノ酸残基である。
【0060】
柔軟性リンカー、例えば1またはそれを超えるG4S(配列番号86)単位を含むことは、いくつかの実施形態では、多機能性分子の安定性および/または活性に有用であり得る。いくつかの実施形態では、柔軟性リンカーは、少なくとも40%、50%、60%、70%または80%のグリシンを含む。いくつかの実施形態では、柔軟性リンカーは、1またはそれを超えるセリンを含む。いくつかの実施形態では、柔軟性リンカーは、1、2、3、4、5または6つのG4S(配列番号86)リピートを含む。
【0061】
(例えば、実施例17)、いくつかの実施形態では、天然のN末端断片(IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFP;配列番号89)を置換ペプチドで置き換えて、屠殺することなく、または活性を改善しても安定性を高めることができることが示されている。いくつかの実施形態では、置換ペプチドは、配列番号89とは異なるが、配列番号89と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%の配列同一性を有する。
【0062】
例示的な置換ペプチドは、IPPHVQXXVNNDMIVTDNXGAVKFP(配列番号88)であり、Xは、K、S、またはNを除く任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、剛性ジペプチドPPを除去する、潜在的切断部位QK、Nおよび/またはKを除去する、柔軟性を高めるための複数のグリシン残基を含む、および/または疎水性残基を減少させるための置換を行うことができる。そのような一例は、TAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)または配列番号87と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、バリアントは、少なくとも4つのGを含み、PPジペプチドを含まず、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群から選択される3個以下の疎水性アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、バリアントは、少なくとも5つのGおよび、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群より選択される1個以下の疎水性アミノ酸残基を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片とTGF-βRIIの外部ドメイン(配列番号72)との間のペプチドリンカーは、柔軟性リンカーを含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号89の置換ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、柔軟性リンカーと置換ペプチドとの両方を含む。いくつかの実施形態では、柔軟性リンカーは、置換ペプチドのN末端にある。いくつかの実施形態では、柔軟性リンカーは、置換ペプチドのC末端である。
【0064】
いくつかの実施形態では、多機能性分子は、少なくとも、EEYNTSNPDの配列全体(配列番号90)を含まない。多機能性分子は、TGF-βRIIの細胞外ドメインから配列番号90全体が除去されていてもよい。いくつかの実施形態では、多機能性分子は、EEYNTSNPD(配列番号90)の1、2、3、4、5、6、7または8個を超えるアミノ酸残基を含まない。
【0065】
多機能性分子の抗体またはその抗原結合断片は、任意の抗原を標的とし得る。非限定的な例は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、TIM3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、BTLA、CD4、CD2、CD8、CD47およびCD73である。それらはまた、本明細書中に開示されるような任意の抗体または断片であり得る。
【0066】
TGF-βRIIの外部ドメインは、抗体または断片の任意の部分に融合され得る。いくつかの実施形態では、外部ドメインは、抗体または断片の重鎖または軽鎖のC末端に融合される。いくつかの実施形態では、外部ドメインは抗体または断片のFc断片のC末端に融合される。
抗PD-L1抗体および断片
【0067】
抗PD-L1抗体および断片も提供され、多機能性分子、二重特異性抗体または多重特異性抗体における抗PD-L1単位として、または単一特異性抗体において単独で使用することができる。
【0068】
例示的なマウス抗PD-L1抗体ならびにそれらのヒト化抗体および改良抗体を調製し、添付の実験例で試験した。全てのマウス抗体(47C6A3、67F3G7、89C10H8)およびそれらの対応するヒト化バージョンは、優れた結合親和性、交差反応性およびPD-1/PD-L1結合の阻害における有効性を示した。
【0069】
重要なことに、MPDL3280A(アテゾリズマブ)と比較した場合、ヒト化67F3G7および89C10H8は、PD-1とPD-L1との間の相互作用の遮断においてMPDL3280Aよりも高い活性を示した(例えば、実施例18を参照のこと)。また、興味深いことに、本開示の試験された抗体のすべてが、MPDL3280Aよりも低い疎水性および低い粘度を示した。より高い疎水性は、タンパク質の溶解度を低下させることが知られている。同様に、高粘度はまた、高濃度タンパク質製剤開発の障害でもある。したがって、そのようなデータは、本発明の抗体が高濃度抗体製剤の調製により適していることを実証している。
【0070】
さらに、即時に開示される抗体の抗原結合断片を、TGF-β標的化単位も含む二機能性融合タンパク質中の単位として含めた。得られた二機能性融合タンパク質は、MC38マウスモデルにおいてM7824よりも高い有効性を示した。M7824は、HPV陽性悪性腫瘍を有する患者について現在第II相臨床試験中のPD-L1/TGF-β二重標的化融合タンパク質である。M7824の抗PD-L1単位は、主要なPD-L1抗体であり、メルケル細胞癌および尿路上皮がんの処置に承認されているアベルマブに基づく。したがって、これらのデータは、二機能性分子または多機能性分子を調製する際の即時に開示される抗体の独特の利点を実証する。
【0071】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体または断片は、VH(重鎖可変領域)およびVL(軽鎖可変領域)を含む。VHおよびVL領域には、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3が含まれ、例えば、表1A~表1Cに示されるものが含まれる。
【0072】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、SDYAWN(配列番号7)、YIIYSGSTSYNPSLKS(配列番号8)、STMIATNWFAY(配列番号9)、KASQDVSLAVA(配列番号10)、WASTRHT(配列番号11)およびQQHYITPWT(配列番号12)の配列を含む。そのようなVH配列の例は、配列番号25(マウス)および26~28(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号29(マウス)および30(ヒト化)に提供されている。例示的なヒト化抗体には、配列番号26または27または28のVHおよび配列番号30のVLを有するものが含まれる。
【0073】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれDFWVS(配列番号13)、EIYPNSGVSRYNEKFKG(配列番号14)、YFGYTYWFGY(配列番号15)、RASKSVSTYMH(配列番号16)、SASHLES(配列番号17)およびQQSNELPVT(配列番号18)の配列を含む。そのようなVH配列の例は、配列番号31(マウス)および32~37(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号38(マウス)および39~43(ヒト化)に提供されている。例示的なヒト化抗体には、配列番号34のVHおよび配列番号39、40もしくは43のVLを有するもの、配列番号35のVHおよび配列番号39のVLを有するもの、または配列番号37のVHおよび配列番号39のVLを有するものが含まれる。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号34のVHおよび配列番号43のVLを含む。
【0074】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。あるいは、VH CDR2は、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)またはSITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)を含むことができる。あるいは、VL CDR3はSQYQSGNT(配列番号93)であり得る。
【0075】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYNSGNT(配列番号24)の配列を含む。
【0076】
一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDSVKG(配列番号20)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPDAVKG(配列番号91)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。一実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、NYWMT(配列番号19)、SITNTGSSTFYPESVKG(配列番号92)、DTTIAPFDY(配列番号21)、KASQNLNEYLN(配列番号22)、KTNTLQA(配列番号23)およびSQYQSGNT(配列番号93)の配列を含む。
【0077】
そのようなVH配列の例は、配列番号44(マウス)および45~49(ヒト化)および57~58(ヒト化)に提供されている。そのようなVL配列の例は、配列番号50(マウス)および51~55(ヒト化)および56(ヒト化)に提供されている。
【0078】
例示的なヒト化抗体には、配列番号49のVHおよび配列番号52もしくは54のVLを有するもの、または配列番号48のVHおよび配列番号53もしくは54のVLを有するものが含まれる。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号48のVHおよび配列番号53のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号48のVHおよび配列番号56のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号57のVHおよび配列番号56のVLを含む。一実施形態では、ヒト化抗体が、配列番号58のVHおよび配列番号56のVLを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、重鎖定常領域(例えば、CH1、CH2および/またはCH3)および/または軽鎖定常領域(例えば、CL)をさらに含む。例示的な重鎖定常領域が配列番号59に提供され、例示的な軽鎖定常領域が配列番号67に提供される(残基108~214)。
【0080】
抗体の活性を保持することができ、またはそれらを改善することさえできるこれらのCDR配列の間で小さな変化(例えば、1つのアミノ酸の付加、欠失または置換)を設計することができると想定される。そのような修飾CDR配列は、CDRバリアントと呼ばれる。本明細書に開示される抗体は、それらが由来する天然に存在する結合ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるように修飾され得ることも当業者によって理解される。例えば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、類似していてもよく、例えば、出発配列と一定のパーセント同一性を有していてもよく、例えば、出発配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であってもよい。いくつかの実施形態では、修飾された抗体または断片は、指定されたCDR配列を保持する。
【0081】
一定の実施形態では、抗体は、抗体と通常関連しないアミノ酸配列または1もしくはそれを超える部分を含む。例示的な変形形態を以下により詳細に記載する。例えば、本開示の抗体は、柔軟性リンカー配列を含み得るか、または機能性部分(例えば、PEG、薬物、毒素、または標識)を付加するように修飾され得る。
タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびタンパク質の調製方法
【0082】
本開示はまた、本開示の多機能性タンパク質、抗体、そのバリアントまたは誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域全体をコードし得る。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別個のポリヌクレオチド分子上の抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の一部をコードし得る。
【0083】
抗体を作製する方法は当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。一定の実施形態では、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域と定常領域の両方が完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当分野で記載され、本明細書に記載される技術を使用して作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができる。そのような抗体を作製するために使用され得る例示的な技術は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,150,584号、第6,458,592号、第6,420,140号に記載されている。
がん処置
【0084】
本明細書に記載されるように、本開示の抗体、バリアントまたは誘導体は、特定の処置および診断方法において使用され得る。
【0085】
本開示はさらに、本明細書中に記載される1またはそれを超える障害または症状を処置するために本開示の多機能性分子または抗体を患者(例えば、動物、哺乳動物およびヒト)に投与することを伴う多機能性分子または抗体に基づく治療を対象とする。本開示の治療用化合物には、本開示の抗体(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)および本開示の抗体をコードする核酸またはポリヌクレオチド(本明細書に記載のそのバリアントおよび誘導体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
本開示の抗体はまた、がんを処置または阻害するために使用され得る。PD-L1は、腫瘍細胞において過剰発現され得る。腫瘍由来PD-L1は、免疫細胞上のPD-1に結合することができ、それによって抗腫瘍T細胞免疫を制限する。マウス腫瘍モデルにおけるPD-L1を標的化する小分子阻害剤またはモノクローナル抗体による結果は、標的化PD-L1治療が腫瘍成長の効果的な制御に対する重要な代替的かつ現実的なアプローチであることを示している。実験例で実証されているように、抗PD-L1抗体は適応免疫応答機構を活性化し、これはがん患者の生存率の改善をもたらし得る。
【0087】
したがって、いくつかの実施形態では、それを必要とする患者のがんを処置する方法が提供される。この方法は、一実施形態では、有効量の本開示の多機能性分子または抗体を患者に投与することを伴う。いくつかの実施形態では、患者の少なくとも1つのがん細胞(例えば、間質細胞)は、PD-L1を発現するか、過剰発現するか、または発現するように誘導される。PD-L1発現の誘導は、例えば、腫瘍ワクチンの投与または放射線治療によって行うことができる。
【0088】
PD-L1タンパク質を発現する腫瘍には、膀胱がん、非小細胞肺がん、腎臓がん、乳がん、尿道がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、メルケル細胞癌、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、および小細胞肺がんの腫瘍が含まれる。したがって、本開示の抗体は、任意の1またはそれを超えるそのようながんを処置するために使用することができる。
【0089】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療などの細胞治療も本開示で提供される。本開示の抗PD-L1抗体と接触させる(または本開示の抗PD-L1抗体を発現するように代替的に操作する)適切な細胞を使用することができる。そのような接触または操作を行うと、次いで、細胞を、処置を必要とするがん患者に導入することができる。がん患者は、本明細書に開示される種類のいずれかのがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞は、がん患者自身から単離された。いくつかの実施形態では、細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから提供された。細胞ががん患者から単離されると、望ましくない免疫反応を最小限に抑えることができる。
【0091】
本開示の抗体もしくはバリアント、またはそれらの誘導体を用いて処置、予防、診断および/または予後判定され得る、細胞生存の増加に関連するさらなる疾患または状態には、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病を含む)および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む))、真性多血症、リンパ腫(例:ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、および、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫などの肉腫および癌を含むがこれらに限定されない固形腫瘍などの悪性腫瘍および関連障害の進行および/または転移が含まれるが、これらに限定されない。
組成物
【0092】
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体および許容され得る担体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0093】
特定の実施形態では、「薬学的に許容され得る」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトでの使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。さらに、「薬学的に許容され得る担体」は、一般に、任意の種類の非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤補助剤である。
【0094】
「担体」という用語は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、滅菌液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物を静脈内投与する場合、水が好ましい担体である。食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射液剤用の液体担体として使用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、または酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩などのpH緩衝剤も含有することができる。ベンジルアルコール、メチルパラベン等の抗菌剤、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張度を調整するための剤も想定される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤・散剤(powder)、持続放出製剤などの形態をとることができる。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、参照により本明細書に組み込まれる、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、治療有効量の抗原結合ポリペプチド、好ましくは精製形態の抗原結合ポリペプチドを適切な量の担体と共に含有する。製剤は投与様式に適するべきである。親製剤(parentalpreparation
)は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与バイアルに封入することができる。
【0095】
一実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として日常的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、注射部位の痛みを和らげるために可溶化剤およびリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉容器内の乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、別々に、または一緒に混合されて単位剤形で供給される。組成物が輸注によって投与される場合、組成物は、無菌医薬品グレードの水または食塩水を含有する輸液ボトルで投薬することができる。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
【実施例0096】
実施例1:ヒトPD-L1に対するマウスモノクローナル抗体の作製
この実施例は、ハイブリドーマ技術を用いた抗ヒトPD-L1マウスモノクローナル抗体の作製を記載する。
【0097】
抗原:CHOK1細胞株(PDL1-CHOK1細胞株)上に高発現したヒトPDL1-Fcタンパク質およびヒトPD-L1。
【0098】
免疫:ヒトPD-L1を標的とするマウスモノクローナル抗体を作製するために、Balb/cマウスおよびWistarラットを最初にPD-L1-Fcタンパク質で免疫した。その後、免疫したマウスおよびラットを、それぞれPD-L1-Fcタンパク質およびCHO-K1/PD-L1安定細胞でブーストした。PD-L1タンパク質に結合する抗体を産生するマウスまたはラットを選択するために、免疫したマウスまたはラットの血清をELISAによる抗体価評価に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、ELISA被覆緩衝液中0.5μg/mlのヒトPD-L1タンパク質、100μl/ウェルで4℃にて一晩被覆し、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロックした。免疫マウス由来の血清の希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1~2時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗マウスIgG抗体またはHRPとコンジュゲートした抗ラットIgG抗体と37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。3回の免疫の後、rhPD-L1タンパク質に対する血清ELISAおよびCHO-K1親細胞株を陰性対照として用いたCHO-K1/PDL-1安定細胞株に対するFACSによっても免疫応答を試験した。十分な力価の抗PDL1 IgGを示したマウスを、3回の免疫後に25μgのヒトPDL1-Fcタンパク質で追加免疫した。得られたマウスを融合に使用した。ハイブリドーマ上清をELISAによって抗PD-L1 IgGについて試験した。
【0099】
細胞融合:電気融合によって融合を行った。融合した細胞を、各融合について50個の96ウェルプレートにプレーティングした。
【0100】
スクリーニング:上清を、組換えヒト(rh)PD-L1-Fcタンパク質およびカウンタースクリーニング抗原に対してELISAによってスクリーニングした。次いで、陽性上清を、CHO-K1/PD-L1安定細胞株およびrhPD-1-Fcタンパク質に対する受容体ブロッキングFACSによる一次スクリーニングから確認スクリーニングに供した。
【0101】
サブクローニングおよびスクリーニング:各融合からの陽性一次クローンを限界希釈によってサブクローニングして、サブクローンが単一の親細胞に由来することを確実にした。サブクローニングを一次クローンと同じアプローチでスクリーニングし、陽性クローンの培養上清を親和性順位付けによるさらなる確認スクリーニングにかけた。
【0102】
ハイブリドーマクローン47C6A3、67F3G7および89C10H8をさらなる分析のために選択した。47C6A3、67F3G7および89C10H8の可変領域のアミノ酸配列を以下の表1に列挙する。


表1 47C6A3、67F3G7および89C10H8の可変領域の配列
【表1】
表1A 47C6A3のCDR配列
【表1A】

表1B 67F3G7のCDR配列
【表1B】

表1C 89C10H8のCDR配列
【表1C】

実施例2:PD-L1抗原への結合活性
ELISA試験
【0103】
ハイブリドーマクローン47C6A3、67F3G7および89C10H8の結合活性を評価するために、これらのクローン由来のキメラmAbをELISA試験に供した。
【0104】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトPD-L1-Fcタンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩、コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから開始する47C6A3、67F3G7および89C10H8抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたマウス抗ヒトIgG
Fab抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。図1に示すように、47C6A3、67F3G7および89C10H8は、ヒトPD-L1に高親和性で結合した(47C6A3についてEC50=10.24ng/ml、67F3G7についてEC50=10.76ng/ml、89C10H8についてEC50=8.112ng/ml)。
【0105】
細胞に基づく結合:FACSを使用して、ヒトPD-L1過剰発現CHOK1細胞に対する47C6A3、67F3G7および89C10H8キメラmAbの結合活性を評価した。
【0106】
手短に言えば、PDL1-CHOK1細胞を最初に、3倍段階希釈した47C6A3、67F3G7および89C10H8キメラmAbと共に、100nMで開始して4℃で40分間インキュベートした。PBSによる洗浄後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)を各ウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。試料をFACS緩衝液で2回洗浄した。Alexa Fluor(登録商標)647の平均蛍光強度(MFI)をFACSCantoで評価した。図2に示すように、47C6A3、67F3G7および89C10H8は、PDL1-CHOK1細胞に高親和性で結合した(47C6A3についてEC50=0.1476nM、67F3G7についてEC50=0.1035nM、89C10H8についてEC50=0.1696nM)。
種間活性
【0107】
ELISA試験を行って、ヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルPD-L1に対するキメラ抗体の結合をそれぞれ評価した。
【0108】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒト、マウス、ラットおよびカニクイザルPD-L1タンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから開始するキメラ抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたマウス抗ヒトIgG Fab抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD
450nmで分光光度計によって分析した。47C6A3、67F3G7及び89C10H8抗体は、ヒト及びカニクイザルPD-L1に結合したが、ラット及びマウスPD-L1には結合しなかった(図3および表2)。
表2 47C6A3、67F3G7および89C10H8の種間活性
【表2】
実施例3:抗体によるPD-1へのPD-L1結合の遮断
【0109】
組換えヒトPD-L1のその受容体PD-1への結合に対する47C6A3、67F3G7および89C10H8キメラmAbのブロッキング効果を評価するために、ELISAに基づく受容体ブロッキングアッセイを使用した。
【0110】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトPD-L1-Fcタンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。50μlのビオチン標識ヒトPD-1-Fcタンパク質、ならびに10μg/mlから出発して50μlで3倍希釈した47C6A3、67F3G7および89C10H8抗体を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いでストレプトアビジン-HRPと共に37℃で10分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。図4に示すように、47C6A3、67F3G7および89C10H8は、それぞれ91.18ng/ml、139.8ng/ml、129.8ng/mlで検出されるIC50でヒトPD-L1のヒトPD1への結合を効率的に阻害した。
実施例4:mAbの結合親和性
【0111】
組換えPD-L1タンパク質(ヒトPD-L1-hisタグ)に対する47C6A3、67F3G7および89C10H8抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。47C6A3、67F3G7および89C10H8 mAbを、プロテインAチップを使用して捕捉した。ヒトPD-L1-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で2分間注入した。抗原を480~1500秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。データ分析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行った。結果を図5及び下記表3に示す。
表3 Biacoreで測定した親和性
【表3】
実施例5.マウス抗体のヒト化
【0112】
47C6A3、67F3G7および89C10H8可変領域遺伝子を使用して、ヒト化mAbを作製した。このプロセスの第1のステップでは、47C6A3、67F3G7、および89C10H8のVHおよびVLまたはVKのアミノ酸配列をヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体的に最も適合するヒト生殖細胞系Ig遺伝子配列を見つけた。47C6A3の軽鎖の場合、ヒトVk1-4が最良適合生殖細胞系であり、重鎖の場合、ヒトVH1-2を主鎖として選択した。67F3G7の軽鎖の場合、最も近いヒトマッチはVk1-39/JK4遺伝子であり、重鎖の場合、最も近いヒトマッチはVH1-2/JH4-FW4遺伝子である。89C10H8の軽鎖の場合、最も近いヒトマッチはVk1-17/JK2遺伝子であり、重鎖の場合、最も近いヒトマッチはVH3-21/JH3遺伝子である。
【0113】
47C6A3のVLについては、ヒトVk1-4が最良適合生殖細胞系であり、47C6A3のVHについては、ヒトVH1-2を主鎖として選択した。次いで、47C6A3のヒト化可変ドメイン配列を設計し、CDRL1、L2およびL3をVk1-4遺伝子のフレームワーク配列に移植し、CDRH1、H2およびH3をVH1-2遺伝子のフレームワーク配列に移植した。次いで、3Dモデルを生成して、マウスアミノ酸をヒトアミノ酸で置き換えることが結合および/またはCDR立体配座に影響を及ぼし得るフレームワーク位置があるかどうかを決定した。重鎖の場合、フレームワーク中のR、MおよびIは、復帰変異に関与していた。
【0114】
次いで、67F3G7のヒト化可変ドメイン配列を設計し、CDRL1、L2およびL3をVk1-39/JK4遺伝子のフレームワーク配列に移植し、CDRH1、H2およびH3をVH1-2/JH4-FW4遺伝子のフレームワーク配列に移植した。次いで、3Dモデルを生成して、マウスアミノ酸をヒトアミノ酸で置き換えることが結合および/またはCDR立体配座に影響を及ぼし得るフレームワーク位置があるかどうかを決定した。重鎖の場合、フレームワーク中のV、K、TおよびIは、復帰変異に関与していた。軽鎖の場合、フレームワーク中のT、V、LおよびQが復帰変異に関与していた。
【0115】
次いで、89C10H8のヒト化可変ドメイン配列を設計し、CDRL1、L2およびL3をVk1-17/JK2遺伝子のフレームワーク配列に移植し、CDRH1、H2およびH3をVH3-21/JH3遺伝子のフレームワーク配列に移植した。次いで、3Dモデルを生成して、マウスアミノ酸をヒトアミノ酸に置き換えることが結合および/またはCDR立体配座に影響を及ぼし得るフレームワーク位置があるかどうかを決定した。重鎖の場合、フレームワーク中のA、T、IおよびSは、復帰変異に関与していた。軽鎖の場合、フレームワーク中のY、I、EおよびFが復帰変異に関与していた。
【0116】
いくつかのヒト化抗体のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を以下の表4に列挙する。
表4 ヒト化抗体配列(下線はCDRを示し、太字/斜体は復帰変異を示す)
【表4-1】
【表4-2】
【0117】
遺伝子をpcDNA 3.4ベクターにクローニングし、293F細胞にトランスフェクトした。抗体は以下の表に従って作製した。
【0118】
ヒト化VHおよびVL遺伝子を合成的に作製し、次いで、それぞれヒトガンマ1およびヒトカッパ定常ドメインを含有するベクターにクローニングした。ヒトVHとヒトVLのペアリングは、41個のヒト化抗体を作り出した(表5参照)。
表5 VHおよびVL領域を有するヒト化抗体
【表5】
実施例6:ヒト化抗体の抗原結合特性
組換えヒトPD-L1への結合
【0119】
抗原結合活性を評価するために、ヒト化抗体をELISA試験に供した。簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトPD-L1-Fcタンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、200μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから始まるヒト化抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたマウス抗ヒトIgG Fab抗体と37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。図6に示すように、全てのヒト化抗体は、キメラ抗体としてヒトPD-L1と同等の結合効率を示した。
【0120】
ヒト化抗体の結合動態を調べるために、この実施例では、Biacoreを用いて親和性ランキングを行った。表6に示されるように、Hu67F3G7-2、Hu67F3G7-3、Hu67F3G7-5、Hu67F3G7-7、Hu67F3G7-22、Hu89C10H8-4、Hu89C10H8-7、Hu89C10H8-11及びHu89C10H8-12は、キメラ抗体と同等の高親和性を示した。
表6 ヒト化抗体の親和性ランキング
【表6】
哺乳動物細胞上に過剰発現されたヒトPD-L1への結合
【0121】
抗原結合特性を評価するために、ヒト化抗体を、FACSによって哺乳動物細胞上に過剰発現されたPD-L1へのそれらの結合について分析した。手短に言えば、PDL1-CHOK1細胞を、最初に、15μg/mlで開始する3倍段階希釈(3-foldserious diluted)ヒト化抗体と共に4℃で40分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を各ウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。Alexa Fluor(登録商標)647のMFIをFACSCantoで評価した。図7に示すように、全てのヒト化抗体は、哺乳動物細胞上に発現されたPD-L1に高効率で結合することができる。
Biacoreによるヒト化抗体の完全速度論的親和性
【0122】
組換えPD-L1タンパク質(ヒトPD-L1-hisタグ)に対するヒト化抗体の結合を、捕捉法を使用してBiacoreによって試験した。Hu47C6A3-1、Hu47C6A3-2、Hu47C6A3-3、Hu67F3G7-2、Hu67F3G7-3、Hu67F3G7-5、Hu67F3G7-7、Hu67F3G7-22、Hu89C10H8-4、Hu89C10H8-7、Hu89C10H8-11およびHu89C10H8-12 mAbを、プロテインAチップを使用して捕捉した。ヒトPD-L1-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で2分間注入した。抗原を1500秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。Biacore T200評価ソフトウェアを用いてデータ解析を行い、結果を以下の表7に示す。
表7 Biacoreによる親和性
【表7】
実施例7:ヒト化抗体によるPD1へのPDL1の結合の遮断
組換えヒトPD-L1を用いることによる受容体ブロッキングアッセイ
【0123】
ヒトPD-L1には2つの受容体、PD-1およびCD80がある。これらの2つのタンパク質に対するヒト化PD-L1抗体のブロッキング特性を調べるために、タンパク質ベースの受容体ブロッキングアッセイをここで使用した。
【0124】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトPD-L1-Fcタンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩コーティングし、次いで150μl/ウェルの1% BSAで37℃、2時間ブロッキングした。50μlのビオチン標識ヒトPD-1-FcまたはCD80-Fcタンパク質および10μg/mlから出発して50μlで3倍希釈したPD-L1抗体を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いでストレプトアビジン-HRPと共に37℃で10分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。図8に示すように、Hu47C6A3-1、Hu47C6A3-2、Hu47C6A3-3、Hu67F3G7-2、Hu67F3G7-3、Hu67F3G7-5、Hu67F3G7-7、Hu67F3G7-22、Hu89C10H8-4、Hu89C10H8-7、Hu89C10H8-11及びHu89C10H8-12は、ヒトPD1へのヒトPD-L1の結合を効率的に阻害した。さらに、Hu47C6A3-1、Hu47C6A3-2、Hu47C6A3-3、Hu67F3G7-2、Hu67F3G7-3、Hu67F3G7-5、Hu67F3G7-7、Hu67F3G7-22、Hu89C10H8-4、Hu89C10H8-7、Hu89C10H8-11及びHu89C10H8-12は、ヒトCD80へのヒトPD-L1の結合を用量依存的に効率的に阻害した(図9)。
実施例8.PD-L1経路およびTGF-β経路の両方における二機能性タンパク質標的化
【0125】
この実施例では、二機能性組換え抗PD-L1抗体およびTGF-βRII融合タンパク質を調製し、試験した。
【0126】
上記分子の軽鎖は、抗PDL1 mAbの軽鎖である。重鎖は、柔軟性(GlySer)Glyリンカーを介した抗PDL1 mAbの重鎖と、TGF-βRIIの可溶性細胞外ドメインのN末端との融合物である。融合接合部で、抗体重鎖のC末端リジン残基をアラニンに変異させて、潜在的なタンパク質分解切断を減少させた。
【0127】
いくつかの例では、CDRの潜在的な修飾部位を類似のアミノ酸に変異させた。抗PD-L1部分の配列を以下の表8に示す。
表8 二機能性分子中の抗体部分の可変領域の配列
【表8-1】
【表8-2】
表9 二機能性分子のVH/VL
【表9】
【0128】
VHに加えて、二機能性分子の重鎖は、定常領域(C末端KがAに変異している)、(GlySer)Glyリンカー、およびTGF-βRIIの可溶性細胞外ドメインのN末端をさらに含む。それらの配列を表10に示す。
表10 重鎖および重鎖/軽鎖全体のさらなる配列
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
実施例9:二機能性分子の結合親和性
【0129】
組換えPD-L1タンパク質(ヒトPD-L1-hisタグ)に対するLP008-06、LP008-06a、LP008-06a-DAおよびLP008-06a-ES二機能性分子の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。
【0130】
プロテインAチップを用いて二機能性分子を捕捉した。ヒトPD-L1-hisタグタンパク質の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で2分間注入した。抗原を1500秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。データ分析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行った。結果を図10および以下の表11に示す。
表11 Biacoreによる親和性試験
【表11】
【0131】
組換えPD-L1タンパク質およびヒトTGF-β1へのLP008-02の結合を、捕捉法を使用してBiacoreで試験した。
【0132】
プロテインAチップを用いてLP008-02を捕捉した。ヒトPD-L1-hisタグタンパク質およびヒトTGF-β1の段階希釈物を、捕捉抗体上に30μl/分の流速で2分間注入した。PD-L1を680秒間解離させ、TGF-β1を1000秒間解離させた。全ての実験はBiacore T200で行った。データ分析は、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して行った。結果を図11および以下の表12に示す。
表12 Biacoreによる親和性試験
【表12】
実施例10:PD-1/PD-L1遮断のための機能アッセイ
【0133】
PD1/PD-L1相互作用のブロッキングにおける二機能性分子の活性を、この実施例では生物発光細胞ベースのアッセイによって測定した。
【0134】
このアッセイでは、PD1エフェクター細胞をPD-L1標的細胞と共培養すると、PD-1/PD-L1相互作用がTCRシグナル伝達およびNFAT-RE媒介性発光を阻害する。PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗PD-1または抗PD-L1抗体のいずれかを添加すると、阻害シグナルが放出され、TCR活性化とNFAT-RE媒介発光が生じるであろう。
【0135】
図12に示すように、LP008-02およびLP008-06a-ESは、M7824よりもかなり高い活性でPD1およびPD-L1相互作用を遮断した(M7824 EC50=0.8504nM、LP008-02 EC50=0.3630nM、LP008-06a-ES EC50=0.4553nM)。
実施例11:TGF-βについての機能アッセイ
【0136】
この実施例は、ルシフェラーゼアッセイを使用して、標準的なTGF-βシグナル伝達に対するLP008-02およびLP008-06a-ESの効果を評価した。
【0137】
M7824の段階希釈物(二機能性抗PD-L1/TGFβトラップ融合タンパク質、例えば、Knudsonら、Oncoimmunology.2018;7(5):e1426519を参照のこと)、LP008-02またはLP008-06a-ESを、組換えヒトTGF-βの存在下で約20時間、SBEルシフェラーゼレポーター-トランスフェクト293細胞と共にインキュベートした。
【0138】
図13に示されるように、M7824、LP008-02およびLP008-06a-ESは、293細胞において構築されたTGF-βSBEルシフェラーゼレポーターアッセイ系において、TGF-βカノニカルシグナル伝達をブロックした(IC50=0.06687nM、IC50=0.07352nM、IC50=0.07167nM)。
実施例12:ヒトPD-L1に対する結合活性
組換えヒトPD-L1を用いたELISA
【0139】
M7824、LP008-02およびLP008-06a-ESの結合活性を評価するために、二機能性分子をELISA試験に供した。
【0140】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのヒトPD-L1-Hisタンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩コーティングし、次いで150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。1μg/mlから開始したM7824、LP008-02およびLP008-06a-ESの3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
【0141】
図14に示すように、LP008-02およびLP008-06a-ESは、M7824よりもかなり高い活性でヒトPD-L1に結合した(EC50=11.82ng/mlおよびEC50=14.36ng/ml対EC50=23.68ng/ml)。
種間活性
【0142】
マウスPD-L1、ラットPD-L1、カニクイザルPD-L1に対する二重特異性抗体の結合を評価するために、抗体をELISAで試験した。
【0143】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中0.5μg/mlのマウス、ラットおよびカニクイザルPD-L1タンパク質、100μl/ウェルで4℃、一晩コーティングし、次いで150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。1μg/mlから出発する二重特異性抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
【0144】
LP008-02およびLP008-06a-ESは、カニクイザルPD-L1にM7824よりも高親和性で結合することができたが、M7824のみがラットおよびマウスPD-L1に結合することができる(図15および表13)。
表13 M7824、CZ010-02およびCZ010-06a-ESの種間活性
【表13】
実施例13:ヒトTGF-βに対する結合活性
組換えヒトTGF-βを使用することによるELISA
【0145】
ヒトTGF-βに対するM7824、LP008-02及びLP008-06a-ESの結合活性を評価するために、これらの二機能性分子をELISA試験に供した。
【0146】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中1μg/mlのヒトTGF-βタンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから始まるM7824、LP008-02およびLP008-06a-ES二機能性分子の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
【0147】
図16に示すように、M7824、LP008-02及びLP008-06a-ESは、いずれもヒトTGF-βに高い活性(EC50=43.43ng/ml、EC50=28.58ng/ml、EC50=39.38ng/ml)で結合した。
種間活性
【0148】
マウス、ラットおよびカニクイザルTGF-βに対する二重特異性抗体の結合を評価するために、二機能性分子をELISA試験に供した。
【0149】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中1μg/mlのマウス、ラットおよびカニクイザルTGF-βタンパク質、100μl/ウェルで、4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1% BSAでブロッキングした。10μg/mlから出発する二重特異性抗体の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG抗体と37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
【0150】
試験した二機能性分子はすべて、カニクイザル、ラットおよびマウスのTGF-βに高い活性で結合した(図17および表14)。
表14 M7824、LP008-02およびLP008-06a-ESの種間活性
【表14】
実施例14:MC38腫瘍マウスモデルにおける有効性
【0151】
この実施例は、二機能性分子のインビボ有効性を試験するために腫瘍マウスモデルを使用した。
【0152】
PBSに再懸濁したヒトPD-L1を発現するMC38細胞を、B-hPD-L1ヒト化マウスの右皮膚に、5×10細胞の濃度で0.2mLの容量で皮下播種した。平均腫瘍体積が約55mmに達したとき、適切な個々の腫瘍体積を有する24匹のマウスを群のために選択し、動物を腫瘍体積に従って4つの実験群に無作為に割り当て、各群に6匹の動物を割り当てた。抗mCD20mAb注射後、総ヒトIgG、M7824、LP008-02およびLP008-06a-ESを腹腔内注射によって週に3回投与した。用量は、10μg/gでの実験動物の体重に基づいて計算した。マウスの体重および腫瘍サイズを週に2回試験した。
【0153】
結果を図18に示す。二機能性分子LP008-02およびLP008-06a-ESは、腫瘍成長阻害に関してこれらの動物モデルにおいてM7824よりも良好な有効性を示した。さらに、動物の死亡がIgGおよびM7824群の両方で観察されたが、LP008-02およびLP008-06a-ES群では観察されず、新しい二機能性分子のより良好な安全性プロファイルを実証した。
実施例15.二機能性分子の修飾
【0154】
この実施例では、特定の修飾二機能性分子(表15)を、TGF-βについての機能的アッセイのそれらのインビトロ有効性について試験した。それらのいくつかは、TAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)、HYPおよび/またはG4S(配列番号86)リピートのリンカー配列を含んでいた。これらの分子をそれぞれLP008-02-1~LP008-02-7と呼ぶ。
表15 リンカーおよびTGF-βRIIの修飾配列設計
【表15】
組換えヒトTGF-β1を用いたELISA
【0155】
修飾LP008-02二機能性分子の結合活性を評価するために、これらの二機能性分子をELISAで試験した。
【0156】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中1μg/mlのヒトTGF-β1タンパク質(Acro、TG1-H4212)、100μl/ウェルで4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。30nMから出発する修飾LP008-02二機能性分子の3倍希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体と共に37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、OD450nmで分光光度計によって分析した。
【0157】
図19に示すように、修飾されたLP008-02の二機能性分子は、いずれもLP008-02-1に匹敵する高い活性でヒトTGF-β1に結合した。
TGF-β機能アッセイ
【0158】
修飾LP008-02二機能性分子の段階希釈物を、組換えヒトTGF-β1の存在下で約22時間、SBEルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトした293細胞とインキュベートした。
【0159】
図20に示されるように、LP008-02-2、LP008-02-3およびLP008-02-4は、293細胞において構築されたTGF-βSBEルシフェラーゼレポーターアッセイ系において、TGF-βカノニカルシグナル伝達を効果的にブロックし(IC50=0.1435nM、IC50=0.1639nM、IC50=0.1882nM)、これをLP008-02-1と比較した。
実施例16.二機能性分子の比較
【0160】
表15の分子1~7は、外部ドメインのN末端およびC末端に異なる配列を含んでいた(配列番号72)。それらを安定性および活性について試験して、これらの配列の影響を評価した。
【0161】
分子1(LP008-02-1)は、細胞外ドメインのN末端から25個のアミノ酸(IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFP、配列番号89、またはアイソフォームBのアミノ酸24~48、配列番号71)およびC末端断片(EEYNTSNPD、配列番号90)を含むタンパク質(配列番号61)の細胞外部分全体(entireexcellular portion)を含んでいた。さらに、この分子は、いくつかのG4S(配列番号86)
リピートをリンカーに付加した。
【0162】
分子2(LP008-02-2)は、分子1と比較して、細胞外ドメインのN末端部分(アイソフォームBのアミノ酸24~48、配列番号89)を人工リンカーTAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)で置き換えた。このリンカーを配列番号89に基づいてモデル化した。変化には、(i)剛性ジペプチドPPの除去、(ii)潜在的切断部位QK、NおよびKの除去、(iii)柔軟性を高めるための複数のグリシン残基の包含、(iv)疎水性残基の部分的除去(例えば、1つのIのみを保持する)が含まれた。これらの変化を以下の表16に示す。分子2はまた、N末端に単一のG4Sユニットを含んでいた。
表16 人工リンカー
【表16】
【0163】
分子3(LP008-02-3)は、分子2よりも長いG4Sリンカーを含んでいた。分子3の上に、分子4(LP008-02-4)は、C末端断片EEYNTSNPD(配列番号90)の欠失を有していた。分子5(LP008-02-5)は、人工リンカー、配列番号87を短いリンカーHYPで置き換えた。分子6(LP008-02-6)および7(LP008-02-7)は、HYPリンカーのN末端側に異なる長さのG4Sリンカーを含んでいた。
実施例17.二機能性分子の結合活性および安定性
【0164】
この実施例では、SEC-HPLCおよびCE-SDSを使用して、LP008-02-1、および4つのさらなる修飾分子、LP008-02-2、LP008-02-3、LP008-02-6およびLP008-02-7を含む修飾二機能性分子のいくつかの安定性を評価した。
【0165】
ポリエチレンイミン(PEI)媒介一過性トランスフェクションによって5つの配列をCHO-K1細胞で発現させ、10日後に上清を回収した。二機能性分子をプロテインAによって培養上清から精製し、その後、SEC-HPLCによって検出される99%を超える純度レベルでSuperdex 200pgによって精製した(表17)。
表17 0日目の試験品のSEC-HPLCおよびCE-SDSの結果
【表17】
【0166】
修飾LP008-02二機能性分子の結合活性を評価するために、これらの二機能性分子をELISAによって試験した。
【0167】
簡潔には、マイクロタイタープレートを、PBS中1μg/mlのヒトTGF-β1タンパク質(Acro、TG1-H4212)、100μl/ウェルで4℃、一晩コーティングし、次いで、150μl/ウェルの1%BSAでブロッキングした。30nMから出発する修飾LP008-02二機能性分子の4倍段階希釈物を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween(登録商標)で洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトIgG Fc抗体と30分間インキュベートした。洗浄後、プレートを発色のためにTMB基質とインキュベートし、OD 450nmで分光光度計によって分析した。
【0168】
図21に示されるように、他の修飾されたLP008-02二機能性分子は全て、LP008-02-1に匹敵する高い活性でヒトTGF-β1に結合した。
【0169】
標準的なTGF-βシグナル伝達に対する修飾されたLP008-02二機能性分子の効果を評価するために、修飾二機能性分子をルシフェラーゼアッセイで試験した。二機能性分子の段階希釈物を、SBEルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトした293細胞と共に、組換えヒトTGF-β1の存在下で24時間インキュベートした。図22に示されるように、LP008-02-1、LP008-02-2、LP008-02-3、LP008-02-6およびLP008-02-7のように、293細胞において構築されたTGF-βSBEルシフェラーゼレポーターアッセイ系において、TGF-βカノニカルシグナル伝達を効率的にブロックした(IC50=0.04231nM、IC50=0.0527nM、IC50=0.09616nmおよびIC50=0.1962nM)。
【0170】
二機能性分子を抗体安定性検出のために2つの緩衝液に別々に溶解した。緩衝液情報は以下のように列挙される:緩衝液A:20mM酢酸-酢酸ナトリウム、250mMソルビトール、0.02%ポリソルベート80、pH4.9;緩衝液B:20mM His/His-HCl、250mMトレハロース、pH5.4。
【0171】
調製した3.0mg/mlの試料を40℃でインキュベートし、次いで0日目および14日目にそれぞれSEC-HPLCおよびCE-SDSによって検出した。表18に示すように、緩衝液Aおよび緩衝液Bの両方で調合したLP008-02-2、LP008-02-3、LP008-02-6およびLP008-02-7は、SEC-HPLC、非還元CE-SDSおよび還元CE-SDSにおいてLP008-02-1よりも高い安定性を有する。
表18 14日目の試験品のSEC-HPLCおよびCE-SDSの結果
【表18】
【0172】
したがって、この実施例は、修飾二機能性分子LP008-02-2、LP008-02-3、LP008-02-6およびLP008-02-7が、LP008-02-1と同様の活性を示したが、LP008-02-1よりも有意により高い安定性を示したことを示す。LP008-02-1中のTGF-βRIIのN末端部分(IPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFP、配列番号89)を人工リンカー(例えば、TAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)またはHYP)で置き換えると、安定性が有意に改善された。
実施例18.抗PD-L1抗体の高濃度製剤
【0173】
この実施例は、HIC-HPLCおよび粘度試験を使用して、高濃度抗PD-L1分子製剤の開発の潜在性およびリスクを評価した。
【0174】
4つの抗PD-L1分子を、一過性トランスフェクションによってCHO-K1細胞または293F細胞において発現させた。重鎖の定常領域はヒトIgG1(N297A)-Fcである。精製されたMPDL3280A(アテゾリズマブ)、47C6A3、Hu67F3G7-22およびHu89C10H8-7抗体をHIC-HPLCによって試験し、疎水性溶出時間に対応する硫酸アンモニウムの濃度を得て、これを使用してこれらの分子の溶解度範囲を予測した。表19に示すように、MPDL3280A、47C6A3、Hu67F3G7-22、Hu89C10H8-7の疎水性溶出時間に相当する硫酸アンモニウム濃度は、それぞれ0.41M、0.78M、0.97M、1.10Mである。新しく開発された抗体はすべて、参照抗体MPDL3280Aよりも疎水性が低い。
表19 HIC-HPLC試験からの抗体疎水性
【表19】
【0175】
次いで、PD1/PD-L1相互作用のブロッキングにおける抗PD-L1抗体の活性を生物発光細胞ベースのアッセイで測定した。このアッセイでは、PD1エフェクター細胞をPD-L1標的細胞と共培養すると、PD-1/PD-L1相互作用がTCRシグナル伝達およびNFAT-RE媒介性発光を阻害する。PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗PD-1または抗PD-L1抗体のいずれかを添加すると、阻害シグナルが放出され、TCR活性化とNFAT-RE媒介発光が生じるであろう。図23に示すように、MPDL3280A、47C6A3、Hu67F3G7-22及びHu89C10H8-7は、PD1及びPD-L1相互作用をかなり高い活性で遮断した(MPDL3280A EC50=0.1327nM、47C6A3 EC50=0.1501nM、Hu67F3G7-22 EC50=0.1034nM、Hu89C10H8-7 EC50=0.2138nM)。
【0176】
ヒトIgG1 Fcを有するMPDL3280AおよびHu67F3G7-22を、一過性トランスフェクションによってCHO-K1細胞において発現させた。精製されたMPDL3280A-hIgG1 FcおよびHu67F3G7-22-hIgG1 Fc抗体をHIC-HPLCによって試験し、疎水性溶出時間に対応する硫酸アンモニウムの濃度を得て、これを使用して2つの分子の溶解度範囲を予測した。表20に示すように、MPDL3280A-hIgG1 Fc及びHu67F3G7-22-hIgG1 Fcの疎水性溶出時間に相当する硫酸アンモニウム濃度は、それぞれ0.42 M及び0.99 Mである。ここでも、同じFc断片では、Hu67F3G7-22は、MPDL3280Aよりも低い疎水性を示した。
表20 HIC-HPLC試験の結果
【表20】
【0177】
抗体の溶解度および粘度特性をさらに確認するために、2つの精製候補物を、限外濾過によってリン酸緩衝液(60mM NaClを含む)中で直接濃縮した。限外濾過プロセス中に、濃度、SEC-HPLC、および粘度特性を異なる段階で測定した。表21に示すように、MPDL3280A-hIgG1 Fcの粘度は、同様の濃度のHu 67F3G7-22-hIgG1 Fcの粘度よりもはるかに高い。また、高濃度製剤の場合、一般に、より低い粘度を有する抗体が、より高い粘度を有する抗体よりも好ましい。したがって、治療用タンパク質として、Hu67F3G7-22抗体は、MPDL3280Aよりも高い潜在性を有する。
表21 溶解度試験の結果
【表21】
【0178】
本開示は、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価な任意の組成物または方法が本開示の範囲内にある。本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本開示の方法および組成物に様々な修正および変形を加えることができることは当業者には明らかである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、本開示の修正および変形を包含することが意図されている。
【0179】
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片およびヒトTGF-βRII(TGF-β受容体2型)の細胞外ドメインを含む多機能性分子であって、
前記抗PD-L1抗体またはその断片が、前記ヒトPD-L1タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号7~12または配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、または前記VH CDR1が配列番号19を含み、前記VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、前記VH CDR3が配列番号21を含み、前記VL CDR1が配列番号22を含み、前記VL CDR2が配列番号23を含み、
前記VL CDR3が配列番号24または93を含み、
前記ヒトTGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号72のアミノ酸配列を含み、前記抗PD-L1抗体またはその断片に融合されている、多機能性分子。
(項目2)
抗PD-L1抗体またはその断片が、前記VHを含む重鎖と、前記VLを含む別個の軽鎖とを含む、項目1に記載の多機能性分子。
(項目3)
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、前記抗PD-L1抗体またはその断片の前記重鎖に融合されている、項目2に記載の多機能性分子。
(項目4)
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、前記抗PD-L1抗体またはその断片の前記重鎖のC末端に融合されている、項目3に記載の多機能性分子。
(項目5)
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、ペプチドリンカーを介して前記抗PD-L1抗体またはその断片の前記重鎖に融合されている、項目3または4に記載の多機能性分子。
(項目6)
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号72を含み、配列番号71のアミノ酸残基24~48の少なくとも部分的な欠失を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目7)
前記TGF-βRII細胞外ドメインが、配列番号61および73~78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、配列番号74について、Xが、K、SまたはNを除く任意のアミノ酸である、項目1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目8)
配列番号72と前記抗PD-L1抗体またはその断片との間に少なくとも30個のアミノ酸残基を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目9)
配列番号72と前記抗PD-L1抗体またはその断片との間にアルファヘリックスモチーフを含む、項目1~5のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目10)
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目11)
前記VHが、配列番号31~37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号38~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目10に記載の多機能性分子。
(項目12)
前記VHが配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号43のアミノ酸配列を含む、項目11に記載の多機能性分子。
(項目13)
前記VH CDR1が配列番号19を含み、前記VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、前記VH CDR3が配列番号21を含み、前記VL CDR1が配列番号22を含み、前記VL CDR2が配列番号23を含み、前記VL CDR3が配列番号24または93を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目14)
前記VHが、配列番号44~49および57~58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号50~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目13に記載の多機能性分子。
(項目15)
前記VHが配列番号48、57または58のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号53または56のアミノ酸配列を含む、項目13に記載の多機能性分子。
(項目16)
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号19、92、21、22、23および93のアミノ酸配列を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目17)
前記VHが配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号56のアミノ酸配列を含む、項目16に記載の多機能性分子。
(項目18)
前記VLおよび軽鎖定常領域を含む軽鎖、ならびに前記VH、重鎖定常領域、ペプチドリンカー、および前記TGF-βRII細胞外ドメインを含む重鎖を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目19)
前記重鎖定常領域が、配列番号59のアミノ酸配列を含む、項目18に記載の多機能性分子。
(項目20)
前記ヒトPD-L1タンパク質に対する特異性を有し、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片であって、前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号7~12または配列番号13~18のアミノ酸配列を含むか、または前記VH CDR1が配列番号19を含み、前記VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、前記VH CDR3が配列番号21を含み、前記VL CDR1が配列番号22を含み、前記VL CDR2が配列番号23を含み、前記VL CDR3が配列番号24または93を含む、抗PD-L1(プログラム死リガンド1)抗体またはその断片。
(項目21)
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号13~18のアミノ酸配列を含む、項目20に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目22)
前記VHが、配列番号31~37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号38~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目21に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目23)
前記VHが配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号43のアミノ酸配列を含む、項目21に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目24)
前記VH CDR1が配列番号19を含み、前記VH CDR2が配列番号20、91または92を含み、前記VH CDR3が配列番号21を含み、前記VL CDR1が配列番号22を含み、前記VL CDR2が配列番号23を含み、前記VL CDR3が配列番号24または93を含む、項目20に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目25)
前記VHが、配列番号44~49および57~58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号50~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目24に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目26)
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CD
R2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号19、92、21、22、23および93のアミノ酸配列を含む、項目24に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目27)
前記VHが配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号56のアミノ酸配列を含む、項目26に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目28)
前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3がそれぞれ、配列番号7~12のアミノ酸配列を含む、項目20に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目29)
前記VHが、配列番号25~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号29~30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目28に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目30)
前記VHが配列番号26、27または28のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号30のアミノ酸配列を含む、項目28に記載の抗PD-L1抗体またはその断片。
(項目31)
ペプチドリンカーを介して配列番号72のアミノ酸配列のN末端に融合した抗体またはその抗原結合断片を含む、多機能性分子。
(項目32)
前記ペプチドリンカーは、柔軟性リンカーおよび/またはIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFP(配列番号89)の置換ペプチドを含み、前記置換ペプチドは配列番号89とは異なる、項目31に記載の多機能性分子。
(項目33)
前記置換ペプチドが、IPPHVQXXVNNDMIVTDNXGAVKFP(配列番号88)のアミノ酸配列を含み、Xが、K、S、またはNを除く任意のアミノ酸である、項目32に記載の多機能性分子。
(項目34)
前記置換ペプチドが、配列番号88と少なくとも50%の配列同一性を有する、項目33に記載の多機能性分子。
(項目35)
前記置換ペプチドが、TAGHTQTSTGGGAITTGTSGAGHGP(配列番号87)のアミノ酸配列、または配列番号87と少なくとも75%の配列同一性を有するバリアントを含み、前記バリアントが、少なくとも4つのGを含み、PPジペプチドを含まず、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群から選択される3個以下の疎水性アミノ酸残基を含む、項目32に記載の多機能性分子。
(項目36)
前記バリアントが、少なくとも5つのGと、I、L、M、F、V、W、YおよびPからなる群から選択される1個以下の疎水性アミノ酸残基とを含む、項目35に記載の多機能性分子。
(項目37)
前記柔軟性リンカーが、Sおよび少なくとも50%のGを含む、項目32~36のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目38)
前記柔軟性リンカーが、1またはそれを超えるGGGGS(配列番号86)単位を含む、項目37に記載の多機能性分子。
(項目39)
前記抗体またはその抗原結合断片のC末端が、配列番号72のアミノ酸配列のN末端から少なくとも20個のアミノ酸残基である、項目31~38のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目40)
EEYNTSNPD(配列番号90)の配列全体を少なくとも含まない、項目31~39のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目41)
前記抗体またはその断片が、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、CD28、CD122、4-1BB、TIM 3、OX-40、OX40L、CD40、CD40L、LIGHT、ICOS、ICOSL、GITR、GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、BTLA、CD4、CD2、CD8、CD47およびCD73からなる群より選択される抗原に特異的である、項目31~40のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目42)
前記抗体またはその断片がFc断片を含む、項目31~41のいずれか一項に記載の多機能性分子。
(項目43)
前記ペプチドリンカーが、前記Fc断片のC末端に融合されている、項目42に記載の多機能性分子。
(項目44)
項目1~19および31~43のいずれか一項に記載の多機能性分子または項目20~30のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む細胞。
(項目45)
項目1~19および31~43のいずれか一項に記載の多機能性分子または項目20~30のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその断片をコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
(項目46)
項目1~19および31~43のいずれか一項に記載の多機能性分子または項目20~30のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその断片と、薬学的に適切な担体とを含む組成物。
(項目47)
がんを処置するための医薬品を製造するための、項目1~19および31~43のいずれか一項に記載の多機能性分子または項目20~30のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその断片の使用。
(項目48)
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置するための方法であって、有効量の項目1~19および31~43のいずれか一項に記載の多機能性分子または項目20~30のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体もしくはその断片を前記患者に投与することを含む方法。
(項目49)
前記がんが固形腫瘍である、項目47に記載の使用または項目48に記載の方法。
(項目50)
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、項目47もしくは49に記載の使用または項目48もしくは49に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
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【外国語明細書】