(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102065
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
H01F27/02 Z
H01F27/02 150
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219268
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芥川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】椎名 洋悦
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059BB03
5E059BB08
5E059BB15
(57)【要約】
【課題】
変圧器で、雨水による錆の発生を抑制する。
【解決手段】
放熱フィンと、上面カバーを有する変圧器において、前記放熱フィンは前記上面カバーと一部が重畳し、前記上面カバーからの雨水が前記放熱フィンとずれた位置に滴下される変圧器。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱フィンと、上面カバーを有する変圧器において、
前記放熱フィンは前記上面カバーと一部が重畳し、
前記上面カバーからの雨水が前記放熱フィンとずれた位置に滴下される変圧器。
【請求項2】
請求項1記載の変圧器において、前記上面カバーの側面は、山部と谷部を有する変圧器。
【請求項3】
請求項2記載の変圧器において、前記放熱フィンの幅よりも、前記山部と隣接する山部の間隔の方が大きい変圧器。
【請求項4】
請求項3記載の変圧器において、前記山部と隣接する山部の間隔が、前記放熱フィンと隣接する放熱フィンの間の間隔の整数倍である変圧器。
【請求項5】
請求項4記載の変圧器において、前記放熱フィンの頂部が、前記山部と山部の間に位置する変圧器。
【請求項6】
請求項5記載の変圧器において、前記放熱フィンの頂部が、前記谷部に位置する変圧器。
【請求項7】
請求項1記載の変圧器において、前記放熱フィンの側面のうちの長い部分が、前記放熱フィンの形成領域からずれて配置されている変圧器。
【請求項8】
請求項7記載の変圧器において、前記放熱フィンの側面のうちの長い部分が、前記変圧器の角部に配置されている変圧器。
【請求項9】
請求項8記載の変圧器において、前記放熱フィンの側面のうちの長い部分が、前記変圧器の4隅に配置されている変圧器。
【請求項10】
請求項5記載の変圧器において、前記変圧器が油入変圧器である変圧器。
【請求項11】
請求項10記載の変圧器において、前記変圧器が傾斜計を有する変圧器。
【請求項12】
請求項7記載の変圧器において、前記変圧器が油入変圧器である変圧器。
【請求項13】
請求項12記載の変圧器において、前記変圧器が傾斜計を有する変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変圧器、特に屋外で使用される油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統での必須設備として、変圧器は種々の場所で用いられる。その中で、屋外に設置される変圧器も一般的に広く用いられている。
【0003】
しかし、屋外設置での使用に際しては、長期使用によって錆が発生する場合がある。
【0004】
特許文献1には、塩害地域で塩分が洗い流されやすいようにすることで、錆の進行を抑える変圧器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術は、雨水を誘導して塩分を洗い流すことで錆の進行を抑制するという思想である。一方、錆は、雨水そのものの存在自体によっても、乾燥状態に比べ発生しやすいものとなる。特許文献1の開示は、むしろ雨水を積極的に利用するものであり、雨水そのものによる錆の発生を抑制する思想に関しては示唆も開示もなく、むしろ対極にあるものである。
【0007】
そこで本発明では、雨水そのものによる錆の発生という特許文献1とは真逆の課題を解決し、一例として雨水そのものによる錆の発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段の一例をあげれば、放熱フィンと、上面カバーを有する変圧器において、前記放熱フィンは前記上面カバーと一部が重畳し、前記上面カバーからの雨水が前記放熱フィンとずれた位置に滴下される変圧器、である。
【0009】
本願発明の更なる目的、効果は、以下明細書全文を通して明らかとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、雨水による錆の発生を抑制した変圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0013】
図1は、本発明の対象となる変圧器の模式上面図である。1は変圧器、10は変圧器カバー、11は放熱フィンである。なお10は、変圧器上面に設置されるカバーであるため、上面カバーと称してもよい。放熱フィン11は、変圧器での電力変換に際し生じる発熱を外部に拡散するためのものである。この発熱は、変換効率が100%という理想的な状態でない限り不可避であるため、多数の放熱フィンによる効果的な放熱が必要となる。
【0014】
本発明では、変圧器カバー10の端部は、上面図として、放熱フィン11の延材方向と直行するように配置されている。また
図1では隠れているが、放熱フィン11は、変圧器カバー10の下側でも、変圧器本体に向かい延材している。すなわち、変圧器カバー10の端部は、変圧器本体を超えて、かつ放熱フィン11の途中に位置するように構成されている。
【0015】
図2は、本発明の対象となる変圧器の模式側面図である。
図1のA-A線での側面図に相当する。放熱フィン11が多数並列し、また変圧器の上側から下側にかけて長い縦長の形状として延材し、放熱面積の増大を図っている。
【0016】
また
図2では、変圧器カバー10の端部は、変圧器本体を超えて、かつ放熱フィン11の途中に位置することが示されている。これは、変圧器カバー10と放熱フィン11が、その一部が重畳するように形成されているということもできる。
【0017】
次に、変圧器での、本発明での特徴となる部分を説明する。本発明では、変圧器を側面から見た場合の、変圧器カバー10の端部での構造と、放熱フィン11の位置関係に特徴がある。
【0018】
図3Aは、
図1のA-A線部分を側面から見た場合の、変圧器カバー10の端部での構造と、放熱フィン11の位置関係を説明する模式説明図である。
【0019】
変圧器カバー10は、下側に折れ曲がっている。そして、側面図として、変圧器カバー10の下端は、変圧器カバー10の上端と非平行に構成されている。
【0020】
次に、変圧器カバー10の下端と、放熱フィン11の詳細な位置関係の例を、
図3Bから
図3Dで説明する。
【0021】
図3Bは、本発明の変圧器カバー10の下端と、放熱フィン11の位置関係の一例を説明する模式説明図である。20は変圧器カバー10の谷部、あるいは折り曲げ谷部、また21は変圧器カバー10の山部、あるいは折り曲げ山部ということができる。別の言い方としては、20は変圧器カバー10の側面での短い部分、21は変圧器カバー10の側面での長い部分ということができる。
【0022】
22は放熱フィン11の頂部である。
【0023】
図3Bに示すように、放熱フィン11は変圧器カバー10の谷部に対向するように配置されている。
【0024】
変圧器カバー10は
図1に示すように変圧器1の大半を覆っている。これにより、雨水は、まず変圧器カバー10で大半が受け止められることとなる。これにより変圧器本体は雨水から変圧器カバー10により守られるが、同時に、変圧器カバー10に受け止めた雨水を適切に処理することが必要となる。
【0025】
仮に、変圧器カバー10の側面での下端が、変圧器カバー10の側面での上端と平行であった場合、雨水は変圧器カバー10の下端のランダムな位置で滴下することになる。このため、放熱フィンにも、大量の雨水が滴下することになり、放熱フィンの錆や腐食の原因となるリスクがある。そこで本発明では、変圧器カバー10の側面での上端と下端を非平行に形成した。これにより、変圧器カバー10から雨水が滴下する部分を選択的に誘導することが可能となる。
【0026】
またこれは、変圧器カバー10からの雨水が、放熱フィン11とずれた位置に滴下されるように構成することを意味する。
【0027】
図3Bでは、変圧器カバー10を、谷部20と山部21とを設けることで、山部21から雨水が滴下されるよう雨水を誘導することが可能となるため、雨水が滴下する部分を選択的に誘導することが実現する。
【0028】
さらに、
図3Bでは、放熱フィン11は、変圧器カバー10の谷部20に対向するように配置されている。これにより、雨水は、変圧器カバー10の山部21から滴下することになる。これは、換言すれば、放熱フィン11に雨水が接触しにくい位置で、雨水を滴下できるようになることを意味する。別の言い方としては、隣接する放熱フィン11の間に、変圧器カバー10に雨水の選択的滴下領域を設けるということもできる。
【0029】
この結果、雨水の滴下による放熱フィン11での錆の発生を抑制することが可能となる。
【0030】
図3Cは、
図3Bの変形例である。
図3Bでは、変圧器カバー10の下端は山部21と谷部20の間で曲線状の形状となっている。
図3Cでは、変圧器カバー10の下端は山部21と谷部20の間で直線状の形状となっている。これにより、
図3Cの形状では、
図3Bの形状より、加工が容易となるため、製造コストの低減が実現する。
【0031】
図3Dは、
図3Cの変形例である。
図3Cとの違いは、
図3Cでは山部21が隣接する放熱フィン11の間に位置するように形成されたのに対し、
図3Dでは、山部21が複数の放熱フィン単位で、該放熱フィン単位の間に位置するような形状となっている点である。これにより、山と谷の個数を低減できるため、
図3Cの構造より構造が単純となり、さらに加工コストの低減が実現する。
【0032】
なお、山部21が複数の放熱フィン単位で、該放熱フィン単位の間に位置するような形状となっている点は、
図3Bのような曲線で接続された形状に対し適用する場合も本実施例に当然含むものである。
【0033】
また、
図3Bから
図3Dの山部、谷部、放熱フィンの位置関係を充足するには、放熱フィンの幅<変圧器カバーの山部と山部の間隔、の関係を満たすことが必要である。
【0034】
さらに、放熱フィンが多数並列する変圧器で本発明の効果を十分そうするには、隣接する放熱フィンの間隔の整数倍=変圧器カバーの山部と山部の間隔、を満たすことが望ましい。整数倍以外の場合、多数の放熱フィンのいずれかで変圧器カバーの山部と放熱フィンの頂部が対抗する領域が生じてしまう可能性があるためである。
【0035】
なお、放熱フィン11への雨水の滴下防止というその一点のみに着目すれば、変圧器カバー10が放熱フィン11を覆うように巨大に構成するという構造上の代案も可能である。しかしこの場合、放熱フィン11の上部の空気対流領域が変圧器カバー10により塞がれる、あるいはその領域を大幅に減じることとなる。この場合、放熱フィン11が、その放熱性能の低下を招いてしまい、さらに巨大な放熱フィンが必要となるという際限ない変圧器サイズの増大につながってしまうこととなる。それゆえ、放熱フィン11による放熱と、放熱フィン11の錆発生の抑制の両立が可能な本願発明は、実用上大きな効果を有するものである。
【0036】
また、変圧器が油入変圧器の場合、放熱フィンはその肉厚全てが金属ではなく、その内部に油が入りこむようにして放熱性能を上げることが可能である。一方、その場合、放熱フィンの金属での肉厚は薄いものとなり、相対的に錆に弱いものとなる、また万一錆の進展により放熱フィンに穴が開くような事態が生じた場合、油の流出による周囲環境の汚染にもつながることが想定される。それゆえ、特に油入変圧器においては、本願発明の思想を用いて放熱と錆抑制の両立を図ることは、実用上大きな意義を持つものである。
本実施例でも、実施例1同様に、変圧器カバー10の下端は、変圧器カバー10の上端と非平行に構成されている。本実施例と実施例1の違いは、変圧器カバー10の山部21の位置である。
但し、望ましくは、30、31、32、33のうちの、少なくとも対抗する2か所、すなわち31と33、あるいは30と32に山部を設けることが、より望ましい。変圧器の全辺に渡り本実施例の適用が可能となるためである。
また特許文献1は、放熱器4とカバー5を各図に開示するが、カバー5の側面で上端と下端を非平行とする本願の思想は示唆も開示もないものであることを、再度申し添えておく。