(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102192
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】電源装置、並びに、その制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/155 B
H02M3/155 G
H02M3/155 W
H02M3/155 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219494
(22)【出願日】2023-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人電気学会 電気学会研究会資料「2023年9月21日-2023年9月22日半導体電力変換/モータドライブ合同研究会」 第121-125頁、令和5年9月18日発行 一般社団法人電気学会 半導体電力変換/モータドライブ合同研究会 令和5年9月22日開催
(71)【出願人】
【識別番号】597144439
【氏名又は名称】Mywayプラス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】小原 秀嶺
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】徐 進
(72)【発明者】
【氏名】下里 昇
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB11
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB86
5H730BB88
5H730BB89
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730EE61
5H730FF02
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG21
5H730XC12
(57)【要約】
【課題】補助変換器を適用した電源装置を提供する。
【解決手段】本発明による電源装置1は、それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータ11と、第1の相の出力端とノードn1との間に直列で挿入される補助変換器12A及びリアクトルLAと、第2の相の出力端とノードn1との間に直列で挿入される補助変換器12B及びリアクトルLBと、ノードn1と負荷4との間に挿入されるスイッチ13と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、
前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、
前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、
前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、
を含む電源装置。
【請求項2】
前記第1の補助変換器及び前記第2の補助変換器のそれぞれは、
第1の上側スイッチ及び第1の下側スイッチからなる入力側レグ、並びに、第2の上側スイッチ及び第2の下側スイッチからなる出力側レグを有するフルブリッジ回路と、
前記入力側レグ及び前記出力側レグと並列に接続されたコンデンサと、を有する、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列に接続された複数の前記第1の補助変換器と、
前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列に接続された複数の前記第2の補助変換器と、
を含む請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記負荷は蓄電池である、
請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項5】
それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、
前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、
前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、
前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、
を含む電源装置の制御装置であって、
前記第1の相の出力端から出力される第1の出力電圧、及び、前記第2の相の出力端から出力される第2の出力電圧のそれぞれが、所定のデューティー比に従って変化することとなるよう前記DC/DCコンバータの動作を制御し、
第1のキャリア信号及び前記第1の出力電圧の交流成分と同期して変化する第1の指令値に基づいて前記第1の補助変換器の動作を制御し、
第2のキャリア信号及び前記第2の出力電圧の交流成分と同期して変化する第2の指令値に基づいて前記第2の補助変換器の動作を制御し、
前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに異なる値となる第1の期間と、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに同じ値となる第2の期間とで、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が異なることとなるよう、所定のキャリア信号に基づいて前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成する、
電源装置の制御装置。
【請求項6】
前記第1の期間では、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が0°又は180°となるよう、前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成し、
前記第2の期間では、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が90°となるよう、前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の補助変換器及び前記第2の補助変換器のそれぞれは、
第1の上側スイッチ及び第1の下側スイッチからなる入力側レグ、並びに、第2の上側スイッチ及び第2の下側スイッチからなる出力側レグを有するフルブリッジ回路と、
前記入力側レグ及び前記出力側レグと並列に接続されたコンデンサと、を有し、
前記第1のキャリア信号及び前記第1の指令値に基づいて前記第1の補助変換器の前記第1の上側スイッチ、前記第1の下側スイッチ、前記第2の上側スイッチ、前記第2の下側スイッチそれぞれのオンオフ状態を制御することにより、前記第1の補助変換器の動作を制御し、
前記第2のキャリア信号及び前記第2の指令値に基づいて前記第2の補助変換器の前記第1の上側スイッチ、前記第1の下側スイッチ、前記第2の上側スイッチ、前記第2の下側スイッチそれぞれのオンオフ状態を制御することにより、前記第2の補助変換器の動作を制御する、
請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定のキャリア信号は三角波の信号である、
請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項9】
それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、
前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、
前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、
前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、
を含む電源装置の制御方法であって、
前記第1の相の出力端から出力される第1の出力電圧、及び、前記第2の相の出力端から出力される第2の出力電圧のそれぞれが、所定のデューティー比に従って変化することとなるよう前記DC/DCコンバータの動作を制御し、
第1のキャリア信号及び前記第1の出力電圧の交流成分と同期して変化する第1の指令値に基づいて前記第1の補助変換器の動作を制御し、
第2のキャリア信号及び前記第2の出力電圧の交流成分と同期して変化する第2の指令値に基づいて前記第2の補助変換器の動作を制御し、
前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに異なる値となる第1の期間と、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに同じ値となる第2の期間とで、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が異なることとなるよう、所定のキャリア信号に基づいて前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成する、
電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、並びに、その制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、再生可能エネルギ発電、モバイル機器など、蓄電池を利用する機器の普及が急速に進んでおり、それに伴い、蓄電池試験用の電源装置に要求される性能の水準が高度化しつつある。そのような性能の例としては、高電圧対応、大電力容量、高速応答、低出力リプル、高効率、低コストなどが挙げられる。
【0003】
非特許文献1には、典型的な蓄電池試験用の電源装置の構成が開示されている。同文献の
図1に示されるように、蓄電池試験用の電源装置は、交流電源と負荷(試験対象の蓄電池)の間に、PWM(Pulse Width Modulation)整流器、絶縁形DC/DCコンバータ、非絶縁形DC/DCコンバータ(メインコンバータ)が直列に接続されてなる構成を有している。
【0004】
非特許文献2には、高圧側電源と低圧側電源の間に接続される非絶縁形DC/DCコンバータの出力リプルを低減するため、非絶縁形DC/DCコンバータのメインコンバータを構成する双方向チョッパの出力端と低圧側電源の間に、フルブリッジセルからなる補助変換器を挿入する技術が開示されている。この補助変換器は、フルブリッジ回路と、該フルブリッジ回路に並列に接続されたキャパシタとを有して構成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小原 秀嶺、外4名、「セル電圧の平衡と高速出力応答のための補助インダクタ回路を有するモジュール型マルチレベルDCDCコンバータ(A Modular Multilevel DC-DC Converter With Auxiliary Inductor Circuits for Cell Voltage Balancing and Fast Output Response)」、アメリカ電気電子工学会パワーエレクトロニクスの公開ジャーナル(IEEE Open Journal of Power Electronics)、2022年6月23日、p.391-401
【非特許文献2】松本 雅輝、外2名、「補助フルブリッジ変換器を有する双方向チョッパの電流リプル解析と実験検証」、電気学会研究会資料(半導体電力変換研究会)、2023年9月18日、p.19-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者は、非特許文献1に記載されるような電源装置の出力リプルを低減すべく、非特許文献2に記載されるような補助変換器を電源装置に適用することを検討している。具体的には、電源装置のメインコンバータの出力端と負荷との間に補助変換器を挿入することを検討している。しかしながら、検討を進める中で、電源装置に補助変換器を適用した構成には、補助変換器の初期充電を行えないという問題があることが判明した。
【0007】
詳しく説明すると、補助変換器を使用するためには、始動前に、その中のキャパシタを充電(初期充電)する必要がある。両側に電源のある非特許文献2の構成では、初期充電時に両側の電源に電流を流すことが許容されていれば、電源間に電流を流すことにより、特に問題なくこの初期充電を完了することができる。しかしながら、電源装置に補助変換器を適用する場合、同様の電流を流すためには、試験対象の蓄電池に電流を流すことになる。試験開始前の蓄電池にそのような電流を流すことは禁じられているため、補助変換器に初期充電用の電流を流すことができず、結果として従来、電源装置に補助変換器を適用することは不可能であった。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、補助変換器を適用した電源装置を提供することにある。
【0009】
ところで、補助変換器の制御は、キャリア信号と、メインコンバータの出力電圧から生成される電圧信号との比較結果に基づいて実行される。従来、この制御の間、三角波キャリア信号の位相は一定の値に維持されていたが、上記目的を達成するために、電源装置のメインコンバータに第1の相と第2の相を設け、それぞれに補助変換器を設置しようとする場合、キャリア信号の位相を一定の値に維持していると、一方の補助変換器の出力電圧の位相と他方の補助変換器の出力電圧の位相とが一致し、その結果として出力リプルの低減効果が得られなくなってしまう場合があることが判明した。
【0010】
したがって、本発明の目的の他の一つは、メインコンバータに第1の相と第2の相を設け、それぞれに補助変換器を設置する場合にも、出力リプルの低減効果を得ることのできる電源装置の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電源装置は、それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、を含む電源装置である。
【0012】
本発明による電源装置の制御装置は、それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、を含む電源装置の制御装置であって、前記第1の相の出力端から出力される第1の出力電圧、及び、前記第2の相の出力端から出力される第2の出力電圧のそれぞれが、所定のデューティー比に従って変化することとなるよう前記DC/DCコンバータの動作を制御し、第1のキャリア信号及び前記第1の出力電圧の交流成分と同期して変化する第1の指令値に基づいて前記第1の補助変換器の動作を制御し、第2のキャリア信号及び前記第2の出力電圧の交流成分と同期して変化する第2の指令値に基づいて前記第2の補助変換器の動作を制御し、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに異なる値となる第1の期間と、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに同じ値となる第2の期間とで、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が異なることとなるよう、所定のキャリア信号に基づいて前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成する、電源装置の制御装置である。
【0013】
本発明による電源装置の制御方法は、それぞれフルブリッジ回路の第1レグ及び第2レグである第1の相及び第2の相を有するDC/DCコンバータと、前記第1の相の出力端と出力ノードとの間に直列で挿入される第1の補助変換器及び第1のリアクトルと、前記第2の相の出力端と前記出力ノードとの間に直列で挿入される第2の補助変換器及び第2のリアクトルと、前記出力ノードと負荷との間に挿入されるスイッチと、を含む電源装置の制御方法であって、前記第1の相の出力端から出力される第1の出力電圧、及び、前記第2の相の出力端から出力される第2の出力電圧のそれぞれが、所定のデューティー比に従って変化することとなるよう前記DC/DCコンバータの動作を制御し、第1のキャリア信号及び前記第1の出力電圧の交流成分と同期して変化する第1の指令値に基づいて前記第1の補助変換器の動作を制御し、第2のキャリア信号及び前記第2の出力電圧の交流成分と同期して変化する第2の指令値に基づいて前記第2の補助変換器の動作を制御し、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに異なる値となる第1の期間と、前記第1の指令値及び前記第2の指令値が互いに同じ値となる第2の期間とで、前記第1のキャリア信号と前記第2のキャリア信号の位相差が異なることとなるよう、所定のキャリア信号に基づいて前記第1のキャリア信号及び前記第2のキャリア信号を生成する、電源装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電源装置によれば、第1の相の出力端から第1の補助変換器、出力ノード、第2の補助変換器を経て第2の相の出力端に至る電流経路を形成することができるので、負荷に電流を流すことなく、第1の補助変換器及び第2の補助変換器を充電することができる。したがって、補助変換器を適用した電源装置を提供することが可能になる。
【0015】
本発明による電源装置の制御装置及び制御方法によれば、第1の出力電圧及び第2の出力電圧が同じ値である場合と、第1の出力電圧及び第2の出力電圧が異なる値である場合とのいずれにおいても、一方の補助変換器の出力電圧の位相と他方の補助変換器の出力電圧の位相とを異ならせることができるので、メインコンバータに第1の相と第2の相を設け、それぞれに補助変換器を設置する場合にも、出力リプルの低減効果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態による電源装置1及びその制御装置2の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態による制御装置2によるDC/DCコンバータ11の制御方法を示す図である。
【
図3】コンデンサC1Aの初期充電時における各スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【
図4】コンデンサC1Bの初期充電時における各スイッチのオンオフ状態を示す図である。
【
図5】本発明の背景技術による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図6】本発明の背景技術による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図7】本発明の背景技術による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。
【
図11】本実施の形態の変形例による電源装置1及びその制御装置2の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態による電源装置1及びその制御装置2の構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態による電源装置1は、直流電圧Vdc(>0)を出力する直流電源3と、蓄電池である負荷4との間に接続される蓄電池試験用電源装置である。以下では、電源装置1が蓄電池試験用電源装置である例を取り上げて本願発明の実施の形態を説明するが、本願発明は、蓄電池試験用電源を含む各種の電源装置(電源回路、電力変換装置、電力変換器を含む)に広く適用可能である。
【0019】
電源装置1の内部には、非絶縁形のDC/DCコンバータ11(メインコンバータ)、補助変換器12A,12B、リアクトルLA,LB、スイッチ13が配置される。直流電源3は、例えば非特許文献1に記載されているような、交流電源、PWM整流器、絶縁形DC/DCコンバータを含む構成であってよい。
【0020】
制御装置2は電源装置1の動作を制御するコンピュータであり、図示しない外部のコンピュータから供給される指令値D_a,D_b及びキャリア信号carrier1,carrier2に基づいて動作するよう構成される。指令値D_a,D_bはそれぞれ一定の電圧値であり、通常は同じ値である。キャリア信号carrier1は、0以上の電圧範囲において一定の周期Tで振動する三角波の信号であり、キャリア信号carrier2は、電圧0を中心にして周期Tより短い周期で振動する三角波の信号である。制御装置2による制御の詳しい内容については、電源装置1の構成の説明の中で順次説明する。
【0021】
DC/DCコンバータ11は、フルブリッジ回路を構成する4つのスイッチS1A,S2A,S1B,S2Bを有して構成される。これらスイッチS1A,S2A,S1B,S2Bはそれぞれ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子と、この半導体素子と並列に接続されたダイオードとを含んで構成される片方向スイッチである。この点は、後述する補助変換器12A,12B内の各スイッチについても同様である。
【0022】
スイッチS1A,S2Aは、直流電源3のプラス側端子とマイナス側端子(グランド端子)の間にこの順で直列に接続されており、フルブリッジ回路の第1レグを構成する。同様に、スイッチS1B,S2Bも、直流電源3のプラス側端子とマイナス側端子の間にこの順で直列に接続されており、フルブリッジ回路の第2レグを構成する。スイッチS1A,S1Bは各レグの上アーム(上側スイッチ)、スイッチS2A,S2Bは各レグの下アーム(下側スイッチ)である。以下では、スイッチS1A,S2Aにより構成される第1レグをDC/DCコンバータ11の「第1の相」と称し、スイッチS1B,S2Bにより構成される第2レグをDC/DCコンバータ11の「第2の相」と称する。スイッチS1A,S2Aの接続点は第1の相の出力端を構成し、スイッチS1B,S2Bの接続点は第2の相の出力端を構成する。
【0023】
図2は、制御装置2によるDC/DCコンバータ11の制御方法を示す図である。同図に示すキャリア信号carrier_a,carrier_bは、上述したキャリア信号carrier1に基づいて制御装置2が生成する信号である。キャリア信号carrier1は周期Tで振動する三角波の信号であり、キャリア信号carrier_aは、キャリア信号carrie1そのものとなる。キャリア信号carrier_bは、キャリア信号carrier1の位相を180°シフトしてなる信号である。
【0024】
制御装置2は、キャリア信号carrier_aと指令値D_aを比較することにより、スイッチS1A,S2Aのオンオフ制御を行う。具体的に説明すると、制御装置2は、キャリア信号carrier_aが指令値D_aより小さい時間長dT(0<d<1)の期間でスイッチS1Aをオン、スイッチS2Aをオフとし、キャリア信号carrier_aが指令値D_aより大きい時間長(1-d)Tの期間でスイッチS1Aをオフ、スイッチS1Aをオンとする。また、制御装置2は、キャリア信号carrier_bと指令値D_bを比較することにより、スイッチS1B,S2Bのオンオフ制御を行う。具体的に説明すると、制御装置2は、キャリア信号carrier_bが指令値D_bより小さい時間長dTの期間でスイッチS1Bをオン、スイッチS2Bをオフとし、キャリア信号carrier_bが指令値D_bより大きい時間長(1-d)Tの期間でスイッチS1Bをオフ、スイッチS1Bをオンとする。
【0025】
以上の制御により、DC/DCコンバータ11の第1の相の出力電圧Vma、第2の相の出力電圧Vmbは、以下の式(1)~(4)で表される電圧となる。ただし、Vmadc,Vmbdcはそれぞれ出力電圧Vma,Vmbの直流成分であり、Vmaac,Vmbacはそれぞれ出力電圧Vma,Vmbの交流成分である。以下では、電圧Vmaac,Vmbacが(1-d)Vdcである期間をそれぞれ出力電圧Vma,Vmbの「ハイ期間」と称し、電圧Vmaac,Vmbacが-dVdcである期間をそれぞれ出力電圧Vma,Vmbの「ロー期間」と称する場合がある。
【0026】
【0027】
図1に戻る。スイッチ13は、共通端子及び2つの選択端子を有する単極双投式のスイッチである。スイッチ13の共通端子は、図示したノードn1(出力ノード)を構成する。スイッチ13の一方の選択端子は、負荷4の一方の端子に接続される。したがって、スイッチ13の一方の選択端子が選択されている場合、ノードn1は負荷4の一方の端子に接続されることになる。負荷4の他方の端子は、直流電源3のマイナス側端子に接続される。スイッチ13の他方の選択端子は、開放端を構成する。したがって、スイッチ13の他方の選択端子が選択されている場合、ノードn1は負荷4から切り離されることになる。
【0028】
DC/DCコンバータ11の第1の相の出力端(スイッチS1A,S2Aの接続点)とノードn1との間には、補助変換器12A及びリアクトルLAが直列に挿入される。また、DC/DCコンバータ11の第2の相の出力端(スイッチS1B,S2Bの接続点)とノードn1との間には、補助変換器12B及びリアクトルLBが直列に挿入される。
【0029】
補助変換器12A(第1の補助変換器)は、フルブリッジ回路を構成する4つのスイッチS11A1,S12A1,S21A1,S22A1と、コンデンサC1Aとを含んで構成される。スイッチS11A1はフルブリッジ回路の入力側レグの上側スイッチ(第1の上側スイッチ)を構成し、スイッチS12A1はフルブリッジ回路の入力側レグの下アーム側スイッチ(第1の下側スイッチ)を構成する。スイッチS11A1,S12A1の接続点はフルブリッジ回路の入力端を構成しており、DC/DCコンバータ11の第1の相の出力端に接続される。また、スイッチS21A1はフルブリッジ回路の出力側レグの上アーム(第2の上側スイッチ)を構成し、スイッチS22A1はフルブリッジ回路の出力側レグの下アーム(第2の下側スイッチ)を構成する。スイッチS21A1,S22A1の接続点はフルブリッジ回路の出力端を構成しており、リアクトルLAを介してノードn1に接続される。コンデンサC1Aは、フルブリッジ回路の入力側レグと出力側レグの間に、これらと並列に接続される。
【0030】
補助変換器12Aは、制御装置2の制御によって動作するよう構成される。制御装置2は、外部から供給されるキャリア信号carrier2及び指令値D_aに基づいてスイッチS11A1,S12A1,S21A1,S22A1のオンオフを制御することにより、補助変換器12Aの動作制御を行う。この制御の詳細については、後ほど
図5~
図10を参照して説明する。
【0031】
補助変換器12B(第2の補助変換器)は、フルブリッジ回路を構成する4つのスイッチS11B1,S12B1,S21B1,S22B1と、コンデンサC1Bとを含んで構成される。スイッチS11B1はフルブリッジ回路の入力側レグの上側スイッチ(第1の上側スイッチ)を構成し、スイッチS12B1はフルブリッジ回路の入力側レグの下側スイッチ(第1の下側スイッチ)を構成する。スイッチS11B1,S12B1の接続点はフルブリッジ回路の入力端を構成しており、DC/DCコンバータ11の第2の相の出力端に接続される。また、スイッチS21B1はフルブリッジ回路の出力側レグの上側スイッチ(第2の上側スイッチ)を構成し、スイッチS22B1はフルブリッジ回路の出力側レグの下側スイッチ(第2の下側スイッチ)を構成する。スイッチS21B1,S22B1の接続点はフルブリッジ回路の出力端を構成しており、リアクトルLBを介してノードn1に接続される。コンデンサC1Bは、フルブリッジ回路の入力側レグと出力側レグの間に、これらと並列に接続される。
【0032】
補助変換器12Bも、制御装置2の制御によって動作するよう構成される。制御装置2は、外部から供給されるキャリア信号carrier2及び指令値D_bに基づいてスイッチS11B1,S12B1,S21B1,S22B1のオンオフを制御することにより、補助変換器12Bの動作制御を行う。この制御の詳細についても、後ほど
図5~
図10を参照して説明する。
【0033】
電源装置1を用いた負荷4の試験を開始する前には、補助変換器12A,12B内のコンデンサC1A,C1Bに対し、上述した初期充電を行っておく必要がある。本実施の形態によれば、この初期充電を、負荷4に電流を流すことなく実現できる。以下、この点について、具体的に説明する。
【0034】
図3及び
図4は、コンデンサC1A,C1Bの初期充電時における各スイッチのオンオフ状態を示す図である。
図3には、コンデンサC1Aの初期充電時における各スイッチの状態を示し、
図4には、コンデンサC1Bの初期充電時における各スイッチの状態を示している。
【0035】
初めに
図3を参照すると、この場合の制御装置2は、スイッチS1A,S2B,S11A1,S22A1,S21B1,S11B1をオンに制御し、スイッチS2A,S1B,S12A1,S21A1,S22B1,S12B1をオフに制御する。また、スイッチ13の他方の選択端子(開放端を構成する端子)を選択する。これにより、
図3に破線で示したように、直流電源3とコンデンサC1Aを接続する電流の流路が形成され、コンデンサC1Aの充電が行われる。このとき、ノードn1は負荷4から切り離されているため、初期充電のための電流が負荷4に流れ込むことはない。
【0036】
次に
図4を参照すると、この場合の制御装置2は、スイッチS1A,S2B,S11A1,S21A1,S21B1,S12B1をオンに制御し、スイッチS2A,S1B,S12A1,S22A1,S22B1,S11B1をオフに制御する。また、スイッチ13の他方の選択端子(開放端を構成する端子)を選択する。これにより、
図4に破線で示したように、直流電源3とコンデンサC1Bを接続する電流の流路が形成され、コンデンサC1Bの充電が行われる。このときも、ノードn1は負荷4から切り離されているため、初期充電のための電流が負荷4に流れ込むことはない。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態による電源装置1によれば、DC/DCコンバータ11の第1の相の出力端から補助変換器12A、ノードn1、補助変換器12Bを経て第2の相の出力端に至る電流経路を形成することができるので、負荷4に電流を流すことなく、コンデンサC1A,C1Bを充電することができる。したがって、補助変換器を適用した電源装置を提供することが可能になる。
【0038】
なお、コンデンサC1A,C1Bの初期充電を行うために形成すべき電流の流路が
図3及び
図4に示したものに限定されないのは勿論である。例えば、コンデンサC1Aを初期充電する場合を例に取ると、スイッチS1B,S2A,S11B1,S21B1,S21A1,S12A1をオンに制御し、スイッチS2B,S1A,S12B1,S22B1,S22A1,S11A1をオフに制御することによっても、コンデンサC1Aを初期充電することができる。また、コンデンサC1A,C1Bを同時に充電するような経路を用いてもよい。
【0039】
次に、本実施の形態による電源装置1において出力リプルの低減効果を得るために、本実施の形態による制御装置2が行う電源装置1の制御について、詳しく説明する。
【0040】
図5~
図7は、本発明の背景技術による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。また、
図8~
図10は、本実施の形態による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御方法を示す図である。以下、初めに
図5~
図7を参照しながら背景技術の課題について説明した後、
図8~
図10を参照して、本実施の形態による制御装置2による補助変換器12A,12Bの制御の内容を詳しく説明する。
【0041】
図5には、本発明の背景技術による補助変換器12Aの制御に関わる電圧、信号等を示している。同図に示す指令値D_Va_p,D_Va_nは、DC/DCコンバータ11を制御するために外部から供給される指令値D_aに基づいて制御装置2が生成する指令値である。制御装置2は、DC/DCコンバータ11の制御時と同様にしてキャリア信号carrier_aと指令値D_aを比較することにより、第1の相の出力電圧Vmaの交流成分Vma
acに同期して変化する指令値D_Va_p,D_Va_nを生成する。
【0042】
また、
図5に示すキャリア信号carrier_pは、外部から供給されるキャリア信号carrier2に基づいて制御装置2が生成する信号である。キャリア信号carrier_pは、キャリア信号carrier2そのものであってよい。
【0043】
指令値D_Va_pの具体的な値は、キャリア信号carrier_pの振幅との関係で決定される。一例では、出力電圧Vmaのハイ期間における指令値D_Va_pの値は、キャリア信号carrier_pの最大値より少し小さい値(例えば、キャリア信号carrier_pの最大値の約85.3%)に設定され、出力電圧Vmaのロー期間における指令値D_Va_pの値は、0より少し小さい値(例えば、キャリア信号carrier_pの最小値の約21.3%)に設定される。指令値D_Va_nの具体的な値は、指令値D_Va_pの符号を反転させてなる値に設定される。
【0044】
制御装置2は、以上のようにして生成した指令値D_Va_p,D_Va_n及びキャリア信号carrier_pに基づいて、補助変換器12A内のスイッチS11A1,S12A1,S21A1,S22A1を制御する。具体的に説明すると、制御装置2は、指令値D_Va_pがキャリア信号carrier_pを上回っている場合に、スイッチS11A1をオン、スイッチS12A1をオフに制御し、指令値D_Va_pがキャリア信号carrier_p以下となっている場合にスイッチS11A1をオフ、スイッチS12A1をオンに制御する。また、制御装置2は、指令値D_Va_nがキャリア信号carrier_pを上回っている場合に、スイッチS21A1をオン、スイッチS22A1をオフに制御し、指令値D_Va_nがキャリア信号carrier_p以下となっている場合にスイッチS21A1をオフ、スイッチS22A1をオンに制御する。
【0045】
図5に示す電圧Vaは、
図1にも示したように、補助変換器12Aの出力端に対する補助変換器12Aの入力端の電位差である。上記の制御の結果、電圧Vaは、出力電圧Vmaのロー期間(指令値D_Va_pが相対的に小さい期間)には-750Vと0Vの間で振動する電圧となり、出力電圧Vmaのハイ期間(指令値D_Va_pが相対的に大きい期間)には0Vと750Vの間で振動する電圧となる。
【0046】
次に
図6を参照すると、同図には、補助変換器12Bの制御に関わる電圧、信号等を示している。同図に示す指令値D_Vb_p,D_Vb_nは、DC/DCコンバータ11を制御するために外部から供給される指令値D_bに基づいて制御装置2が生成する指令値である。制御装置2は、DC/DCコンバータ11の制御時と同様にしてキャリア信号carrier_bと指令値D_bを比較することにより、第1の相の出力電圧Vmaの交流成分Vmb
acに同期して変化する指令値D_Vb_p,D_Vb_nを生成する。
【0047】
また、
図6に示すキャリア信号carrier_nは、外部から供給されるキャリア信号carrier2に基づいて制御装置2が生成する信号である。制御装置2は、キャリア信号carrier2の位相を90°遅らせることによって、キャリア信号carrier_nを生成する。したがって、キャリア信号carrier_nは、キャリア信号carrier_pに対して位相が90°遅れた信号となる。
【0048】
指令値D_Vb_pの具体的な値は、指令値D_Va_pと同様にして決定される。結果として、出力電圧Vmbのハイ期間における指令値D_Vb_pの値は、出力電圧Vmaのハイ期間における指令値D_Va_pの値に等しくなり、出力電圧Vmbのロー期間における指令値D_Vb_pの値は、出力電圧Vmaのロー期間における指令値D_Va_pの値に等しくなる。また、指令値D_Vb_nの具体的な値は、指令値D_Vb_pの符号を反転させてなる値に設定される。
【0049】
制御装置2は、以上のようにして生成した指令値D_Vb_p,D_Vb_n及びキャリア信号carrier_nに基づいて、補助変換器12B内のスイッチS11B1,S12B1,S21B1,S22B1を制御する。具体的に説明すると、制御装置2は、指令値D_Vb_pがキャリア信号carrier_nを上回っている場合に、スイッチS11B1をオン、スイッチS12B1をオフに制御し、指令値D_Vb_pがキャリア信号carrier_n以下となっている場合にスイッチS11B1をオフ、スイッチS12B1をオンに制御する。また、制御装置2は、指令値D_Vb_nがキャリア信号carrier_nを上回っている場合に、スイッチS21B1をオン、スイッチS22B1をオフに制御し、指令値D_Vb_nがキャリア信号carrier_n以下となっている場合にスイッチS21B1をオフ、スイッチS22B1をオンに制御する。
【0050】
図6に示す電圧Vbは、
図1にも示したように、補助変換器12Bの出力端に対する補助変換器12Bの入力端の電位差である。上記の制御の結果、電圧Vbは、出力電圧Vmbのロー期間(指令値D_Vb_pが相対的に小さい期間)には-750Vと0Vの間で振動する電圧となり、出力電圧Vmaのハイ期間(指令値D_Vb_pが相対的に大きい期間)には0Vと750Vの間で振動する電圧となる。
【0051】
次に
図7を参照すると、同図には、
図5又は
図6にも示したキャリア信号carrier_p,carrier_n、電圧Va,Vbと、上記制御の結果として負荷4に流れ込む負荷電流iLとを示している。図示した期間VDPは、指令値D_Va_pと指令値D_Vb_pが互いに異なる値(したがって、指令値D_Va_nと指令値D_Vb_nも互いに異なる値)となる期間(第1の期間)であり、期間VSPは、指令値D_Va_pと指令値D_Vb_pが互いに同じ値(したがって、指令値D_Va_nと指令値D_Vb_nも互いに同じ値)となる期間(第2の期間)である。
【0052】
図7から理解されるように、期間VDPでは、期間VSPに比べ、負荷電流iLに重畳するリプル(出力リプル)が大きくなってしまっている。これは、期間VSPでは電圧Va,Vbの位相が異なっているのに対し、期間VDPでは電圧Va,Vbの位相が一致していることによるものである。
【0053】
なお、この例では期間VDPにおいて電圧Va,Vbの位相が一致しているが、もし仮にキャリア信号carrier_p,carrier_nの位相差を常に0°(すなわち、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相差がない状態)に設定したとすると、期間VDPにおいては電圧Va,Vbの位相が異なることになる一方で、期間VSPにおいて電圧Va,Vbの位相が一致してしまうことになる。したがって、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相差を0°にしたとしても、出力リプルが大きくなってしまうという問題は解決しない。
【0054】
そこで本実施の形態による制御装置2は、期間VSPと期間VDPとでキャリア信号carrier_p,carrier_nの位相差が異なることとなるよう、キャリア信号carrier_p,carrier_nを生成するよう構成される。より具体的に言えば、本実施の形態による制御装置2は、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相差が期間VSPでは90°となり、期間VSPでは0°又は180°となるよう、キャリア信号carrier_p,carrier_nを生成する。こうすることで、期間VDP,VSPのいずれにおいても電圧Va,Vbの位相を異ならせることができるので、本実施の形態による電源装置1のようにDC/DCコンバータ10に第1の相と第2の相を設け、それぞれに補助変換器を設置する場合にも、出力リプルの低減効果を得ることが可能になる。以下、
図8~
図10を参照しながら、この点について詳しく説明する。
【0055】
図8には、
図5と同様、補助変換器12Aの制御に関わる電圧、信号等を示している。また、
図9には、
図6と同様、補助変換器12Bの制御に関わる電圧、信号等を示している。これらの図から理解されるように、本実施の形態による制御装置2は、キャリア信号carrierに基づいてキャリア信号carrier_p,carrier_nを生成するにあたり、一定の位相ではなく、指令値D_Va_p,D_Vb_pの値に応じて位相を変えながら、キャリア信号carrier_p,carrier_nの生成を行う。
【0056】
具体的に説明すると、まず
図8に示すキャリア信号carrier_pについて、制御装置2は、指令値D_Va_pが相対的に小さい期間(出力電圧Vmaのロー期間)においては、キャリア信号carrier2の位相を90°遅らせることによってキャリア信号carrier_pを生成し、指令値D_Va_pが相対的に大きい期間(出力電圧Vmaのハイ期間)においては、キャリア信号carrier2そのものをキャリア信号carrier_pとして生成する。次に
図9に示すキャリア信号carrier_nについて、制御装置2は、指令値D_Vb_pが相対的に小さい期間(出力電圧Vmbのロー期間)においては、キャリア信号carrier2そのものをキャリア信号carrier_nとして生成し、指令値D_Vb_pが相対的に大きい期間(出力電圧Vmbのハイ期間)においては、キャリア信号carrier2の位相を90°遅らせることによってキャリア信号carrier_nを生成する。
【0057】
制御装置2が以上のようにしてキャリア信号carrier_p,carrier_nを生成することの結果として、
図8及び
図9に示すように、本実施の形態においては、電圧Va,Vbともに、
図5及び
図6の例とは異なり一定の位相で振動することになる。
【0058】
図10には、
図8又は
図9にも示したキャリア信号carrier_p,carrier_n、電圧Va,Vbと、本実施の形態による制御装置2が行った制御の結果として負荷4に流れ込む負荷電流iLとを示している。
図7と比較すると理解されるように、本実施の形態においては、期間VDPにおいてはキャリア信号carrier_p,carrier_nの位相が一致し、期間VSPにおいてはキャリア信号carrier_p,carrier_nの位相が90°異なっている。これにより、期間VDP,VSPのいずれにおいても電圧Va,Vbの位相が一致することはなく、その結果として、期間VDP,VSPのいずれにおいても、出力リプルの大きさが
図7の期間VSPにおける出力リプルと同程度に留まっている。したがって、本実施の形態による電源装置1の制御装置2及び制御方法によれば、本実施の形態による電源装置1において、出力リプルの低減効果を得ることが可能になると言える。なお、
図10から容易に理解されるように、期間VDPにおいてキャリア信号carrier_p,carrier_nの位相が180°異なることとしても、同様の効果を得ることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態による電源装置1の制御装置2及び制御方法によれば、期間VDP,VSPのいずれにおいても電圧Va,Vbの位相を異ならせることができるので、DC/DCコンバータ10に第1の相と第2の相を設け、それぞれに補助変換器を設置する場合にも、出力リプルの低減効果を得ることが可能になる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0061】
図11は、本実施の形態の変形例による電源装置1及びその制御装置2の構成を示す図である。同図に示すように、本変形例による電源装置1は、補助変換器12A,12Bを3個ずつ有する点で、本実施の形態による電源装置1と相違する。3個の補助変換器12Aは、DC/DCコンバータ11の第1の相の出力端と、リアクトルLAとの間に直列に接続される。以下、3個の補助変換器12Aを、DC/DCコンバータ11に近い側から順に、補助変換器12A-1,12A-2,12A-3と称する。同様に、3個の補助変換器12Bは、DC/DCコンバータ11の第2の相の出力端と、リアクトルLBとの間に直列に接続される。以下、3個の補助変換器12Bを、DC/DCコンバータ11に近い側から順に、補助変換器12B-1,12B-2,12B-3と称する。
【0062】
図11に記載の電源装置1において各補助変換器12A,12Bの初期充電を行う場合には、DC/DCコンバータ11内及び各補助変換器12A,12B内の各スイッチを適宜制御することによって、
図3及び
図4に示したものと同様の電流経路を形成し、各補助変換器12A,12B内のコンデンサを1つずつ充電していけばよい。したがって、本変形例によれば、各相に複数の補助変換器を適用した電源装置を提供することが可能になると言える。
【0063】
また、
図11において補助変換器12A-1の中に示した2つの角度は、制御装置2が補助変換器12A-1を制御するために生成するキャリア信号carrier_pの位相を示している。双方向矢印の左側の角度は、電圧Vmaのハイ期間におけるキャリア信号carrier_pの位相(この場合は0°)を示し、双方向矢印の右側の角度は、電圧Vmaのロー期間におけるキャリア信号carrier_pの位相(この場合は90°)を示している。他の補助変換器12A,12Bの中に示した2つの角度についても同様である。
【0064】
図11に示した角度から理解されるように、補助変換器12A,12Bを3個ずつ用いる場合、1段目の補助変換器12A-1,12B-1については、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を0°又は90°とし、2段目の補助変換器12A-2,12B-2については、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を30°又は120°とし、3段目の補助変換器12A-3,12B-3については、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を60°又は150°とすればよい。一般化して補助変換器12A,12BをN個ずつ用いる場合について言えば、1段目の補助変換器12A,12Bについては、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を0°又は90°とし、N段目の補助変換器12A,12Bについては、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を180°/N又は180°/N+90°とし、n段目(nは2~N-1の整数)の補助変換器12A,12Bについては、キャリア信号carrier_p,carrier_nの位相を(180°/N)×(n-1/N-1)又は(180°/N)×(n-1/N-1)+90°とすればよい。こうすることで、本変形例による電源装置1においても、本実施の形態と同様に出力リプルの低減効果を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0065】
1 電源装置
2 制御装置
3 直流電源
4 負荷(試験対象の蓄電池)
11 DC/DCコンバータ
12A,12B 補助変換器
13 スイッチ
C1A,C1B コンデンサ
LA,LB リアクトル
S1A,S2A,S1B,S2B スイッチ
S11A1,S12A1,S21A1,S22A1 スイッチ
S11B1,S12B1,S21B1,S22B1 スイッチ
VDP 第1の期間
VSP 第2の期間