(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102259
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】吊金車
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219596
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004510
【氏名又は名称】弁理士法人維新国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
(72)【発明者】
【氏名】三宅 由紘
(72)【発明者】
【氏名】仲野 敦也
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AG08
5G352AG11
(57)【要約】
【課題】難着雪リングが取り付けられた架空配線上を移動する際に難着雪リングの取付位置がずれるのを防ぐことができ、しかも、運搬がし易くて、さらには、主要部分を保護可能な吊金車を提供する。
【解決手段】吊金車1は、架空地線10に吊り下げ可能に構成され、架空地線10の延長方向に並設された4つのローラ4と、各ローラ4を回転自在に支持する支持フレーム5と、各ローラ4に巻き掛けられたクローラ6と、を備える。支持フレーム5には、一端にパイロットロープを取付可能なフック3Aを有するカバーフレーム3が回動可能に軸支され、カバーフレーム3は、一方に回動させると各ローラ4の並設方向と交差する方向に延びてパイロットロープによる操作可能な第1状態P1になる一方、他方に回動させると各ローラ4の並設方向に延びる姿勢になって各ローラ4、支持フレーム5及びクローラ6が内側に位置する第2状態になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空配線に吊設可能な吊金車であって、
前記架空配線の延長方向に並設された複数のローラと、
前記各ローラを回転自在に支持する支持フレームと、
前記各ローラに巻き掛けられ、当該各ローラの回転動作により前記架空配線の上を周回移動可能なクローラと、
前記支持フレームに回動可能に軸支され、且つ、一端にロープの取付部を有し、一方に回動させると前記各ローラの並設方向と交差する方向に延びて前記ロープによる操作可能な第1状態になる一方、他方に回動させると前記各ローラの並設方向に延びる姿勢になって前記クローラ、前記各ローラ及び前記支持フレームが内側に位置する第2状態になるカバーフレームと、を備えていることを特徴とする吊金車。
【請求項2】
請求項1に記載の吊金車において、
前記カバーフレームは、環状をなしており、前記第2状態になった際、前記クローラ、前記各ローラ及び前記支持フレームを内側に収容するように構成されていることを特徴とする吊金車。
【請求項3】
請求項2に記載の吊金車において、
前記カバーフレームは、同方向に平行に延び、且つ、中途部が前記各支持フレームにそれぞれ軸支された一対の帯板状の第1フレームと、該各第1フレームの一端縁部同士と他端縁部同士とをそれぞれ橋絡する一対の板状の第2フレームと、を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの幅寸法は、前記第2状態において前記カバーフレームの両開口部分から前記クローラ及び前記各ローラが飛び出さない寸法に設定されていることを特徴とする吊金車。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の吊金車において、
前記カバーフレームの他端には、把持可能な把手が取り付けられていることを特徴とする吊金車。
【請求項5】
請求項1に記載の吊金車において、
前記各ローラは、前記支持フレームの各端部に支持された一対の第1ローラと、当該両第1ローラの間に配設された第2ローラと、で構成され、
前記第2ローラの下端は、前記両第1ローラを水平方向に並ぶ姿勢にした状態で当該両第1ローラの下端よりも下方に位置するように設定されていることを特徴とする吊金車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配線に難着雪リングを取り付ける際に使用する吊金車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空配線に雪が付着して固まるのを防ぐために、これら架空配線に所定の間隔をあけて多数の難着雪リングを取り付けることが知られている。架空配線への難着雪リングの取付作業は、作業者がその架空配線に乗り出して行うのが一般的であるが、径が小さい架空地線の場合、それに作業者が乗り出して難着雪リングの取付作業を行うのが危険であるため、作業者が作業時に乗り出すためのフィリストランロープを鉄塔間に張った後、難着雪リングの取付作業が行われる。具体的には、まず、架空地線に吊り下げた吊金車にパイロットロープを取り付けるとともに、当該パイロットロープを自走車で一方の鉄塔から他方の鉄塔まで架け渡す。その後、パイロットロープにフィリストランロープを接続するとともに、他方の鉄塔側からさらにパイロットロープを引っ張って両鉄塔間にフィリストランロープを架け渡して固定し、しかる後、作業者は、フィリストランロープに乗り出して架空地線に各難着雪リングを取り付ける。架空地線への難着雪リングの取付作業が終了すると、両鉄塔に対するフィリストランロープの固定を解除し、その後、架空地線に吊金車が吊り下げられた状態で一方の鉄塔側からフィリストランロープを引っ張ることにより、吊金車を架空地線に沿って移動させながらフィリストランロープ、パイロットロープ及び吊金車を回収して架空地線への難着雪リングの取付作業を終了する。
【0003】
ところで、架空地線への難着雪リングの取付作業を終了する際、回収される吊金車は、難着雪リングが取り付けられた後の架空地線上を当該架空地線の下方に位置するパイロットロープに引っ張られながら移動するので、吊金車のローラ部分が難着雪リングを乗り越える際に架空地線の延びる方向において難着雪リングに対して集中的に力を加えてしまう。特に、鉄塔間の架空地線は弛みがあるため、吊金車が架空地線上を下る方向に移動する回収作業前半よりも架空地線上を上る方向に移動する回収作業後半の際に難着雪リングに対して架空地線が延びる方向に大きな力を加えてしまい、最悪の場合、難着雪リングの架空地線に対する取付位置が所望の位置からずれてしまって雪の付着を防止できなくなるおそれがある。
【0004】
これを回避するために、例えば、架空地線への難着雪リングの取付作業時においては、特許文献1や特許文献2の如きクローラタイプの吊金車を採用し、取付後の難着雪リングを吊金車が乗り越える際にローラ部分が直接的に難着雪リングに接触するのではなく、クローラ部分が難着雪リングに接触するようにすることで、吊金車における難着雪リングを乗り越える際の当該難着雪リングとの接触領域を広くなるようにして難着雪リングに加わる力を分散させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-50239号公報
【特許文献2】実開平3-14905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、架空地線への難着雪リングの取付作業時に使用する吊金車として、特許文献1や特許文献2の如きクローラタイプのものを採用すると、吊金車全体が大型化してしまうので、持ち運び難くなって鉄塔における作業場所への吊金車の運搬に大きな労力を費やさなければならなくなってしまう。また、吊金車全体が大型化すると、その吊金車を作業場所まで運搬する際にその周囲にある物に接触させ易くなってしまい、その接触によって、例えば、吊金車の主要部分を故障させてしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、難着雪リングが取り付けられた架空配線上を移動する際に難着雪リングの取付位置がずれるのを防ぐことができ、しかも、運搬がし易くて、さらには、主要部分を保護可能な吊金車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、吊金車の主要部分をカバー可能なカバーフレームを備えるようにするとともに、そのカバーフレームが吊金車の主要部分をカバーする状態と、架空配線上を走行可能な状態と、に切替可能な構造にしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、架空配線に吊設可能な吊金車を対象とし、次のような対策を講じた。
すなわち、第1の発明に係る吊金車では、前記架空配線の延長方向に並設された複数のローラと、前記各ローラを回転自在に支持する支持フレームと、前記各ローラに巻き掛けられ、当該各ローラの回転動作により前記架空配線の上を周回移動可能なクローラと、前記支持フレームに回動可能に軸支され、且つ、一端にロープの取付部を有し、一方に回動させると前記各ローラの並設方向と交差する方向に延びて前記ロープによる操作可能な第1状態になる一方、他方に回動させると前記各ローラの並設方向に延びる姿勢になって前記クローラ、前記各ローラ及び前記支持フレームが内側に位置する第2状態になるカバーフレームと、を備えていることを特徴とする。
このように構成される吊金車では、カバーフレームを第1状態にすると、取付部にロープを取り付けた状態で吊金車を架空配線に吊り下げて使用可能となるように作用する一方、カバーフレームを第2状態にすると、吊金車が各ローラの並設方向に対して直角に延びる方向で、且つ、各ローラの軸心方向に対して直角に延びる方向においてコンパクトな外形になるとともに、カバーフレームがクローラ、各ローラ及び支持フレームの多くの領域を囲うように作用する。
【0010】
第2の発明の吊金車では、第1の発明において、前記カバーフレームは、環状をなしており、前記第2状態になった際、前記クローラ、前記各ローラ及び前記支持フレームを内側に収容するように構成されていることを特徴とする。
このように構成される吊金車では、カバーフレームが第2状態になった際、カバーフレームがクローラ、各ローラ及び支持フレームを切れ目無く環状に囲うように作用する。
【0011】
第3の発明の吊金車では、第2の発明において、前記カバーフレームは、同方向に平行に延び、且つ、中途部が前記各支持フレームにそれぞれ軸支された一対の帯板状の第1フレームと、該各第1フレームの一端縁部同士と他端縁部同士とをそれぞれ橋絡する一対の板状の第2フレームと、を備え、前記第1フレーム及び前記第2フレームの幅寸法は、前記第2状態において前記カバーフレームの両開口部分から前記クローラ及び前記各ローラが飛び出さない寸法に設定されていることを特徴とする。
このように構成される吊金車では、カバーフレームが細長い矩形枠状をなすようになり、カバーフレームを第2状態にした際の吊金車における各ローラの軸心方向の外形がコンパクトになるように作用する。また、カバーフレームが第2状態になった際、クローラ及び各ローラの全てがカバーフレームの内側に位置する状態となるように作用する。
【0012】
第4の発明の吊金車では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記カバーフレームの他端には、把持可能な把手が取り付けられていることを特徴とする。
このように構成される吊金車では、カバーフレームを第1状態と第2状態とにそれぞれ切り替える際、作業者は、把手を把持してカバーフレームを回動させることが可能となるように作用する。また、吊金車を運搬する際、作業者は、把手を把持して吊金車を持ち提げた状態で運搬可能となるように作用する。
【0013】
第5の発明の吊金車では、第1の発明において、前記各ローラは、前記支持フレームの各端部に支持された一対の第1ローラと、当該両第1ローラの間に配設された第2ローラと、で構成され、前記第2ローラの下端は、前記両第1ローラを水平方向に並ぶ姿勢にした状態で当該両第1ローラの下端よりも下方に位置するように設定されていることを特徴とする。
このように構成される吊金車では、吊金車の2つの鉄塔間の架空配線の走行時において、架空配線上を下る方向に移動する際には、クローラにおける進行方向後側の第1ローラと第2ローラとに掛け渡された領域が架空配線に接触しながら走行する一方、架空配線上を上る方向に移動する際には、クローラにおける進行方向前側の第1ローラと第2ローラとに掛け渡された領域が架空配線に接触しながら走行するように切り替わるように作用する。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明の吊金車では、カバーフレームを第1状態にすると、取付部にロープを取り付けた状態で吊金車を架空配線に吊り下げて使用可能になるので、難着雪リングを架空配線に取り付ける際の吊金車として使用することができる。したがって、架空配線への難着雪リングの取付作業後の吊金車の回収時において、当該吊金車が架空配線に取り付けられた難着雪リングを乗り越える際に、難着雪リングに対してクローラ部分が接触するようになって難着雪リングに加わる力が分散するようになり、架空配線に対する難着雪リングの取付位置がずれるのを防ぐことができる。一方、カバーフレームを第2状態にすると、吊金車が各ローラの並設方向に対して直角に延びる方向で、且つ、各ローラの軸心方向に対して直角に延びる方向においてコンパクトな外形になるとともに、カバーフレームがクローラ、各ローラ及び支持フレームの多くの領域を囲うようになるので、取り扱い易くなって運搬し易くなり、さらには、運搬時に吊金車の主要部分を保護することができる。
【0015】
第2の発明の吊金車では、カバーフレームが第2状態になった際、カバーフレームがクローラ、各ローラ及び支持フレームの主要部分を切れ目無く環状に囲うようになる。したがって、運搬時に吊金車がその周囲にある物に接触したとしても、その周囲にある物が直接的にクローラ、各ローラ及び支持フレームに接触し難くなり、吊金車の主要部分における破損や変形をさらに回避させ易くすることができる。
【0016】
第3の発明の吊金車では、カバーフレームが細長い矩形枠状をなすようになるので、カバーフレームを第2状態にした際の吊金車における各ローラの軸心方向の外形がコンパクトになり、吊金車の運搬時における扱い易さをさらに高めることができる。また、カバーフレームが第2状態になった際、クローラ及び各ローラの全てがカバーフレームの内側に位置する状態になる。したがって、吊金車の運搬時において、吊金車のクローラ及び各ローラにおける破損や変形を確実に回避させることができる。
【0017】
第4の発明の吊金車では、カバーフレームを第1状態と第2状態とにそれぞれ切り替える際、作業者は、把手を把持してカバーフレームを回動させることが可能になる。したがって、吊金車の第1状態と第2状態とにそれぞれ切り替える作業を容易に行うことができる。また、吊金車を運搬する際、作業者は、把手を把持して吊金車を持ち提げた状態で運搬可能になるので、作業場所までの吊金車の運搬をし易くすることができる。
【0018】
第5の発明の吊金車では、吊金車の2つの鉄塔間の架空配線の走行時において、架空配線上を下る方向に移動する際には、クローラにおける進行方向後側の第1ローラと第2ローラとに掛け渡された領域が架空配線に接触しながら走行する一方、架空配線上を上る方向に移動する際には、クローラにおける進行方向前側の第1ローラと第2ローラとに掛け渡された領域が架空配線に接触しながら走行するように切り替わるようになる。したがって、弛んだ架空配線の前半領域から後半領域へと切り替わる領域の吊金車の走行がスムーズになり、架空配線を走行させ易い吊金車にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係る吊金車の第1状態の正面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における断面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る吊金車の第2状態の正面図である。
【
図6】難着雪リングの取付作業後において吊金車を回収し始めた直後の状態の架空地線上を走行する実施例1に係る吊金車の正面図である。
【
図7】難着雪リングの取付作業後において吊金車を回収し終わる直前の状態の架空地線上を走行する実施例1に係る吊金車の正面図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る
図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施例の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【実施例0021】
図1及び
図2は、本発明の実施例1に係る吊金車1を示す。該吊金車1は、図示しない鉄塔間に架け渡された架空地線10(架空配線)に難着雪リング11(
図6参照)を取り付ける際に架空地線10に吊り下げて使用するものであり、架空地線10に沿って延びる姿勢で使用される走行体2と、矩形枠状をなすカバーフレーム3と、を備えている。
【0022】
走行体2は、略円板状をなす4つの金属製のローラ4と、厚みを有する細長い略帯板形状をなす金属製の支持フレーム5と、環状に延びるゴム製のクローラ6と、を備えている。
【0023】
各ローラ4の外周縁部には、
図3に示すように、断面略V字状に窪むとともにローラ4の周方向に沿って環状に延びる環状凹条溝部4aが形成され、各ローラ4の中心には、頭部12a及び軸部12bからなる第1ボルト12を挿通可能な軸支孔4bが貫通形成されている。
【0024】
走行体2の一端と他端とにそれぞれ配設された2つのローラ4は、
図1に示すように、走行体2の中央領域に位置する2つのローラ4よりも大きな直径のものが配設されている。尚、以下では、便宜上、走行体2の一端と他端とにそれぞれ配設された2つのローラ4を第1ローラ4Aと呼び、走行体2の中央領域に位置する2つのローラ4を第2ローラ4Bと呼ぶことにする。
【0025】
2つの第1ローラ4Aと2つの第2ローラ4Bとは、それぞれ回転軸心が同じ水平方向で互いに平行に延びる姿勢において架空地線10の延長方向に並設されていて、各第2ローラ4Bは、その下端が両第1ローラ4Aを水平方向に並ぶ姿勢にした状態における当該両第1ローラ4Aの下端と同じ位置となる配置になっている。
【0026】
支持フレーム5は、ローラ4の回転軸心方向に見て上下に幅狭な台形状をなしていて、各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bを挟むように一対配設されている。
【0027】
各支持フレーム5の外側の面には、
図1乃至
図3に示すように、第1ボルト12の頭部12a又は第1ナット13を収容可能な4つの第1座繰穴5aが各支持フレーム5の一端側から他端側に亘って順に形成され、各第1座繰穴5aの中央には、それぞれ各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bの軸支孔4bにそれぞれ対応する第1取付孔5bが貫通形成されている。
【0028】
また、各支持フレーム5の内側の面には、
図4に示すように、第2ナット15を収容可能な第2座繰穴5cが各支持フレーム5の中央部分に形成され、各第2座繰穴5cの中央には、頭部14a及び軸部14bからなる第2ボルト14を挿通可能な第2取付孔5dが貫通形成されている。
【0029】
そして、両支持フレーム5と各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bとは、4組の第1ボルト12及び第1ナット13で組み立てられている。すなわち、両支持フレーム5は、各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bの軸支孔4bが各支持フレーム5の第1取付孔5bにそれぞれ対応するように各第1ローラ4Aと各第2ローラ4Bとを間に挟み込んだ状態で、
図3に示すように、一方の第1座繰穴5aを介して各第1取付孔5bと軸支孔4bとに挿通させた第1ボルト12の軸部12bに他方の第1座繰穴5aを介して第1ナット13を螺合させることにより、各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bを回転自在に支持するようになっている。
【0030】
クローラ6は、
図3に示すように、断面略V字状をなしており、該クローラ6の内周面には、当該クローラ6の内側に突出するとともに周方向に沿って延びる環状突条部6aが設けられている。該環状突条部6aは、第1ローラ4A及び第2ローラ4Bの各環状凹条溝部4aの断面に対応する形状になっていて、各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bに巻き掛けられている。
【0031】
環状突条部6aの外周面には、当該環状突条部6aの内側に窪むとともに周方向に沿って環状に延びる断面略台形状をなすガイド溝部6bが形成されている。そして、ガイド溝部6bは、
図2に示すように、架空地線10に外嵌合可能になっていて、クローラ6は、各第1ローラ4A及び各第2ローラ4Bの回転動作により架空地線10の上を周回移動可能になっている。
【0032】
カバーフレーム3は、
図1及び
図2に示すように、切れ目の無い環状をなしており、同方向に平行に延びる一対の帯板状をなす第1フレーム7と、該各第1フレーム7の一端縁部同士と他端縁部同士とをそれぞれ橋絡する一対の板状をなす第2フレーム8と、を備えている。
【0033】
一方の第1フレーム7の長手方向一端側には、当該第1フレーム7の幅方向一端から他端の全域に亘って切り欠かれた通路部7aが形成され、該通路部7aは、その空間に対応する矩形板状をなす開閉扉7bで覆われている。
【0034】
開閉扉7bは、一方の第2フレーム8の一側縁部に回動可能に軸支され、一方に回動させると、通路部7aを開放して架空地線10をカバーフレーム3の内側と外側とに出し入れ可能な状態になる一方、他方に回動させると、通路部7aを塞いでカバーフレーム3の内側に位置する架空地線10が吊金車1から外れないようにすることができる。
【0035】
各第1フレーム7の長手方向他側には、略正方形状の開口部7cが貫通形成されている。また、各第1フレーム7の中央には、
図4に示すように、支持フレーム5の第2取付孔5dに対応する貫通孔7dが形成されている。
【0036】
そして、走行体2とカバーフレーム3とは、2組の第2ボルト14及び第2ナット15で組み立てられている。すなわち、カバーフレーム3は、一方の第1フレーム7の貫通孔7dと一方の支持フレーム5の第2取付孔5dとに挿通させた一方の第2ボルト14の軸部14bに第2座繰穴5cを介して一方の第2ナット15を螺合させる一方、他方の第1フレーム7の貫通孔7dと他方の支持フレーム5の第2取付孔5dとに挿通させた他方の第2ボルト14の軸部14bに第2座繰穴5cを介して他方の第2ナット15を螺合させることにより、両支持フレーム5に回動可能に軸支されるようになっている。
【0037】
カバーフレーム3の長手方向一端に位置する第2フレーム8の中央には、
図6及び
図7に示すように、パイロットロープ9を取付可能なフック3A(取付部)が設けられている。
【0038】
フック3Aは、略C字形状をなすフック本体3aと、該フック本体3aの開放部分に設けられた外れ防止部材3bと、を備えている。外れ防止部材3bは、フック本体3aの基部に回動可能に軸支され、通常時においては、フック本体3aの開放部分を塞いだ状態となっており、フック本体3aの内側に回動することで当該フック本体3aの開放部分を介してパイロットロープ9をフック本体3aの内側と外側とに出し入れできるようになっている。
【0039】
一方、カバーフレーム3の長手方向他端に位置する第2フレーム8の中央には、
図1及び
図2に示すように、側面視で幅広な略U字形状をなす把手3Bが取り付けられ、作業者は、この把手3Bを把持してカバーフレーム3を操作したり、持ち提げたりできるようになっている。
【0040】
そして、カバーフレーム3は、一方に回動させると、
図1に示すように、各ローラ4の並設方向と交差する方向、すなわち、各ローラ4が水平方向に並設する場合、上下方向に延びる姿勢になり、フック3Aに取り付けられたパイロットロープ9による操作可能な第1状態P1になる一方、他方に回動させると、
図5に示すように、各ローラ4の並設方向に延びる姿勢になって各ローラ4、両支持フレーム5及びクローラ6が内側に位置する第2状態P2になるようになっている。
【0041】
カバーフレーム3における第1フレーム7及び第2フレーム8の幅寸法は、第2状態P2においてカバーフレーム3の両開口部分から各ローラ4及びクローラ6が飛び出さない寸法に設定されている。つまり、カバーフレーム3は、第2状態P2になった際、各ローラ4、両支持フレーム5及びクローラ6を内側に収容するように構成されている。
【0042】
尚、
図5の仮想線で示すように、カバーフレーム3を第2状態P2にした際に当該カバーフレーム3の周囲をゴム製のバンド16で囲うと、吊金車1を運搬する際にカバーフレーム3の内側から走行体2が回動して飛び出すことを防ぐことができ、運搬し易くすることができる。
【0043】
次に、架空地線10に難着雪リング11を取り付けるために鉄塔間にフィリストランロープを架け渡す際に使用した本発明の実施例1の吊金車1について、難着雪リング11の取付作業後において、吊金車1を回収する作業について詳述する。
【0044】
作業者は、一方の鉄塔側からフィリストランロープを引っ張ることにより、パイロットロープ9を介して吊金車1を引っ張る。すると、架空地線10が鉄塔間において弛んでいるため、吊金車1の回収作業前半においては、
図6に示すように、吊金車1は、各ローラ4の回転動作によるクローラ6の周回移動動作によって架空地線10上を下る方向に移動する。このとき、架空地線10には、所定の間隔をあけて多数の難着雪リング11が取り付けられており、各難着雪リング11を走行体2が乗り越える際に各難着雪リング11に対して架空地線10の延長方向に力を加えるが、本発明の実施例1の吊金車1では、クローラ6が各難着雪リング11に接触するので、各難着雪リング11に加わる力が分散するようになる。したがって、架空地線10に対する難着雪リング11の取付位置がずれるのを防ぐことができる。
【0045】
さらに、引き続き吊金車1の回収作業を行うと、吊金車1の回収作業後半においては、
図7に示すように、吊金車1は、各ローラ4の回転動作によるクローラ6の周回移動動作によって架空地線10上を上る方向に移動するようになる。このとき、パイロットロープ9を一方の鉄塔側の斜め下方に引っ張る一方、走行体2が架空地線10に沿って上る方向に移動するので、回収作業前半よりも吊金車1から各難着雪リング11に加える力が大きくなるが、本発明の実施例1の吊金車1では、クローラ6が各難着雪リング11に接触して当該各難着雪リング11に加わる力が分散するので、吊金車1の回収作業後半においても架空地線10に対する難着雪リング11の取付位置がずれるのを防ぐことができる。
【0046】
以上より、本発明の実施例1によると、
図1に示すように、カバーフレーム3を第1状態P1にすると、フック3Aにパイロットロープ9を取り付けた状態で吊金車1を架空地線10に吊り下げて使用可能になるので、難着雪リング11を架空地線10に取り付ける際の吊金車1として使用することができる。したがって、架空地線10への難着雪リング11の取付作業後の吊金車1の回収時において、当該吊金車1が架空地線10に取り付けられた難着雪リング11を乗り越える際に、難着雪リング11に対してクローラ6が接触するようになって難着雪リング11に加わる力が分散するようになり、架空地線10に対する難着雪リング11の取付位置がずれるのを防ぐことができる。
【0047】
一方、
図5に示すように、カバーフレーム3を第2状態P2にすると、吊金車1が各ローラ4の並設方向に対して直角に延びる方向で、且つ、各ローラ4の軸心方向に対して直角に延びる方向においてコンパクトな外形になるとともに、カバーフレーム3が各ローラ4、支持フレーム5及びクローラ6の多くの領域を囲うようになるので、取り扱い易くなって運搬し易くなり、さらには、運搬時に吊金車1の主要部分を保護することができる。
【0048】
また、カバーフレーム3は、環状をなしているので、第2状態P2になった際、各ローラ4、支持フレーム5及びクローラ6の主要部分を切れ目無く環状に囲うようになる。したがって、運搬時に吊金車1がその周囲にある物に接触したとしても、その周囲にある物が直接的に各ローラ4、支持フレーム5及びクローラ6に接触し難くなり、吊金車1の主要部分における破損や変形をさらに回避させ易くすることができる。
【0049】
また、カバーフレーム3は、同方向に平行に延びる一対の帯板状をなす第1フレーム7と、各第1フレーム7の一端縁部同士と他端縁部同士とをそれぞれ橋絡する一対の板状をなす第2フレーム8と、で構成された細長い矩形枠状をなしているので、カバーフレーム3を第2状態P2にした際の吊金車1における各ローラ4の軸心方向の外形がコンパクトになり、吊金車1の運搬時における扱い易さをさらに高めることができる。
【0050】
また、カバーフレーム3における第1フレーム7及び第2フレーム8の幅寸法は、第2状態P2においてカバーフレーム3の両開口部分から各ローラ4及びクローラ6が飛び出さない寸法に設定されているので、カバーフレーム3が第2状態P2になった際、各ローラ4及びクローラ6の全てがカバーフレーム3の内側に位置する状態になる。したがって、吊金車1の運搬時において、吊金車1の各ローラ4及びクローラ6における破損や変形を確実に回避させることができる。
【0051】
さらに、カバーフレーム3を第1状態P1と第2状態P2とにそれぞれ切り替える際、作業者は、把手3Bを把持してカバーフレーム3を回動させることが可能になる。したがって、吊金車1の第1状態P1と第2状態P2とにそれぞれ切り替える作業を容易に行うことができる。また、吊金車1を運搬する際、作業者は、把手3Bを把持して吊金車1を持ち提げた状態で運搬可能になるので、作業場所までの吊金車1の運搬をし易くすることができる。
【0052】
尚、本発明の実施例1では、2つの第1ローラ4Aと2つの第2ローラ4Bとでクローラ6を周回移動させているが、2つの第1ローラ4Aだけでクローラ6を周回移動させる構成であってもよいし、第1ローラ4Aを3つ以上並べてクローラ6を周回移動させる構成であってもよい。また、第2ローラ4Bを2つの第1ローラ4Aの間に1つか、或いは、3つ以上並べる構成であってもよい。
実施例2の第2ローラ4Bは、両第1ローラ4Aの間に1つ配設されており、その下端は、両第1ローラ4Aを水平方向に並ぶ姿勢した状態で当該両第1ローラ4Aの下端よりも下方に位置するように設定されている。また、実施例2の支持フレーム5は、実施例1よりも幅広な台形状をなしている。
次に、架空地線10に難着雪リング11を取り付けるために鉄塔間にフィリストランロープを架け渡す際に使用した本発明の実施例2の吊金車1について、難着雪リング11の取付作業後において、吊金車1を回収する作業について詳述する。
以上より、本発明の実施例2によると、吊金車1を回収する際において、弛んだ架空地線10の前半領域から後半領域へと切り替わる領域の吊金車1の走行がスムーズになり、架空地線10を走行させ易い吊金車1にすることができる。
尚、本発明の実施例2では、2つの第1ローラ4Aと1つの第2ローラ4Bとでクローラ6を周回移動させているが、2つの第1ローラ4Aの間に第2ローラ4Bを2つ以上並べる構成であってもよい。
また、本発明の実施例1,2では、カバーフレーム3を第2状態P2にした際に、走行体2の全てがカバーフレーム3の内側に収容される構造になっているが、主要部分が収容される構造であればよく、ローラ4の外周の一部や支持フレーム5の一部がカバーフレーム3からはみ出すような構造であってもよい。
また、本発明の実施例1,2では、カバーフレーム3が切れ目のない環状をなしているが、これに限らず、一部が切り欠かれた構造であってもよい。すなわち、カバーフレーム3が第2状態P2になった際において、走行体2の主要部分を囲って保護できる構造であればよい。
また、本発明の実施例1,2では、パイロットロープ9をフック3Aに取り付けるようになっているが、切れ目の無い環状の吊りボルトに取り付けるようにしてもよい。また、カバーフレーム3に形成されている開口部7cを、カバーフレーム3のその他の領域に形成して吊金車1全体の軽量化を図ってもよい。
また、本発明の実施例1,2では、フック3Aにパイロットロープ9を取り付けて吊金車1を使用しているが、フック3Aには、その他のロープを取り付けて使用できる。