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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010230
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ネムノキ抽出物含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20250109BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K8/9789 ZNA
C12N15/12 ZNA
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024188602
(22)【出願日】2024-10-25
(62)【分割の表示】P 2021530534の分割
【原出願日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019126007
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019202195
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019204511
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅原 知宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】山下 周子
(57)【要約】
【課題】時計遺伝子の発現リズムの乱れを抑制または予防するための組成物、紫外線等によって誘発される皮膚の紅斑を抑制するための組成物、および、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制するための組成物を提供する。
【解決手段】ネムノキ抽出物を含有してなる、時計遺伝子の発現リズムの乱れを抑制または予防するための組成物、抗炎症剤、または、抗糖化剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネムノキの樹皮から水により抽出されたネムノキ樹皮抽出物を含有し、該ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲である、紫外線照射によって誘発される皮膚の紅斑を抑制する作用を有する、化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項2】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00005~3.0重量%の濃度範囲である、請求項1に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項3】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.0001~1.0重量%の濃度範囲である、請求項1に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物を含有する皮膚外用組成物。
【請求項5】
ネムノキの樹皮から水により抽出されたネムノキ樹皮抽出物を含有し、該ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲である、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制する作用を有する、化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項6】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00005~3.0重量%の濃度範囲で含まれる、請求項5に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項7】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.0001~1.0重量%濃度範囲で含まれる、請求項5に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物を含有する、皮膚外用組成物。
【請求項9】
ネムノキの樹皮から水により抽出されたネムノキ樹皮抽出物を含有し、該ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲である、紫外線照射によって誘発される皮膚の紅斑を抑制する作用を有し、かつタンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制する作用を有する、化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項10】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00005~3.0重量%の濃度範囲である、請求項9に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項11】
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.0001~1.0重量%の濃度範囲である、請求項9に記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の化粧料用のネムノキ樹皮抽出物含有組成物を含有する皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常な時計遺伝子の発現リズムと比較して、不規則あるいは異常な状態にある時計遺伝子の発現リズムを示す皮膚細胞に対して、時計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防することが実現できる、ネムノキ抽出物含有組成物に関する。また、本発明は、ネムノキ樹皮抽出物を有効成分とする抗炎症剤に関する。より詳細には、該抗炎症剤を用いることにより、紫外線照射後の紅斑抑制作用効果のある皮膚外用組成物に関する。さらに、本発明は、ネムノキ樹皮抽出物の抗糖化作用を利用した抗糖化剤に関する。より詳細には、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制する効果のある抗糖化剤、および該抗糖化剤を含有する皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球に存在する殆どの生物は、外部環境(主に明暗サイクル)に合わせて、約24時間周期で、生理機能(睡眠覚醒、体温調節、摂餌排泄、ホルモン分泌等)を制御しており、このような生物学的な日周変動は「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼称される。特に哺乳類においては、概日リズムの機能の中枢は、脳内の視床下部に存在する視交叉上核である。視交叉上核から発信される周期的なシグナルが神経伝達やホルモンを介して抹消組織に伝達されることで、全身の多様な生理機能が一定の周期をもって規則正しく調律されている。
【0003】
一方で、抹消組織にも自律的なサーカディアンリズムを形成する機構が存在することが明らかとなっている。抹消組織における細胞レベルでは、サーカディアンリズムは複数の時計遺伝子の相互作用により、転写レベルで調節される。その中心にあるのが転写因子であるBmal1ならびにClockを中心とした転写のコアループである。核内においてBmal1とClockはヘテロダイマーを形成し、これがDNA上のE-box配列に結合することで、Perならびにcryなどの時計遺伝子、さらには多くのホルモン、サイトカイン類あるいは酵素等の非時計遺伝子群の発現を調節する。翻訳されたPerタンパク質およびCryタンパク質はPer/Cryヘテロダイマーを形成して核内に移行し、Bmal1/Clockによる転写活性を抑制する。これによりPer遺伝子及びCry遺伝子の転写が終結する。また同時にPERタンパク質及びCRYタンパク質がリン酸化とそれに引き続き起こるユビキチン―プロテアソーム系により速やかに分解される。その結果、このネガティブフィードバックループは解除され、再びBmal1/Clockによる転写調節が開始される。これらの機構が24時間周期で遂行されることにより、生体はサーカディアンリズムを刻む。
【0004】
皮膚細胞においても例外ではなく、バリア機能に関してはアクアポリンがBMAL1/CLOCKによる発現制御を受けていることが示唆されている。また、活性酸素産生とBMAL1に密接な関係があることが示唆されているといった報告がある(非特許文献1)。一方で、皮膚培養細胞に酸化ストレスを与えると時計遺伝子の発現リズムが異常をきたすといった報告もあり、これら皮膚細胞における時計遺伝子の発現リズムの異常が、生理機能の不調を引き起こすことは想像に難くない。
【0005】
このように、概日リズムは、時計遺伝子の発現によって制御される。そのため、当該発現を変化させることによって、概日リズムを変化させ得る物質の探索が行われている。特許文献1では、スフィンゴイド塩基を有効成分として含有する、時計遺伝子発現調整剤が報告されている。当該発明においては、過酸化水素によるストレスを与えた状態で時計遺伝子の乱れを誘発しているが、その振幅の回復に着目している。特許文献2では、トケイソウ抽出物(ハルミンを含有する物を除く)を含む概日リズム改善剤が報告されている。当該発明においては、非ストレス下における時計遺伝子の発現(振幅)の増強に着目している。特許文献3では、黒生姜(Kaempferia parviflora)を含有する、時計遺伝子発現促進用組成物が報告されている。当該発明においても、非ストレス下における時計遺伝子の発現(振幅)の増強に着目している。
【0006】
生体内の時計遺伝子に対して、安全かつ有効に作用する成分を探索することは、より安全でより有効性の高い成分を市場に提供するという観点のみならず、製剤の多様化、処方配合上の選択肢の拡大、異なる成分を組み合わせて使用することによる相乗効果といった観点からも重要であり、時計遺伝子に対して作用する新規成分の開発が求められていることは言うまでもない。特に、単に時計遺伝子の発現に影響するのではなく、ストレスによって誘発された時計遺伝子の異常を抑制または予防する効果が求められている。市場には時計遺伝子の振幅に着目した素材が見出されている一方、時計遺伝子の位相に着目した素材は少なく、位相の変化に対応し得る素材が求められている。
【0007】
そのような背景の中、特許文献4では、ネムノキ樹皮の水抽出物は、マウス胚性線維芽細胞に添加することによって、当該細胞の時計遺伝子(Per2遺伝子)の発現リズムにおいて、その振幅の経過的減弱を抑制できることを見出した。さらに、前記抽出物は、細胞への投与のタイミングによって、Per2遺伝子の発現リズムの位相を、濃度依存的に前進させることも、また後退させることもできることが示されており、時計遺伝子への柔軟な作用が示唆されている。
【0008】
ネムノキは、日本国内では東北地方以南の山地の林縁、原野等の日当たりのよい湿地に自生するマメ科の落葉高木で、海外においては中国、東南アジア等にも等にも分布し、栽培される。花期の頃に樹皮を採取し、水洗いしてから天日乾燥して適当な長さに刻んだものを合歓皮と称し、民間では関節炎、腰痛、利尿、浮腫、強壮を期待して服用され、外用として腫物、打撲傷、関節痛に煎じ液で患部を冷湿布したり、浴湯料として使用されてきた。樹皮にはトリテルペン系サポニン(多数のジュリブロシド類)、フラボノイド(ゲラルドン、イソオカニン、ルテオリン等)やタンニン等を含むことが知られている。(非特許文献2)
【0009】
また、近年、紫外線の皮膚に及ぼす影響や、その作用機構が盛んに研究されている。通常、地表に達する紫外線は、UVA(320~400nm)、UVB(290~320nm)に分けられる。一般に、UVBは太陽から届く紫外線の約1割と量は少ないが、肌への作用が強く、短時間でも肌が赤くなるサンバーン(日焼けによる炎症反応)や、数日後に肌が黒くなるサンタン(色素沈着反応)を引き起こす作用を有する。また、波長が短いUVBは、炎症やしみの原因となるだけでなく、肌表面の表皮細胞やDNAを傷つけるなど、生体への影響が強いことで知られている。
【0010】
肌色を4段階(I-IV)に分けた時、日本人の平均的なタイプIIの人が真夏の東京湾で約20分日光浴すると12~24時間後にうっすら赤くなった状態のサンバーンを紅斑と呼んでいる。この紅斑を引き起こす最小のエネルギー量を最小紅斑量(MED:Minimal Erythema Dose)と呼び、日本人のUVB照射によるMEDは0.04~0.07J/mと言われている(非特許文献3)。
【0011】
このような紫外線に誘発された炎症である紅斑の予防・抑制を目的として、様々な抗炎症剤が提案されている。特許文献5では、款冬(Tussilago farfara L.)及びインチンコウ(Artemisia capillan’s Thunb.)から選ばれる植物又はその抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤が報告されている。特許文献6では、アスコルビン酸及びその誘導体又はその塩と、グリチルリチン酸及びその誘導体又はその塩と、コメヌカ由来成分と、ゲンチアナエキスを含有する皮膚外用剤が報告されている。特許文献7では、リンゴ抽出物を含有する皮膚外用剤が報告されている。
【0012】
一方、製剤の多様化、処方配合上の選択肢の拡大といった観点や、メカニズムの異なる紅斑抑制剤を用いた相乗効果といった観点、より安全で高い有効性を有する紅斑抑制剤といった観点から、新規の紅斑抑制剤の開発が求められていることは言うまでもない。
【0013】
さらには、タンパク質と還元糖を混合して加熱すると、タンパク質のアミノ基と還元糖のカルボニル基との間が非酵素的に結合し、糖化産物が形成される。この反応はメイラード反応または糖化反応と呼ばれる。このタンパク質と還元糖の結合反応は、生体内においても起きており、糖化されたタンパク質は常に形成されている。
【0014】
これらの糖化タンパク質は、最終的には終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)と呼ばれる不可逆的な化合物を形成する。AGEsは、グルコースだけではなく、グルコースの自動酸化及び分解産物などの種々の糖から生成される。AGEsとしては、ペントシジン、クロスリン、カルボキシメチルリジン、ピラジンなどが知られている。
【0015】
AGEsに関して、加齢と共に蓄積が認められること、皮膚の老化にも密接な関連があることが近年明らかとなってきた。皮膚のタンパク質で糖化反応が生じると、タンパク質中のリジン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジル基と糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、AGEsが生成しタンパク質同士を架橋させてしまう。架橋構造が形成されると分子が硬くなり、皮膚本来の弾力性が失われる。また、架橋物を異物と判断し、タンパク質分解酵素の分泌量が増える。これらに起因して、肌のハリや弾力性が失われ、また肌が脆くなり、更にはシワ、たるみ、くすみが発生する。従って、タンパク質の糖化を阻害することは、これらの症状を予防・治療するのに有効であると考えられている。
【0016】
このような背景から、AGEs生成抑制作用を含むタンパク質の糖化反応を抑制する成分として、天然物を使用することに関する研究が進められている。例えば、特許文献8には、ブドレジャアキシラリス葉抽出物を有効成分として含むAGEs産生抑制作用が記載されている。特許文献9には、プロポリス又はその加工物を有効成分とするタンパク質の抗糖化剤が記載されている。特許文献10には、梅酢を含有する抗糖化化粧料が記載されている。
【0017】
一方、製剤の多様化、処方配合上の選択肢の拡大といった観点や、メカニズムの異なる抗糖化剤を用いた相乗効果といった観点、より安全で高い有効性を有する抗糖化作用といった観点から、新規の抗糖化剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2018-138524号公報
【特許文献2】特開2018-43970号公報
【特許文献3】特開2016-210703号公報
【特許文献4】特開2018-058783号公報
【特許文献5】特開平8-175958号公報
【特許文献6】特開2010-47535号公報
【特許文献7】特開2013-095704号公報
【特許文献8】特開2011-102270号公報
【特許文献9】特開2012-077042号公報
【特許文献10】特開2012-214434号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】COSMETIC STAGE Vol12,No.3 2018
【非特許文献2】和漢薬No.759(2016.8)
【非特許文献3】薬学雑誌、Vol.126、p677-693,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記の背景を鑑み、時計遺伝子の発現リズムの乱れを抑制または予防する素材を見出すことを課題とする。ひいては、時計遺伝子の発現リズムの乱れに起因する様々な疾患及び症状を防ぐことを課題とする。また、本発明は、紫外線により誘発される紅斑を抑制する抗炎症剤を見出すことを課題とする。さらに、本発明は、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制する作用を有する抗糖化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記事情に鑑み、酸化ストレスに起因する時計遺伝子の発現リズムの乱れに対して、ネムノキ抽出物がその発現リズムの乱れを有効に抑制または予防する作用を有すること、紫外線により誘発される紅斑に対して、ネムノキ樹皮抽出物がその紅斑を抑制する抗炎症効果を有すること、および、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成に対して、ネムノキ樹皮抽出物がその糖化反応を抑制する抗糖化症効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
即ち、本発明の概要は以下の通りである。
項1.
正常な時計遺伝子の発現リズムと比較して、不規則であるまたは異常である時計遺伝子の発現リズムを示す皮膚細胞に対して用いる、ネムノキ抽出物含有組成物。
項2.
時計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防するための組成物である、項1に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項3.
前記不規則であるまたは異常である時計遺伝子の発現リズムが、酸化ストレス、紫外線、薬物による外的刺激、生理的ストレス、および老化による内的要因からなる群より選択されるいずれかの要因によって引き起こされたものである、項1または2に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項4.
前記不規則であるまたは異常である時計遺伝子の発現リズムが、位相の後退である、項3に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項5.
前記皮膚細胞が、ヒト表皮角化細胞である、項1から4のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項6.
前記時計遺伝子が、発現リズムに日内周期性を示す遺伝子である、項1から5のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項7.
前記時計遺伝子が、Per遺伝子、Bmal遺伝子、Clock遺伝子、Cry遺伝子、Tim遺伝子、Npas遺伝子、Nr1d1遺伝子、Dbp遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子である、項6に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項8.
前記時計遺伝子がBmal1遺伝子である、項7に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項9.
前記ネムノキ抽出物がネムノキ樹皮抽出物である、項1から8のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項10.
前記ネムノキ抽出物が、前記皮膚細胞に適用する全組成物の0.001~10質量%である、項1から9のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項11.
前記ネムノキ抽出物が、前記皮膚細胞に適用する全組成物の0.005~1質量%である、項10に記載のネムノキ抽出物含有組成物。
項12.
項1から11のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物を含んでなる化粧料。
項13.
項1から11のいずれかに記載のネムノキ抽出物含有組成物を含んでなる皮膚外用剤。
項14.
前記ネムノキ抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%含有する、項13に記載の皮膚外用剤。
項15.
ネムノキの樹皮から水により抽出されたネムノキ樹皮抽出物を含有してなる抗炎症剤。
項16.
皮膚の紅斑を抑制する作用を有する、項15に記載の抗炎症剤。
項17.
紫外線照射によって誘発される皮膚の紅斑を抑制する作用を有する、項15または16に記載の抗炎症剤。
項18.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲である、項15~17のいずれかに記載の抗炎症剤。
項19.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00005~3.0重量%の濃度範囲である、項18に記載の抗炎症剤。
項20.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.0001~1.0重量%の濃度範囲である、項18に記載の抗炎症剤。
項21.
項15~20のいずれかに記載の抗炎症剤を含有する皮膚外用組成物。
項22.
ネムノキ樹皮抽出物を含有してなる抗糖化剤。
項23.
タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制する作用を有する、項22に記載の抗糖化剤。
項24.
ネムノキ樹皮抽出物が、ネムノキ樹皮から水により抽出されたものである、項22または23に記載の抗糖化剤。
項25.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲で含まれる、項22~24のいずれかに記載の抗糖化剤。
項26.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.00005~3.0重量%の濃度範囲で含まれる、項25に記載の抗糖化剤。
項27.
ネムノキ樹皮抽出物が、乾燥重量で0.0001~1.0重量%濃度範囲で含まれる、項25に記載の抗糖化剤。
項28.
項22~27のいずれかに記載の抗糖化剤を含有する、皮膚外用組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明のネムノキ抽出物を使用することにより、酸化ストレス等を原因とする時計遺伝子の乱れを抑制または予防することが期待でき、該効果を目的とした皮膚外用剤を提供できる。また、ネムノキ樹皮抽出物を使用することにより、紫外線により誘発される皮膚の紅斑を抑制する抗炎症剤を提供すること、及び、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制することが期待され、これらの効果を目的とした皮膚外用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1において、ヒト正常新生児表皮角化細胞における標的時計遺伝子の発現リズムの乱れに対する抑制あるいは予防作用の評価を行った結果を示す図である(過酸化水素無添加区/ネムノキ抽出物無添加区)。
図2】実施例1において、ヒト正常新生児表皮角化細胞における標的時計遺伝子の発現リズムの乱れに対する抑制あるいは予防作用の評価を行った結果を示す図である(過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物無添加区)。
図3】実施例1において、ヒト正常新生児表皮角化細胞における標的時計遺伝子の発現リズムの乱れに対する抑制あるいは予防作用の評価を行った結果を示す図である(過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物添加区)。
図4】実施例3において、被験試料塗布区あるいは無塗布区における皮膚色測定の結果の対比を示す図である。
図5】実施例5において、被験試料添加区あるいはコントロール添加区における、糖化反応によって生じるカルボニル基濃度の測定結果の対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、正常な時計遺伝子の発現リズムと比較して、不規則あるいは異常な時計遺伝子の発現リズムを示す皮膚細胞に対して、時計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防することを特徴とする、ネムノキ抽出物を含む組成物を提供する。適用される皮膚細胞としては、ヒト表皮角化細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト表皮メラニン細胞、ヒト皮膚微小血管内皮細胞、ヒト皮膚微小リンパ管内皮細胞、ヒト毛乳頭細胞等が挙げられる。特には、ヒト表皮角化細胞に対して用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いるネムノキ抽出物の抽出法の例を以下に示す。抽出物における植物体の部位は主に樹皮を用いるが、これに特定せず全体を用いることもできる。また、以下に記載される例に限定されないのは言うまでもない。
【0027】
ネムノキ抽出物とは、ネムノキ属植物の植物体そのものの他、その裁断物、乾燥粉末、およびその抽出物を指す。そして、この「抽出物」は、抽出溶媒を含んだ状態および抽出溶媒を除去した状態のいずれをも包含するものであり、また、抽出溶媒除去後にさらに精製処理に供したものも包含する。
【0028】
ネムノキ抽出物とは、ネムノキ属植物の植物体、典型的にはその枝葉部から抽出され、生のままあるいは乾燥して粉砕し、その後、抽出溶媒として、水、好ましくは70~100℃の熱水、または有機溶媒を用いて抽出を行うことにより得られる。抽出は必要に応じて、水抽出と有機溶媒抽出を組み合わせて行うこともできるが、生体へ適用した場合の影響を考慮すると、水抽出のみで行うことが好ましい。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;油脂、ワックス、その他オイル類が挙げられ、このうち、水、アルコール類、水-アルコール混液が好ましく、特に好ましくは熱水を抽出溶媒として用いるのが好ましい。
【0029】
熱水抽出する場合は、典型的には、ネムノキ属植物の植物体粉砕物を加熱還流下で抽出が行われる。抽出条件は、使用する溶媒によっても異なるが、例えば水により抽出する場合、ネムノキ1重量部に対して1~100重量部の水を用い、4~100℃の温度で、10分~7日間かけて抽出することが好ましく、ネムノキの樹皮1重量部に対して5~20重量部の水を用い、70~100℃の温度で、30分~2時間かけて抽出することがより好ましい。また、抽出効率をより高めるという観点から、加圧、攪拌、超音波処理等を、抽出処理の際に併せて行ってもよい。さらに、かかる抽出処理後に、濾過や遠心分離によって残渣と分離してもよい。
【0030】
ネムノキ抽出物は、抽出溶媒を減圧により留去すれば、タール状で黒茶色の抽出物を与えることが普通であり、必要に応じて賦形剤を添加することもできる。抽出溶媒が無毒のもの、例えば水である場合は、抽出溶媒を含んだまま調剤に使用することもできるが、抽出溶媒を分離した抽出物を調剤に用いることもできる。抽出溶媒分離後の抽出物を適当な溶剤、例えば水に再溶解させて、調剤に使用することもできる。また、このようにして得た抽出物を精製手段、例えば分別抽出、二溶媒間の分配、適当な吸着剤による分別吸着/溶離ないしクロマトグラフィー等によって、精製ないし力価の向上を行うこともできる。
【0031】
上記のように得られたネムノキ抽出物は、そのまま計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防に利用することもできるが、外用剤、特に皮膚外用剤に配合して利用することが好ましい。この場合の外用剤への配合量は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度等によって決められ、特に限定されるものではないが、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲とすることが望ましく、好ましくは0.00005~3.0重量%の範囲であり、特に0.0001~1.0重量%の範囲が好ましい。ネムノキ抽出物の含有量が0.00001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、5.0重量%以上加えても効果の増強は期待できない。
【0032】
本発明のネムノキ抽出物含有組成物は、ネムノキ抽出物を有効成分とするものである。本発明において、酸化ストレス等による時計遺伝子の発現リズムの乱れを抑制する作用とは、ネムノキ抽出物に含まれるポリフェノール化合物、テルペノイド化合物等の生理活性物質による時計遺伝子への作用を含む。また、これらの作用により、抹消細胞における時計遺伝子の発現リズムの乱れを抑制する作用を含む。さらに、本発明において、時計遺伝子の発現リズムの抑制作用は、培養細胞に本発明の組成物を添加し、細胞内の遺伝子発現量をリアルタイムPCRによって定量することで評価することができる。
【0033】
本発明において時計遺伝子としては、概日リズム(体内時計)を制御する機能を有する遺伝子であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、Period遺伝子(Per1、Per2、Per3等)、Bmal遺伝子(Arntl、Mop3、Tic、Jap3、Pasd3、bHLHe5とも呼称される遺伝子、Bmal1、Bmal2等)、Cryptochrome遺伝子(Cry1、Cry2等)、Clock遺伝子、Ror遺伝子、Rev-erb遺伝子、E4BP遺伝子、GSK3β遺伝子、CK1遺伝子、Dec遺伝子が挙げられるが、本発明において、好ましくは、Bmal1遺伝子である。ひいては、時計遺伝子にその発現をコントロールされている時計被制御遺伝子についても、その作用が及ぶことが考えられる。タンパク質をコードする遺伝子の43%は、体内のいずれかの部位において、時計遺伝子の支配を受けているという報告もあり(PNAS,Vol.111,No.45,p16219-16224;2014年)、それらの時計被制御遺伝子に対しても作用が期待される。
【0034】
本発明における時計遺伝子の発現には、転写レベルでの発現(mRNAとしての発現)のみならず、翻訳レベルでの発現(タンパク質としての発現)にも関連する。また、「時計遺伝子の発現の変化」には、時計遺伝子の発現量の増加又は低減に加え、時計遺伝子の発現リズム(振幅、位相及び周期長のうちの少なくとも1つ)が変化することも含まれる。
【0035】
「振幅」とは、リズムにおけるピークからトラフまでの幅、つまり振動の大きさである。時計遺伝子の発現リズムにおいては、そのピークからピーク、又はトラフからトラフまでの期間における時計遺伝子の発現量の幅を示す。時計遺伝子の振幅は、細胞活性の低下、加齢、ストレス等によって減弱することが知られている。
【0036】
「位相」とは、一周期の特定の位置(例えば、ピークからピーク、トラフからトラフ)をいうものである。また、「周期長」とは、一周期の長さである。後述の実施例に示す通り、ネムノキ樹皮抽出物は、酸化ストレスによる位相の後退、周期長の延長を抑制し、正常な時計遺伝子の発現リズムを維持することができる。
【0037】
このように、本発明のネムノキ抽出物含有組成物は、時計遺伝子の発現リズム及びそれによって制御される概日リズムにおける異常を抑制することができるため、当該異常に起因する症状の改善又は予防をすることができる。
【0038】
本発明における酸化ストレス等とは、例えば、過酸化水素による酸化ストレス、紫外線(UV-A,UV-B,UV-C)によって細胞内で生じる酸化ストレス等が挙げられる。
【0039】
本発明のネムノキ抽出物含有組成物は、ネムノキ抽出物以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含むことができる。そのような原料の例としては水、賦形剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、粘稠剤、緩衝剤、吸着剤、溶剤、乳化剤、安定化剤、界面活性剤、滑沢剤、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、アルコール類等が挙げられる。また、本発明の抗酸化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例として、例えば、抗酸化成分、老化防止成分、抗炎症成分、美白成分、細胞賦活化成分、ビタミン類、血行促進成分、保湿成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、抗糖化成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、ヒドロキノン配糖体及びそのエステル類等が挙げられる。この場合のネムノキ抽出物含有組成物におけるネムノキ抽出物の割合は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.1~2質量%が特に好ましい。
【0040】
上記のように得られたネムノキ樹皮抽出物は、そのまま抗炎症剤に利用することもできるが、外用組成物、特に皮膚外用組成物に配合して利用することが好ましい。この場合の外用組成物への配合量は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度等によって決められ、特に限定されるものではないが、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲とすることが望ましく、好ましくは0.00005~3.0重量%の範囲であり、特に0.0001~1.0重量%の範囲が好ましい。ネムノキ樹皮抽出物の含有量が0.00001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、5.0重量%以上加えても効果の増強は期待できない。
【0041】
本発明のネムノキ樹皮抽出物を含有する皮膚外用組成物は、ネムノキ樹皮抽出物を有効成分とするものである。本発明におけるネムノキ樹皮抽出物の抗炎症効果は、ネムノキ樹皮抽出物に含まれるポリフェノール化合物、テルペノイド化合物等の生理活性物質による作用を含む。より詳細には、前記の生理活性物質が、紫外線等で誘発される皮膚の紅斑を抑制すると考えられる。この紅斑抑制効果は、紫外線照射後の皮膚色を測定することで評価できる。
【0042】
上記のように得られたネムノキ樹皮抽出物は、そのまま抗糖化剤として利用することもできるが、外用組成物、特に皮膚外用組成物に配合して利用することが好ましい。この場合の外用組成物への配合量は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度等によって決められ、特に限定されるものではないが、乾燥重量で0.00001~5.0重量%の濃度範囲とすることが望ましく、好ましくは0.00005~3.0重量%の範囲であり、特に0.0001~1.0重量%の範囲が好ましい。ネムノキ樹皮抽出物の含有量が0.00001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、5.0重量%以上加えても効果の増強は期待できない。
【0043】
本発明のネムノキ樹皮抽出物を含有する皮膚外用組成物は、ネムノキ樹皮抽出物を有効成分とするものである。本発明におけるネムノキ樹皮抽出物の抗糖化効果は、ネムノキ樹皮抽出物に含まれるポリフェノール化合物、テルペノイド化合物等の生理活性物質による作用を含む。より詳細には、前記の生理活性物質が、タンパク質と糖の反応を阻害すると考えられる。この抗糖化効果は、例えばタンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の指標としてカルボニル基を定量することで評価できる。
【0044】
本発明のネムノキ抽出物含有組成物には、ネムノキ抽出物の必須成分に加えて、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧品類、医薬部外品類、飲食品類、医薬品類等に使用される成分や添加剤を併用して配合することができる。
【0045】
例えば、油脂類としては、アボガド油、アルモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油,ミンク油、卵黄油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、硬化油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0046】
ロウ類としては、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0047】
鉱物油としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレン末、スクワレン、スクワラン、プリスタン等が挙げられる。
【0048】
脂肪酸類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸等の天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソペンタン酸等の合成脂肪酸が挙げられる。
【0049】
アルコール類としては、エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール等の天然アルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の合成アルコール、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、バチルアルコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0050】
エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
【0051】
金属セッケンとしては、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0052】
ガム質及び水溶性高分子化合物としては、アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシアルキルキチン、キトサン、ヒドロキシアルキルキチン、低分子キトサン、キトサン塩、硫酸化キチン、リン酸化キチン、アルギン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(カルボン酸塩,スルホン酸塩,硫酸エステル塩,リン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アミン塩,四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤(カルボン酸型両性界面活性剤,硫酸エステル型両性界面活性剤,スルホン酸型両性界面活性剤,リン酸エステル型両性界面活性剤)、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤,エーテルエステル型非イオン界面活性剤,エステル型非イオン界面活性剤,ブロックポリマー型非イオン界面活性剤,含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤,タンパク質加水分解物の誘導体,高分子界面活性剤,チタン・ケイ素を含む界面活性剤,フッ化炭素系界面活性剤)等が挙げられる。
【0054】
ビタミン類としては、ビタミンA群ではレチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群では、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群では、アスコルビン酸及びその誘導体、ビタミンD群では、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群では、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群では、フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)等が挙げられる。
【0055】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等や、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、あるいはピロリドンカルボン酸の如きアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0056】
美白剤としては、アスコルビン酸又はその誘導体、イオウ、胎盤加水分解物、エラグ酸又はその誘導体、コウジ酸又はその誘導体、グルコサミン又はその誘導体、アルブチン又はその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸又はその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物又はその抽出物、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、ジユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、油溶性カンゾウエキス等が挙げられる。
【0057】
保湿剤としては、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ヒドロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸又はそのエステル類、エイコサペンタエン酸又はそのエステル類、ペクチン、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物又はその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ-オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマ等が挙げられる。
【0058】
育毛剤としては、ペンタデカン酸グリセリド、コレウスエキス、ゲンチアナエキス、マツカサエキス、ローヤルゼリーエキス、クマザサエキス、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン、センブリエキス、塩化カルプロニウム、ミノキシジル、フィナステリド、アデノシン、ニコチン酸アミド、桑の根エキス、ジオウエキス、5-アミノレブリン酸等が挙げられる。
【0059】
動物或いは植物、生薬の抽出物やエキスとしては、アセンヤク(阿仙薬)、アシタバ、アセロラ、アルテア、アルニカ、アボカド、アマチャ(甘茶)、アロエ、アロエベラ、イラクサ、イチョウ(銀杏葉,銀杏)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、ウスバサイシン(細辛)、ウメ(烏梅)、ウラジロガシ、ウワウルシ、ノイバラ(営実)、ヒキオコシ(延命草)、オウギ(黄耆)、コガネバナ(オウゴン)、ヤマザクラ(桜皮)、キハダ(黄柏)、オウレン(黄連)、オタネニンジン(人参)、オトギリソウ(弟切草)、オド
リコソウ、オランダガラシ、オレンジ、イトヒメハギ(遠志)、ウツボグサ(夏枯草)、ツルドクダミ(何首烏)、エンジュ(槐花)、ヨモギ(ガイ葉)、ガジュツ(莪朮)、クズ(葛根)、カノコソウ(吉草根)、カミツレ、キカラスウリ(瓜呂根)、カワラヨモギ(茵チン蒿)、カンゾウ(甘草)、フキタンポポ(款冬花,款冬葉)、キイチゴ、キウイ果実、キキョウ(桔梗)、キク(菊花)、キササゲ(梓実)、ミカン属植物果実(枳実)、タチバナ(橘皮)、キュウリ、ウドまたはシシウド(羌活,独活)、アンズ(杏仁)、クコ(地骨皮,枸杞子,枸杞葉)、クララ(苦参)、クスノキ、クマザサ、グレープフルーツ果実、ニッケイ(桂皮)、ケイガイ(ケイガイ)、エビスグサ(決明子)、マルバアサガオ又はアサガオ(ケン牛子)、ベニバナ(紅花)、ゴバイシ(五倍子)、コンフリー、コパイバ、クチナシ(山梔子)、ゲンチアナ、ホオノキ(厚朴)、ヒナタイノコズチ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウ、チョウセンゴミシ(五味子)、米、米ぬか、コムギ、ミシマサイコ(柴胡)、サフラン、サボンソウ、サンザシ(山ザ子)、サンショウ(山椒)、サルビア、サンシチニンジン(三七人参)、シイタケ(椎茸)、ジオウ(地黄)、シクンシ(使君子)、ムラサキ(紫根)、シソ(紫蘇葉,紫蘇子)、カキ(柿蒂)、シャクヤク(芍薬)、オオバコ(車前子,車前草)、ショウガ(生姜)、ショウブ(菖蒲)、トウネズミモチ(女貞子)、シモツケソウ、シラカバ、スイカズラ(金銀花,忍冬)、セイヨウキヅタ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウニワトコ、アズキ(赤小豆)、ニワトコ(接骨木)、ゼニアオイ、センキュウ(川キュウ)、センブリ(当薬)、クワ(桑白皮,桑葉)、ナツメ(大棗)、ダイズ、タラノキ、チクセツニンジン(竹節人参)、ハナスゲ(知母)、ワレモコウ(地楡)、ドクダミ(十薬)、フユムシナツクサタケ(冬虫夏草)、トウガラシ、ホオズキ(登呂根)、タチジャコウソウ、リョクチャ(緑茶)、コウチャ(紅茶)、チョウジ(丁子)、ウンシュウミカン(陳皮)、ツバキ、ツボクサ、トウガラシ(番椒)、トウキ(当帰)、トウキンセンカ、ダイダイ(橙皮)、ワレモコウ(地楡)、トウモロコシ(南蛮毛)、トチュウ(杜仲,杜仲葉)、トマト、ナンテン(南天実)、ニンニク(大サン)、オオムギ(麦芽)、ハクセン(白蘚皮)、ジャノヒゲ(麦門冬)、パセリ、バタタ、ハッカ(薄荷)、ハマメリス、バラ、ビワ葉(枇杷葉)、マツホド(茯リョウ)、ブドウまたはその葉、ヘチマ、ボダイジュ、ボタン(牡丹皮)、ホップ、マイカイ(マイ瑰花)、松葉、マロニエ、マンネンロウ、ムクロジ、メリッサ、メリロート、ボケ(木瓜)、モヤシ、モモ(桃仁,桃葉)、ヒオウギ(射干)、ビンロウジュ(檳ロウ子)、メハジキ(益母草)、ヤグルマギク、ユキノシタ(虎耳草)、ヤマモモ(楊梅皮)、ヤシャブシ(矢車)、ハトムギ(ヨクイニン)、モウコヨモギ、ヤマヨモギ、ラベンダー、リンゴ果実、マンネンタケ(霊芝)、レモン果実、レンギョウ(連翹)、レンゲソウ、ゲンノショウコ(老鸛草)、ハシリドコロ(ロート根)、鶏トサカ、牛・人の胎盤抽出物、豚・牛の胃、十二指腸、或いは腸の抽出物若しくはその分解物、水溶性コラーゲン、水溶性コラーゲン誘導体、コラーゲン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、水溶性エラスチン誘導体、シルク蛋白、シルク蛋白分解物、牛血球蛋白分解物等が挙げられる。
【0060】
微生物培養代謝物としては、酵母エキス、亜鉛含有酵母エキス、ゲルマニウム含有酵母エキス、セレン含有酵母エキス、マグネシウム含有酵母エキス、米醗酵エキス、ユーグレナ抽出物、脱脂粉乳の乳酸発酵物等が挙げられる。
【0061】
α-ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
【0062】
無機顔料としては、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミン等が挙げられる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、p-アミノ安息香酸誘導体、サルチル酸誘導体、アントラニル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、ビタミンB6誘導体、オキシベンゾン、ベンゾフェノン、グアイアズレン、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリン等が挙げられる。
【0064】
収斂剤としては、乳酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、アラントイン、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン、p-フェノールスルホン酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、レソルシン、塩化第二鉄、タンニン酸等が挙げられる。
【0065】
抗酸化剤としては、アスコルビン酸及びその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロール及びそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等が挙げられる。
【0066】
抗炎症剤としては、イクタモール、インドメタシン、カオリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、アセチルサリチル酸、塩酸ジフェンヒドラミン、d又はdl-カンフル、ヒドロコルチゾン、グアイアズレン、カマズレン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸及びその塩等が挙げられる。
【0067】
殺菌・消毒薬としては、アクリノール、イオウ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルロザニリン、クレゾール、グルコン酸カルシウム、グルコン酸クロルヘキシジン、スルファミン、マーキュロクロム、ラクトフェリン又はその加水分解物等が挙げられる。
【0068】
頭髪用剤としては、二硫化セレン、臭化アルキルイソキノリニウム液、ジンクピリチオン、ビフェナミン、チアントール、カスタリチンキ、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、塩酸キニーネ、強アンモニア水、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、チオグリコール酸等が挙げられる。
【0069】
香料としては、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリス等の天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、檜精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油等の植物性香料、その他合成香料等が挙げられる。
【0070】
色素・着色剤としては、赤キャベツ色素、赤米色素、アカネ色素、アナトー色素、イカスミ色素、ウコン色素、エンジュ色素、オキアミ色素、柿色素、カラメル、金、銀、クチナシ色素、コーン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、スピルリナ色素、ソバ全草色素、チェリー色素、海苔色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、マリーゴールド色素、紫イモ色素、紫ヤマイモ色素、ラック色素、ルチン等が挙げられる。
【0071】
甘味料としては、砂糖、甘茶、果糖、アラビノース、ガラクトース、キシロース、マンノース、麦芽糖、蜂蜜、ブドウ糖、ミラクリン、モネリン等が挙げられる。
【0072】
栄養強化剤としては、貝殻焼成カルシウム、シアノコラバミン、酵母、小麦胚芽、大豆胚芽、卵黄粉末、ヘミセルロース、ヘム鉄等が挙げられる。
【0073】
その他、ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質及びその分解物、動・植物性多糖類及びその分解物、動・植物性糖蛋白質及びその分解物、血流促進剤、消炎剤・抗アレルギー剤、細胞賦活剤、角質溶解剤、創傷治療剤、増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、苦味料、調味料、酵素等が挙げられる。
【0074】
本発明の剤型は任意であり、アンプル状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、液状、ゲル状、気泡状、乳液状、クリーム状、軟膏状、シート状、ムース状等の医薬部外品類、皮膚・頭髪用化粧品類及び浴用剤化、飲食品類、医薬品類に配合して用いることができる。
【0075】
具体的に化粧品類、医薬部外品類としては、例えば内用・外用薬用製剤、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、洗顔料や皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛・養毛料等の頭髪化粧料、ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛等のメークアップ化粧料、美爪料等の仕上げ用化粧料、香水類、浴用剤、その他、歯磨き類、口中清涼剤・含嗽剤、液臭・防臭防止剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。
【0076】
飲食品類としては、例えば清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓、そば、うどん、はるさめ、餃子の皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類、カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、粉乳、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品、種々の形態の健康・栄養補助食品、保健機能食品、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等が挙げられる。
【0077】
本発明のネムノキ抽出物含有組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が期待できる限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0078】
本発明の化粧料の態様は、特に限定されないが、例えば、洗顔料、洗浄料、化粧水(例えば、美白化粧水)、クリーム(例えば、バニシングクリーム、コールドクリーム)、乳液、ゲル、美容液、パック(例えば、ゼリー状ピールオフタイプ、ペースト状拭き取りタイプ、粉末状洗い流しタイプ)、フェイスマスク、クレンジング、ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、頬紅、化粧下地、シェービングローション、サンスクリーン、アフターサンローション、デオドラントローション、ボディローション(ハンドケアローション、フットケアローションを含む)、ボディオイル等が挙げられる。
【0079】
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、実施例により、本発明が特に限定されるものではない。
【実施例0080】
以下の実施例において用いているネムノキ樹皮の水抽出物は、特開2018-58783号公報に開示される方法により調製されたものを用いた。
【0081】
実施例1:ヒト正常新生児表皮角化細胞における標的時計遺伝子の発現リズムの乱れに対する抑制あるいは予防作用の評価
前記ネムノキ抽出物を被験試料として用い、下記試験方法により時計遺伝子の発現リズムを評価した。
【0082】
Collagen Coating Solution (東洋紡製)でコラーゲンコートしたT75フラスコに対して、ヒト正常新生児表皮角化細胞(NHEK)を播種し、正常ヒト表皮角化細胞増殖用培地(HuMedia-KG2)を添加して、37℃, 10%COにて培養した。適宜培地交換を行い、80%以上コンフルエントになるまで培養を継続した。培地を除去してPBSでリンスした後、トリプシン処理を行って細胞を回収した。96ウェルプレートに1×10cells/wellとなるように細胞を播種し、37℃, 10%COにて1日培養した。
【0083】
前述の培養細胞に対して、終濃度100nMとなるようにデキサメタゾンを溶解した培地を追添し、1時間インキュベートし、同調刺激を行った。その後培地を除去し、過酸化水素と被験試料を所定濃度含有した培地に交換し、37℃, 10%COにて24時間インキュベートした。過酸化水素無添加区/ネムノキ抽出物無添加区においては過酸化水素0mM/ネムノキ抽出物0mg/mL、過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物無添加区においては過酸化水素1.5mM/ネムノキ抽出物0mg/mL、過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物添加区においては過酸化水素1.5mM/ネムノキ抽出物50μg/mLとした。24時間のインキュベートの間に一定時間置きに細胞を回収し、培地を除去して-80℃で冷凍保存した。回収して冷凍保存した細胞は、全水準の細胞を回収し終わってから、SuperPrep(登録商標)II Cell Lysis & RT Kit for qPCR(東洋紡製)を用いて、細胞からcDNA調製を行った。
【0084】
得られたcDNAをもとに、THUNDERBIRD SYBR(登録商標) qPCR Mix (東洋紡株式会社製)を用いて、qRT-PCRにてmRNA遺伝子の増幅を行った。反応液組成は添付文書に従った。ただし、反応液量は20μl/wellとし、cDNA量は3μlとした。反応サイクル条件は95℃、1分→(95℃、15秒→60℃、45秒)×40→95℃、15秒→60℃、1分→95℃、15秒で実施した。プライマーは配列番号1~2に示される塩基配列を使用した。機器は7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を使用した。グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子を内部標準として使用し、標的遺伝子の発現量を標準化した(配列番号3~4)。標準化したそれぞれの標的遺伝子の発現量を、同調刺激完了後過酸化水素と被験試料を添加することなくすぐさま回収した対照水準の遺伝子の発現量で除算し、相対値を算出した。
【0085】
得られた結果を図1~3に示す。図1の過酸化水素無添加区/ネムノキ抽出物無添加区では、Bmal1の発現周期はほぼ24時間で、10~11時間にピークを有する正常な発現リズムが確認された。図2の過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物無添加区では、Bmal1の発現周期は24時間以上で、12~18時間と明確なピークのない不規則あるいは異常な発現リズムが確認された。図3の過酸化水素添加区/ネムノキ抽出物添加区では、Bmal1の発現周期はほぼ24時間で、10~12時間にピークを有する、正常な発現リズムに近しい状態であることが確認された。
【0086】
上記の結果から、ネムノキ抽出物により、表皮細胞において過酸化水素による酸化ストレスで生じた、不規則あるいは異常な時計遺伝子の発現リズムを抑制あるいは予防する作用が明らかとなった。
【0087】
実施例2:皮膚外用剤の処方
以下に、本発明におけるネムノキ抽出物含有組成物の皮膚外用剤としての処方例を示す。これらの製剤は、いずれもネムノキ抽出物に起因する、時計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防する効果が期待される。
【0088】
化粧水
下記組成に従い、化粧水を常法により調製した。
・精製水・・・89.80g
・グリセリン・・・3.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ペンチレングリコール・・・1.00g
・ネムノキ抽出物・・・1.00g
【0089】
ジェル
下記組成に従い、ジェルを常法により調製した。
・精製水・・・88.50g
・カルボマー・・・0.30g
・キサンタンガム・・・0.10g
・アルギニン・・・0.40g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ネムノキ抽出物・・・0.50g
【0090】
クリーム
下記組成に従い、クリームを常法により調製した。
・精製水・・・58.50g
・ブチレングリコール・・・10.00g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・エチルヘキシルグリセリン・・・0.20g
・スクワラン・・・10.00g
・オリーブ油・・・10.00g
・ベヘニルアルコール・・・2.50g
・ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10・・・1.90g
・ステアロイル乳酸Na・・・0.60g
・パルミチン酸セチル・・・1.00g
・ネムノキ抽出物・・・0.10g
【0091】
実施例3:紅斑抑制試験
前記ネムノキ樹皮抽出物を被験試料として用い、下記試験方法により紅斑抑制試験を実施した。
【0092】
被験者
表1に示した通りの、20~30代の男女12名を被験者とした。被験者の平均年齢は33.8±4.9歳(21~39歳)であった。
【0093】
【表1】
【0094】
被験試料
前記ネムノキ樹皮の水抽出物(粉末)を、0.01質量%となるように30%ブチレングリコール溶液に溶解したものを被験試料として用いた。
【0095】
紫外線照射による紅斑の作製
紫外線照射は光源としてMultiport SOLAR UV Simulator Model 601 (SOLAR Light Co. Inc.、波長範囲:290~400nm、ピーク波長:356nm) を使用し、その照射強度は多機能計測システムモデルPMA2100 (SOLAR Light Co. Inc.) を用いて測定した。はじめに被験者の上腕内側に、0.64、0.80、1.00、1.25、1.56、1.95 MEDの紫外線を照射した(MED判定用照射)。照射24時間後に、各被験者のMEDを判定した(MED判定)。次に被験者毎に各々の1.5 MEDに相当する紫外線を左上腕内側に照射し、直径約1cmの色素沈着を4箇所作成した(本照射)。本照射から24時間後に、皮膚色測定を実施した。
【0096】
被験試料の使用
被験試料は、1日2回、上腕内側に適量塗布した。塗布は、MED判定用照射日、MED判定・本照射日、皮膚色測定日の3日間実施した。
【0097】
皮膚色測定
本照射前、照射1日後に、分光測色計 (CM2600d;コニカミノルタ製) を用いて、紫外線照射部位およびその隣接する非照射部位の、あらかじめ設定した解析範囲における皮膚色を測定した。紅斑の指標として、a*値を用いた。各部位を3~7回測定し、安定した3回の測定値の平均値を用いた。紅斑の程度として、Δa*値=a*値 (紫外線照射部位)-a*値 (非照射部位)を算出した。さらに、被験試料塗布区と無塗布区について、Δa*値(24時間後)-Δa*値(照射前)を算出し、比較を行うことで、紅斑抑制の程度を評価した。
【0098】
得られた結果を図4に示す。被験試料塗布区を無塗布区と比較した結果、被験試料塗布区において、Δa*値の変化(照射前から照射24時間後の変化)が抑えられた。このことから、紫外線照射によって誘発された皮膚の紅斑を抑制することが確認された。
【0099】
実施例4:皮膚外用組成物の処方
以下に、本発明におけるネムノキ樹皮抽出物を含有する皮膚外用組成物としての処方例を示す。これらの製剤は、いずれもネムノキ樹皮抽出物に起因する紅斑抑制効果が期待され、抗炎症剤として有効なものである。
【0100】
化粧水
下記組成に従い、化粧水を常法により調製した。
・精製水・・・89.80g
・グリセリン・・・3.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ペンチレングリコール・・・1.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・1.00g
【0101】
ジェル
下記組成に従い、ジェルを常法により調製した。
・精製水・・・88.50g
・カルボマー・・・0.30g
・キサンタンガム・・・0.10g
・アルギニン・・・0.40g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・0.50g
【0102】
クリーム
下記組成に従い、クリームを常法により調製した。
・精製水・・・58.50g
・ブチレングリコール・・・10.00g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・エチルヘキシルグリセリン・・・0.20g
・スクワラン・・・10.00g
・オリーブ油・・・10.00g
・ベヘニルアルコール・・・2.50g
・ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10・・・1.90g
・ステアロイル乳酸Na・・・0.60g
・パルミチン酸セチル・・・1.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・0.10g
【0103】
実施例5:糖化抑制試験
前記ネムノキ樹皮抽出物を被験試料として用い、下記試験方法により糖化抑制試験を実施した。
【0104】
10mLのPBSに対し、牛血清アルブミン(BSA;RIAグレード)を1.6g、およびD-グルコースを3.0gの割合で溶解させたBSA-グルコース混合液を調製した。該溶液を0.45μmフィルターでろ過した後、該溶液に対して、被験試料(粉末)を1.0質量%溶解した、30%ブチレングリコール(BG)溶液を10%添加し、45℃にて10日間インキュベーションした。なお、コントロール添加区として、上記試料中にBGが30%含まれるため、30%BG溶液を10%添加した水準を調製した。なお、同様に調製した混合試料を-80℃にて保存し、陰性コンロール群とした。10日後、各反応液を精製水にて10倍希釈し、96穴マイクロプレートに100μmLずつ分注した。次いで、終濃度250μmol/LのNBD-H(4-Hydrazino-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole Hydrazine)を、終濃度0.025%のトリフルオロ酢酸存在下で添加した。遮光環境下にて、室温で15分反応させ、蛍光強度をマイクロプレートリーダーにて測定した(Ex/Em=470nm/550nm)。反応液中のカルボニル基量は、プロピオンアルデヒドによって同時に作成した検量線より求めた。
【0105】
得られた結果を表2及び図5に示す。被験試料添加区については、コントロール添加区と比較して、カルボニル基の有意な減少が確認された。このことから、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を抑制することが確認された。
【0106】
【表2】
【0107】
実施例6:皮膚外用組成物の処方
以下に、本発明におけるネムノキ樹皮抽出物を含有する皮膚外用組成物としての処方例を示す。これらの製剤は、いずれもネムノキ樹皮抽出物に起因する抗糖化効果が期待され、抗糖化剤として有効なものである。
【0108】
化粧水
下記組成に従い、化粧水を常法により調製した。
・精製水・・・89.80g
・グリセリン・・・3.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ペンチレングリコール・・・1.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・1.00g
【0109】
ジェル
下記組成に従い、ジェルを常法により調製した。
・精製水・・・88.50g
・カルボマー・・・0.30g
・キサンタンガム・・・0.10g
・アルギニン・・・0.40g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・ブチレングリコール・・・5.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・0.50g
【0110】
クリーム
下記組成に従い、クリームを常法により調製した。
・精製水・・・58.50g
・ブチレングリコール・・・10.00g
・グリセリン・・・5.00g
・フェノキシエタノール・・・0.20g
・エチルヘキシルグリセリン・・・0.20g
・スクワラン・・・10.00g
・オリーブ油・・・10.00g
・ベヘニルアルコール・・・2.50g
・ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10・・・1.90g
・ステアロイル乳酸Na・・・0.60g
・パルミチン酸セチル・・・1.00g
・ネムノキ樹皮抽出物・・・0.10g
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のネムノキ抽出物含有組成物を利用することにより、正常な時計遺伝子の発現リズムと比較して、不規則あるいは異常な時計遺伝子の発現リズムを示す皮膚細胞に対して、時計遺伝子の発現リズムの異常を抑制または予防することが可能となり、時計遺伝子の発現リズムの乱れに起因する様々な疾患及び症状を防ぐことが期待される。また、本発明のネムノキ樹皮抽出物を含有する抗炎症剤または皮膚外用組成物を利用することにより、紫外線等によって誘発される紅斑を抑制することが可能となり、抗炎症剤としての利用が期待される。さらに、本発明のネムノキ樹皮抽出物を含有する抗糖化剤及び皮膚外用組成物を利用することにより、タンパク質と糖の反応によって生じる糖化生成物の生成を効果的に抑制することが可能となり、抗糖化症剤としての利用が期待される。いずれも、特に化粧品、あるいは医薬部外品として、皮膚外用剤への適用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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