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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102305
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 11/04 20060101AFI20250701BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20250701BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20250701BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20250701BHJP
   A01D 69/10 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B62D11/04 C
B60T1/06 F
F16D55/40 F
A01D67/00 F
A01D69/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219653
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克朋
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 鷹人
【テーマコード(参考)】
2B076
3D052
3J058
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA07
2B076CC02
2B076DA14
2B076DB08
2B076DB09
3D052AA17
3D052DD03
3D052EE01
3D052FF03
3D052GG04
3D052HH02
3D052JJ01
3D052JJ21
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA59
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA62
3J058BA67
3J058CC03
3J058CC78
3J058CD34
3J058DB20
3J058FA06
3J058FA12
3J058GA92
(57)【要約】
【課題】従来、一つの無段変速装置から左右の走行クローラに伝動しているので、旋回時に旋回内側の走行クローラを減速させる強い制動力のあるブレーキ装置を左右に各々設ける必要があり、構造の複雑化や大型化の原因となっている。
【解決手段】圃場を走行する左右の走行装置2と、対地作業を行う対地作業装置4と、走行速度及び進行方向(前後進、左右旋回)を変更する無段変速装置(HST)20と、無段変速装置20を操作する走行操作レバー21とを、備える作業車両において、走行装置2に伝動する無段変速装置20を左右一対配置し、左右の無段変速装置20の駆動軸駆動軸22のそれぞれに制動を付与する制動付与機構23を設け、制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力とすることを特徴とする作業車両。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する左右の走行装置(2)と、対地作業を行う対地作業装置(4)と、走行速度及び進行方向(前後進、左右旋回)を変更する無段変速装置(HST)無段変速装置(20)と、無段変速装置(20)を操作する走行操作レバー(21)とを、備える作業車両において、走行装置(2)に伝動する無段変速装置(20)を左右一対配置し、左右の無段変速装置(20)の駆動軸駆動軸(22)のそれぞれに制動を付与する制動付与機構(23)を設け、制動付与機構(23)の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力とすることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
左右の走行装置(2)の車軸(24)の回転数を検出する回転センサ(25)を設け、走行操作レバー(21)の前後方向の操作量(=前後進及び変速操作)を検出するレバーポテンショメータ(26)を設け、作業操作レバー(19)の左右方向の操作を検出する旋回センサ(27)を設け、レバーポテンショメータ(26)の検出値が低速域であるとき、旋回センサ(27)が第1操作量を検出するか、レバーポテンショメータ(26)の検出値が低速域以上の領域であるとき、旋回センサ(27)が第1操作量未満且つ第2操作量以上(微量操作)を検出するか、または、旋回センサ(27)が未検出状態であり、且つ左右の走行速度の回転差が一定以上であるとき、制動付与機構(23)の制動を解除することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
制動付与機構(23)は、制動力を可変可能な構成とし、レバーポテンショメータ(26)の検出値が低速域であるときは、制動力を「弱」とし、低速域以上であるときは、制動力を「強」とするようにし、上記の制動力は、レバーポテンショメータ(26)の検出値の増減により、それぞれの範囲内で変化する構成としたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
対地作業装置(4)から供給される回収物(穀粒)を貯留する貯留装置(グレンタンク)(5)を設け、貯留装置(5)に容量センサ(重量またはエリアセンサ)(32)を設け、容量センサ(32)の検出する回収物の貯留量が増加するほど、制動付与機構(23)の制動力を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
機体を操縦する操縦部(6)に、操縦者の温度を検知(識別)する熱検知センサ(サーマルカメラ)(33)を設け、操縦部(6)のキーオン時に熱検知センサ(33)が、記録されている作業者とみなし得る位置に所定値以上の温度を検知していないと、駆動源(36)を始動させない構成とし、熱検知センサ(33)が操縦者を検知しない(降車した)ときは、走行装置(2)及び作業装置への駆動源(36)の駆動伝動を遮断する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
操縦部(6)に設けた運転席(34)の温度を調節する温度調節具シートエアコン(38)を設け、熱検知センサ(33)で検出した操縦者の体温(体表温度)に合わせて、シートエアコン(38)の温度を調節する構成とし、熱検知センサ(33)の検出体温が所定値未満であるときは、外気が低温であり駆動源(36)始動等に影響があることを報知する構成としたことを特徴とする請求項5に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンからの駆動力により可変ポンプを作動させ、作動油の送油方向や送油量を変更することで進行方向及び走行出力を変更する油圧モータを備える無段変速装置を備えており、これにより走行速度の増減や停止、ならびに前後進を切り替える構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-156439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、一つの無段変速装置から左右の走行クローラに伝動しているので、旋回時に旋回内側の走行クローラを減速させる強い制動力のあるブレーキ装置を左右に各々設ける必要があり、構造の複雑化や大型化の原因となっている。
また、直進走行時には基本的に制動力がかかっていないので、左右の走行クローラの駆動速度に差が生じ、これが累積していくと進行方向が少しずつ左右方向にズレていくことがあり、作業位置が重複して作業能率が低下することや、作業されない位置が発生して余分な作業に時間と労力が必要となる問題がある。
本願は、変速装置の構成を工夫し、直進安定性に優れた走行装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、圃場を走行する左右の走行装置2と、対地作業を行う対地作業装置4と、走行速度及び進行方向(前後進、左右旋回)を変更する無段変速装置(HST)20と、無段変速装置20を操作する走行操作レバー21とを、備える作業車両において、走行装置2に伝動する無段変速装置20を左右一対配置し、左右の無段変速装置20の駆動軸駆動軸22のそれぞれに制動を付与する制動付与機構23を設け、制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力とすることを特徴とする作業車両としたものである。
請求項2の発明は、左右の走行装置2の車軸24の回転数を検出する回転センサ25を設け、走行操作レバー21の前後方向の操作量を検出するレバーポテンショメータ26を設け、作業操作レバー19の左右方向の操作を検出する旋回センサ27を設け、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域であるとき、旋回センサ27が第1操作量を検出するか、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域以上の領域であるとき、旋回センサ27が第1操作量未満且つ第2操作量以上を検出するか、または、旋回センサ27が未検出状態であり、且つ左右の走行速度の回転差が一定以上であるとき、制動付与機構23の制動を解除することを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
請求項3の発明では、制動付与機構23は、制動力を可変可能な構成とし、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域であるときは、制動力を「弱」とし、低速域以上であるときは、制動力を「強」とするようにし、上記の制動力は、レバーポテンショメータ26の検出値の増減により、それぞれの範囲内で変化する構成としたことを特徴とする請求項2に記載の作業車両としたものである。
請求項4の発明では、対地作業装置4から供給される回収物(穀粒)を貯留する貯留装置(グレンタンク)5を設け、貯留装置5に容量センサ(重量またはエリアセンサ)32を設け、容量センサ32の検出する回収物の貯留量が増加するほど、制動付与機構23の制動力を増加させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両としたものである。
請求項5の発明では、機体を操縦する操縦部6に、操縦者の温度を検知(識別)する熱検知センサ(サーマルカメラ)33を設け、操縦部6のキーオン時に熱検知センサ33が、記録されている作業者とみなし得る位置に所定値以上の温度を検知していないと、駆動源(エンジン・モーター)36を始動させない構成とし、熱検知センサ33が操縦者を検知しない(降車した)ときは、走行装置2及び作業装置への駆動源36の駆動伝動を遮断する(クラッチ切、または無段変速装置20を中立化)構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両としたものである。
請求項6の発明では、操縦部6に設けた運転席34の温度を調節する温度調節具シートエアコン38を設け、熱検知センサ33で検出した操縦者の体温(体表温度)に合わせて、シートエアコン38の温度を調節する構成とし、熱検知センサ33の検出体温が所定値未満(例:36度未満)であるときは、外気が低温であり駆動源36始動等に影響があることを報知する構成としたことを特徴とする請求項5に記載の作業車両としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、走行装置2に伝動する無段変速装置20を左右一対配置し、左右の無段変速装置20の各駆動軸(出力軸)22のそれぞれに制動を付与する制動付与機構23を設け、制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力としているので、直進走行中であっても、左右の車軸24のうち、車軸24の回転に回転差(速度差)が生じると、無段変速装置20の駆動軸22に制動付与機構23により制動力を付与し、左右車軸24の回転数のばらつきを修正する。
また、制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力より弱くなるように設定しているので、機体旋回時に左右の車軸24の速度差が生じても、制動付与機構23を非作動状態とし、制動による無駄なエネルギーロスを発生させずに、円滑に機体旋回が可能となる。
さらに、左右一対の無段変速装置20を配置するが、従来のように左右の車軸に伝達する回転を入切するクラッチやブレーキを設け、複雑にギアを切り替えることなく変速や旋回を行えるので、走行伝動系の簡略化が図ることができる。
請求項2の発明では、左右の走行装置2の車軸24の回転数を検出する回転センサ25を設け、走行操作レバー21の前後方向の操作量(=前後進及び変速操作)を検出するレバーポテンショメータ26を設け、作業操作レバー19の左右方向の操作(左右の旋回操作)を検出する旋回センサ27を設け、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域(=操作角度小さい)であるとき、旋回センサ27が第1操作量を検出するか、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域以上の領域であるとき、旋回センサ27が第1操作量未満且つ第2操作量以上(微量操作)を検出するか、または、旋回センサ27が未検出状態であり、且つ左右の走行速度の回転差が一定以上であるとき、制動付与機構23の制動を解除するので、低速走行中(通常では刈取作業を想定)は作業操作レバー19が十分に旋回方向に操作されるまで制動付与機構23の制動を解除しないことにより、意図しないタイミングで左右の走行装置2に速度差が生じることを防止でき、直進性が維持される。
低速以上での走行中(圃場内の移動走行や路上走行を想定)には作業操作レバー19を少し左右方向に動かすと制動付与機構23が解除されるので、旋回走行を行う際にすぐに旋回を開始でき、機体の操作に対する追従性が向上する。
作業操作レバー19を旋回操作していない状況で走行速度に所定以上の左右差が生じると、制動付与機構23を解除することにより、異常発生時にブレーキ機構が破損することを防止できる。
請求項3の発明では、制動付与機構23は、制動力を可変可能な構成とし、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域であるときは、制動力を「弱」とし、低速域以上であるときは、制動力を「強」とするようにし、上記の制動力は、レバーポテンショメータ26の検出値の増減により、それぞれの範囲内で変化する構成としているので、走行操作レバー21の走行速度の操作に合わせて制動力の強弱が設定されることにより、走行速度が速くても直進走行時に進路が乱れることを防止できると共に、旋回操作時に制動付与機構23が速やかに変化するので、制動付与機構23にかかる負荷を軽減できる。
走行速度設定の変更時にも強弱が変更される構成により、制動力が細やかに変更されるので、旋回性を向上させることができる。
請求項4の発明では、対地作業装置4から供給される回収物(穀粒)を貯留する貯留装置(グレンタンク)5を設け、貯留装置5に容量センサ(重量またはエリアセンサ)32を設け、容量センサ32の検出する回収物の貯留量が増加するほど、制動付与機構23の制動力を増加させるので、貯留される回収物による機体左右方向の重量バランス変動が生じても、制動力が強くなることで機体の進行方向のズレが抑えられ、操作性を向上させることができる。
請求項5の発明では、機体を操縦する操縦部6に、操縦者の温度を検知(識別)する熱検知センサ(サーマルカメラ)33を設け、操縦部6のキーオン時に熱検知センサ33が、記録されている作業者とみなし得る位置に所定値以上の温度を検知していないと、駆動源(エンジン・モーター)36を始動させない構成とし、熱検知センサ33が操縦者を検知しない(降車した)ときは、走行装置2及び作業装置への駆動源36の駆動伝動を遮断する(クラッチ切、または無段変速装置20を中立化)構成としているので、操縦者が操縦部6にて搭乗姿勢でいないと、キー操作しても駆動源36が始動しないことにより、始動時の操縦者の安全を確保することができる。
請求項6の発明では、操縦部6に設けた運転席34の温度を調節する温度調節具38を設け、熱検知センサ33で検出した操縦者の体温(体表温度)に合わせて、温度調節具38の温度を調節する構成とし、熱検知センサ33の検出体温が所定値未満(例:36度未満)であるときは、外気が低温であり駆動源36始動等に影響があることを報知する構成としているので、温度調節具38の温度調節が操縦者の体温に合わせて行われることにより、操縦者は作業に集中しつつ適温を確保できるので、作業能率が向上する。
また、操縦者の体温から低温環境であると判断したときに報知することにより、暖機運転を促すことができるので、低温環境でもエンジンに負荷をかけずに作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】作業車両(コンバイン)の側面図。
図2】同平面図。
図3】走行装置の伝動経路略図。
図4】同他の実施形態図。
図5】同他の実施形態図。
図6】操縦部の平面図。
図7】制動付与機構の作用状態説明図。
図8】同他の実施形態の作用状態説明図。
図9】作業車両(コンバイン)の背面図。
図10】操作パネルの斜視図。
図11】同一部平面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面により説明すると、1は機体フレ-ム(車体フレーム)、2は機体フレ-ム1の下方位置に設けた圃場を走行する走行装置、3は機体フレ-ム1の上方位置に設けた選別装置(脱穀装置)であり、走行装置2の前方に作物を処理する対地作業を行う対地作業装置4を設け、対地作業装置4が処理した作物を収容する貯留装置(貯留タンク・グレンタンク)5を設ける。6は操縦部である。
なお、本発明を説明するにあたり、理解を容易にするため、作業車両の走行方向を基準に前後・左右・上下等の方向を示して説明するが、これにより、本発明の構成が限定されることはない
走行装置2は、左右一対の走行クローラー10を有して構成する。走行クローラー10は走行フレーム(クローラーフレーム・転輪フレーム)11の前側に設けた駆動回転体(駆動輪)12と後側に設けた調圧回転体(遊動輪・テンションローラー)13の間に複数設けた転輪15の外周に掛け回して構成する。
【0009】
すなわち、圃場を走行する左右の走行装置2と、対地作業を行う対地作業装置4と、走行速度及び進行方向(前後進、左右旋回)を変更する無段変速装置(HST)20と、無段変速装置20を操作する走行操作レバー21とを、備える作業車両において、走行装置2に伝動する無段変速装置20を左右一対配置し、左右の無段変速装置20の各駆動軸(出力軸)22のそれぞれに制動を付与する制動付与機構23を設け、制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力とする。
基本的には、走行操作レバー21を前進操作すると、左右の無段変速装置20は同一回転数を左右の走行クローラー10に出力し、作業操作レバー19を左右何れかに傾倒操作すると、機体を旋回させる。この旋回構成は、任意であるが、一例示すと、左右の無段変速装置20のうち、一方の無段変速装置20を増速(または減速)させて、緩旋回し、左右の無段変速装置20のうち、一方の無段変速装置20を増速し、他方の無段変速装置20を減速させると、急旋回し、左右の無段変速装置20のうち、一方の無段変速装置20を前進回転させ、他方の無段変速装置20を後進回転させると、所謂スピンターンと称される、その場で方向変換する旋回を実行可能となる。
【0010】
この場合、機体を直進走行操作すると、左右の無段変速装置20は駆動回転体12の車軸24に同じ出力回転を出力するが、左右の車軸24は走行抵抗等によって回転数が相違することがあり、これにより、機体の走行方向が左右に微妙にずれることがあり、直進安定性に欠けることがある。
そこで、直進走行中であっても、左右の車軸24のうち、一方の車軸24の回転に回転差(速度差)が生じると、無段変速装置20の駆動軸22に制動付与機構23により制動力を付与し、左右車軸24の回転数のばらつきを修正する。
制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力より弱くなるように設定し、左右の車軸24の速度差や進行方向により総合的に判定して旋回が可能となるようにしている。
すなわち、従来の走行装置では、ミッションケース内で左右の車軸24のうち、一方の車軸24の回転にブレーキを掛けて機体を旋回させていたが、このようなブレーキ力を付与することと区別し、左右の車軸24の回転差を修正するために、一方の車軸24に制動力を付与しており、旋回させるためのブレーキ力と区別して、そのため、「制動付与機構23の制動力は、機体を旋回させる旋回力よりも低い力とする」と表現している。
【0011】
したがって、制動付与機構23が制動力を回転軸24に付与しても、機体は旋回せず、むしろ。直進性を向上させられる。
換言すると、機体旋回中と判定されたときは、制動付与機構23による制動は実行しない。
そのため、左右の無段変速装置20の出力変化で左右の走行装置2の駆動速度を変更することで、従来のように複雑にギアを切り替えることなく変速や旋回を行えるので、走行伝動系の簡略化が図られる。
制動付与機構23を無段変速装置20の左右間に設け、これにより、直進走行時に左右の走行クローラー10の駆動速度に差が生じようとしても、制動付与機構23が高速側を減速させるので、進行方向を直進に保つことができる。
【0012】
また、旋回時を妨げない程度の制動力であることにより、旋回走行時が円滑になる。
左右の走行装置2の車軸24の回転数を検出する回転センサ25を設け、走行操作レバー21の前後方向の操作量(=前後進及び変速操作)を検出するレバーポテンショメータ26を設け、作業操作レバー19の左右方向の操作(左右の旋回操作)を検出する旋回センサ27を設け、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域(=操作角度小さい)であるとき、旋回センサ27が第1操作量を検出するか、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域以上の領域であるとき、旋回センサ27が第1操作量未満且つ第2操作量以上(微量操作)を検出するか、または、旋回センサ27が未検出状態であり、且つ左右の走行速度の回転差が一定以上であるとき、制動付与機構23の制動を解除するので、低速走行中(通常では刈取作業を想定)は作業操作レバー19が十分に旋回方向に操作されるまで制動付与機構23の制動を解除しないことにより、意図しないタイミングで左右の走行装置2に速度差が生じることを防止でき、直進性が維持される。
【0013】
低速以上での走行中(圃場内の移動走行や路上走行を想定)には作業操作レバー19を少し左右方向に動かすと制動付与機構23が解除されるので、旋回走行を行う際にすぐに旋回を開始でき、機体の操作に対する追従性が向上する。
作業操作レバー19を旋回操作していない状況で走行速度に所定以上の左右差が生じると、制動付与機構23を解除することにより、異常発生時にブレーキ機構が破損することを防止できる。
旋回センサ27は、左右の傾倒操作量(押し込み量)を多段階で検出可能な感圧式の構成とし、本実施形態では、少なくとも、第1操作量と第2操作量の2段階を検出する構成としている。
そのため、低速走行中(通常では刈取作業を想定)は作業操作レバー19が十分に旋回方向に操作されるまで制動付与機構23の制動を解除しないことにより、意図しないタイミングで左右の走行装置2に速度差が生じることを防止でき、直進性が維持される。
【0014】
低速以上での走行中(圃場内の移動走行や路上走行を想定)には作業操作レバー19を少し左右方向に動かすと制動付与機構23が解除されるので、旋回走行を行う際にすぐに旋回を開始でき、機体の操作に対する追従性が向上する。
作業操作レバー19を旋回操作していない状況で走行速度に所定以上の左右差が生じると、制動付与機構23を解除することにより、異常発生時にブレーキ機構が破損することを防止できる。
この場合、操縦部6に設けた副変速レバー28によっても、低速走行の「作業」と通常走行速度の「走行」とを切替可能な構成とし、副変速レバー28の切替変速操作により、制動付与機構23の作動を切り替えられるようにしてもよい。
制動付与機構23は、制動力を可変可能な構成とし、レバーポテンショメータ26の検出値が低速域であるときは、制動力を「弱」とし、低速域以上であるときは、制動力を「強」とするようにし、上記の制動力は、レバーポテンショメータ26の検出値の増減により、それぞれの範囲内で変化する構成とする。
【0015】
制動付与機構23は、油圧や電動モータにより制動力を可変可能な構成とする。
すなわち、図7のように、制動付与機構23はディスク押さえ体(一方側ドラム)29Aとディスクキャリパー(他方側ドラム)29Bとを設け、ディスクキャリパー29Bに設けた多板ディスク30を油圧シリンダや電動モータ等のアクチュエーター31により圧接させて制動力を付与する構成とする。
図7Aでは、多板ディスク30は押さえられておらず、車軸24は出力通りに回転可能であり、制動付与機構23の制動OFF状態である。
図7Bでは、アクチュエーター31の作動によりディスクキャリパー(他方側ドラム)29Bが移動し、一部の多板ディスク30が接触することで、摩擦抵抗により車軸24の回転が遅くなる。
左右の無段変速装置20から車軸24に伝わる回転数を減少させ、左右の回転数の差の発生を抑える。
【0016】
図7Cでは、アクチュエーター31の作動によりディスクキャリパー29Bが移動し、多板ディスク30同士を全て接触させることにより、より車軸24の回転に抵抗を与え、左右の走行クローラー10の速度差がより強力に抑えらる。
図8Aでは、ディスクキャリパー29Bが多板ディスク30を押さえておらず、車軸24は出力通りに回転可能である。
この場合、調節ノブ71を設ける場合と、レバーポテンショメータ26の検出によるブレーキ力自動調節は併存させることはできず、機体停止時に適宜手動で調節することになる。
図8Bでは、ノブ71の作動によりディスクキャリパー29Bが移動し、一部の多板ディスク30が接触することで、摩擦抵抗により車軸24の回転が遅くなり、左右の走行クローラー10の速度差の発生をなるべく押える。
【0017】
図8Cでは、多板ディスク30同士を全て接触させることにより、摩擦力がさらに強くなり、左右走行クローラー10の回転差の発生を抑制する。
また、この多板ディスク30の圧接させる制動力をまず「弱」及び「強」の2段階とし、さらに、「弱」及び「強」のそれぞれを複数段階に分け、例えば「弱の1~弱の5」や「強の1~強の5」のそれぞれ5段階としてもよい。
この制動付与機構23の「弱の1~弱の5」や「強の1~強の5」の切替構成は任意であり、仮に「弱」が0.1度~15度、「強」が15.1度以上~60度の範囲で判定される場合、レバーポテンショメータ26の検出段階を、各々複数段階(例:5段階)に分けてプログラムする。
【0018】
例えば、弱1…0.1~2.9度 弱2…3.0~5.9度 弱3…6.0~8.9度
弱4…9.0~11.9度 弱5…12.0~15.0度
強1…15.1~23.9度 強2…24.0~32.9度
強3…33.0~41.9度 強4…42.0~50.9度
強5…51.0~60.0度
という分け方となり、
作業操作レバー19のレバーポテンショメータ26の検出角度に合わせて、多板ディスク30の噛み合いをアクチュエータ31で変化させる。
なお、アクチュエータ31による多板ディスク30の噛み合いを、上記の多段階よりもさらに細かくし、レバーポテンショメータ26の検出値の変動により多板ディスク30の噛み合いが微細に調節される構成、即ち、無段階の制動力調整が可能な構成とすることも可能である。
【0019】
そのため、走行操作レバー21の走行速度の操作に合わせて制動力の強弱が設定されることにより、走行速度が速くても直進走行時に進路が乱れることを防止できると共に、旋回操作時に制動付与機構23が速やかに変化するので、制動付与機構23にかかる負荷を軽減できる。
走行速度設定の変更時にも強弱が変更される構成により、制動力が細やかに変更されるので、旋回性が向上する。
対地作業装置4から供給される回収物(穀粒)を貯留する貯留装置(グレンタンク)5を設け、貯留装置5に容量センサ(重量またはエリアセンサ)32を設け、容量センサ32の検出する回収物の貯留量が増加するほど、制動付与機構23の制動力を増加させる。
そのため、貯留される回収物による機体左右方向の重量バランス変動が生じても、制動力が強くなることで機体の進行方向のズレが抑えられ、操作性が向上する。
【0020】
機体を操縦する操縦部6に、操縦者の温度を検知(識別)する熱検知センサ(サーマルカメラ)33を設け、操縦部6のキーオン時に熱検知センサ33が、記録されている作業者とみなし得る位置に所定値以上の温度を検知していないと、駆動源(エンジン・モーター)36を始動させない構成とし、熱検知センサ33が操縦者を検知しない(降車した)ときは、走行装置2及び作業装置への駆動源36の駆動伝動を遮断する(クラッチ切、または無段変速装置20を中立化)構成とする。
すなわち、操縦部6の操作席運転席34に作業者が着座したことを検出できるように、操縦部6となるキャビン35内の所定位置に熱検知センサ33を設け、熱検知センサ33が作業者を検出すると、駆動源36の始動可能と構成する。
そして、熱検知センサ33が作業者を検出しないときは、走行装置2及び作業装置への駆動源36の駆動伝動を遮断するが、駆動伝動の遮断は伝動経路に設けたクラッチ(図示省略)の切断や、あるいは、無段変速装置20の中立化により行う。
【0021】
無段変速装置20のトラニオン軸(図示省略)の開度を調整するトラニオンアーム(図示省略)は、トラニオンアーム用の回動モータ(図示省略)で回動操作され、前後進出力の増減を行うが、その回動範囲内には出力0状態となる中立域があり、制御条件が整うと、回動モータが作動してトラニオンアームを回動させ、中立域に移動させることで、無段変速装置20の出力が0になって、無段変速装置20の中立化が実行される。
したがって、前後進の出力方向切替、及び出力増減は、レバーポテンショメータ26の検出角度に合わせて回動モータが作動することで行う。
そのため、操縦者が操縦部6にて搭乗姿勢でいないと、キー操作しても駆動源36が始動しないことにより、始動時の操縦者の安全が確保される。
【0022】
すなわち、農業作業機の操縦部6は基本的に地面より高い位置にあるので、機外から操作する作業者や、操縦部6に乗り込み中で運転席に着座しないうちから運転席34の始動操作する場合があり、安全が確保されないことがある。
本発明では、熱検知センサ33が作業者を検出しないときは、走行系統や作業系統への伝動を遮断することにより、安全が確保される。
また、操縦者が操縦部6から降車して熱検知センサ33により検知されなくなると、走行系統や作業系統への伝動を遮断することにより、機体が急に動きだすことや、駆動中に触れると危険な部分に操縦者が接触することを防止できる。
操縦部6に設けた運転席34の温度を調節する温度調節具38を設け、熱検知センサ33で検出した操縦者の体温(体表温度)に合わせて、温度調節具38の温度を調節する構成とし、熱検知センサ33の検出体温が所定値未満(例:36度未満)であるときは、外気が低温であり駆動源36の始動等に影響があることを報知する構成とする。
【0023】
そのため、温度調節具38の温度調節が操縦者の体温に合わせて行われることにより、操縦者は作業に集中しつつ適温を確保できるので、作業能率が向上する。
操縦者の体温から低温環境であると判断したときに報知することにより、暖機運転を促すことができるので、低温環境でもエンジンに負荷をかけずに作動させることができる。
左右の走行クローラー10を別々の無段変速装置20で駆動する構成とし、走行操作レバー21の操作量に応じて左右の無段変速装置20のトラニオン軸の開度を制御し直進、旋回を行う構成とし、左右の無段変速装置20の駆動軸駆動軸22に回転差が生じると、制動付与機構23により制動を付与する構成とし、制動力は旋回力に対して十分小さい力として、走行操作レバー21の左右傾倒操作時は制動付与機構23の多板ディスク30が滑るまでは直進する構成とする。
【0024】
この場合、「滑る」とは左右の多板ディスク30が接触しながらも回転は可能な状態を意味し、機体は直進する。
そのため、旋回時の制動力によるエネルギー損失が小さくなると共に、ミッションが簡素な構成になる。
作業操作レバー19の操作方向および操作量に応じて、左右無段変速装置20を制御して機体の直進および旋回を行う構成とし、左右の無段変速装置20の駆動軸駆動軸22を制動付与機構23で連結する構成とし、制動力は旋回力に対して十分小さい力として、低速時で且つ走行操作レバー21操作時(第1操作量までに操作)と、低速以上で且つパワステ微操作(第1操作量未満、第2操作量以上の操作)以上の操作時は制動付与機構23の作動を停止とする制御を実行する。
【0025】
なお、作業操作レバー19の操作量は少なくとも2段階検出可能なレバーポテンショメータ26と旋回センサ27により検出する構成とする。
そのため、旋回時の不必要な制動付与機構23の制動によるエネルギー損失を抑制でき、二つの無段変速装置20と制動付与機構23によりミッション70を簡素な構成にでき、さらに、直進性を確保しつつ操作性も向上する。
また、左右の無段変速装置20の駆動軸駆動軸22を制動付与機構23で連結するとは、厳密に左右の無段変速装置20の駆動軸22を物理的に連結することのみを意味するものではなく、左右の駆動軸22に回転差が生じたときに、一方の駆動軸22の回転数に関連させて他方の駆動軸22の回転数が同一回転数となるように、制動力を制動付与機構23により付与することを指し、これにより、本発明の構成は限定されない。
【0026】
制動付与機構23の制動力は旋回力に対して十分小さい力として、低速時で走行操作レバー21操作時と低速以上で走行操作レバー21の微操作以上の操作時は制動付与機構23の制動を停止させる制御を実行し、走行操作レバー21の操作をしていないときに左右回転差が大きくなり、一定時間経過した場合は、制動付与機構23の制動を停止する制御を実行する。
そのため、旋回時の不必要な制動付与機構23の制動によるエネルギー損失を抑制でき、二つの無段変速装置20と制動付与機構23によりミッション70を簡素な構成にでき、さらに、直進性を確保しつつ操作性も向上し、くわえて、制動付与機構23の多板ディスク30の保護が図れ、耐久性を向上させられる。
【0027】
なお、制動付与機構23の制動力は、ミッション70の外部よりノブ71等による手動操作により、多板ディスク30の圧接程度を調整可能な構成としてもよい。
なお、ノブ41は手動操作により行い、自動的に行うアクチュエータ31を用いる構成とは併存しない。
このミッション70の外部よりのノブ71等による手動操作により、多板ディスク30の圧接程度を調整可能な構成は、走行の停止目的ではなく、左右の走行クローラー10の速度差の発生を抑えるもので、左右の車軸にかかる摩擦抵抗を微細に調整することが目的となり、最大限締め込んでも走行速度はあまり低下しない。
そのため、旋回時の不必要な制動付与機構23の制動によるエネルギー損失を抑制でき、二つの無段変速装置20と制動付与機構23によりミッション70を簡素な構成にでき、さらに、直進性を確保しつつ操作性も向上し、くわえて、制動付与機構23の多板ディスク30の保護が図れ、耐久性を向上させられ、操作フィーリングの調整が可能となる。
【0028】
また、制動付与機構23の制動力は機体旋回力に対して十分小さい力で、且つ2段階の力に可変な構成とし、低速時は制動力弱、低速以上では制動力強にする制御を実行する構成とし、走行操作レバー21を微操作以上の操作をした場合は制動付与機構23の制動付与機構23の制動を停止する制御を実行する。
そのため、旋回時の不必要な制動付与機構23の制動によるエネルギー損失を抑制でき、二つの無段変速装置20と制動付与機構23によりミッション70を簡素な構成にでき、さらに、直進性を確保しつつ操作性も向上させられる。
制動付与機構23の制動力は、車速に応じて変化させる構成とする。
【0029】
そのため、制動力が無段階に変化するため、スムースな旋回が可能となる。
走行操作レバー21の操作量をレバーポテンショメータ26により検出して合わせて制動力付与機構23の制動力が多段階、または無段階に切り替えられる構成により、旋回時に車速を低下させると、制動力も低下し、左右の走行装置の速度差が大きく生じる旋回走行時には、制動力付与機構23による制動力が弱くなり、余分な走行抵抗をかけなくなるので、旋回走行時に走行抵抗がかかって走行軌跡がガタつくことを防止できる。
また、制動付与機構23の制動力は、貯留装置5の籾量に応じて変化させる構成とする。
すなわち、貯留装置5の収量が「零」のときには制動力は弱めとし、貯留装置5内が満杯時には制動力を強めにする。
そのため、制動力が無段階に変化するためスムースな旋回が可能となる。
湿田モード設定時には制動付与機構23の制動力を強めにする。
これにより、湿田での直進性を自動で向上させられる。
【0030】
走行操作レバー21の操作に対し、左右の無段変速装置20が同回転で出力されるように、作業操作レバー19の操作量と左右の無段変速装置20の開度を初期調整する。
そのため、直進用ブレーキOFF状態で主変速レバー操作量の複数点で左右同回転になるHST開度を記憶する
そのため、主変速レバー操作量の複数点でHST開度を記録することで、HST全域での直進性が向上する。
直進用ブレーキOFF状態で主変速レバー操作量の複数点でブレーキが滑るHST開度を記憶し、走行操作レバー21の操作時に滑る開度よりも大きい開度に制御する。
制動力付与機構23は、特に直進走行時に左右の走行装置の車軸に摩擦抵抗をかけることで、圃場の凹凸などにより一方の回転力が一時的に早くなることを防止するためのものであり、上記の「滑る」は、制動力はかかっているが、左右の無段変速装置20の出力差が制動力を超え、左右の走行装置の速度差の発生が許容される、ということを意味している。
【0031】
走行操作レバー21と作業操作レバー19とは別物であるので、作業操作レバー19による旋回(または進路調節)操作、即ち左右方向の傾倒操作が行われるとき、制動力を超えて旋回走行が始まるときの無段変速装置20の出力開度は、走行操作レバー21の操作時の制動力を超えて左右の速度差が発生する際の無段変速装置20の出力開度よりも低いものとする。
そのため、走行操作レバー21の微操作時の応答性を向上させられる。
左右の無段変速装置20は、HSTポンプ40とHSTモータ41とを別体型とし、左右の無段変速装置20の各HSTポンプ40へ駆動回転を入力させる入力軸42は左右のHSTポンプ40と共に同一軸とする構成とする(図3、5)。
そのため、左右の無段変速装置20のHSTポンプ40への入力回転が同一になり、左右の無段変速装置20の出力回転差を小さくできる。
【0032】
左右の無段変速装置20のHSTポンプ40とモータHSTモータ41とを一体型とし、HSTポンプ40の入力軸42は左右同一軸とする(図4)。
そのため、油圧配管がシンプルになる
左右の無段変速装置20のHSTの駆動軸22の回転により油圧発生させて(簡易な油圧ポンプなどで)、制動付与機構23の制動力にする構成とする。
そのため、制動付与機構23の制動力を確保できる。
操縦部6のメインキー(図示省略)をONにした際に、操縦者の温度を検知(識別)する熱検知センサ(サーマルカメラ)33にて、作業者が搭乗したことを検知する構成とし、作業者が搭乗していないとメインキーはACC状態でエンジンがかからない構成とする。
すなわち、操縦部6のキーオン操作時に熱検知センサ33が、記録されている作業者とみなし得る位置に所定値以上の温度を検知していないと、駆動源(エンジン・モーター)36を始動させない構成とし、熱検知センサ33が操縦者を検知しない(降車した)ときは、走行装置2及び作業装置への駆動源36の駆動伝動を遮断する(クラッチ切、または無段変速装置20を中立化)構成とする。
【0033】
換言すると、作業者の降車を熱検知センサ33が検知し、運転席34から作業者が離れると駆動部(走行・刈取・脱穀)を停止し、インターロック装置として機能する。
操縦部6の前面ガラス45に日射センサー(日照センサー・明暗センサー)46を設け、作業者の搭乗時に日差しを検知するとキャビン35内の前面ガラス45の内面側上部に設けたサンバイザー47を自動的に作用位置に位置させて作動させる構成とする。
なお、操縦部6を、所謂キャビンで包囲しない開放型に構成した場合、運転席34の前方所定位置にサンバイザー47を作用位置と非作用位置とに切替自在に設け、操縦部6等の所定位置に設けた日射センサー46により一定以上の日照量を検出すると、サンバイザー47を展開させて運転席34の上方を覆う作用位置にさせ、操縦部上方を覆うようにしてもよい。
【0034】
この場合、サンバイザー47は、運転席34にシートエアコン38を設けている場合には、シートエアコン38と連動させ、作業者の体温及び設定温度に応じて作動させる構成としてもよい。
なお、シートエアコン38を、冷熱どちらも対応できるようにすると、一層、作業環境を良好にできて、好適である。
また、熱検知センサ33により作業者の体表面温度等から低温始動条件と判断(外気低温と判断)した際には、操縦部6内のモニタパネル(図示省略)に低温始動時の注意事項を表示する。
この場合、「注意事項」とは、一例として、「暖機運転を行ってください」等の表示を行うとよい。
【0035】
選別装置3の後部には、機外に排出する排藁を切断しながら排出する排藁カッタ50を設ける。排藁カッタ50の下方には、排藁カッタ50で細断された排藁の拡散幅の広狭を切り替える、幅切替装置51を設ける((図9)。
排藁カッタ50は排藁搬送装置52の終端下方位置に設け、排藁カッタ50の構成は任意であるが、一例を示すと、図示は省略するが、前後に並設した回転軸に左右に所定間隔をおいてカッタ刃を複数並設し、前後の回転軸のカッタ刃を側面視において前後方向に一部重なるように配置し、排藁搬送装置52から落下する排藁を切断し、圃場に落下させる構成である。
排藁カッタ50の下方には、排藁カッタ50で細断された切断排藁が排出される排出範囲(拡散幅)を広狭に切り替える、拡散幅切替装置51を設ける。
【0036】
幅切替装置51は、左右一対の軸棒体で形成した前後方向の可変排藁体(拡散ガイド板るいは拡散ガイド棒)53を設け、可変排藁体53の基部を切替モーター54を有する位置切替部55に回動自在に取付け、可変排藁体53の先端(後端)は自由端に形成し、切替モーター54により位置切替部55に対して可変排藁体53の先端位置を左右に振り替えるように回動させ、図9において、右側に位置すると、カッタ拡散幅が[広」となり、左側に位置すると、カッタ拡散幅が[狭」となる。
この排藁カッタ50および幅切替装置51は、通常の刈取作業において有効であるが、機体を停止させた状態で行う手扱ぎ作業では排藁が排藁カッタ50の出口下に溜まり、溜まりすぎると、すき込み作業時などに、やりにくくなる。
そこで、本発明では、手こぎ時に自動で幅切替装置51の拡散状態を、「広い」側に切り換えるように制御する。
【0037】
そのため、手扱ぎ時に排藁カッタ50の出口下方に排藁がたまるを抑制できる。
また、手扱ぎ時に限らず、機体停車時には自動で幅切替装置51の拡散状態を「広い」側に切り換える制御する。
そのため、機体停車時の排藁カッタ50の出口下方に排藁がたまるを抑制でき、排藁溜まり抑制制御を、自動で実行でき、操作性を向上させられる。
機体の前傾角度が一定以上のとき、幅切替装置51の拡散切換を自動で「狭い」側に切り換える制御する。
この機体の「前傾角度」とは、圃場進入前を0度とすると、俯角となる前下がり傾斜姿勢であることを意味し、この走行状態では機体は「尻上がり」であり排藁の排出範囲が道路に面しやすく、排藁カッタ50の排藁拡散範囲が広いと風で飛散しやすくなり、掃除が大変となる。
すなわち、圃場侵入時で前下がり状態でも、圃場の穀稈を刈取・選別作業をすることがあり、このような場合は、前記したように、機体後部は圃場外であることが多く、そのまま排藁を切断・拡散させると、周囲を汚染し、その後の処理に時間を要することになる。
【0038】
そこで、本発明では、機体の前傾角度が一定以上のとき、幅切替装置51の拡散切換を自動で「狭い」側に切り換える。
そのため、排藁をなるべく狭い箇所に排出することで、掃除等の事後処理(作業)を容易にできる。
機体を極低速走行時に自動で幅切替装置51の拡散を「広い」側に切り換える制御を実行する。
通常の刈取速度から極低速に変速すると、排藁の量は通常の刈取速度と同じ量が排出されるから、走行速度が遅い分、排藁がカッタ出口下にたまる。
そこで、極低速走行時に自動で幅切替装置51の拡散を「広い」側に切り換え、排藁排出を拡散させ、カッタ出口下に排藁がたまるのを抑制する。
幅切替装置51の位置切替部55は、電動で切換できる構成とする。
そのため、拡散切換の頻度を少なくできる。
【0039】
排藁カッタ50の可変排藁体53の幅切替装置51の拡散切換を電動で切換できる構成とし、極低速かつフィードチェン駆動している場合、かつ極低速に変速した時に対地作業装置4の穀稈有無感知センサ(図示省略)が感知している場合に自動で拡散を「広い」側に切り換える制御を実行する。
対地作業装置4に穀稈があることを穀稈有無感知センサが感知しているときには、対地作業装置4から排藁カッタ50に排藁が供給されることになるので、排藁カッタ50の可変排藁体53の幅切替装置51を「拡散」に切換る。
機体後進時には、自動で幅切替装置51を「狭い」側に切り換える。
機体後進時には道路際にで近づくとが多く、道路に排藁が飛散させないように、「狭い」側に切り換える。
【0040】
機体を後進状態から前進に操作後、一定距離進んだ後に、幅切替装置51の位置切替部55の拡散切換を元に復帰させる。
前進中も排藁が排出される場合があるため、一定距離は拡散を「狭い」側にすることで排藁をなるべく狭い箇所に排出することで掃除が容易になる。
操縦部6のサイドパネル部60にスマホ載置部61と外部電源のソケット62を搭載する。
スマホの充電ケーブルの配策の容易化および安定化が図れ、最短距離でケーブルを接続できる。
ソケット62はスマホ載置部61の下側に、外部ソケットソケット62の取り出し向きを機体後方とする。
スマホ載置部61は、サイドパネル部60の上面より下げた(凹んだ)位置に配置する。
【0041】
そのため、スマホの落下防止でき、水、ゴミ抜きが可能となり、端子が安定する。
スマホ載置部61の周囲は起立壁63で包囲し、スマホ載置部61はサイドパネル部60に対して凹部形状に形成し、この起立壁63の外周部の所定位置に切り欠き部64を一又は複数設ける。
そのため、切り欠き部64を利用してケーブルの接続や操作を行えるので、操作性を向上させられる。
スマホ載置部61の全長の幅を調整可能に構成する。
調整機構の構成は、任意であるが、一例示すと、スマホ載置部61を設けたサイドパネル部60に、側部調節プレート体65および後部調節プレート体後部調節プレート体66を移動自在に設け、側部調節プレート体65および後部調節プレート体66をスライドさせて、スマホの大きさにスマホ載置部61の大きさを合わせる。
そのため、スマホ載置部61からスマホが落下するのを防止する。
72は調節ボルトである。
【0042】
また、スマホの充電ケーブルの配策の安定化が図れ、最短距離でケーブルを接続でき、
接続および・端子が安定かでき、スマホの落下を防止でき、スマホ載置部61における水、ゴミ抜きが容易に可能となる。
後部調節プレート体66はスマホ載置部61に対してスライド自在とし、スマホ載置部61の全長の長さを調整できるようにし、調節ボルト調節ボルト67を起立壁63に設けた挿通孔に挿通して後部調節プレート体66の位置を固定する構成とする。
そのため、スマホの充電ケーブルの配策の安定化が図れ、最短距離でケーブルを接続でき、接続および・端子が安定かでき、スマホの落下を防止でき、スマホ載置部61における水、ゴミ抜きが容易に可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…選別装置、4…対地作業装置、5…貯留装置 、6…操縦部、10…走行クローラー、12…駆動回転体、19…作業操作レバー、20…無段変速装置、21…走行操作レバー、22…駆動軸、23…制動付与機構、24…車軸、25…回転センサ、26…レバーポテンショメータ、27…旋回センサ、28…副変速レバー、29…ディスク押さえ体、30…多板ディスク、31…アクチュエーター、32…容量センサ、33…熱検知センサ、34…運転席、35…キャビン、36…駆動源、38…シートエアコン、40…HSTポンプ、41…HSTモータ、42…入力軸、45…前面ガラス、46…日射センサー、47…サンバイザー、50…排藁カッタ、51…幅切替装置、52…排藁搬送装置、53…可変排藁体、54…切替モーター、55…位置切替部、60…サイドパネル部、61…スマホ載置部、62…ソケット、63…起立壁、64…切り欠き部、65…側部調節プレート体、66…後部調節プレート体、67…調節ボルト、70…ミッション、71…ノブ。
図1
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