(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102350
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20250701BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C5/00 H
B60C11/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219716
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】菱ヶ江 明
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC20
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB33U
3D131EB44U
3D131EB44X
3D131EB46U
3D131EB46X
3D131EB47U
3D131EB47X
3D131EC01U
3D131EC01V
3D131EC01X
3D131EC06X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝4と、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端が終端する、複数本の第2の幅方向溝5とを有し、前記第1の幅方向溝4と前記第2の幅方向溝5とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、一の前記第1の幅方向溝4と、該一の前記第1の幅方向溝4に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の前記第2の幅方向溝5とが対をなし、前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝4は、タイヤ幅方向外(内)側から内(外)側に向かい、前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝5は、タイヤ幅方向外(内)側から内(外)側に向かって、タイヤ周方向他方側に延びる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に、1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有する、空気入りタイヤであって、
前記周方向主溝とトレッド端との間又は前記周方向主溝間に区画された、複数の陸部を有し、
車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有し、
前記第1の幅方向溝と前記第2の幅方向溝とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、
一の前記第1の幅方向溝と、該一の前記第1の幅方向溝に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の前記第2の幅方向溝とが対をなし、
前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向他方側に延び、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向内側端は、前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向内側端よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
一端が前記第1の幅方向溝の他端に連通する浅溝をさらに備え、
前記浅溝の溝深さは、前記第1の幅方向溝の溝深さよりも浅く、
前記浅溝の他端は、前記周方向主溝に連通することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記浅溝の溝深さは、2.5mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記浅溝は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記浅溝は、前記第1の幅方向溝のタイヤ周方向一方側の端部に連通している、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1の幅方向溝、前記第2の幅方向溝、及び前記浅溝は、前記車両装着時最外側陸部のみに設けられている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2の幅方向溝は、車両装着時外側のトレッド端に連通する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
トレッド踏面に、1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有する、空気入りタイヤであって、
前記周方向主溝とトレッド端との間又は前記周方向主溝間に区画された、複数の陸部を有し、
車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有し、
前記第1の幅方向溝と前記第2の幅方向溝とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、
一の前記第1の幅方向溝と、該一の前記第1の幅方向溝に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の前記第2の幅方向溝とが対をなし、
前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向他方側に延び、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端は、前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
一端が前記第1の幅方向溝の他端に連通する浅溝をさらに備え、
前記浅溝の溝深さは、前記第1の幅方向溝の溝深さよりも浅く、
前記浅溝の他端は、前記周方向主溝に連通することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記浅溝の溝深さは、2.5mm以下である、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記浅溝は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びる、請求項7又は8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記浅溝は、前記第1の幅方向溝のタイヤ周方向一方側の端部に連通している、請求項7又は8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記第1の幅方向溝、前記第2の幅方向溝、及び前記浅溝は、前記車両装着時最外側陸部のみに設けられている、請求項7又は8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第2の幅方向溝は、車両装着時外側のトレッド端に連通する、請求項7又は8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行速度が150km/hを超えるような高速走行する空気入りタイヤにおいては、車両装着時外側のショルダー陸部に、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝を配置することにより、陸部の剛性を適度に緩和してグリップ性能の向上を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021/054261号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような技術では、主に同じ方向に延在する複数本の幅方向溝(71)を配列しているため、幅方向溝の延在方向からの入力に対しては剛性が高い一方で、例えば幅方向溝の延在方向に対して鉛直方向からの入力に対しては剛性が低く、陸部が変形しやすいという問題があり、グリップ性能の向上には改善の余地があった。
【0005】
本発明は、グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド踏面に、1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有する、空気入りタイヤであって、
前記周方向主溝とトレッド端との間又は前記周方向主溝間に区画された、複数の陸部を有し、
車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有し、
前記第1の幅方向溝と前記第2の幅方向溝とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、
一の前記第1の幅方向溝と、該一の前記第1の幅方向溝に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の前記第2の幅方向溝とが対をなし、
前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向他方側に延び、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向内側端は、前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向内側端よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
一端が前記第1の幅方向溝の他端に連通する浅溝をさらに備え、
前記浅溝の溝深さは、前記第1の幅方向溝の溝深さよりも浅く、
前記浅溝の他端は、前記周方向主溝に連通することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0007】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した状態において、路面と接することとなるトレッド外表面のタイヤ周方向全周にわたる面をいう。
また、「トレッド端」とは、上記トレッド踏面のタイヤ幅方向両最外側点をいう。
また、「周方向主溝」とは、タイヤ周方向に延びる溝であって、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態における溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。
また、「第1の幅方向溝」とは、タイヤ幅方向に延びる溝であって、前記基準状態における溝幅(開口幅)がその延在長さの80%以上にわたって2mm以上のものをいい、「第2の幅方向溝」とは、タイヤ幅方向に延びる溝であって、前記基準状態における溝幅(開口幅)がその延在長さの80%以上にわたって2mm以上のものをいう。
【0008】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいう。
【0009】
(2)前記浅溝の溝深さは、2.5mm以下である、前記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
(3)前記浅溝は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びる、前記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
ここで、「傾斜角度」は、浅溝が、直線状に延びていない場合は、両端を結んだ線分の傾斜角度をいうものとする。
【0011】
(4)前記浅溝は、前記第1の幅方向溝のタイヤ周方向一方側の端部に連通している、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(5)前記第1の幅方向溝、前記第2の幅方向溝、及び前記浅溝は、前記車両装着時最外側陸部のみに設けられている、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0013】
(6)前記第2の幅方向溝は、車両装着時外側のトレッド端に連通する、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0014】
(7)トレッド踏面に、1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有する、空気入りタイヤであって、
前記周方向主溝とトレッド端との間又は前記周方向主溝間に区画された、複数の陸部を有し、
車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、前記車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有し、
前記第1の幅方向溝と前記第2の幅方向溝とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、
一の前記第1の幅方向溝と、該一の前記第1の幅方向溝に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の前記第2の幅方向溝とが対をなし、
前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向他方側に延び、
前記対を構成する前記一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端は、前記対を構成する前記一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
一端が前記第1の幅方向溝の他端に連通する浅溝をさらに備え、
前記浅溝の溝深さは、前記第1の幅方向溝の溝深さよりも浅く、
前記浅溝の他端は、前記周方向主溝に連通することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0015】
(8)前記浅溝の溝深さは、2.5mm以下である、前記(7)に記載の空気入りタイヤ。
【0016】
(9)前記浅溝は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びる、前記(7)又は(8)に記載の空気入りタイヤ。
【0017】
(10)前記浅溝は、前記第1の幅方向溝のタイヤ周方向一方側の端部に連通している、前記(7)~(9)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0018】
(11)前記第1の幅方向溝、前記第2の幅方向溝、及び前記浅溝は、前記車両装着時最外側陸部のみに設けられている、前記(7)~(10)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0019】
(12)前記第2の幅方向溝は、車両装着時外側のトレッド端に連通する、前記(7)~(11)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図である。
【
図2】通信装置の配置例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0023】
本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)の内部構造等については、従来のそれと同様とすることができるため、詳細な説明は省略する。一方で、一例としては、タイヤは、一対のビード部と、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を備えたものとすることができる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図である。以下の説明において寸法等は、特に断りのない限り、前記基準状態における寸法をいうものとする。
【0025】
図1に示すように、このタイヤは、トレッド踏面1に、1本以上の(図示例では2本の)タイヤ周方向に延びる周方向主溝2(2a、2b)を有している。そして、このタイヤは、周方向主溝2とトレッド端TEとの間又は周方向主溝2(2a、2b)間に区画された、複数の陸部3(3a、3b(3b1、3b2))を有している。具体的には、タイヤ赤道面CLを境界とする車両装着時外側には、周方向主溝2aとトレッド端TEとにより、車両装着時最外側陸部3aが区画されている。また、タイヤ赤道面CLを境界とする車両装着時内側には、周方向主溝2a、2b間又は周方向主溝2bとトレッド端TEとにより、車両装着時内側陸部3bが区画されている。周方向主溝2a、2b間には、車両装着時内側陸部の内側陸部3b2が区画され、周方向主溝2aとトレッド端TEとにより、車両装着時内側陸部の外側陸部3b1が区画されている。
【0026】
このタイヤは、車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部3aに、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部3a内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝4と、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部3a内で少なくとも一端(本例では両端)が終端する、複数本の第2の幅方向溝5と、を有している。
【0027】
図示のように、第1の幅方向溝4と第2の幅方向溝5とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列されている。換言すれば、一の第1の幅方向溝4と、該一の第1の幅方向溝4に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の第2の幅方向溝5とが対をなし、当該対がタイヤ周方向に間隔を空けて複数設けられている。第1の幅方向溝4のタイヤ周方向のピッチ間隔は、特には限定されないが、例えば40~140mmとすることができる。また、第2の幅方向溝5のタイヤ周方向のピッチ間隔は、特には限定されないが、例えば40~140mmとすることができる。対をなす第1の幅方向溝4と第2の幅方向溝5との最短距離は、特には限定されないが、例えば15~60mmとすることができる。
【0028】
対を構成する一の第1の幅方向溝4は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分41を有している。また、当該第1の幅方向溝4は、第1の部分41のタイヤ幅方向内側端からタイヤ周方向一方側に延びる第2の部分42をさらに有している。この第2の部分42により、排水性をより一層確保することができる。
【0029】
第1の幅方向溝4の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、排水性(レース用タイヤに用いる場合は規則への適合。以下同じ。)と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~20mmとすることができる。第1の幅方向溝4の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、排水性と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~8mmとすることができる。また、第1の部分41のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが、例えば、10~20°とすることができる。20°以下とすることにより、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めることができ、10°以上とすることにより、後述するように第2の幅方向溝5との傾斜の向きの違いをより明確にすることができ、いずれもグリップ性能を向上させ得るからである。また、第2の部分42のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが、例えば、10~15°とすることができる。
【0030】
また、図示のように、対を構成する一の第2の幅方向溝5は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向他方側に延びている。すなわち、第1の幅方向溝4と、第2の幅方向溝5とは、タイヤ幅方向に対して、タイヤ周方向の互いに反対方向に傾斜している。
【0031】
第2の幅方向溝5の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、排水性(レース用タイヤに用いる場合は規則への適合。以下同じ。)と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~20mmとすることができる。第2の幅方向溝5の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、排水性と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~8mmとすることができる。また、第2の幅方向溝5のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが、例えば、5~15°とすることができる。15°以下とすることにより、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めることができ、5°以上とすることにより、後述するように第1の幅方向溝4との傾斜の向きの違いをより明確にすることができ、いずれもグリップ性能を向上させ得るからである。
【0032】
ここで、対を構成する一の第2の幅方向溝5のタイヤ幅方向内側端は、対を構成する一の第1の幅方向溝4のタイヤ幅方向内側端(本例では第2の部分42のタイヤ幅方向内側端)よりもタイヤ幅方向外側に位置している。特には限定されないが、対を構成する一の第2の幅方向溝5のタイヤ幅方向内側端は、対を構成する一の第1の幅方向溝4のタイヤ幅方向内側端(本例では第2の部分42のタイヤ幅方向内側端)よりも、第1の幅方向溝4のタイヤ幅方向の幅(タイヤ周方向に投影した際のタイヤ幅方向の幅)の50~80%の距離の分だけタイヤ幅方向外側に位置していることが好ましい。また、図示例では、第2の幅方向溝5は、(そのタイヤ幅方向外側端が)車両装着時外側のトレッド端TEに連通している。図示例では、対を構成する一の第1の幅方向溝4と、対を構成する一の第2の幅方向溝5とは、タイヤ周方向に投影した際に、重なる部分を有する。この重なり幅は、特には限定されないが、タイヤ幅方向に、例えば第1の幅方向溝4のタイヤ幅方向の幅(タイヤ周方向に投影した際のタイヤ幅方向の幅)の20~50%とすることができる。
【0033】
第1の部分41の少なくとも一部又は第2の部分42の少なくとも一部は、トレッド踏面1への開口部に面取り部を有している。これにより、新品時には排水性を大きく確保し(レース用タイヤに用いる場合には規則により一層適合しやすくなり)、一方で溝底まで開口幅と同じとする場合よりも剛性の低下を抑えてグリップ性能を確保することができる。第1の部分41(全周又は一部)のみに面取り部を形成する(第2の部分42には、面取り部を形成しない)こともできる。あるいは、第2の部分42(全周又は一部)のみに面取り部を形成する(第1の部分41には、面取り部を形成しない)こともできる。あるいは、第1の部分41(全周又は一部)と第2の部分42(全周又は一部)との両方に面取り部を形成することもできる。本例では、第1の部分41の全周及び第2の部分42の全周に面取り部を形成している。同様に、第2の幅方向溝5の少なくとも一部(全周又は一部、本例では全周)は、トレッド踏面1への開口部に面取り部を有している。第1の幅方向溝4に関し、前記基準状態において、第2の部分42の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度は、第1の部分41の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。第2の部分42により新品時の排水性を確保するに当たって、剛性の低下をより一層抑制することができるからである。
【0034】
また、このタイヤは、車両装着時内側となる車両装着時内側陸部3bに、2本のみの周方向主溝2a、2bを有している。これにより、排水性と陸部の剛性をバランス良く確保することができる。
【0035】
車両装着時内側陸部3bの外側陸部3b1には、タイヤ幅方向に延びる、複数本の第3の幅方向溝6が配置されている。第3の幅方向溝6は、(そのタイヤ幅方向外側端が)トレッド端TEに連通している。これにより、排水性を向上させることができる。一方で、第3の幅方向溝6は、(そのタイヤ幅方向内側端が)周方向主溝2aには連通していない。これにより、陸部の剛性を確保することができる。第3の幅方向溝6のタイヤ周方向の間には、第4の幅方向溝9がさらに配置されている。これにより、排水性をさらに向上させることができる。第4の幅方向溝9は、両端が外側陸部3b1内で終端している。これにより、陸部の剛性を確保することができる。本例では、第4の幅方向溝9の溝幅は、第3の幅方向溝6の溝幅よりも小さい。
【0036】
第3の幅方向溝6の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、排水性(レース用タイヤに用いる場合は規則への適合。以下同じ。)と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば10~25mmとすることができる。第3の幅方向溝6の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、排水性と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~8mmとすることができる。また、第3の幅方向溝6のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが、例えば、5~15°とすることができる。15°以下とすることにより、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めることができ、5°以上とすることにより、タイヤ周方向で局所的に剛性が低くならないようにすることができるからである。
第4の幅方向溝9の溝幅(開口幅)は、特には限定されないが、排水性(レース用タイヤに用いる場合は規則への適合。以下同じ。)と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば2~6mmとすることができる。第4の幅方向溝9の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、排水性と陸部の剛性とのバランスに鑑みて、例えば5~8mmとすることができる。また、第4の幅方向溝9のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、特には限定されないが、例えば、5~15°とすることができる。15°以下とすることにより、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めることができ、5°以上とすることにより、タイヤ周方向で局所的に剛性が低くならないようにすることができるからである。
第3の幅方向溝6及び第4の幅方向溝9の開口部においても、その少なくとも一部(全周又は一部)に面取り部が形成されていることが好ましい。
【0037】
また、周方向主溝2aのタイヤ幅方向内側には、周方向主溝2aと連通する複数の切り欠き部7が設けられている。これにより、当該切り欠き部7が設けられた陸部の剛性を適度に緩和してグリップ性能を向上させることができる。また、当該切り欠き部7が設けられているのは、車両装着時内側陸部3b内であるため、コーナリング時の横力の影響も受けにくい。
【0038】
車両装着時最外側陸部3aに設けられた、第1の幅方向溝4及び第2の幅方向溝5と、車両装着時内側陸部3bに設けられた、第3の幅方向溝6とは、タイヤ幅方向に投影した際に、互いに重ならないか、又は、面取り部同士のみが重なることが好ましい。タイヤ周方向における陸部の剛性のバランス化を図ることができるからである。同様に、車両装着時最外側陸部3aに設けられた、第1の幅方向溝4及び第2の幅方向溝5と、車両装着時内側陸部3bに設けられた、第4の幅方向溝9とは、タイヤ幅方向に投影した際に、互いに重ならないか、又は、面取り部同士のみが重なることが好ましい。
【0039】
このタイヤは、車両装着時最外側陸部3aにおいて、一端が第1の幅方向溝4の他端に連通する浅溝8をさらに備えている。浅溝8の他端は、周方向主溝2bに連通している。浅溝8の溝深さ(最大深さ)は、第1の幅方向溝4の溝深さ(最大深さ)よりも浅い。
【0040】
浅溝8の溝深さ(最大深さ)は、1.0mm以上2.5mm以下とすることが好ましい。1.0mm以上とすることで排水性をさらに向上させることができ、一方で、2.5mm以下とすることで車両装着時最外側陸部3aの剛性の低下を抑制することができるからである。浅溝8の溝幅(開口幅)は、3.0~10.0mmとすることが好ましい。3.0mm以上とすることで排水性をさらに向上させることができ、一方で、10.0mm以下とすることで車両装着時最外側陸部3aの剛性の低下を抑制することができるからである。
【0041】
浅溝8は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びている。浅溝8は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。40°以上とすることで鋭角部分の形成による局所的な陸部の剛性の低下を抑制することができ、一方で、60°以下とすることで排水性をさらに向上させ得るからである。
【0042】
浅溝8は、第1の幅方向溝4(図示例では、第2の部分42)のタイヤ周方向一方側(本例では蹴り出し側)の端部に連通していることが好ましい。第1の幅方向溝4内に侵入した水が浅溝8を経由して周方向主溝2aに排水されることを促して排水性をさらに向上させ得るからである。
【0043】
本例では、上記の構成のような、第1の幅方向溝4、第2の幅方向溝5、及び浅溝8は、車両装着時最外側陸部3aのみに設けられている。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0044】
本実施形態の空気入りタイヤは、まず、車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部3aに、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部3a内で両端が終端する、複数本の第1の幅方向溝4と、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部3a内で少なくとも一端(本例では両端)が終端する、複数本の第2の幅方向溝5と、を有しているため、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めてグリップ性能を向上させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、対を構成する一の第1の幅方向溝4は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分41を有し、対を構成する一の第2の幅方向溝5は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向他方側に延びている。これにより、様々な方向からの入力に対して、常に(タイヤ幅方向に対する、タイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対となる)2種類の延在方向の幅方向溝が存在することになるため、特定の方向からの入力に対して陸部が変形しやすくなるといった問題を解消することができ、グリップ性能を向上させることができる。
さらに、このような構成によれば、第1の部分41及び第2の幅方向溝5は、タイヤ幅方向外側ほど互いにタイヤ周方向の離間距離が大きくなるため、タイヤ幅方向外側における陸部の面積を大きく確保して、グリップ性能を向上させることができる。
一方で、傾斜の向きのみだけで考えると、第1の部分41及び第2の幅方向溝5は、タイヤ幅方向内側ほど互いにタイヤ周方向の離間距離が小さくなるが、本実施形態の空気入りタイヤでは、対を構成する一の第2の幅方向溝5のタイヤ幅方向内側端が、対を構成する一の第1の幅方向溝4のタイヤ幅方向内側端よりもタイヤ幅方向外側に位置しているため、第1の幅方向溝4と第2の幅方向溝5とがタイヤ周方向に近づく領域をなるべく生じさせないようにして、タイヤ幅方向内側においても、陸部の面積を大きく確保して、グリップ性能を向上させることができる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、グリップ性能を向上させることができる。
【0045】
ここで、本実施形態のようなタイヤでは、第1の幅方向溝4が接地面内で閉口し、閉空間内の空気が荷重により圧縮され、解放される際にポンピング音が発生することによる、パターンノイズが発生し得る。
これに対し、本実施形態のタイヤは、一端が第1の幅方向溝4の他端に連通する浅溝8をさらに備え、浅溝8の他端は、周方向主溝2bに連通している。これにより、第1の幅方向溝4が接地面内に位置した際に、浅溝8が空気の逃げ道として機能するため、上記のパターンノイズの発生を抑制することができる。
さらに、このような浅溝8自体による排水や、浅溝8により周方向主溝2bと第1の幅方向溝4とが連通することによる効果的な排水により、排水性がさらに向上し得る。また、このような浅溝8の溝深さが、第1の幅方向溝4の溝深さよりも浅いことにより、陸部の剛性の低下も抑制することができる。
なお、摩耗進展時には、浅溝8は消失し得るものであるが、摩耗進展時には、第1の幅方向溝4の溝深さも浅くなるため、発生し得るポンピング音も低減する。
【0046】
ここで、第2の幅方向溝5は、車両装着時外側のトレッド端に連通することが好ましい。排水性をさらに向上させることができるからである。
【0047】
また、対を構成する一の第1の幅方向溝4と、対を構成する一の第2の幅方向溝5とは、タイヤ周方向に投影した際に、重なる部分を有することが好ましい。他の溝(
図1の例では、周方向主溝2a)との配置の関係を考慮しても、幅方向溝の延在長さを十分に確保するようにしやすくなるからである。
【0048】
一の第1の幅方向溝4は、第1の部分41のタイヤ幅方向内側端からタイヤ周方向一方側に延びる第2の部分42をさらに有し、第1の部分41の少なくとも一部又は第2の部分42の少なくとも一部は、は、トレッド踏面への開口部に面取り部を有していることが好ましい。新品時の排水性をさらに向上させつつも、剛性の低下をなるべく抑制することができるからである。
【0049】
前記基準状態において、第2の部分42の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度は、第1の部分41の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。新品時の排水性をさらに向上させつつも、剛性の低下をなるべく抑制することができるからである。
【0050】
車両装着時内側となる車両装着時内側陸部3bに、2本のみの周方向主溝2a、2bを有することが好ましい。これにより、排水性と陸部の剛性をバランス良く確保することができる。
【0051】
ここで、他の実施形態としては、第1の幅方向溝の第1の部分のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜の向きと第2の幅方向溝のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜の向きとの両方が、上記の実施形態と反対側であっても良い。すなわち、他の実施形態のタイヤは、基本構成は上記の実施形態と同様であり、トレッド踏面に、1本以上のタイヤ周方向に延びる周方向主溝を有し、周方向主溝とトレッド端との間又は周方向主溝間に区画された、複数の陸部を有し、車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端(両端でも良い)が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有し、第1の幅方向溝と第2の幅方向溝とは、タイヤ周方向に互いに離間させながらタイヤ周方向に交互に配列され、一の第1の幅方向溝と、該一の第1の幅方向溝に対してタイヤ周方向一方側に隣接する一の第2の幅方向溝とが対をなす。また、一端が第1の幅方向溝4の他端に連通する浅溝8をさらに備え、浅溝8の溝深さは、第1の幅方向溝4の溝深さよりも浅く、浅溝8の他端は、周方向主溝2aに連通する。また、浅溝8は、タイヤ幅方向外側から内側に向かって、タイヤ周方向他方側に延びる。
一方で、上記の実施形態とは異なり、他の実施形態のタイヤでは、対を構成する一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、対を構成する一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向他方側に延び、対を構成する一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端は、対を構成する一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ幅方向外側に位置する。
【0052】
他の実施形態のタイヤであっても、まず、車両装着時外側のタイヤ幅方向最外側の陸部である車両装着時最外側陸部に、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部内で一端が終端する、複数本の第1の幅方向溝と、タイヤ幅方向に延び、車両装着時最外側陸部内で少なくとも一端(両端でも良い)が終端する、複数本の第2の幅方向溝と、を有しているため、幅方向の入力に対する剛性(車両旋回走行中に幅方向の外側から内側に向かう入力によるせん断変形に対する剛性)を高めてグリップ性能を向上させることができる。
また、他の実施形態の空気入りタイヤでは、対を構成する一の第1の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向一方側に延びる第1の部分を有し、対を構成する一の第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側から外側に向かって、タイヤ周方向他方側に延びている。これにより、様々な方向からの入力に対して、常に(タイヤ幅方向に対する、タイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対となる)2種類の延在方向の幅方向溝が存在することになるため、特定の方向からの入力に対して陸部が変形しやすくなるといった問題を解消することができ、グリップ性能を向上させることができる。
さらに、このような構成によれば、第1の部分及び第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向内側ほど互いにタイヤ周方向の離間距離が大きくなるため、タイヤ幅方向内側における陸部の面積を大きく確保して、グリップ性能を向上させることができる。
一方で、傾斜の向きのみだけで考えると、第1の部分及び第2の幅方向溝は、タイヤ幅方向外側ほど互いにタイヤ周方向の離間距離が小さくなるが、他の実施形態の空気入りタイヤでは、対を構成する一の第2の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端が、対を構成する一の第1の幅方向溝のタイヤ幅方向外側端よりもタイヤ幅方向外側に位置しているため、第1の幅方向溝と第2の幅方向溝とがタイヤ周方向に近づく領域をなるべく生じさせないようにして、タイヤ幅方向外側においても、陸部の面積を大きく確保して、グリップ性能を向上させることができる。
以上のように、他の実施形態の空気入りタイヤによっても、グリップ性能を向上させることができる。
【0053】
また、他の実施形態のタイヤでも、一端が第1の幅方向溝4の他端に連通する浅溝8をさらに備え、浅溝8の他端は、周方向主溝2aに連通している。これにより、第1の幅方向溝4が接地面内に位置した際に、浅溝8が空気の逃げ道として機能するため、上記のパターンノイズの発生を抑制することができる。
さらに、このような浅溝8自体の排水や、浅溝8により周方向主溝2bと第1の幅方向溝4とが連通することによる効果的な排水により、排水性がさらに向上し得る。また、このような浅溝8の溝深さが、第1の幅方向溝4の溝深さよりも浅いことにより、陸部の剛性の低下も抑制することができる。
なお、摩耗進展時には、浅溝8は消失し得るものであるが、摩耗進展時には、第1の幅方向溝4の溝深さも浅くなるため、発生し得るポンピング音も低減する。
【0054】
他の実施形態においても、浅溝8の溝深さ(最大深さ)は、1.0mm以上2.5mm以下とすることが好ましい。1.0mm以上とすることで排水性をさらに向上させることができ、一方で、2.5mm以下とすることで車両装着時最外側陸部3aの剛性の低下を抑制することができるからである。浅溝8の溝幅(開口幅)は、3.0~10.0mmとすることが好ましい。3.0mm以上とすることで排水性をさらに向上させることができ、一方で、10.0mm以下とすることで車両装着時最外側陸部3aの剛性の低下を抑制することができるからである。
【0055】
他の実施形態においても、浅溝8は、タイヤ周方向に対して40~60°の傾斜角度で傾斜して延びていることが好ましい。40°以上とすることで鋭角部分の形成による局所的な陸部の剛性の低下を抑制することができ、一方で、60°以下とすることで排水性をさらに向上させ得るからである。
【0056】
他の実施形態においても、浅溝8は、第1の幅方向溝4(図示例では、第2の部分42)のタイヤ周方向一方側(本例では蹴り出し側)の端部に連通していることが好ましい。第1の幅方向溝4内に侵入した水が浅溝8を経由して周方向主溝2bに排水されることを促して排水性をさらに向上させ得るからである。
【0057】
他の実施形態でも、上記の構成のような、第1の幅方向溝4、第2の幅方向溝5、及び浅溝8は、車両装着時最外側陸部3aのみに設けられていることが好ましい。
【0058】
ここで、他の実施形態において、第2の幅方向溝は、車両装着時外側のトレッド端に連通することが好ましい。排水性をさらに向上させることができるからである。
【0059】
また、他の実施形態において、対を構成する一の第1の幅方向溝と、対を構成する一の第の幅方向溝とは、タイヤ周方向に投影した際に、重なる部分を有することが好ましい。他の溝との配置の関係を考慮しても、幅方向溝の延在長さを十分に確保するようにしやすくなるからである。
【0060】
他の実施形態において、一の第1の幅方向溝は、第1の部分のタイヤ幅方向内側端からタイヤ周方向一方側に延びる第2の部分をさらに有し、第1の部分の少なくとも一部又は第2の部分の少なくとも一部は、は、トレッド踏面への開口部に面取り部を有していることが好ましい。新品時の排水性をさらに向上させつつも、剛性の低下をなるべく抑制することができるからである。
【0061】
他の実施形態において、前記基準状態において、第2の部分の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度は、第1の部分の面取り部のテーパー面のタイヤ径方向に対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。新品時の排水性をさらに向上させつつも、剛性の低下をなるべく抑制することができるからである。
【0062】
他の実施形態において、車両装着時内側となる車両装着時内側陸部に、2本のみの周方向主溝を有することが好ましい。これにより、排水性と陸部の剛性をバランス良く確保することができる。
【0063】
他の実施形態における、第1の幅方向溝(第1の部分、第2の部分)、及び第2の幅方向溝の寸法や傾斜角度については、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜の向きの方向を除いては、上記の実施形態と同様にすることができる。同様に、第1の幅方向溝及び第2の幅方向溝のタイヤ幅方向の重なり幅や、外側端同士のタイヤ幅方向の離間距離についても、上記の実施形態と同様とすることができる。
【0064】
以下、タイヤに通信装置を設ける場合について説明する。
図2は、通信装置の配置例について説明するための図である。
図2に示すように、このタイヤは、通信装置91としてのRFタグを備えてよい。RFタグは、ICチップとアンテナとを備える。RFタグは、例えば、タイヤを構成する同種又は異種の複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、タイヤ生産時にRFタグを取り付け易く、RFタグを備えるタイヤの生産性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、ビードフィラーと、ビードフィラーに隣接するその他の部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、タイヤを構成するいずれかの部材内に埋設されていてもよい。このようにすることで、タイヤを構成する複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置される場合と比較して、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、トレッドゴム、サイドゴム等のゴム部材内に埋設されてよい。RFタグは、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグは、剛性段差に基づき歪みが集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカスの端部と、このカーカスの端部に隣接する部材(例えばサイドゴム等)と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。RFタグの数は特に限定されない。タイヤは、1個のみのRFタグを備えてもよく、2個以上のRFタグを備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグを例示説明しているが、RFタグとは異なる通信装置であってもよい。
【0065】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグは、タイヤのサイドカットにより損傷しない。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド中央部に配置されてよい。トレッド中央部は、トレッド部において撓みが集中し難い位置である。このようにすることで、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、タイヤ幅方向でのタイヤの両外側からのRFタグとの通信性に差が生じることを抑制できる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を中心としてトレッド幅の1/2の範囲内に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端部に配置されてもよい。RFタグと通信するリーダーの位置が予め決まっている場合には、RFタグは、例えば、このリーダーに近い一方側のトレッド端部に配置されてよい。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端を外端とする、トレッド幅の1/4の範囲内に配置されてよい。
【0066】
RFタグは、例えば、ビード部間に跨る、1枚以上のカーカスプライを含むカーカスより、タイヤ内腔側に配置されてよい。このようにすることで、タイヤの外部から加わる衝撃や、サイドカットや釘刺さりなどの損傷に対して、RFタグが損傷し難くなる。一例として、RFタグは、カーカスのタイヤ内腔側の面に密着して配置されてよい。別の一例として、カーカスよりタイヤ内腔側に別の部材がある場合に、RFタグは、例えば、カーカスと、このカーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材と、の間に配置されてもよい。カーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材としては、例えば、タイヤ内面を形成するインナーライナーが挙げられる。別の一例として、RFタグは、タイヤ内腔に面するタイヤ内面に取り付けられていてもよい。RFタグが、タイヤ内面に取り付けられる構成とすることで、RFタグのタイヤへの取り付け、及び、RFタグの点検・交換が行い易い。つまり、RFタグの取り付け性及びメンテナンス性を向上させることができる。また、RFタグが、タイヤ内面に取り付けられることで、RFタグをタイヤ内に埋設する構成と比較して、RFタグがタイヤ故障の核となることを防ぐことができる。また、カーカスが、複数枚のカーカスプライを備え、複数枚のカーカスプライが重ねられている位置がある場合に、RFタグは、重ねられているカーカスプライの間に配置されていてもよい。
【0067】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、1枚以上のベルトプライを含むベルトより、タイヤ径方向の外側に配置されてよい。一例として、RFタグは、ベルトに対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルトに密着して配置されてよい。また、別の一例として、補強ベルト層を備える場合、当該補強ベルト層に対してタイヤ径方向の外側で、当該補強ベルト層に密着して配置されてよい。また、別の一例として、RFタグは、ベルトよりタイヤ径方向の外側で、トレッドゴム内に埋設されていてもよい。RFタグが、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の外側に配置されることで、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信が、ベルトにより阻害され難い。そのため、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を向上させることができる。また、RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側がベルトに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。この一例として、RFタグは、タイヤのトレッド部で、ベルトと、当該ベルトよりタイヤ径方向の内側に位置するカーカスと、の間に配置されてよい。また、ベルトが、複数枚のベルトプライを備える場合に、RFタグは、タイヤのトレッド部で、任意の2枚のベルトプライの間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側が1枚以上のベルトプライに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。
【0068】
RFタグは、例えば、タイヤのサイドウォール部又はビード部の位置に配置されてよい。RFタグは、例えば、RFタグと通信可能なリーダーに対して近い一方側のサイドウォール部又は一方側のビード部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグとリーダーとの通信性を高めることができる。一例として、RFタグは、カーカスと、サイドゴムと、の間やトレッドゴムとサイドゴムと、の間に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ径方向において、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグがタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を高めることができる。RFタグは、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグは、剛性の高いビード部近傍に配置される。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。一例として、RFタグは、ビードコアとタイヤ径方向又はタイヤ幅方向で隣接する位置に配置されてよい。ビードコア近傍は歪みが集中し難い。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。特に、RFタグは、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側であって、かつ、ビード部のビードコアよりタイヤ径方向の外側の位置に配置されることが好ましい。このようにすることで、RFタグの耐久性を向上させることができるとともに、RFタグとリーダーとの通信が、ビードコアにより阻害され難く、RFタグの通信性を高めることができる。また、サイドゴムがタイヤ径方向に隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグは、サイドゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0069】
RFタグは、ビードフィラーと、このビードフィラーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ビードフィラーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
RFタグは、例えば、ビードフィラーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分は、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分が、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。また、ビードフィラーは、サイドゴムと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ビードフィラーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0070】
RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ゴムチェーファーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、リムから加わる衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を低減できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0071】
RFタグは、ワイヤーチェーファーと、このワイヤーチェーファーのタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、ゴムチェーファーなどのゴム部材であってよい。また、ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、カーカスであってもよい。
【0072】
ベルトの半径方向外側にベルト補強層をさらに備えてもよい。例えば、ベルト補強層はポリエチレンテレフタレートからなるコードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回してなってもよい。ここでコードは、6.9×10-2N/tex以上の張力をかけて接着剤処理を施してなり、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5 mN/dtex・%以上であってもよい。さらにベルト補強層はベルト全体を覆うように配置されていてもベルトの両端部のみを覆うように配置されていてもよい。さらにベルト補強層の単位幅あたりの巻き回し密度が幅方向位置で異なっていてもよい。このようにすることで、高速耐久性を低下させることなくロードノイズおよびフラットスポットを低減させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1:トレッド踏面、
2、2a、2b:周方向主溝、
3:陸部、
3a:車両装着時最外側陸部、
3b:車両装着時内側陸部、
3b1:車両装着時内側陸部の外側陸部、
3b2:車両装着時内側陸部の内側陸部、
4:第1の幅方向溝、
41:第1の部分、
42:第2の部分、
5:第2の幅方向溝、
6:第3の幅方向溝、
7:切り欠き部、
8:浅溝、
9:第4の幅方向溝、
91:通信装置、
CL:タイヤ赤道面、
TE:トレッド端