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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102372
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】冷却用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20250701BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250701BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250701BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20250701BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219784
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】杠 千秋
(72)【発明者】
【氏名】若園 幸典
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 麻里
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】冷却対象に重ね合わされる金属製の冷却面構成部材と、冷却面構成部材に重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との熱膨張による変形量の差を許容することができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供する。
【解決手段】冷却対象Bに重ね合わされる金属製の冷却面構成部材12と合成樹脂製の流路部材14とが相互に重ね合わされた積層構造とされており、それら冷却面構成部材12と流路部材14との重ね合わせ面間には冷却用の熱媒体が流れる冷却流路58が形成されている冷却用熱交換器10であって、冷却面構成部材12と流路部材14とが外周領域において弾性を備えた接着剤層54によって相互に接着されており、冷却面構成部材12と流路部材14とが、流路部材14の中央領域に設けられた直接接合部44において、接着剤を介しない直接接合によって相互に固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象に重ね合わされる金属製の冷却面構成部材と合成樹脂製の流路部材とが相互に重ね合わされた積層構造とされており、それら冷却面構成部材と流路部材との重ね合わせ面間には冷却用の熱媒体が流れる冷却流路が形成されている冷却用熱交換器であって、
前記冷却面構成部材と前記流路部材とが、外周領域において弾性を備えた接着剤層によって相互に接着されており、該流路部材の中央領域に設けられた直接接合部において、接着剤を介しない直接接合によって相互に固定されている冷却用熱交換器。
【請求項2】
前記流路部材における前記冷却面構成部材との接着部分には、接着剤が塗布されて前記接着剤層が形成される接着面が設けられていると共に、該接着面よりも該冷却面構成部材側へ突出して該接着剤層の厚さを規定する位置規定部が、該接着面の周囲に設けられている請求項1に記載の冷却用熱交換器。
【請求項3】
前記接着面と前記位置規定部との間には、前記接着剤層を構成する接着剤のはみ出しを許容する接着剤逃し部が、前記流路部材と前記冷却面構成部材との重ね合わせ面間に設けられている請求項2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項4】
前記接着剤逃し部が該接着面の周囲に全周に亘って連続して設けられており、前記位置規定部が該接着剤逃し部の周囲に全周に亘って連続して設けられている請求項2又は3に記載の冷却用熱交換器。
【請求項5】
1つの前記冷却面構成部材に対して複数の前記流路部材が重ね合わされており、各該流路部材の前記中央領域にそれぞれ前記直接接合部が設けられている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項6】
1つの前記冷却面構成部材に対して1つの前記流路部材が重ね合わされている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項7】
前記直接接合部は、前記流路部材の中央の一か所だけに設けられている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車等の電動化車両におけるバッテリーパック等の冷却対象の冷却に用いられる冷却用熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動化車両において、冷却対象であるバッテリーパックや電子機器等は、小型化や高性能化によって発熱量が大きくなっており、冷却性能の重要性が増している。従来では、相互に重ね合わされた金属製のプレート間に冷却流路が形成された構造の冷却用熱交換器が採用されていた。この冷却用熱交換器は、一方のプレートがバッテリーパック等の冷却対象に重ね合わされており、当該一方のプレートが冷却流路を流れる冷媒で冷却されることによって冷却対象が冷却されるようになっている。
【0003】
また、電動化車両では車両の軽量化への強い要求があることから、冷却用熱交換器の軽量化も検討されている。例えば、国際公開第2020/196878号(特許文献1)には、冷却対象に重ね合わされて熱伝導性が重要となる一方のプレートを金属製とし、熱伝導性を求められない他方のプレートを金属よりも比重が小さい合成樹脂製の樹脂部材とすることが提案されている。特許文献1において、樹脂部材は、上面において開口する箱体とされており、箱体内には流路形成用リブが箱体と一体的に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/196878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1の構造では、金属プレートと樹脂部材とを重ね合わせて接着等の手段で相互に固定すると、線膨張率の違いによる板厚方向の撓みが発生することが分かった。従って、著しく高温又は低温の環境下では、金属プレートと樹脂部材との熱膨張による変形量の差によって冷却用熱交換器が撓む等して、金属プレートと樹脂部材の剥離や冷却性能の低下を引き起こすことも考えられた。特に、電動化車両に用いられる冷却用熱交換器は、金属プレートと樹脂部材との重ね合わせ方向と直交する長さ方向及び幅方向のサイズが大きいことから、金属プレートと樹脂部材との線膨張率の違いによる変形量の差が問題になり易かった。
【0006】
本発明の解決課題は、冷却対象に重ね合わされる金属製の冷却面構成部材と、冷却面構成部材に重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との線膨張率の違いによる変形量の差を許容することができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、冷却対象に重ね合わされる金属製の冷却面構成部材と合成樹脂製の流路部材とが相互に重ね合わされた積層構造とされており、それら冷却面構成部材と流路部材との重ね合わせ面間には冷却用の熱媒体が流れる冷却流路が形成されている冷却用熱交換器であって、前記冷却面構成部材と前記流路部材とが、外周領域において弾性を備えた接着剤層によって相互に接着されており、該流路部材の中央領域に設けられた直接接合部において、接着剤を介しない直接接合によって相互に固定されているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、金属製の冷却面構成部材と合成樹脂製の流路部材とが、弾性を有する接着剤層によって相互に接着されていることから、例えば温度変化に対して、流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いによる変形量の差が、接着剤層の弾性変形によって許容される。それゆえ、流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の差に起因する冷却用熱交換器の反り等が軽減乃至は防止される。
【0010】
また、流路部材と冷却面構成部材は、流路部材の外周領域において、接着剤層で接着されていると共に、流路部材の中央領域に設けられた直接接合部において、接着剤層が介在しない直接接合によって相互に固定されている。このような直接接合部が設けられていることにより、流路部材と冷却面構成部材とのズレや分離が防止されると共に、流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いによる接着剤層の損傷(剥離)等も防止される。
【0011】
特に、流路部材と冷却面構成部材とを相互に位置決めする直接接合部が、流路部材の中央領域に配置されていることから、直接接合部から流路部材の外周端までの距離が、全周に亘って比較的に小さくなる。流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いに基づく変形量の差は、直接接合部からの距離が長くなるに従って大きくなることから、直接接合部からの距離が最も長くなる流路部材の外周端においても、流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いに基づく変形量の差が抑えられる。
【0012】
本態様に係る冷却用熱交換器では、流路部材と冷却面構成部材の線膨張率の違いが許容されることから、流路部材の合成樹脂材料と冷却面構成部材の金属材料との選択において、線膨張率が問題になり難く、それら流路部材と冷却面構成部材との形成材料を大きな自由度で選択することができる。
【0013】
第二の態様は、第一の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記流路部材における前記冷却面構成部材との接着部分には、接着剤が塗布されて前記接着剤層が形成される接着面が設けられていると共に、該接着面よりも該冷却面構成部材側へ突出して該接着剤層の厚さを規定する位置規定部が、該接着面の周囲に設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、流路部材と冷却面構成部材との重ね合わせ方向での相対位置が、冷却面構成部材と位置規定部との当接によって規定されることから、それら流路部材と冷却面構成部材との重ね合わせ面間に形成される接着剤層の厚さが精度よく設定される。その結果、接着剤層の弾性による流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いに基づく変形の許容量が精度よく設定されて、温度変化による冷却用熱交換器の反り、接着剤層の損傷や剥離等がより安定して防止される。
【0015】
特に、位置規定部は、接着剤が塗布される接着面の周囲に設けられていることから、接着面から大きく離れた位置に設けられている場合に比して、接着剤層の厚さがより精度よく設定される。
【0016】
第三の態様は、第二の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記接着面と前記位置規定部との間には、前記接着剤層を構成する接着剤のはみ出しを許容する接着剤逃し部が、前記流路部材と前記冷却面構成部材との重ね合わせ面間に設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、例えば、接着面に対する接着剤の厚さを、位置規定部で規定される接着面と冷却面構成部材との対向面間距離よりも厚くして、接着面と冷却面構成部材との対向面間に所定厚さの接着剤層を形成する場合に、余分な接着剤の接着面からのはみ出しを許容する接着剤逃し部が設けられていることによって、はみ出した接着剤が冷却流路に漏れ出す等の不具合を防ぐことができる。
【0018】
接着剤逃し部は、好適には、接着面よりも冷却面構成部材から離れた底面を有する凹状とされる。これにより、接着面と接着剤逃し部との判別が容易になると共に、接着剤逃し部の容積を確保し易くなって、接着面上からはみ出した接着剤が接着剤逃し部から溢れ難くなる。
【0019】
第四の態様は、第二又は第三の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記接着剤逃し部が該接着面の周囲に全周に亘って連続して設けられており、前記位置規定部が該接着剤逃し部の周囲に全周に亘って連続して設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、接着剤逃し部が接着面を全周に亘って囲むように設けられていることにより、接着剤の接着面から外側へのはみ出しが何れの方向においても許容される。また、位置規定部が接着剤逃し部を全周に亘って囲むように設けられていることにより、接着剤逃し部から外周への接着剤の漏れが位置規定部によって防止される。
【0021】
また、位置規定部が接着面の周囲を囲むように全周に亘って設けられていることにより、接着面と冷却面構成部材との対向面間に形成される接着剤層の厚さをより精度よく設定することができる。
【0022】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、1つの前記冷却面構成部材に対して複数の前記流路部材が重ね合わされており、各該流路部材の前記中央領域にそれぞれ前記直接接合部が設けられているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、各流路部材を小型化することができて、温度変化に対して線膨張率の違いによる各流路部材と冷却面構成部材との変形量の差が抑えられる。特に、小型とすることが可能な各流路部材の中央領域にそれぞれ直接接合部が設けられていることから、各流路部材において直接接合部から外周端までの距離をそれぞれ短くすることができる。それゆえ、冷却用熱交換器の反りや接着剤層の損傷等がより効果的に防止される。
【0024】
1つの冷却面構成部材に対して複数の流路部材が取り付けられていることにより、各流路部材の小型化を図りつつ、十分な大きさの冷却用熱交換器を一体的に得ることができる。
【0025】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、1つの前記冷却面構成部材に対して1つの前記流路部材が重ね合わされているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、1つの流路部材と1つの冷却面構成部材とによって、少ない部品点数で構成することが可能である。しかも、流路部材と冷却面構成部材とがそれぞれ大きな面積とされていても、流路部材と冷却面構成部材との線膨張率の違いによる冷却用熱交換器の反りや流路部材と冷却面構成部材との剥離等の不具合を低減することができる。
【0027】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記直接接合部は、前記流路部材の中央の一か所だけに設けられているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、中央領域を複数箇所で直接接合する場合に比して、構造の簡略化が図られる。しかも、複数箇所に直接接合部を設けると、それら複数の直接接合部間において線膨張率の違いによる流路部材と冷却面構成部材との変形量の差が許容されないおそれもあるが、直接接合部が中央の一箇所だけに設けられていれば、直接接合部の外周側の全体に亘って変形量の差が接着剤層によって許容される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、冷却対象に重ね合わされる金属製の冷却面構成部材と、冷却面構成部材に重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との線膨張率の違いに起因する変形量の差を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器の斜視図
図2図1に示す冷却用熱交換器の平面図
図3図2のIII-III断面図
図4図2のIV-IV断面図
図5図1に示す冷却用熱交換器の分解斜視図
図6】本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器の斜視図
図7図6に示す冷却用熱交換器の分解斜視図
図8】本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1図4には、本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器10が示されている。冷却用熱交換器10は、図5にも示すように、冷却面構成部材としての金属プレート12と、流路部材としての樹脂プレート14とが、相互に重ね合わされて固定された積層構造を有している。以下の説明では、原則として、上下方向とは金属プレート12と樹脂プレート14との重ね合わせ方向である図3中の左右方向を、前後方向とは図2中の上下方向を、左右方向とは図2中の左右方向を、それぞれ言う。
【0033】
金属プレート12は、上面視で略正方形の矩形板状とされている。金属プレート12は、熱伝導率の高い金属材料で形成されていることが望ましく、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、或いはそれらの合金等によって形成される。
【0034】
金属プレート12には、複数の肉抜孔16が形成されている。肉抜孔16は、左右方向が前後方向よりも長尺とされた略長円状の孔断面形状とされており、本実施形態では6つの肉抜孔16が前後3列且つ左右2列に並んで配置されている。
【0035】
金属プレート12の左右中央部には、金属プレート12を貫通する挿通孔18が形成されている。挿通孔18は、複数が前後方向で相互に離隔して形成されている。挿通孔18は、前後方向において、隣り合う肉抜孔16,16間の前後中央に位置している。
【0036】
金属プレート12の左右両端部には、図示しない複数の貫通孔が形成されており、各貫通孔に対してポート部材20が取り付けられている。ポート部材20は、全体として上下方向に延びる略円筒形状とされており、下端部には外周へ突出するフランジ状部22が一体的に設けられている。
【0037】
ポート部材20の上下中間部分には、外周へ突出する抜止突部24が形成されている。抜止突部24は、フランジ状部22に比して外周への突出寸法が小さくされていると共に、縦断面において略半円形とされている。抜止突部24は、後述する外部流路のチューブ等に挿入可能とされており、ポート部材20に外挿状態で接続される図示しない外部流路のチューブ等を抜け難くする機能がある。
【0038】
ポート部材20は、金属プレート12の前記貫通孔の開口周縁部において金属プレート12の上面に重ね合わされており、接着や溶接等の手段で金属プレート12に固定されている。本実施形態では、ポート部材20の下端部にフランジ状部22が設けられていることから、金属プレート12の上面に対する重ね合わせ面積が大きくされており、金属プレート12とポート部材20との固着強度を確保し易くなっている。ポート部材20の内孔は、金属プレート12の貫通孔に対して位置決めされており、金属プレート12よりも下側の空間に連通されている。
【0039】
樹脂プレート14は、左右方向において前後方向よりも長尺とされた上下方向視で長方形の矩形板状とされている。樹脂プレート14は、図2に示すように、左右方向の幅寸法が金属プレート12よりも略同じか僅かに小さくされていると共に、前後方向の長さ寸法が金属プレート12よりも小さくされている。樹脂プレート14の前後長さ寸法は、金属プレート12の前後長さ寸法の1/4以下とされており、金属プレート12における前後方向で隣り合う肉抜孔16,16の離隔距離と略同じとされている。
【0040】
樹脂プレート14は、硬質の合成樹脂製とされており、好適には熱可塑性の合成樹脂材料が採用される。樹脂プレート14の形成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリオレフィン等が好適に採用され得る。樹脂プレート14は、ガラス繊維や炭素繊維等で補強された繊維補強合成樹脂によって形成することもできる。
【0041】
樹脂プレート14には、図5に示すように、上面に開口する凹部26が形成されている。換言すれば、樹脂プレート14は、外周端部が上方へ突出する略矩形環状の外周接着部28とされている。外周接着部28は、所定の幅で周方向に延びている。外周接着部28は、図3に示すように、幅方向の中間部分において上下方向と略直交して広がる平面状の接着面30と、接着面30の内周側で上方へ向けて開口する接着剤逃し部としての逃し溝32と、接着面30の外周側と逃し溝32の内周側とに設けられた位置規定部34a,34bとを、備えている。外周接着部28における接着面30と逃し溝32と位置規定部34a,34bとは、何れも全周に亘って連続する環状とされている。
【0042】
樹脂プレート14には、凹部26の底面から上方へ向けて突出する複数の内周接着部36が設けられている。内周接着部36は、図3に示すように、左右方向に直線的に延びる突条とされている。内周接着部36は、上面視において、左右方向の中間部分が左右方向に直線的に延びる長辺を有した略長方形とされていると共に、左右両端部が上面視で略半円状とされており、全体として左右方向で長尺とされた略長円状(オーバル状)とされている。
【0043】
内周接着部36は、上下方向と略直交して広がる接着面38と、接着面38の周囲を全周に亘って囲むように延びる接着剤逃し部としての環状の逃し溝40と、逃し溝40の周囲を全周に亘って囲むように延びる環状の位置規定部42とを、備えている。
【0044】
逃し溝40の底面は、接着面38よりも下側に位置している。従って、内周接着部36は、接着面38を構成する部分が逃し溝40の形成部分に対して上方へ突出している。また、位置規定部42の上面は、逃し溝40の底面よりも上側に位置しており、接着面38よりも上側に位置している。接着面38と位置規定部42の上面との上下方向での位置の差dは、後述する接着剤層54の設計上の厚さ寸法に設定されている。
【0045】
樹脂プレート14において、内周接着部36は、前後方向で4つが相互に離隔した状態で並んで設けられている。また、前後方向の外端に位置する内周接着部36aは、前後方向の中間に位置する内周接着部36bよりも左右方向の長さが長くされている。前後方向の中間に位置する内周接着部36bは、前後2列且つ左右2列に並んで設けられている。凹部26において、内周接着部36aと外周接着部28との間と、内周接着部36aと内周接着部36bとの間と、内周接着部36bと内周接着部36bとの間とは、それぞれ左右方向に延びる溝状とされている。
【0046】
左側に位置する内周接着部36b,36bと、右側に位置する内周接着部36b,36bとの間には、直接接合部を構成する中央接合部44が設けられている。中央接合部44は、樹脂プレート14に一体的に設けられており、凹部26の底面から上方へ突出している。中央接合部44は、円筒状とされており、中心孔が樹脂プレート14を貫通する挿通孔46を構成している。
【0047】
中央接合部44における挿通孔46の外周側には、内周接着部36と同様に、環状の接着面48と、接着面48に沿って内周側を延びる接着剤逃し部としての逃し溝50aと、接着面48に沿って外周側を延びる接着剤逃し部としての逃し溝50bと、逃し溝50aに沿って内周側を延びる位置規定部52aと、逃し溝50bに沿って外周側を延びる位置規定部52bとが、設けられている。中央接合部44では、逃し溝50a,50bが接着面48の内外周を全周に亘って囲むように設けられている。また、中央接合部44では、位置規定部52aが逃し溝50aの全長に亘って連続するように沿って内周側に環状に設けられていると共に、位置規定部52bが逃し溝50bの全長に亘って連続するように沿って外周側に環状に設けられている。なお、接着面48と逃し溝50a,50bと位置規定部52a,52bとは、何れも円環状とされている。また、中央接合部44の逃し溝50は、内周接着部36の逃し溝40に比して、幅狭とされている。更に、中央接合部44の位置規定部52は、内周接着部36の位置規定部42に比して、幅狭とされている。もっとも、中央接合部44の逃し溝50と内周接着部36の逃し溝40は、互いに同じ幅であってもよいし、逃し溝50が逃し溝40より幅広であってもよい。同様に、中央接合部44の位置規定部52と内周接着部36の位置規定部42は、互いに同じ幅であってもよいし、位置規定部52が位置規定部42より幅広であってもよい。
【0048】
逃し溝50a,50bの底面は、接着面48よりも下側に位置している。従って、中央接合部44は、接着面48を構成する部分が逃し溝50a,50bの形成部分に対して上方へ突出している。また、位置規定部52a,52bの上面は、逃し溝50a,50bの底面よりも上側に位置しており、接着面48よりも上側に位置している。接着面48と位置規定部52の上面との上下方向での位置の差dは、後述する接着剤層54の厚さ寸法に設定されている。
【0049】
樹脂プレート14には、金属プレート12が上方から重ね合わされている。金属プレート12は、樹脂プレート14の位置規定部34,42,52に対して当接状態で重ね合わされている。これにより、樹脂プレート14と金属プレート12との重ね合わせ方向での相対位置が、位置規定部34,42,52によって規定されている。
【0050】
樹脂プレート14と金属プレート12が位置規定部34,42,52によって相互に位置決めされた状態において、接着面30,38,48は、金属プレート12に対して下方に離隔して対向している。また、逃し溝32,40,50の底面は、金属プレート12に対して下方に離隔しており、その離隔距離が金属プレート12と接着面30,38,48との離隔距離よりも大きくされている。
【0051】
接着面30,38,48と金属プレート12との対向面間には、それぞれ接着剤層54が形成されており、樹脂プレート14の外周領域が金属プレート12に対して接着剤層54によって接着されている。接着剤層54は、接着面30,38,48に塗布された接着剤が、樹脂プレート14に対する金属プレート12の重ね合わせによって、接着面30,38,48と金属プレート12の下面との間で層状に固化することによって形成されている。接着剤層54は、弾性を有しており、接着面30,38,48と金属プレート12との相対変位を弾性変形によって許容しつつ、それら接着面30,38,48と金属プレート12とを相互に連結された状態に保持する。接着剤層54の縦弾性係数は、好適には500MPa以下とされており、より好適には100MPa以下とされている。
【0052】
弾性を有する接着剤層54を形成する接着剤としては、例えばウレタン系の接着剤やエポキシ系とシリコン系とを混合した接着剤が採用され得て、具体的にはセメダイン株式会社製「EP001K」が挙げられる。
【0053】
接着剤層54の厚さ寸法は、接着面30,38,48と位置規定部34,42,52の上面との上下方向での位置の差dによって規定されている。要するに、金属プレート12が位置規定部34,42,52の上面に当接状態で重ね合わされることにより、接着面30と金属プレート12との間に厚さdの接着剤層54が形成される。このように、接着面30,38,48と位置規定部34,42,52の上面との上下方向での相対的な位置関係に基づいて、接着剤層54の厚さ寸法が安定して精度よく設定されている。接着剤層54の厚さdは、好適には0.02mm~5mmの範囲内とされており、より好適には0.2mm~1mmの範囲内とされている。
【0054】
接着剤層54の厚さを安定してdとするためには、接着面30,38,48に塗布される接着剤の厚さをdより厚くしておいて、金属プレート12の重ね合わせによって接着面30,38,48上の接着剤をdまで薄くさせる必要がある。それゆえ、接着剤は、接着面30,38,48への塗布状態よりも薄くなる際に、接着面30,38,48から周囲へはみ出す場合がある。そこで、接着面30,38,48の周囲には、逃し溝32,40,50が形成されており、接着面30,38,48から内周又は外周へはみ出した接着剤が、逃し溝32,40,50に収容されるようになっている。これにより、接着剤が凹部26における内周接着部36及び中央接合部44以外の部分(後述する冷却流路58)へはみ出すのを防ぐことができ、例えば後述する冷却流路58における熱媒体の流れへの悪影響等を防止することが可能になる。本実施形態では、逃し溝32,40,50を囲むように位置規定部34,42,52が設けられていることから、接着剤が逃し溝32,40,50を越えて更に外方まではみ出し難くなっている。
【0055】
接着剤層54によって貼り合わされた樹脂プレート14と金属プレート12は、中央部分においてピン接合されている。即ち、金属プレート12を貫通する挿通孔18と、樹脂プレート14を貫通する挿通孔46とに対して、ピン56が上方から挿通される。そして、例えば、樹脂プレート14よりも下側へ突出したピン56の軸部が、軸方向に圧縮されて潰されることにより大径化して、大径化したピン56の軸部の先端部分とピン56の頭部との間で金属プレート12と樹脂プレート14とが相互に位置決めされると共に、ピン56の挿通孔18,46からの抜けが防止される。このように、樹脂プレート14の中央領域は、金属プレート12に対して、接着剤層54を介することなく、ピン56による直接接合によって相互に連結されている。
【0056】
樹脂プレート14の挿通孔46の周囲には、環状の位置規定部52aが形成されており、位置規定部52aと金属プレート12とが接着剤の介在しない直接的な当接状態で重ね合わされている。これにより、樹脂プレート14の中央領域は、金属プレート12に対して、接着剤層54を介することなくピン56で機械的に直接接合されている。樹脂プレート14と金属プレート12は、ピン56による直接接合部分において、相対的に位置決めされており、後述する線膨張率の違いに基づく相対的な変位が阻止されている。本実施形態では、金属プレート12と樹脂プレート14とがピン56で直接接合される直接接合部が、各樹脂プレート14の中央の1箇所だけに設けられている。
【0057】
金属プレート12と樹脂プレート14は、樹脂プレート14における中央接合部44が設けられた中央領域よりも外周側の外周領域において、弾性を有する接着剤層54で接着されている。また、金属プレート12と樹脂プレート14は、中央接合部44が設けられた中央領域において、ピン56によって直接接合されて固定的に連結されている。直接接合される中央領域は、中央接合部44における位置規定部52aと挿通孔46とによって構成される。なお、中央領域は、上下方向での投影面積が樹脂プレート14に比して十分に小さくされていることが望ましく、中央領域の外径である位置規定部52aの外径は、好適には30mm以下とされており、より好適には10mm以下とされている。
【0058】
本実施形態では、1つの金属プレート12に対して、前後方向に並んだ4つの樹脂プレート14,14,14,14が取り付けられている。各樹脂プレート14は、外周領域の接着剤層54による接着と、中央領域におけるピン56による直接接合とによって、金属プレート12とそれぞれ連結されている。
【0059】
樹脂プレート14の上面に金属プレート12が重ね合わされることにより、凹部26の開口が金属プレート12によって覆われている。これにより、金属プレート12と樹脂プレート14との間には、冷却用の熱媒体が流れる冷却流路58が形成されている。冷却流路58は、左右方向の両端部分にそれぞれポート部材20の内孔が連通されており、ポート部材20に接続される図示しない外部流路に対して、冷却用の熱媒体の供給と排出がポート部材20を介して実行される。外部流路には、図示しないポンプや冷凍機等が接続されており、熱媒体が冷却流路58と外部流路とで構成された循環路を熱交換による温度変化を生じながら循環するようになっている。具体的には、例えば、冷凍機によって低温とされた熱媒体が一方のポート部材20を通じて冷却流路58に供給され、後述するバッテリーパックとの間で熱交換を行いながら冷却流路58を流れて温度上昇した熱媒体が、他方のポート部材20を通じて外部流路に排出される。本実施形態では、凹部26内に複数の内周接着部36a,36bが設けられており、金属プレート12と樹脂プレート14との重ね合わせによって、左右方向に延びる冷却流路58が形成されている。なお、外部流路には高温の熱媒体の温度を下げる機構が設けられていればよく、例えば、冷凍機に代えてラジエターのような空冷装置や液冷装置を設けることもできる。
【0060】
冷却用熱交換器10は、例えば、電気自動車やハイブリッドカー等の電動化車両に装着されて使用される。冷却用熱交換器10の車両装着状態において、金属プレート12における樹脂プレート14と重ね合わされた部分には、図3図4に示すように、冷却対象としてのバッテリーパックBが重ね合わされている。バッテリーパックBは、金属プレート12に直接重ね合わされていてもよいが、好適には、伝熱性のギャップフィラーや熱伝導シート等を介して、金属プレート12に隙間なく重ね合わされる。そして、バッテリーパックBは、冷却流路58を流れる熱媒体との間で金属プレート12を介した熱交換を行うことによって、冷却用熱交換器10で冷却されるようになっている。
【0061】
ところで、車両に装着された冷却用熱交換器10は、車両の使用環境等によっては、高温の雰囲気中で使用される場合もある。このような場合に、冷却用熱交換器10は、金属製の金属プレート12と合成樹脂製の樹脂プレート14との間に、線膨張率の違いに起因する変形量の差が生じる。そこにおいて、冷却用熱交換器10では、金属プレート12と樹脂プレート14とが、樹脂プレート14の外周領域において弾性を有する接着剤層54で接着されていると共に、樹脂プレート14の中央領域において接着剤層54を介することなくピン56で直接接合されている。これにより、樹脂プレート14の中央領域において、金属プレート12と樹脂プレート14とが相互に位置決めされて相対変位を制限されていると共に、樹脂プレート14の外周領域において、接着剤層54の弾性変形によって相対変位を許容されており、特に線膨張率の違いに起因する面方向の相対変位が十分に許容される。それゆえ、相互に連結された金属プレート12と樹脂プレート14の線膨張率の違いに起因する冷却用熱交換器10の反り等が防止されると共に、接着剤層54の破断による金属プレート12と樹脂プレート14の剥離等も生じ難い。
【0062】
特に、金属プレート12と樹脂プレート14とが、中央領域において相互に直接接合されて位置決めされていることにより、直接接合された部位から樹脂プレート14の外周端までの最大長さが比較的に小さくなる。それゆえ、金属プレート12と樹脂プレート14との線膨張率の違いによる変形量の差が抑えられて、冷却用熱交換器10の反りや接着剤層54の損傷、金属プレート12と樹脂プレート14との相互の位置ズレ等が効果的に抑制される。
【0063】
本実施形態では、1つの金属プレート12に対して4つの樹脂プレート14,14,14,14が取り付けられている。これにより、各樹脂プレート14の小型化が図られており、樹脂プレート14の中央領域に設けられた中央接合部44から樹脂プレート14の外周端までの最大長さがより小さくされている。それゆえ、金属プレート12と樹脂プレート14との線膨張率の違いによる変形量の差が、一層効果的に抑えられている。
【0064】
樹脂プレート14の位置規定部34,42,52の上面が金属プレート12に当接することによって、接着面30,38,48と金属プレート12との間に形成される接着剤層54の厚さdが精度よく設定されている。これにより、接着剤層54の弾性によって許容される金属プレート12と樹脂プレート14との相対変位量の安定化が図られて、金属プレート12と樹脂プレート14との線膨張率の違いによる冷却用熱交換器10の反り等の不具合がより効果的に防止される。
【0065】
接着剤層54の縦弾性係数は、好適には500MPa以下とされており、より好適には100MPa以下とされている。これにより、接着剤層54の弾性変形による金属プレート12と樹脂プレート14との線膨張率の違いによる相対変位が十分に許容されて、冷却用熱交換器10の反りや接着剤層54の損傷等が回避される。
【0066】
ピン56で直接接合される狭義の中央領域を構成する位置規定部52aの外径寸法は、好適には30mm以下とされており、より好適には10mm以下とされている。このように、樹脂プレート14における中央領域の面積割合が十分に小さくされることにより、樹脂プレート14における変形拘束領域が狭くなる。その結果、金属プレート12に対する相対変位を許容される外周領域の面積が大きく確保されて、金属プレート12と樹脂プレート14との線膨張率の違いによる冷却用熱交換器10の反りや接着剤層54の損傷等が防止される。
【0067】
図6には、本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器60が示されている。冷却用熱交換器60は、図7に示すように、冷却面構成部材としての金属製の金属プレート62と、流路部材としての合成樹脂製の樹脂プレート14とが、上下方向で相互に重ね合わされた構造を有している。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことによって、説明を省略する。
【0068】
金属プレート62は、第一の実施形態の金属プレート12に比して、前後方向の長さが短くされており、樹脂プレート14と略同じ前後長さ寸法とされている。従って、金属プレート62は、上面視において左右方向が長尺とされた長方形とされている。金属プレート62は、中央の一箇所だけに挿通孔18が形成されている。金属プレート62は、対角部分に図示しない貫通孔がそれぞれ形成されている。金属プレート62における各貫通孔の形成部分には、ポート部材20がそれぞれ取り付けられている。
【0069】
金属プレート62は、樹脂プレート14に対して上方から重ね合わされており、第一の実施形態と同様に、外周領域において弾性を有する接着剤で接着されていると共に、中央領域において挿通孔18に挿通されたピン56で接着剤層を介することなく直接接合されている。本実施形態では、1つの金属プレート62に対して1つの樹脂プレート14が重ね合わされて取り付けられている。
【0070】
本実施形態に示すように、1つの金属プレート62と1つの樹脂プレート14とによって、冷却用熱交換器60を構成することも可能である。この場合に、金属プレート62及び樹脂プレート14を比較的に小型とすることにより、線膨張率の違いによる冷却用熱交換器60の反りや接着剤の剥離等が防止される。なお、前記第一の実施形態に示すような大判の金属プレート(12)に対して、4つの樹脂プレート14,14,14,14に代わる1つの大判の樹脂プレートを重ね合わせて、大型の冷却用熱交換器を1つの金属プレートと1つの樹脂プレートとによって少ない部品点数で構成することも可能である。
【0071】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、直接接合部は、合成樹脂製の流路部材において、接着剤層が設けられる外周領域よりも内周側の中央領域に設けられていればよく、中央領域に複数の直接接合部を設けること等も可能である。
【0072】
前記第一,第二の実施形態では、直接接合部の直接接合構造としてピン接合を例示したが、直接接合部の直接接合構造は、ピン接合に限定されるものではない。具体的には、例えば、図8に示す冷却用熱交換器70のように、ボルト72とナット74による接合構造を採用することもできる。また、例えば、合成樹脂製の流路部材における冷却面構成部材との重ね合わせ面をレーザーや摩擦熱等で溶融させて、流路部材と冷却面構成部材とを溶着することで、直接接合構造を構成することもできる。
【0073】
接着剤逃し部は、前記第一,第二の実施形態に示すような溝状に限定されず、冷却面構成部材から離隔して、冷却面構成部材との間に接着剤の収容領域を形成するものであればよい。接着剤逃し部は、例えば、接着面と同じ平面上で接着面の外側に広がるように設けられていてもよいし、接着面よりも冷却面構成部材に近接した面で構成することもできる。
【0074】
冷却流路の形状は、前記実施形態に示した直線的に延びるものに限定されず、例えば渦巻き状や平面的な2重螺旋状、蛇行状等であってもよい。また、冷却流路内に突出する突起などを設けて、冷却流路を流れる熱媒体が撹拌され易くなるようにしてもよい。
【0075】
流路部材及び冷却面構成部材の平面視での形状は、特に限定されるものではなく、長方形や正方形の他、各種多角形や円形等であってもよい。また、流路部材及び冷却面構成部材の大きさは、例えば冷却対象の大きさ等に応じて適宜に設定される。
【0076】
冷却対象は、前記第一の実施形態で例示したバッテリーパックBに限定されるものではなく、例えば、電子回路等を発熱体として備える制御装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 冷却用熱交換器(第一の実施形態)
12 金属プレート(冷却面構成部材)
14 樹脂プレート(流路部材)
16 肉抜孔
18 挿通孔
20 ポート部材
22 フランジ状部
24 抜止突部
26 凹部
28 外周接着部
30 接着面
32 逃し溝(接着剤逃し部)
34 位置規定部
34a 位置規定部
34b 位置規定部
36 内周接着部
36a 内周接着部
36b 内周接着部
38 接着面
40 逃し溝(接着剤逃し部)
42 位置規定部
44 中央接合部(直接接合部)
46 挿通孔
48 接着面
50 逃し溝(接着剤逃し部)
50a 逃し溝(接着剤逃し部)
50b 逃し溝(接着剤逃し部)
52 位置規定部
52a 位置規定部
52b 位置規定部
54 接着剤層
56 ピン
58 冷却流路
60 冷却用熱交換器(第二の実施形態)
62 金属プレート(冷却面構成部材)
70 冷却用熱交換器(他の一実施形態)
72 ボルト
74 ナット
B バッテリーパック(冷却対象)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8