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特開2025-10247構造的複屈折共振器によるVCSEL偏光制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010247
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】構造的複屈折共振器によるVCSEL偏光制御
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20250109BHJP
   H01S 5/12 20210101ALI20250109BHJP
   H01S 5/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/12
H01S5/34
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024188947
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2023127604の分割
【原出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】63/417,626
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/312,967
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ピシス
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ティレッリ
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニー・ジビック
(57)【要約】
【課題】本開示は、構造的複屈折共振器を伴うVCSELを形成する方法を説明する。
【解決手段】本方法は、複数の層を含む下部構造体を形成するために、基板上で、下部分布ブラッグ反射器(DBR)、および、共振器の第1の部分を成長させるステップを含む。1つまたは複数の異方性フィーチャが、パターニングされた成長界面を生成するために、下部構造体の上側層上でエッチングされる。パターニングされた成長界面上の、共振器の残りの部分、および上部DBRが、エピタキシャル構造体を形成するために過成長させられる。1つまたは複数の酸化物開口が、エピタキシャル構造体内で形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ構造体を形成する方法であって、
複数の層を含む下部構造体を形成するために、基板上で、下部分布ブラッグ反射器(DBR)、および、共振器の第1の部分を成長させるステップと、
パターニングされた成長界面を生成するために、前記下部構造体の上側層上で、1つまたは複数のフィーチャをエッチングするステップと、
エピタキシャル構造体を形成するために、前記パターニングされた成長界面上で、前記共振器の残りの部分および上部DBRを過成長させるステップと、
前記エピタキシャル構造体内で1つまたは複数の開口を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記共振器の前記第1の部分は、複数の活性領域量子井戸を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、エッチングする前記ステップは、ドライエッチングおよびウェットエッチングのうちの1つである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、リソグラフィによって画定されるサブ波長フィーチャである、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、線形格子である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、過成長させる前記ステップは、前記下部構造体のエッチングされた前記層とは異なる材料屈折率を有する層を生成する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、前記上部DBRのプロファイルに転写される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、1つまたは複数のフィーチャの選択によって複屈折強度を制御するステップを含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記1つまたは複数のフィーチャは、格子リッジ幅および格子周期により特徴付けられる格子を含み、
前記方法は、前記格子リッジ幅と前記格子周期との比率によって複屈折強度を制御するステップを含む、
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、1つまたは複数の開口を形成する前記ステップは、前記エピタキシャル構造体の上部成長の一部として、前記パターニングされた成長界面の上方で酸化層を成長させるステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、1つまたは複数の開口を形成する前記ステップは、前記エピタキシャル構造体の前記下部構造体の一部として、前記パターニングされた成長界面の下方で酸化層を成長させるステップを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、パターニングされた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)共振器にトンネル接合リソグラフィック開口を導入するステップを含む方法。
【請求項13】
レーザ構造体を形成する方法であって、
複数の層を含む下部構造体を形成するために、基板上で、下部分布ブラッグ反射器(DBR)、および、共振器の第1の部分を成長させるステップと、
前記下部構造体上でリソグラフィック開口を生成するステップと、
前記リソグラフィック開口上でスペーサ層を過成長させるステップと、
パターニングされた成長界面を形成するために、前記スペーサ層において1つまたは複数のフィーチャをエッチングするステップと、
エピタキシャル構造体を形成するために、前記パターニングされた成長界面上で上部DBRを過成長させるステップと
を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記リソグラフィック開口は、トンネル接合である、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、1つまたは複数のフィーチャの選択によって複屈折強度を制御するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、
前記1つまたは複数のフィーチャは、格子リッジ幅および格子周期により特徴付けられる格子を含み、
前記方法は、前記格子リッジ幅と前記格子周期との比率によって複屈折強度を制御するステップを含む、
方法。
【請求項17】
レーザ構造体を形成する方法であって、
複数の層を含む下部構造体を形成するために、基板上で、下部分布ブラッグ反射器(DBR)、および、共振器の第1の部分を成長させるステップと、
前記下部構造体上でリソグラフィック開口を生成するステップと、
前記リソグラフィック開口上でスペーサ層を成長させるステップと、
前記スペーサ層を通るエッチングによって前記リソグラフィック開口を画定するステップと、
パターニングされた成長界面を形成するために、前記スペーサ層において1つまたは複数のフィーチャをエッチングするステップと、
エピタキシャル構造体を形成するために、前記パターニングされた成長界面上で上部DBRを過成長させるステップと
を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、1つまたは複数のフィーチャの選択によって複屈折強度を制御するステップを含む方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記1つまたは複数のフィーチャは、格子リッジ幅および格子周期により特徴付けられる格子を含み、
前記方法は、前記格子リッジ幅と前記格子周期との比率によって複屈折強度を制御するステップを含む、
方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記リソグラフィック開口は、トンネル接合である、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記下部DBRは、前記上部DBRと比較してより低い反射率を有し、それにより下部発光構成を可能にする、方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法であって、前記下部DBRは、前記上部DBRと比較してより低い反射率を有し、それにより下部発光構成を可能にする、方法。
【請求項23】
請求項17に記載の方法であって、前記下部DBRは、前記上部DBRと比較してより低い反射率を有し、それにより下部発光構成を可能にする、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、異方性フィーチャである、方法。
【請求項25】
請求項13に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、異方性フィーチャである、方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法であって、前記1つまたは複数のフィーチャは、異方性フィーチャである、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数の開口は、インプランテーションを含む、方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法であって、前記1つまたは複数の開口は、ブロッキング層リソグラフィック開口を含む、方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法であって、前記共振器の前記残りの部分は、複数の活性領域量子井戸を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]従前の垂直共振器面発光レーザの限界および不利点が、そのような従前の手法を、図面を参照して本開示の残り箇所において論述される本方法およびシステムのいくつかの態様と比較することによって、当業者に明らかになる。
【発明の概要】
【0002】
[0002]実質的には、図のうちの少なくとも1つにより例示される、および/または、図のうちの少なくとも1つと結び付けて説明される、特許請求の範囲においてより完全に論述されるような、偏光を制御するように動作可能な複屈折共振器を伴う垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を生成するためのシステムおよび方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】[0003]本開示の様々な例示的な実施形態による、複屈折共振器を伴う例示的なVCSELエピタキシャル構造体を示す図である。
図2A】[0004]図2Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、共振器の例を示す図である。
図2B図2Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、共振器の例を示す図である。
図3A】[0005]図3Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタに関する実効屈折率の例示的な変化を示す図である。
図3B】[0006]図3Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタに関する複屈折強度の例示的な変化を示す図である。
図4A】[0007]図4Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、平行偏光方向と関連付けられる発光波長の例、および、直角偏光方向と関連付けられる発光波長の例を示す図である。
図4B】[0008]図4Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、図4Aの発光波長と関連付けられる利得の例を示す図である。
図5A】[0009]図5Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、酸化物開口が、パターニングされた成長界面の上方にある、パターニングされた共振器を伴う酸化物開口VCSEL(oxide aperture VCSEL)の例を示す図である。
図5B】[0010]図5Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、酸化物開口が、パターニングされた成長界面の下方にある、パターニングされた共振器を伴う酸化物開口VCSELの例を示す図である。
図6A】[0011]本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの別々のエッチングおよび過成長(overgrowth)ステップにより、パターニングされた共振器をトンネル接合リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す図である。
図6B】[0012]本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長ステップにより、パターニングされた共振器をトンネル接合リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す図である。
図7A】[0013]本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの別々のエッチングおよび過成長ステップにより、パターニングされた共振器をブロッキングリソグラフィック開口と組み合わせる例を示す図である。
図7B】[0014]本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長ステップにより、パターニングされた共振器をブロッキング層リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す図である。
図8】[0015]本開示の様々な例示的な実施形態による、インプランテーション(implantation)による例示的な開口画定を示す図である。
図9】[0016]本開示の様々な例示的な実施形態による、パワー対電流および偏光特性の例を示す図である。
図10】[0017]本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタおよび格子屈折率コントラストに関する直線偏光度(DOLP)の例示的な変化を示す図である。
図11】[0018]本開示の様々な例示的な実施形態による、光学パワーおよび偏光特性対動作電流の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
[0019]垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)は、ウエハから個々のチップを劈開することにより形成された面から発光する従来の端面発光半導体レーザとは反対に、上部面から直角なレーザビーム発光を伴う半導体レーザダイオードのタイプである。VCSELは、コンピュータマウス、ファイバ光学通信、レーザプリンタ、Face ID、およびスマートグラスを含む、様々なレーザ製品において使用される。
【0005】
[0020]偏光方向は、関連付けられるしきい値電流が他の偏光方向よりも低いときに、レーザにおいて助長され得る。所望される偏光方向についてのしきい値利得に達すると、利得クランピングが、所望されない偏光される方向のしきい値利得に達することを防止し、偏光を固定する。しきい値利得レベルは、光学利得係数および光学損失により制御される。レーザ偏光制御は、第1および第2の機構としての偏光依存利得係数、ならびに、第3の機構としての光学損失を誘導することにより達成される。そのような偏光依存利得および光学損失は、エミッタの面発光および円形幾何形状に起因して、VCSELにおいてデフォルトでは存在しない。それゆえに、本開示において説明されるように、偏光依存利得および光学損失が、VCSELの偏光を制御するために誘導され得る。
【0006】
[0021]本開示は、共振器内で異方性フィーチャをパターニングし、過成長を実行することによる、VCSELにおける偏光の制御を説明する。パターニングは、共振器構造体に複屈折性質を導入する。複屈折は、光の偏光および伝搬方向に依存する屈折率を有する材料の光学性質である。異方性材料は、異なる方向において測定されるときに異なる値を有する物理性質により特徴付けられる。複屈折材料は、光学的に異方性である。
【0007】
[0022]図1は、本開示の様々な例示的な実施形態による、複屈折共振器を伴う例示的なVCSELエピタキシャル構造体を例示する。
[0023]図1において表されるエピタキシ構造体は、以下のように形成される。第1の成長の中で、下部分布ブラッグ反射器(DBR)101、および、活性領域量子井戸(QW)103を含む共振器105の第1の部分が、基板上で成長させられる。次いで、異方性フィーチャが、下部構造体の上側層上で、リソグラフィによって画定され、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれかを使用して、浅くエッチングされる。下部と上部との間の界面が、共振器105内に位置する。下部構造体は、下部DBR101と、活性領域QW103と、下部構造体の上側層105aとを含む。上部構造体は、上部構造体の下側層105bと、上部DBR107とを含む。
【0008】
[0024]上部発光構成において、上部DBR107は、下部DBR101よりも低い反射率を有する。下部発光構成において、下部DBR101は、上部DBR107と比較して、より低い反射率を有する。下部発光構成において、レーザビームは、基板を通って進む。
【0009】
[0025]異方性フィーチャの例は、線形格子を含む。格子は、さらには、2Dであり得、異方性フィーチャ、例えば、直交方向において異なる周期を伴う、卵形/楕円、長方形、菱形、または円/正方形を含んでいることがある。線形格子は、周期的、準周期的、また
は、ランダムな線形格子であることがある。
【0010】
[0026]共振器105の残りの部分、および上部DBR107は、過成長させられ、VCSELの共振器105(例えば、ファブリ・ペロー共振器)を完全なものにする。結果的に生じるエピタキシャル構造体は、次いで、酸化物開口VCSELエミッタを形成するために、標準的なウエハ処理を受け得る。表側および裏側の両方の発光が、本手法によって考慮され得るということに留意されたい。異なる構成が、さらには、図5および図6に関して、下記で説明される。
【0011】
[0027]図2Aおよび図2Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、共振器の例を示す。
[0028]第1の例示的な構成(図2A)において、過成長させられた層は、下部構造体のエッチングされた層のnと比較して、異なる材料屈折率nを有する。平面状の反射器によって、エッチングされたフィーチャのプロファイルにしたがう、共振器の光学的厚さの変動が結果的に生じることになる。
【0012】
[0029]第2の例示的な構成(図2B)において、過成長層は、下部構造体のエッチングされた層と同じ屈折率を有する。過成長界面が反射器のうちの1つに近いならば、エッチングされたフィーチャは、反射器プロファイルに転写された様態になる。両方の構成によって、エッチングされたプロファイルにしたがう、共振器の光学的厚さの変動が結果的に生じる。共振器の光学的厚さにおける変動に起因して、局所的屈折率が、Δnだけずらされることがある。結果として、屈折率プロファイルは、エッチングされたフィーチャにしたがう。
【0013】
[0030]屈折率の異方性プロファイルは、異方性、すなわち複屈折である等価実効屈折率を呈する。格子に平行な屈折率n(遅相軸)は、格子に直角な屈折率n(進相軸)よりも大きい。遅相軸の屈折率と進相軸の屈折率との間の差(n-n)は、Δnである。比率(n-n)/nは、複屈折強度を定義する。複屈折強度は、格子幾何形状および格子屈折率コントラストΔn/nに依存する。
【0014】
[0031]図3Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタに関する実効屈折率の例示的な変化を示す。
[0032]図3Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタに関する複屈折強度の例示的な変化を示す。
【0015】
[0033]フィルファクタ(FF)は、格子リッジ幅と格子周期との比率により定義される。3%の格子屈折率コントラスト(Δn/n)について、複屈折は、約0.5のフィルファクタについて最大である。複屈折強度は、利得クランピング機構を考慮して十分に高い、約0.02%であると推定される。
【0016】
[0034]複屈折媒体を伴う共振器内で、遅相軸に平行および直角な偏光は、異なる屈折率によって伝搬する。図4Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、平行偏光方向と関連付けられる発光波長の例、および、直角偏光方向と関連付けられる発光波長の例を示す。共振器厚さが両方の方向について同じであるということを考慮して、2つの方向は、図4Aにおいて例示されるように、2つの異なる発光波長λ(遅相軸)およびλ(進相軸)に関連付けられる。光学的厚さは、物理的厚さと屈折率の積である。光学的厚さが、発光波長を決める。
【0017】
[0035]図4Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、発光波長と関連付けられる利得の例を示す。量子井戸(QW)は、典型的には、波長によって変動する利得をもたら
す。偏光依存発光波長および波長依存利得を組み合わせることによって、図4Bにおいて示されるような偏光依存利得が結果的に生じる。最も高い利得係数と関連付けられる偏光方向が助長される。この第1の機構による助長される偏光方向は、波長による利得変動に依存する。利得最大値における波長よりも大きい波長について、利得は、波長が大きくなるにつれて減少する。そうして、進相軸に沿った(すなわち、格子方向に直角な)偏光が助長される。よって、第1の機構において、偏光方向は、偏光依存利得によって選択される。
【0018】
[0036]第2の機構において、複屈折性質を伴う共振器は、偏光方向に依存する閉じ込め因子を呈し得る。進相軸に沿った偏光は、遅相軸に沿った偏光と比較して、より少なく閉じ込められる傾向がある。VCSELにおいて、横方向利得プロファイルは、電流集中および空間的ホールバーニングに起因して、開口にわたって一定ではない。そうして、わずかに、より少なく閉じ込められる、格子に直角な偏光は、より多くの利得を受け取り、助長される。
【0019】
[0037]第3の機構において、線形格子が、垂直方向から横方向に光を結合する。結合効率は、偏光依存であり、格子リッジ方向に平行な偏光は、結合される公算がより大きい。このことによって、平行偏光についての上乗せの共振器損失が結果的に生じる。直角偏光が、そうして助長される。この機構は、利得曲線に依存しないという利点を有する。よって、この第3の機構は、偏光依存光学損失を使用する。
【0020】
[0038]共振器の異方性パターニングによる偏光制御は、VCSELの電気的および光学的開口を画定するために、異なる製造方法と組み合わされ得る。VCSEL開口は、酸化、インプランテーションによって、または、リソグラフィックに画定され得る。リソグラフィック開口VCSELは、トンネル接合またはブロッキング層の、後続のエッチングおよび過成長を実現し得る。
【0021】
[0039]図5Aおよび図5Bは、酸化物開口を伴うパターニングされた共振器の2つの構成を提示する。両方の構成について、製造は、段落23において提示されたように、パターニングされた共振器を伴うエピタキシャル構造体の形成によって開始する。エピタキシャル構造体は、高アルミニウム濃度層を含む。構造体の酸化中、この層は、構造体の残部と比較して、より大きい速度で酸化する。層の酸化されない部分は、動作電流の流れとレーザビームとを閉じ込める開口を形成する。
【0022】
[0040]図5Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、酸化物開口が、パターニングされた成長界面の上方にある、パターニングされた共振器を伴う酸化物開口VCSELの例を示す。図5Aにおいて、開口を形成する酸化層は、パターニングされた成長界面の上方に位置する。
【0023】
[0041]図5Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、酸化物開口が、パターニングされた成長界面の下方にある、パターニングされた共振器を伴う酸化物開口VCSELの例を示す。図5Bにおいて、酸化層は、パターニングされた成長界面の下方に位置し、下部エピタキシャル構造体の一部である。
【0024】
[0042]図6Aおよび図6Bは、パターニングされたVCSEL共振器をトンネル接合リソグラフィック開口とどのように組み合わせるかを提示する。後続のエッチングおよび過成長ステップによって、特定の区域上の埋め込みトンネル接合の挿入が可能になる。トンネル接合を伴うリソグラフィックに画定された区域は、トンネル接合を伴わない区域よりも相当に導電性であり、そのことが、横方向電気的閉じ込めを可能とし、VCSEL開口を画定する。2つのプロセスフローが、共振器の異方性パターニングを導入するために可
能である。
【0025】
[0043]図6Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの別々のエッチングおよび過成長ステップにより、パターニングされた共振器をトンネル接合リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す。図6Aにおいて提示されるプロセスフローにおいて、開口画定および格子パターニングが、別々のエッチングおよび成長ステップにおいて行われる。そのプロセスフローは、下部DBRと活性領域とを含み、トンネル接合層によって終結する、下部エピタキシャル構造体の成長によって開始する。第1のエッチングステップの後、トンネル接合の残りの部分が、開口を画定する。スペーサ層が、過成長させられる。偏光制御のための格子が、スペーサ層においてパターニングされる。最後に、上部DBRを含む上部エピタキシャル構造体が、過成長させられる。
【0026】
[0044]図6Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長ステップにより、パターニングされた共振器をトンネル接合リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す。図6Bにおいて提示される第2のプロセスフローにおいて、開口および格子が、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長の中で画定される。そのプロセスフローによって、過成長の数を2から1に低減することが可能となる。この事例において、下部エピタキシャル構造体は、トンネル接合層およびスペーサ層によって終結する。第1のエッチングが、トンネル接合の下部に至るまで開口を画定した。次いで、より浅いエッチングが、偏光制御のための格子を画定する。最後に、上部エピタキシャル構造体が、過成長させられる。
【0027】
[0045]図7Aおよび図7Bは、パターニングされた共振器にブロッキング層リソグラフィック開口をどのように導入するかを提示する。後続のエッチングおよび過成長ステップによって、エピタキシャル構造体の中の特定の区域上へのブロッキング層の挿入が可能になる。ブロッキング層を伴うリソグラフィックに画定された区域は、ブロッキング層を伴わない区域よりも相当に電気抵抗が高く、そのことが、横方向電気的閉じ込めを可能とし、VCSEL開口を画定する。2つのプロセスフローが、共振器の異方性パターニングを導入するために可能である。
【0028】
[0046]図7Aは、本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの別々のエッチングおよび過成長ステップにより、パターニングされた共振器をブロッキング層リソグラフィック開口と組み合わせる例を示す。図7Aにおいて提示されるプロセスフローにおいて、開口画定および格子パターニングが、別々のエッチングおよび成長ステップにおいて行われる。そのプロセスフローは、下部DBRと活性領域とを含み、ブロッキング層によって終結する、下部エピタキシャル構造体の成長によって開始する。ブロッキング層の第1のエッチングステップが、開口を画定する。スペーサ層が、過成長させられる。偏光制御のための格子が、スペーサ層においてパターニングされる。最後に、上部DBRを含む上部エピタキシャル構造体が、過成長させられる。
【0029】
[0047]図7Bは、本開示の様々な例示的な実施形態による、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長ステップにより、パターニングされた共振器をブロッキングリソグラフィック開口と組み合わせる例を示す。図7Bにおいて提示される第2のプロセスフローにおいて、開口および格子が、2つの連続的なエッチングステップおよび1つの過成長の中で画定される。そのプロセスフローによって、過成長の数を2から1に低減することが可能となる。この事例において、下部エピタキシャル構造体は、ブロッキング層およびスペーサ層によって終結する。第1のエッチングが、ブロッキング層の下部に至るまで開口を画定した。次いで、より浅いエッチングが、格子を画定する。最後に、上部エピタキシャル構造体が、過成長させられる。
【0030】
[0048]図8は、パターニングされた共振器をイオンインプランテーションによって画定された開口と組み合わせる例を示す。製造は、段落23(上記)において提示されたように、パターニングされた共振器を伴うエピタキシャル構造体の形成によって開始する。以下のステップにおいて、イオンインプランテーションは、エピタキシャル構造体の領域を電気的に絶縁する。インプランテーションされない領域は、動作電流の流れを閉じ込め、VCSEL開口を画定する。
【0031】
[0049]図9は、本開示の様々な例示的な実施形態による、パワー対電流および偏光特性の例を示す。図9における3つのグラフは、光学パワー、DOLP、および方位角を表す。
【0032】
[0050]図9は、光学対電流および偏光特性への、共振器内への線形格子の導入の影響力を示す。格子が存在しないと、直線偏光度(DOLP)は、しきい値における高い値、95%(偏光消光比(PER)13dB)に達する。このことは、シングルモード動作のためと考えられる。動作電流が増大し、より高い次数のモードが出現しているのにつれて、DOPLは相当に減少し、そのことは、低質の偏光制御を指し示す。共振器内に線形格子が存在すると、DOLPは、しきい値から、デバイスがロールオーバすることを開始するまで、>99%(PER>20dB)において維持される。方位角の角度測定は、直線偏光の方向が格子方向に直角なままであるということを示す。このことは、共振器内の線形格子の結果としての、効果的な直線偏光安定性を実証する。
【0033】
[0051]図10は、本開示の様々な例示的な実施形態による、格子フィルファクタおよび格子屈折率コントラストに関するDOLPの例示的な変化を示す。格子屈折率コントラストは、エッチングされない(FF=1)、および、最大限にエッチングされた(FF=0)共振器エミッタからの発光波長差から、ならびに、次の関係を使用して推定される。
【0034】
Δn/n=Δλ/λ
[0052]そうして、エッチング深さが深いほど、格子屈折率コントラストがより大きくなり、その結果、複屈折強度がより強くなる。偏光の効果的な制御は、格子屈折率コントラストが2%の場合、0.2から0.3の範囲の格子フィルファクタで実証される。格子屈折率コントラストが3%の場合、安定した偏光のためのフィルファクタの範囲は、0.1から0.5と、より広くなる。格子屈折率コントラストが、より大きくなるにつれて、格子フィルファクタに関する製造公差は緩和される。
【0035】
[0053]図11は、本開示の様々な例示的な実施形態による、光学パワーおよび偏光特性対動作電流の例を示す。図11における3つのグラフは、光学パワー、DOLP、および方位角を表す。図11は、格子を伴うVCSELデバイスについての、25℃から75℃の範囲に及ぶ裏側温度のもとでの、光学パワーおよび偏光特性対動作電流の変化を示す。偏光は、調査された動作範囲全体を通して、強度(DOLP>99%、PER>20dB)および方向(格子に直角)の見地において、安定したままである。このことは、共振器パターニングによる偏光制御のロバスト性を実証する。図11における例示的なデバイス参照物は、1μm周期と、0.2のフィルファクタとを有する共振器格子を伴う、6μm直径VCSELである。
【0036】
[0054]本方法および/またはシステムは、ある決まった実施形態を参照して説明されたが、本方法および/またはシステムの範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、均等物が置換され得ることが、当業者により理解されるであろう。加えて、多くの修正が、本開示の教示に対して、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を適合させるためになされ得る。それゆえに、本方法および/またはシステムは、開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本方法および/またはシステムは、添付され
る特許請求の範囲の範囲内にあるすべての実施形態を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0037】
101 下部分布ブラッグ反射器(DBR)、下部DBR
103 活性領域量子井戸(QW)、活性領域QW
105 共振器
105a 下部構造体の上側層
105b 上部構造体の下側層
107 上部DBR
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体であって、
下部分布ブラッグ反射器(DBR)と、
共振器の第1の部分と、
前記下部構造体の上側層上にエッチングされたパターニングされた成長界面と
を含む下部構造体と、
エピタキシャル構造体であって、
前記パターニングされた成長界面に動作上結合した前記共振器の第2の部分と、
前記パターニングされた成長界面に動作上結合した上部DBRと、
1つまたは複数の開口と、
を含むエピタキシャル構造体と
を含むレーザ構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記共振器の前記第1の部分は、複数の活性領域量子井戸を含む、レーザ構造体。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面は、ウェットエッチング又はドライエッチングされた、レーザ構造体。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面は、リソグラフィによって画定されるサブ波長フィーチャを含む、レーザ構造体。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面は、線形格子を含む、レーザ構造体。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記下部構造体は、前記エピタキシャル構造体とは異なる材料屈折率を有する、レーザ構造体。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面の1つまたは複数のフィーチャは、前記上部DBRのプロファイルに転写される、レーザ構造体。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面は、複屈折強度を決定する、レーザ構造体。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記パターニングされた成長界面は、格子リッジ幅および格子周期により特徴付けられる格子を含む、レーザ構造体。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、 前記パターニングされた成長界面は、格子リッジ幅と格子周期との比率によって複屈折強度を決定する、レーザ構造体。
【請求項11】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記1つまたは複数の開口は、前記エピタキシャル構造体の上部成長の一部として、前記パターニングされた成長界面の上方で酸化層を成長させることによって形成される、レーザ構造体。
【請求項12】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記1つまたは複数の開口は、前記エピタキシャル構造体の前記下部構造体の一部として、前記パターニングされた成長界面の下方で酸化層を成長させることによって経営される、レーザ構造体。
【請求項13】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、トンネル接合リソグラフィック開口を有するパターニングされた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)共振器を含むレーザ構造体。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記下部構造体の前記上側層はスペーサ層である、レーザ構造体。
【請求項15】
請求項1に記載のレーザ構造体であって、前記下部構造体はリソグラフィック開口である、レーザ構造体。
【外国語明細書】