(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102489
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】樽印刷システム及び樽印刷方法
(51)【国際特許分類】
B65B 61/02 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
B65B61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219956
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小山 宏和
(72)【発明者】
【氏名】石井 大輔
【テーマコード(参考)】
3E056
【Fターム(参考)】
3E056AA20
3E056BA01
3E056DA01
3E056EA05
3E056FA02
3E056FH05
3E056GA04
(57)【要約】
【課題】本開示は、タクトタイムを短縮し、現状のプラスチック製のラベルを用いた場合の生産能力以上の生産能力を実現できる樽印刷システム及び樽印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る樽印刷システム1は、樽100の外表面に印刷する樽印刷システムであり、樽100の昇降自転装置10と、樽100の側面に印刷する印刷装置20と、を備え、昇降自転装置10は、樽100を支持するとともに樽を上昇させる支持部品14と、樽100の上昇を所定量に規制する押さえ部品16と、樽100を樽100の中心軸Oを中心に自転させる自転機構と、有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樽の外表面に印刷する樽印刷システムにおいて、
前記樽印刷システムは、前記樽の昇降自転装置と、前記樽の側面に印刷する印刷装置と、を備え、
前記昇降自転装置は、
前記樽を支持するとともに前記樽を上昇させる支持部品と、
前記樽の上昇を所定量に規制する押さえ部品と、
前記樽を該樽の中心軸を中心に自転させる自転機構と、
を有することを特徴とする樽印刷システム。
【請求項2】
前記樽は、第1スカート壁と、第2スカート壁と、前記第1スカート壁若しくは前記第2スカート壁のいずれか一方又は両方に設けられて前記樽の径方向内側に向けて突出するリムと、を備え、
前記支持部品は、前記リムを支持することを特徴とする請求項1に記載の樽印刷システム。
【請求項3】
前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、
前記支持部品は、前記基体に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品と、該スライド部品に連動する支持爪と、を有し、
該支持爪は、前記樽の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、前記リムに接しながら前記樽の径方向外側に向けて移動することを特徴とする請求項2に記載の樽印刷システム。
【請求項4】
前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、
前記支持部品は、前記基体に取り付けられて回動する回動部品であり、
該回動部品は、前記樽の内側から前記リムに向かって回動して前記リムを押し上げることを特徴とする請求項2に記載の樽印刷システム。
【請求項5】
前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の樽印刷システム。
【請求項6】
前記樽は、スピアバルブを有する第1端壁と該第1端壁に対向する第2端壁とを有する樽本体を備え、前記第1端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給されることを特徴とする請求項5に記載の樽印刷システム。
【請求項7】
前記樽は、スピアバルブを有する第1端壁と該第1端壁に対向する第2端壁とを有する樽本体を備え、前記第2端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給されることを特徴とする請求項5に記載の樽印刷システム。
【請求項8】
前記樽は、第1スカート壁と第2スカート壁とを備え、
前記第1スカート壁若しくは前記第2スカート壁のいずれか一方又は両方は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、周壁と、該周壁に設けられた貫通孔と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の樽印刷システム。
【請求項9】
前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、
前記支持部品は、前記基体に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品と、該スライド部品に連動する支持爪と、を有し、
該支持爪は、前記樽の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、前記貫通孔の周縁に接しながら前記樽の径方向外側に向けて移動することを特徴とする請求項8に記載の樽印刷システム。
【請求項10】
前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、
前記支持部品は、前記基体に取り付けられて回動する回動部品であり、
該回動部品は、前記樽の内側から前記貫通孔に向かって回動して前記貫通孔を押し上げることを特徴とする請求項8に記載の樽印刷システム。
【請求項11】
前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有し、
前記第1スカート壁は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、
前記樽は、前記第1スカート壁に連接してスピアバルブを有する第1端壁と、該第1端壁に対向して前記第2スカート壁に連接する第2端壁と、を有し、前記第1端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給されることを特徴とする請求項8に記載の樽印刷システム。
【請求項12】
前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有し、
前記第2スカート壁は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、
前記樽は、前記第1スカート壁に連接してスピアバルブを有する第1端壁と、該第1端壁に対向して前記第2スカート壁に連接する第2端壁と、を有し、前記第2端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給されることを特徴とする請求項8に記載の樽印刷システム。
【請求項13】
前記樽印刷システムは、前記樽を、該樽の搬送装置による搬送速度よりも速い速度で搬送経路の下流に向けて移動させる排出機構を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の樽印刷システム。
【請求項14】
前記印刷装置は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、
前記インクジェットヘッドは、前記昇降自転装置によって持ち上げられた前記樽の側面に向いていることを特徴とする請求項1に記載の樽印刷システム。
【請求項15】
樽の外表面に印刷する樽印刷方法において、
該樽印刷方法は、搬送されてきた前記樽を支持するとともに該樽を所定高さに上昇させる工程と、
上昇させた前記樽を該樽の中心軸を中心に自転させつつ、前記樽の外表面にインクを付着させるインク付着工程と、を含むことを特徴とする樽印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樽印刷システム及び樽印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールなどのアルコール飲料又は清涼飲料水の貯蔵・輸送用の容器として、容量が例えば7リットル以上の大容量の金属製の樽(以降、大樽ということもある。)が知られている。このような大樽では、流通過程で商品を判別するためにストレッチラベルなどのプラスチック製のラベルが用いられてきた(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、プラスチック製ラベルを用いずに樽表面に直接インクを用いた印刷に代替することで、プラスチック使用量を削減できることに着想した。しかし、製造工程中で全樽に対してプラスチック製ラベルを用いずに樽表面に直接インクを用いた印刷するためには、現状のプラスチック製のラベルを用いた場合の生産能力と同等以上の能力を持つ印刷システムが必要となる。さらに、印刷システムは既設の製造ラインへの導入を想定しており、できる限り省スペース、かつ低コストでの開発が必要となる。大樽の全周に製造ライン上でプラスチック製ラベルを用いずに樽表面に直接インクを用いた印刷を行う場合、(1)大樽を搬送途中に定位置で停止させる、(2)停止させた大樽を把持する、(3)大樽を持ち上げる、(4)大樽を持ち上げた状態で回転させながら印刷する、(5)印刷後、大樽をコンベアまで降下させる、(6)大樽を印刷システムから排出させる、といった一連の工程を連続動作する印刷システムが必要である。これらの動作を組み合わせていくと1樽あたりの印刷にかかる時間(以降、タクトタイムということもある。)が、現状のプラスチック製のラベルを用いた場合のタクトタイムに到達しない課題があった。
【0005】
本開示は、タクトタイムを短縮し、現状のプラスチック製のラベルを用いた場合の生産能力以上の生産能力を実現できる樽印刷システム及び樽印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樽印刷システムは、樽の外表面に印刷する樽印刷システムにおいて、前記樽印刷システムは、前記樽の昇降自転装置と、前記樽の側面に印刷する印刷装置と、を備え、前記昇降自転装置は、前記樽を支持するとともに前記樽を上昇させる支持部品と、前記樽の上昇を所定量に規制する押さえ部品と、前記樽を該樽の中心軸を中心に自転させる自転機構と、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記樽は、第1スカート壁と、第2スカート壁と、前記第1スカート壁若しくは前記第2スカート壁のいずれか一方又は両方に設けられて前記樽の径方向内側に向けて突出するリムと、を備え、前記支持部品は、前記リムを支持する形態を包含する。
【0008】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、前記支持部品は、前記基体に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品と、該スライド部品に連動する支持爪と、を有し、該支持爪は、前記樽の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、前記リムに接しながら前記樽の径方向外側に向けて移動することが好ましい。支持爪が平行移動する簡易な動作によって、樽を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0009】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、前記支持部品は、前記基体に取り付けられて回動する回動部品であり、該回動部品は、前記樽の内側から前記リムに向かって回動して前記リムを押し上げることが好ましい。回動部品が回動する簡易な動作によって、樽を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0010】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有する形態を包含する。
【0011】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記樽は、スピアバルブを有する第1端壁と該第1端壁に対向する第2端壁とを有する樽本体を備え、前記第1端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
【0012】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記樽は、スピアバルブを有する第1端壁と該第1端壁に対向する第2端壁とを有する樽本体を備え、前記第2端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
【0013】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記樽は、第1スカート壁と第2スカート壁とを備え、前記第1スカート壁若しくは前記第2スカート壁のいずれか一方又は両方は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、周壁と、該周壁に設けられた貫通孔と、を有している形態を包含する。
【0014】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、前記支持部品は、前記基体に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品と、該スライド部品に連動する支持爪と、を有し、該支持爪は、前記樽の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、前記貫通孔の周縁に接しながら前記樽の径方向外側に向けて移動することが好ましい。支持爪が平行移動する簡易な動作によって、樽を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0015】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記昇降自転装置は、基体と、前記基体の自転機構と、前記基体の昇降機構と、を更に備え、前記支持部品は、前記基体に取り付けられて回動する回動部品であり、該回動部品は、前記樽の内側から前記貫通孔に向かって回動して前記貫通孔を押し上げることが好ましい。回動部品が回動する簡易な動作によって、樽を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0016】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有し、前記第1スカート壁は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、前記樽は、前記第1スカート壁に連接してスピアバルブを有する第1端壁と、該第1端壁に対向して前記第2スカート壁に連接する第2端壁と、を有し、前記第1端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
【0017】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記支持部品は、前記樽の一部に適合する形状の支持部を有し、前記第2スカート壁は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、前記樽は、前記第1スカート壁に連接してスピアバルブを有する第1端壁と、該第1端壁に対向して前記第2スカート壁に連接する第2端壁と、を有し、前記第2端壁を下に向けた状態で前記昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
【0018】
本発明に係る樽印刷システムは、前記樽を、該樽の搬送装置による搬送速度よりも速い速度で搬送経路の下流に向けて移動させる排出機構を更に備えることが好ましい。樽を連続的に印刷することができるためタクトタイムをより短縮することができる。
【0019】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記印刷装置は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、前記インクジェットヘッドは、前記昇降自転装置によって持ち上げられた前記樽の側面に向いていることが好ましい。既設の設備に大掛かりなレイアウト変更を必要とせず、プリンタ及び昇降自転装置を組み込むという細部の小規模な変更で印刷を実現することができる。
【0020】
本発明に係る樽印刷方法は、樽の外表面に印刷する樽印刷方法において、該樽印刷方法は、搬送されてきた前記樽を支持するとともに該樽を所定高さに上昇させる工程と、上昇させた前記樽を該樽の中心軸を中心に自転させつつ、前記樽の外表面にインクを付着させるインク付着工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、タクトタイムを短縮し、現状のプラスチック製のラベルを用いた場合の生産能力以上の生産能力を実現できる樽印刷システム及び樽印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る樽印刷システムの一例を示す概略正面図である。
【
図2】支持爪及び押さえ部品の位置関係を説明するための概略図である。
【
図3】スカート壁がリムを有する樽の一例を示す概略部分断面図である。
【
図4】支持爪による樽の支持及び持ち上げを説明するための第一概略図である。
【
図5】支持爪による樽の支持及び持ち上げを説明するための第二概略図である。
【
図6】支持爪による樽の支持及び持ち上げを説明するための第三概略図である。
【
図7】支持爪の好ましい形状の一例を示す概略図であり、(a)は支持爪の根元端を正面視した概略平面図、(b)は爪先端を正面視した概略図である。
【
図8】支持爪の好ましい形状の別の例を示す概略正面図である。
【
図9】回動部品による樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
【
図10】樽の一部に適合する形状を有する部品の第一例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【
図11】樽の一部に適合する形状を有する部品の第二例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【
図12】樽の一部に適合する形状を有する部品の第三例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【
図13】樽がスピアバルブを有する第1端壁を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図12に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(c)は
図10に示す部品が支持部品である形態、(d)は
図11に示す部品が支持部品である形態を示す。
【
図14】樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図10に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図11に示す部品が押さえ部品である形態、(c)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(d)は
図12に示す部品が支持部品である形態を示す。
【
図16】スカート壁の少なくとも外表面がゴム製の樽の一例を示す概略斜視図である。
【
図18】支持爪による
図16に示す樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
【
図19】回動部品による
図16に示す樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
【
図20】
図16に示す樽がスピアバルブを有する第1端壁を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図12に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(c)は押さえ部品がスカート壁に適合する形態、(d)は
図10に示す部品が支持部品である形態、(e)は
図11に示す部品が支持部品である形態を示す。
【
図21】
図16に示す樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図10に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図11に示す部品が押さえ部品である形態、(c)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(d)は押さえ部品がスカート壁に適合する形態、(e)は
図12に示す部品が支持部品である形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0024】
図1は、本実施形態に係る樽印刷システムの一例を示す概略正面図である。本実施形態に係る樽印刷システム1は、樽100の外表面に印刷する樽印刷システムである。樽印刷システム1は、樽100の昇降自転装置10と、樽100の側面に印刷する印刷装置20と、を備え、昇降自転装置10は、樽100を支持するとともに樽を上昇させる支持部品14と、樽100の上昇を所定量に規制する押さえ部品16と、樽100を樽100の中心軸Oを中心に自転させる自転機構と、有する。
【0025】
樽印刷システム1は、例えばベルトコンベアなどの搬送装置17によって搬送されてきた樽100を搬送装置17の搬送面から持ち上げながら樽100を樽100の中心軸Oを中心に自転させつつ、印刷装置20が樽100の側面に印刷を行うシステムである。樽100の中心軸Oは、樽100の上下方向に延びる軸であり、例えばスピアバルブ113の軸である。
図1では一例として、樽100がスピアバルブ113を下に向けた状態で樽印刷システム1に供給される形態を示したが、本発明はこれに限定されず、
図1において樽100の天地を逆転させた状態、すなわち、樽100がスピアバルブ113を上に向けた状態で樽印刷システム1に供給されてもよい。樽印刷システム1は、樽にビールなどのアルコール飲料又は清涼飲料水などの内容物を充填する既設の樽詰システムにインラインで組み込まれていてもよい。既設の樽詰システムは、例えば、回収されてきたリターナブル樽への樽詰装置であり、搬送経路上に、例えば、外洗機、内洗機、充填機がレイアウトされているシステムである。このような樽詰システムに樽印刷システム1をインラインで組み込む場合、樽印刷システム1は、内洗機と充填機との間の搬送経路にレイアウトされることが好ましい。
【0026】
図1では一例として、第1スカート壁101及び第2スカート壁102がステンレスなどの金属製の樽100を樽印刷システム1に供給した形態を示したが、本実施形態では樽の種類はこれに限定されない。本実施形態では、樽は、例えば、
図1に例示するような、第1スカート壁101及び第2スカート壁102がステンレスなどの金属製の樽100、及び、
図16に例示するような、第1スカート壁201若しくは第2スカート壁202のいずれか一方又は両方の少なくとも外表面がゴム製であり、かつ、貫通孔を有する樽200、
図16に例示した樽200において第1スカート壁201若しくは第2スカート壁202のいずれか一方又は両方の少なくとも外表面をプラスチック製又は金属製とした樽を包含する。また、樽100は、リターナブル容器であるか、又はワンウェイ容器であってもよい。内容物は、特に限定されないが、例えば、ビール、発泡酒若しくはその他の発泡性酒類、又は清涼飲料水である。樽100の容量は、例えば、7~20Lが主流であるが、本発明では特に限定されない。
【0027】
図3は、スカート壁がリムを有する樽の一例を示す概略部分断面図である。樽100は、例えば、
図3に示すように、樽本体110と、第1スカート壁101と、第2スカート壁102と、第1スカート壁101若しくは第2スカート壁102のいずれか一方又は両方に設けられて樽100の径方向内側に向けて突出するリム101a,102aと、を備える。樽本体110、第1スカート壁101及び第2スカート壁102は、ステンレスなどの金属製であることが好ましい。樽本体110は、スピアバルブ113を有する第1端壁111と、第1端壁111に対向する第2端壁112と、第1端壁111と第2端壁112とを繋ぐ側壁114と、を有し、内部空間が内容物の収容空間となっている。スピアバルブ113は、内容物の充填口及び注出口を兼ねる。第1スカート壁101は、側壁114のうち第1端壁111が設けられている方向に連接する筒状体である。第2スカート壁102は、側壁114のうち第2端壁112が設けられている方向に連接する筒状体である。
【0028】
リム101a,102aは、環状の突出部である。
図3では一例として、リム101a,102aが、第1スカート壁101及び第2スカート壁102の両方に設けられた形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、リム101aが第1スカート壁101だけに設けられる形態、リム102aが第2スカート壁102だけに設けられる形態であってもよい。リム101a,102aは、第1スカート壁101の端部及び/又は第2スカート壁102の端部に設けられるか、又はリム101a,102aは、第1スカート壁101の周壁及び/又は第2スカート壁102の周壁に設けられていてもよい。リム101a,102aが、第1スカート壁101の端部及び/又は第2スカート壁102の端部に設けられる場合、リム101a,102aは、
図3に示すように、スカート壁101,102の端部を全周にわたって内側に湾曲させ、当該湾曲させた部分を断面が略円形の管状体とした部分である。また、リム101a,102aが第1スカート壁101の周壁及び/又は第2スカート壁102の周壁に設けられる場合、リム101a,102aは、スカート壁101,102の周壁を全周にわたって内側に突出させたリブである。リム101a,102aは、例えば、スカート壁101,102が金属製の樽100において、リム101a,102aに指を引っ掛けて運搬などを行うための把持部としての役割を担う部分である。このうち、リム101a,102aは、
図3に示すように、第1スカート壁101の端部及び/又は第2スカート壁102の端部に設けられ、スカート壁101,102の端部を全周にわたって内側に湾曲させ、当該湾曲させた部分を断面が略円形の管状体とした部分であることが好ましい。これによって、後述する支持部品14でリム101a,102aを支持することができるため樽100をより確実に支持することができる。
【0029】
昇降自転装置10は、例えば、
図1に示すように、基体12と、基体12の自転機構と、基体12の昇降機構13と、基体12に取り付けられた支持部品14と、支持部品14を基体12に対して駆動させる駆動機構と、基体12に取り付けられた押さえ部品16と、を備えることが好ましい。基体12は、例えば、板状部品であり、昇降自転装置10の装置本体11に対して、自転機構によって、自転可能に取り付けられている。自転機構は、基体12を装置本体11に対して自転させる駆動力を与える機構であり、特に限定されないが、例えば、サーボモータであり、制御装置による制御の下で、基体12の自転及び自転の停止を行う。昇降機構13は、基体12を装置本体11に対して上下に稼働させる機構であり、特に限定されないが、例えば、ピストンシリンダであり、制御装置による制御の下で、基体12の降下又は上昇を行う。昇降機構13は、支持部品14及び押さえ部品16を樽100の上端付近の所定位置まで移動させる。昇降機構13のストローク量の大小によって、樽100の大小(高低差)に対応させることができる。支持部品14は、樽100を支持すると同時に上昇させる部品である。駆動機構は、支持部品14が樽100を支持すると同時に上昇させるように駆動させる機構であり、特に限定されないが、例えば、エアシリンダ又は油圧シリンダである。押さえ部品16は、樽100が基体12に近づくに際して、所定距離までしか近づかないように規制する部品である。
【0030】
印刷装置20は、樽100の側面に印刷することができる装置であればよく、特に限定されないが、本実施形態に係る樽印刷システム1では、印刷装置20は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッドは、昇降自転装置10によって持ち上げられた樽100の側面に向いていることが好ましい。印刷装置20をインクジェットプリンタとすることで、既設の設備に大掛かりなレイアウト変更を必要とせず、印刷装置20及び昇降自転装置10を組み込むという細部の小規模な変更で印刷を実現することができる。印刷装置20は、ドロップオンデマンド方式のフルカラーインクジェットプリンタであることが好ましい。印刷装置20としてドロップオンデマンド式のフルカラーインクジェットプリンタを用いることで、プラスチックラベルと同等の美粧性を保有することができる。印刷領域となる樽100の側面は、例えば、樽本体110の側面、第1スカート壁101の側面及び第2スカート壁102の側面を含む。印刷領域は、樽100の側面の周方向の一部だけに設けられてもよいし、樽100の側面の周方向の全域にわたって間欠的又は連続的に設けられてもよい。印刷は、例えば、樽本体110の側面の全周にわたって連続的又は断続的に施されていることが好ましい。
【0031】
樽100が、
図1に示すように昇降自転装置10の直下の所定位置に搬送されると、昇降自転装置10は、昇降機構13が基体12を下方向に移動させて支持部品14及び押さえ部品16を樽100の所定位置に近づける。次いで、駆動機構が支持部品14を樽100に近づく方向に移動させることによって、支持部品14が樽100を支持すると同時に持ち上げる。これによって、樽100が搬送装置17の搬送面から持ち上がる。押さえ部品16は、持ち上げられた樽100の上方向への移動を規制する。これによって、樽100が支持部品14と押さえ部品16とで挟持されて、基体12と樽100とが一体化する。そして、自転機構による基体12の自転によって、樽100が自転する。印刷装置20は、樽100が自転している間に、樽100の側面に向けてインクを吐出する。これによって、樽100の外表面に印刷が施される。印刷を終えると、駆動装置が支持部品14を樽100から離れる方向に移動させることによって、支持部品14による樽100の支持が開放されて、樽100が搬送装置17の搬送面上に戻される。
【0032】
図15は、排出機構の一例を示す概略図である。本実施形態に係る樽印刷システム1は、
図1及び
図15に示すように、樽100を、樽100の搬送装置17による搬送速度よりも速い速度で搬送経路の下流に向けて移動させる排出機構18を更に備えることが好ましい。排出機構18を設けることで、樽100を連続的に印刷することができるためタクトタイムをより短縮することができる。樽100を搬送経路の下流に向けて高速で移動させることができればよく、本実施形態では特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、樽100のスカート壁101にロッド18aを引っ掛けて送り出す機構であることが好ましい。このような機構の具体例としては、例えば、排出機構18は、昇降自転装置10の直下、かつ、搬送装置17の下側に配置されたロッド18aと、ロッド18aを搬送装置17の搬送面の下から搬送面よりも上側に飛び出させる上下機構と、ロッド18aを往復移動させる往復機構と、を備えることが好ましい。ロッド18aは、特に限定されないが、例えば、棒状部材である。上下機構は、特に限定されないが、例えば、ピストンシリンダである。往復機構は、特に限定されないが、例えば、例えば、エアシリンダ又は油圧シリンダである。排出機構18は、例えば次のように作用して樽100の排出を行う。樽100が印刷を終えて搬送装置17の搬送面上に戻された時、上下機構は、ロッド18aを搬送面よりも上側に飛び出させて、ロッド18aの先端部を樽100のスカート壁101,102のうち下側に配置されたスカート壁(
図1では第1スカート壁)101で囲まれた空間内に突出させる。その状態のまま、往復機構は、ロッド18aを搬送装置17による搬送速度よりも速い速度で搬送経路の下流に向けて移動させる。これによって、スカート壁101がロッド18aによって搬送経路の下流に押し出されるため、樽100が搬送経路の下流に向けて移動する。樽100の排出を終えると、往復機構は、ロッド18aを搬送経路の上流に向けて移動させて次の樽100の排出を行う。
【0033】
本実施形態に係る樽印刷システム1は、搬送装置17で搬送されてきた樽100を昇降自転装置の直下へ誘導する誘導機構と、樽100の位置決め機構と、を更に備えていることが好ましい。誘導機構は、例えば、搬送装置17上に配置された誘導板である。位置決め機構は、例えば、搬送装置17の両脇から出没して樽100の側面を挟持するストッパーシリンダである。搬送されてきた樽100は誘導機構に沿って移動し、搬送装置17の搬送面上の所定の位置に誘導される。そして、昇降自転装置10の直下において、樽100は位置決め機構によって所定の位置で停止する。その後、前記した通り、樽100は昇降自転装置10に供給されて印刷が行われる。本実施形態に係る樽印刷システム1の制御方法は、特に限定されず、公知の制御方法を採用してもよい。公知の制御方法は、例えば、光電センサなどの樽検出センサによって樽100の位置を検知して、マイクロプロセッサを有するコンピュータなどの制御装置が樽検出センサからの検出信号に基づいて樽印刷システム1の各要素の動作を制御する方法である。
【0034】
ここまで、本実施形態に係る樽印刷システム1の全体構成について説明してきたが、本実施形態に係る樽印刷システム1は、支持部品による樽100を支持する方法の違いによって、次の形態を包含する。本実施形態に係る樽印刷システム1は、樽100のスカート壁101,102がリム101a,102aを有し、支持部品14が樽100のリム101a,102aを支持する形態(第一実施形態)、樽100のスカート壁101,102が金属製であり、支持部品14が樽100のリム101a,102a以外の部分に適合して支持する形態(第二実施形態)、樽200のスカート壁201,202が
図16に示すように少なくとも外表面がゴム製であるか又はプラスチック製若しくは金属製であり、かつ、貫通孔を有し、当該スカート壁201,202に設けられた貫通孔を支持するか又はスカート壁201,202以外の部分に適合して支持する形態(第三実施形態)を包含する。第一~第三の各実施形態は、ここまで説明してきた樽印刷システム1の全体構成を共通の構成として含む。このため、以降、第一~第三の各実施形態について、特徴的な構成を中心に説明する。
【0035】
(第一実施形態)
まず、第一実施形態について説明する。
図4~
図6は、支持爪による樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。第一実施形態に係る樽印刷システム1では、樽100は、
図3に示すように、第1スカート壁101と、第2スカート壁102と、第1スカート壁101若しくは第2スカート壁102のいずれか一方又は両方に設けられて樽100の径方向内側に向けて突出するリム101a,102aと、を備え、支持部品14は、
図4~
図6に示すように、リム102aを支持する形態を包含する。
【0036】
図3では一例として、リム101a,102aが、第1スカート壁101及び第2スカート壁102の両方に設けられた形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、少なくとも、樽100が昇降自転装置10に供給される時に上側となるスカート壁(
図4~
図6では第2スカート壁)102に設けられていることが好ましい。すなわち、樽100が
図4~
図6に示すように、第2端壁112を上に、第1端壁111を下に向けた状態で昇降自転装置10へ供給される場合、リム102aは、少なくとも、第2スカート壁102に設けられていることが好ましく、樽100が、第1端壁111を上に、第2端壁112を下に向けた状態で昇降自転装置10へ供給される場合、リム101aは、少なくとも、第1スカート壁101に設けられていることが好ましい。
【0037】
第一実施形態に係る樽印刷システム1では、昇降自転装置10は、
図1に示すように、基体12と、基体12の自転機構と、基体12の昇降機構13と、を更に備え、支持部品14は、
図4に示すように、基体12に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品31と、スライド部品31に連動する支持爪30と、を有し、支持爪30は、樽100の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、
図5,
図6に示すように、リム102aに接しながら樽100の径方向外側に向けて移動することが好ましい。支持爪30が平行移動する簡易な動作によって、樽100を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0038】
スライド部品31は、例えば、基体12に対して平行移動する部品であり、例えばレール15に沿って水平方向に移動する。水平方向は、樽100の径方向と一致することが好ましい。スライド部品31は、例えば、レール15に摺動可能に嵌合される摺動部31aと、支持爪30を固定する固定部31bと、を有することが好ましい。スライド部品31は、
図4では一例としてL字型の部品を示したが、本実施形態はこれに限定されない。レール15は、スライド部品31を摺動可能に嵌合する溝と、スライド部品31を摺動させる駆動機構と、を有する。駆動機構は、特に限定されないが、例えば、エアシリンダである。
【0039】
支持爪30は、板状部品又は棒状部品であり、基体12に例えばスライド部品31を介して取り付けられた状態において、樽100の径方向外側に向けて下方に傾斜している。樽100の径方向外側に向けて下方に傾斜しているとは、樽100の径方向外側にむかうにつれて支持爪30のリム102aに対する接触部30aとレール15の摺動面を通る水平面との距離が大きくなるように傾斜していることをいう。
【0040】
第一実施形態に係る樽印刷システム1の作用例を説明する。駆動機構が、スライド部品31を
図4に示す矢印R1のようにレール15に沿って摺動させると、支持爪30がスライド部品31と共に移動する。駆動機構は、
図5に示すように、スライド部品31を、支持爪30の接触部30aが樽100のリム101a、102aのうち上側のリム(
図5では第2スカート壁102のリム)102aに接触する位置に移動させ、更に
図5の矢印R1に示すように支持爪30がリム102aに接触させながら樽100の径方向外側に向けて移動させる。そうすると、
図6に示すように、リム102aが支持爪30の移動に伴って支持爪30の接触部30aに沿ってスライドすることによって、樽100が支持爪30に支持されるとともに
図6において破線で示した樽の位置から実線で示した樽100の位置まで持ち上げられる。このような、支持部品14が樽100を把持すると同時に樽100を上昇させる動きは、タクトタイムの短縮に寄与する。支持部品14によって上昇した樽100は、上側のスカート壁(
図6では第2スカート壁)102の上端が押さえ部品16の下面に接触することでその上昇量が規制される。そして、リム102aが支持部品14の支持爪30と押さえ部品16とによって挟持されて基体12と樽100とが一体化し、基体12の自転機構の作動により、樽100が自転する。支持部品14が、リム102aを接する箇所として支持して把持すると同時に樽100を上昇させる動きは、タクトタイムの短縮に寄与するほか、樽100の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができるので、印刷精度向上に寄与する。
図6では一例として、支持爪30がリム102aの側面を支持する形態を示した。支持爪30はリム102aの側面のうち下半分の部分を支持することが好ましい。また、支持爪30は、リム102aの下面を支持してもよい。
【0041】
図2は、支持爪及び押さえ部品の位置関係を説明するための概略図である。
図2においては、図示の都合上、支持部品14の代わりに支持爪30を図示している。支持部品14の個数は、特に限定されず、1個だけであるか、又は2個以上であってもよい。第一実施形態では、支持部品14は2個以上であることがより好ましい。支持部品14が2個以上であることによって、タクトタイムの短縮効果に加えて、樽100の位置決め効果及び芯出し効果が得られる。本明細書において、芯出しとは、樽100の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とを一致させることをいう。
図2では一例として支持部品14が3個である形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、支持部品14が2個であるか、又は4個以上であってもよい。支持部品14が2個以上であるとき、支持部品14と押さえ部品16とは、
図2に示すように、隣り合う支持部品14同士の間に押さえ部品16が配置されていることが好ましい。これによって、支持部品14と押さえ部品16とで樽100のリム102aを樽100の周方向においてより安定して挟持することができる。
【0042】
図6において、支持爪30には、接触部30aのうちリム102aに対するスライド方向の下流部分にリム102aに係合する切欠きを設けることが好ましい。スライド方向の下流部分とは、支持爪30の接触部30aのうち、スカート壁102の上端が押さえ部品16に接触する時点においてリム102aが接触している部分であることが好ましい。より具体的には、切欠きは、
図6において、接触部30aのうちリム102aが接触している部分に設けられることが好ましい。切欠きは、接触部30aに設けられてリム102aが係合可能なくぼみである。切欠きを設けることによって、支持部品14が1個であっても、樽100を上昇後、リム102aが切欠きに係合することによって樽100をより強固に支持できる効果が得られる。
【0043】
図7は、支持爪の好ましい形状の一例を示す概略図であり、(a)は支持爪の根元端を正面視した概略平面図、(b)は爪先端を正面視した概略図である。第一実施形態に係る樽印刷システム1では、支持部品14は、リム102a(例えば
図3に図示)に対して点接触することが好ましい。支持部品14がリム102aに対して点接触する形態は、特に限定されないが、例えば、支持爪30の接触部30aが支持爪30の移動方向に沿って延びる突条であることが好ましい。突条とは、周囲の部分に対して突となっている線状凸部のことをいう。支持部品14がリム102aに対して点接触することによって、樽100の上昇途中では支持爪30がリム102aに沿って滑り込みやすく、かつ、樽100の上昇完了時では突条などの接触部30aがリム102aに食い込んで、がたつかずにしっかり支持できる効果が得られる。
図7では、一例として突条が2本であり、支持爪30がリム102aに対して2点で点接触する形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、点接触する数は1点であるか、又は3点以上であってもよい。
【0044】
第一実施形態に係る樽印刷システム1では、支持部品14は、リムに対して線接触していてもよい。支持部品14がリム102aに対して線接触する形態は、特に限定されないが、例えば、支持爪30の接触部30aが面状である形態である。このとき、接触部30aは、支持する時に接するリムの円周形状に合わせた形状となっていることが好ましく、例えば、支持爪30の幅方向の長さが短いほど、接触部30aは平面状となり、支持爪30の幅方向の長さが長いほど、接触部30aは、凸面状となることが好ましい。
【0045】
図8は、支持爪の好ましい形状の別の例を示す概略正面図である。
図8は、接触部30aとして突条を7本有し、支持爪30がリム102a(例えば
図3に図示)に対して7点で点接触する形態である。突条の頂点を通って支持爪30を横断する仮想横断線Lは、支持する時に接するリムの円周形状に合わせた形状となっていることが好ましく、例えば、支持爪30の幅方向の長さが短いほど、仮想横断線Lは直線形状となり、支持爪30の幅方向の長さが長いほど、仮想横断線Lは、山なり形状となることが好ましい。
【0046】
図9は、回動部品による樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
図9に示す樽印刷システムは、
図1に示す樽印刷システムにおいて、支持部品を、支持爪30を有する部品から回動部品40に変更したシステムであり、支持部品以外の基本的な構成を
図1に示す樽印刷システムと同じくする。第一実施形態に係る樽印刷システム1では、昇降自転装置10は、基体12と、基体12の自転機構と、基体12の昇降機構13と、を更に備え、支持部品14は、基体12に取り付けられて回動する回動部品40であり、回動部品40は、樽100の内側からリム102aに向かって回動してリム102aを押し上げることが好ましく、リム102aと第2スカート壁102との境界部40aを押し上げることがより好ましい。回動部品40が回動する簡易な動作によって、樽100を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。回動部品40は、リム102aと第2スカート壁102との境界部40aに加えて、リム102aの径方向内側の端縁40bに接触することが好ましい。これによって、樽100の位置決め効果及び芯出し効果が得られる。
【0047】
回動部品40は、例えば、先端にフックを有する部品であることが好ましい。回動部品40は、棒状部品であるか、又は板状部品であってもよい。回動部品40は、例えば、基体12に回動可能に取り付けられている。回動部品40が樽100の径方向内側から径方向外側に向かって回動すると、回動部品40が例えばリム102aと第2スカート壁102との境界部40aに接触し、更に回動を続けることで、回動部品40がリム102aと第2スカート壁102との境界部40aを押し上げる。これによって、樽100は回動部品40に支持されると同時に上昇する。樽100が上昇後の動作は、支持部品14が支持爪30を有する形態と同じである。回動部品40が棒状部品であるとき、回動部品40はリムと第2スカート壁102との境界部40aに対して点接触となる。回動部品40が板状部品であり、かつ、フックの先端がリムの円周形状に合わせた曲線状であるとき、回動部品40はリムと第2スカート壁102との境界部40aに対して線接触となる。また、回動部品40が板状部品であり、かつ、フックの先端が
図8に示すように突条を有するとき、回動部品40はリムに対して点接触となる。
【0048】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る樽印刷システムは、支持部品14による支持の方法が異なる以外は、第一実施形態に係る樽印刷システム1と基本的な構成を同じくする。このため、相違する構成を中心に説明し、共通する構成については説明を省略することもある。
【0049】
第二実施形態に係る樽印刷システムでは、支持部品14は、樽100の一部に適合する形状の支持部を有する形態を包含する。ここで、適合するとは、支持部品14が樽100の一部に隙間なくぴったりと接触して嵌合する形態、及び、支持部品14の少なくとも一部が樽100の一部に接して支持する形態を包含する。第二実施形態に係る樽印刷システムでは、樽は
図3に示すようにリム101a,102aを有する樽100であるか、又はリム101a,102aを有さない樽であってもよい。リム101a,102aを有さない樽は、例えば
図3に示す樽100において、第1スカート壁101及び/又は第2スカート壁102を円筒形状に変形した形状である。第二実施形態に係る樽印刷システムはリム101a,102aの有無にかかわらず、樽100を支持すると同時に持ち上げることができるため、タクトタイムを短縮することができる。
【0050】
第二実施形態に係る樽印刷システムでは、支持部品14は、樽100に対して線接触するか、又は樽100に対して面接触してもよい。
【0051】
図10は、樽の一部に適合する形状を有する部品の第一例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
図10に示す部品は、カップ状の部品50である。カップ状の部品50は、例えば、錐体の側面の形状を有する側面壁を有する部品、錐体の側面に沿う櫛状の部品である。櫛状の部品は、例えば、カップ状の部品50の側面の一部が円周方向で周期的に欠けているような形状である。樽100がスピアバルブ113(例えば
図3に図示)を下に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、カップ状の部品50は樽100を下方向から支持する支持部品14として作用し、樽100がスピアバルブ113を上に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、カップ状の部品50は樽100を上方向から押さえつける押さえ部品16として作用する。カップ状の部品50の内壁面51aは、円錐又は円錐台の側面形状を有することが好ましく、周方向の一部がスピアバルブ113の外周と一致することで、スピアバルブ113に適合する。カップ状の部品50の側面は、内壁面51aがスピアバルブ113に接触する時、カップ状の部品50の端縁51bが第1端壁111に接触する長さを有するか、又は内壁面51aがスピアバルブ113に接触する時、カップ状の部品50の端縁51bが第1端壁111に接触しない長さを有していてもよい。このうち、カップ状の部品50の側面は、内壁面51aがスピアバルブ113に接触する時、カップ状の部品50の端縁51bが第1端壁111に接触する長さを有することが好ましく、更に樽100の第1端壁111(例えば
図3に図示)に合わせた形状を有することがより好ましい。これによって、カップ状の部品50が内壁面51aに加えて端縁51bで樽100に適合する。カップ状の部品50を支持部品14又は押さえ部品16として用いることで、樽100の芯出しをすることができる。カップ状の部品50は、内壁面51a及び端縁51bで樽100に線接触する。
【0052】
図11は、樽の一部に適合する形状を有する部品の第二例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
図11に示す部品は、環状の部品60である。環状の部品60は、例えば、第1端壁11の外面に沿う形状を有する環状板がアームの先端に装着された部品、第1端壁の外面に沿う形状を有する板片がアームの先端に装着された部品であり、円環状の部品であることがより好ましい。環状板又は板片は、いずれも、スピアバルブ113の根元の周辺の第1端壁111に接触する。樽100がスピアバルブ113(例えば
図3に図示)を下に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、環状の部品60は樽100を下方向から支持する支持部品14として作用し、樽100がスピアバルブ113を上に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、環状の部品60は樽100を上方向から押さえつける押さえ部品16として作用する。環状の部品60の端面61は、樽100の第1端壁111(例えば
図3に図示)に合わせた形状を有することが好ましい。環状の部品60は、
図11に示すように周方向に連続した環板状であるか、又は
図11に示す環板状において周方向の一部が欠落させた断続した環板状であってもよい。環状の部品60は、端面61で樽100に面接触する。
【0053】
図12は、樽の一部に適合する形状を有する部品の第三例を示す概略図であり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
図12に示す部品は、盤状の部品70である。盤状の部品70は、
図12に示すように、周方向に連続した板状であるか、又は
図12に示す板状において周方向の一部が欠落させた断続した板状であってもよい。盤状の部品70は、円盤状の部品であることがより好ましい。樽100がスピアバルブ113(例えば
図3に図示)を上に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、盤状の部品70は樽100を下方向から支持する支持部品14として作用し、樽100がスピアバルブ113を下に向けた状態で樽印刷システムに供給されるとき、盤状の部品70は樽100を上方向から押さえつける押さえ部品16として作用する。盤状の部品70の端面71は、樽100の第2端壁112(例えば
図3に図示)に合わせた形状を有することが好ましい。盤状の部品70は、端面71で樽100に面接触する。
【0054】
図10に示すカップ状の部品50、
図11に示す環状の部品60又は
図12に示す盤状の部品70が支持部品14として作用するとき、これらの部品50、60、70の駆動機構は、例えば、排出機構の上下機構と同様の機構を採用することができる。また、
図10に示すカップ状の部品50、
図11に示す環状の部品60又は
図12に示す盤状の部品70が押さえ部品16として作用するとき、これらの部品50、60、70は、基体12に取り付けられ、昇降機構13(
図1に図示)によって基体12とともに上下に移動する。
【0055】
図13は、樽がスピアバルブを有する第1端壁を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図12に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(c)は
図10に示す部品が支持部品である形態、(d)は
図11に示す部品が支持部品である形態を示す。第二実施形態に係る樽印刷システムでは、樽100は、スピアバルブ113を有する第1端壁111と第1端壁111に対向する第2端壁112とを有する樽本体を備え、第1端壁111を下に向けた状態で昇降自転装置10(
図1に図示)へ供給される形態を包含する。
【0056】
図13(c)に示すように、支持部が適合する樽100の一部は、スピアバルブ113にあることが好ましい。ここで、スピアバルブ113に適合する支持部は、例えば、
図13(c)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の内壁面51aである。カップ状の部品50の内壁面51aは、例えばスピアバルブ113の上端縁に接触することで樽100を下方向から支持すると同時に持ち上げる。また、支持部が適合する樽100の一部は、スピアバルブ113に加えて、第1端壁111にあることが好ましい。ここで、第1端壁111に適合する支持部は、例えば、
図13(c)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の端縁51bである。
【0057】
図13(d)に示すように、支持部が適合する樽100の一部は、第1端壁111にあることが好ましい。ここで、支持部は、例えば、
図13(d)に示すように、
図11に示す環状の部品60の端面61である。環状の部品60の端面61は、第1端壁111に接触することで樽100を下方向から支持すると同時に持ち上げる。
【0058】
図13(a)に示すように、押さえ部品16は、第2端壁112に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図13(a)に示すように、
図12に示す盤状の部品70である。盤状の部品70は、第2端壁112に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽100の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0059】
図13(b)に示すように、押さえ部品16は、第2スカート壁102の上端縁を押さえることが好ましい。
図13(b)に示した押さえ部品16は、例えば、
図1又は
図2に示した押さえ部品16と同じである。押さえ部品16は、第2スカート壁102の上端縁に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制する。
【0060】
樽がスピアバルブを有する第1端壁を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合、支持部品14及び押さえ部品16の組合せは、
図13に示す(a)、(b)に示す押さえ部品16、(c)、(d)に示す支持部品14から適宜選択して組合わせればよく、本実施形態は組み合わせに限定されない。組合せは、特に限定されないが、例えば、支持部品14を
図13(c)のカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図13(a)の盤状の部品70とする形態、支持部品14を
図13(c)のカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図13(b)の押さえ部品とする形態、支持部品14を
図13(d)の環状の部品60とし、かつ、押さえ部品16を
図13(a)の盤状の部品70とする形態、又は支持部品14を
図13(d)の環状の部品60とし、かつ、押さえ部品16を
図13(b)の押さえ部品とする形態である。これらのうち、特に好ましい組み合わせは、支持部品14を
図13(c)に示すようにカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図13(b)に示すように押さえ部品16とする形態である。
【0061】
図14は、樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図10に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図11に示す部品が押さえ部品である形態、(c)は1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(d)は
図12に示す部品が支持部品である形態を示す。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、樽100は、スピアバルブ113を有する第1端壁111と第1端壁111に対向する第2端壁112とを有する樽本体を備え、第2端壁112を下に向けた状態で昇降自転装置10(
図1に図示)へ供給される形態を包含する。
【0062】
図14(d)に示すように、支持部が適合する樽100の一部は、第2端壁112にあることが好ましい。ここで、支持部は、例えば、
図14(d)に示すように、
図12に示す盤状の部品70の端面71である。盤状の部品70の端面71は、第2端壁112に接触することで樽100を下方向から支持すると同時に持ち上げる。
【0063】
図14(a)に示すように、押さえ部品16は、スピアバルブ113に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図14(a)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50である。カップ状の部品50は、第1端壁111に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽100の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。押さえ部品16は、スピアバルブ113に適合する部分に加えて、第1端壁111に適合する部分を更に有することが好ましい。ここで、第1端壁111に適合する支持部は、例えば、
図14(a)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の端縁51bである。
【0064】
図14(b)に示すように、押さえ部品16は、第1端壁111に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図14(b)に示すように、
図11に示す環状の部品60である。環状の部品60は、第1端壁111に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽100の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0065】
図14(c)に示すように、押さえ部品16は、第1スカート壁101の上端縁を押さえることが好ましい。
図14(c)に示した押さえ部品16は、例えば、
図1又は
図2に示した押さえ部品16と同じである。押さえ部品16は、第1スカート壁101の上端縁に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制する。
【0066】
樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合、支持部品14及び押さえ部品16の組合せは、
図14に示す(a)、(b)、(c)に示す押さえ部品16、(d)に示す支持部品14から適宜選択して組合わせればよく、本実施形態は組み合わせに限定されない。組合せは、特に限定されないが、例えば、支持部品14を
図14(d)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図14(a)のカップ状の部品50とする形態、支持部品14を
図14(d)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図14(b)の環状の部品60とする形態、又は支持部品14を
図14(d)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図14(c)の押さえ部品とする形態である。これらのうち、特に好ましい組み合わせは、支持部品14を
図14(d)に示すように盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図14(a)に示すようにカップ状の部品50とする形態である。
【0067】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る樽印刷システムは、樽200のスカート壁201,202の材質が異なる以外は、第一実施形態に係る樽印刷システム1又は第二実施形態に係る樽印刷システムと基本的な構成を同じくする。このため、相違する構成を中心に説明し、共通する構成については説明を省略することもある。
【0068】
図16は、スカート壁の少なくとも外表面がゴム製の樽の一例を示す概略斜視図である。
図17は、
図16のA-A線概略部分断面図である。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、樽200は、
図6又は
図7に示すように、第1スカート壁201と第2スカート壁202とを備え、第1スカート壁201若しくは第2スカート壁202のいずれか一方又は両方は、少なくとも外表面がゴム製であり、周壁203と、周壁203に設けられた貫通孔204,205と、を有している形態を包含する。
図16では一例として樽200の第1スカート壁201若しくは第2スカート壁202のいずれか一方又は両方の外表面がゴム製である形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、樽200の第1スカート壁201若しくは第2スカート壁202のいずれか一方又は両方の外表面は、ゴム製の他、プラスチック製又は金属製であってもよい。プラスチックの種類は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの公知の工業用プラスチックを用いることができる。金属の種類は、特に限定されず、例えば、ステンレスである。
【0069】
図16に示す樽200は、第1スカート壁201及び第2スカート壁202の材質が異なる以外は、
図3に示す樽100と基本的な構成を同じくする。樽本体210は、例えば、ステンレスなどの金属製である。樽200は、
図16又は
図17に示すように第1スカート壁201及び第2スカート壁202の両方が貫通孔204、205を有するか、第1スカート壁201だけが貫通孔204を有するか、又は第2スカート壁202だけが貫通孔205を有していてもよい。また、第1スカート壁201及び第2スカート壁202は、
図17に示すように全体がゴム製、プラスチック製又は金属製であるか、又はゴム製、プラスチック製又は金属製の鞘材と、該鞘材に覆われて鞘材とは異なる材質を有する芯材と、を有する芯鞘構造であってもよい。樽200は、第1スカート壁201及び/又は第2スカート壁202が、
図16又は
図17に示すようにリムを有さない形態、及びリムを有する形態を包含する。リムを有する場合、リムは、例えば、
図3に示す樽100に設けられたリム101a,102aと同様の構造としてもよい。
【0070】
第1スカート壁201又は第2スカート壁202のうち少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製のスカート壁(
図16では第1スカート壁201及び第2スカート壁202)は、周壁203と、貫通孔204,205とを有する。周壁203は、スカート壁201,202を構成する筒状体の側壁である。スピアバルブ213が設けられた第1端壁に連接する第1スカート壁201に設けられた貫通孔204は、把持用の貫通孔としての役割をもつ。第2端壁212に連接する第2スカート壁202に設けられた貫通孔205は、水抜き用の貫通孔としての役割をもつ。
【0071】
図18は、支持爪による
図16に示す樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
図18に示す樽印刷システムは
図4~
図6に示す第一実施形態に係る樽印刷システムと同様の作用効果を奏する。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、昇降自転装置は、基体12と、基体12の自転機構と、基体12の昇降機構13(
図1に図示)と、を更に備え、支持部品14は、基体12に取り付けられて水平方向に移動するスライド部品31と、スライド部品31に連動する支持爪30と、を有し、支持爪30は、樽200の径方向外側に向けて下方に傾斜しており、貫通孔204の周縁に接しながら樽200の径方向外側に向けて移動することが好ましい。支持爪30が平行移動する簡易な動作によって、樽300を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0072】
図18に示す昇降自転装置は、
図1、
図2、
図4~
図6に示す昇降自転装置1と同じである。駆動機構が、
図18に示す破線で示したスライド部品の位置から実線で示したスライド部品31の位置までスライド部品31をレール15に沿って摺動させると、支持爪30がスライド部品31と共に移動する。そうすると、
図18に示すように、貫通孔204の周縁が支持爪30の移動に伴って支持爪30の接触部30aに沿ってスライドすることによって、樽200が支持爪30に支持されるとともに
図18において破線で示した樽の位置から実線で示した樽200の位置まで持ち上げられる。このような、支持部品14が樽200を把持すると同時に樽200を上昇させる動きは、タクトタイムの短縮に寄与する。支持部品14によって上昇した樽200は、上側のスカート壁(
図18では第1スカート壁)201の上端が押さえ部品16(
図1に図示)に接触することでその上昇量が規制される。そして、第1スカート壁101が支持部品14の支持爪30と押さえ部品16とによって挟持されて基体12と樽200とが一体化し、基体12の自転機構の作動により、樽200が自転する。支持部品14が、貫通孔204の周縁を接する箇所として支持して把持すると同時に樽200を上昇させる動きは、タクトタイムの短縮に寄与するほか、樽200の中心軸と基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができるので、印刷精度向上に寄与する。
図18は一例として、樽200がスピアバルブ213を上に向けた状態で樽印刷システムに供給され、支持爪30が第1スカート壁201に設けられた貫通孔204を支持する形態を示したが、本発明はこれに限定されず、樽200がスピアバルブ213を下に向けた状態で樽印刷システムに供給され、支持爪30が第2スカート壁202に設けられた貫通孔205を支持する形態であってもよい。
図1に示す樽印刷システム1は、樽100,200の種類によらず、印刷のタクトタイムを短縮することができる。
【0073】
図19は、回動部品による
図16に示す樽の支持及び持ち上げを説明するための概略図である。
図19に示す樽印刷システムは
図9に示す第一実施形態に係る樽印刷システムと同様の作用効果を奏する。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、昇降自転装置は、基体12と、基体12の自転機構と、基体12の昇降機構13(
図1に図示)と、を更に備え、支持部品14は、基体12に取り付けられて回動する回動部品40であり、回動部品40は、樽200の内側から周壁203又は貫通孔204に向かって回動して貫通孔204を押し上げることが好ましい。回動部品40が回動する簡易な動作によって、樽を支持すると同時に持ち上げるため、タクトタイムをより短縮することができる。
【0074】
図19に示す支持部品14は、
図9に示す支持部品14と同じである。回動部品40が樽200の径方向内側から径方向外側に向かって回動すると、回動部品40が例えば貫通孔204に侵入して貫通孔204の周壁に接触し、更に回動を続けることで、回動部品40が貫通孔204を押し上げる。これによって、樽200は回動部品40に支持されると同時に上昇する。
図19では一例として、樽200がスピアバルブ213を上に向けた状態で樽印刷システムに供給され、回動部品40を第1スカート壁201の貫通孔204に引っ掛ける形態を示したが、本発明はこれに限定されず、樽200がスピアバルブ213を下に向けた状態で樽印刷システムに供給され、回動部品40を第2スカート壁201(
図17に図示)の貫通孔205に引っかけることで、樽200を支持と同時に持ち上げてもよい。
【0075】
図20は、
図16に示す樽がスピアバルブを有する第1端壁を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図12に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(c)は押さえ部品がスカート壁に適合する形態、(d)は
図10に示す部品が支持部品である形態、(e)は
図11に示す部品が支持部品である形態を示す。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、支持部品14は、
図20(d)、(e)に示すように、樽200の一部に適合する形状の支持部を有し、第1スカート壁201は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、樽200は、第1スカート壁201に連接してスピアバルブ213を有する第1端壁211と、第1端壁211に対向して第2スカート壁202に連接する第2端壁212と、を有し、第1端壁211を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
図20に示す樽印刷システムは
図13に示す第二実施形態に係る樽印刷システムと同様の作用効果を奏する。
【0076】
図20(d)に示すように、支持部が適合する樽200の一部は、スピアバルブ213にあることが好ましい。ここで、スピアバルブ213に適合する支持部は、例えば、
図20(d)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の内壁面51aである。カップ状の部品50の内壁面51aは、例えばスピアバルブ11の上端縁に接触することで樽200を下方向から支持すると同時に持ち上げる。また、支持部が適合する樽200の一部は、スピアバルブ213に加えて、第1端壁211にあることが好ましい。ここで、第1端壁211に適合する支持部は、例えば、
図20(d)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の端縁51bである。
【0077】
図20(e)に示すように、支持部が適合する樽200の一部は、第1端壁211にあることが好ましい。ここで、支持部は、例えば、
図20(e)に示すように、
図11に示す環状の部品60の端面61である。環状の部品60の端面61は、第1端壁211に接触することで樽200を下方向から支持すると同時に持ち上げる。
【0078】
図20(a)に示すように、押さえ部品16は、第2端壁212に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図20(a)に示すように、
図12に示す盤状の部品70である。盤状の部品70は、第2端壁212に接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽200の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0079】
図20(b)に示すように、押さえ部品16は、第2スカート壁202の上端縁を押さえることが好ましい。
図20(b)に示した押さえ部品16は、例えば、
図1又は
図2に示した押さえ部品16と同じである。押さえ部品16は、第2スカート壁202の上端縁に接触することで、支持部品14が上昇させた樽100を上方向から押さえて上昇量を規制する。
【0080】
図20(c)に示すように、押さえ部品16は、第2スカート壁202に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、
図20(f)に示した拡大カップ状の部品80である。拡大カップ状の部品80は、第2スカート壁202の上端縁接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽200の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0081】
樽200がスピアバルブを有する第1端壁211を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合、支持部品14及び押さえ部品16の組合せは、
図20に示す(a)、(b)、(c)に示す押さえ部品16、(d)、(e)に示す支持部品14から適宜選択して組合わせればよく、本実施形態は組み合わせに限定されない。組合せは、特に限定されないが、例えば、支持部品14を
図20(d)のカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図20(a)の盤状の部品70とする形態、支持部品14を
図20(d)のカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図20(b)の押さえ部品とする形態、支持部品14を
図20(d)のカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図20(c)の拡大カップ状の部品80とする形態、支持部品14を
図20(e)の環状の部品60とし、かつ、押さえ部品16を
図20(a)の盤状の部品70とする形態、支持部品14を
図20(e)の環状の部品60とし、かつ、押さえ部品16を
図20(b)の押さえ部品とする形態、支持部品14を
図20(e)の環状の部品60とし、かつ、押さえ部品16を
図20(c)の拡大カップ状の部品80とする形態である。これらのうち、特に好ましい組み合わせは、支持部品14を
図20(d)に示すカップ状の部品50とし、かつ、押さえ部品16を
図20(c)に示す拡大カップ状の部品80とする形態である。
【0082】
図21は、
図16に示す樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合の支持部品及び押さえ部品の例を示す概略図であり、(a)は
図10に示す部品が押さえ部品である形態、(b)は
図11に示す部品が押さえ部品である形態、(c)は1に示す押さえ部品が押さえ部品である形態、(d)は押さえ部品がスカート壁に適合する形態、(e)は
図12に示す部品が支持部品である形態を示す。第三実施形態に係る樽印刷システムでは、支持部品は、樽200の一部に適合する形状の支持部を有し、第2スカート壁202は、少なくとも外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製であり、樽200は、第1スカート壁201に連接してスピアバルブ213を有する第1端壁211と、第1端壁211に対向して第2スカート壁202に連接する第2端壁212と、を有し、第2端壁212を下に向けた状態で昇降自転装置へ供給される形態を包含する。
図21に示す樽印刷システムは
図14に示す第二実施形態に係る樽印刷システムと同様の作用効果を奏する。
【0083】
図21(e)に示すように、支持部が適合する樽200の一部は、第2端壁212にあることが好ましい。ここで、支持部は、例えば、
図21(e)に示すように、
図12に示す盤状の部品70の端面71である。盤状の部品70の端面71は、第2端壁212に接触することで樽100を下方向から支持すると同時に持ち上げる。
【0084】
図21(a)に示すように、押さえ部品16は、スピアバルブ213に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図21(a)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50である。カップ状の部品50は、第1端壁211に接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽200の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。押さえ部品16は、スピアバルブ213に適合する部分に加えて、第1端壁211に適合する部分を更に有することが好ましい。ここで、第1端壁211に適合する支持部は、例えば、
図21(a)に示すように、
図10に示すカップ状の部品50の端縁51bである。
【0085】
図21(b)に示すように、押さえ部品16は、第1端壁211に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、例えば、
図21(b)に示すように、
図11に示す環状の部品60である。環状の部品60は、第1端壁211に接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽200の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0086】
図21(c)に示すように、押さえ部品16は、第1スカート壁201の上端縁を押さえることが好ましい。
図21(c)に示した押さえ部品16は、例えば、
図1又は
図2に示した押さえ部品16と同じである。押さえ部品16は、第1スカート壁201の上端縁に接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制する。
【0087】
図21(d)に示すように、押さえ部品16は、第1スカート壁201に適合する部分を有することが好ましい。ここで、押さえ部品16は、
図21(d)に示した拡大カップ状の部品80である。拡大カップ状の部品80は、第2端壁212の内壁面に接触することで、支持部品14が上昇させた樽200を上方向から押さえて上昇量を規制すると同時に樽200の中心軸Oと基体12の自転機構による自転軸とをより一致させることができる。
【0088】
樽がスピアバルブを有する第1端壁を上に向けた状態で昇降自転装置へ供給される場合、支持部品14及び押さえ部品16の組合せは、
図21(a)、(b)、(c)、(d)に示す押さえ部品16、
図21(e)に示す支持部品14から適宜選択して組合わせればよく、本実施形態は組み合わせに限定されない。組合せは、特に限定されないが、例えば、支持部品14を
図21(e)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図21(a)のカップ状の部品50とする形態、支持部品14を
図21(e)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図21(b)の環状の部品60とする形態、支持部品14を
図21(e)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図21(c)の押さえ部品とする形態、支持部品14を
図21(e)の盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とする形態、支持部品14を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とし、かつ、押さえ部品16を
図21(a)のカップ状の部品50とする形態、支持部品14を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とし、かつ、押さえ部品16を
図21(b)の環状の部品60とする形態、支持部品14を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とし、かつ、押さえ部品16を
図21(c)の押さえ部品とする形態、又は支持部品14を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とし、かつ、押さえ部品16を
図21(d)の拡大カップ状の部品80とする形態である。これらのうち、特に好ましい組み合わせは、支持部品14を
図21(e)に示す盤状の部品70とし、かつ、押さえ部品16を
図21(a)に示すカップ状の部品50とする形態である。
【0089】
(樽印刷方法)
本実施形態に係る樽印刷方法は、例えば
図1に示すように、樽100の外表面に印刷する樽印刷方法において、樽印刷方法は、搬送されてきた樽100を支持するとともに樽100を所定高さに上昇させる工程と、上昇させた樽100を樽100の中心軸Oを中心に自転させつつ、樽100の外表面にインクを付着させるインク付着工程と、を含む。
【0090】
本実施形態に係る樽印刷方法は、ここまで説明してきた第1~第三実施形態の樽印刷システム1を用いることで実現することができる。代表して
図1に示す樽印刷システム1を例にとって説明する。搬送装置17によって搬送されてきた樽100は誘導機構によって搬送装置17の搬送面上の所定の位置に誘導され、停止機構によって昇降自転装置10の直下の所定の位置に停止する。昇降自転装置10では、支持部品14が樽100を支持すると同時に持ち上げ、支持部品14と押さえ部品16とで樽100を挟持する。この状態で、昇降自転装置10が樽100を自転させ、その間に印刷装置20が樽100の側面に印刷を施す。本実施形態に係る樽印刷システム1の昇降自転装置10を用いることで搬送されてきた樽100を支持と同時に所定高さに上昇させることができ、上昇させた樽100を自転させつつ樽100の外表面に印刷を施すことができる。これによって、タクトタイムが短縮される。なお、
図1では一例として樽100がオール金属製の樽である形態を示したが、本実施形態はこれに限定されず、
図16に示すような外表面がゴム製、プラスチック製又は金属製、かつ、貫通孔204、205を有するスカート壁201,202を有する樽200、又は近年流通している樹脂樽であってもよい。
【0091】
本実施形態に係る樽印刷方法は、インク付着工程後、樽の降下工程と、樽の排出工程と、を更に有することが好ましい。樽の降下工程は、支持部品14の支持の解除によって行われる。樽の排出工程は、排出機構18によって行われる。印刷を終えると、支持部品14が樽100の支持を解除して、樽100が搬送装置17の搬送面上に戻される。その後、排出機構18によって樽100が昇降自転装置10よりも搬送装置17の搬送経路の下流側に押し出されると同時に、次の樽100が昇降自転装置10の直下に移動して同様の方法で連続的に印刷が行われる。
【実施例0092】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
図1に示す樽印刷システム1を用いて7Lのステンレス製の樽の側面に印刷を施した。印刷装置20は、ドロップオンデマンド方式のフルカラーインクジェットプリンタ(型式:KM800、コニカミノルタ社製)を用いた。
【0094】
(比較例1)
従来のストレッチラベルを巻き付ける製造ラインを用いて、搬送されてきた樽の外表面にストレッチラベルを巻いた。ストレッチラベルの巻き付けは、(1)樽を搬送途中に定位置で停止させる、(2)樽にストレッチラベルを巻き付ける、(3)加熱してストレッチラベルを収縮させる、(4)樽を印刷システムから排出させる、という工程を経て行った。
【0095】
(比較例2)
比較例1の従来の樽印刷システムにおいて、ストレッチラベルを巻く代わりに、インクジェットプリンタを用いて樽の側面に印刷を施した。印刷は、(1)樽を搬送途中に定位置で停止させる、(2)停止させた樽を把持する、(3)樽を持ち上げる、(4)樽を持ち上げた状態で回転させながら印刷する、(5)印刷後、樽をコンベアまで降下させる、(6)樽を印刷システムから排出させる、という工程を経て印刷を行った。印刷装置及び印刷内容は実施例1と同様とした。
【0096】
(比較例3)
比較例2において、排出機構の追加及び工程移行時間の短縮などの改善を行った以外は比較例2と同様に印刷を行った。
【0097】
比較例2は比較例1を目標としたが、比較例1よりもタクトタイムが長かった。比較例3は、比較例2に対して複数の改善を行ったため比較例2よりもタクトタイムは短縮されたが、比較例1よりもタクトタイムが長かった。これに対して、実施例1は、樽の把持と持ち上げとが同時に行われたため、タクトタイムが比較例3と比べて更に短縮され、比較例1のタクトタイムを上回った。以上より、本実施形態に係る樽印刷システム(実施例1)は、ストレッチラベルを巻き付ける従来の製造ライン(比較例1)と比較して、プラスチック使用量を削減しながら、タクトタイムを短縮することができることが確認できた。また、本実施形態に係る樽印刷システム(実施例1)は、ストレッチラベルを巻き付ける従来の製造ライン(比較例1)においてストレッチラベルの巻き付けを樽表面に直接インクを用いた印刷に単に変更した例(比較例2)と比較して、25%のタクトタイムの短縮を実現できることが確認された。さらに、比較例2に対して複数の改善を行った例(比較例3)と比較して、18%のタクトタイムの短縮を実現できることが確認された。