(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102530
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】整定値管理装置、及び整定値管理方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/02 20060101AFI20250701BHJP
H02H 3/06 20060101ALI20250701BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
H02H3/02 E
H02H3/06 C
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220037
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 秀央
(72)【発明者】
【氏名】山下 大介
【テーマコード(参考)】
5G064
5G142
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB04
5G064DA02
5G064DA03
5G142AC06
5G142BC02
5G142BD01
5G142BD05
5G142HH02
(57)【要約】
【課題】電力系統における発電設備の連系状況に応じて短絡保護リレーの整定値を適切に設定する。
【解決手段】整定値管理装置は、電力系統に連系する発電設備に関する情報、電力系統を構成する送電線又は配電線に関する情報、及び電力系統に設けられている短絡保護リレーに関する情報を設備情報として管理する設備情報管理装置と通信可能に接続し、設備情報管理装置から提供される最新の設備情報を取得し、取得した設備情報に基づき、電力系統の所定箇所に設定されたノードにおけるインピーダンスを求め、求めたインピーダンスに基づき電力系統の短絡容量マップを生成し、短絡容量マップに基づき短絡保護リレーの整定値を策定し、通信ネットワークを介して短絡保護リレーに上記整定値を設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、
電力系統に連系している発電設備に関する情報、前記電力系統を構成している送電線又は配電線に関する情報、及び前記電力系統に設けられている短絡保護リレーに関する情報を設備情報として管理する設備情報管理装置と通信可能に接続し、
前記設備情報管理装置から提供される最新の前記設備情報を取得し、
取得した前記設備情報に基づき、前記電力系統の所定箇所に設定されたノードにおけるインピーダンスを求め、
前記ノードの前記インピーダンスに基づき前記電力系統の短絡容量マップを生成し、
前記短絡容量マップに基づき前記短絡保護リレーの整定値を策定し、
前記短絡保護リレーと通信することにより前記短絡保護リレーに前記整定値を設定する、 整定値管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の整定値管理装置であって、
前記発電設備は、電力変換器により前記電力系統に連系する発電機を含む、
整定値管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の整定値管理装置であって、
電力変換器により前記電力系統に連系する前記発電機は、再生可能エネルギー利用型の発電機である、
整定値管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の整定値管理装置であって、
前記短絡保護リレーは、前記電力系統を構成する送電網と配電網の間に介在している変電所の過電流継電器、又は前記配電網に設けられているリクローザである、
整定値管理装置。
【請求項5】
プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置が、
電力系統に連系している発電設備に関する情報、前記電力系統を構成している送電線又は配電線に関する情報、及び前記電力系統に設けられている短絡保護リレーに関する情報を設備情報として管理する設備情報管理装置と通信可能に接続するステップ、
前記設備情報管理装置から提供される最新の前記設備情報を取得するステップ、
取得した前記設備情報に基づき、前記電力系統の所定箇所に設定されたノードにおけるインピーダンスを求めるステップ、
前記ノードの前記インピーダンスに基づき前記電力系統の短絡容量マップを生成するステップ、
前記短絡容量マップに基づき前記短絡保護リレーの整定値を策定するステップ、及び、
前記短絡保護リレーと通信することにより前記短絡保護リレーに前記整定値を設定するステップ、
を実行する、整定値管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の整定値管理方法であって、
前記発電設備は、電力変換器により前記電力系統に連系する発電機を含む、
整定値管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の整定値管理方法であって、
電力変換器により前記電力系統に連系する前記発電機は、再生可能エネルギー利用型の発電機である、
整定値管理方法。
【請求項8】
請求項5に記載の整定値管理方法であって、
前記短絡保護リレーは、前記電力系統を構成する送電網と配電網の間に介在している変電所の過電流継電器、又は前記配電網に設けられているリクローザである、
整定値管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整定値管理装置、及び整定値管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、突発的な事故の発生時に必要に迫られて系統変更を実施する場合に地絡保護用継電器を不必要に作動させてしまい電力系統の信頼度低下につながってしまうこと、保護継電器の整定変更を実施する場合に担当者が当該保護継電器が設置されている発変電所へ出向いて整定値変更作業を実施する必要があること等の課題を解決すべく提案された保護継電器整定値の自動最適化システムについて記載されている。自動最適化システムは、電力系統の系統変更に対応して自動で当該電力系統に設置された複数の保護継電器の整定値を演算し、更新を要する保護継電器に対して整定値の更新を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"短絡電流の計算",河村電器産業株式会社、[online],インターネット<URL:https://www.kawamura.co.jp/catalog/pdf/DB-113.pdf>,令和5年11月27日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火力発電等における同期発電機は、現在主流の電流制御型インバータが安定に動作するために必須となる系統の短絡容量の確保に貢献している。近年、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)の導入が進展しており、カーボンニュートラルの観点からも主力電源化が期待されている。
【0006】
再生可能エネルギーによる発電機の電力系統への連系は、同期発電機ではなく電力変換器による連系である。そのため、再生可能エネルギーによる発電機の導入が進むにつれ、系統の短絡容量が低下していくことが想定される。
【0007】
系統の短絡事故においては、短絡容量に応じて発電機から事故箇所に向けて大きな電流が流れ、その電流の大きさを短絡保護リレー(変電所の短絡保護継電器(OCR(Over Current Relay))、配電網のリクローザ等)が感知することにより事故箇所を系統から切り離している。
【0008】
ここで系統の短絡容量が大きい場合は、事故箇所に大きな電流が流れ、変電所の短絡保護継電器で遮断し、事故箇所を系統から切り離すことができる。
【0009】
しかし、系統の短絡容量が小さくなると短絡電流が小さくなり、正常に事故箇所を系統から切り離すことができなくなる。
【0010】
また、短絡容量は、発電設備の稼働状況や電力系統の状態等によっても時々刻々と変化するため、状況に合わせて短絡保護リレーの整定値を更新していく必要もある。
【0011】
特許文献1では、突発的な事故の発生時に必要に迫られて系統変更を実施する際、系統変更後の送電線路の系統構成に対応して電力系統に設置された複数の保護継電器の整定値を演算し、更新を要する保護継電器に対して整定値の更新を行う。
【0012】
しかし、特許文献1には、火力発電等の同期発電機や再生可能エネルギーを利用する発電設備の電力系統への連系状況に応じて短絡保護リレーの整定値を適切に設定する仕組みについては開示されていない。
【0013】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、電力系統における発電設備の連系状況に応じて短絡保護リレーの整定値を適切に設定することが可能な、整定値管理装置、及び整定値管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、整定値管理装置であって、プロセッサおよび記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、電力系統に連系している発電設備に関する情報、前記電力系統を構成している送電線又は配電線に関する情報、及び前記電力系統に設けられている短絡保護リレーに関する情報を設備情報として管理する設備情報管理装置と通信可能に接続し、前記設備情報管理装置から提供される最新の前記設備情報を取得し、取得した前記設備情報に基づき、前記電力系統の所定箇所に設定されたノードにおけるインピーダンスを求め、前記ノードの前記インピーダンスに基づき前記電力系統の短絡容量マップを生成し、前記短絡容量マップに基づき前記短絡保護リレーの整定値を策定し、前記短絡保護リレーと通信することにより前記短絡保護リレーに前記整定値を設定する。
【0015】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力系統における発電設備の連系状況に応じて短絡保護リレーの整定値を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】整定値管理装置が備える主な機能を示す図である。
【
図3A】電力系統に設定されるノードの例を示す図である。
【
図3B】各ノードのインピーダンス情報の例である。
【
図5A】電力系統に設定されるノードの例を示す図である。
【
図6】設備情報管理装置が備える主な機能を示す図である。
【
図7】整定値管理装置や設備情報管理装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【
図8】整定値更新処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一の又は類似する構成について共通の符号を付して説明を省略することがある。
【0019】
図1に、電力系統1の一例を示している。例示する電力系統1は、送電網2、配電網3、及び変電所4を含む。変電所4は、送電網2から供給される電力を変圧して配電網3に供給する。
【0020】
送電網2には、一つ以上の発電設備21a(火力発電所、水力発電所等)と、一つ以上の再生可能エネルギーを利用する発電設備21b(太陽光発電所、風力発電所)が連系している。
【0021】
発電設備21aは、同期発電機により送電網2に連系している。また、発電設備21bは、電力変換器により送電網2に連系している。
【0022】
変電所4には、短絡保護リレー(以下、「短絡保護継電器41」と称する。)が設けられている。
【0023】
配電網3には、需要家(家庭、公共施設、オフィスビル、各種公共施設、工場、インフラ施設等)における負荷(以下、「需要家負荷31」と称する。)が接続している。
【0024】
配電網3の要所には、一つ以上の短絡保護リレー(以下、「リクローザ32」と称する)が設けられている。
【0025】
発電設備21a、発電設備21b、変電所4、及びリクローザ32は、情報処理装置である整定値管理装置100と通信ネットワーク5を介して通信可能に接続している。
【0026】
整定値管理装置100は、情報処理装置である設備情報管理装置20と通信ネットワーク5を介して通信可能に接続している。整定値管理装置100や設備情報管理装置200は、例えば、電力事業者によって運用される。
【0027】
通信ネットワーク5は、無線通信又は有線通信により情報(データ)を伝送する通信媒体であり、例えば、WAN(Wide Area Network)、コンセントレータ、920Hz帯通信網、PLC(Power Line Communication)等である。通信ネットワーク5は、利用目的等に応じて異なる複数の通信媒体により全体が実現されていてもよい。
【0028】
電力系統1の各短絡保護リレー(短絡保護継電器41、リクローザ32)は、通信ネットワーク5を介した整定値管理装置100からの遠隔制御により整定値を設定(更新)することができる。
【0029】
図2に、整定値管理装置100が備える主な機能を示している。整定値管理装置100は、記憶部110、設備情報取得部120、インピーダンス算出部130、短絡容量マップ生成部135、整定値策定部140、及び整定値更新部145の各機能を備える。
【0030】
上記機能のうち、記憶部110は、設備情報111、インピーダンス情報112、短絡容量マップ113、及び整定値情報114を記憶する。
【0031】
設備情報取得部120は、設備情報管理装置200から、電力系統1を構成する各種設備(発電機、変圧器、送電線、配電線、負荷、短絡保護リレー、各種計測器等)に関する最新の情報(以下、「設備情報」と称する。)を取得し、取得した設備情報を記憶部110に設備情報111として管理する。
【0032】
設備情報は、例えば、電力系統1を構成する各種設備の構成、電力系統の要所に設けられている計測器による計測値(電圧値、電流値、有効電力、無効電力、力率、温度等)、設備の設計情報や仕様書等から得られる情報(設備の動作特性(トリップ時間特性、動作特性等)、整定値の算定に用いる各種パラメータ等を含む。設備情報は、例えば、後述する各ノードのインピーダンスや、短絡保護リレー(短絡保護継電器41、リクローザ32)の整定値を求める際に用いられる。
【0033】
インピーダンス算出部130は、設備情報111に基づき、電力系統1の所定箇所に設定された各ノード(系統上の母線、分岐箇所、短絡保護リレーの設置箇所等の結節点)のインピーダンスを求め、求めた各ノードのインピーダンスをインピーダンス情報112として管理する。インピーダンス算出部130は、各ノードのインピーダンスを、例えば、非特許文献1("短絡電流の計算",河村電器産業株式会社、[online],インターネット<URL:https://www.kawamura.co.jp/catalog/pdf/DB-113.pdf>,令和5年11月27日検索)に記載されている方法で算出する。
【0034】
図3Aに、電力系統1に設定されるノードの例を、また、
図3Bに、
図3Aの各ノードについてのインピーダンス情報112の一例を示す。尚、
図3Bには、新たに取得した設備情報111による更新前のインピーダンス情報112と、新たに取得した設備情報111(更新情報)、及び更新後のインピーダンス情報112を示している。この例では、設備番号が「E02」の送電線のインピーダンスが更新されている。
【0035】
図2に戻り、短絡容量マップ生成部135は、インピーダンス情報112に基づき、電力系統の母線毎の短絡容量を求めて短絡容量マップを生成し、生成した短絡容量マップを短絡容量マップ113として管理する。短絡容量マップ生成部135は、ノードから電源側を見た合成インピーダンスに基づき短絡電流(短絡容量)を求める。
【0036】
図4に、短絡容量マップ113の一例を示す。短絡容量マップ生成部135は、例えば、事故点(故障点)の線間電圧を基準電圧V(例えば、変圧器の2次側定格電圧)とし、基準容量P(例えば、変圧器の容量)を設定し、各設備のインピーダンスを基準容量Pに合わせて変換してノードから電源側を見た合成%インピーダンス%Zを求める。そして、短絡容量マップ生成部135は、例えば、基準容量Pと基準電圧Vから定格電流Iを求め、求めた定格電流Iから短絡電流I(短絡容量P
s)を求める。
【0037】
図2に戻り、整定値策定部140は、短絡容量マップ113に基づき、短絡保護リレー(短絡保護継電器41、リクローザ32)の夫々の整定値(電流値、タップ等)を求め、求めた各短絡保護リレーの整定値を整定値情報114として管理する。整定値情報114は、当該インピーダンス情報112の内容の更新履歴とともに、DBMS(Data Base Management System)によりデータベースとして管理される。
【0038】
整定値策定部140は、例えば、事故電流を求め、設備情報111から取得される、短絡保護リレーの特性、保護協調曲線、限時要素、瞬時要素等に基づき整定値を策定する。尚、整定値策定部140が、公知の短絡保護リレーのシミュレーションの結果や、実際に行った動作テスト等の結果に基づき、整定値を策定するようにしてもよい。また、整定値策定部140が、ユーザインタフェースを介してユーザに整定値の決定に必要な情報を提示しつつ、ユーザとの間の対話処理により整定値を策定するようにしてもよい。
【0039】
整定値更新部145は、整定値情報114から整定値が更新されている短絡保護リレーを特定し、特定した短絡保護リレーの整定値を通信ネットワーク5を介した遠隔制御により更新する。
【0040】
図5Aに、電力系統1に設定されるノードの例を、また、
図5Bに、整定値の更新の例(整定値を更新する前の
図5Aの各ノードの整定値の例、新たに策定された設備情報111(更新情報)の例、及び整定値を更新した後の各ノードの整定値の例)を示す。この例では、リレー番号が「R20」と「R03」のリクローザ32の整定値が更新されている。
【0041】
図6に、設備情報管理装置200が備える主な機能を示す。設備情報管理装置200は、記憶部210、設備情報管理部220、及び設備情報提供部230の各機能を備える。
【0042】
上記機能のうち、記憶部210は、設備情報211を記憶する。
【0043】
設備情報管理部220は、例えば、通信ネットワーク5を介して、電力系統1を構成する各種設備から設備情報を取得し、取得した設備情報を設備情報211として管理する。また、設備情報管理部220は、例えば、ユーザインタフェースを介してユーザから各種設備の設備情報を受け付け、受け付けた設備情報を設備情報211として管理する。
【0044】
設備情報提供部230は、通信ネットワーク5を介して、整定値管理装置100に設備情報を提供(送信)する。設備情報提供部230は、例えば、設備情報211を更新した際、その更新差分を整定値管理装置100に提供する。
【0045】
図7に、整定値管理装置100や設備情報管理装置200の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。
【0046】
情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。整定値管理装置100や設備情報管理装置200は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0047】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0048】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0049】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0050】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0051】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0052】
入力装置14および出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0053】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0054】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0055】
整定値管理装置100や設備情報管理装置200が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、整定値管理装置100や設備情報管理装置200を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。
【0056】
整定値管理装置100や設備情報管理装置200は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0057】
図8は、整定値管理装置100が整定値の更新に際して行う処理(以下、「整定値更新処理S800」と称する。)を説明するフローチャートである。整定値管理装置100は、例えば、ユーザによって予め設定されたタイミング(設備情報111を更新したタイミング、定期的、予めスケジュールされたタイミング等)が到来すると整定値更新処理S800を実行する。以下、同図とともに整定値更新処理S800について説明する。
【0058】
整定値管理装置100の設備情報取得部120は、設備情報管理装置200からの設備情報の更新差分の受信有無をリアルタイムに監視している(S811:No)。設備情報取得部120は、設備情報管理装置200から更新差分を受信すると(S811:Yes)、受信した更新差分の内容を設備情報111に反映する(S812)。
【0059】
続いて、整定値管理装置100のインピーダンス算出部130が、更新後の設備情報111に基づき、各ノードのインピーダンスを求めてインピーダンス情報112を更新する(S813)。
【0060】
続いて、整定値管理装置100の短絡容量マップ生成部135が、更新後のインピーダンス情報112に基づき、短絡容量マップを生成して短絡容量マップ113を更新する(S814)。
【0061】
続いて、整定値管理装置100の整定値策定部140が、各ノードの整定値を策定して整定値情報114を更新する(S815)。
【0062】
続いて、整定値管理装置100の整定値更新部145が、整定値情報114を参照し、整定値の更新が必要なノードがあるか否かを判定する(S816)。整定値更新部145は、例えば、ノードの整定値の更新前後の値の差の大きさが予め設定された閾値を超える場合に、整定値の更新が必要と判定する。整定値更新部145が整定値の更新が必要なノードがないと判定した場合(S816:No)、処理はS811に戻る。
【0063】
一方、整定値の更新が必要なノードがあると判定した場合(S816:Yes)、整定値更新部145は、更新対象のノードと通信ネットワーク5を介して通信し、更新対象のノードの整定値を更新する(S817)。その後、処理はS811に戻る。
【0064】
以上詳細に説明したように、本実施形態の整定値管理装置100によれば、電力系統1における発電設備の連系状況、稼働状況や電力系統の状態等に応じて短絡保護リレーの整定値を適切に設定することができる。そのため、短絡電流が減少した場合でも、短絡保護リレーを作動させて事故箇所を系統から確実に切り離すことができ、例えば、再生可能エネルギーによる発電機の導入が進んだ際も短絡保護リレーを確実に動作させることができる。
【0065】
また、整定値管理装置100は、通信ネットワーク5を介して短絡保護リレーの整定値を更新するので、遠隔制御により効率よく短絡保護リレーの整定値を管理することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 電力系統
2 送電網
3 配電網
4 変電所
21a 発電設備
21b 発電設備
100 整定値管理装置
110 記憶部
111 設備情報
112 インピーダンス情報
113 短絡容量マップ
114 整定値情報
120 設備情報取得部
130 インピーダンス算出部
135 短絡容量マップ生成部
140 整定値策定部
145 整定値更新部
200 設備情報管理装置
210 記憶部
211 設備情報
220 設備情報管理部
230 設備情報提供部
S800 整定値更新処理