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2025-102919眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102919
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025061210
(22)【出願日】2025-04-02
(62)【分割の表示】P 2023513063の分割
【原出願日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021066040
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 泰士
(72)【発明者】
【氏名】西 泰史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信号光を走査した走査角度に応じて信号光及び参照光の各々の偏光状態を調整する眼科装置を提供する。
【解決手段】光源からの光により被検眼を走査して得られた信号光と、光源からの光が分割された参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、信号光及び参照光の少なくとも一方の光路に配置され、信号光の偏光状態と参照光の偏光状態とが同じになるように、少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部と、被検眼を走査した走査角度に応じて、調整部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光により被検眼を走査して得られた信号光と、前記光源からの光が分割された参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記信号光及び前記参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部と、
前記被検眼を走査した走査角度に基づいて、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態との差を抑制するように前記調整部を制御する制御部と、
を備えた眼科装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記被検眼を走査した走査角度に対応する前記被検眼を走査した位置に基づいて、前記少なくとも一方の光路の偏光状態を調整する制御を行う
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記調整部は、偏光の方位角を調整する光学部材を含む、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記光学部材は、1/2波長板を含み、前記1/2波長板を回転することで偏光の方位角を調整する、
請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記光学部材は、デポラライザを含み、前記デポラライザによる非偏光の光を射出することで、偏光の方位角を調整する、
請求項3に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記被検眼を走査する走査角度を検出し、
検出された走査角度に基づく調整量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記被検眼を走査した走査角度と前記偏光状態を調整する調整量とを対応付けて予め記憶されたテーブルに基づいて、前記調整量を導出する
請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
請求項1の眼科装置のプロセッサが行う制御方法であって、
信号光及び参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部の、OCTの信号光の走査角度に対応する、調整量を取得するステップと、
前記調整量に基づいて、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態との差を抑制するように前記調整部を制御するステップと、
を含む眼科装置の制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
信号光及び参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部の、OCTの信号光の走査角度に対応する、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態との差を抑制するように調整量を取得するステップと、
前記調整量に基づいて、前記調整部を制御するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、眼科装置、眼科装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼を経由した信号光と、信号光との干渉光に基づいて、眼底断層像を取得する光画像計測装置が知られている。従来から信号光と参照光の偏光状態を調整することが求められている(例えば、特開2015-70919号公報参照)。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術の第1の態様の眼科装置は、
光源からの光により被検眼を走査して得られた信号光と、前記光源からの光が分割された参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記信号光及び前記参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態とが同じになるように、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部と、
前記被検眼を走査した走査角度に応じて、前記調整部を制御する制御部と、
を備える。
【0004】
本開示の技術の第2の態様の眼科装置の制御方法は、
前記眼科装置のプロセッサが行う制御方法であって、
信号光及び参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態とが同じになるように、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部の、OCTの信号光の走査角度に対応する、調整量を取得するステップと、
前記調整量に基づいて、前記調整部を制御するステップと、
を含む。
【0005】
本開示の技術の第3の態様のプログラムは、
コンピュータに、
信号光及び参照光の少なくとも一方の光路に配置され、前記信号光の偏光状態と前記参照光の偏光状態とが同じになるように、前記少なくとも一方の光路を伝播する光の偏光状態を調整する調整部の、OCTの信号光の走査角度に対応する、調整量を取得するステップと、
前記調整量に基づいて、前記調整部を制御するステップと、
を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】眼科システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】眼科装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。
図3】眼科装置に含まれる広角光学系の概略的な構成の一例を示す概念図である。
図4】眼科装置の機能の一例を示すブロック図である。
図5】テーブルの作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】テーブルの内容の一例を示すイメージ図である。
図7】OCTによる撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】断層画像を含む表示画面の一例を示す図である。
図9】テーブルの作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】最適な調整量の導出に関する一例の説明図である。
図11】テーブルの内容の一例を示すイメージ図である。
図12】OCTユニットの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、以下では、説明の便宜上、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【0008】
[第1の実施形態]
図1を参照して、眼科システム100の構成の一例を説明する。
図1に示すように、眼科システム100は、眼科装置110と、眼軸長測定装置120と、サーバ装置(以下、「サーバ」という)140と、画像表示装置(以下、「ビューワ」という)150と、を備えている。眼科装置110は、眼底画像と断層画像とを取得する。眼軸長測定装置120は、被検者の眼軸長を測定する。サーバ140は、眼科装置110によって複数の被検者の眼底が撮影されることにより得られた複数の眼底画像及び眼軸長を、被検者のIDに対応して記憶する。ビューワ150は、サーバ140により取得した眼底画像や眼底画像を解析して得られたデータを表示する。眼底画像には、SLOで撮影されたSLO眼底画像や、OCTで撮影されたOCT画像(あるいは、断層画像とも称する)などが含まれる。
【0009】
眼科装置110、眼軸長測定装置120、サーバ140、ビューワ150は、ネットワーク130を介して、相互に接続されている。
【0010】
次に、図2を参照して、眼科装置110の構成を説明する。
図2に示すように、眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。撮影装置14は、被検眼の眼底を撮影する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、および入出力(I/O)ポート16Dを備えたコンピュータによって実現される。
眼科装置110は、本開示の技術の眼科装置の一例である。
【0011】
入出力(I/O)ポート16Dには、記憶装置17が接続されている。なお、記憶装置17とは、例えば、不揮発性メモリ(Non-volatile memory(NVM))で構成される。また、入出力(I/O)ポート16Dは、通信インターフェース(I/F)15を介して、ネットワーク130に接続されている。
【0012】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、撮影されて得られた画像を表示したり、撮影の指示を含む各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。グラフィックユーザインターフェースの一例としては、タッチパネル・ディスプレイが挙げられる。
【0013】
記憶装置17には、データ処理プログラム17Aが記憶されている。なお、ここでは、記憶装置17にデータ処理プログラム17Aが記憶されている場合について説明しているが、本開示の技術はこれに限定されるものではなく、ROM16Cにデータ処理プログラム17Aが記憶されていてもよい。
データ処理プログラム17Aは、本開示の技術の眼科プログラムの一例である。
【0014】
なお、以下の説明では、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、被検眼12の前眼部の瞳孔の中心27と眼球の中心Oとを結ぶ方向を「Z方向」とする。従って、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0015】
次に、撮影装置14について説明する。撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、広角光学系19、およびOCTユニット20を含む。
広角光学系19は、SLOユニット18からの光をX方向(水平方向)に光を偏向するポリゴンミラーなどで構成される第1光学スキャナ22と、OCTユニット10からの光をX方向(水平方向)に光を偏向するガルバノミラーなどによって構成される第2スキャナ24と、ダイクロイックミラー26と、Y方向(垂直方向)に光を偏向するガルバノミラーなどで構成する第3スキャナ29を含む共通光学系28を、含む。ダイクロイックミラー26で、SLO光の光路とOCT光の光路が合成され、SLO光とOCT光は、共通光学系28を介して被検眼12の瞳孔を通して眼底の撮影可能領域12Aに照射される。なお、撮影可能領域12Aは、眼球の中心Oからの内部照射角に換算すると約200度の範囲内である。
【0016】
SLOユニット18は、光源18A、検出素子18B、およびダイクロイックミラー18C等を含んで、被検眼12の眼底を撮影するように構成されている。光源18Aは、R光(赤色光)の光源、G光(緑色光)の光源、B光(青色光)の光源、赤外線(例えば、近赤外光)の光源を備え、R光、G光又は/及びB光を発するモードと、赤外線(例えば、近赤外線)を発するモードとに切り替え可能に構成されている。
【0017】
光源18Aからの光(以下、「SLO光」という。)はダイクロイックミラー18Cを透過し、広角光学系19に向かう。SLO光は、第1光学スキャナ22によりX方向(水平方向)に偏向され、ダイクロイックミラー26を透過し、共通光学系28の第3光学スキャナ29によりY方向(垂直方向)に偏向される。第1光学スキャナ22と第3光学スキャナ29が制御装置16により制御され、眼底の撮影可能領域12Aが走査される。眼底からの反射光は、広角光学系19を介して、ダイクロイックミラー18Cで反射され検出素子18Bで受光される。検出素子18Bから検出信号による眼底の正面画像であるSLO眼底画像(以下、「SLO画像」という)が制御装置16で生成される。
【0018】
OCTユニット20は、フーリエドメインタイプのOCTを一例として説明する。特に、本開示の技術に係る眼科装置110は、波長掃引光源を用いたスウェプトソースタイプのOCT(SS-OCT)のOCTユニット20を有する。
【0019】
OCTユニット20は、光源20A、センサ20B、ファイバカプラ20C、20D、及び、偏光調整部20Fを含む参照光学系20Gを含む。光源20Aは近赤外の波長領域の光を発する波長掃引型の光源である。
【0020】
OCTユニット20の光源20Aからの光(以下、信号光(LS)という。)が、ファイバカプラ20Cで分岐し、一方の信号光は、広角光学系19の第2光学スキャナ24によりX方向(水平方向)に偏向され、ダイクロイックミラー26で反射し、共通光学系28の第3光学スキャナ29によりY方向(垂直方向)に偏向される。第2光学スキャナ24と第3光学スキャナ29が制御装置16により制御され、眼底の撮影可能領域12AにおけるOCT撮影を行う領域が走査される。OCT撮影を行う領域は眼科装置110のユーザなどにより指定される。当該走査には様々な走査のパターンがあり、眼底1点のスキャンであるAスキャン、眼底の断層画像を取得するための線状のBスキャンや、OCTボリュームデータを取得するための面状のCスキャンなどがある。
【0021】
眼底で反射した信号光は、広角光学系19、ファイバカプラ20Cを介してファイバカプラ20Dに入射する。また、他方の信号光、すなわち、光源20A、ファイバカプラ20C、偏光調整部20F、及びセンサ20Bに進む信号光を、参照光(LR)と言う。ファイバカプラ20Cで分岐した他方の参照光は、偏光調整部20Fで偏光状態が調整されて、ファイバカプラ20Dに入射する。ファイバカプラ20Dにて、偏光が調整された参照光と、眼底で反射した信号光が干渉し、当該干渉光がセンサ20Bに入射する。センサ20Bは、干渉光の強度を波長ごとに検出し、検出信号として制御装置16に出力する。
【0022】
そして、制御装置16は、センサ20Bの検出信号に対してフーリエ変換などの処理を施し、OCT画像あるいは断層画像、以下「OCT画像」という)を生成する。
【0023】
ここで、信号光(LS)の光路長は、光源20Aから眼底までと、眼底からセンサ20Bまでとにより定まる。そして、参照光の光路長も、信号光の光路長と同じになるように制御される。
【0024】
なお、信号光の内、眼底から反射してきた信号光ファイバカプラ20Dに入射する反射光を特に戻り光と言う。
OCTユニット20は、本開示の技術の干渉光学系の一例である。また、偏光調整部20Fは、本開示の技術の調整部の一例である。
【0025】
本実施形態では、偏光調整部20Fは、駆動部20Eに連結されており、入射された光を、駆動部20Eの駆動量に応じた偏光状態に調整して射出する。偏光状態は、方位角を含んで示される。なお、偏光状態として直交座標の振幅の比と位相差で示してもよい。本実施形態では、偏光調整部20Fの一例として、位相差(λ/2)を与える1/2波長板を用い、1/2波長板により、入射された直線偏光を回転させて射出する。
偏光調整部20Fの一例である1/2波長板は、本開示の技術の光学部材の一例である。
【0026】
以下の説明では、SLO光および信号光は共にX方向およびY方向に2次元的に走査される光であるので、SLO光および信号光を区別して説明する必要がない場合には、SLO光および信号光を総称して「走査光」という。
【0027】
次に、図3を参照して、眼科装置110に含まれる広角光学系19の構成を説明する。
図3に示すように、共通光学系28は、第3光学スキャナ29の他に、スリットミラー30および楕円鏡32を含む。なお、ダイクロイックミラー26、スリットミラー30、および楕円鏡32が側面視端面図で表されている。なお、共通光学系28は、スリットミラー30および楕円鏡32に代えて、凹面鏡、放物面鏡、自由曲面鏡などのミラーや、複数のレンズ群を用いた構成でもよい。
【0028】
スリットミラー30は、楕円状の第1反射面30Aを有する。第1反射面30Aは、第1焦点P1および第2焦点P2を有する。楕円鏡32も、楕円状の第2反射面32Aを有する。第2反射面32Aは、第1焦点P3および第2焦点P4を有する。
【0029】
スリットミラー30、楕円鏡32、および第3光学スキャナ29は、第1焦点P3および第2焦点P2が第3光学スキャナ29で共通の位置になるように配置されている。また、スリットミラー30、楕円鏡32、および第3光学スキャナ29は、第2焦点P4が被検眼12の瞳孔の中心部に位置するように配置されている。更に、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、およびスリットミラー30は、第1焦点P1が第1光学スキャナ22および第2光学スキャナ24に位置するように配置されている。
【0030】
つまり、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、および第3光学スキャナ29は、被検眼12の瞳孔の中心部と共役な位置に配置されている。
【0031】
本実施形態では、図3に示す広角光学系19により、眼底の視野角(FOV:Field of View)を大きな角度とし、広範囲の眼底領域を観察できる。当該広範囲の眼底領域を、眼科装置110による外部からの走査光についての外部照射角と、走査光が照射される被検眼の内部での照射角としての内部照射角とを区別して説明する。例えば、外部照射角が120度の場合、内部照射角は約160度に相当する。本実施の形態では、内部照射角は200度としている。
【0032】
外部照射角とは、眼科装置110側から、すなわち被検眼12の外部からの光照射角である。つまり、被検眼12の眼底に対して走査光が被検眼12の瞳孔の中心27(すなわち、瞳孔の正対視中央点(図2も参照))へ向かう角度が外部照射角である。この外部照射角はまた眼底から反射して瞳孔の中心27から被検眼12の外部に射出して眼科装置110へ向かう光の角度に等しい。
【0033】
一方、内部照射角とは、被検眼12の眼球の中心Oを基準位置として、被検眼12の眼底が走査光により照射されることで実質的に撮影可能な光照射角を表している。外部照射角Aと内部照射角Bとは、対応関係にあるが、以下の説明では、眼科装置としての説明であるため、眼底の視野角に対応する照射角として、外部照射角を用いる。
【0034】
眼科装置110は、外部照射角による被検眼12の眼底領域である撮影可能領域12A(図2も参照)内を撮影する。この撮影可能領域12Aは、例えば、広角光学系19による走査光の走査可能な最大領域である。
【0035】
眼科装置110が被検眼12の撮影可能領域12Aを撮影して得たSLO画像をUWFSLO画像と称する。なお、UWFとは、Ultra-Widefield(超広角)の略称を指す。眼底の視野角(FOV)を超広角な角度とした広角光学系30により、被検眼12の眼底の後極部から赤道部を超える領域を撮影することができ、渦静脈などの眼底周辺部に存在する構造物を撮影できる。
【0036】
次に、図4を参照して、眼科装置110の制御装置16のCPU16Aがデータ処理プログラム17Aを実行することで実現される各種機能の一例について説明する。
データ処理プログラム17Aは、設定機能、SLO画像取得機能、OCT画像取得機能(画像取得機能、画像処理機能、画像表示機能)、送信機能を備えている。CPU16Aがこの各機能を有するデータ処理プログラム17Aを実行することで、CPU16Aは、図4に示すように、設定部202、SLO画像取得部204、OCT画像取得部206(画像取得部210、画像処理部212、画像表示部214)、送信部208として機能する。
【0037】
また、本実施形態では、図2に示すように、眼科装置110の制御装置16が入力/表示装置16Eを備えているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、眼科装置110の制御装置16は入力/表示装置16Eを備えず、眼科装置110とは物理的に独立した別個の表示装置を備えるようにしてもよい。この場合、当該表示装置は、制御装置16のCPU16Aの制御下で動作する画像処理プロセッサユニットを備え、画像処理プロセッサユニットが、画像表示部214が出力指示した画像信号に基づいて、SLO画像等を表示するようにしてもよい。
【0038】
(1)偏光と走査角度の対応関係を示すテーブルの作成
最初に、眼科システム100の眼科装置110を使用するより前に、OCT画像を取得する場合に用いる偏光状態を調整する情報を収集する。収集した情報はテーブルTBとして記憶しておき、後述するOCT画像を取得する際に用いる。なお、テーブルTBのデータ(以下、テーブルデータという。)は、サーバ140へ送信し、サーバ140から取得してもよい。また、テーブルデータは、装置の設置時等のセットアップ時に導出して記憶してもよく、サーバ140に記憶しておき、取得してもよい。
なお、テーブルTBは、本開示の技術のテーブルの一例である。
【0039】
ここで、上述のように、OCT撮影処理が実行されるより前には、OCT画像を取得する場合に用いる偏光状態を調整する情報が収集される。ここで、収集される情報について詳細に説明する。偏光状態を調整する情報は、OCT画像を好ましい状態で取得する場合に、信号光の偏光状態及び参照光の偏光状態の関係を調整することを示す情報である。
【0040】
OCTでは、信号光が被検眼12の瞳孔より眼底に照射されることで得られた各戻り光と参照光とを干渉させて得られた干渉光のトモグラフィーが行われる。このように干渉光のトモグラフィーが行われることで、断層領域が撮影され、断層領域を示すOCT画像が画像取得部210によって取得される。
【0041】
戻り光と参照光とが干渉するには、信号光の偏光状態と参照光の偏光状態とが等しいことが理想である。ところが、OCTでは、測定光と参照光で偏光状態(例えば、偏光の方向)が一致しない場合があり、偏光状態が一致しない状態では干渉作用が抑制されて、結果としてOCT画像のコントラストの低下を招く。例えば、右回りの円偏光の信号光が被検眼の眼底に照射された場合、眼球が複屈折性を有しないと仮定すると、被検眼の眼底で反射された戻り光は左回りの円偏光となる。また、偏光の変化量は外部照射角に対応する走査角度によって変化するため、眼底の撮影領域に応じて偏光の変化量が変化する。また、図3に示すように広角光学系19として楕円鏡を用いた構成では、楕円鏡の反射面である30Aや32Aが製造時の精度の限界から完璧な楕円面で無い場合がある。さらに、個々の眼科装置110においても、楕円鏡製造時の誤差などにより、複数の眼科装置110でも楕円鏡の楕円面の形状にばらつきができることがある。これらの楕円鏡製造時における形状のばらつきによって、それぞれの眼科装置110で、偏光状態も異なることになる。
【0042】
従って、参照光の偏光状態を一定の偏光状態に維持した場合、信号光(戻り光)の偏光状態が変化することで、信号光(戻り光)と参照光とによる干渉が抑制され、OCTにより撮影したOCT画像の画質が劣化する。このため、信号光を走査した走査角度に応じて信号光及び参照光の各々の偏光状態を共通にすることが好ましい。また、信号光を走査した際の眼底位置(以下、走査位置という。)に応じて信号光及び参照光の各々の偏光状態を共通にすることがさらに好ましい。これは、眼底は球面であり、眼球の中心から離れた瞳孔の中心を介して信号光を走査した場合に、信号光及び戻り光の全体の光路長が走査位置に応じて変化することによる影響の抑制が可能であるためである。
【0043】
走査角度と、その走査角度における信号光の偏光状態との関係は予め導出することができる。そこで、走査角度と、その走査角度における信号光の偏光状態との関係に基づいて、走査角度各々における信号光の偏光状態と参照光の偏光状態との変化を抑制する調整を行うことで、信号光及び参照光の各々の偏光状態を共通にする。この走査角度と、その走査角度における信号光の偏光状態との関係を、テーブルとして予め作成しておき、OCT画像を取得する場合に走査角度に応じて偏光状態を調整する。
【0044】
次に、図5を参照して、テーブルTBの作成処理の一例を説明する。
眼科装置110の制御装置16のCPU16Aがデータ処理プログラム17Aに含まれるテーブル作成処理プロセスを実行することで、図5に示すテーブル作成処理が実現される。
【0045】
図5に示すテーブル作成処理は、CPU16Aの作成部200によって行われる。
先ず、ステップS100で、作成部200は、眼科装置110に模型眼の設置を確認する。この場合、医者またはオペレータが入力/表示装置16Eを操作して模型眼の設置の完了を指示することで、確認される。次のステップS102では、走査範囲を設定する。走査範囲とは、眼科装置110においてOCT画像を取得する場合に信号光を走査する範囲、すなわち走査角度の範囲である。次に、ステップS104では、走査角度を初期値に設定する。初期値はステップS102で設定された走査範囲の内を走査する場合における何れかの走査角度が予め定められる。例えば、最大の走査角度が設定される。
【0046】
ステップS106では、設定された走査角度で模型眼を走査し、走査して得られた信号光の偏光状態を、ステップS108で、取得して記憶する。具体的には信号光の偏光状態を測定し、記憶する。偏光状態の測定には、例えば偏光カメラ等の偏光測定装置を用いる。偏光測定装置はOCTユニット20のセンサ20Bに設置することが好ましい。なお、本実施形態に係るOCTユニット20のセンサ20Bは、偏光測定機能を有し、偏光測定装置として動作することが可能になっている。偏光測定装置の一例である偏光カメラは、ラインセンサ及び2次元センサの光の入射側に画素毎に方位角が異なる偏光子が取り付けられ、各々所定方位角の偏光状態の光のみ透過することで、入射光の偏光状態として、方位角(偏光の方向)を測定可能である。また、偏光測定装置の他の例として、ポラリメータを用いることも可能である。すなわち、偏光子に光を透過させ、その偏光子を回転することで光の偏光状態を測定する。
【0047】
また、規格が統一された模型眼を基準にして、眼科装置110ごとにテーブルTBwを設定する。そのため、楕円鏡製造時における形状のばらつきによって生じる偏光状態の変化の影響を除去することができる。よって、どの眼科装置110を用いても被検眼及び楕円鏡などの光学系における偏光状態のばらつきの影響を除去することができ、安定的なOCT撮影を行うことができる。
【0048】
ステップS110では、ステップS108で記憶した偏光状態に対応する偏光調整部20Fの調整量を導出する。具体的には、偏光調整部20Fは駆動部20Eの駆動量に応じた偏光状態に調整される。この駆動部20Eの駆動量と偏光の方位角との関係は既知であり、偏光状態に対応する偏光調整部20Fの駆動量を調整量として導出する。例えば、瞳孔の中心及び眼球の中心を通る光軸に沿う方向の走査角度を基準にして、その基準における信号光の偏光状態からの駆動量を調整量とする。そして、ステップS112では、走査角度、偏光状態、及び調整量を対応付けて記憶する。
【0049】
ステップS114では、走査範囲を網羅する走査角度の走査が完了したか否かを判断し、肯定判断した場合は、ステップS118へ処理を移行し、否定判断した場合はステップS116へ処理を移行する。ステップS116では、走査角度を更新して処理をステップS106へ戻す。ステップS118では、ステップS112で対応付けた走査角度、偏光状態、及び調整量の各々をテーブルTBとして作成し、記憶する。
【0050】
図6にはテーブルTBの一例としてテーブルTBwが示されている。図6に示す例のテーブルTBwは、走査位置を定める走査角度θと、走査角度に対応する偏光状態PZと、偏光調整部20Fの調整量Wとが対応づけられている。テーブルTBwは、テーブルTBとして制御装置16の記憶装置17に記憶される。図6に示す例のテーブルTBwは、瞳孔の中心及び眼球の中心を通る光軸に沿う方向の走査角度θを基準(0度)にして、10度の走査角度θを増減した場合における信号光の偏光状態PZと偏光調整部20Fを駆動する駆動量である調整量Wとが対応付けられている。
【0051】
なお、図6に示す例では、±70度の走査角度の範囲をテーブルTBとした一例を示したが、図6に示す走査角度の範囲に限定されるものではない。例えば、±75度及び±80の走査角度の範囲のように所定範囲を設定してもよく、眼の視野に対応する±100度の走査角度の範囲に設定してもよい。また、走査角度の範囲は、基準(0度)から均等に設定することに限定されず、例えば、プラス側の最大値又は及びマイナス側の最小値の走査角度を異ならせてもよく、また、例えば、±100度の走査角度の範囲の一部の角度範囲を設定してもよい。
【0052】
また、図6では、10度毎の走査角度θ、信号光の偏光状態PZ及び調整量Wを対応付けたテーブルTBの一例を示したが、テーブルTBは10度毎の走査角度θ、信号光の偏光状態PZ及び調整量Wの対応関係に限定されるものではない。例えば、10度未満でもよく、10度を超えてもよい。
【0053】
なお、作成したテーブルTBは、サーバ140へ送信し、サーバ140から取得してもよい。また、テーブルデータは、装置の設置時等のセットアップ時に導出して記憶してもよく、サーバ140に記憶しておき、取得してもよい。
【0054】
(2)テーブルの偏光情報を用いたOCT撮影
次に、眼科装置110によるOCTを用いた撮影処理を説明する。
眼科装置110の制御装置16のCPU16Aがデータ処理プログラム17Aに含まれるOCT撮影処理プロセスを実行することで、図7に示すOCT撮影処理が実現される。
【0055】
図7に示すOCT撮影処理では、先ず、ステップS200で、設定部202は、初期設定を行う。具体的には、初期設定とは、例えば、眼科装置110におけるフォーカス、アライメントなどのために光学系を調整したり、眼の動きに追従するアイトラッキングなどの制御を行ったり、被検者の識別情報の入力を受け付けたりする処理を指す。また、ステップS200では、上述のテーブルTBの読み取り処理も行われる。
【0056】
次のステップS202で、SLO画像取得部204は、SLOによる撮影を実行することでSLO画像を取得し、その後、ステップS208へ処理を移行する。ステップS202の処理がSLO画像取得部204によって実行されることで、ライブSLO画像が入力/表示装置16Eに表示される。入力/表示装置16Eには、SLO画像がライブビュー画像として表示される。
【0057】
ステップS206~S224で、OCT画像取得部206は、OCT画像を取得する。詳細には、まず、ステップS206で、画像取得部210は、OCT撮影範囲である走査範囲の指定を受け付ける。具体的には、入力/表示装置16Eにライブビュー画像として表示されたライブSLO画像をオペレータが見て、OCTによる撮影が指示書を示すデータに基づいて行われる箇所を確認する。オペレータは、確認した箇所についてOCTによる撮影が行われるように、眼科装置110を設定する。具体的には、例えば、オペレータは、マウスを操作して、OCT撮影範囲である走査範囲872を指定する。すなわち、ステップS206で、画像取得部210は、走査範囲872の指定を受け付ける。走査範囲872は、B-scanのラインが指定される。なお、OCT撮影範囲は、C-scanの矩形範囲を指定してもよい。
【0058】
そして、ステップS208~S220で、走査範囲872を、信号光と参照光の各偏光状態を共通にしてOCT撮影する。具体的には、ステップS208で、画像取得部210は、走査角度を初期値に設定する。走査角度の初期値は、例えば、走査範囲内の走査角度の最大値または最小値が設定される。次に、ステップS210で、テーブルTBを参照し、走査角度に対応する偏光の調整量を取得し、ステップS214で、設定された走査角度について参照光の偏光状態が信号光の偏光状態と共通に調整された状態で被検眼を走査する。
【0059】
次のステップS216で、画像取得部210は、走査範囲の走査が終了したか否かを判断する。ステップS216で否定判断の場合はステップS218で走査角度をインクリメントまたはデクリメントしてステップS210へ処理を戻し、上記処理を繰り返す。走査範囲の走査が終了し、ステップS216で肯定判断の場合はステップS220へ処理を移行する。ステップS220で、画像取得部210は、走査範囲の走査によって得られた干渉光の検出信号を画像処理部212へ出力する。
【0060】
ステップS222で、画像処理部212は、干渉光の検出信号に対してフーリエ変換などの信号処理を行い、複数のAスキャンデータからなるOCTデータを生成する。そして、OCTデータに対して加算平均化処理、眼球形状補正処理などの画像処理を行い、断層画像を生成する。断層画像を生成した後、ステップS224へ移行する。
ステップS224では、画像表示部214は、ステップS222の処理が実行されることによって画像処理が施されて得られた断層画像を、入力/表示装置16Eに表示させ、その後、本処理はステップS226へ移行する。
【0061】
図8に、入力/表示装置16Eに表示された断層画像を示す。表示画面800には、断層画像810と、OCTデータが取得された位置に関する位置情報として縮小されたSLO画像820に断層画像の位置情報を示す矢印830が重畳表示されているナビゲーション画像とが含まれている。
【0062】
ステップS226で、送信部208は、ステップS222の処理が実行されることによって画像処理が施されて得られた断層画像を示す画像データを、被検者の識別情報と共にサーバ140へ送信し、その後、本データ処理を終了する。なお、当該画像データとともに、OCTデータをサーバ140へ送付するようにしてもよい。
上述したステップS212の制御の内容は、本開示の技術の制御部による制御の内容の一例である。
【0063】
一方、サーバ140は、ビューワ150からの要求に基づいて画像データなどをビューワ150に送信する。ビューワ150は、画像データに基づいて被検眼画像であるSLO画像やOCT画像をディスプレイ156に対して表示させる。ユーザは、ディスプレイ156に表示されたSLO画像やOCT画像を見ながら、被検眼12を診断することができる。
【0064】
以上説明したように本開示の技術では、信号光を走査して、信号光が被検眼の眼底の網膜で反射された戻り光と、信号光から分岐した参照光とを干渉させて、各走査位置の網膜の奥行方向の断層領域を撮影する際に、干渉が生ずるように参照光の偏光状態を走査角度に応じて調整する。これによって、本開示の技術では、信号光を走査しながら網膜の断層領域が撮影される際に、網膜で反射された戻り光と参照光との偏光状態が走査角度によらず一定に維持することができる。よって、網膜で反射された戻り光と参照光により得られる干渉光から走査角度によって異なる偏光の影響を除去することができる。これらのことから、広角でOCT撮影を行う場合に、走査角度によって異なる偏光の影響を除去し、高解像度な断層画像を取得することができる。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第1の実施形態では、偏光調整部20Fの偏光状態を測定し、測定結果から偏光調整部20Fの調整量を導出してテーブルとして記憶した。第2の実施形態は、偏光状態が最適になる偏光調整部20Fの調整量を実験的に求めてテーブルとして記憶するものである。
【0066】
次に、図9を参照して、本実施形態に係るテーブルTBの作成処理を説明する。
図9に示すテーブル作成処理のプロセスは、図5に示すテーブル作成処理におけるステップS106からステップS112の処理を、ステップS120からステップS132の処理に代えたものである。図9に示すテーブル作成処理は、作成部200によって行われる。
【0067】
先ず、ステップS100からステップS104の処理で、作成部200は、走査範囲を設定し、走査角度を初期値に設定する。
【0068】
次に、ステップS120で、偏光調整部20Fの調整量を初期値に設定する。初期値の一例には、偏光の方位角を0度に設定することが挙げられる。次のステップS122では、図5のステップS106と同様に、ステップS104で設定された走査角度で模型眼を走査する。ステップS124では、走査して得られた信号光による画像コントラストを信号光の偏光状態として、取得して記憶する。次に、ステップS126で、偏光調整部20Fの偏光状態を調整可能な範囲についてステップS122及びステップS124の処理が終了したか否かを判断する。ステップS126で否定判断の場合は、ステップS128で、偏光調整部20Fを所定調整量だけ駆動させることで、調整量を更新する。具体的には、駆動部20Eの駆動量を所定駆動量に設定することで、更新された調整量になるように偏光状態が調整される。一方、ステップS126で、肯定判断の場合は、ステップS130で、最適な調整量を導出する。具体的には、図10に示すように、ステップS124で記憶した複数の画像コントラストのうち、最大の画像コントラストの調整量(図10では最適値として示す)を、設定された走査角度における偏光調整部20Fの調整量として導出する。そして、ステップS132で、ステップS130で導出した画像コントラストの調整量と、走査角度とを対応付けて記憶する。
【0069】
そして、ステップS114からステップS118で、走査範囲を網羅する走査角度と調整量との対応関係をテーブルTBとして作成し、記憶する。
【0070】
図11にはテーブルTBの一例としてテーブルTBvが示されている。図11に示す例のテーブルTBvは、走査位置を定める走査角度θと、走査角度に対応する調整部20Fの調整量Vとが対応づけられている。テーブルTBvは、テーブルTBとして制御装置16の記憶装置17に記憶される。図11に示す例のテーブルTBvは、瞳孔の中心及び眼球の中心を通る光軸に沿う方向の走査角度θを基準(0度)にして、10度の走査角度θを増減した場合における偏光調整部20Fを駆動する駆動量である調整量Vとが対応付けられている。
【0071】
なお、図11に示す例でも、図6に示す例と同様に、±70度の走査角度の範囲をテーブルTBとすることに限定されるものではない。
【0072】
以上説明したように本開示の技術では、偏光調整部20Fを駆動して得られる画像コントラストに基づいて、最大コントラストとなる調整量を導出するので、実機に則して偏光状態が調整される。
【0073】
[第1の変形例]
上記では、OCTユニット20の一例として、1/2波長板などの偏光調整部20Fを含む参照光学系20Gを備えた場合を説明した。本開示の技術はこれに限定されない。第1の変形例は、1/2波長板などの偏光調整部20Fに代えて、一定の偏光状態で入射された光を非偏光の光として射出するデポラライザを参照光学系20Gに備えたものである。
【0074】
次に、図12を参照して、第1の変形例を説明する。
図12に示すように、変形例は、OCTユニット20の一例として、図2に示す1/2波長板などの偏光調整部20Fに代えて、ミラー型のデポラライザ20Mを参照光学系20Gに備えたものである。
ファイバカプラ20Cで分岐した他方の信号光は、ミラー型のデポラライザ20Mにおける反射により偏光状態が調整されて、ファイバカプラ20Dを介してセンサ20Bに入射する。デポラライザ20Mは、上述のように、駆動部20Eに連結されており、入射された光を、駆動部20Eの駆動量に応じた偏光状態に調整して射出する。
【0075】
[第2の変形例]
上記では、OCTユニット20の一例として、ファイバカプラ20Cで分割された他方の光の光路における参照光学系20Gに1/2波長板などの偏光調整部20Fを設けた場合を説明した。本開示の技術は、参照光学系20Gのみに偏光調整部20Fを設けることに限定されない。例えば、信号光の戻り光の光路、具体的には戻り光がセンサ20Bへ向かう光路であるファイバカプラ20Cとファイバカプラ20Dとの間に偏光調整部20Fを設けてもよい。また、ファイバカプラ20Cで分割された他方の光の光路、及び戻り光がセンサ20Bへ向かう光路の双方に偏光調整部20Fを設けてもよい。
【0076】
[第3の変形例]
上記では、OCT撮影位置を定めるためにSLO画像(UWFSLO画像)を用いる例を説明したが、眼底カメラによる眼底画像でもよいし、画角が比較的小さい(例えば、内部照射角で100°以下)のSLO眼科装置あるいは眼底カメラなど、さまざまな眼科装置で撮影された眼底画像でも適用できることは言うまでもない。
【0077】
[第4の変形例]
上記では、走査角度に応じて信号光と参照光の各々の偏光状態が共通になるように、信号光の偏光状態、及び参照光の偏光状態の少なくとも一方の偏光状態を調整する場合を説明した。本開示の技術は、走査角度に応じて偏光状態を調整することに限定されるのもではなく、例えば被検眼の眼底の走査位置に応じて、信号光と参照光の各々の偏光状態が共通になるように、偏光状態を調整してもよい。例えば、A-Scan単位で、信号光と参照光の各々の偏光状態が共通になるように、信号光の偏光状態、及び参照光の偏光状態の少なくとも一方の偏光状態を調整してもよい。
【0078】
[その他の変形例]
上記実施形態では、眼科装置110、眼軸長測定装置120、サーバ140、及びビューワ150を備えた眼科システム100を例として説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、第1の例として、眼軸長測定装置120を省略してもよい。
また、第2の例として、眼科装置110が、サーバ140及びビューワ150の少なくとも一方の機能を更に有してもよい。これにより、眼科装置110が備える機能に対応するサーバ140及びビューワ150の少なくとも一方の装置を省略することができる。
更に、サーバ140を省略し、ビューワ150がサーバ140の機能を実行するようにしてもよい。
【0079】
なお、本開示の技術に係る眼科装置110は、スウェプトソースタイプのOCT(SS-OCT)を用いたOCTユニットで説明したが、なお、スウェプトソースタイプ以外のタイプ、たとえばスペクトラルドメインのOCT(SD-OCT)を用いる眼科装置に適用することも可能である。
また、本開示の技術では、SLO撮影系機能及びOCT撮影系機能を有する眼科装置110について説明したが、眼底カメラ等の眼底撮影装置、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡などと、本開示の技術に係る構成を有するOCTユニットを組み合わせることも可能である。
また、本開示の技術を、制御装置、OCTユニット及び広角光学系とから構成されるスタンドアローン型のOCT装置に適用することも可能である。スタンドアローン型のOCT装置とは、被検眼のOCT画像を取得することに特化した眼科機器である。スタンドアローン型のOCT装置では、OCT撮影位置を決定するにあたり、SLO画像に代えてOCTボリュームデータから生成した正面画像を用いる。
【0080】
上記実施形態で説明したデータ処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
また、上記実施形態では、汎用的なプロセッサの一例としてCPUを用いて説明したが、上記において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU: Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
また、上述した実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、複数のプロセッサが連携して成すものであってもよく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。
【0081】
上記実施形態では、コンピュータを利用したソフトウェア構成によりデータ処理が実現される場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、コンピュータを利用したソフトウェア構成に代えて、FPGA又はASIC等のハードウェア構成のみによって、データ処理が実行されるようにしてもよい。データ処理のうちの一部の処理がソフトウェア構成により実行され、残りの処理がハードウェア構成によって実行されるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態における処理をコンピュータにより実行させるために、上述した処理をコンピュータで処理可能なコードで記述したプログラムを光ディスク等の記憶媒体等に記憶して流通するようにしてもよい。
【0082】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12