(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103284
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】多目的作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 59/042 20060101AFI20250702BHJP
A01B 35/00 20060101ALI20250702BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
A01B59/042 Z
A01B35/00 Z
A01D67/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220579
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】川崎 優太
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
【テーマコード(参考)】
2B034
2B041
2B076
【Fターム(参考)】
2B034AA06
2B034BA08
2B034BC06
2B034BE05
2B034BG05
2B041AA07
2B041AA13
2B041AB05
2B041AC01
2B041AC11
2B041CA03
2B041CA16
2B041HA25
2B076AA07
2B076BA05
2B076CF02
(57)【要約】
【課題】作業機を取り付けた状態でより安定した走行を実現できる多目的作業車両を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る多目的作業車両は、クローラ構造であって、側面視において頂点の位置に配置された駆動輪と、駆動輪に対して進行方向の一方側に配置される移動可能な第1従動輪と、駆動輪に対して進行方向の他方側に配置される移動不可な第2従動輪とを有する走行装置と、駆動輪に対して第2従動輪側に配置され、エンジンおよびモータを有する駆動源とバッテリとが固定される動力装置と、駆動輪に対して第1従動輪側に配置される作業機とを備える。第1従動輪は、第2従動輪との間の距離が変化する方向に移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ構造であって、側面視において頂点の位置に配置された駆動輪と、前記駆動輪に対して進行方向の一方側に配置される移動可能な第1従動輪と、前記駆動輪に対して進行方向の他方側に配置される移動不可な第2従動輪とを有する走行装置と、
前記駆動輪に対して前記第2従動輪側に配置され、エンジンおよびモータを有する駆動源とバッテリとが固定される動力装置と、
前記駆動輪に対して前記第1従動輪側に配置される作業機と、
を備え、
前記第1従動輪は、
前記第2従動輪との間の距離が変化する方向に移動する
多目的作業車両。
【請求項2】
前記走行装置は、
直進時には、前記第2従動輪との間の距離が長くなる方向に前記第1従動輪を移動させ、旋回時には、前記第2従動輪との間の距離が短くなる方向に前記第1従動輪を移動させる
請求項1に記載の多目的作業車両。
【請求項3】
前記作業機は、
耕運機または牽引物であり、前記進行方向において前記動力装置とは反対側に配置され、
前記走行装置は、
前記動力装置が配置された側を前側とし、前記第2従動輪を前方側とする方向に走行する
請求項1に記載の多目的作業車両。
【請求項4】
前記作業機は、
前記進行方向において前記動力装置とは反対側に設けられた刈取部を有する収穫機であり、
前記走行装置は、
前記動力装置が配置された側を後側とし、前記第1従動輪を前方側とする方向に走行する
請求項1に記載の多目的作業車両。
【請求項5】
前記作業機を駆動させるPTO軸をさらに備え、
前記エンジン、前記モータおよびPTO軸は、それぞれの動力伝達部が同一平面上に位置する
請求項1に記載の多目的作業車両。
【請求項6】
前記PTO軸が前記作業機に連結されていない場合、前記エンジンの出力を前記PTO軸が前記作業機に連結された場合と同じ出力で維持し、前記エンジンの動力により前記モータを回転させて回生電力を発生させる
請求項5に記載の多目的作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ構造の走行部を有し、回動自在に設けられた支柱部の先端に作業台を有する昇降ブームの基部及び走行車体上部を覆う運搬作業台が、一体に旋回自在に取り付けられてなることを特徴とする多目的管理作業車がある。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、車両にどのような作業機が取り付けられたとしても、より安定した走行を実現する上で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業機を取り付けた状態でより安定した走行を実現できる多目的作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る多目的作業車両(1)は、クローラ構造であって、側面視において頂点の位置に配置された駆動輪(22)と、前記駆動輪(22)に対して進行方向の一方側に配置される移動可能な第1従動輪(23)と、前記駆動輪(22)に対して進行方向の他方側に配置される移動不可な第2従動輪(24d)とを有する走行装置(2)と、前記駆動輪(22)に対して前記第2従動輪(24d)側に配置され、エンジン(315)およびモータ(316)を有する駆動源とバッテリ(314)とが固定される動力装置(31)と、前記駆動輪(22)に対して前記第1従動輪(23)側に配置される作業機(W)とを備える。前記第1従動輪(23)は、前記第2従動輪(24d)との間の距離が変化する方向に移動する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る作業車両によれば、作業機を取り付けた状態でより安定した走行を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る多目的作業車両の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る多目的作業車両の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る多目的作業車両の側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る多目的作業車両の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る多目的作業車両の斜視図である。
【
図6】
図6は、作業機である耕運機を装着した例を示す図である。
【
図7】
図7は、作業機である耕運機を装着した例を示す図である。
【
図8】
図8は、作業機である移植機を装着した例を示す図である。
【
図9】
図9は、作業機である移植機を装着した例を示す図である。
【
図10】
図10は、作業機である防除機を装着した例を示す図である。
【
図11】
図11は、作業機である防除機を装着した例を示す図である。
【
図12】
図12は、作業機である土寄せ機を装着した例を示す図である。
【
図13】
図13は、作業機である土寄せ機を装着した例を示す図である。
【
図14】
図14は、作業機である収穫機を装着した例を示す図である。
【
図15】
図15は、作業機である収穫機を装着した例を示す図である。
【
図16】
図16は、耕運機が装着された多目的作業車両の第1従動輪の位置を示す図である。
【
図17】
図17は、防除機が装着された多目的作業車両の第1従動輪の位置を示す図である。
【
図18】
図18は、収穫機が装着された多目的作業車両の第1従動輪の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する管理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、
図1~
図5を参照して実施形態に係る多目的作業車両1の構成について説明する。
図1および
図2は、実施形態に係る多目的作業車両1の斜視図である。
図3は、実施形態に係る多目的作業車両1の側面図である。
図4および
図5は、実施形態に係る多目的作業車両1の斜視図である。本開示における多目的作業車両1は、圃場等において農作業を行う無人の作業車両である。
【0011】
また、多目的作業車両1は、後述する制御装置311を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自律走行しながら所定の作業を実行する。また、多目的作業車両1は、後述する様々な種類の作業機を装着可能であり、作業機の種類に応じて進行方向の前進および後進を切り替えることができる。
【0012】
図1に示すように、多目的作業車両1は、走行装置2と、本体部3とを備える。走行装置2は、本体部3の車幅方向における両端に配置されるクローラ構造の走行部である。走行装置2は、ベルト部21と、駆動輪22と、第1従動輪23と、複数の第2従動輪24a~24dとを備える。
【0013】
ベルト部21は、駆動輪22と、第1従動輪23と、複数の第2従動輪24a~24dとを覆うようにして設けられる。また、ベルト部21は、側面視で略三角形の形状であり、その三角形の底辺に相当する箇所が圃場等の地面に接地する。ベルト部21は、駆動輪22と、第1従動輪23と、複数の第2従動輪24a~24dとが回転することに従って移動することで、多目的作業車両1を走行させる。ベルト部21は、例えば、ゴム等の弾性樹脂材料で構成される。
【0014】
駆動輪22は、後述する駆動源(エンジン315およびモータ316)に接続され、駆動源の動力により駆動する。第1従動輪23および第2従動輪24a~24dは、駆動輪22の回転による動力がベルト部21を介して伝達することにより従動して回転する。
【0015】
ここで、
図3を用いて、走行装置2の配置および動作について詳しく説明する。なお、
図3では、便宜上、ベルト部21の図示を省略している。
【0016】
図3に示すように、駆動輪22は、側面視において三角形となるベルト部21(
図1参照)の頂点の位置に配置される。また、第1従動輪23および第2従動輪24a~24dは、駆動輪22に対して下方側(地面側)に配置される。
【0017】
図3に示す例では、第1従動輪23は、駆動輪22に対して進行方向の一方側に配置される。具体的には、第1従動輪23は、駆動輪22に対して作業連結アーム33側(すなわち作業機側)に配置される。また、第2従動輪24a~24dは、第1従動輪23に対して動力装置31側に配置される。なお、第2従動輪24a~24dのうち、第2従動輪24a~24cは、駆動輪22の直下に配置され、第2従動輪24dは、駆動輪22に対して進行方向の他方側(動力装置31側)に配置される。
【0018】
また、
図3に示すように、第1従動輪23は移動可能であり、第2従動輪24a~24dは移動不可である。具体的には、第1従動輪23は、第2従動輪24a~24dとの間の距離が変化する方向に移動する。より具体的には、第1従動輪23は、ダンパー25に接続され、ダンパー25の伸縮により移動する。また、第2従動輪24a~24dは、不図示のフレームに固定して配置される。
【0019】
図3では、第1従動輪23および第2従動輪24a~24dの間の距離が最も短い状態(上図)と、かかる距離が最も長い状態(下図)とを示している。
図3に示すように、第1従動輪23が移動した場合、駆動輪22の中心から接地面までの高さが変化する。すなわち、
図1で示した三角形のベルト部21の高さが変化する。具体的には、第1従動輪23が作業連結アーム33側に距離Lだけ移動した場合、高さH1が高さH2に短くなる。言い換えれば、ベルト部21の高さが短くなり、距離Lだけ接地面が長くなる。
【0020】
この結果、例えば、作業連結アーム33に連結された作業機により作業機側に引っ張られる力が大きくなった場合であっても、安定した走行が可能となる。また、駆動輪22に対して動力装置31と作業機とをそれぞれ反対側に配置することで、重量の偏りが無いバランスのとれた車両レイアウトを実現できる。すなわち、多目的作業車両1の作業機連結時においてより安定した走行を実現することができる。
【0021】
図1に戻って本体部3の構成について具体的に説明する。
【0022】
本体部3は、動力装置31と、PTO(Power Take Off)軸32と、作業連結アーム33と、ミッションケース34と、ギアケース35とを備える。本体部3は、駆動輪22に対して進行方向の一方側に動力装置31が配置され、他方側にPTO(Power Take Off)軸32と、作業連結アーム33と、ミッションケース34と、ギアケース35とが配置される。
【0023】
動力装置31は、各種動力を発生させる装置であり、制御装置311と、BMS(Buttery Management System)312と、燃料タンク313と、バッテリ314と、エンジン315と、モータ316と、ラジエータ317とを備える。
【0024】
PTO軸32は、ミッションケース34から動力装置31とは反対側(作業機側)へ延在して作業機と連結し、ミッションケース34から伝達された動力を作業機に伝達する部材である。作業連結アーム33は、作業機を連結するための連結部であり、昇降動作可能に構成されており、作業機を昇降させることができる。ギアケース35は、本体部3両端の駆動輪22それぞれに接続される車軸と、ミッションケース34から伝達される動力を車軸に伝達するギアとを備える。ミッションケース34は、エンジン315、および(または)、モータ316で発生した回転の動力をPTO軸32およびギアケース35へ伝達する。
【0025】
制御装置311は、エンジン315やBMS312、モータ316を制御する制御基板が実装された装置であり、本体部3において最も外側に配置される。なお、図では示していないが、制御装置311のカバー表面には、多目的作業車両1を制御するための操作部が設けられてもよい。かかる操作部により、人が手動で多目的作業車両1を操作することができる。
【0026】
BMS312は、本体部3の最も外側において制御装置311と隣接して配置され、バッテリ314の状態を管理する装置である。燃料タンク313は、エンジン315に供給する燃料を貯蔵するタンクである。バッテリ314は、モータ316へ電力を供給する。また、バッテリ314は、モータ316の回生によって生成した電力により充電可能である。エンジン315は、ミッションケース34に伝達する動力を発生させる。モータ316は、ミッションケース34に伝達する動力を発生させる。ラジエータ317は、エンジン315およびモータ316に対して駆動輪22側に配置され、エンジン315およびモータ316を冷却する。
【0027】
また、
図5に示すように、エンジン315には第1プーリ315p(動力伝達部)が接続され、モータ316には第2プーリ316p(動力伝達部)が接続され、ミッションケース34に繋がるPTO軸32には第3プーリ32p(動力伝達部)が接続される。また、第1プーリ315p、第2プーリ316pおよび第3プーリ32pは、ベルト318により連結される。つまり、第1プーリ315p、第2プーリ316pおよび第3プーリ32pは、同一平面上に配置されることで、互いに連結する。これにより、エンジン315およびモータ316の動力により第1プーリ315pおよび第2プーリ316pを回転させ、第1プーリ315pおよび第2プーリ316pの回転により第3プーリ32pが従動して回転する。この結果、PTO軸32が回転することで、エンジン315およびモータ316の動力がミッションケース34に伝達される。すなわち、エンジン315およびモータ316の合力をPTO軸32に伝達できるため、作業機や走行に大きな動力が必要となる場合にも対応することができる。なお、PTO軸32が作業機に連結していない場合、エンジン315の動力をモータ316の回生電力生成に利用してもよい。つまり、PTO軸32が作業機に連結されていない場合、エンジン315の出力をPTO軸32が作業機に連結された場合と同じ出力で維持し、エンジン315の動力によりモータ316を回転させて回生電力を発生させる。具体的には、エンジン315の動力により第1プーリ315pおよび第2プーリ316pを介してモータ316を回転させて回生電力を発生させる。これにより、多目的作業車両1におけるエンジン効率を高めることができる。
【0028】
次に、
図6~
図18を参照して、多目的作業車両1に様々な作業機Wを装着した構成について説明する。
【0029】
図6および
図7は、作業機Wである耕運機W1を装着した例を示す図である。
図8および
図9は、作業機Wである移植機W2を装着した例を示す図である。
図10および
図11は、作業機Wである防除機W3を装着した例を示す図である。
図12および
図13は、作業機Wである土寄せ機W4を装着した例を示す図である。
図14および
図15は、作業機Wである収穫機W5を装着した例を示す図である。なお、耕運機W1、移植機W2、防除機W3、土寄せ機W4および収穫機W5は、すべて作業連結アーム33によって連結される。
【0030】
図6および
図7に示す耕運機W1は、多目的作業車両1が走行する走行路を耕耘する作業機である。また、耕運機W1は、PTO軸32から伝達される動力によって駆動する。なお、耕運機W1は、例えば、不図示の電動モータを備え、かかる電動モータにより駆動する機能を予備的に備えてもよい。耕運機W1は、第2従動輪24dとは反対側に配置される。つまり、耕運機W1は、第2従動輪24d側である動力装置31とは反対側に配置される。また、耕運機W1が装着された多目的作業車両1は、耕運機W1とは反対側の方向に走行する。つまり、耕運機W1が装着された多目的作業車両1は、動力装置31が配置された側(第2従動輪24d側)を前側とし、を第2従動輪24d側を前方側とする方向に走行する。また、耕運機W1が装着された多目的作業車両1は、耕運機W1の昇降位置に応じて、第1従動輪23の位置が決まる。かかる点について、
図16を用いて説明する。
【0031】
図16は、耕運機W1が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23の位置を示す図である。
図16に示すように、第1従動輪23は、耕運機W1が上昇した状態(非作業状態)である場合には、第2従動輪24dとの間の距離を短くし(最短距離とし)、耕運機W1が下降した状態(作業状態)である場合には、第2従動輪24dとの間の距離を長くする(最長距離とする)。これにより、作業状態時には、ベルト部21の接地面積を長くすることで、耕耘により後方側(耕運機W1側)に引っ張られる力でも転倒することなく安定した走行を実現できる。また、非作業時には、耕耘により引っ張られる力が発生しないため、ベルト部21の接地面積を短くして旋回性を良く(小回りがききやすく)なるようにできる。なお、
図6および
図7では、耕運機W1を例に挙げたが、耕運機W1の位置に重量物である牽引物を配置した場合であっても上述と同様となる。
【0032】
次に、
図8および
図9に示す移植機W2は、多目的作業車両1が走行する走行路に苗を自動で移植する作業機である。また、移植機W2は、PTO軸32から伝達される動力によって駆動する。なお、移植機W2は、例えば、不図示の電動モータを備え、かかる電動モータにより駆動する機能を予備的に備えてもよい。移植機W2は、植付部W2aと、送り部W2bと、予備苗置きW2cとを備える。植付部W2aは、送り部W2bが送られてきた苗を圃場に植え付ける。送り部W2bは、予備苗置きW2cから植付部W2aに向かて下る傾斜面を有し、予備苗置きW2cに置かれた予備苗を植付部W2aに傾斜面を介して送る。予備苗置きW2cは、予備苗を置くためのスペースである。なお、
図8では、予備苗置きW2cを平面の板状部材で示しているが、例えば、上方が開口した箱型形状、タンク形状等であってもよい。予備苗置きW2cは、例えば、駆動輪22の上方、すなわち、上面視で多目的作業車両1の中央部分に配置される。これにより、予備苗を予備苗置きW2cに配置した場合に多目的作業車両1の重量バランスが偏ることを回避できる。
【0033】
また、移植機W2は、第2従動輪24dとは反対側に配置される。つまり、移植機W2は、第2従動輪24d側である動力装置31とは反対側に配置される。移植機W2が装着された多目的作業車両1は、移植機W2とは反対側の方向に走行する。つまり、移植機W2が装着された多目的作業車両1は、動力装置31が配置された側(第2従動輪24d側)を前側とし、第2従動輪24d側を前方側とする方向に走行する。
【0034】
また、移植機W2が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23は、移植作業中では、第2従動輪24dとの間の距離を長くし(最長距離とし)、移植作業中でない場合には、第2従動輪24dとの間の距離を短くする(最短距離とする)。これにより、予備苗が送り部W2bを通る間や、植付部W2aに苗が存在する間に、移植機W2側の重量が大きくなったとしても転倒を回避できる。なお、第1従動輪23および第2従動輪24dの間の距離、言い換えれば、駆動輪22から接地面までの高さは、植付部W2aの植付深さに応じて適宜調整されてもよい。
【0035】
次に、
図10および
図11に示す防除機W3は、多目的作業車両1が走行する走行路の周辺に殺虫、殺菌、消毒のための薬剤や、ホルモン剤等の薬剤を散布する作業機である。また、防除機W3は、PTO軸32から伝達される動力によって駆動する。なお、防除機W3は、例えば、不図示の電動モータを備え、かかる電動モータにより駆動する機能を予備的に備えてもよい。防除機W3は、薬剤タンクW3aと、散布部W3bとを備える。薬剤タンクW3aは、薬剤を貯蔵するタンクであり、散布部W3bに対して本体部3側に配置される。散布部W3bは、薬剤タンクの薬剤を散布する部材である。
図10に示す例では、散布孔が複数並んだ棒状部材がU字状に配置された構造を示している。
図10に示す散布部W3bは、下端に地面と平行に配置された棒状部材の散布孔から直下の地面に薬剤を散布するとともに、多目的作業車両1の車幅方向における両端に地面に対して垂直に配置された棒状部材の散布孔から多目的作業車両1の外側に薬剤を散布する。
【0036】
また、防除機W3は、第2従動輪24dとは反対側に配置される。つまり、防除機W3は、第2従動輪24d側である動力装置31とは反対側に配置される。防除機W3が装着された多目的作業車両1は、防除機W3側の方向に走行する。つまり、防除機W3が装着された多目的作業車両1は、動力装置31が配置された側(第2従動輪24d側)を後側とし、第1従動輪23側を前方側とする方向に走行する。なお、防除機W3が後方に薬剤を散布する形状である場合、多目的作業車両1は、防除機W3とは反対側の方向に走行することとしてもよい。
【0037】
また、
図17に示すように、防除機W3が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23は、薬剤散布中では、第2従動輪24dとの間の距離を短くし(最短距離とし)、薬剤散布中でない場合には、第2従動輪24dとの間の距離を長くする(最長距離とする)。
図17は、防除機W3が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23の位置を示す図である。つまり、薬剤散布中は、車高を高くして散布範囲を広くし、薬剤散布中でない場合には、車高を低くして散布部W3b等の接触等を回避や、旋回時の安定性を確保する。
【0038】
次に、
図12および
図13に示す土寄せ機W4は、多目的作業車両1が走行する走行路を中耕する作業機である。また、土寄せ機W4は、PTO軸32から伝達される動力によって駆動する。なお、土寄せ機W4は、例えば、不図示の電動モータを備え、かかる電動モータにより駆動する機能を予備的に備えてもよい。また、土寄せ機W4は、第2従動輪24dとは反対側に配置される。つまり、土寄せ機W4は、第2従動輪24d側である動力装置31とは反対側に配置される。また、土寄せ機W4が装着された多目的作業車両1は、土寄せ機W4とは反対側の方向に走行する。つまり、土寄せ機W4が装着された多目的作業車両1は、動力装置31が配置された側(第2従動輪24d側)を前側とし、第2従動輪24d側を前方側とする方向に走行する。また、土寄せ機W4が装着された多目的作業車両1は、土寄せ機W4の昇降位置に応じて、第1従動輪23の位置が決まる。具体的には、第1従動輪23は、土寄せ機W4が上昇した状態(非作業状態)である場合には、第2従動輪24dとの間の距離を短くし(最短距離とし)、土寄せ機W4が下降した状態(作業状態)である場合には、第2従動輪24dとの間の距離を長くする(最長距離とする)。これにより、作業状態時には、ベルト部21の接地面積を長くすることで、土寄せにより後方側(土寄せ機W4側)に引っ張られる力でも転倒することなく安定した走行を実現できる。また、非作業時には、土寄せにより引っ張られる力が発生しないため、ベルト部21の接地面積を短くして旋回性を良く(小回りがききやすく)なるようにできる。
【0039】
次に、
図14および
図15に示す収穫機W5は、多目的作業車両1が走行する走行路に植えられた収穫物を収穫する作業機である。また、収穫機W5は、PTO軸32から伝達される動力によって駆動する。なお、収穫機W5は、例えば、不図示の電動モータを備え、かかる電動モータにより駆動する機能を予備的に備えてもよい。収穫機W5は、第1コンベア部W5aと、第2コンベア部W5bと、収容部W5cとを備える。第1コンベア部W5aは、地面に接地(あるいは掘り下げる)する先端が収穫物を刈り取る刈取部となっており、先端の刈取部から第2コンベア部W5bに向かって上る傾斜面を有し、かかる傾斜面が複数のローラが並んで配置されている。すなわち、刈取部は、第2従動輪24d(動力装置31)とは反対側に設けられる。各ローラは、PTO軸32等の動力により自転することで、刈取部で刈り取った収穫物を第2コンベア部W5bまで運ぶ。また、ローラで構成されることで、収穫物に付着した不要な土等を運搬途中で地面に落とすことができる。第2コンベア部W5bは、収容部W5cに向かって下る傾斜面を有し、かかる傾斜面がベルト状で構成される。これにより、第1コンベア部W5aから運ばれた収穫物を収容部W5cに運ぶことができる。また、ベルト状に構成することで、第2コンベア部W5bで運搬中にミッションケース34等に収穫物に付着した土が直接落ちることを回避できる。なお、第2コンベア部W5bは、ベルトが動力で動くベルトコンベアであってもよい。収容部W5cは、第2コンベア部W5bから運ばれた収穫物を収容する箱形状の部材である。収容部W5cは、着脱可能に構成され、収穫物で一杯になった場合に空の収容部W5cと取り換えることができる。
【0040】
また、収穫機W5は、第1コンベア部W5aが第2従動輪24dとは反対側に配置され、収容部W5cが第2従動輪24d側に配置される。つまり、収穫機W5の第1コンベア部W5aは、第2従動輪24d側である動力装置31とは反対側に配置される。収穫機W5が装着された多目的作業車両1は、収穫機W5(第1コンベア部W5a)側の方向に走行する。つまり、収穫機W5が装着された多目的作業車両1は、動力装置31が配置された側(第2従動輪24d側)を後側とし、第1従動輪23側を前方側とする方向に走行する。
【0041】
また、
図18に示すように、収穫機W5が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23は、収穫作業中、すなわち、第1コンベア部W5aの先端が地面に降りた状態では、第2従動輪24dとの間の距離を長くし(最長距離とし)、収穫作業中でない、すなわち、第1コンベア部W5aの先端が上昇した状態(第1コンベア部W5aが地面と平行の状態)では、第2従動輪24dとの間の距離を短くする(最短距離とする)。
図18は、収穫機W5が装着された多目的作業車両1の第1従動輪23の位置を示す図である。つまり、収穫作業中は、ベルト部21の接地面積を長くすることで、第1コンベア部W5aを運搬中に前方側(第1コンベア部W5aの先端側)に引っ張られる力でも転倒することなく安定した走行を実現できる。また、非収穫作業時には、車高を高くすることで、第1コンベア部W5aの先端が収穫物等に接触することを回避することができる。
【0042】
上述した実施形態に係る多目的作業車両1は、クローラ構造であって、側面視において頂点の位置に配置された駆動輪22と、駆動輪22に対して進行方向の一方側に配置される移動可能な第1従動輪23と、駆動輪22に対して進行方向の他方側に配置される移動不可な第2従動輪24dとを有する走行装置2と、駆動輪22に対して第2従動輪24d側に配置され、エンジン315およびモータ316を有する駆動源とバッテリ314とが固定される動力装置31と、駆動輪22に対して第1従動輪23側に配置される作業機Wとを備える。第1従動輪23は、第2従動輪24dとの間の距離が変化する方向に移動する。これにより、作業機を取り付けた状態でより安定した走行を実現できる。
【0043】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 多目的作業車両
2 走行装置
3 本体部
21 ベルト部
22 駆動輪
23 第1従動輪
24a~24d 第2従動輪
25 ダンパー
31 動力装置
32 PTO軸
32p 第3プーリ
33 作業連結アーム
34 ミッションケース
35 ギアケース
311 制御装置
313 燃料タンク
314 バッテリ
315 エンジン
315p 第1プーリ
316 モータ
316p 第2プーリ
317 ラジエータ
318 ベルト
H1 高さ
H2 高さ
L 距離
W 作業機
W1 耕運機
W2 移植機
W2a 植付部
W2b 送り部
W2c 予備苗置き
W3 防除機
W3a 薬剤タンク
W3b 散布部
W4 土寄せ機
W5 収穫機
W5a 第1コンベア部
W5b 第2コンベア部
W5c 収容部