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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103313
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20250702BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20250702BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20250702BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 170
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220633
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 隆幸
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA01
5G066KA12
5G066KB01
5G066KD04
(57)【要約】
【課題】ベースラインを高精度に予測し、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れを抑制できる制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置100は、電力網90での電力需給バランスを調整するDRの要請に基づいてDRへの参加を表明した複数の需要家が保有する複数のバッテリ12の電力網90への充放電を制御する。制御装置100は、各需要家の使用履歴を取得する取得部111と、ベースラインを需要家毎に予測するベースライン予測部112と、使用履歴に含まれる使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、今回実施するDRにおけるベースラインを補正するベースライン補正部113と、補正後のベースラインに基づき、複数のバッテリ12のうち電力網90との間で電力の充放電を行うバッテリ12を選択する選択部114と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)の要請に基づいて該DRへの参加を表明した複数の需要家が保有する複数の蓄電装置の前記電力網への充放電を制御する制御装置であって、
各需要家から入力された前記蓄電装置の使用スケジュールと、各需要家の前記蓄電装置の実際の使用状況とを含む使用履歴を取得する取得部と、
前記DRの要請がない場合に想定される需要電力であるベースラインを前記需要家毎に予測するベースライン予測部と、
前記使用履歴に含まれる前記使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを補正するベースライン補正部と、
補正後のベースラインに基づき、前記複数の蓄電装置のうち前記電力網との間で電力の充放電を行う蓄電装置を選択する選択部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記ベースライン補正部は、前記使用履歴に含まれる実際の需要電力と予測された前記ベースラインとの間に乖離が発生し、且つ実際の需要電力が予測された前記ベースラインよりも小さい場合、乖離の発生割合に基づいて今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを小さくする、
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記ベースライン予測部は、前記需要家により入力された前記使用スケジュールに基づき、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを前記需要家毎に予測し、
前記ベースライン補正部は、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインに対して前記使用スケジュールの信頼性を示す信頼度係数で重み付けすることにより、前記ベースラインを補正する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力網への充放電を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
近年の電力システムでは、発電所のような大規模集中電源に依存せず、発電設備、蓄電池等のエネルギー設備といった分散電源の活用が期待されている。また、需要家の電力需要を制御することによって、電力の供給量に応じて電力の需要量を削減することが期待されている。
【0004】
需要家の電力需要の制御に関して、系統運用事業者等の電力の供給側の事業者と需要家との間で仲介を行うアグリゲータと呼ばれる事業者が登場している。アグリゲータは、複数の需要家と契約を結び、供給側の事業者から電力需要の制御(以下、アグリゲーションサービスと記載することがある)を依頼された場合には、各需要家の蓄電池に対して電力需要の制御を行い、アグリゲーションサービスの依頼達成を図る。アグリゲーションサービスの依頼を達成すると、供給側の事業者はアグリゲータに対して報酬を支払い、アグリゲータは需要家に対して報酬を支払う。
【0005】
特許文献1には、アグリゲーションサービスの成功確度を向上させるアグリゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-17135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1を含む従来のサービスは、電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)の実施期間に供出可能な電力リソースを十分に確保できるよう、将来の需要電力であるベースラインの算出精度を向上させることについて、検討の余地があった。
【0008】
本発明は、ベースラインを高精度に予測し、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れを抑制できる制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)の要請に基づいて該DRへの参加を表明した複数の需要家が保有する複数の蓄電装置の前記電力網への充放電を制御する制御装置であって、
各需要家から入力された前記蓄電装置の使用スケジュールと、各需要家の前記蓄電装置の実際の使用状況とを含む使用履歴を取得する取得部と、
前記DRの要請がない場合に想定される需要電力であるベースラインを前記需要家毎に予測するベースライン予測部と、
前記使用履歴に含まれる前記使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを補正するベースライン補正部と、
補正後のベースラインに基づき、前記複数の蓄電装置のうち前記電力網との間で電力の充放電を行う蓄電装置を選択する選択部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄電装置の使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて今回実施するDRにおけるベースラインを補正するので、ベースラインを高精度に予測することができる。よって、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態におけるシステム5の利用形態を概念的に示す図である。
図2】制御装置100のブロック図及び制御装置100と他の機器との関係を示す図である。
図3】過去のDR実施時の使用履歴に関してのグラフであり、需要家40A~40Dのそれぞれが利用するバッテリ12のSOCのグラフ(左側)、並びに、需要家40A~40Dのそれぞれの需要電力のグラフ(右側)である。
図4】今回実施するDRの使用スケジュールに関してのグラフであり、需要家40A~40Dのそれぞれが利用するバッテリ12のSOCのグラフ(左側)、並びに、需要家40A~40Dのそれぞれの需要電力のグラフ(右側)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である制御装置について、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、一実施形態におけるシステム5の利用形態を概念的に示す。システム5は、複数の需要家40がそれぞれ所有又は使用する蓄電システム1と、発電装置80と、制御装置100と、アグリゲータサーバ180と、を備える。
【0014】
各蓄電システム1は、車両10と、ゲートウェイ(GW)20と、充放電設備30と、を備える。各車両10は、蓄電装置であるバッテリ12を備える。車両10は、例えば電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車である。バッテリ12は、車両10の走行用の電力を供給するバッテリである。車両10は、個人所有の車両、事業者が事業に使用する車両、シェアカー等であってよい。
【0015】
制御装置100は、通信ネットワーク190を通じてアグリゲータサーバ180と接続されている。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて充放電設備30と通信可能である。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて充放電設備30を制御する。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて車両10と通信し、車両10の走行履歴並びにバッテリ12のSOC(State of Charge)及びSOH(State of Health)を含む、車両10の各種の情報を取得する。
【0016】
ゲートウェイ20は、住戸42に設けられ、電力網90及び充放電設備30と通信可能である。
【0017】
充放電設備30及び発電装置80は、電力網90に接続されている。発電装置80は、例えば電力会社が運営する発電所を含む。発電装置80で発電された電力は、電力網90を通じて充放電設備30に供給可能である。電力網90は、例えば電力系統である。
【0018】
充放電設備30は、それぞれに接続されている車両10に搭載されたバッテリ12の充電及び放電を行う。充放電設備30は、住戸42に設けられ、バッテリ12の放電を行った場合、バッテリ12から提供される電力は、住戸42内の電力負荷で消費されるか、住戸42に配設された電力線を通じて、電力網90に提供され得る。また、充放電設備30は、電力網90から受電した電力でバッテリ12を充電することができる。
【0019】
電力網90とバッテリ12との間で電力の送受電を行う場合、車両10及び充放電設備30は、制御装置100の制御に従って、バッテリ12の充電及び放電を行う。例えば、制御装置100は、電力網90において電力不足が発生している場合に、ゲートウェイ20を介して車両10及び充放電設備30にバッテリ12を放電させるよう指示することによって、バッテリ12から電力網90に送電させることができる。制御装置100は、電力網90において電力余剰が発生している場合に、ゲートウェイ20を介して車両10及び充放電設備30にバッテリ12を充電させるよう指示することによって、電力網90の電力余剰を軽減させることができる。このように、制御装置100は、複数の車両10に搭載された複数のバッテリ12を集約して、電力網90に対する電力リソースを提供することができる。
【0020】
アグリゲータサーバ180は、例えば電力アグリゲータによって使用されるサーバである。アグリゲータサーバ180は、電力市場等における電力取引を行う。制御装置100は、アグリゲータサーバ180と通信して、必要な量の電力をバッテリ12から電力網90に提供する、又は電力網90からバッテリ12に受電(即ち充電)させる。例えば、制御装置100は、アグリゲータサーバ180からの要求に応じて、車両10及び充放電設備30に対してバッテリ12を放電させるように制御して、要求に応じた量の電力を電力網90に提供する。また、制御装置100は、アグリゲータサーバ180からの要求に応じて、車両10及び充放電設備30に対してバッテリ12を充電させるように制御して、要求に応じた量の電力を電力網90から受電してもよい。このように、バッテリ12が搭載された車両10としては充電を行ったり、放電を行うことにより電力量を適切な形でコントロールできるものである。
【0021】
図2は、制御装置100のブロック図及び制御装置100と他の機器との関係を示す図である。制御装置100は、電力網90での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)の要請に基づいて、DRへの参加を表明した複数の需要家40が保有する複数のバッテリ12の電力網90への充放電を制御する装置である。
【0022】
制御装置100と他の機器との関係について説明する。(1)車両10は、走行履歴、バッテリ12のSOC等を含む車両情報を制御装置100に送信する。(2)需要家40は携帯端末50の所定のアプリケーションを操作して、DRへの参加の可否に関するDR参加可否、車両10の入出庫の予定に関する入出庫計画等を入力する。この入出庫計画は、バッテリ12の使用スケジュールに対応している。携帯端末50は、入力されたDR参加可否、入出庫計画等を制御装置100に送信する。
【0023】
(3)充放電設備30は、バッテリ12の実際の使用状況をゲートウェイ20に送信し、ゲートウェイ20がバッテリ12の実際の使用状況を制御装置100に送信する。(4)制御装置100は、作成した充放電計画をゲートウェイ20に送信する。(5)ゲートウェイ20は、充放電設備30に充放電指示を行う。制御装置100による充放電計画の作成については後述する。
【0024】
制御装置100は、処理部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。処理部110は、プロセッサを含む演算処理装置により実現され、制御装置100の主要な処理を担う。処理部110は、CPU、ROM、RAM、I/O及びバス等を備えたマイクロコンピュータによって実現されてよい。制御装置100は、コンピュータによって実現されてよい。記憶部120は、例えば不揮発性の記憶媒体を備えて実現され、種々のデータ、プログラム等を記憶する。処理部110は、例えば記憶部120に記憶されたプログラムを読み出して所定の処理を行う。通信部130は、外部の機器との通信を実現する。
【0025】
処理部110は、取得部111と、ベースライン予測部112と、ベースライン補正部113と、選択部114と、を備える。取得部111は、(2)における入出庫計画、すなわち、各需要家40から入力されたバッテリ12の使用スケジュールと、(3)における各需要家40のバッテリ12の実際の使用状況とを含む使用履歴を取得する。また、取得部111は、各需要家40から入力されたバッテリ12の将来の使用スケジュールも取得する。
【0026】
ベースライン予測部112は、DRの要請がない場合に想定される需要電力であるベースラインを需要家40毎に予測する。ベースライン予測部112は、例えば、各需要家40から入力されたバッテリ12の将来の使用スケジュールに基づき、ベースラインを予測する。
【0027】
ベースライン補正部113は、取得部111が取得した使用履歴に含まれるバッテリ12の使用スケジュールと、実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、今回実施するDRにおけるベースラインを補正する。この補正は、ベースライン予測部112が予測したベースラインの補正である。乖離に関する情報については後述する。
【0028】
選択部114は、ベースライン補正部113が補正した補正後のベースラインに基づき、複数のバッテリ12のうち電力網90との間で電力の充放電を行うバッテリ12を選択する。処理部110は、選択部114の選択に基づき充放電計画を作成する。
【0029】
図3は、過去のDR実施時の使用履歴に関してのグラフであり、複数の需要家40(ここでは、4人の需要家40をそれぞれ需要家40A、需要家40B、需要家40C、及び需要家40Dと表記する)それぞれが利用するバッテリ12のSOCのグラフ(左側)、並びに需要電力[kW]のグラフ(右側)である。破線はバッテリ12の使用スケジュールのグラフであり、実線はバッテリ12の実際の使用状況のグラフである。右側のベースラインは、図2の(2)で、携帯端末50を用いて各需要家により入力されたバッテリ12の使用スケジュールに基づき、ベースライン予測部112により予測される。
【0030】
需要家40Aの使用スケジュールでは(破線)、充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了と同時に充電を終了して車両10が出庫することになっており、充電中の期間で需要電力も増加する。需要家40Aの実際の使用状況でも(実線)、充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了と同時に充電を終了して車両10が出庫している。よって、少なくともDR実施期間においては、バッテリ12の使用スケジュールと、実際の使用状況との間に乖離は存在しないということができる。
【0031】
需要家40Bの使用スケジュールでは(破線)、充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了と同時に充電を終了して車両10が出庫することになっており、充電中の期間で需要電力も増加する。需要家40Bの実際の使用状況では(実線)、使用スケジュール通り充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始してDR実施期間の終了と同時に充電は終了するが、車両10は使用スケジュールよりも遅れて出庫している。しかしながら、少なくともDR実施期間においては、バッテリ12の使用スケジュールと、実際の使用状況との間に乖離は存在しないということができる。
【0032】
需要家40Cの使用スケジュールでは(破線)、充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了後に充電を終了して車両10が出庫することになっており、充電中の期間で需要電力も増加する。需要家40Cの実際の使用状況では(実線)、DR実施期間の開始前に車両10が前倒しで出庫してしまい、少なくともDR実施期間において充電が行われない。このため、使用スケジュールの充電期間では確保できる予定であった需要電力は、実際の使用状況では確保できていない。よって、少なくともDR実施期間においては、バッテリ12の使用スケジュールと、実際の使用状況との間に乖離が存在するということができる(ここでは「使用スケジュールにおける需要電力」>「実際の使用状況における需要電力」)。需要家40Cにおいては、使用履歴に含まれる実際の需要電力と、使用スケジュールに基づいて予測されたベースラインとの間に乖離が発生し、且つ実際の需要電力が予測されたベースラインよりも小さいということができる。
【0033】
需要家40Dの使用スケジュールでは(破線)、充放電設備30がDR実施期間の終了と同時にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了後、所定期間経過した後に、充電を終了して車両10が出庫することになっており、充電中の期間で需要電力も増加する。需要家40Dの実際の使用状況では(実線)、充放電設備30がDR実施期間の開始前にバッテリ12の充電を開始し、DR実施期間の終了と同時に充電を終了して車両10が出庫する。このため、使用スケジュールの充電期間では確保できないはずだった需要電力は、実際の使用状況では確保できる。よって、少なくともDR実施期間においては、バッテリ12の使用スケジュールと、実際の使用状況との間に乖離が存在するということができる(ここでは「使用スケジュールにおける需要電力」<「実際の使用状況における需要電力」)。需要家40Dにおいては、使用履歴に含まれる実際の需要電力と、使用スケジュールに基づいて予測されたベースラインとの間に乖離が発生し、且つ実際の需要電力が予測されたベースラインよりも大きいということができる。
【0034】
図4は、今回実施するDRの使用スケジュールに関するグラフであり、需要家40A、需要家40B、需要家40C、及び需要家40Dそれぞれが利用するバッテリ12のSOCのグラフ(左側)、並びに需要電力[kW]のグラフ(右側)である。
【0035】
需要家40A及び需要家40Bにおいては、過去の使用履歴では、少なくともDR実施期間においてバッテリ12の使用スケジュールと実際の使用状況との間に乖離は存在しない傾向にあるので、使用スケジュールに基づいて予測された需要電力が実際に発生すると予測される。よって、ベースライン予測部112は、需要家40A及び需要家40Bにより入力されたバッテリ12の使用スケジュールにおける需要電力を、ベースラインとして予測し、ベースライン補正部113は、ベースラインの補正をしない。
【0036】
需要家40Cにおいては、図3で説明した通り、過去の使用履歴から出庫が前倒しになる傾向があり、今回のDR実施期間に需要電力が確保できない可能性がある。よって、ベースライン補正部113は、ベースライン予測部112により予測されたベースライン、具体的には、需要家40Cにより入力されたバッテリ12の使用スケジュールに基づく需要電力を小さくする補正を行う。具体例として、需要家40Cにおいて3日に1度出庫が前倒しになる傾向がある場合、需要家40Cの使用スケジュールの信頼性は高くないので、ベースライン補正部113は、ベースラインに、乖離の発生割合である1/3を乗じる補正により、ベースラインを小さくする補正を行う。
【0037】
需要家40Dにおいては、図3で説明した通り、過去の使用履歴から出庫が前倒しになる傾向があり、今回のDR実施期間に需要電力が使用スケジュールに反して確保できる可能性ある。よって、需要家40Dの使用スケジュールの信頼性は高くないので、ベースライン補正部113は、ベースライン予測部112により予測されたベースライン、具体的には、需要家40Cにより入力されたバッテリ12の使用スケジュールに基づく需要電力を大きくする補正を行う。
【0038】
乖離の発生に対応してベースラインを高精度に予測するため、使用スケジュールと実際の使用状況との乖離度合いが大きい需要家(具体的には需要家40C及び需要家40D)のバッテリ12をDRの実施時に充放電を行うバッテリ12として選択しないことも考えられるが、この場合、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れが発生し得る。
【0039】
一方、本実施形態の制御装置100によれば、バッテリ12の使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、ベースライン補正部113が今回実施するDRにおけるベースラインを補正するので、乖離度合いが大きい需要家のバッテリ12を選択してもベースラインを高精度に予測することができる。よって、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れを抑制できる。その結果として、DRの提供期間における電力の供出リソースが不足することを抑制できる。
【0040】
また、本実施形態の制御装置100によれば、需要家40Cに関して図3及び図4で説明した通り、使用履歴に含まれる実際の需要電力と予測されたベースラインとの間に乖離が発生し、且つ実際の需要電力が予測されたベースラインよりも小さい場合、ベースライン補正部113が乖離の発生割合に基づいて今回実施するDRにおけるベースラインを小さくする。
【0041】
これにより、DRの実施期間に十分な需要電力が確保できない可能性の高い需要家40Cのバッテリ12に対して、ベースライン補正部113が、乖離の発生割合に基づいてベースラインを小さくすることにより、ベースラインの予測をより高精度化することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の制御装置100によれば、ベースライン予測部112は、需要家40により入力された使用スケジュールに基づき、今回実施するDRにおけるベースラインを需要家40毎に予測することができる。そして、ベースライン補正部113は、今回実施するDRにおけるベースラインに対して使用スケジュールの信頼性を示す信頼度係数で重み付けすることにより、ベースラインを補正することができる。信頼度係数は、例えば、使用履歴に含まれる実際の需要電力と予測されたベースラインとの間の乖離の発生割合に基づいて設定可能であり、需要家40A、40Bの信頼度係数は高く(例えば1)、需要家40C、40Dの信頼度係数は低く(例えば0~1の間)設定される。
【0043】
バッテリ12の使用スケジュールに基づいてベースラインを予測する場合、使用スケジュールと実際の使用状況との乖離度合いは需要家40によってばらつきが大きく、ベースラインの予測誤差が大きくなり得る。本実施形態の制御装置100によれば、ベースライン補正部113が、需要家40から入力された使用スケジュールの信頼性を示す信頼度係数を考慮してベースラインを補正するので、ベースラインを高精度に予測することができる。信頼度係数は、上述した乖離の発生割合に基づいて求めてもよいし、他の方法で求めてもよい。
【0044】
以上、図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0045】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0046】
(1) 電力網(電力網90)での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)の要請に基づいて該DRへの参加を表明した複数の需要家(需要家40A~40D)が保有する複数の蓄電装置(バッテリ12)の前記電力網への充放電を制御する制御装置(制御装置100)であって、
各需要家から入力された前記蓄電装置の使用スケジュールと、各需要家の前記蓄電装置の実際の使用状況とを含む使用履歴を取得する取得部(取得部111)と、
前記DRの要請がない場合に想定される需要電力であるベースラインを前記需要家毎に予測するベースライン予測部(ベースライン予測部112)と、
前記使用履歴に含まれる前記使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを補正するベースライン補正部(ベースライン補正部113)と、
補正後のベースラインに基づき、前記複数の蓄電装置のうち前記電力網との間で電力の充放電を行う蓄電装置を選択する選択部(選択部114)と、を備える、
制御装置。
【0047】
ベースラインを高精度に予測するために、使用スケジュールと実際の使用状況との乖離度合いが大きい需要家の蓄電装置をDRの実施時に充放電を行う蓄電装置として選択しないことも考えられるが、この場合、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れが発生し得る。(1)によれば、蓄電装置の使用スケジュールと実際の使用状況との乖離に関する情報に基づいて今回実施するDRにおけるベースラインを補正するので、乖離度合いが大きい需要家の蓄電装置を選択してもベースラインを高精度に予測することができる。よって、DRの実施時に供出可能な電力リソースの確保漏れを抑制できる。その結果として、DRの提供期間における電力の供出リソースが不足することを抑制できる。
【0048】
(2) (1)に記載の制御装置であって、
前記ベースライン補正部は、前記使用履歴に含まれる実際の需要電力と予測された前記ベースラインとの間に乖離が発生し、且つ実際の需要電力が予測された前記ベースラインよりも小さい場合、乖離の発生割合に基づいて今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを小さくする、
制御装置。
【0049】
(2)によれば、DRの実施期間に十分な需要電力が確保できない可能性の高い需要家の蓄電装置に対して、乖離の発生割合に基づいてベースラインを小さくすることにより、ベースラインの予測をより高精度化することができる。
【0050】
(3) (1)又は(2)に記載の制御装置であって、
前記ベースライン予測部は、前記需要家により入力された前記使用スケジュールに基づき、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインを前記需要家毎に予測し、
前記ベースライン補正部は、今回実施する前記DRにおける前記ベースラインに対して前記使用スケジュールの信頼性を示す信頼度係数で重み付けすることにより、前記ベースラインを補正する、
制御装置。
【0051】
蓄電装置の使用スケジュールに基づいてベースラインを予測する場合、使用スケジュールと実際の使用状況との乖離度合いは需要家によってばらつきが大きく、ベースラインの予測誤差が大きくなり得る。(3)によれば、需要家から入力された使用スケジュールの信頼性を示す信頼度係数を考慮してベースラインを補正するので、ベースラインを高精度に予測することができる。
【符号の説明】
【0052】
12 バッテリ(蓄電装置)
40、40A~40D 需要家
90 電力網
100 制御装置
111 取得部
112 ベースライン予測部
113 ベースライン補正部
114 選択部
図1
図2
図3
図4