(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103316
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20250702BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20250702BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20250702BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20250702BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/14
H02J3/32
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220638
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 隆幸
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA01
5G066KA01
5G066KA12
5G066KB03
5G066KD04
(57)【要約】
【課題】DR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる制御装置を提供する。
【解決手段】電力網90との間で電力の充放電が可能な複数の蓄電システム1の充放電を制御する制御装置100は、電力網90での電力需給バランスを調整するDRを電力取引において約定した場合に、複数の蓄電システム1を保有する複数の需要家からDRへの参加意思を取得する取得部111と、参加意思を示した需要家の蓄電システム1の中から、DRの実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを確保するリソース確保部112と、事前制御可能期間に蓄電システム1の充電状態を調整し、DRの実施期間に供出可能な電力リソースを増大させる充放電計画を策定する充放電計画策定部113と、策定された充放電計画を蓄電システム1へ送信する通信部130と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網との間で電力の充放電が可能な複数の蓄電システムの充放電を制御する制御装置であって、
前記電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)を電力取引において約定した場合に、前記複数の蓄電システムを保有又は使用する複数の需要家から前記DRへの参加意思を取得する取得部と、
前記参加意思を示した前記需要家の前記蓄電システムの中から、前記DRの実施期間に前記蓄電システムが前記電力網に対して供出可能な電力リソースを確保するリソース確保部と、
前記DRの開始前の所定の期間である事前制御可能期間に前記蓄電システムの充電状態を調整し、前記DRの実施期間に供出可能な前記電力リソースを増大させる充放電計画を策定する充放電計画策定部と、
前記充放電計画策定部により策定された前記充放電計画を前記蓄電システムへ送信する通信部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記DRは、電力需要の増加を要請する上げDRであり、
前記充放電計画は、前記事前制御可能期間に前記蓄電システムの充電を停止させる計画、又は前記事前制御可能期間に前記蓄電システムを放電させる計画を含む、
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間における前記蓄電システムの充電の停止又は放電は、前記事前制御可能期間中に前記電力網において電力逼迫が発生する場合に実行される、
制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記DRは、電力需要の抑制を要請する下げDRであり、
前記充放電計画は、前記事前制御可能期間に前記蓄電システムを充電させる計画を含む、
制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間における前記蓄電システムの充電は、前記事前制御可能期間中に前記電力網において余剰電力がある場合に実行される、
制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間は、前記DRの入札から前記DRの開始までの期間、又は前記DRの約定から前記DRの開始までの期間である、
制御装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記DRの開始直前の期間において前記リソース確保部により確保された前記電力リソースと前記DRで要請される電力需要との間に乖離が発生していると判定された場合、前記充放電計画策定部は、前記DRの開始直前の期間に前記蓄電システムの充電状態を調整し、前記DRの実施期間に供出可能な前記電力リソースを増大させる前記充放電計画を策定する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の充電システムの充放電を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
近年の電力システムでは、発電所の様な大規模集中電源に依存せず、発電設備、蓄電池等のエネルギー設備といった分散電源の活用が期待されている。駆動用のバッテリを有する車両は、分散電源の一つとして期待されている。
【0004】
特許文献1には、車両に搭載されたバッテリと電力網との間で電力を伝送する送受電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1を含む従来の技術は、バッテリが有するエネルギーストレージ機能を最大限に活用できる工夫について、検討の余地があった。
【0007】
本発明は、DR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制御装置は、
電力網との間で電力の充放電が可能な複数の蓄電システムの充放電を制御する制御装置であって、
前記電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)を電力取引において約定した場合に、前記複数の蓄電システムを保有又は使用する複数の需要家から前記DRへの参加意思を取得する取得部と、
前記参加意思を示した前記需要家の前記蓄電システムの中から、前記DRの実施期間に前記蓄電システムが前記電力網に対して供出可能な電力リソースを確保するリソース確保部と、
前記DRの開始前の所定の期間である事前制御可能期間に前記蓄電システムの充電状態を調整し、前記DRの実施期間に供出可能な前記電力リソースを増大させる充放電計画を策定する充放電計画策定部と、
前記充放電計画策定部により策定された前記充放電計画を前記蓄電システムへ送信する通信部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DR開始前に蓄電システムの充電状態を調整する事前制御を行うので、DR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態におけるシステム5の利用形態を概念的に示す図である。
【
図2】制御装置100のブロック図及び制御装置100と他の機器との関係を示す図である。
【
図3】上げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12を放電させる計画のタイミングチャートであり、(a)は電力網90での電力需要予想、(b)はバッテリ12のSOC、(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
【
図4】上げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12の充電を停止させる計画のタイミングチャートであり、(a)は電力網90での電力需要予想、(b)はバッテリ12のSOC、(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
【
図5】下げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12を充電させる計画のタイミングチャート(その1)であり、(a)は電力網90での電力需要予想、(b)はバッテリ12のSOC、(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
【
図6】下げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12を充電させる計画のタイミングチャート(その2)であり、(a)は電力網90での電力需要予想、(b)はバッテリ12のSOC、(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
【
図7】制御装置100が実行する蓄電システム1の充放電制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態である制御装置について、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、一実施形態におけるシステム5の利用形態を概念的に示す。システム5は、複数の需要家40がそれぞれ保有又は使用する蓄電システム1と、発電装置80と、制御装置100と、アグリゲータサーバ180と、を備える。
【0013】
各蓄電システム1は、車両10と、ゲートウェイ(GW)20と、充放電設備30と、を備える。各車両10は、蓄電装置であるバッテリ12を備える。車両10は、例えば電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車である。バッテリ12は、車両10の走行用の電力を供給するバッテリである。車両10は、個人所有の車両、事業者が事業に使用する車両、シェアカー等であってよい。
【0014】
制御装置100は、通信ネットワーク190を通じてアグリゲータサーバ180と接続されている。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて充放電設備30と通信可能である。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて充放電設備30を制御する。制御装置100は、通信ネットワーク190を通じて車両10と通信し、車両10の走行履歴並びにバッテリ12のSOC(State of Charge)及びSOH(State of Health)を含む、車両10の各種の情報を取得する。
【0015】
ゲートウェイ20は、住戸42に設けられ、電力網90及び充放電設備30と通信可能である。
【0016】
充放電設備30及び発電装置80は、電力網90に接続されている。発電装置80は、例えば電力会社が運営する発電所を含む。発電装置80で発電された電力は、電力網90を通じて充放電設備30に供給可能である。電力網90は、例えば電力系統である。
【0017】
充放電設備30は、それぞれに接続されている車両10に搭載されたバッテリ12の充電及び放電を行う。充放電設備30は、住戸42に設けられ、充放電設備30に接続されている車両10のバッテリ12の充電及び放電を行う。バッテリ12の放電を行った場合、バッテリ12から提供される電力は、住戸42内の電力負荷で消費されるか、住戸42に配設された電力線を通じて、電力網90に提供され得る。また、充放電設備30は、電力網90から受電した電力でバッテリ12を充電することができる。
【0018】
電力網90とバッテリ12との間で電力の送受電を行う場合、車両10及び充放電設備30は、制御装置100の制御に従って、バッテリ12の充電及び放電を行う。例えば、制御装置100は、電力網90において電力不足が発生している場合に、ゲートウェイ20を介して車両10及び充放電設備30にバッテリ12を放電させるよう指示することによって、バッテリ12から電力網90に送電させることができる。制御装置100は、電力網90において電力余剰が発生している場合に、ゲートウェイ20を介して車両10及び充放電設備30にバッテリ12を充電させるよう指示することによって、電力網90の電力余剰を軽減させることができる。このように、制御装置100は、複数の車両10に搭載された複数のバッテリ12を集約して、電力網90に対する電力リソースを提供することができる。
【0019】
アグリゲータサーバ180は、例えば電力アグリゲータによって使用されるサーバである。アグリゲータサーバ180は、電力市場等における電力取引を行う。制御装置100は、アグリゲータサーバ180と通信して、必要な量の電力をバッテリ12から電力網90に提供する、又は電力網90からバッテリ12に受電(即ち充電)させる。例えば、制御装置100は、アグリゲータサーバ180からの要求に応じて、車両10及び充放電設備30に対してバッテリ12を放電させるように制御して、要求に応じた量の電力を電力網90に提供する。また、制御装置100は、アグリゲータサーバ180からの要求に応じて、車両10及び充放電設備30に対してバッテリ12を充電させるように制御して、要求に応じた量の電力を電力網90から受電してもよい。このように、バッテリ12が搭載された車両10としては充電を行ったり、放電を行うことにより電力量を適切な形でコントロールできるものである。
【0020】
図2は、制御装置100のブロック図及び制御装置100と他の機器との関係を示す図である。制御装置100は、電力網90との間で電力の充放電が可能な複数の蓄電システム1の充放電を制御する装置である。
【0021】
制御装置100と他の機器との関係について説明する。(1)車両10は、走行履歴、SOC等を含む車両情報を制御装置100に送信する。(2)需要家40は携帯端末50の所定のアプリケーションを操作して、電力網90での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)への参加の可否に関するDR参加可否、車両10の入出庫の予定に関する入出庫計画等を入力する。携帯端末50は、入力されたDR参加可否、入出庫計画等を制御装置100に送信する。
【0022】
(3)制御装置100は、作成した充放電計画をゲートウェイ20に送信する。(4)ゲートウェイ20は、充放電設備30に充放電指示を行う。制御装置100による充放電計画の作成については後述する。
【0023】
制御装置100は、処理部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。処理部110は、プロセッサを含む演算処理装置により実現され、制御装置100の主要な処理を担う。処理部110は、CPU、ROM、RAM、I/O及びバス等を備えたマイクロコンピュータによって実現されてよい。制御装置100は、コンピュータによって実現されてよい。記憶部120は、例えば不揮発性の記憶媒体を備えて実現され、種々のデータ、プログラム等を記憶する。処理部110は、例えば記憶部120に記憶されたプログラムを読み出して所定の処理を行う。通信部130は、外部の機器との通信を実現する。
【0024】
処理部110は、取得部111と、リソース確保部112と、充放電計画策定部113と、を備える。取得部111は、電力アグリゲータが使用するアグリゲータサーバ180が、DRを電力取引において約定した場合に、複数の蓄電システム1を保有又は使用する複数の需要家40からDRへの参加意思、すなわち(2)におけるDR参加可否を取得する。
【0025】
リソース確保部112は、参加意思を示した需要家40の蓄電システム1の中から、DRの実施期間に蓄電システム1が電力網90に対して供出可能な電力リソースを確保する。なお、ここでいう供出可能な電力リソースはバッテリ12の充電と放電を両方含む概念である。またネガワット取引であれば、供出可能な電力リソースは、バッテリ12の充電予定の停止など電力取引に参加しないものも含む。
【0026】
DRは、上げDR及び下げDRを含む。上げDRの実施期間においては、バッテリ12の充電量を増加させたり、バッテリ12の予定されていた放電を停止して放電量を削減したりする。また、下げDRの実施期間においては、バッテリ12の放電量を増加させたり、バッテリ12の予定されていた充電を停止して充電量を削減したりする。上げDR及び下げDRの実施期間において、バッテリ12に対してこのような4つの制御が可能であり、種々の状況に応じてコントロールされる。上げDR及び下げDRの詳細については後述する。
【0027】
充放電計画策定部113は、DRの開始前の所定の期間である事前制御可能期間に蓄電システム1の充電状態を調整し、DRの実施期間に供出可能な電力リソースを増大させる充放電計画を策定する。充放電計画策定部113は、リソース確保部112が確保する電力リソースを増大させる。事前制御可能期間については後述する。
【0028】
通信部130は、(3)で示したように、充放電計画策定部113により策定された充放電計画を蓄電システム1へ送信する。
【0029】
図3は、上げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12を放電させる計画のタイミングチャートであり、
図3の(a)は電力網90での電力需要予想、
図3の(b)はバッテリ12のSOC、
図3の(c)は蓄電システム1の需要電力[kW]を示す。
図3においては、DR実施日の前日に、DRの事前準備として、DRの入札から約定までが行われることを前提としており、後に説明する
図4~
図6でも同様である。また、本例における事前制御可能期間は、DRの事前準備が可能な、DRの約定からDRの開始までの期間であり、
図4~
図6でも同様である。
【0030】
電力アグリゲータは、DR実施日の前日に電力取引市場等において電力取引を開始し、入札受付期間に入札を行う。約定処理の後、約定結果が通知される。約定後、取得部111は、複数の需要家40からDRへの参加意思、すなわち(2)におけるDR参加可否を取得する。そして、充放電計画策定部113は、参加意思を表明した需要家40の蓄電システム1について、充放電計画を策定する。
【0031】
制御装置100は、充放電計画策定部113による充放電計画の策定により、DR開始前にバッテリ12のSOCを調整する事前制御を行う。これにより、DR実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを増大できる。以下、
図3~
図6を参照して詳しく説明する。
【0032】
図3の(a)は、電力需要が大きくなるほど電力が逼迫し、電力取引価格、電気料金等が高価となり、逆に、電力需要が小さくなるほど電力が余剰となり、電力取引価格、電気料金等が低価となることを示しており、後に説明する
図4~
図6でも同様である。
図3の(a)に示すように、DR実施日において電力網90での電力余剰の発生が予想されるため、蓄電システム1に電力需要の増加を要請する上げDRが実施される。
【0033】
図3の(b)及び
図3の(c)は、充放電計画策定部113が策定したある需要家40の蓄電システム1の充放電計画(実線)のSOC及び需要電力をそれぞれ具体的に示している。なお、図中の破線は、仮に上げDRがない場合に、入出庫計画に基づいて想定されるSOC及び需要電力を示している。
【0034】
本例において、車両10は前日から入庫している。充放電計画策定部113は、事前制御可能期間であって上げDR指令の発動直前に、蓄電システム1のバッテリ12のSOCを調整する。具体的に充放電計画策定部113は、バッテリ12を放電させる計画を策定する。このとき、電力網90へ電力を提供するので、蓄電システム1の需要電力はマイナスとなる。充放電計画策定部113は、上げDRの実施期間においては、バッテリ12を充電させる計画を策定する。このとき、電力網90から受電した電力によりバッテリ12を充電するので、蓄電システム1の需要電力はプラスとなり、電力網90での電力余剰に対応することができる。
【0035】
本例のように、DRが電力需要の増加を要請する上げDRである場合、上げDR実施前に蓄電システム1の放電を行い、上げDR実施前に放電した分を上げDR実施期間に充電することにより、上げDR実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを増大できる。なお、ここでいう供出可能な電力リソースは、上げDR実施期間においてバッテリ12の充電可能なポテンシャルを上げるものである。
【0036】
図4は、上げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12の充電を停止させる計画のタイミングチャートであり、
図4の(a)は電力網90での電力需要予想を示し、
図4の(b)及び
図4の(c)は、充放電計画策定部113が策定したある需要家40の蓄電システム1の充放電計画(実線)のSOC及び需要電力をそれぞれ具体的に示している。
【0037】
本例において、車両10の入庫後すぐにバッテリ12の充電が行われる。充放電計画策定部113は、事前制御可能期間であって上げDR指令の発動直前に、蓄電システム1のバッテリ12のSOCを調整する。具体的に充放電計画策定部113はバッテリ12の充電を停止させる計画を策定する。このとき、蓄電システム1の需要電力はゼロになる。破線で示すように、バッテリ12の充電を停止させない場合、事前制御可能期間にバッテリ12のSOCが十分な量に達して上げDR実施期間に更なる充電が行えない可能性がある。本例では、事前制御可能期間にバッテリ12の充電を停止させるので、上げDR実施前に充電しなかった分を上げDR実施期間に充電することにより、上げDR実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを増大できる。なお、ここでいう供出可能な電力リソースは、バッテリ12の充電と放電を両方含む概念であり、上げDR実施期間においてバッテリ12の充電可能なポテンシャルを上げるものである。
【0038】
事前制御可能期間における蓄電システム1の充電停止(
図4)又は放電(
図3)は、
図3の(a)及び
図4の(a)に示すように、事前制御可能期間中に電力網90において電力逼迫が発生する場合に実行することが好ましい。これにより、事前制御可能期間中の電力逼迫に対して蓄電システム1の充電停止又は放電により貢献することができる。
【0039】
図5は、下げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100がバッテリ12を充電させる計画のタイミングチャート(その1)であり、
図5の(a)は電力網90での電力需要予想、
図5の(b)はバッテリ12のSOC、
図5の(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
図5の(a)に示すように、DR実施日において電力網90での電力逼迫発生が予想されるため、蓄電システム1に電力需要の抑制を要請する下げDRが実施される。
【0040】
図5の(b)及び
図5の(c)は、充放電計画策定部113が策定したある需要家40の蓄電システム1の充放電計画(実線)をそれぞれ具体的に示している。なお、図中の破線は、仮に下げDRがない場合に、入出庫計画に基づいて想定されるSOC及び需要電力を示している。
【0041】
本例において、車両10は前日から入庫している。充放電計画策定部113は、事前制御可能期間であって下げDR指令の発動直前に、蓄電システム1のバッテリ12のSOCを調整する。具体的に充放電計画策定部113は、バッテリ12を充電させる計画を策定する。このとき、電力網90から受電した電力によりバッテリ12を充電するので、蓄電システム1の需要電力はプラスとなる。充放電計画策定部113は、下げDRの実施期間においては、バッテリ12を放電させる計画を策定する。このとき、電力網90へ電力を提供するので、蓄電システム1の需要電力はマイナスとなり、電力網90での電力逼迫に対応することができる。
【0042】
破線で示すように、事前制御可能期間にバッテリ12を充電させない場合、下げDR実施期間に放電が行えない可能性がある。本例では、事前制御可能期間にバッテリ12を充電させるので、下げDR実施期間に放電するだけの電力を事前にバッテリ12に蓄えることができ、下げDR実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを増大できる。なお、ここでいう供出可能な電力リソースは、下げDR実施期間においてバッテリ12の放電可能なポテンシャルを上げるものである。
【0043】
図6は、下げDR開始前の事前制御可能期間に、制御装置100が蓄電システム1を充電させる計画のタイミングチャート(その2)であり、(a)は電力網90での電力需要予想、(b)は蓄電システム1のバッテリ12のSOC、(c)は蓄電システム1の需要電力を示す。
【0044】
本例においても、充放電計画策定部113は、事前制御可能期間であって下げDR指令の発動直前に、蓄電システム1のバッテリ12のSOCを調整する。具体的に充放電計画策定部113は、バッテリ12を充電させる計画を策定する。このとき、電力網90から受電した電力によりバッテリ12を充電するので、蓄電システム1の需要電力はプラスとなる。
【0045】
図中の破線は、仮に下げDRがない場合に、入出庫計画に基づいて想定されるSOC及び需要電力を示しており、充放電計画の策定前には、下げDR実施期間にバッテリ12が充電されること予想されている。
図5の例では、充放電計画策定部113は、下げDRの実施期間においてバッテリ12を放電させる計画を策定したが、
図6の(b)に示すように、下げDRの実施期間においてバッテリ12を放電させない計画を策定してもよい。下げDRの実施期間においてバッテリ12を放電させない計画を策定しているものの、当初は破線で示すように下げDR実施期間にバッテリ12を充電させて需要電力が増大することが予想されていたので、充放電計画の策定前と比較すると、下げDR実施期間における需要電力が低減し、電力網90での電力逼迫に対応することができる。
【0046】
このように、下げDR実施前にバッテリ12の充電を行い、下げDR実施期間に充電する量を低減することにより、下げDR実施期間に電力網90に対して供出可能な電力リソースを増大できる。なお、ここでいう供出可能な電力リソースは、下げDR実施期間においてバッテリ12の放電可能なポテンシャルを上げるものである。
【0047】
事前制御可能期間におけるバッテリ12の充電は、
図5の(a)及び
図6の(a)に示すように、事前制御可能期間中に電力網90において余剰電力がある場合に実行することが好ましい。これにより、事前制御可能期間中の余剰電力を有効利用することができる。
【0048】
図7は、制御装置100が実行する蓄電システム1の充放電制御の手順を示すフローチャートである。制御装置100は、
図3(a)~
図6の(a)に示すような需要電力データを取得する(ステップS1)とともに、電気料金データを取得する(ステップS2)。さらに制御装置100は、電力取引価格データを取得する(ステップS3)。
【0049】
制御装置100は、アグリゲータサーバ180の情報から、次に実行予定の次回DRが、下げDRか上げDRかを判断する(ステップS4)。次回DRが下げDRと判断した場合、制御装置100は、事前制御可能期間において電力網90に余剰電力があるか否かを判断する(ステップS5)。事前制御可能期間に余剰電力がある場合(ステップS5;YES)、制御装置100は、DR事前制御を実行し、下げDR前にバッテリ12を充電する(ステップS6)。
【0050】
一方、事前制御可能期間に電力網90に余剰電力がないと判断した場合(ステップS5;NO)、制御装置100は、電力取引価格が安値であるか否か判断し(ステップS7)、電力取引価格が安値である場合(ステップS7;YES)、さらに電気料金が安値であるか否か判断する(ステップS8)。電気料金も安値である場合(ステップS8;YES)、バッテリ12の充電が低コストで可能であるため、制御装置100は、DR事前制御を実行し、下げDR前にバッテリ12を充電する(ステップS6)。
【0051】
ステップS7で電力取引価格が安値でないと判定した場合(ステップS7;NO)、又は、電気料金が安値でないと判定した場合(ステップS8;NO)、バッテリ12の充電が高コストとなるため、制御装置100は、DR事前制御(充電)を実行しない(ステップS9)。
【0052】
一方、ステップS4で次回DRが上げDRと判断した場合、制御装置100は、電力網90に需要電力があるか否かを判断する(ステップS10)。需要電力がある場合(ステップS10;YES)、すなわち、余剰電力がない場合、制御装置100は、電気料金が安値であるか否か判断する(ステップS11)。電気料金が安値でない場合(ステップS11;NO)、電力を高い価格で売却可能であるため、制御装置100は、DR事前制御を実行し、上げDR前にバッテリ12を放電する(ステップS12)。
【0053】
ステップS10で需要電力がない場合(ステップS10;NO)、又は、電気料金が安値である場合(ステップS11;YES)、余剰電力がある、又は、電力の売却が低価格となってしまうため、制御装置100は、DR事前制御(放電)を実行しない(ステップS13)。
【0054】
図3~
図6の例において、事前制御可能期間は、DRの約定からDRの開始までの期間である。ただし、事前制御可能期間は、DRの入札からDRの開始までの期間であってもよい。これにより、DRの入札後又は約定後から事前制御可能期間とすることができるので、事前制御可能期間を十分に確保できる。
【0055】
また、DRの開始直前の期間(例えば、DRの開始の2時間前)において、リソース確保部112により確保された電力リソースと、DRで要請される電力需要との間で乖離が発生していると判定されることがある。例えば、上げDRの場合(
図3及び
図4)は充電を行う蓄電システム1が足りず、下げDRの場合(
図5及び
図6)は放電を行う蓄電システム1が足りないという事態である。この場合、充放電計画策定部113は、DRの開始直前の期間にバッテリ12のSOCを調整し、DRの実施期間に供出可能な電力リソースを増大させる充放電計画を策定することができる。
【0056】
これにより、例えば需要家による蓄電システム1の使用状況により電力リソースが十分に確保できないとDR開始直前に判定された場合に、DR実施期間に電力リソース不足が発生することを抑制できる。
【0057】
以上、図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、電力取引は、前述したような電力取引市場を介して行う形態であってもよいし、スケジュールコーディネーターやアグリゲータとして電力会社と直接相対取引する形態であってもよい。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 電力網(電力網90)との間で電力の充放電が可能な複数の蓄電システム(蓄電システム1)の充放電を制御する制御装置(制御装置100)であって、
前記電力網での電力需給バランスを調整するDR(Demand Response)を電力取引において約定した場合に、前記複数の蓄電システムを保有又は使用する複数の需要家から前記DRへの参加意思を取得する取得部(取得部111)と、
前記参加意思を示した前記需要家の前記蓄電システムの中から、前記DRの実施期間に前記蓄電システムが前記電力網に対して供出可能な電力リソースを確保するリソース確保部(リソース確保部112)と、
前記DRの開始前の所定の期間である事前制御可能期間に前記蓄電システムの充電状態(バッテリ12のSOC)を調整し、前記DRの実施期間に供出可能な前記電力リソースを増大させる充放電計画を策定する充放電計画策定部(充放電計画策定部113)と、
前記充放電計画策定部により策定された前記充放電計画を前記蓄電システムへ送信する通信部(通信部130)と、を備える、
制御装置。
【0061】
(1)によれば、DR開始前に蓄電システムの充電状態を調整する事前制御を行うので、DR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる。
【0062】
(2) (1)に記載の制御装置であって、
前記DRは、電力需要の増加を要請する上げDRであり、
前記充放電計画は、前記事前制御可能期間に前記蓄電システムの充電を停止させる計画、又は前記事前制御可能期間に前記蓄電システムを放電させる計画を含む、
制御装置。
【0063】
(2)によれば、上げDR実施前に蓄電システムの充電停止又は放電を行い、上げDR実施前に放電した分又は充電しなかった分を上げDR実施期間に充電することにより、上げDR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる。
【0064】
(3) (2)に記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間における前記蓄電システムの充電の停止又は放電は、前記事前制御可能期間中に前記電力網において電力逼迫が発生する場合に実行される、
制御装置。
【0065】
(3)によれば、事前制御可能期間中の電力逼迫に対して蓄電システムの充電停止又は放電により貢献することができる。
【0066】
(4) (1)に記載の制御装置であって、
前記DRは、電力需要の抑制を要請する下げDRであり、
前記充放電計画は、前記事前制御可能期間に前記蓄電システムを充電させる計画を含む、
制御装置。
【0067】
(4)によれば、下げDR実施前に蓄電システムの充電を行い、下げDR実施期間に放電すること又は下げDR実施期間に充電する量を削減することにより、下げDR実施期間に電力網に対して供出可能な電力リソースを増大できる。
【0068】
(5) (4)に記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間における前記蓄電システムの充電は、前記事前制御可能期間中に前記電力網において余剰電力がある場合に実行される、
制御装置。
【0069】
(5)によれば、事前制御可能期間中の余剰電力を有効利用することができる。
【0070】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記事前制御可能期間は、前記DRの入札から前記DRの開始までの期間、又は前記DRの約定から前記DRの開始までの期間である、
制御装置。
【0071】
(6)によれば、DRの入札後又は約定後から事前制御可能期間とすることができるので、事前制御可能期間を十分に確保できる。
【0072】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記DRの開始直前の期間において前記リソース確保部により確保された前記電力リソースと前記DRで要請される電力需要との間に乖離が発生していると判定された場合、前記充放電計画策定部は、前記DRの開始直前の期間に前記蓄電システムの充電状態を調整し、前記DRの実施期間に供出可能な前記電力リソースを増大させる前記充放電計画を策定する、
制御装置。
【0073】
(7)によれば、例えば需要家による蓄電システムの使用状況により電力リソースが十分に確保できないとDR開始直前に判定された場合に、DR実施期間に電力リソース不足が発生することを抑制できる。
【符号の説明】
【0074】
1 蓄電システム
90 電力網
100 制御装置
111 取得部
112 リソース確保部
113 充放電計画策定部
130 通信部