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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103323
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】水田引水管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20250702BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20250702BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20250702BHJP
   E02B 13/02 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
A01G25/00 501E
H04Q9/00 301B
A01G25/00 501Z
A01G22/22 B
E02B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220650
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048BA30
5K048FB15
(57)【要約】
【課題】水田の水管理作業について実行するタイミングを容易に管理することが可能な水田引水管理システムを提供する。
【解決手段】
水田に通ずる水路上の複数の個所に配置され、水路を遮断する遮断手段と、前記遮断手段による水路の開閉を制御する制御装置と、表示手段を有する端末装置とを備え、前記端末装置は、予め入力された複数の水田の位置情報に基づき、複数の水田を表示可能に構成されており、表示された複数の水田の中から任意の水田が選択されると、選択された水田に通ずる水路の前記各遮断手段による水路の開閉状態と、作物の作付からの積算温度を表示する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田に通ずる水路上の複数の個所に配置され、水路を遮断する遮断手段と、
前記遮断手段による水路の開閉を制御する制御装置と、
表示手段と前記遮断手段を操作する操作手段を有する端末装置とを備え、
前記端末装置は、予め入力された複数の水田の位置情報に基づき、複数の水田を表示可能に構成されており、表示された複数の水田の中から任意の水田が選択されると、選択された水田に通ずる水路の前記各遮断手段による水路の開閉状態と、作物の作付からの積算温度を表示することを特徴とする水田引水管理システム。
【請求項2】
前記端末装置はインターネットに接続され、
前記複数の水田について、各水田の作付日を取得すると、インターネットから取得される天気情報に基づいて作付日からの積算温度を各水田ごとに算出する請求項1に記載の水田引水管理システム。
【請求項3】
前記遮断手段は気温を検知する温度センサを備え、
前記端末装置は温度センサが検知した気温を取得して記録し、
前記複数の水田について、各水田の作付日を取得すると、記録した気温に基づいて作付日からの積算温度を各水田ごとに算出する請求項1に記載の水田引水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田への引水を容易に管理することが可能な管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端末装置に複数の水田が表示され、任意の水田を選択すると、選択した水田に関する水路と堰が表示され、堰の開閉を遠隔操作できる水田引水管理システムが開示されている。
【0003】
この装置によれば、各水田の水位の調節に、複数の堰板の操作が必要であっても、各水田への引水を容易に管理できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-84983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水田の水管理作業を実行するにあたっては、作付からの積算温度が実行する適切なタイミングとしての指標となるが、作付のタイミングが異なる場合、積算温度も圃場ごとに異なるため、管理が容易ではなかった。
【0006】
したがって、本発明は、各水田の水管理作業について実行するタイミングを容易に管理することが可能な水田引水管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のかかる目的は、
水田に通ずる水路上の複数の個所に配置され、水路を遮断する遮断手段と、前記遮断手段による水路の開閉を制御する制御装置と、表示手段と前記遮断手段を操作する操作手段を有する端末装置とを備え、前記端末装置は、予め入力された複数の水田の位置情報に基づき、複数の水田を表示可能に構成されており、表示された複数の水田の中から任意の水田が選択されると、選択された水田に通ずる水路の前記各遮断手段による水路の開閉状態と、作物の作付からの積算温度を表示することを特徴とする水田引水管理システムにより達成される。
【0008】
本発明によれば、端末装置上で管理したい水田を選択すると、遮断手段を操作する操作手段と積算温度が表示されるため、各水田の水管理作業について積算温度を目安にして実行するタイミングを容易に管理できる。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、前記端末装置はインターネットに接続され、前記複数の水田について、各水田の作付日を取得すると、インターネットから取得される天気情報に基づいて作付日からの積算温度を各水田ごとに算出する。
【0010】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、各水田の作付日を取得するとインターネットより取得した天気情報をもとに積算温度を算出するため、管理者は自身で計算する必要はなく、各水田の水管理作業について積算温度を目安にして実行するタイミングを容易に管理できる。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記遮断手段は気温を検知する温度センサを備え、前記端末装置は温度センサが検知した気温を取得して記録し、前記複数の水田について、各水田の作付日を取得すると、記録した気温に基づいて作付日からの積算温度を各水田ごとに算出する。
【0012】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、広域の天気情報ではなく、実際の測定温度に基づいて積算温度を算出するため、精度よく積算温度を把握し、各水田の水管理作業を実行するタイミングを容易に管理できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各水田の水管理作業について実行するタイミングを容易に管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる水田引水管理システムの全体構成図である。
図2図2は、図1に示された水田引水管理システムにより引水状態が管理される複数の水田と、各水田へ延びる水路と、水路に配置された各堰の位置関係を示す模式的平面図である。
図3図3は、引水管理の対象である水田が端末装置のディスプレイ上で強調表示された状態を示す図面である。
図4図4は、端末装置4のディスプレイ上で、引水管理の対象である複数の水田の中から任意の水田が選択された状態を示す図面である。
図5図5は、端末装置のディスプレイ上で、水路が選択されたときの表示を示す図面である。
図6図6は、図4又は図5に示されたディスプレイに表示された任意の堰が選択された状態を示す図面である。
図7図7は、図4に示されたディスプレイに表示された引水開始スイッチがオンされた後の状態を示す図面である。
図8図8は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる水田引水管理システムの全体構成図である。
図9図9は、図8に示された端末装置のディスプレイ上で、任意の水田が選択された状態を示す図面である。
図10図10は、図9に示される吹き出し内の「ドローン」のスイッチが操作されたときにディスプレイに表示される映像を示す図面である。
図11図11(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる端末装置を装着した管理者の頭部を示す略斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示された実施態様にかかる無人航空機の操縦レバーを示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる水田引水管理システム1の全体構成図であり、図2は、図1に示された水田引水管理システム1により引水状態が管理される複数の水田と、各水田へ延びる水路と、水路に配置された各堰の位置関係を示す模式的平面図である。
【0017】
本実施態様にかかる水田引水管理システム1により引水が管理される水田は、図2に示されるF1ないしF5の計5つであり、5つの水田F1ないしF5の東方に位置する川2から水路3又は水路3の南側に位置する水路6へ取り込まれた水が各水田F1ないしF5に供給される。水路3又は6は、各水田F1ないしF5へ通じている。なお、本発明の水田引水管理システムにより引水が管理される水田と水路は、これらに限定されるものではない。
【0018】
図2には、水路3,6のうち、上空から見える部分が濃いグレー色で示されており、水路3,6のうち、蓋掛けされて上空から見えない部分は薄いグレー色で示されている。
【0019】
本実施態様においては、水田引水管理システム1は、川2の近傍に配置された2つの堰M1およびM2並びに他の7つの堰S1ないしS6と、無人航空機5(いわゆるドローン)と、端末装置4とを備えている(図1参照)。
【0020】
図2に示すように、堰M1および堰S1ないし堰S3並びに堰S6は水路3を遮断することができるように水路3上に配置され、堰M2および堰S4,S5は水路6を遮断することができるように水路6上に配置されている。
【0021】
各堰は、水路3又は6を遮断する堰板7と、堰板7を上下に駆動する堰板駆動モータ8と、堰板駆動モータ8を駆動する制御装置12と、ルータを有する通信部9と、気温を検知する温度センサ60を備えている。制御装置12は、中央演算装置および種々のデータが格納される記憶部を有している。
【0022】
堰板7が堰板駆動モータ8の駆動により下方に移動されると水路3又は6が遮断され(堰き止められ)、堰板7が上方に移動されると水路3又は6が開かれて(開放されて)、堰板7の下方を水が通過することができるように構成されている。以下、水路3が遮断される堰板7の位置を「遮断位置」といい、水路3が開かれる堰板7の位置を「開放位置」という。加えて、各堰の堰板7により水路3が遮断されている状態を「遮断状態」といい、各堰の堰板7により水路3が遮断されていない状態を「開放状態」という。また、各堰の堰板は本発明にかかる「遮断手段」の一例である。
【0023】
堰S1ないしS5はそれぞれ、水路3又は6上であって、いずれかの水田F1ないしF5への水口の近傍に配置されており、堰S1ないしS5の各堰板7は、水田F1ないしF5への水口を遮断可能に構成されている。すなわち、各水路3,6は水田F1ないしF5へ通ずるものであり、各水田F1ないしF5への水口を含むものである。
【0024】
水路3は、図2に示すように、分岐地点10で分岐しており、分岐地点10から西側へ延びる水路3の部分を水路3a、分岐地点10より南側に位置する水路3の部分を水路3bとして説明を進める。堰板S6は水路3の分岐地点10のすぐ南側に位置している。
【0025】
堰M1および堰S1が開放状態にあるときに水路3(具体的には水路3a)から水田F1へ引水され、堰M1、堰S6およびS2が開放状態にあるときに水路3(具体的には水路3b)から水田F2へ引水され、堰M1、堰S6およびS3が開放状態にあるときに水路3(具体的には水路3b)から水田F3へ引水され、堰M2、および堰S4が開放状態にあるときに水路6から水田F4へ引水され、堰M2および堰S5が開放状態にあるときに水路6から水田F5へ引水される。以下の説明において、各水田へ引水するために、開放状態にあることが必要な堰についての情報(換言すれば、各水田に引水するまでの水路上にある堰についての情報)を「必要堰情報」という。例えば、水田F2についての必要堰情報は、堰M1、堰S6および堰S2である。
【0026】
無人航空機5は、図1に示すように、人工衛星からの電波を受信するGNSS受信機50と、映像を撮影可能な撮像装置51と、撮像装置51のヨー方向の角度を変更する第一の角度調整モータ52と、撮像装置51のピッチング方向の向きを変更する第二の角度調整モータ53と、第一及び第二の角度調整モータ52,53の回転子の回転位置を検知する角度検知センサと、機体5の方位を検出する方位センサと、情報の送受信が可能な通信部と、無人航空機5の各ローター31の回転数を制御する制御部と、通信部59を備えている。角度検知センサは、撮像装置51の角度(向き)を検知する角度検知手段としての役割を担う。
【0027】
端末装置4は、種々の演算を行う中央演算装置を有する処理部と種々のプログラムおよびデータが格納された記憶部とを有する制御部と、タッチパネル式のディスプレイ40と、情報を送受信可能な通信部と、アナログスティック41,42を有するタブレット型の端末である。ディスプレイ40は、本発明に係る「表示手段」の一例である。
【0028】
端末装置4には、地図情報、引水管理の対象である5つの水田F1ないしF5の名称並びに位置情報(以下、水田の位置情報を「水田情報」という。)、各水田F1ないしF5へ延びる水路3及び6の位置情報(以下、「水路情報」という。)、各堰M1、M2およびS1ないしS6の堰板7の位置情報(以下、「堰板情報」という。)、上述した必要堰情報、および各水田F1ないしF5に作付けされた作物の種類(水稲、里芋、クワイ等)、品種(コシヒカリ、ひとめぼれ等)および作付け日並びに各水田F1ないしF5の面積の情報が予め入力され、端末装置4の記憶部に格納されている。本実施態様においては、水田情報として各水田F1ないしF5の輪郭上の複数地点の位置情報が予め入力され、これらの地点を結ぶ太枠により各水田の位置がディスプレイ40上に表示される(図3参照)。さらに、本実施態様においては、水路情報として各水路3,6上に位置する複数の各地点の位置情報が予め入力され、これらの地点を結ぶ線が破線によりディスプレイ40上に表示される(図5ないし図7参照)。水路情報には、堰S1ないしS5のいずれかが設けられた各水田F1ないしF5の水口の位置情報も含まれている。なお、引水管理の対象である水田とは、水田情報が入力された水田である。
【0029】
端末装置4の通信部と、ルータを有する各堰M1,M2並びにS1ないしS6の通信部9は、インターネットを用いて相互に通信可能に構成されており、端末装置4の通信部がディスプレイ40への押圧操作による操作信号を各堰M1,M2並びにS1ないしS6の通信部9へ送信することにより、制御装置12が堰板駆動モータ8を駆動し、各堰の堰板7を遮断位置から開放位置へ、又は開放位置から遮断位置へ切り換えることができる。
【0030】
堰板7の位置が切り換えられたときには、各堰の制御装置12は、図1に示すように、堰板7の識別情報(どの堰の堰板7であるのかについての情報)とともに、堰板7の開閉情報(開閉状態についての情報であり、遮断状態にあるのか開放状態にあるのかについての情報)を通信部9を介して端末装置4に送信(出力)するように構成されている。
【0031】
各堰の堰板7の開閉情報を受信すると、端末装置4の制御部は堰板7の開閉情報をその記憶部に格納するように構成されており、したがって、端末装置4は、各堰が遮断状態にあるのか開放状態にあるのかを、記憶部に格納された開閉情報に基づき判定し、ディスプレイ40に表示することができる(図4参照)。なお、端末装置4の通信部と各堰M1,S1ないしS6の通信部9とがインターネットを用いて通信することは必ずしも必要でなく、近距離無線通信等により相互に通信可能に構成してもよい。また、各堰に水路の開閉状態を検出する開閉状態検出センサを別途設け、この開閉状態検出センサから出力された検出信号すなわち開閉情報を、制御装置12が、通信部9を介して堰板の識別情報とともに端末装置4へ送信するよう構成してもよい。開閉状態検出センサは、たとえば、堰板駆動モータ8の回転子の回転位置を検出する回転位置センサ等により構成される。
【0032】
一方、端末装置4の通信部と無人航空機5の通信部とは、近距離無線通信により相互に情報の送受信ができるよう構成されており、端末装置4は、左右のアナログスティック41,42の傾倒操作による操作信号を無人航空機5へ送信する送信機(いわゆる「プロポ」)としての役割も担うように構成されている。
【0033】
具体的には、左側のアナログスティック41が左右一方へ傾倒操作されると、無人航空機5が左方又は右方へ旋回し、左側のアナログスティック41が前後一方へ傾倒操作されると、無人航空機5が前進又は後退するよう構成されている。
【0034】
また、右側のアナログスティック42が左右一方へ傾倒操作されると、無人航空機5が左右一方へ移動し、右側のアナログスティック42が前後一方へ傾倒操作されると、無人航空機5が上昇または下降するよう構成されている。
【0035】
管理者による操作に基づき無人航空機5が飛行する間、端末装置4は、撮像装置51により撮影された映像と、GNSS受信機50により取得された無人航空機5の位置情報と、角度検知センサにより検知された撮像装置51の角度の情報並びに機体5の方位の情報とを無人航空機5より取得するように構成されており、端末装置4の制御部は、記憶部に格納された特定のプログラムを読み出して実行することにより、無人航空機5から取得したこれらの情報並びに端末装置4の記憶部に格納された地図情報、水田情報、水路情報、堰板情報に基づき、映像内の5つの水田F1ないしF5の位置、水路3,6の位置および堰板の位置を特定し、図3以降に示すように、撮像装置51により撮影された映像に、水田情報と、水路情報と、堰板情報とを合成した(オーバーレイ表示した)リアルタイムの映像をディスプレイ40に表示できるように構成されている。この合成技術は、たとえば、アメリカンフットボールの試合のテレビ中継において「1ST&10」「2ND&10」等の文字とその位置を示す矢印をフィールド上に反映することなどにも用いられている(特表2018-509016号公報等参照)。
【0036】
なお、端末装置4にアナログスティック41,42を設けることは必ずしも必要でなく、タッチパネル式のディスプレイ40への押圧操作により、無人航空機5を操縦可能に構成してもよい。
【0037】
図3は、引水管理の対象である水田F1ないしF5が端末装置4のディスプレイ40上で強調表示された状態を示す図面であり、図4は、端末装置4のディスプレイ40上で、引水管理の対象である複数の水田F1ないしF5の中から任意の水田F2が選択された状態を示す図面である。
【0038】
また、図5は、端末装置4のディスプレイ40上で、水路3bが選択されたときの表示を示す図面である。
【0039】
管理者の操作(操縦)に基づき、無人航空機5の飛行が開始され、図2に示された地域が撮像装置51の画角に入ると、図3に示すように、撮像装置51により撮影される映像内の(引水管理の対象である)水田F1ないしF5の位置(輪郭)がそれぞれ太枠(実際には赤色の太枠)によりディスプレイ40内で強調表示される。換言すれば、撮像装置51により撮影され、端末装置4のディスプレイ40に表示される映像内において、水田引水管理システム1による引水管理の対象である水田F1ないしF5の位置を示す太枠がオーバーレイ表示される。
【0040】
図3および図4に示されるディスプレイ40に映し出された地域は、図2において模式的平面図として示された地域である。なお、各水田の名称として予め入力されたF1ないしF5の各文字列を、図3に示すように各水田F1ないしF5の上にオーバーレイ表示するよう構成することは必ずしも必要でない。
【0041】
本実施態様においては、図3に示す画面の状態で、ディスプレイ40上で引水管理の対象である複数の水田F1ないしF5の中から任意の水田(例えばF2)が押圧(タップ)されて選択されると、図4に示すように、選択された水田F2の水口までの水路3の位置が破線(実際には青い破線)によりオーバーレイ表示される。
【0042】
同時に、選択された水田F2への引水のため、開放状態にあることが必要な堰(選択された水田F2に引水するまでの水路上に配置された堰)M1,S6およびS2と、その近傍の堰の位置がそれぞれ、予め入力された位置情報に基づき、白丸又は黒丸でオーバーレイ表示される。
【0043】
各堰の制御装置12から出力(送信)され、端末装置4の記憶部に格納された堰板の開閉情報に基づき、開放状態にある堰は白丸で、遮断状態にある堰は黒丸で表示されるよう構成されている。すなわち、端末装置4は、制御装置12から送信された各堰の開閉状態を白丸又は黒丸により表示する。
【0044】
したがって、管理者は、ディスプレイ40上で、任意の水田を押圧(タッチ)するだけで、任意の水田へ延びる水路と、その水路上に設けられた各堰の開閉状態(水路が堰により遮断された状態にあるか開放された状態にあるか。さらに換言すれば、開放状態にあるか遮断状態にあるか)を一目で把握できるため、利便性が高い。なお、任意の水田F2が押圧されて選択された際に、選択された水田F2に引水するための水路3全体が破線によりオーバーレイ表示されるように構成してもよい。
【0045】
また、本実施態様においては、任意の水田(例えばF2)が押圧されて選択されると、水田の位置を示す太枠の表示と水路の位置を示す破線の表示に加えて、図4に示すように、選択された水田F2に引水を開始する引水開始スイッチ13と、選択された水田F2についての情報、すなわち、水田F2に作付けされた作物の種類、品種、作付け日、水田F2の面積並びに係る水田F2における作付からの積算温度とが吹き出し内にオーバーレイ表示される。選択された水田についての情報は、本実施態様においては、上述のように予め端末装置4に入力されている。積算温度はテキストデータのほか刈取の時期までに対する進捗割合を示すバーグラフ14の形式で表示される。バーグラフ14上側には現在の積算温度、落水の目安となる積算温度が表示され、下側には出穂の推定時期と刈取の推定時期が積算温度の増加傾向に応じて調整されたバーグラフ14上の位置に表示される。
【0046】
積算温度は、端末装置4などに入力されるなどして作付日を取得すると、インターネット30から水田F2の位置情報に基づいた天気情報を取得して算出したり、堰S1ないしS6に搭載された温度センサ60で取得し、日付情報とともに記録した気温情報に基づいて算出される。このように、任意の水田を押圧して選択することにより、引水の時期や田面水の水位を決定する際に参考となる品種、積算温度等の情報をディスプレイ40に表示させることができるから、引水管理を容易とすることができる。
【0047】
さらに、本実施態様においては、図4に示された画面の状態で、破線で表示された水路3のうち、分岐地点10(図2参照)より南側に位置する水路3bが押圧操作されて選択されると、図5に示すように、引水管理の対象の水田であって、かつ、水路3bにより給水(引水)されるすべての水田F2およびF3がグレー色でオーバーレイ表示(塗りつぶ)されるとともに、映像内の水路3bが全体にわたって破線によりオーバーレイ表示(強調表示)されるよう構成されている。
【0048】
さらに、図示はされていないが、水路3の分岐地点10より東側の部分(分岐前の部分であって、上流部分)が押圧操作されて選択された場合には、水路3により引水されるすべての水田F1ないしF3がグレー色でオーバーレイ表示されるとともに、水路3aを含む水路3全体が破線によりオーバーレイ表示(強調表示)されるよう構成されている。
【0049】
したがって、水路3の分岐地点10のすぐ南側に配置された堰S6又は水路3の大本の位置に配置された堰M1が遮断状態又は開放状態に切り換えられた場合にどの水田まで影響するのかを容易に把握することができる。このように、本実施態様においては、任意の水田を選択することにより、その水田へ延びる水路と水路上に配置された堰の開閉状態を一目で把握できるとともに、水路を選択することにより、選択された水路が影響を及ぼすすべての水田を一目で把握できるから、複数の水田の引水管理を行う上で非常に利便性が高い。
【0050】
図6は、図4又は図5に示されたディスプレイ40に表示された任意の堰S4が選択された状態を示す図面であり、以下に、任意の堰(例えばS4)を個別に開放状態から遮断状態へ、又は遮断状態から開放状態へ切り換える方法について説明を加える。
【0051】
たとえば、任意の堰S4を遮断状態から開放状態へ切り換えて水田F4に引水を行いたい場合には、管理者は、まず、図4又は図5に示されるように、開放状態へ切り換えたい堰S4がディスプレイ40に表示された状態で、堰S4を押圧操作して選択する。
【0052】
開閉状態を切り換えたい堰S4が選択されると、図6に示されるように、選択された堰S4が配置された水路6が破線によりオーバーレイ表示されるとともに、堰S4を開放状態に切り換える開放スイッチ15および堰S4を遮断状態に切り換える遮断スイッチ16が吹き出し内に表示されるよう構成されている。したがって、管理者は、開放スイッチ15を押圧操作してオンすることにより、堰S4の開放を指示することができる。
【0053】
任意の堰S4の開放が指示されると、端末装置4の制御部は、堰S4に開放状態へ切換える旨の操作信号を送信する。
【0054】
この操作信号を受信すると、堰S4の制御装置12は、堰板駆動モータ8を駆動して堰板7を上昇させ、開放位置に切り換える。その結果、水路6を流れる水が水田F4に引水(供給)される。
【0055】
以上、堰S4を開放状態へ切り換えて、水田F4に引水する方法について説明を加えたが、水路6の大本の堰M2が遮断状態にある場合には、同様の手順で、堰M2を選択し、開放スイッチ15を押圧操作してオンし、(堰S4に加えて)堰M2も開放状態へ切り換えることにより、水田F4に引水することができる。
【0056】
こうして、堰S4が開放状態に切り換えられた状態で、ディスプレイ40上でS4が押圧されて選択されると、上述のように、開放スイッチ15および遮断スイッチ16が吹き出し内に表示されるため、任意のタイミングで、遮断スイッチ16を押圧操作してオンすることにより、堰S4の遮断を指示することができる。
【0057】
任意の堰S4の遮断が指示されると、端末装置4の制御部は、堰S4に遮断状態へ切り換える旨の操作信号を送信する。
【0058】
この操作信号を受信すると、堰S4の制御装置12は、堰板駆動モータ8を駆動して堰板7を下降させ、遮断位置に切り換える。その結果、水田F4への引水が終了する。
【0059】
なお、本実施態様においては、ディスプレイ40上で、押圧操作されて選択された任意の堰M1,M2,S1ないしS6が遮断状態にある場合には、図6に示されるように、遮断スイッチ16はグレーアウトされ、操作できないように構成されている。
【0060】
また、反対に、ディスプレイ40上で、押圧操作されて選択された任意の堰M1,M2,S1ないしS6が開放状態にある場合には、開放スイッチ15はグレーアウトされ、操作できないよう構成されている。
【0061】
以上、任意の(個別の)堰の開閉状態を切り換える方法について説明を加えたが、本実施態様においては、さらに、以下のように、図4に示された引水開始スイッチ13を操作して、容易に任意の水田F1ないしF5への引水を開始し、又は終了させることができる。
【0062】
図7は、図4に示されたディスプレイ40に表示された引水開始スイッチ13がオンされた後の状態を示す図面である。
【0063】
任意の水田(例えばF2)に引水を開始したい場合には、管理者は、ディスプレイ40に表示された引水したい水田F2を押圧操作して選択し、図4に示されるように、引水開始スイッチ13を表示させた後に、引水開始スイッチ13を押圧操作してオンすることにより、水田F2への引水を指示することができる。
【0064】
任意の水田、たとえば水田F2への引水が指示されると、まず、端末装置4の制御部は、記憶部に格納された水田F2についての必要堰情報を読み出す。水田F2についての必要堰情報は、上述のように、堰M1、堰S6および堰S2である。
【0065】
次いで、端末装置4の制御部は、水田F2へ引水するために開放状態であることが必要な各堰M1、堰S6および堰S2について、現在の開閉状態を各堰M1、堰S6および堰S2の制御装置12から取得した開閉情報に基づき判定する。
【0066】
こうして、必要堰情報にかかる各堰M1、堰S6および堰S2の開閉状態を判定すると、端末装置4の制御部は、各堰M1、堰S6および堰S2のうち、遮断状態にある(堰板7が遮断位置にある)堰を、開放状態に切り換える。
【0067】
たとえば、図4に示された状態で、引水開始スイッチ13が押圧操作されてオンされた場合には、必要堰情報にかかる各堰M1、堰S6および堰S2のうち、黒丸でオーバーレイ表示された堰S2および堰S6、すなわち、遮断状態にある堰S2および堰S6が、図7に示されるように、すべて開放状態に切り換えられる。
【0068】
具体的には、端末装置4より堰S2および堰S6へ、開放状態へ切り換える旨の操作信号が送信され、この操作信号に基づき、堰S2および堰S6の制御装置12が、堰板駆動モータ8を駆動して堰板7を上昇させるとともに、堰板7の開閉情報を端末装置4に送信する。その結果、堰M1、堰S6および堰S2を通過した水が水田F2に供給(引水)されるとともに、図7に示されるように、ディスプレイ40上においても堰S2および堰S6が白丸によるオーバーレイ表示に切り換えられる。
【0069】
なお、図4に示される表示状態においては、必要堰情報にかかる各堰M1、堰S6および堰S2のうち、堰M1が開放状態であったため、堰S6および堰S2のみについて開放状態に切り換える制御が行われたが、任意の水田F2への引水が指示された時点で堰M1が遮断状態であった場合には、堰M1についても開放状態に切り換える制御が行われる。
【0070】
このように、本実施態様においては、引水が指示された水田(例えばF2)に引水されるまでの水路上に位置する堰であって、開放状態にある堰が一括して(まとめて)開放状態に切り換えられるように構成されているから、開放状態に切り換えることが必要な各堰について、個別に開放を指示する操作を端末装置4上で行う必要がなく、手間を省くことができる。
【0071】
加えて、引水が指示された水田(例えばF2)に引水されるまでの水路上に位置する堰が、自動的にすべて開放状態に切り換えられるため、開閉操作が不要な堰を誤って操作してしまうことを防止できる。
【0072】
なお、引水中の水田が選択された場合には、引水開始スイッチ13はグレーアウトされ、引水開始を指示できない(押圧操作を受け付けない)よう構成されている。また、開放スイッチ15、遮断スイッチ16および引水開始スイッチ13を示す図面中の符号は、実際にはディスプレイ40に表示されない。
【0073】
一方、本実施態様においては、任意の水田(例えばF2)の必要堰情報にかかる堰M1、堰S6および堰S2を一括して遮断状態へ切り換えるスイッチは設けられておらず、したがって、引水中の任意の水田、たとえば水田F2への引水を終了したい場合には、必要堰情報にかかる堰M1、堰S6および堰S2のうち、少なくとも1つの堰を、上述した遮断スイッチ16を操作することにより、個別に遮断状態へ切り換える必要がある。
【0074】
このように、遮断状態へ切り換える場合には堰ごとの遮断操作を要するように構成されているため、たとえば、水田F2の引水を終了させる場合に、意図せず大本の堰M1まで遮断状態に切り換えられ、引水中の水田F1への引水がストップしてしまうような事態を防止することができる。
【0075】
本実施態様によれば、端末装置4上で、管理したい水田を選択すると、選択された水田(たとえばF2)に通ずる水路の位置と、この水路上に配置された堰M1,S6およびS2の位置並びにこれらの堰による水路の開閉状態が白丸又は黒丸の記号により、端末装置4に表示されるため、各水田の水位を管理する場合に、どの堰を操作すればよいのかや、引水できているか否かを容易に把握でき、したがって、各水田への引水を容易に管理することができる。
【0076】
また、本実施態様によれば、無人航空機5に設けられた撮像装置51により撮影される映像に、予め入力された複数の水田の位置情報と、各水田F1ないしF5に通ずる水路3,6の位置情報と、堰M1,M2,S1ないしS6の位置情報が合成された映像が端末装置4に表示されるよう構成されているから、複数の水田F1ないしF5の引水を容易に管理できるとともに、各水田に足を運ばなくても、端末装置4上で各水田F1ないしF5全体を見渡して、田面水の水量の多少を目視で確認することができる。
【0077】
さらに、本実施態様によれば、複数の水田F1ないしF5の中から選択した水田(たとえばF2)に対して引水を指示する操作(引水開始スイッチ13の押圧操作)を行うと、選択された水田F2に引水するまでの水路3上にある堰M1,S6,S2のうち、水路3を遮断している堰(図4においては黒丸で示された堰S6およびS2)を一括して開放するよう構成されているから、各堰S6およびS2ごとに開放を指示する操作(各堰を選択した上での開放スイッチ15の押圧操作)を行う必要がなく、操作の手間を省くことができる。
【0078】
また、本実施態様によれば、水田への引水を終了するときには、堰ごと(具体的には堰板7ごと)に、水路を遮断させる旨を指示する操作(遮断スイッチ16の押圧操作)を要するよう構成されているから、他の引水中の水田への水の供給が誤って停止される事態を防止することができる。
【0079】
さらに、本実施態様によれば、無人航空機5に設けられた撮像装置51により取得される映像が端末装置4のディスプレイ40に表示されるから、各水田の作柄や鳥獣害の状況および水田への野生の鳥獣の侵入を一目で把握することができる。
【0080】
図8は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる水田引水管理システム1の全体構成図であり、図9は、図8に示された端末装置4のディスプレイ40上で、任意の水田F2が選択された状態を示す図面である。
【0081】
また、図10は、図9に示される吹き出し内の「ドローン」のスイッチが操作されたときにディスプレイ40に表示される映像を示す図面である。
【0082】
本実施態様においては、地図情報、水田情報、水路情報、堰板情報、必要堰情報、および各水田F1ないしF5に作付けされた作物の種類(水稲、里芋、クワイ等)、品種、作付け日並びに各水田の面積の情報が管理サーバ20に予め入力され、記憶部24に格納されている。加えて、撮像装置51により撮影された映像、角度検知センサにより検知された撮像装置51の角度の情報、無人航空機5の位置情報、並びに機体5の方位の情報が、送信機54、伝送装置55およびインターネット30を介して管理サーバ20に送信される。
【0083】
管理サーバ20の制御部21が、記憶部24に格納された特定のプログラムを読み出して実行することにより、無人航空機5から取得したこれらの情報並びに管理サーバ20の記憶部24に格納された地図情報、水田情報、水路情報および堰板情報に基づき、映像内の各水田F1ないしF7の位置、水路3,6の位置および堰板M1,M2、S1ないしS8の位置を特定し、撮像装置51により撮影された映像に、水田情報と、水路情報と、堰板情報とを合成(反映)し、その合成された映像を端末装置4に送信することにより、端末装置4のディスプレイ40に合成された映像を表示できるように構成されている。端末装置4は、アプリやブラウザ等のソフト28を介して映像を取得することができる。
【0084】
さらに、管理サーバ20の通信部27と、ルータを有する各堰の通信部9とは、インターネット30を介して相互に通信可能に構成されている。
【0085】
端末装置4のディスプレイ40上でソフト28により表示される映像上の引水開始のスイッチ、開放スイッチ15又は遮断スイッチ16が操作されると、その操作信号が端末装置4から管理サーバ20へ送信され、管理サーバ20から各堰の制御装置12へ操作信号が送信されることにより、各堰の開閉状態が変更される。
【0086】
変更後の各堰の開閉状態についての情報(開閉情報)は堰板7の識別情報とともに制御装置12から管理サーバ20へ送信され、その結果、変更後の堰の開閉情報を反映した映像が管理サーバ20から端末装置4へ送信されるよう構成されている。
【0087】
また、端末装置4のディスプレイ40上で水田、堰、水路が選択操作されると、操作信号が端末装置4から管理サーバ20へ送信され、その操作を反映した映像が管理サーバ20から端末装置4に送信されて、ディスプレイ40に受信した映像が表示されるよう構成されている。
【0088】
さらに、本実施態様においては、同じカンパニー(会社、農協等)の複数の管理者が各端末装置4を用いてそれぞれの担当する水田を管理できるよう構成されており、図9に示されるように、端末装置4のディスプレイ40には、他の管理者が担当する水田F6およびF7の位置(輪郭)が自身の管理する水田F1ないしF5とは異なる色の太枠(実際には茶色の太枠)によりディスプレイ40内で強調表示される。
【0089】
加えて、本実施態様においては、権限を有する場合を除き、水田F1ないしF5の管理者は、他の管理者の担当する水田F6およびF7への引水状態の切り換えを行うことができないように構成されている。すなわち、水田F1ないしF5の管理を行う管理者の端末装置4によっては、水路3上であって、水田F6又はF7への水口に配置された堰S8、堰S7の開閉操作が行えない。
【0090】
一方、本実施態様においては、端末装置4のディスプレイ40上で、自身が管理を担当する水田の中から任意の水田、たとえば水田F2を押圧操作した際に、図9に示されるメニューが表示されるように構成されており、管理者は、メニューに表示される「水路確認」「引水開始」「品種等表示」「ドローン」の各スイッチを押圧操作することができる。
【0091】
「引水開始」のスイッチは、前記実施態様における引水開始スイッチ13と同一の機能を有するスイッチであり、「引水開始」が押圧されると、水田F2への引水が開始される。
【0092】
「品種等表示」が押圧操作された場合には、前記実施態様の図4に示された、作物の種類、品種、作付け日並びに係る水田F2の面積の情報が吹き出し内に表示される。
【0093】
「ドローン」のスイッチは、選択された水田(たとえばF2)まで無人航空機5を飛行させるスイッチであり、「ドローン」のスイッチが押圧操作されると、管理サーバ20に予め入力された水田F2の位置情報が無人航空機5へ送信され、選択された水田F2のすぐ上方の位置へ飛んだ無人航空機5の撮像装置51により撮影される水田F2のクローズアップ映像(ライブの映像)がディスプレイ40に表示される。
【0094】
無人航空機5は水田F2の上方の一か所に停留するのではなく、水田F2の上方を、水田F2全体にわたって、くまなく、一筆書きのように(上空から見て)つづら折り状に自動で飛行するように構成されている。
【0095】
ここで、管理サーバ20は、各水田F1ないしF7について「ドローン」のスイッチが押圧操作されたときに無人航空機5が各水田の全体を飛行する飛行ルートを予め算出し、記憶部24に飛行ルートの情報を格納しており、任意の水田、たとえば水田F2について「ドローン」のスイッチが操作されると、水田F2についての飛行ルートの情報を読み出し、インターネット30、伝送装置55および送信機54を介して無人航空機5に情報を送信する。
【0096】
管理サーバ20から飛行ルートの情報を受信すると、無人航空機5の制御部56は、GNSS受信機50により取得された機体5の位置がこの飛行ルートに沿うように、各ローター31の回転数を制御し、無人航空機5が水田F2上を上空から見てつづら折り状に一筆書きで移動するように飛行させる。
【0097】
したがって、管理者は、「ドローン」のスイッチを押圧操作することにより、自身が担当する水田内の作物の1株1株の状態を、ディスプレイ40上で確認することができる(図10参照)ので、水田内の各株の様子を見て、田面水の水位の調整に生かすことができる。
【0098】
また、上空から見てつづら折り状に飛行する間に、端末装置4に表示される圃場の任意の1点がタッチ(タップ操作)されると、無人航空機5がタッチされた場所に停留するように構成されており、管理者は、ディスプレイ40上に表示される水田(たとえばF2)の気になるところを詳細に確認することができる。
【0099】
本実施態様においては、無人航空機5はプロポと呼ばれる送信機54により操縦可能に構成されており、無人航空機5の撮像装置51により撮影された映像は、近距離無線通信により送信機54へ送信された後に、送信機54から伝送装置55を用いて、インターネット30を介して管理サーバ20に送信される。
【0100】
一方、各堰の制御装置12は、堰板駆動モータ8を駆動して開放状態から遮断状態へ、又は遮断状態から開放状態へ切り換える度に、堰板7の識別情報とともに、堰板7の開閉情報をインターネット30を介して管理サーバ20に送信し、管理サーバ20は、受信した各堰板の開閉情報を記憶部24に格納するよう構成されている。
【0101】
以上の点を除き、本実施態様にかかる水田引水管理システム1は、図1ないし図7に示された前記実施態様と同様に構成されている。なお、任意の水田、たとえば水田F2を押圧操作した際に、図9に示されるメニューが表示される構成や、「ドローン」のスイッチが押圧操作されたときの上記の構成は、図1ないし図7に示された前記実施態様に適用してもよい。
【0102】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0103】
たとえば、図1ないし図10に示された各実施態様においては、端末装置4は、タブレット型の端末により構成されているが、図11(a)に示されるヘッドマウントディスプレイや、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ等により構成してもよい。
【0104】
端末装置をヘッドマウントディスプレイ(HMD)により構成する場合には、頭の動き(頭の回転や傾き)をセンサにより検知し、管理者の頭の動きに合わせて、第一、第二の角度調整モータの駆動により撮像装置の向きを変更するよう構成することにより、管理者が頭を動かすと、それに合わせてHMDに映し出される景色も動かすことができる。
【0105】
この場合、図11(b)に示される操作レバー19により無人航空機の操縦が行えるよう構成することが望ましく、たとえば、操作レバー19の前後操作で無人航空機5を前後に飛行させてHMD上の仮想空間内で視点を前後に動かし、操作レバー19の左右操作で無人航空機5を方向転換させてHMD上の仮想空間内で旋回し、操作レバー19に設けられたスイッチ29の押圧操作で無人航空機5を上下させてHMD上の仮想空間内で視点を上下できるよう構成することにより、直感的に視点を操作し、水田の状況をより容易に把握することができる。
【0106】
さらに、図1ないし図10に示された各実施態様においては、水路3又は6上であって、各圃場F1ないしF7の水口の部分に設けられた堰はそれぞれ、制御装置、堰板、モータおよび通信部を備えているが、各圃場F1ないしF5の田面水の水位を検出する水位センサを別途設け、水位センサにより検出される各圃場F1ないしF5の水位情報を端末装置又は管理サーバ20に送信し、引水中に水位が所定の水位になった時点で、引水を自動的に終了するように構成してもよい。
【0107】
また、図1ないし図10に示された各実施態様においては、水路3、6の遮断手段として堰板が用いられているが、遮断手段として堰板を用いることは必ずしも必要でない。したがって、たとえば、電磁弁等の弁により水路を開閉するように構成してもよく、この場合には、弁による水路の開閉状態が制御装置により制御されることとなる。
【0108】
さらに、図1ないし図10に示された各実施態様においては、ディスプレイ40上で選択操作された水田への引水のため、開放状態にあることが必要な堰に加え、その近傍の堰も表示するよう構成されているが、選択された水田に引水するまでの水路上に配置された堰(選択操作された水田への引水のため、開放状態にあることが必要な堰)のみの位置やその堰による水路の開閉状態を表示するよう構成してもよい。
【0109】
また、図1ないし図10に示された各実施態様においては、無人航空機5に搭載された撮像装置51により水田、水路および堰を含む景色の映像を取得可能に構成されているが、定点カメラや、画角を変更可能なネットワークカメラにより映像を取得し、端末装置4又は管理サーバ20上でその映像に水田や堰、水路等の情報を合成する(オーバーレイ表示する)ように構成してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 水田引水管理システム
2 川
3 水路
4 端末装置
5 無人航空機
6 水路
7 堰板
8 堰板駆動モータ
9 通信部
10 分岐地点
11 分岐地点
12 制御装置
13 引水開始スイッチ
14 バーグラフ
15 開放スイッチ
16 遮断スイッチ
17 処理部
18 記憶部
19 操作レバー
20 管理サーバ
21 制御部
23 処理部
24 記憶部
25 入力部
26 表示部
27 通信部
28 ソフト
29 スイッチ
30 インターネット
40 ディスプレイ
41 アナログスティック
42 アナログスティック
43 制御部
44 処理部
45 記憶部
46 通信部
47 表示・入力部
48 制御部
50 GNSS受信機
51 撮像装置
52 第一の角度調整モータ
53 第二の角度調整モータ
54 送信機
55 伝送装置
60 温度センサ
F1 水田
F2 水田
F3 水田
F4 水田
F5 水田
F6 水田
F7 水田
M1 堰
M2 堰
S1 堰
S2 堰
S3 堰
S4 堰
S5 堰
S6 堰
S7 堰
S8 堰
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11