(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103468
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250702BHJP
A01B 33/02 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
A01B69/00 303
A01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220881
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】富久 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正男
(72)【発明者】
【氏名】原 竜太郎
【テーマコード(参考)】
2B033
2B043
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AB11
2B033CA01
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA01
2B043BA07
2B043BB03
2B043DA07
2B043DA17
2B043DB05
2B043DB21
2B043DC01
2B043ED01
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】
作業者が機体に追従して歩く必要が無い、遠隔操作が可能な歩行型管理機を提供する。
【解決手段】
走行装置と、対地作業装置を備え、通信機能を有する制御装置80を設け、制御装置80を操縦装置81と通信可能に構成し、操縦装置81と制御装置80が通信状態でないとき、制御装置80は、走行装置と対地作業装置への伝動を遮断する構成とすると共に、走行装置に駆動力を伝動する走行駆動源15と、対地作業装置に駆動力を伝動する作業駆動源17を設け、走行駆動源15から走行装置5への駆動力の伝動を入切する走行クラッチ55と、作業駆動源17から対地作業装置への駆動力の伝動を入切する作業伝動部材を設け、操縦装置81と制御装置80が通信状態でないとき、制御装置80は、走行クラッチ55と作業伝動部材が伝動を遮断する状態に切り替える構成とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に圃場を走行する走行装置(5)と、圃場の耕耘や畝立等を行う対地作業装置(9)を備える歩行型管理機において、
機体に通信機能を有する制御装置(80)を設け、該制御装置(80)を前記走行装置(5)と対地作業装置(9)の操作を行う操縦装置(81)と通信可能に構成し、
該操縦装置(81)と制御装置(80)が通信状態でないとき、制御装置(80)は、前記走行装置(5)と対地作業装置(9)への伝動を遮断することを特徴とする歩行型管理機。
【請求項2】
前記走行装置(5)に駆動力を伝動する走行駆動源(15)と、前記対地作業装置(9)に駆動力を伝動する作業駆動源(17)を設け、
前記走行駆動源(15)から走行装置(5)への駆動力の伝動を入切する走行クラッチ(55)と、前記作業駆動源(17)から対地作業装置(9)への駆動力の伝動を入切する作業伝動部材(64,65)を設け、
前記操縦装置(81)と制御装置(80)が通信状態でないとき、前記制御装置(80)は、走行クラッチ(55)と作業伝動部材(64,65)が伝動を遮断する状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記操縦装置(81)は、前記走行伝動源(15)の出力を操作する走行出力操作部材(92,93)と、前記作業駆動源(17)の出力を操作する作業出力操作部材(100)を設け、
前記操縦装置(81)と制御装置(80)の通信状態が途絶したとき、前記制御装置(80)は、前記走行出力操作部材(92,93)及び作業出力操作部材(100)の設定出力を記録し、
通信状態が復帰したときには、前記制御装置(80)に記録された設定出力を上限として、段階的に前記走行伝動源(15)及び作業駆動源(17)の出力を上昇させることを特徴とする請求項2に記載の歩行型管理機。
【請求項4】
前記操縦装置(81)は、機体を前進させる前進部材(94)、後進させる後進部材(95)、左側の前記走行装置(5)への伝動の強弱を操作する左操作部材(96)及び右側の前記走行装置(5)への伝動の強弱を操作する右操作部材(97)を設け、
該前進部材(94)または後進部材(95)が操作されると左操作部材(96)及び右操作部材(97)の操作を受付可能に切り替わり、
該左操作部材(96)と右操作部材(97)を異なるタイミングで断続的に操作することで進行方向の左右調節が行われ、
該左操作部材(96)と右操作部材(97)のうち、どちらか一方を連続的に操作することで左右方向の旋回走行が行われ、
該左操作部材(96)と右操作部材(97)を同時に操作することで走行の一時停止が行われることを特徴とする請求項2または3に記載の歩行型管理機。
【請求項5】
バランスウェイト(84)を前後移動させて機体の前後バランスを調節する傾動ウェイト機構(83)を設け、該バランスウェイト(84)を前後移動させるバランス調節アクチュエータ(88)を設け、前記バランスウェイト(84)の前後位置を検出する位置検出部材(89)を設け、
前記制御装置(80)は、前記操縦装置(81)との通信状態が途絶したとき、該位置検出部材(89)が検出する前記バランスウェイト(84)の位置が設定位置より機体前側であるときは、前記バランス調節アクチュエータ(88)を作動させ、バランスウェイト(84)を設定位置まで後方に移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が遠隔操作しながら耕耘等の対地作業を行う歩行型管理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に左右の走行輪を有すると共に、機体後部に圃場面を耕耘する耕耘装置を備え、作業者が後側上方に伸びる操縦ハンドルで進行方向の調節や旋回操作、走行速度や耕耘装置の作業高さ等の操縦を行う歩行型管理機が存在する。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歩行型管理機は、作業者が機体の後方について歩き、逐次操縦操作を行う必要があり、作業者に大きな労力がかかるものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業者が機体に追従して歩く必要が無い、遠隔操作が可能な歩行型管理機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、機体に圃場を走行する走行装置(5)と、圃場の耕耘や畝立等を行う対地作業装置(9)を備える歩行型管理機において、機体に通信機能を有する制御装置(80)を設け、該制御装置(80)を前記走行装置(5)と対地作業装置(9)の操作を行う操縦装置(81)と通信可能に構成し、該操縦装置(81)と制御装置(80)が通信状態でないとき、制御装置(80)は、前記走行装置(5)と対地作業装置(9)への伝動を遮断することを特徴とする歩行型管理機である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記走行装置(5)に駆動力を伝動する走行駆動源(15)と、前記対地作業装置(9)に駆動力を伝動する作業駆動源(17)を設け、前記走行駆動源(15)から走行装置(5)への駆動力の伝動を入切する走行クラッチ(55)と、前記作業駆動源(17)から対地作業装置(9)への駆動力の伝動を入切する作業伝動部材(64,65)を設け、前記操縦装置(81)と制御装置(80)が通信状態でないとき、前記制御装置(80)は、走行クラッチ(55)と作業伝動部材(64,65)が伝動を遮断する状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の歩行型管理機である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記操縦装置(81)は、前記走行伝動源(15)の出力を操作する走行出力操作部材(92,93)と、前記作業駆動源(17)の出力を操作する作業出力操作部材(100)を設け、前記操縦装置(81)と制御装置(80)の通信状態が途絶したとき、前記制御装置(80)は、前記走行出力操作部材(92,93)及び作業出力操作部材(100)の設定出力を記録し、通信状態が復帰したときには、前記制御装置(80)に記録された設定出力を上限として、段階的に前記走行伝動源(15)及び作業駆動源(17)の出力を上昇させることを特徴とする請求項2に記載の歩行型管理機である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記操縦装置(81)は、機体を前進させる前進部材(94)、後進させる後進部材(95)、左側の前記走行装置(5)への伝動の強弱を操作する左操作部材(96)及び右側の前記走行装置(5)への伝動の強弱を操作する右操作部材(97)を設け、該前進部材(94)または後進部材(95)が操作されると左操作部材(96)及び右操作部材(97)の操作を受付可能に切り替わり、該左操作部材(96)と右操作部材(97)を異なるタイミングで断続的に操作することで進行方向の左右調節が行われ、該左操作部材(96)と右操作部材(97)のうち、どちらか一方を連続的に操作することで左右方向の旋回走行が行われ、該左操作部材(96)と右操作部材(97)を同時に操作することで走行の一時停止が行われることを特徴とする請求項2または3に記載の歩行型管理機である。
【0010】
請求項5記載の発明は、バランスウェイト(84)を前後移動させて機体の前後バランスを調節する傾動ウェイト機構(83)を設け、該バランスウェイト(84)を前後移動させるバランス調節アクチュエータ(88)を設け、前記バランスウェイト(84)の前後位置を検出する位置検出部材(89)を設け、前記制御装置(80)は、前記操縦装置(81)との通信状態が途絶したとき、該位置検出部材(89)が検出する前記バランスウェイト(84)の位置が設定位置より機体前側であるときは、前記バランス調節アクチュエータ(88)を作動させ、バランスウェイト(84)を設定位置まで後方に移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の歩行型管理機である。
【0011】
請求項1記載の発明によれば、通信が途絶して操縦装置(81)の操作が受け付けられなくなっても、自動的に走行装置(5)と対地作業装置(9)への伝動が遮断されるので、作業者が機体を停止させるために移動する必要が無く、労力の軽減が図られる。
【0012】
また、耕耘すべきでない場所が耕耘され、作業ルートの変更が生じることや、段差などに衝突して転倒して破損することが防止される。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行クラッチ(55)と作業伝動部材(64,65)により走行駆動源(15)及び作業駆動源(17)の駆動力の伝動が遮断されるので、走行駆動源(15)及び作業駆動源(17)が停止しない場合でも走行や対地作業を確実に停止させることができる。
【0014】
これにより、通信が復旧しないとき、機体を追って止めに行くまでの距離を抑えることができると共に、停止時に対地作業装置(9)が作動していないので、作業者が安全に機体に近付くことができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、通信が途絶した直後に操縦装置(81)による走行出力操作部材(92,93)及び作業出力操作部材(100)の設定出力を記録することにより、通信状態が復旧した際に操縦装置(81)で設定出力を再設定する必要がなくなり、不必要な操作が省略されて労力の軽減が図られる。
【0016】
また、走行伝動源(15)及び作業駆動源(17)の出力を、記録された設定出力を上限として段階的に上昇させることにより、走行装置(5)だけでなく対地作業装置(9)の接地反力による急発進を防止でき、機体の転倒や対地作業装置(9)の作業精度の低下が防止される。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項2または3記載の発明の効果に加えて、前進部材(94)または後進部材(95)が操作されていないと左操作部材(96)及び右操作部材(97)の操作が受け付けられないことにより、前進または後進中のみ、直進方向への進路調節操作が可能になる。
【0018】
また、左操作部材(96)と右操作部材(97)の操作は、タイミングが異なって断続的に行い、左右の走行装置(5)への伝動の強弱を一致させないことにより、左右方向への微量の移動を実行して直進作業走行が実現でき、対地作業装置(9)の作業精度が向上する。
【0019】
また、左操作部材(96)と右操作部材(97)のどちらか一方を連続操作し、左右一方の走行装置(5)への伝動が遮断されることで、機体を対応する方向に旋回走行させることができ、作業者が操作することなく次の作業位置への移動が可能になり、労力の軽減が図られる。
【0020】
また、左操作部材(96)と右操作部材(97)を同時に操作すると走行を一時停止させることができるので、必要な時に機体の走行を停止させることができ、作業精度の向上が図られる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか1項の効果に加えて、傾動ウェイト機構(83)の操作により機体の前後バランスを変えて前後傾斜角度を調節し、作業者が直接機体を操作することなく対地作業装置(9)の作業高さを調節することができ、作業者の労力の軽減と作業精度の向上を図ることができる。
【0022】
また、制御装置(80)と操縦装置(81)の通信が途絶したとき、バランスウェイト(84)が設定位置よりも機体前側に移動されていると位置検出部材(89)が検出すると、バランスウェイト(84)を設定位置まで自動的に後退することにより、前後バランスが前側に偏った状態で停車することを防止し、機体が転倒して破損することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】操縦ハンドルの第1ステー部材~第5ステー部材の斜視図
【
図5】走行電動モータを用いた走行伝動系統を示す模式図
【
図6】別構成例の走行電動モータを用いた走行伝動系統を示す模式図
【
図7】作業電動モータを用いた耕耘装置への伝動系統を示す模式図
【
図9】走行伝動系、作業伝動系及び傾動調節の制御に関する部品を示すブロック図
【
図10】傾動ウェイト機構を備える歩行型管理機の側面図
【
図11】機体傾斜時の傾動ウェイト機構の作動及び作業伝動の遮断制御を示すフローチャート
【
図14】操縦ハンドルの旋回を示す歩行型管理機の側面図
【
図15】(a)延長排気口を装着した歩行型管理機の要部側面図、(b)排気取付ステーの側面図、(c)排気取付ステーの正面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を歩行型管理機に適用した例を図面に基づいて説明する。なお、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後というが、本発明の構成を限定するものではない。
【0025】
図1に示すように、歩行型管理機1は、機体フレーム2の後部に固設した伝動ケース3下部に設けた左右車軸5a,5aに走行装置としての左右車輪5,5を装着し、伝動ケース3上部に基部が固定された作業用伝動ケース6後側下部に耕耘軸61を突設して耕耘爪を設けて耕耘装置9を構成する。
【0026】
耕耘装置9の上面はロータリカバー10で覆う構成であり、後面は上下回動自在の後部カバー11で覆う構成としている。
【0027】
耕耘装置9の後端側には支持柱12を介して尾輪を上下高さ調節自在に設けている。
【0028】
機体フレーム2には、前側からバッテリ14、左右の車輪5,5に駆動力を供給する走行電動モータ15、予備バッテリ16aを装備した制御装置80を設けている。
【0029】
図5に示すとおり、走行電動モータ15の駆動力は、出力軸に設ける駆動プーリ51と、伝動ケース3内の走行出力軸52に設ける従動プーリ53に巻回する走行伝動ベルト54を介して左右の車輪5,5の車軸5a,5aに各々伝動される。
【0030】
左右の車軸5a,5aは、走行出力軸52の左右端部に配置され、電磁クラッチ55,55を介して駆動力の伝動が入切される構成とする。さらに、走行車軸52の左右両側で、且つ左右の電磁クラッチ55,55よりも車輪5,5側(機体外側)には、ブレーキ56,56を各々設ける。このブレーキ56は、例えばディスクブレーキを用いるのであれば、ブレーキモータ57により巻き取り、巻き戻しされるブレーキワイヤ58により、ブレーキパッド(図示省略)が作用状態と非作用状態に切り替えられるものとすると、ブレーキワイヤ58を機体後部まで伸ばす必要が無く、配索が容易になる。
【0031】
上記構成により、進行方向の調整や走行停止及び走行再開の際、従来のクラッチレバー操作ではなく、進行方向を操作するボタンや、走行伝動を入切するスイッチの操作が可能になるので、進行方向の調整や走行停止及び走行再開を従来よりもラグ無しで行うことができる。
【0032】
また、遠隔操作が可能であれば、機体に触れずに操作が可能であるので、歩行型管理機1に追従する必要がなくなり、作業能率が向上する。
【0033】
なお、作業者が歩行型管理機1に追従しないときは、機体姿勢の安定性を高めるべく、車輪5,5を、走行クローラに置き替えるとよい。
【0034】
なお、
図6に示すとおり、走行出力軸52は用いず、走行電動モータ15を左右一対設け、車軸5a,5aに従動プーリ53,53を各々設けて、走行電動モータ15,15の出力制御のみでブレーキ及び走行伝動停止を行える構成としてもよい。この構成では、走行電動モータ15,15やバッテリ14の配置スペースが多少広く必要になるが、その分電磁クラッチ55,55やブレーキ56,56等が不要となるので、構成の簡略化が図られる。
【0035】
上記の走行電動モータ15は正逆転モータを用い、逆回転させることで歩行型管理機1を後進走行させる構成とする。なお、後進操作されたときは、後述する作業電動モータ17から耕耘装置9の駆動力の伝動を遮断すると共に、耕耘装置9が作業位置から上方に離間する構成とすると、耕耘装置9が圃場面を荒らすことや、作業とは逆方向の負荷が加わり破損することを防止できる。
【0036】
バッテリ14は、機体への脱着が容易に行えるワンタッチ着脱式の固定具にて装着されており、また、バッテリソケットを装備している。
【0037】
従って、歩行型管理機1をトラック等に積載して圃場間移動する際にバッテリ14を機体から取り外してトラック等のシガーソケットからバッテリソケットにて充電できる。
【0038】
また、バッテリ14は、車軸管理機、管理機及び耕耘機に共用できる構造になっており、機体の必要電力に応じて1個または2個以上の複数個を搭載して、共用化によりコスト削減を図っている。
【0039】
また、作業用伝動ケース6の前側部には、耕耘装置9の耕耘爪を駆動する電動モータよりなる作業電動モータ17を設けている。この作業電動モータ17は、耕耘装置9の作業方向の回転に対応する一方向モータであり、且つ逆回転方向の力が加わる際には空回りするラチェット機構を備えるものを用い、土中の石との接触時等に過負荷が加わった際に空回りして負荷による破損を防止する構成とすることが望ましい。
【0040】
なお、高い馬力で耕耘装置9を作動させて土質の硬い圃場に対応させる耕耘機や、稼働時間を長くする耕耘機においては、作業電動モータ17をエンジンに置き替え、走行系統は電動、耕耘作業系統は内燃機関としたハイブリッド型の構成としてもよい。このとき、バッテリ14は走行電動モータ15のみ電力を消費するので、小型化してエンジンの積載スペースを確保する。
【0041】
図7に示すとおり、作業電動モータ17の出力軸には作業駆動プーリ60を設け、この作業駆動プーリ60と耕耘装置9の耕耘回転軸61に設ける作業従動プーリ62に作業伝動ベルト63を巻回して駆動力を伝動する構成とする。さらに、耕耘の必要無い場所で耕耘装置9への伝動を入切すべく、回動可能なテンションアーム64の先端にテンションローラ65を設け、このテンションローラ65に作業伝動ベルト63を押圧させているときに駆動力が伝動される構成とする。
【0042】
なお、テンションアーム64は、ソレノイドまたは電動モータで構成するテンションアクチュエータ66により、伝動状態と非伝動状態に回動される構成とすると、耕耘装置9の入切操作が容易に行える。
【0043】
上記構成により、走行と耕耘作業の両方を電動化することができるので、騒音や機体振動の軽減が図られる。
【0044】
また、排気ガスが排出されないので、特にビニールハウス等の閉所で作業を行う際、作業者が不快感を覚えにくくなり、作業精度の低下や、作業者の疲労の軽減が図られる。
【0045】
また、遠隔操作が可能であれば、機体に触れずに操作が可能であるので、歩行型管理機1に追従する必要がなくなり、作業能率が向上する。
【0046】
図8に示すとおり、機体フレーム2には、機体が所定値(例:約15度)を超えて前傾し、機体が転倒することを防止する、左右の転倒防止輪70,70を機体前側に向けて配置する。左右の転倒防止輪70,70は、車輪5,5よりも小径とし、さらに、旋回走行時等の妨げにならないよう、前傾時以外は圃場面から上方に離間する位置に配置するものとする。
【0047】
具体的には、機体フレーム2の前側左右両側に丸パイプまたは角パイプで構成する中空の取付ステー71,71を設け、この取付ステー71,71の内部に装着シャフト72,72を前後方向に移動可能に配置し、この装着シャフト72,72の前側端部に転倒防止輪70,70を回転可能に設ける。
【0048】
そして、装着シャフト72,72の後端部に、装着シャフト72,72を機体前側に押し出すサスペンションスプリング73,73を各々設けて、転倒防止輪70,70が接地するときの衝撃を軽減する構成とする。
【0049】
これにより、圃場の凹凸や操作ミスにより歩行型管理機1が大きく前傾しかけても、転倒防止輪70,70が前傾を阻止するので、転倒により機体が破損することや、圃場面を荒らすことを防止できる。
【0050】
また、サスペンションスプリング73,73で設置時の衝撃を軽減することにより、転倒防止輪70,70を装着する装着シャフト72,72が曲がる等の破損を防止できる。
【0051】
なお、転倒防止輪70,70は、回転可能ではあるが接地圧が強くかからないと回転しない取付方とすると、前傾時に回転してそのまま転倒することを防止できる。また、転倒防止輪70,70を回転不能に装着し、構成素材や内装する空気の弾性で衝撃を吸収しつつ前傾を抑える構成としてもよい。
【0052】
作業用伝動ケース6前部に基部が固定されたループ状の操縦ハンドル18は、後方斜め上方に向けて延びている。
【0053】
ループ状の操縦ハンドル18上部の内側には、中央部にモニタ19を搭載するモニタステー20が固定され、右側には操作カバー21が固定されている。
【0054】
図4に示すように、モニタステー20は、ステンレス製の平板にて形成された第1ステー部材22、第2ステー部材23、第3ステー部材24、第4ステー部材25及び第5ステー部材26にて構成される。
【0055】
第1ステー部材22と第2ステー部材23に3つの第3ステー部材24を等間隔に配置してその両側を溶接固定して、第1ステー部材22と第2ステー部材23を縦辺として3つの第3ステー部材24を横辺として枠状のステーを構成する。
【0056】
第1ステー部材22は、モニタステー20をループ状の操縦ハンドル18内側に固定した時に、操縦ハンドル18内側の右側に設けられた操作カバー21を迂回するように前部が右外向きのL型に構成された右前部組付け部22aと後部が上方に折れ曲がったクランク状とした後部組付け部22bに各々取付け孔22cが設けられている。
【0057】
また、第1ステー部材22の中途部に上方に折れ曲がった右部受面22dを設け、後部の上方に折れ曲がったクランク状部に後部受面22eを設けている。
【0058】
第2ステー部材23は、モニタステー20をループ状の操縦ハンドル18内側に固定した時に、前部が左外向きのL型に構成された左前部組付け部23aに取付け孔23bが設けられている。
【0059】
また、第2ステー部材23の中途部には、外側に延びる凸辺23cを設け、該凸辺23cに取付け孔23dが設けられている。
【0060】
第3ステー部材24は、直線状で中途部に取付け孔24aが設けられている。
【0061】
第4ステー部材25は、L型に構成され取付け片25aと受面25bを有し、取付け片25aに2つの平行な取付け長孔25cが設けられている。
【0062】
第5ステー部材26は、中途部に円弧状部26aを設け、その両端にナット付き取付け孔26bが設けられている。なお、円弧状部26aは、鉄製の丸パイプ材よりなる操縦ハンドル18に外篏する円弧である。
【0063】
従って、モニタステー20は、第1ステー部材22と第2ステー部材23と3つの第3ステー部材24にて構成される枠状部にモニタ19を搭載することができる。
【0064】
また、モニタステー20は、第1ステー部材22と第2ステー部材23と3つの第3ステー部材24にて構成される枠状部から第1ステー部材22の右前部組付け部22aと後部組付け部22b及び第2ステー部材23の左前部組付け部23aが突出し、枠状部よりも高い位置になる構成となっている。
【0065】
次に、
図1~
図3に基づいて、モニタステー20をループ状の操縦ハンドル18の内側に固定し、モニタステー20にモニタ19を搭載する詳細構成を説明する。
【0066】
モニタステー20をループ状の操縦ハンドル18の内側に位置させて、後部組付け部22bをループ状の操縦ハンドル18後部の作業者が把持するグリップ部である左右方向に延びる部分の下面に接当させ、操縦ハンドル18上方から第5ステー部材26の円弧状部26aを外篏させて後部組付け部22b下面側から取付け孔22cを挿通させてボルトを第5ステー部材26両端のナット付き取付け孔26bに通して締付けると、モニタステー20の後部組付け部22bがループ状の操縦ハンドル18後部の左右方向に延びる部分に固定される。
【0067】
なお、第5ステー部材26の円弧状部26a内面と操縦ハンドル18の間にはゴム製のインシュレータを挟み込んで固定する。
【0068】
そして、右前部組付け部22a及び左前部組付け部23aをループ状の操縦ハンドル18左右部の前後方向に延びる部分の上面に接当させ、操縦ハンドル18下方から第5ステー部材26の円弧状部26aを外篏させて右前部組付け部22a及び左前部組付け部23aの上面側から取付け孔22c・取付け孔23bを挿通させてボルトを第5ステー部材26両端のナット付き取付け孔26bに通して締付けると、モニタステー20の右前部組付け部22a及び左前部組付け部23aがループ状の操縦ハンドル18左右部の前後方向に延びる部分に各々固定される。
【0069】
なお、第5ステー部材26の円弧状部26a内面と操縦ハンドル18の間にはゴム製のインシュレータを挟み込んで固定する。
【0070】
従って、モニタステー20は、ループ状の操縦ハンドル18の内側に配置して、後部組付け部22bを操縦ハンドル18後部の左右方向に延びる部分に固定し、右前部組付け部22a及び左前部組付け部23aをループ状の操縦ハンドル18左右部の前後方向に延びる部分に固定したので、ループ状の操縦ハンドル18内側の空きスペースを有効に活用することができると共に、後部及び左右前部の少ない取付支持箇所で強固に支持させることができる。
【0071】
そして、モニタステー20の第2ステー部材23の凸辺23c上に第4ステー部材25の取付け片25aを載せて、ボルトを取付け片25aの2つの平行な取付け長孔25cの各々に上方から挿し込んで凸辺23cの取付け孔23dを通して下方からナットを螺合させて締付ける。
【0072】
同様に、モニタステー20の最前部の第3ステー部材24上に第4ステー部材25の取付け片25aを載せて、ボルトを取付け片25aの2つの平行な取付け長孔25cの各々に上方から挿し込んで第3ステー部材24の取付け孔24aを通して下方からナットを螺合させて締付ける。
【0073】
そして、モニタステー20の枠状部の上にモニタ19を載置し、モニタ19右側面及び後側面を第1ステー部材22の右部受面22d及び後部受面22eに各々接当させて、モニタ19左側面及び前側面に各第4ステー部材25の各受面25bが接当するように各第4ステー部材25を取付け長孔25cにて位置調節してボルト・ナットにて各第4ステー部材25を固定すると、モニタ19をモニタステー20上に搭載できる。
【0074】
なお、モニタ19を載置するモニタステー20の枠状部の上面、第1ステー部材22の右部受面22d及び後部受面22e及び第4ステー部材25の受面25bには、ゴム等よりなるクッション材を添着してモニタ19に傷がつかないようにしている。
【0075】
また、第4ステー部材25は、受面25bの高さが異なるものを用意しておけば、種類により高さが異なるモニタ19にも対応できる。
【0076】
モニタ19は、専用モニタにしても良いし、汎用のタブレットをモニタとして使用しても良く、制御装置16と通信し(または、通信ケーブルで接続し)、バッテリ14及び予備バッテリ16aの蓄電量と温度や走行電動モータ15及び作業電動モータ17の作動状態や作業継続時間等を表示する。
【0077】
従って、モニタ19を設けることにより、機体各部の動作を視覚情報として表示することができるので、動作の適否や作業継続時間などが判断しやすくなる。
【0078】
ループ状の操縦ハンドル18後部の上側には、左右車輪5,5を駆動する走行電動モータ15及び耕耘装置9を駆動する作業電動モータ17を作動及び停止させる操作レバーとしてのデッドマンレバー30が設けられている。
【0079】
なお、デッドマンレバー30は、左右車輪5,5を駆動する走行電動モータ15または耕耘装置9を駆動する作業電動モータ17の何れか一方を作動及び停止する構成でも良い。
【0080】
デッドマンレバー30は、一般的な管理機のデッドマンクラッチレバーと同様の働きをし、ループ状の操縦ハンドル18後部のグリップ部である左右方向に延びる部分の上方に沿って設けてあり、左右前部が操縦ハンドル18左右部の前後方向に延びる部分に左右方向の枢支軸30aにて枢支され、バネにて後部が上方に向けて付勢された状態で設けられている。
【0081】
そして、左右枢支軸30aの何れかにリミットスイッチが設けられており、ループ状の操縦ハンドル18後部のグリップ部を把持している作業者がデッドマンレバー30をグリップ部と共に把持してバネの付勢力に抗して下方に向けて操作すると、リミットスイッチがオンになり、制御装置16がスイッチS1及びS2をオンにして走行電動モータ15及び作業電動モータ17を作動させて、左右車輪5,5が駆動回転して機体は前進しながら耕耘装置9が駆動されて耕耘作業を行なう。
【0082】
そして、ループ状の操縦ハンドル18後部のグリップ部を把持している作業者がデッドマンレバー30を離すと、バネの付勢力によりデッドマンレバー30が上方に向けて回動してリミットスイッチがオフになり、制御装置16がスイッチS1及びS2をオフにして走行電動モータ15及び作業電動モータ17を停止させて、機体は停止し耕耘装置9も停止する。
【0083】
従って、作業者がデッドマンレバー30をグリップ部と共に把持してバネの付勢力に抗して下方に向けて操作して前進しながら耕耘作業を行なっている際に、作業者が転倒等の不測の事態になっても、グリップ部から手が離れるので、デッドマンレバー30が上方に向けて回動してリミットスイッチがオフになり、制御装置16がスイッチS1及びS2をオフにして走行電動モータ15及び作業電動モータ17を停止させて機体の進行及び耕耘装置9が停止し安全である。
【0084】
また、デッドマンレバー30後部は、ループ状の操縦ハンドル18後部のグリップ部に沿って左右方向に設けられているが、デッドマンレバー30後部の右側部は、モニタステー20の後部組付け部22bが操縦ハンドル18後部の左右方向に延びる部分に固定される部位を避けるように前方回避部30bとなっている。
【0085】
従って、デッドマンレバー30の右側部(後部組付け部22bが左側にあれば左側部、即ち、左右一側部)に前方回避部30bを設けたので、モニタステー20の後部組付け部22bにデッドマンレバー30が干渉することを防止できる。
【0086】
また、モニタステー20の後部組付け部22bをループ状の操縦ハンドル18後部の下面側に設けたので、デッドマンレバー30との干渉が更に防止できる。
【0087】
従来、歩行型管理機1による作業は、作業者が機体後部を歩いて追従し、進行方向の修正や耕耘装置9による耕耘作業の入切、畝端での旋回操作等を行っており、作業者は相応の労力を費やす必要がある。
【0088】
この問題を解消すべく、歩行型管理機1に、走行電動モータ15、作業電動モータ17、左右の電磁クラッチ55,55、ブレーキモータ57,及びテンションアクチュエータ66等の動作制御を行う制御装置80を設けると共に、この制御装置80と、歩行型耕運機1から離間する位置で作業者が操縦を行う操縦パッド81の通信を成立させる無線通信装置を用いるものとする。
【0089】
無線通信装置は、使用開始時に歩行型管理機1側と、
図12に示す操縦パッド81側でペアリングを行い、他の操縦パッド81の操縦信号が混信しない状態で使用する。歩行型管理機1側は、キーオンによりペアリング信号を受け付ける状態になり、操縦パッド81を作動させてペアリングボタン82を操作することで、ペアリングが実行される構成とする。
【0090】
なお、ペアリングが成立した後、ペアリングボタン82を操作するとペアリングが解除される構成とするが、ペアリングボタン82の操作が誤操作であると、耕耘作業がその場で中断されることになる。
【0091】
これを防止すべく、ペアリングの解除操作は、ペアリングボタン82が一定時間(例:2~3秒)以上連続して操作される、またはごく短時間に一定回数(例:3~5回)以上操作される等、作業者の意識的な操作に基づくものとすることが望ましい。一方、ペアリングを実行するときは、一度のペアリングボタン82の操作で受け付けられるものとする。
【0092】
制御装置80は、ペアリングが成立しているかどうかを常時確認し、ペアリングが成立していないとき、あるいはペアリングが途絶したときには、ブレーキモータ57,57を作動させてブレーキパッドをディスクに噛ませて駐車ブレーキがかかった状態にする。
【0093】
これにより、ペアリングが途絶して操縦パッド81の操作が受け付けられない状態になると、自動的に駐車ブレーキがかかった状態になり走行が停止するので、作業者が歩行型管理機1を追いかけて停止操作させる必要が無く、作業者の労力が軽減されると共に、圃場外に歩行型管理機1が移動し、転倒等により破損することを防止できる。
【0094】
また、停止までの移動中に耕耘装置9が圃場面を荒らすことを防止できるので、修正作業が不要となり、余分な作業時間や労力が不要になる。
【0095】
あるいは、左右の電磁クラッチ55,55を切状態とし、車輪5,5への走行伝動を遮断して停車させる構成としてもよい。
【0096】
上記に加えて、テンションアクチュエータ66を作動させ、テンションアーム64を伝動を遮断する方向に回動させて耕耘装置9の作動を停止させる構成とすると、停止時に同じ場所を耕耘し続けて周囲に土を飛散させることを防止できる。
【0097】
ペアリングが成立していないとき、制御装置80から走行電動モータ15への出力信号は、0/255、即ち停止状態となる数値とし、ペアリング成立時に走行電動モータ15が動き出して急発進することを防止する。また、ペアリングが途絶したときにも出力信号が0/255となることで、ブレーキ56,56や電磁クラッチ55,55だけでなく、駆動源からの駆動力供給も遮断されることにより、確実に停車させることができる。
【0098】
上記に加えて、左右の走行電動モータ15,15を設ける構成でも、出力信号を0/255とし、前進、後進、左右旋回のいずれもできない状態とする。
【0099】
歩行型管理機1を後進させるときや、耕耘深さを浅くするときには、機体を前傾させて後部に設ける耕耘装置9を上方に移動させる必要がある。しかしながら、作業者が遠隔操作するときは、後方から操縦ハンドル18を持ち上げることができない。
【0100】
したがって、
図9、
図10に示すとおり、機体フレーム2の下部に、前後方向に移動可能な傾動ウェイト機構83を設け、この傾動ウェイト機構83のバランスウェイト84の前後位置を変更することにより、重心が変化して機体の前後傾斜角度が変更される構成とする。
【0101】
傾動ウェイト機構83は、機体フレーム2に設ける前後スライドレール85にバランスウェイト84を前後移動可能に支持させ、バランスウェイト84に設けたラック86に噛み合うピニオン87を設けたウェイト移動モータ88を機体後部側に配置して構成する。また、バランスウェイト84の前後中間位置よりも前側には、バランスウェイト84が移動しているか否かを判断する、ストロークセンサやレーザーセンサ等で構成するボーダーセンサ89を設ける。
【0102】
ウェイト移動モータ88は、ペアリングが実行されていないときには作動せず、バランスウェイト84の前後位置を変動させないが、ペアリングが途絶した際に、ボーダーセンサ89がバランスウェイト84の機体前側寄りに移動していると判定していると、バランスウェイト84が機体後側の所定位置まで移動したことをボーダーセンサ89が検出するまでウェイト移動モータ88を作動させる。移動後は、ペアリングが再度実行されるまでは、ウェイト移動モータ88は作動しない。
【0103】
これにより、バランスウェイト84が機体前側寄りに留まった状態で停車し、機体が前傾して倒れて破損したり、圃場面を荒らしたりすることを防止できる。
【0104】
一方で、ペアリング中は操縦パッド81の傾動ダイヤル90を操作することで、バランスウェイト84の前後位置を調整し、歩行型管理機1の前後傾斜角を調節することで、耕耘深さの調節や、後進時に圃場面の上方に耕耘装置9を退避させることが可能になるものとする。
【0105】
上記の傾動ダイヤル90は、言い換えれば耕耘深さ調節ダイヤルである。
【0106】
なお、
図10に示すとおり、歩行型管理機1に傾斜センサ91を設け、前方への傾斜角度が所定値に近付いたり、設定した耕耘深さに適した傾斜角度とは異なる傾斜角度が所定時間連続して検出されたときは、制御装置80がウェイト移動モータ88を作動させ、バランスウェイト84の前後位置を変更して前後方向の傾斜角度を調節し、転倒防止や耕耘深さの適正化を図る構成としてもよい。
【0107】
また、
図11に示すとおり、傾斜センサ91が転倒のおそれがある前傾角度(例:15度)を超えた角度を検出すると、ウェイト移動モータ88を作動させてバランスウェイト84を後方に移動させると共に、作業伝動モータ17の出力を0にする、またはテンションアクチュエータ66を作動させてテンションアーム64を回動させ、作業伝動ベルト63の張力を弱めて駆動力の伝動を遮断する構成とする。
【0108】
これにより、歩行型管理機1の転倒時に、耕耘装置9が回転した状態で圃場面に接触して圃場面を荒らすことを防止すると共に、回転中の耕耘装置9に作業者が接近する状況の発生を防止できる。
【0109】
図12に示すとおり、操縦パッド81には、走行電動モータ15の出力を0から255の多段階に微調整が可能な走行出力ダイヤル92と、走行電動モータ15の出力を設定値に合わせて操作する走行出力ボタン93を設ける。
【0110】
走行出力ボタン93は、操作するごとに設定値が変わるものとし、操縦パッド81のボタンやスイッチの数の増加を抑えるものとする。例えば、操作開始前は走行電動モータ15への出力値0はで、一度目の操作で40%出力の第1低速値102(102/205=0.4)となり、二度目の操作では60%出力の第2低速値153(153/205=0.6)となり、三度目の操作では80%出力の第2高速値204(204/255=0.8)、四度目の操作では100%出力の第3高速値255(255/255=1)となるよう設定する。
【0111】
なお、100%出力であるときに走行出力ボタン93を操作すると、出力値0になる設定としてもよいが、100%では出力過剰であり出力を低下させたいときに大幅に出力低下する可能性があるので、80%→60%→40%→0%と出力値を下げていく設定としてもよい。
【0112】
上記構成により、ギア変速のように段階的且つ定格的な走行電動モータ15の出力操作が可能になるので、おおまかな出力を走行出力ボタン93で設定し、微調整を走行出力ダイヤル92の操作で行うことで、作業に適した走行速度を容易に設定できる。
【0113】
操縦パッド81には、走行電動モータ15を正転させて機体を前進させる前進ボタン94と、走行電動モータ15を逆転させて機体を後進させる後進ボタン95と、機体左側の走行電動モータ15の出力を遮断または出力値を低く、あるいは電磁クラッチ55を遮断して進行方向を左寄りに移動させる左側ボタン96と、機体右側の走行電動モータ15の出力を遮断または出力値を低く、あるいは電磁クラッチ55を遮断して進行方向を右寄りに移動させる右側ボタン97を設ける。
【0114】
なお、前進ボタン94と後進ボタン95は平面視で前後方向に配置し、前側に前進ボタン94、後側に後進ボタン95を配置すると感覚的な操作となり、誤操作の発生を防止しやすい。また、前後及び中間位置に操作可能なトグルスイッチ(図示省略)を用いて、前進ボタン94と後進ボタン95を兼用する構成としてもよい。
【0115】
左側ボタン96と右側ボタン97は、機体の進行方向調節や旋回操作に用いるが、前進ボタン94及び後進ボタン95と合わせて十字状に配置すると、感覚的に操作がしやすいものとなる。しかしながら、各ボタンの配置距離が狭いと、別のボタンを同時に押してしまい、機体の移動方向が意図しないものとなり、余分な作業時間を費やしたり、圃場面を荒らしたりすることがある。
【0116】
従って、左側ボタン96と右側ボタン97は、操縦パッド81の上面の左右に設け、右手と左手で各々操作する構成とすると、感覚的な操作ができると共に、他のボタンを誤操作しにくくなるので、操作性が向上する。
【0117】
なお、
図13に示すとおり、操縦パッド81の操作面において、例えば、前進ボタン94及び後進ボタン95を左右一側、左側ボタン96と右側ボタン97を左右他側に配置し、操作時に他のボタンに干渉しにくい配置としてもよい。また、操縦パッド81に設ける複数のボタンについて、作業者が操作しやすい位置に対応する機能を割り振ることが可能な、コンフィグ機能を制御装置80に設けてもよい。
【0118】
操縦パッド81の操作において、前側ボタン94が操作され、後側ボタン95、左側ボタン96及び右側ボタン97が操作されていないときは、走行電動モータ15が正転し、車輪5,5を前進方向に回転させる。一方、後側ボタン95が操作され、前側ボタン94、左側ボタン96及び右側ボタン97が操作されていないときは、走行電動モータ15が逆転し、車輪5,5を後進方向に回転させる。
【0119】
左側ボタン96及び右側ボタン97は、前進ボタン94と後進ボタン95の双方が操作されていないとき・BR>ヘ、操作されても走行系統の動作に反映しないものとする。但し、旋回走行時等に前もって移動方向を決定すべく、操作された方向の車輪5への伝動を遮断、または出力を低下させる信号を制御装置80に先行して送信するものとしてもよい。
【0120】
このとき、先行した左側ボタン96または右側ボタン97の操作が受け付けられたことを視覚的に判断可能とすべく、操縦パッド81には左進行ランプ98Lと右進行ランプ98Rを設け、操作された側が点灯する構成とする。なお、左側ボタン96と右側ボタン97の操作が同時であるときは、左右どちらに進行させるか判断できないので双方の信号を除外し、間隔を空けて操作されたときは、後から操作された方に対応するランプが点灯するものとする。
【0121】
上記の左進行ランプ98Lと右進行ランプ98Rは、前進方向及び後進方向への直進時には両方が点灯し、直進走行中であることを表示するものとする。また、左進行ランプ98Lと右進行ランプ98Rを複数色の発光が可能なダイオードで構成する、あるいは点滅や照度の強弱変更により、前進と後進を異なる発光により表示してもよい。
【0122】
左側ボタン96または右側ボタン97のどちらかを先に操作して前進ボタン94または後進ボタン95のどちらかを操作する、または、前進中または更新中に左側ボタン96または右側ボタン97が操作されたときは、対応する側の走行電動モータ15の出力を低下させるか停止させる、あるいは電磁クラッチ55を遮断することで、機体を左寄りまたは右寄りに走行させる。
【0123】
これにより、機体の進行方向が直進からずれていると感じたときに方向修正が容易意に行えるので、耕耘装置9による作業精度が向上すると共に、機体の移動を円滑に行える。
【0124】
左右方向の進行方向の調整は、左側ボタン96または右側ボタン97を短時間で押したり離したりして行う。一方、左右の旋回走行時は、左側ボタン96または右側ボタン97を連続して操作して行う。旋回操作走行について、一定時間以上長押しすると一定時間対応する走行電動モータ15や電磁クラッチ55が伝動を遮断する状態となる構成としてもよいが、進行方向の調整の際に連続操作が受け付けられ、意図しない位置で旋回走行に切り替わるおそれがあるので、左側ボタン96または右側ボタン97を連続して、例えば1秒間に所定回数(例:5回)以上操作すると、旋回モードに移行する信号が制御装置80に発信される構成とすると、誤操作の発生が防止される。
【0125】
あるいは、前進ボタン94と後進ボタン95のどちらか一方と、左側ボタン96と右側ボタン97のどちらか一方の両方が押された状態になることで、旋回走行を行う構成としてもよい。このときは、作業者は操縦パッド81の対応するボタンから手を離さないものとする。
【0126】
上記の旋回操作は、前側ボタン94と左側ボタン96を押すことで左前進旋回、前側ボタン94と右側ボタン97を押すことで右前進旋回、後側ボタン95と左側ボタン96を押すことで左後進旋回、後側ボタン95と右側ボタン97を押すことで右後進旋回が行われる。
【0127】
このとき、走行電動モータ15の出力が高い、即ち高速域に設定されていると、走行速度が速すぎて旋回軌跡を合わせにくくなるおそれがあるので、旋回走行操作が行われるときは、例えば、制御装置80が走行電動モータ15の出力を第1低速値まで下げる構成とするとよい。その後、左側ボタン96または右側ボタン97が押されなくなると、制御装置80は走行電動モータ15の出力を旋回走行前の出力値に戻すが、出力値が高いと旋回終了後に高速で機体が移動して作業者の操作が追い付かなくなるおそれがあるので、所定時間(例:5~10秒)をかけて段階的に出力値を上昇させる制御構成とする。
【0128】
前側ボタン94または後側ボタン95が操作され、前進または後進走行中であるときに、左側ボタン96と右側ボタン97の両方が操作されたとき(同時だけでなく、片方を押した状態でもう片方を押す操作手順も含む)、走行電動モータ15の出力値を0にするか、または電磁クラッチ55を遮断してその場で停車させる制御構成とする。
【0129】
上記において、走行電動モータ15の出力を0にしたときは、左側ボタン96と右側ボタン97のうち、ボタンが押されなくなった側の出力を上昇させる、または電磁クラッチ55を接続して走行伝動を再開する制御構成とする。このとき、走行再開は作業者が意図した操作により行われるものであるので、走行電動モータ15の出力は、操作前の出力値を適用すると、作業を速やかに再開でき、作業能率の低下が防止される。
【0130】
なお、前側ボタン94、後側ボタン95による前進、後進走行について、進行方向と同じボタンを操作すると、その場で停車する構成とする。
【0131】
操縦パッド81には、作業電動モータ17の駆動力の伝動を切り替えるテンションアクチュエータ66を入切する作業入切ボタン99を設けると共に、作業電動モータ17の出力を増減させる作業出力ダイヤル100を設ける。この作業出力ダイヤル100の操作による作業電動モータ17の出力は制御装置80に記録され、操縦パッド81との通信が途絶して作業電動モータ17の出力を0にして停止させたときには、通信再開後に記録された出力値で作業電動モータ17が作動する構成とする。
【0132】
これにより、通信不良による意図しない作業の中断が生じたとき、耕耘装置9の作業出力を再設定する作業が不要となり、作業能率が向上する。
【0133】
ただし、耕耘装置9が急激に高速回転を再開すると、同じ場所が何度も耕耘され、土が解され過ぎて栽培作業に適さなくなるおそれがあると共に、耕耘装置9が土中に入り込んだまま高速回転が再開されると、耕耘装置9の土中抵抗により機体が急速前進するダッシングが生じるおそれがある。ダッシングが発生すると、耕耘装置9による耕耘が十分に行われなくなると共にバランスを崩して機体が転送し、破損に繋がる。
【0134】
これを防止すべく、作業伝動モータ17は、記録された出力値に向けて、時間をかけて出力を増加させる制御構成とすることが望ましい。
【0135】
さらに、作業パッド81の中央付近には、他のボタンよりも大きく、且つ操作に要する荷重がやや高い、歩行型管理機1の動力源の入切を行うメインスイッチ101を設ける。歩行型管理機1の本体のキーをONにした状態でこのメインスイッチ100を操作すると、操縦パッド81のペアリングボタン82の操作によるペアリングが受付可能になり、ペアリング後は各ボタン、ダイヤル、スイッチによる遠隔操作が可能になる。
【0136】
そして、歩行型管理機1が作動中にメインスイッチ101を操作すると、走行電動モータ15及び作業電動モータ17の出力が0になる信号が制御装置80から発信され、機体の移動及び耕耘装置9の動作が停止する。この操作は長押しではなく一度の押し込みで受け付けられるものとし、緊急時の停止操作ができる限り速やかに受け付けられるものとする。
【0137】
このとき、操縦パッド81の各ボタン及びダイヤルの操作情報は全てリセットされ、一定時間(例:30秒程度)の経過後にメインスイッチ101を操作することにより、歩行型管理機1の遠隔操作が可能になるものとし、作業走行の開始前に各ボタンを操作することで、再度問題が発生することを防止する。
【0138】
したがって、作業を停止させたいときや、異常の発生時に走行と作業伝動を同時に遮断できるので、不必要な作業で圃場面を荒らすことや、機体の転倒等による破損が防止される。
【0139】
上述の歩行型管理機1を手動で操作するとき、作業内容によっては、
図14に示すとおり、操縦ハンドル18を上下方向の回転軸中心に回転させ、機体前側に操縦部分が向く配置とすることがある。
【0140】
このとき、内燃機関であるエンジンを搭載しているものについては、排気ガスを排出するマフラーが機体前側を向いているので、操縦ハンドル18が機体前側に突出する状態では、作業者が排気ガスに曝露しやすく、不快感を覚えやすい問題がある。
【0141】
したがって、
図15(a)~(c)に示すとおり、マフラー110の機体前側の排気口の前方に、排気ガスを機体前側で且つ斜め左下(または右下)方向に向けて排出させる、延長排気口111を配置する。この延長排気口111は、側面視で逆L字形状の排気取付ステー112の上下方向の長辺側の機体下側寄りに設け、延長排気口111を装着する部分は、機体後側に向けて折り曲げる折曲取付部113としている。そして、この排気取付ステー112を、マフラー110を機体に装着するマフラーフランジ110aを介して装着する。
【0142】
この折曲取付部113の上部は、左右方向にマフラー110との接触を回避する切欠溝114が形成され、排気取付ステー112を装着する際、この切欠溝114による空隙はマフラー110によってほぼ塞がれる構成とする。
【0143】
上記構成により、排気ガスが機体の左側(または右側)下方に向かって排出されるので、機体前側に向けた操縦ハンドル18を操作する作業者に排気ガスが届きにくくなるので、作業者が快適な作業を行うことができる。
【0144】
また、切欠溝114がマフラー110を避けつつ、装着時の空隙が生じない形状であることにより、排気ガスが機体側に戻り、エンジン等が高温の空気に晒されて高温化し、オーバーヒートすることを防止できる。
【符号の説明】
【0145】
5 車輪(走行装置)
9 耕耘装置(対地作業装置)
15 走行電動モータ(走行駆動源)
17 作業電動モータ(作業駆動源)
55 電磁クラッチ(走行クラッチ)
64 テンションアーム(作業伝動部材)
65 テンションローラ(作業伝動部材)
80 制御装置
81 操縦パッド(操縦装置)
83 傾動ウェイト機構
84 バランスウェイト
88 ウェイト移動モータ(バランス調節アクチュエータ)
89 ボーダーセンサ(位置検出部材)
92 走行出力ダイヤル(走行出力操作部材)
93 走行出力ボタン(走行出力操作部材)
94 前側ボタン(前進部材)
95 後側ボタン(後進部材)
96 左側ボタン(左操作部材)
97 右側ボタン(右操作部材)
100 作業出力ダイヤル(作業出力操作部材)