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特開2025-103497構造方程式モデリング支援装置、該方法および該プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103497
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】構造方程式モデリング支援装置、該方法および該プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 7/01 20230101AFI20250702BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20250702BHJP
   G06F 18/2323 20230101ALI20250702BHJP
【FI】
G06N7/01
G06F16/906
G06F18/2323
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220926
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】小川 史恵
(72)【発明者】
【氏名】目良 貢
(72)【発明者】
【氏名】吉永 冬彦
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175FA03
5B175KA12
(57)【要約】
【課題】本発明は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる構造方程式モデリング支援装置、該方法および該プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の構造方程式モデリング支援装置1000は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する装置であって、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則を記憶する規則情報記憶部51と、規則情報記憶部51に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理部14と、グループ処理部14で抽出した抽出結果を出力する出力部3とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する構造方程式モデリング支援装置であって、
グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則を記憶する規則情報記憶部と、
前記規則情報記憶部に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理部と、
前記グループ処理部で抽出した抽出結果を出力する出力部とを備える、
構造方程式モデリング支援装置。
【請求項2】
前記グループ化規則は、起点のノードから、エッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを1個に纏めてグループ化する規則を含む、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項3】
前記グループ化規則は、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から所定の個数のエッジを選択する規則を含む、
請求項2に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項4】
前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、
前記グループ化規則は、さらに、1個のエッジの両端に連結されている2個のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記2個のノードを1個に纏めてグループ化する規則を含む、
請求項2に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項5】
前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、
前記グループ化規則は、起点のノードおよび前記起点のノードにエッジを介して連結されている連結先のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記起点のノードおよび前記連結先のノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理を、グループ化できなくなるまで、前記連結先のノードを新たな起点のノードとして繰り返し実行する規則を含む、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項6】
前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、
前記グループ化規則は、前記グラフにおける複数のノードの中から、起点のノードに備えられている文章に類似する文章を備えるノードを抽出し、前記起点のノードおよび前記抽出したノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理を実行する規則を含む、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項7】
前記グループ処理部で抽出した抽出結果に基づき前記グラフから作成されたパス図の適合度指標を求める適合度指標処理部をさらに備え、
前記出力部は、さらに、前記適合度指標処理部で求めた前記パス図の適合度指標を出力する、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項8】
前記グラフを複数の生成方法で生成するグラフ生成部と、
前記複数の生成方法のうちのいずれかの生成方法を受け付ける入力部とをさらに備え、
前記グラフ生成部は、前記複数の生成方法のうち、前記入力部で受け付けた生成方法で前記グラフを生成する、
請求項7に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項9】
前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成するグラフ生成部をさらに備える、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項10】
互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備える第1データから、前記複数のデータ値それぞれについて、当該データ値を多水準系に離散化することによって、前記複数の変数それぞれに、複数の、前記離散化したデータ値を備える第2データを生成する離散化処理部をさらに備え、
前記グラフ生成部は、前記離散化処理部で生成した第2データから前記グラフを生成し、
前記出力部は、さらに、前記離散化処理部で生成した第2データを出力する、
請求項9に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項11】
互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備えるデータから、前記グラフを生成するグラフ生成部と、
前記データが正規分布であるか否かを判定する正規分布判定部とをさらに備え、
前記グラフ生成部は、前記正規分布判定部の判定結果が正規分布である場合には、前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成し、前記正規分布判定部の判定結果が正規分布ではない場合には、前記グラフをLiNGAMで生成する、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項12】
互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備えるデータから、前記グラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記データ値は、離散値または連続値である、
請求項1に記載の構造方程式モデリング支援装置。
【請求項13】
構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する構造方程式モデリング支援方法であって、
規則情報記憶部に記憶されている、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理工程と、
前記グループ処理工程で抽出した抽出結果を出力する出力工程とを備える、
構造方程式モデリング支援方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の構造方程式モデリング支援装置として機能させるための構造方程式モデリング支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する構造方程式モデリング支援装置、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造方程式モデリング(Structural Equatio Modeling、SEM)は、共分散構造分析(Covariance Structure Analysis、CSA)とも呼ばれ、仮説として設定した多数の変数間の関係を、有向グラフのいわゆるパス図で表現できる線形結合方程式でモデル化して分析する手法である。この構造方程式モデリングは、仮説の妥当性の検証に有用な手法であり、例えば潜在変数と呼ばれる直接には観測できない因子を含めて分析できる点や、1つの分析で複数の従属変数を設定できる点等の長所がある。このような構造方程式モデリングは、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6743934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造方程式モデリングでは、潜在変数をモデルに組み込めるが、どのような因子を潜在変数に設定し、どのようなモデルを設定して、モデルを表す有向グラフのパス図(構造方程式)を生成すべきか、という点が、モデル(パス図、構造方程式)を生成するユーザ(分析者)にとって難しい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる構造方程式モデリング支援装置、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる構造方程式モデリング支援装置は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する装置であって、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則を記憶する規則情報記憶部と、前記規則情報記憶部に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理部と、前記グループ処理部で抽出した抽出結果を出力する出力部とを備える。好ましくは、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グループ処理部は、前記グラフにおける複数のノードのうち、未処理のノードの中から、起点となるノードをランダム(無作為)に1個選定し、前記選定した起点のノードに対し、前記規則情報記憶部に記憶されているグループ化規則に基づいてグループとなるノードを抽出するグループ化処理を、前記未処理のノードが無くなるまで繰り返し実行する。
【0007】
このような構造方程式モデリング支援装置は、1個に纏められる複数のノードを抽出結果として出力する。よって、モデル(パス図、構造方程式)を作成するユーザ(分析者)は、前記抽出結果を参照し、1個に纏められる複数のノードに、1個の新たなノードを割り当てることで、所定のグラフから、パス図の元となる新たなグラフを作成できるから、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる。
【0008】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グループ化規則は、起点のノードから、エッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを1個に纏めてグループ化する規則を含む。
【0009】
このような構造方程式モデリング支援装置は、起点のノードから、エッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、起点のノードからエッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを1個に纏めてグループ化した新たなグラフを作成できる。
【0010】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グループ化規則は、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から所定の個数のエッジを選択する規則を含む。
【0011】
このような構造方程式モデリング支援装置は、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から選択された所定の個数のエッジに連結されるノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から選択された所定の個数のエッジに連結されるノードを1個に纏めてグループ化した新たなグラフを作成できる。
【0012】
他の一態様では、これら上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、前記グループ化規則は、さらに、1個のエッジの両端に連結されている2個のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記2個のノードを1個に纏めてグループ化する規則を含む。
【0013】
このような構造方程式モデリング支援装置は、さらに、1個のエッジの両端に連結されている2個のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記2個のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、さらに、2個のノードそれぞれに備えられている各文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0014】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、前記グループ化規則は、起点のノードおよび前記起点のノードにエッジを介して連結されている連結先のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記起点のノードおよび前記連結先のノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理を、グループ化できなくなるまで、前記連結先のノードを新たな起点のノードとして繰り返し実行する規則を含む。
【0015】
このような構造方程式モデリング支援装置は、起点のノードおよび前記起点のノードにエッジを介して連結されている連結先のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記起点のノードおよび前記連結先のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、2個のノードそれぞれに備えられている各文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0016】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グラフにおける複数のノードそれぞれは、文章を備え、前記グループ化規則は、前記グラフにおける複数のノードの中から、起点のノードに備えられている文章に類似する文章を備えるノードを抽出し、前記起点のノードおよび前記抽出したノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理を実行する規則を含む。
【0017】
このような構造方程式モデリング支援装置は、互いに類似する文章を備える複数のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、ノードに備えられている文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0018】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グループ処理部で抽出した抽出結果に基づき前記グラフから作成されたパス図の適合度指標を求める適合度指標処理部をさらに備え、前記出力部は、さらに、前記適合度指標処理部で求めた前記パス図の適合度指標を出力する。
【0019】
このような構造方程式モデリング支援装置は、パス図の適合度指標を求め、出力する。よって、ユーザは、抽出結果を参照して作成したパス図の適合度を認識することができ、パス図の適合度に応じてパス図の再作成や、構造方程式モデリング支援装置に再抽出させることができる。
【0020】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グラフを複数の生成方法で生成するグラフ生成部と、前記複数の生成方法のうちのいずれかの生成方法を受け付ける入力部とをさらに備え、前記グラフ生成部は、前記複数の生成方法のうち、前記入力部で受け付けた生成方法で前記グラフを生成する。
【0021】
このような構造方程式モデリング支援装置は、パス図の適合度に応じてグラフの生成方法を変更することができる。
【0022】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成するグラフ生成部をさらに備える。
【0023】
これによれば、前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成するグラフ生成部をさらに備える構造方程式モデリング支援装置が提供できる。
【0024】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備える第1データから、前記複数のデータ値それぞれについて、当該データ値を多水準系に離散化することによって、前記複数の変数それぞれに、複数の、前記離散化したデータ値を備える第2データを生成する離散化処理部をさらに備え、前記グラフ生成部は、前記離散化処理部で生成した第2データから前記グラフを生成し、前記出力部は、さらに、前記離散化処理部で生成した第2データを出力する。
【0025】
このような構造方程式モデリング支援装置は、データ値を多水準系に離散化するので、第1データのデータ値が連続値であってもベイジアンネットワーク生成方法でグラフ(ベイジアンネットワーク)を生成できる。
【0026】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備えるデータから、前記グラフを生成するグラフ生成部と、前記データが正規分布であるか否かを判定する正規分布判定部とをさらに備え、前記グラフ生成部は、前記正規分布判定部の判定結果が正規分布である場合には、前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成し、前記正規分布判定部の判定結果が正規分布ではない場合には、前記グラフをLiNGAMで生成する。
【0027】
このような構造方程式モデリング支援装置は、正規分布か否かに応じて適したグラフの生成方法を選択でき、好適なグラフの生成が期待できる。
【0028】
他の一態様では、上述の構造方程式モデリング支援装置において、互いに異なる複数の変数それぞれに、複数のデータ値を備えるデータから、前記グラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、前記データ値は、離散値または連続値である。
【0029】
これによれば、前記データ値が離散値または連続値である構造方程式モデリング支援装置が提供できる。
【0030】
本発明の他の一態様にかかる構造方程式モデリング支援方法は、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援する方法であって、規則情報記憶部に記憶されている、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理工程と、前記グループ処理工程で抽出した抽出結果を出力する出力工程とを備える。
【0031】
このような構造方程式モデリング支援方法は、1個に纏められる複数のノードを抽出結果として出力する。よって、モデルを生成するユーザは、前記抽出結果を参照し、1個に纏められる複数のノードに、1個の新たなノードを割り当てることで、所定のグラフから、パス図の元となる新たなグラフを作成できるから、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる。
【0032】
本発明の他の一態様にかかる構造方程式モデリング支援プログラムは、コンピュータを、これら上述のいずれかの構造方程式モデリング支援装置として機能させるためのプログラムである。
【0033】
これによれば、構造方程式モデリング支援プログラムが提供でき、この構造方程式モデリング支援プログラムは、これら上述の構造方程式モデリング支援装置と同様な作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる構造方程式モデリング支援装置、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態における構造方程式モデリング支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】前記構造方程式モデリング支援装置におけるグループ処理を説明するための図である。
図3】一例として、パス図を示す図である。
図4】前記構造方程式モデリング支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0037】
実施形態における構造方程式モデリング支援装置は、構造方程式モデリング(共分散構造分析)におけるパス図の作成を支援する装置である。この構造方程式モデリング支援装置は、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則であるグループ化規則を記憶する規則情報記憶部と、前記規則情報記憶部に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するグループ処理部と、前記グループ処理部で抽出した抽出結果を出力する出力部とを備える。以下、このような構造方程式モデリング支援装置、ならびに、これに実装された構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムについて、より具体的に説明する。
【0038】
図1は、実施形態における構造方程式モデリング支援装置の構成を示すブロック図である。図2は、前記構造方程式モデリング支援装置におけるグループ処理を説明するための図である。図2において、○は、ノードを表し、有向線分は、エッジを表し、○内の整数値は、当該ノードを特定し識別するための識別子(ID)であるノード番号(シリアル番号)である。図3は、一例として、パス図を示す図である。図3において、○は、ノードを表し、有向線分は、エッジを表し、○内の整数値は、当該ノードのノード番号であり、○内の文字は、当該ノードの変数である。
【0039】
実施形態における構造方程式モデリング支援装置1000は、例えば、図1に示すように、制御処理部1と、入力部2と、出力部3と、インターフェース部(IF部)4と、記憶部5とを備える。
【0040】
入力部2は、制御処理部1に接続され、例えば、処理の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、グラフを生成するためのデータやグループ化規則等の、構造方程式モデリング支援装置1000を動作させる上で必要な各種データを前記構造方程式モデリング支援装置1000に入力する機器であり、例えば、キーボード、マウス、および、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ等である。出力部3は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、入力部2から入力されたコマンドやデータ、および、処理結果等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0041】
なお、入力部2および出力部3は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部2は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部3は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として構造方程式モデリング支援装置1000に入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い構造方程式モデリング支援装置1000が提供される。
【0042】
IF部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部4は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であってもよい。
【0043】
記憶部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、制御プログラム、離散化処理プログラム、グラフ作成プログラム、グループ処理プログラムおよび適合度指標処理プログラム等が含まれる。前記制御プログラムは、構造方程式モデリング支援装置1000の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するプログラムである。前記離散化処理プログラムは、互いに異なる複数Mの変数それぞれに、複数Nのデータ値を備えるM×Nの第1データから、前記複数のデータ値それぞれについて、当該データ値を多水準系に離散化することによって、前記複数の変数それぞれに、複数の、前記離散化したデータ値を備える第2データを生成するプログラムである。前記グラフ作成プログラムは、所定のデータからグラフを生成するプログラムである。前記グループ処理プログラムは、記憶部5に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するプログラムである。前記適合度指標処理プログラムは、前記グラフから、前記グループ処理プログラムで抽出した抽出結果に基づき作成されたパス図の適合度指標を求めるプログラムである。前記各種の所定のデータには、例えば、グラフを生成するためのデータおよびグループ化規則等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。
【0044】
このような記憶部5は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部5は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部5は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置やソリッドステートドライブ(SSD)を備えて構成されてもよい。
【0045】
記憶部5は、規則情報記憶部51を機能的に備える。規則情報記憶部51は、グループ化規則を記憶するものである。前記グループ化規則は、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化するための規則である。前記グループ化規則は、例えば、起点のノードから、エッジを介して順次に連結される所定の個数(第1個数、連結個数)までのノードを1個に纏めてグループ化する第1規則を含む。前記連結個数は、例えば、予め適宜に設定され、規則情報記憶部51に記憶される。あるいは、例えば、初期化の際に、前記連結個数は、1個以上でランダムに生成され、規則情報記憶部51に記憶される。前記グループ化規則は、例えば、前記第1規則に対してさらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から所定の個数(第2個数、分岐個数)のエッジを選択する第2規則を含む。前記分岐個数は、例えば、予め適宜に設定され、規則情報記憶部51に記憶される。あるいは、例えば、後述の初期化の際に、前記分岐個数は、1個以上でランダムに生成され、規則情報記憶部51に記憶される。グラフにおける複数のノードそれぞれが文章を備える場合において、前記グループ化規則は、例えば、前記第1および第2規則の少なくとも一方に対してさらに、1個のエッジの両端に連結されている2個のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記2個のノードを1個に纏めてグループ化する第3規則を含む。したがって、前記グループ化規則が前記第1および第3規則を含む場合、前記第1規則による起点ノードから所定の個数に達する前に、第3規則を満たさない場合、そのときのノードまででグループ化が終了される。なお、前記第2および第3規則は、それぞれ、単独であってもよいが、これらは、前記第1規則との組合せにおいて前記第1規則における前記連結個数が1個である場合と等価である。あるいは、例えば、グラフにおける複数のノードそれぞれが文章を備える場合において、前記グループ化規則は、起点のノードおよび前記起点のノードにエッジを介して連結されている連結先のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記起点のノードおよび前記連結先のノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理(第1類似グループ化処理)を、グループ化できなくなるまで、前記連結先のノードを新たな起点のノードとして繰り返し実行する第4規則を含む。あるいは、例えば、グラフにおける複数のノードそれぞれが文章を備える場合において、前記グループ化規則は、前記グラフにおける複数のノードの中から、起点のノードに備えられている文章に類似する文章を備えるノードを抽出し、前記起点のノードおよび前記抽出したノードを1個に纏めてグループ化する類似グループ化処理(第1類似グループ化処理)を実行する第5規則を含む。
【0046】
制御処理部1は、構造方程式モデリング支援装置の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、グラフにおける複数のノードを1個に纏めてグループ化することによって構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援するための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11、離散化処理部12、グラフ生成部13、グループ処理部14および適合度指標処理部15が機能的に構成される。
【0047】
制御部11は、構造方程式モデリング支援装置1000の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、構造方程式モデリング支援装置1000の全体の制御を司るものである。
【0048】
離散化処理部12は、互いに異なる複数Mの変数x、x、・・・、xそれぞれに、複数Nのデータ値を備えるM×Nの第1データx(1)、x(2)、・・・、x(N)、x(1)、x(2)、・・・、x(N)、x(1)、x(2)、・・・、x(N)から、前記複数のデータ値それぞれについて、当該データ値を多水準系に離散化することによって、前記複数の変数それぞれに、複数の、前記離散化したデータ値を備える第2データを生成するものである。前記第1データのデータ値は、例えばリッカート尺度で表されたアンケートの回答のような離散値であってよく、あるいは、例えば測定データのような連続値であってよい。複数Mの変数x、x、・・・、xにおけるi番目(1≦i≦M)の変数xの平均値をμとし、この変数xの標準偏差をσとし、この変数xを離散化する離散化関数をψとし、a以下の最大整数を[a]とした場合、前記離散化には、例えば、式;ψ(x)=[(x-μ)/σ]が用いられる。すなわち、変数xの各データ値x(1)、x(2)、・・・、x(N)は、標準化(規格化)され、整数化されることによって多水準系に離散化される。標準化により、第1データにおける外れ値を吸収した第2データを生成することができ、構造方程式モデリングの精度劣化を抑制することができる。
【0049】
グラフ生成部13は、所定のデータからグラフを生成するものである。グラフ生成部13は、例えば、前記グラフを1個の生成方法のベイジアンネットワーク生成方法で生成してもよいが、本実施形態では、グラフ生成部13は、グラフを複数の生成方法で生成する。より具体的には、入力部2は、前記複数の生成方法のうちのいずれかの生成方法を受け付け、グラフ生成部13は、前記複数の生成方法のうち、前記入力部2で受け付けた生成方法で前記グラフを生成する。前記複数の生成方法には、例えば、前記ベイジアンネットワーク生成方法およびLiNGAM(Linear Non-Gaussian Acyclic Model)が含まれる。前記ベイジアンネットワーク生成方法は、正規分布のデータに好適な因果分析する公知の手法であり、例えば、特開2021-111063号公報(特許第7375556号公報)に開示されている。前記特開2021-111063号公報に開示されたベイジアンネットワーク生成方法では、グラフ生成部13は、離散化処理部12で離散化する前の第1データから前記グラフを生成してよいが、本実施形態では、離散化処理部12で離散化された第2データから前記グラフを生成する。このベイジアンネットワーク生成方法では、グラフ生成部13は、例えば、第2データψ(x(1))、ψ(x(2))、・・・、ψ(x(N))、ψ(x(1))、ψ(x(2))、・・・、ψ(x(N))、・・・、ψ(x(1))、ψ(x(2))、・・・、ψ(x(N))における複数Mの変数x、x、・・・、xそれぞれをノードとしたベイジアンネットワークを示す有向非巡回グラフ構造の集合をGとし、集合Gの元をなすグラフ構造をgとした場合に、元gを所与としたときに前記複数のカテゴリデータ集合が実現される条件付き確率を最大化させるグラフ構造を決定し、前記グラフ構造におけるいずれかのノードを子ノードとし、前記グラフ構造における1つ以上のエッジを介して前記子ノードと結ばれるノードを親ノードとし、前記子ノードから前記親ノードへ至るまでに経由するエッジの数を階層数とした場合に、前記子ノードと前記親ノードとの組み合わせを前記階層数毎に抽出することによって、前記複数Mの変数x、x、・・・、xから、有向非巡回グラフ(因果関係を表すモデル)を生成する。LiNGAMは、非正規分布のデータに好適な因果分析する公知の手法である。このLiNGAMでは、グラフ生成部13は、例えば、複数Mの変数x、x、・・・、xの中からいわゆる外生変数を抽出し、前記抽出した外生変数に影響される他の変数を除去して前記抽出した外生変数を除去する処理を、外生変数が抽出できなくなるまで繰り返すことによって、前記複数Mの変数x、x、・・・、xから、有向非巡回グラフ(因果関係を表すモデル)を生成する。LiNGAMには、例えば、NEC製のCausal Analysisが用いられる。
【0050】
グループ処理部14は、規則情報記憶部51に記憶されているグループ化規則に基づいて、所定のグラフから、グループとなるノードを抽出するものである。より具体的には、グループ処理部14は、例えば、所定のグラフにおける複数のノードのうち、未処理のノードの中から、起点となるノードをランダム(無作為)に、1個、選定し、前記選定した起点のノードに対し、規則情報記憶部51に記憶されているグループ化規則に基づいてグループとなるノードを抽出するグループ化処理を、前記未処理のノードが無くなるまで繰り返し実行する。
【0051】
例えば、前記グループ化規則が前記第1および第2規則を含み、前記第1規則の前記連結個数が2個であって前記第2規則の前記分岐個数が2個であるとき、図2において、11個のノードの中から無作為の選定によって起点のノードとしてノード番号「2」のノード(第2ノード)が選定され、前記第2規則により前記第2ノードに連結された3個のエッジの中から無作為の選定によってノード番号「1」のノード(第1ノード)に連結されるエッジ(第12エッジ)およびノード番号「3」のノード(第3ノード)に連結されるエッジ(第23エッジ)が選定された場合、まず、前記第1および第2規則により、起点のノードである前記第2ノードに対し、前記第1および第3ノードが抽出され、前記第1ノードに連結するノードが無いので前記第1ノードに対する前記第1規則による抽出が終了する一方、前記第3ノードに対する前記第1規則により、前記第3ノードを介して前記第2ノードから3個目のノード番号「4」のノード(第4ノード)が抽出され、前記第2ノードと前記第1ノード、前記第3ノードおよび前記第4ノードとが1つに纏められ1個のグループとされる。図2に示す11個のノードから、この1個のグループに纏められた前記第1ないし第4ノードが除かれた残余の7個のノードに対し、上述の同様の処理が実行され、このような処理が未処理のノードが無くなるまで実行される。なお、グループのノードを抽出する2回目以降の処理における起点のノードは、無作為に選定されてよいが、前記第1規則で最後の選定されたノードに連結された次のノードが選定されてもよい。
【0052】
あるいは、例えば、前記グループ化規則が前記第1および第3規則を含み、前記第1規則の前記連結個数が2個であるとき、図2において、11個のノードの中から無作為の選定によって起点のノードとして前記第2ノードが選定され、前記第2ノードが備える文章(第2文章)と前記第3ノードが備える文章(第3文章)およびノード番号「6」のノード(第6ノード)が備える文章(第6文章)それぞれとが類似する一方、前記第2文章と前記第1ノードが備える文章(第1文章)とが類似せず、前記第6文章とノード番号「9」のノード(第9ノード)が備える文章(第9文章)とが類似する一方、前記第3文章と前記第4ノードが備える文章(第4文章)とが類似しない場合、前記第1および第3規則により、起点のノードである前記第2ノードに対し、前記第3ノード、前記第6ノードおよび前記第9ノードが抽出され、前記第2ノードと前記第3ノード、前記第6ノードおよび前記第9ノードとが1つに纏められ1個のグループとされる。図2に示す11個のノードから、この1個のグループに纏められた前記第2、第3、第6および第9ノードが除かれた残余の7個のノードに対し、上述の同様の処理が実行され、このような処理が未処理のノードが無くなるまで実行される。
【0053】
あるいは、例えば、前記グループ化規則が前記第4規則を含み、図2において、11個のノードの中から無作為の選定によって起点のノードとして前記第6ノードが選定され、前記第6文章と前記第9文章とが類似し、前記第9文章とノード番号「10」のノード(第10ノード)が備える文章(第10文章)とが類似する一方、前記第9文章とノード番号「8」のノード(第8ノード)が備える文章(第8文章)およびノード番号「11」のノード(第11ノード)が備える文章(第11文章)それぞれとが類似しない場合、前記第4規則により、起点のノードである前記第6ノードに対し、前記第9ノードおよび前記第10ノードが抽出され、前記第6ノードと前記第9ノードおよび前記第10ノードとが1つに纏められ1個のグループとされる。図2に示す11個のノードから、この1個のグループに纏められた前記第6、第9および第10ノードが除かれた残余の8個のノードに対し、上述の同様の処理が実行され、このような処理が未処理のノードが無くなるまで実行される。なお、グループのノードを抽出する2回目以降の処理における起点のノードは、無作為に選定されてよいが、前記第4規則で最後の選定されたノードに連結された次のノードが選定されてもよい。
【0054】
あるいは、例えば、前記グループ化規則が前記第5規則を含み、図2において、11個のノードの中から無作為の選定によって起点のノードとして前記第3ノードが選定され、前記第3文章と前記第8および第11文章それぞれとが類似する一方、前記第3文章と残余の各ノードが備える各文章とは、類似しない場合、前記第5規則により、起点のノードである前記第3ノードに対し、前記第8ノードおよび前記第11ノードが抽出され、前記第3ノードと前記第8ノードおよび前記第11ノードとが1つに纏められ1個のグループとされる。図2に示す11個のノードから、この1個のグループに纏められた前記第3、第8および第11ノードが除かれた残余の8個のノードに対し、上述の同様の処理が実行され、このような処理が未処理のノードが無くなるまで実行される。
【0055】
なお、これら上述において、1個のノードで1個のグループを形成する場合もあり得る。
【0056】
文章の類似の判定では、例えば、グループ処理部14は、類似を判定する2個の各文章それぞれを、言語が意味を持つ最小単位まで分解する形態素解析を実行し、前記形態素解析の各結果を、例えばBag-of-WordsやTF-IDF等の手法により、単語の出現回数に基づいてベクトルに変換し、前記変換した各ベクトルのコサイン類似度を求め、前記求めたコサイン類似度の値と予め設定した所定の閾値(類似判定閾値)とを比較し、前記比較の結果、前記求めたコサイン類似度の値が前記類似判定閾値以上である場合に、前記2個の各文章が互いに類似していると判定し、前記求めたコサイン類似度の値が前記類似判定閾値未満である場合に、前記2個の各文章が類似していないと判定する。
【0057】
なお、上記の類似の判定方法の他、文章間の類似の判定は、One-Hotベクトル化や、Doc2Vec、word2vec、fastText、ELMo(Embedding from Language)といった単語や文章の分散表現、BERTなどのTransformerに基づく手法などを用いて文章全体または文章に含まれる単語を用いて文章をそれぞれベクトル化し、それらの両ベクトル間の類似度を求めることで文章間の類似を判定してもよい。また、ベクトル間の類似度は、コサイン類似度の他、ユークリッド距離、マンハッタン距離、ミンコフスキー距離などの距離を算出する方法によって求めてもよい。
【0058】
あるいは、例えば、グループ処理部14は、類似を判定する2個の各文章それぞれに対して形態素解析を実行し、前記形態素解析の各結果間に、予め設定した共起ルールが成立するか否かを判定し、前記共起ルールが成立する場合に、前記2個の各文章が互いに類似していると判定し、前記共起ルールが成立していない場合に、前記2個の各文章が類似していないと判定する。前記共起とは、或る単語が或る文章中に出現したとき、その文章中に、別の限られた単語が頻出することである。このため、前記或る単語と前記別の限られた単語とを組み合わせてルール(共起ルール)とし、前記2個の各文章それぞれが共起ルールとした複数の単語を全て含むか否かを判定することで、前記類似の判定が可能となる。なお、この場合に、単語間の関係を表す、予め設定されたオントロジーが用いられてもよい。例えば、単語Aと単語Bとが互いに置換可能であるとしてオントロジーに設定され、共起ルールに単語Aが含まれている場合、グループ処理部14は、まず、単語Aで共起ルールの成立性を判定し、続いて、単語Bで共起ルールの成立性を判定し、少なくとも何れか一方で、共起ルールが成立する場合に、類似と判定する。オントロジーを用いることにより、類似範囲が調整できる。
【0059】
このように前記第3ないし第5規則のいずれかを用いることで、例えば、アンケートの質問項目をノードとし、質問文を前記文章としたアンケート調査のグラフからグループのノードが抽出できる。特に、質問項目の個数が多いアンケート調査を構造方程式モデリングでモデル化する場合に、実施形態における構造方程式モデリング支援装置1000は、有用である。
【0060】
なお、本実施形態のグラフ生成部13は、有向非巡回グラフを生成するが、グループ処理部14は、有向グラフだけでなく、無向グラフから、グループとなるノードを抽出してもよい。
【0061】
制御部11は、離散化処理部で求めた第2データ、および、前記グループ処理部14で抽出した抽出結果を出力部3に出力する。
【0062】
適合度指標処理部15は、前記グラフから、前記グループ処理部14で抽出した抽出結果に基づき作成されたパス図の適合度指標を求めるものである。まず、ユーザは、出力部3に出力されたグループ処理部14の抽出結果を参照し、前記グラフから、モデルを表す有向グラフのパス図(構造方程式)を作成し、前記作成したパス図を入力部2に入力する。この際に、エッジは、グループに纏められた各ノードの各エッジを参考に決定されてよい。例えば、前記グラフから、図3に示すパス図が作成された場合、構造方程式は、次式となる。式;x=b31+b32+e、x=b43+e、x=b54+e、ここで、bmnは、m番目の第mノードの変数(データ)xとn番目の第nノードの変数(データ)xとの間の係数であり、eは、第mノードでの外乱(ノイズ)である。このパス図の入力を受け付けると、適合度指標処理部15は、この入力されたパス図の適合度指標を求める。モデルの妥当性の指標となる適合度指標には、例えば、CFI(Comparative Fit Index)およびRMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)等が用いられる。
【0063】
前記CFIは、次式1によって求められ、一般に、その値が1に近い程、モデルは、良いモデルと判断される。前記RMSEAは、次式2によって求められ、一般に、その値が0.05以下であればモデルは、良いモデルと判断される。
【0064】
【数1】
【0065】
【数2】
ここで、Tは、対象となるモデルのTの値であり、Tは、ベースラインモデル(各観測変数に関連がない;独立である)のTの値であり、dfは、対象となるモデルと飽和モデルの母数の差(関心あるモデルでの自由度)であり、dfは、ベースラインモデルと飽和モデルの母数の差(ベースラインモデルでの自由度)である。max[a、a、・・・]は、a、a、・・・の中で最大値を求める演算子である。
【0066】
適合度指標は、パス図の構造方程式における係数を、データを用いて求めることによってモデルを生成してから求められる。このため、適合度指標処理部15は、例えばIBM社製のSEMソフトウェアであるSPSS Amosで構成される。このSPSS Amosでは、パス図の構造方程式とデータとを入力すると、パス図の構造方程式における係数が求められてモデルが生成され、上述のCFIおよびRMSEA等の適合度指標が求められる。
【0067】
制御部11は、前記適合度指標処理部15で求めた前記パス図の適合度指標を出力部3に出力する。
【0068】
これら制御処理部1、入力部2、出力部3、IF部4および記憶部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。
【0069】
次に、本実施形態の動作について説明する。図4は、前記構造方程式モデリング支援装置の動作を示すフローチャートである。
【0070】
このような構成の構造方程式モデリング支援装置1000は、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部1には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部11、離散化処理部12、グラフ生成部13、グループ処理部14および適合度指標処理部15が機能的に構成される。
【0071】
ユーザ(オペレータ)は、互いに異なる複数の変数Mそれぞれに、複数Nのデータ値を備える、グラフを生成するためのM×Nの第1データを例えば入力部2から、あるいは例えば前記第1データを記憶した記憶媒体からIF部4を介して、構造方程式モデリング支援装置1000に入力する。図4において、構造方程式モデリング支援装置1000は、第1データの入力を受け付けると(S1)、制御処理部1の離散化処理部12によって、前記第1データから、前記複数のデータ値それぞれについて、当該データ値を多水準系に離散化することによって、第2データを生成する(S2)。
【0072】
続いて、構造方程式モデリング支援装置1000は、例えばベイジアンネットワーク生成方法の入力を受け付け、制御処理部1のグラフ生成部13によって、前記第2データからグラフを生成する(S3)。
【0073】
続いて、構造方程式モデリング支援装置1000は、制御処理部1のグループ処理部14によって、前記生成したグラフから、規則情報記憶部51に記憶されているグループ化規則に基づいてグループとなるノードを抽出する(S4)。
【0074】
続いて、構造方程式モデリング支援装置1000は、制御処理部1の制御部11によって、前記求めた第2データ、および、前記抽出した抽出結果(グループ)を出力部3に出力する(S5)。
【0075】
ユーザは、出力部3に出力されたグループ処理部14の抽出結果を参照し、前記グラフから、有向グラフのパス図(構造方程式)を作成し、前記作成したパス図を入力部2に入力する。
【0076】
続いて、構造方程式モデリング支援装置1000は、パス図の入力を受け付けると(S6)、制御処理部1の適合度指標処理部15によって、構造方程式モデリングによってモデルを生成し(S7)、CFIおよびRMSEA等の適合度指標を求める(S8)。
【0077】
そして、構造方程式モデリング支援装置1000は、制御処理部1の制御部11によって、前記求めた適合度指標を出力部3に出力し、本処理を終了する(S9)。なお、制御部11は、必要に応じてIF部4を介して外部の機器に抽出結果や適合度指標等を出力してもよい。
【0078】
ユーザは、前記出力された適合度指標を参照し、前記作成したパス図を採用したり、前記作成したパス図を破棄して新たなパス図を作成して処理S6から再度実行したり、生成方法を変えずに、あるいは、生成方法を変えて、処理S1(あるいは処理S3)から再度実行したりする。これによって好適なパス図が作成できる。
【0079】
以上説明したように、実施形態における構造方程式モデリング支援装置1000ならびにこれに実装された構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、所定のグラフにおける1個に纏められる複数のノードを抽出結果として出力する。よって、モデル(パス図、構造方程式)を作成するユーザ(分析者)は、前記抽出結果を参照し、1個に纏められる複数のノードに、1個の新たなノードを割り当てることで、所定のグラフから、パス図の元となる新たなグラフを作成できるから、構造方程式モデリングにおけるパス図の作成を支援できる。
【0080】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、前記グループ化規則の前記第1規則では、起点のノードから、エッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、前記所定のグラフから、起点のノードからエッジを介して順次に連結される所定の個数までのノードを1個に纏めてグループ化した新たなグラフを作成できる。
【0081】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、前記グループ化規則の前記第2規則では、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から選択された所定の個数のエッジに連結されるノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、前記所定のグラフから、さらに、1個のノードが複数のエッジを備える場合、前記複数のエッジの中から選択された所定の個数のエッジに連結されるノードを1個に纏めてグループ化した新たなグラフを作成できる。
【0082】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、前記グループ化規則の前記第3規則では、さらに、1個のエッジの両端に連結されている2個のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記2個のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、前記所定のグラフから、さらに、2個のノードそれぞれに備えられている各文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0083】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、前記グループ化規則の前記第4規則では、起点のノードおよび前記起点のノードにエッジを介して連結されている連結先のノードそれぞれに備えられている各文章が互いに類似している場合に、前記起点のノードおよび前記連結先のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、2個のノードそれぞれに備えられている各文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0084】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、前記グループ化規則の前記第5規則では、互いに類似する文章を備える複数のノードを抽出結果として出力する。よって、ユーザは、前記抽出結果を参照することで、所定のグラフから、ノードに備えられている文章の類似性を勘案した新たなグラフを作成できる。
【0085】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、パス図の適合度指標を求め、出力する。よって、ユーザは、抽出結果を参照して作成したパス図の適合度を認識することができ、パス図の適合度に応じてパス図の再作成や、構造方程式モデリング支援装置1000に再抽出させることができる。
【0086】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、グラフを複数の生成方法で生成できるので、パス図の適合度に応じてグラフの生成方法を変更することができる。
【0087】
上記構造方程式モデリング支援装置1000、構造方程式モデリング支援方法および構造方程式モデリング支援プログラムは、データ値を多水準系に離散化するので、第1データのデータ値が連続値であってもベイジアンネットワーク生成方法でグラフ(ベイジアンネットワーク)を生成できる。
【0088】
実施形態によれば、グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成するグラフ生成部13を備える構造方程式モデリング支援装置1000が提供できる。実施形態によれば、前記データ値が離散値または連続値である構造方程式モデリング支援装置1000が提供できる。
【0089】
なお、上述の実施形態において、グラフ生成部13は、互いに異なる複数Mの変数それぞれに、複数Nのデータ値を備えるM×Nのデータから、前記グラフを生成し、構造方程式モデリング支援装置1000は、図1に破線で示すように、前記データが正規分布であるか否かを判定する正規分布判定部16を制御処理部1に機能的にさらに備え、前記グラフ生成部13は、前記正規分布判定部16の判定結果が正規分布である場合には、前記グラフをベイジアンネットワーク生成方法で生成し、前記正規分布判定部16の判定結果が正規分布ではない場合には、前記グラフをLiNGAMで生成してもよい。より具体的には、正規分布判定部16は、前記複数の変数(ノード)それぞれについて、当該変数における複数のデータ値が正規分布であるか否かを判定し、変数全体の個数に対する、正規分布と判定された変数の個数の割合が所定の閾値(正規分布判定割合閾値(例えば80[%]や90[%]等))以上である場合に、前記データが最終的に正規分布であると判定し、前記割合が正規分布判定域位置未満である場合に、前記データが最終的に正規分布ではないと判定する。このような構造方程式モデリング支援装置1000は、正規分布か否かに応じて適したグラフの生成方法を選択でき、好適なグラフの生成が期待できる。
【0090】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0091】
1000 構造方程式モデリング支援装置
1 制御処理部
2 入力部
3 出力部
4 インターフェース部(IF部)
5 記憶部
11 制御部
12 離散化処理部
13 グラフ生成部
14 グループ処理部
15 適合度指標処理部
16 正規分布判定部
図1
図2
図3
図4