(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103509
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60T 7/06 20060101AFI20250702BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250702BHJP
B60T 7/10 20060101ALI20250702BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20250702BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B60T7/06 D
B60L15/20 J
B60T7/06 C
B60T7/10 M
B60T7/10 P
B60T7/10 C
B60T17/18
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220947
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
【テーマコード(参考)】
3D049
3D124
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D049AA03
3D049AA06
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3D049RR01
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3D049RR13
3D124AA12
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3D246LA72Z
5H125AA20
5H125BA00
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5H125DD01
5H125EE41
5H125EE44
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】ブレーキ作動の確実性を高めて安全性を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る作業車両は、電動モータと、ブレーキ機構と、ブレーキ操作具とを備える。電動モータは、走行車体を走行駆動する。ブレーキ機構は、走行車体にブレーキを作動させる。ブレーキ操作具は、走行車体にブレーキを作動させる場合に操作される。ブレーキ機構は、電動モータの電源オフによってブレーキが作動する構成であり、ブレーキ信号発生部と、引き代部と、引き位置固定部とを有する。ブレーキ信号発生部は、ブレーキオン位置へ切り替えられると、電動モータの電源オフとなるブレーキ信号を発する。引き代部は、ブレーキ操作具の引き動作に応じて、ブレーキ信号発生部においてブレーキオン位置へ切り替えるように引き位置が所定の位置へ移動する。引き位置固定部は、ブレーキ操作具の引き動作による引き代部の引き位置を所定の位置に固定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、作業機とを備える作業車両であって、
前記走行車体を走行駆動する電動モータと、
前記走行車体にブレーキを作動させるブレーキ機構と、
前記ブレーキ機構によって前記走行車体にブレーキを作動させる場合に操作される、ハンドレバーおよびフットペダルの少なくともいずれか一方、および電動アクチュエータを含むブレーキ操作具と
を備え、
前記ブレーキ機構は、
前記電動モータの電源オフによって、前記電動モータの内部においてブレーキが作動する構成であり、
ブレーキオン位置およびブレーキオフ位置を有し、前記ブレーキオン位置および前記ブレーキオフ位置が切り替え可能であり、前記ブレーキオン位置へ切り替えられると、前記電動モータの電源オフとなるブレーキ信号を発するブレーキ信号発生部と、
前記ブレーキ操作具および前記ブレーキ信号発生部の間に設けられ、前記ブレーキ操作具の引き動作に応じて、前記ブレーキ信号発生部において前記ブレーキオン位置へ切り替えるように引き位置が所定の位置へ移動する引き代部と、
前記引き代部に設けられ、前記ブレーキ操作具の引き動作による前記引き代部の前記引き位置を前記所定の位置に固定する引き位置固定部と
を有する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ブレーキ機構は、前記走行車体にブレーキを作動させた場合にブレーキ位置に固定した前記電動アクチュエータを手動操作によって解除可能な固定解除機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記電動モータによる前記走行車体の走行速度を検出する走行速度検出部と、
前記ブレーキ操作具のブレーキ位置を検出するパーキングブレーキ検出部と、
前記作業車両の運転者の運転席からの離席を検出するシート検出部と、
所定の条件を満たした場合に前記電動アクチュエータによる自動ブレーキを作動させるか否かを判定するブレーキ判定部と
を備え、
前記所定の条件は、前記走行速度検出部による前記走行車体の速度超過の検出である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記電動モータによる前記走行車体の走行速度を検出する走行速度検出部と、
前記ブレーキ操作具のブレーキ位置を検出するパーキングブレーキ検出部と、
前記作業車両の運転者の運転席からの離席を検出するシート検出部と、
所定の条件を満たした場合に前記電動アクチュエータによる自動ブレーキを作動させるか否かを判定するブレーキ判定部と
を備え、
前記所定の条件は、前記パーキングブレーキ検出部による非ブレーキの検出、および前記シート検出部による前記運転者の離席の検出である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータで走行し、かつ、パーキングブレーキおよびフットブレーキの機能を有する作業車両において、パーキングブレーキやフットブレーキを作動させる場合には、いずれもブレーキ操作信号を受けて電動モータの制御(停止制御や減速制御)を行う技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、パーキングブレーキおよびフットブレーキが互いに同じ構造で機能するため、すなわち、電動モータの制御のみで行うため、たとえば、電源が切れた場合にはブレーキ状態がリセットされてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ブレーキ作動の確実性を高めて安全性を向上させることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業車両(1)は、走行車体(2)と、作業機(3)とを備える作業車両(1)であって、前記走行車体(2)を走行駆動する電動モータ(41)と、前記走行車体(2)にブレーキを作動させるブレーキ機構(50)と、前記ブレーキ機構(60)によって前記走行車体(2)にブレーキを作動させる場合に操作される、ハンドレバー(29)およびフットペダル(28)の少なくともいずれか一方、および電動アクチュエータ(30)を含むブレーキ操作具(60)とを備え、前記ブレーキ機構(50)は、前記電動モータ(41)の電源オフによって、前記電動モータ(41)の内部においてブレーキが作動する構成であり、ブレーキオン(P1)位置およびブレーキオフ位置(P2)を有し、前記ブレーキオン位置(P1)および前記ブレーキオフ位置(P2)が切り替え可能であり、前記ブレーキオン位置(P1)へ切り替えられると、前記電動モータ(41)の電源オフとなるブレーキ信号を発するブレーキ信号発生部(54)と、前記ブレーキ操作具(60)および前記ブレーキ信号発生部(54)の間に設けられ、前記ブレーキ操作具(60)の引き動作に応じて、前記ブレーキ信号発生部(54)において前記ブレーキオン位置(P1)へ切り替えるように引き位置が所定の位置へ移動する引き代部(57)と、前記引き代部(57)に設けられ、前記ブレーキ操作具(60)の引き動作による前記引き代部(57)の前記引き位置を前記所定の位置に固定する引き位置固定部(58)とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る作業車両によれば、ブレーキ作動の確実性を高めて安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業車両の内部を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る作業車両を示す概略背面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る作業車両のブレーキ機構を示す概略側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る作業車両の制御系を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ブレーキ機構の説明図(その1)である。
【
図7】
図7は、ブレーキ機構の説明図(その2)である。
【
図8】
図8は、ブレーキ機構の固定解除機構を示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、自動ブレーキ判定に係る制御系の一例を示すブロック図(その1)である。
【
図10】
図10は、自動ブレーキ判定に係る制御系の一例を示すブロック図(その2)である。
【
図11】
図11は、自動ブレーキ判定に係る制御系の一例を示すブロック図(その3)である。
【
図12】
図12は、自動ブレーキ判定に係る制御系の一例を示すブロック図(その4)である。
【
図14】
図14は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その1)である。
【
図15】
図15は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その2)である。
【
図16】
図16は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その3)である。
【
図17】
図17は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その4)である。
【
図18】
図18は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その5)である。
【
図19】
図19は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両の概要>
まず、
図1~5を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1を示す概略側面図である。
図2は、実施形態に係る作業車両1の内部を示す概略斜視図である。
図3は、実施形態に係る作業車両1を示す概略背面図である。
図4は、実施形態に係る作業車両1のブレーキ機構50を示す概略側面図である。
図5は、実施形態に係る作業車両1の制御系を示すブロック図である。
【0011】
なお、以下では、作業車両1として、走行しながら芝草など(以下、芝草という)を刈り取り、刈り取った芝草を集草する乗用芝刈機を例に説明する。なお、作業車両1は、乗用芝刈機に限定されず、圃場内を走行しながら耕耘などの作業を行うトラクタや、圃場内を走行しながら苗の植え付け作業を行う田植機などであってもよい。
【0012】
図1に示すように、作業車両1は、走行車体2と、作業機3とを備える。走行車体2は、所定の作業領域を走行可能である。作業機3は、走行車体2に設けられ、芝草を刈り取る刈取り装置である。
【0013】
走行車体2は、前部に左右一対の前輪21と、後部に左右一対の後輪22とを備える。走行車体2は、上部前側にボンネット部23と、ボンネット部23の後方に運転者(作業者ともいう)が搭乗する操縦部24と、操縦部24の後方に運転者を保護するための安全フレーム(ロプス)25と、安全フレーム25の下方に作業機3で刈り取った芝草を貯留する集草容器26とを備える。
【0014】
ボンネット部23には、走行輪である後輪22を駆動する電動モータである走行用モータ41(
図3参照)、作業機3を駆動する電動モータである作業機用モータ42(
図3参照)へ供給する電力を蓄電するバッテリ43(
図2参照)が設けられる。バッテリ43は、ボンネットカバーに覆われている。なお、ボンネットカバーは、走行車体2の前部に開閉可能に設けられる。このように、ボンネット部23に形成される空間を有効に活用することができる。また、作業車両1の前後方向の重量バランスの相違を抑えることができる。
【0015】
操縦部24の後部には、運転席241が設けられる。運転席241の前方にはステアリングホイール242が設けられる。ステアリングホイール242は、上下方向に延在するステアリングシャフトの上部に支持される。ステアリングシャフトは、ステアリングポストに支持される。
【0016】
運転席241の左側のフェンダ27には、作業機3で刈り取った刈草を集草容器26へ搬送するシュータに残った刈草を、集草容器26へ強制搬送するクリーナを操作するクリーナレバーと、クリーナレバーの後側にバッテリ43の充電時に使用する充電用ケーブルを収納する収納ケースとが設けられる。これにより、バッテリ43の充電量が所定の量以下になった場合には、作業車両1を充電ステーションへ移動することなく、作業車両1を近くの倉庫などへ移動して、倉庫などに設置された家庭用コンセントと、いわゆるOBC(On Board Charger)である車載充電器(以下、OBCという)44を充電用ケーブルで接続してバッテリ43を充電することができる。なお、OBC44の入力電圧は、交流電圧100~240Vに対応する。
【0017】
運転席241の右側のフェンダ27(
図3参照)には、作業機3の昇降を操作する昇降レバーが設けられる。
【0018】
操縦部24のフロアステップ243上の左側には、ブレーキペダル(フットペダルともいう)28が設けられる。操縦部24のフロアステップ243上の右側には、前後進用のアクセルペダルが設けられる。
【0019】
操縦部24の運転席241の下側には、バッテリ・マネジメント・システム(BMS)を司り、バッテリの制御を行う電装部品(以下、BMS制御装置という)45(
図2参照)が設けられる。これにより、運転席241の下側に形成される空間を有効に活用することができる。また、運転席241の下部には、運転席241が受ける荷重を検知することで、作業者の着座を検知できる着座センサ(シート検出部)S3(
図5参照)が設けられる。
【0020】
操縦部24には、ブレーキ操作具60が設けられる。ブレーキ操作具60は、後述するブレーキ機構50によって走行車体2(作業車両1)に対してブレーキを作動させる場合に操作される。ブレーキ操作具60は、走行車体2(作業車両1)に対して、いわゆるパーキングブレーキをかける場合に操作される。ブレーキ操作具60は、ハンドレバー29およびブレーキペダル(フットペダル)28のうち少なくとも一方を含む。ハンドレバー29は、運転席241の左側に設けられ、運転者の上方への引き操作によって、パーキングブレーキを作動させる。フットペダル28は、フロアステップ243に設けられ、通常のブレーキの機能の他、運転者の所定の踏み込み量以上の踏み込み操作によって、パーキングブレーキを作動させる。なお、パーキングブレーキを作動させるフットペダル28は、通常のブレーキを作動させるものと別に設けられてもよい。
【0021】
また、ブレーキ操作具70は、電動アクチュエータ30(
図2参照)を含む。電動アクチュエータ31は、後述する電動シリンダ52(
図4参照)を含み、電動シリンダ52の伸縮によって、パーキングブレーキを作動させる。電動アクチュエータ30は、たとえば、ハンドレバー29またはフットペダル28が十分に操作されず、パーキングブレーキが作動していない場合にも、パーキングブレーキを作動させる。
【0022】
図2および3に示すように、BMS制御装置45の下側には後輪22を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機である走行用モータ41が設けられる。走行用モータ41の左右方向に延在して設けられた出力軸は、この出力軸から伝達される出力回転を減速して出力トルクを大きくしたり、回転を逆回転したりするギアボックス46の上部に連結される。なお、走行用モータ41は、左右方向の中央よりも左の後輪22に偏移した位置に設けられる。
【0023】
ギアボックス46で増減速された出力回転は、ギアボックス46の下部に設けられ差動歯車などで形成されたディファレンシャルギアを介して左右方向に延在するドライブシャフト47へ伝達される。ドライブシャフト47へ伝動された出力回転は、ドライブシャフト47の両端部に支持された左右の後輪22へ伝達される。
【0024】
走行用モータ41の下側には、作業機3を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機などの電動機である作業機用モータ42が設けられる。作業機用モータ42の前後方向へ延在して設けられた出力軸は、前後方向へ延在して設けられた自在継手の後部に連結される。
【0025】
また、出力軸は、ドライブシャフト47の上側に、このドライブシャフト47と直交して設けられる。これにより、走行用モータ41の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、作業機用モータ42と作業機3との間の伝動経路を短くすることができるので、作業機用モータ42の出力回転を作業機3へ効率よく伝達することができる。なお、作業機用モータ42は、左右方向の中央よりも左の後輪22側へ偏移した位置に設けられる。
【0026】
自在継手の前部は、この自在継手から伝達される出力回転を減速して出力トルクを大きくするギアボックスに連結される。ギアボックスへ伝達された出力回転は、ギアボックスの上下方向に延在して設けられた出力軸を介して、作業機3の左の排出通路に設けられた左の刈刃へ伝達される。
【0027】
ギアボックスの右側には、左右方向へ延在する連結部材が連結される。連結部材の右部は、ギアボックスに連結される。ギアボックスへ伝達された出力回転は、ギアボックスの上下方向へ延在して設けられた出力軸を介して、作業機3の右の排出通路に設けられた右の刈刃へ伝達される。
【0028】
走行用モータ41の回転速度は、ステアリングホイール242の左側に設けられた、動力設定装置であるスロットルレバーの操作で増減速させることができる。スロットルレバーを中立姿勢とした場合には、走行用モータ41の出力回転の出力回転はゼロになる。スロットルレバーを中立姿勢から前側傾斜姿勢とした場合には、前側傾斜姿勢の傾斜角度の大きさに応じて走行用モータ41の出力回転は増減速される。また、変速レバーを中立姿勢から後側傾斜姿勢とした場合には、後側傾斜姿勢の傾斜角度の大きさに応じて走行用モータ41の出力回転は増減速されて、走行用モータ41の出力回転の回転方向は逆回転となる。
【0029】
また、ステアリングホイール242の前方には、各種情報が表示可能な液晶の表示部が設けられる。また、ステアリングホイール242の左方には、キースイッチS1(
図5参照)、充電スイッチS2(
図5参照)が設けられる。
【0030】
また、作業車両1は、ブレーキ機構50を備える。
図4に示すように、ギアボックス46(
図3参照)からの出力による後輪22(
図1参照)の回動を制動するブレーキ機構50は、ブレーキペダル28の操作に応じて、前後方向へ進退可能に構成されたロッド51と連結される。この場合、ロッド51の前方への引っ張り操作と連動してブレーキ機構50の作動と非作動とが切り替えられる。なお、ブレーキ機構50の他の構成については、
図6および7を用いて後述する。
【0031】
また、ロッド51には、電動シリンダ52が連結される。電動シリンダ52は、ロッド51が伸縮すると、ブレーキペダル28の操作によらず、ロッド51が前後へ進退する。電動シリンダ52の伸縮は、後述する制御部100(
図5参照)によって制御される。具体的には、運転者がブレーキペダル28を踏み込むと、ブレーキペダル28が左右方向へ延在する支軸53を中心として紙面の反時計回りへ回転し、ロッド51が前側へ移動する。これにより、ブレーキ機構50が作動して後輪22が制動される。すなわち、ブレーキ状態となる。
【0032】
また、制御部100によって電動シリンダ52が縮むように制御されると(収縮状態)、ロッド51が前側へ移動する。これにより、ブレーキ機構50が作動して後輪22が制動される。電動シリンダ52の収縮状態が維持されることで、ブレーキ状態のままホールド状態とすることができる。一方、制御部100によって電動シリンダ52が伸びるように制御されると(伸長状態)、ロッド51が後側へ移動する。これにより、ブレーキ機構50の作動が解除され、後輪22の制動が解除され、ホールド状態が解除される。
【0033】
図5に示すように、作業車両1の制御系は、制御部100を中心とする制御系である。制御部100は、いわゆるVCU(ビークル・コントロール・ユニット)であり、電子制御機器ECU(Electronic Control Unit)を有して、各種の制御が可能である。
【0034】
制御部100の入力側には、キースイッチS1、充電スイッチS2、着座センサ(シート検出部)S3、ブレーキペダルセンサS4、アクセルペダルセンサS5、走行速度センサS6、後述するブレーキ操作具センサS7などが接続される。制御部100は、これらのセンサ類が検出した情報を取得する。
【0035】
また、制御部100には、走行用MDU61、作業機用MDU62、電動シリンダ52、OBC44、BMS制御装置45などが接続される。制御部100は、これらの機器と情報の送受が可能である。
【0036】
キースイッチS1は、回動操作によって、OFF位置、ACC位置、ON位置の3つの操作位置へ切り替え可能である。キースイッチS1がOFF位置の場合、制御部100には、最低限の機能維持に必要な電流が供給される。この場合、制御部100のCPUなどの情報処理装置は動作を維持しており、キースイッチS1の操作位置の判別や、必要最低限の処理を行うよう構成される。なお、この場合、走行用モータ41、作業機用モータ42には、駆動に必要な電源供給がなされていない状態である。
【0037】
キースイッチS1がACC位置の場合、制御部100へ通常の作動に必要な電源供給がなされ、操縦部24の表示部などは起動した状態となる。一方で、走行用モータ41、作業機用モータ42には、駆動に必要な電源供給がなされていない状態であるため、たとえば、アクセルペダルを踏み込んでも、後輪22が回転せず、作業車両1が発進しない。
【0038】
キースイッチS1がON位置の場合、走行用モータ41、作業機用モータ42には、駆動に必要な電源供給がなされる。この場合、作業車両1は、後輪22および作業機3が駆動可能な状態であり、作業走行が可能な状態である。
【0039】
充電スイッチS2は、オンオフ操作が可能なモーメンタリスイッチとして構成され、オン状態の場合、外部電源からバッテリ43への充電が可能である。充電スイッチS2がオン操作されると、制御部100は、充電モードを実行する。
【0040】
また、制御部100は、着座センサ(シート検出部)S3によって運転席241への着座、ブレーキペダルセンサS4によってブレーキペダル28の踏み込み量、走行速度センサS6によって走行輪である後輪22の回転数、アクセルペダルセンサS5によってアクセルペダルの踏み込み量に関する情報をそれぞれ取得可能である。
【0041】
走行用MDU61は、インバータ制御装置であり、走行用モータ41の回転数を制御するインバータ機能と、これを制御する簡易CPU(インバータ用のリレー回路)を有する。なお、MDUとは、モータ・ドライブ・ユニットの略である。走行用MDU61は、インバータの回転数制御で走行用モータ41のオンオフを制御するとともに、インバータの回転がオフになると、走行用モータ41が有する簡易ブレーキの作動信号を出力するように機能する。また、MDU信号用リレーのオンオフによって、走行用MDU61のインバータの簡易CPUの電源が入切される仕組みとなっている。
【0042】
作業機用MDU62は、走行用MDU61と同様、インバータ制御装置であり、作業機用モータ42の回転数を制御するインバータ機能とこれを制御する簡易CPU(インバータ用のリレー回路)を有する。作業機用MDU62は、インバータの回転数制御で作業機用モータ42のオンオフを制御するとともに、インバータの回転がオフになると、作業機用モータ42が有する簡易ブレーキの作動信号を出力するように機能する。また、MDU信号用リレーのオンオフによって、作業機用MDU62のインバータの簡易CPUの電源が入切される。
【0043】
BMS制御装置45は、バッテリ43を制御する制御装置であり、とくに、バッテリ制御用回路内のリレーをオンオフ制御することによって、バッテリ43による電力供給を制御する。
【0044】
制御部100は、電動シリンダ52に対して収縮を命令する収縮信号、伸長を命令する伸長信号を送信して、電動シリンダ52の伸縮を制御する。また、制御部100は、電動シリンダ52の伸縮の状態を示すフィードバック信号を取得可能である。
【0045】
また、制御部100は、所定の条件が満たされると、電動シリンダ52を伸縮制御して、自動で走行輪である後輪22を制動または制動解除するオートパーキング機能を有する。
【0046】
<ブレーキ機構>
次に、
図6および7を参照してブレーキ機構50について説明する。
図6および7は、ブレーキ機構50の説明図である。なお、
図6および7には、ブレーキ機構50の構成を模式的に示している。ブレーキ機構50は、走行車体2(作業車両1)に対してブレーキを作動させる。ブレーキ機構50は、電動モータである走行用モータ41(
図3参照)の電源オフによって、走行用モータ41の内部においてブレーキが作動する構成である。すなわち、ブレーキ機構50は、電気信号によってパーキングブレーキをかける構成である。
【0047】
図6に示すように、ブレーキ機構50は、ブレーキ信号発生部54と、ブレーキアーム55と、ロッド56と、引き代部57と、引き位置固定部58とを備える。ブレーキ信号発生部54は、ブレーキオン位置P1と、ブレーキオフ位置P2とを有する。ブレーキ信号発生部54は、ブレーキオン位置P1に位置することで、パーキングブレーキを作動させる。ブレーキ信号発生部54は、ブレーキオフ位置P2に位置することで、パーキングブレーキを解除する。ブレーキ信号発生部54は、ブレーキオン位置P1とブレーキオフ位置P2とが切り替え可能である。ブレーキ信号発生部54は、ブレーキオン位置P1へ切り替えられると、走行用モータ41の電源オフとなるブレーキ信号を発する。
【0048】
ブレーキアーム55は、ブレーキ信号発生部54から延伸して設けられる。ロッド56は、ブレーキアーム55と、ブレーキ操作具60(
図1および2参照)であるハンドレバー29、フットペダル28および電動アクチュエータ30のそれぞれとを接続する。
【0049】
引き代部57は、ブレーキ操作具60であるハンドレバー29、フットペダル28および電動アクチュエータ30とブレーキ信号発生部54とのそれぞれの間に設けられる。各引き代部57は、ロッド56を介して、ハンドレバー29、フットペダル28および電動アクチュエータ30と接続される。引き代部57は、ロッド56の引っ張り方向に沿って長い長孔571と、長孔571に沿って移動可能なピン572とを備える。
【0050】
引き位置固定部58は、引き代部57に設けられる。引き位置固定部58は、ブレーキ操作具60の引き動作による引き代部57の引き位置を所定の位置に固定する。引き位置固定部58は、たとえば、引き代部57に設けられるラチェット機構である。引き位置固定部58によって、長孔571に沿ってブレーキ操作具60側へ引っ張られて移動したピン572は、移動した位置(引き位置)に固定される。
【0051】
引き代部57のピン572は、ブレーキ操作具60の引き動作に応じて、ブレーキ信号発生部54においてブレーキオン位置P1へ切り替えるように引き位置が所定の位置へ移動する。また、引き代部57のピン572は、ブレーキ操作具60の再度の引き動作によって、固定が解除されて元の位置へと復帰する。
【0052】
このような構成によれば、ブレーキ信号発生部54が発するブレーキ信号によってブレーキが作動するような電気制御のブレーキ作動構成において、ブレーキ信号発生部54の前段にブレーキ操作具60の引き動作を機械的に調整(固定)する機構を有するため、たとえば、走行用モータ41の電源が意図せず切れた(電源オフとなった)場合でも、ブレーキ(いわゆる、パーキングブレーキ)状態が保持される。また、走行用モータ41の電源が切れた(電源オフとなった)後に再度通電した場合でも、ブレーキ(パーキングブレーキ)状態が自動でリセットされない。すなわち、ブレーキ作動の確実性を高めることができ、これにより、安全性を向上させることができる。
【0053】
図7に示すように、ブレーキ機構50では、たとえば、電動アクチュエータ30が引き動作の状態のまま動作不能となった場合、引き代部57のピン572の位置の固定が機械的に解除可能である。
【0054】
図8は、ブレーキ機構50の固定解除機構59を示す概略斜視図である。
図8に示すように、ブレーキ機構50は、固定解除機構59を備える。固定解除機構59は、走行車体2にパーキングブレーキを作動させた場合にブレーキ位置に固定した電動アクチュエータ30を手動操作によって解除する。
【0055】
固定解除機構59は、ピン部材591と、レバー部592とを備える。ピン部材591は、電動アクチュエータ30をブレーキ位置に固定する。レバー部592は、ピン部材の電動アクチュエータ30を固定する側とは反対側の端部に設けられる。固定解除機構59は、レバー部592がを引っ張られることで、ピン部材591による電動アクチュエータ30の固定を解除する。なお、ピン部材591およびレバー部592は、コイルばねなどの付勢部材593によって付勢されているため、たとえば、運転者がレバー部592から手を離すと、ピン部材591およびレバー部592は元の位置へ復帰する。
【0056】
このような構成によれば、たとえば、走行用モータ41の電源が復帰できない場合でも、手動操作による電動アクチュエータ30の固定解除が可能となる。
【0057】
<自動ブレーキ判定>
次に、
図9~12を参照して電動アクチュエータ30を自動で作動させるための自動ブレーキ判定について説明する。
図9~12は、自動ブレーキ判定に係る制御系の一例を示すブロック図である。
【0058】
図9に示すように、制御部100(
図5参照)は、ブレーキ判定部110を備える。ブレーキ判定部110は、走行速度検出部(走行速度センサ)S6、パーキングブレーキ検出部(ブレーキ操作具センサ)S7、シート検出部(着座センサ)S3と接続される。
【0059】
走行速度検出部S6は、電動モータである走行用モータ41による走行車体2の走行速度を検出する。パーキングブレーキ検出部S7は、ブレーキ操作具60のうち、電動アクチュエータ30のブレーキ位置を検出する。シート検出部S3は、運転者の運転席241からの離席を検出する。
【0060】
ブレーキ判定部110は、所定の条件を満たした場合に電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定する。ブレーキ判定部110は、自動ブレーキ判定の所定の条件を、走行速度検出部S6によって検出された走行車体2の速度超過とする。すなわち、ブレーキ判定部110は、走行速度が速度超過となる所定の速度以上となると、電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定する。さらに、ブレーキ判定部110は、自動ブレーキを作動させる場合、電動アクチュエータ30を作動させる。
【0061】
このような構成によれば、たとえば、走行用モータ41が制御不能になったような場合でも、運転者の操作によらず、走行車体2を安全に停止させることができる。また、自動でパーキングブレーキが作動することで利便性を向上させることができる。
【0062】
また、ブレーキ判定部110は、自動ブレーキ判定の所定の条件を、パーキングブレーキ検出部S7によって検出された非ブレーキ、およびシート検出部S3によって検出された運転者の運転席241からの離席とする。すなわち、ブレーキ判定部110は、パーキングブレーキが作動していない状態で運転者が運転席から離れると、電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定する。さらに、ブレーキ判定部110は、自動ブレーキを作動させる場合、電動アクチュエータ30を作動させる。
【0063】
このような構成によれば、パーキングブレーキをかけずに運転者が運転席241から離れた場合、運転者の操作によらず、走行車体2を安全に停止させることができる。また、自動でパーキングブレーキが作動することで利便性を向上させることができる。
【0064】
また、
図10に示すように、ブレーキ判定部110は、電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定すると、電動アクチュエータ30を作動させると。また、ブレーキ状態の場合には、走行用モータ制御部120によって走行用モータ41を制御して、走行用モータ41を回転させない。また、ブレーキ判定部110は、警告部130を制御する。ブレーキ判定部110は、電動アクチュエータ30へブレーキ指示信号を出力しているにも関わらずブレーキが作動しない場合には、運転者へ手動でパーキングブレーキを作動させるように、たとえば、警告ブザーや警告表示などで警告を促す。
【0065】
また、
図11に示すように、ブレーキ判定部110は、ハンドレバー検出部S71、電動アクチュエータ検出部S72、シート検出部S3と接続される。ブレーキ判定部110は、ハンドレバー検出部S71、電動アクチュエータ検出部S72、シート検出部S3の検出結果に基づいて電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定すると、電動アクチュエータ30を作動させる。また、ブレーキ状態の場合には、走行用モータ制御部120によって走行用モータ41を制御して、走行用モータ41を回転させない。また、ブレーキ判定部110は、警告部130を制御する。ブレーキ判定部110は、電動アクチュエータ30へブレーキ指示信号を出力しているにも関わらずブレーキが作動しない場合には、運転者へ手動でパーキングブレーキを作動させるように、たとえば、警告ブザーや警告表示などで警告を促す。
【0066】
また、
図12に示すように、ブレーキ判定部110は、ハンドレバー検出部S71、電動アクチュエータ検出部S72、フットペダル検出部S73、シート検出部S3と接続される。ブレーキ判定部110は、ハンドレバー検出部S71、電動アクチュエータ検出部S72、フットペダル検出部S73、シート検出部S3の検出結果に基づいて電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定すると、電動アクチュエータ30を作動させる。また、ブレーキ状態の場合には、走行用モータ制御部120によって走行用モータ41を制御して、走行用モータ41を回転させない。また、ブレーキ判定部110は、フットペダル28が最も踏み込まれた位置、かつ、走行用モータ41の回転が停止していない場合に、走行用モータ41への駆動指示を強制的に停止する。また、ブレーキ判定部110は、警告部130を制御する。ブレーキ判定部110は、電動アクチュエータ30へブレーキ指示信号を出力しているにも関わらずブレーキが作動しない場合には、運転者へ手動でパーキングブレーキを作動させるように、たとえば、警告ブザーや警告表示などで警告を促す。
【0067】
<水冷回路の構成>
次に、
図13~19を参照して作業車両1の水冷回路80の構成について説明する。
図13は、水冷回路80の構成を示す図である。
図14~19は、水冷制御の制御系の一例を示すブロック図である。
【0068】
図13に示すように、作業車両1(
図1参照)は、電動モータである走行用モータ41および電動モータである作業機用モータ42を冷却するための水冷回路80を備える。水冷回路80は、タンク81と、電動ウォータポンプ(EMP)82と、バルブ83と、コントロールユニット84と、電動モータ41,42と、インバータ85と、温度計86と、圧力計87と、ファン89とを備える。コントロールユニット84は、OBC44と、DCDCコンバータ88とを備える。水冷回路80では、走行系の経路R1および作業機系の経路R2が並列に接続される。
【0069】
複数の電動モータ41,42は、それぞれの作業状態によって温度が異なる。このため、各径路を並列にして水冷回路80を構成することで、バランスよく冷却を行うことができる。また、各電動モータ41,42およびインバータ85の温度は、作業状態によれず、概ね同じような温度上昇となり、かつ、電動モータ41,42の耐熱性がインバータ85の耐熱性よりも大きいことから、インバータ85が電動モータ41,42の直前に接続されても冷却が可能である。このため、水冷回路の回路構成を簡素化することができる。
【0070】
また、水冷回路80では、電動モータ41,42およびインバータ85以外の電装品であるOBC44およびDCDCコンバータ88が直列に接続される。電動モータである走行用モータ41は、他の電動モータ42と比較して温度上昇が緩やかなため、別の電装品を接続してもとくに問題はない。このため、OBC44およびDCDCコンバータ88が直列であることで、回路構成を簡素化することができる。
【0071】
水冷回路80に接続される複数の電装品は、それぞれ電装温度検出部861を備える。
図14に示すように、流量制御部140を備えることで、各電装温度検出部861で検出された温度に応じて電動ウォータポンプ82の流量を変更する。これにより、電力ロスを抑えることができる。
【0072】
また、
図15に示すように、風量制御部150を備えることで、各電装温度検出部861で検出された温度に応じてファン89の風量を変更する。これにより、電力ロスを抑えることができる。なお、ファン89は、走行系の経路R1および作業機系の経路R2の各径路にそれぞれ設けられてもよい。
【0073】
また、
図16に示すように、逆転制御部160を備えることで、各電装温度検出部861で検出された温度に応じてファン89を逆転させる。これにより、ファン89の周りに堆積している塵埃を吹き飛ばすことができ、冷却機構を回復させることができ、オーバーヒートを抑えることができる。
【0074】
また、水冷回路80には、冷却水の温度を検出する少なくとも1つの水温度検出部862を備える。
図17に示すように、流量制御部140を備えることで、各水温度検出部862で検出された温度に応じて電動ウォータポンプ82の流量を変更する。これにより、電力ロスを抑えることができる。
【0075】
また、
図18に示すように、風量制御部150を備えることで、各水温度検出部862で検出された温度に応じてファン89の流量を変更する。これにより、電力ロスを抑えることができる。なお、ファン89は、走行系の経路R1および作業機系の経路R2の各径路にそれぞれ設けられてもよい。
【0076】
また、
図19に示すように、逆転制御部160を備えることで、各電装温度検出部861で検出された温度に応じてファン89を逆転させる。これにより、ファン89の周りに堆積している塵埃を吹き飛ばすことができ、冷却機構を回復させることができ、オーバーヒートを抑えることができる。
【0077】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両1が実現される。
【0078】
(1)走行車体2と、作業機3とを備える作業車両1であって、走行車体2を走行駆動する電動モータ41と、走行車体2にブレーキを作動させるブレーキ機構50と、ブレーキ機構50によって走行車体2にブレーキを作動させる場合に操作される、ハンドレバー29およびフットペダル28の少なくともいずれか一方、および電動アクチュエータ30を含むブレーキ操作具60とを備え、ブレーキ機構50は、電動モータ41の電源オフによって、電動モータ41の内部においてブレーキが作動する構成であり、ブレーキオン位置P1およびブレーキオフ位置P2を有し、ブレーキオン位置P1およびブレーキオフ位置P2が切り替え可能であり、ブレーキオン位置P1へ切り替えられると、電動モータ41の電源オフとなるブレーキ信号を発するブレーキ信号発生部54と、ブレーキ操作具60およびブレーキ信号発生部54の間に設けられ、ブレーキ操作具60の引き動作に応じて、ブレーキ信号発生部54においてブレーキオン位置P1へ切り替えるように引き位置が所定の位置へ移動する引き代部57と、引き代部57に設けられ、ブレーキ操作具60の引き動作による引き代部57の引き位置を所定の位置に固定する引き位置固定部58とを有する、作業車両1。
【0079】
このような作業車両1によれば、ブレーキ信号発生部54が発するブレーキ信号によってブレーキが作動するような電気制御のブレーキ作動構成において、ブレーキ信号発生部54の前段にブレーキ操作具60の引き動作を機械的に調整(固定)する機構を有するため、たとえば、電動モータ41の電源が意図せず切れた(電源オフとなった)場合でも、ブレーキ(いわゆる、パーキングブレーキ)状態が保持される。また、電動モータ41の電源が切れた(電源オフとなった)後に再度通電した場合でも、ブレーキ(パーキングブレーキ)状態が自動でリセットされない。すなわち、ブレーキ作動の確実性を高めることができ、これにより、安全性を向上させることができる。
【0080】
(2)上記(1)において、ブレーキ機構50は、走行車体2にブレーキを作動させた場合にブレーキ位置に固定した電動アクチュエータ30を手動操作によって解除可能な固定解除機構59を有する、作業車両1。
【0081】
このような作業車両1によれば、上記(1)の効果に加えて、たとえば、電動モータ41の電源が復帰できない場合でも、手動操作による電動アクチュエータ30の固定解除が可能となる。
【0082】
(3)上記(1)または(2)において、電動モータ41による走行車体2の走行速度を検出する走行速度検出部S6と、ブレーキ操作具60のブレーキ位置を検出するパーキングブレーキ検出部S7と、作業車両1の運転者の運転席241からの離席を検出するシート検出部S3と、所定の条件を満たした場合に電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定するブレーキ判定部110とを備え、所定の条件は、走行速度検出部S6による走行車体2の速度超過の検出である、作業車両1。
【0083】
このような作業車両1によれば、上記(1)または(2)の効果に加えて、たとえば、電動モータ41が制御不能になったような場合でも、運転者の操作によらず、走行車体2を安全に停止させることができる。また、自動でパーキングブレーキが作動することで利便性を向上させることができる。
【0084】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、電動モータ41による走行車体2の走行速度を走行検出する走行速度検出部S6と、ブレーキ操作具60のブレーキ位置を検出するパーキングブレーキ検出部S7と、作業車両1の運転者の運転席からの離席を検出するシート検出部S3と、所定の条件を満たした場合に電動アクチュエータ30による自動ブレーキを作動させるか否かを判定するブレーキ判定部110とを備え、所定の条件は、パーキングブレーキ検出部S7による非ブレーキの検出、およびシート検出部S3による運転者の離席の検出である、作業車両1。
【0085】
このような作業車両1によれば、上記(1)~(3)のいずれかの効果に加えて、パーキングブレーキをかけずに運転者が運転席241から離れた場合、運転者の操作によらず、走行車体2を安全に停止させることができる。また、自動でパーキングブレーキが作動することで利便性を向上させることができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 作業車両
2 走行車体
3 作業機
28 フットペダル
29 ハンドレバー
30 電動アクチュエータ
41 電動モータ
50 ブレーキ機構
54 ブレーキ信号発生部
57 引き代部
58 引き位置固定部
59 固定解除機構
60 ブレーキ操作具
110 ブレーキ判定部
P1 ブレーキオン位置
P2 ブレーキオフ位置
S3 シート検出部
S6 走行速度検出部
S7 パーキングブレーキ検出部