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特開2025-103515ウレタンプレポリマー及びOA用ローラ
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  • 特開-ウレタンプレポリマー及びOA用ローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103515
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】ウレタンプレポリマー及びOA用ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20250702BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20250702BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20250702BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20250702BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20250702BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/16 103
G03G15/08 235
G03G15/08 221
G03G15/20 515
G03G15/02 101
B65H5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220953
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188075
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 修
(72)【発明者】
【氏名】小林 右弥
【テーマコード(参考)】
2H033
2H077
2H171
2H200
3F049
【Fターム(参考)】
2H033AA25
2H033BB02
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB26
2H033BB29
2H033BB30
2H077AC04
2H077AD06
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
2H077FA23
2H077FA25
2H171FA24
2H171FA25
2H171FA26
2H171FA27
2H171FA30
2H171GA15
2H171PA05
2H171PA09
2H171QA01
2H171QB03
2H171QB07
2H171QB08
2H171QB35
2H171QB45
2H171QB47
2H171QC03
2H171QC14
2H171QC40
2H171SA31
2H171TA17
2H171TB13
2H171UA03
2H171UA06
2H171UA07
2H171UA08
2H171UA10
2H171UA12
2H171UA22
2H171VA02
2H171VA04
2H171VA06
2H171VA09
2H171XA02
2H200FA16
2H200GA23
2H200GB25
2H200HA01
2H200HB12
2H200HB45
2H200JA02
2H200JA25
2H200JB13
2H200JB45
2H200MA03
2H200MA04
2H200MA08
2H200MB01
2H200MC01
3F049AA10
3F049CA15
3F049LA01
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】紫外線を吸収する顔料を含む基材層と、紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層とを備えたOA用ローラにおいて、製造時間を増大させることなく、エラストマー層の接着不良を抑制すること。
【解決手段】ウレタンプレポリマーは、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止することにより得られたものからなる。OA用ローラは、シャフトの外周面に基材層、プライマー層、及び、エラストマー層が形成されたものからなる。基材層は発泡樹脂と紫外線を吸収する顔料とを含む。プライマー層は第1の紫外線半硬化型エラストマーを含み、エラストマー層は第2の紫外線硬化型エラストマーを含む。第1の紫外線硬化型エラストマーは、上記のウレタンプレポリマーを含む原料を光重合させることにより得られるエラストマーを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソアネートとを反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーとし、前記NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止することにより得られ、
次の式(1)~式(4)を満たすウレタンプレポリマー。
0.30≦Y1/X≦0.70 …(1)
0.10≦Y2/X≦0.50 …(2)
0.05≦Y3/X≦0.40 …(3)
1.00≦(Y1+Y2+Y3)/X≦1.05 …(4)
但し、
Xは、前記ポリイソシアネートに含まれるNCO基のモル数、
1は、前記ポリオールに含まれるOH基のモル数、
2は、前記紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数、
3は、前記非紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数。
【請求項2】
前記非紫外線硬化性モノオールは、イオン性化合物からなる導電性モノオールを含む請求項1に記載のウレタンプレポリマー。
【請求項3】
シャフトと、
前記シャフトの外周面に形成された基材層と、
前記基材層の外周面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の外周面に形成されたエラストマー層と
を備え、
前記基材層は、発泡樹脂と、前記発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含み、
前記プライマー層は、第1の紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記エラストマー層は、第2の紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記第1の紫外線硬化型エラストマーは、請求項1に記載のウレタンプレポリマーを含む原料を光重合させることにより得られるエラストマーを含む
OA用ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンプレポリマー及びOA用ローラに関し、さらに詳しくは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ等の各種OA機器に用いられるOA用ローラ、及び、このようなOA用ローラのプライマー層の形成に用いられるウレタンプレポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成は、一般に、
(a)帯電ローラを用いて有機感光体(OPC)ドラムの表面を均一に帯電させ、
(b)帯電したOPCドラムにレーザーを照射し、照射領域の帯電をキャンセルすることにより、OPCドラムの表面に静電潜像を作り、
(c)現像ローラを用いてOPCドラムの表面にトナーを静電付着(現像)させ、
(d)転写ローラを用いてトナーをOPCドラムの表面から紙の表面に転写し、
(e)定着ローラを用いてトナーを紙に定着させる
ことにより行われる。
【0003】
このように、電子写真方式を用いた画像形成装置には、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラなどの各種ローラ(以下、これらを総称して「OA用ローラ」ともいう)が用いられている。
OA用ローラは、一般に、金属シャフトと、金属シャフトの表面に形成された弾性層とを備えている。弾性層は、一般に、低硬度の高分子弾性フォームからなる。弾性層の表面には、所定の特性を有する他の層が形成されることもある。例えば、ローラ表面が低硬度の高分子弾性フォームからなる場合、ローラ表面にトナーが付着し、トナーフィルミング(感光体ドラム表面にトナーが薄く付着する現象)の原因となることがある。このような場合、弾性層の表面に摩擦係数を下げるためのソリッド層が形成される場合がある。
【0004】
このようなOA用ローラ及びその製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、
(a)金属製シャフトの表面に発泡層及びスキン層からなる弾性層を形成し、
(b)スキン層の表面に紫外線硬化型樹脂組成物を厚み100μmとなるように塗布し、
(c)塗膜に紫外線を照射することにより硬化させ、ソリッド層を形成する
発泡体ローラの製造方法が開示されている。
【0005】
同文献には、
(A)溶剤系塗料又は水系塗料を塗布し、熱風で乾燥させることによりソリッド層を形成する場合、長い乾燥ラインを必要とし、ソリッド層の品質も安定しない点、及び、
(B)紫外線硬化型樹脂組成物を用いてソリッド層を形成すると、長い乾燥ラインを必要とせず、かつ、品質も安定化する点
が記載されている。
【0006】
特許文献2には、
(a)導電性のシャフトの外周面に、発泡樹脂と紫外線を吸収する顔料とを含む基材層を形成し、
(b)基材層の外周面に非紫外線硬化型エラストマーを含むプライマー層を形成し、
(c)プライマー層の外周面に紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層を形成する
ことにより得られるOA用ローラが開示されている。
【0007】
同文献には、紫外線を吸収する顔料を含む基材層と、紫外線硬化型のエラストマー層との間に非紫外線硬化型のプライマー層を介在させると、紫外線硬化型エラストマーの原料の硬化不良が抑制される点が記載されている。
【0008】
OA用ローラの中でも、転写ローラ、現像ローラ、帯電ローラ等には、導電性が要求される。金属製シャフトの表面に形成される弾性層(基材層)が発泡樹脂のみからなる場合、導電性が不足するため、弾性層には、通常、導電材が添加される。また、弾性層の最表面が発泡樹脂からなる場合、気孔部分において静電気力が不足するために、トナーが部分的に転写されず、画像の一部が欠落する現象(中抜け現象)が発生することがある。そのため、発泡樹脂からなる弾性層(基材層)の最表面に、気孔を含まない表面層(エラストマー層)を形成することが行われている。
【0009】
基材層の表面にエラストマー層を形成する場合において、エラストマー層として紫外線硬化型エラストマーを用いると、エラストマー層を短時間で形成することができる。しかしながら、基材層に含まれる導電材がカーボンなどの紫外線を吸収する顔料である場合において、エラストマー層として紫外線硬化型エラストマーを用いると、基材層とエラストマー層との界面で硬化不良が発生し、十分な接着強度を確保できないという問題がある。
一方、この問題を解決するために、エラストマー層として熱硬化型エラストマー、湿気硬化型エラストマー等の非紫外線硬化型エラストマーを用いると、硬化に時間がかかるという問題がある。
【0010】
これに対し、特許文献2に記載されているように、紫外線を吸収する顔料を含む基材層の表面に紫外線硬化型エラストマーからなるエラストマー層を形成する場合において、基材層とエラストマー層との間に非紫外線硬化型エラストマーからなるプライマー層を介在させると、エラストマー層の硬化不良を回避することができる。また、エラストマー層及びプライマー層の全体を非紫外線硬化型エラストマーを用いて形成する場合に比べて、硬化時間を短縮することができる。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、エラストマー層及びプライマー層の全体を紫外線硬化型エラストマーを用いて形成する場合に比べて、硬化時間が長くなる。また、OA用ローラの使用中に非紫外線硬化型エラストマー内に残留している溶剤及び/又は低分子量の添加剤がブリードアウトするおそれがある。さらに、非紫外線硬化型エラストマーは、紫外線硬化型エラストマーに比べて、導電性の制御が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-310136号公報
【特許文献2】特開2023-097537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線を吸収する顔料を含む基材層と、紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層とを備えたOA用ローラにおいて、製造時間を増大させることなく、エラストマー層の接着不良を抑制することにある。
本発明が解決しようとする他の課題は、このようなOA用ローラにおいて、導電性の制御を容易化することにある。
【0014】
本発明が解決しようとする他の課題は、このようなOA用ローラにおいて、溶剤及び/又は低分子量の添加剤のブリードアウト、並びに、これに起因する環境リスクを低減することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなOA用ローラの製造に適したウレタンプレポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係るウレタンプレポリマーは、
ポリオールとポリイソアネートとを反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーとし、前記NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止することにより得られ、
次の式(1)~式(4)を満たす。
0.30≦Y1/X≦0.70 …(1)
0.10≦Y2/X≦0.50 …(2)
0.05≦Y3/X≦0.40 …(3)
1.00≦(Y1+Y2+Y3)/X≦1.05 …(4)
但し、
Xは、前記ポリイソシアネートに含まれるNCO基のモル数、
1は、前記ポリオールに含まれるOH基のモル数、
2は、前記紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数、
3は、前記非紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数。
【0016】
前記非紫外線硬化性モノオールは、イオン性化合物からなる導電性モノオールを含むのが好ましい。
【0017】
本発明に係るOA用ローラは、
シャフトと、
前記シャフトの外周面に形成された基材層と、
前記基材層の外周面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の外周面に形成されたエラストマー層と
を備え、
前記基材層は、発泡樹脂と、前記発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含み、
前記プライマー層は、第1の紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記エラストマー層は、第2の紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記第1の紫外線硬化型エラストマーは、本発明に係るウレタンプレポリマーを含む原料を光重合させることにより得られるエラストマーを含む。
【発明の効果】
【0018】
NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を適量の紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止すると、光重合させてもポリマーの硬度が過度に高くならないウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)が得られる。これは、ウレタンプレポリマーの末端に適量の非紫外線硬化性モノオールが結合しているために、光重合させてもポリマーの分子量が過度に高くならないためと考えられる。
【0019】
紫外線を吸収する顔料を含む基材とエラストマー層との間に、このようなウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるプライマー層(第1の紫外線硬化型エラストマーからなるプライマー層)を介在させると、エラストマー層が剥離しにくくなる。これは、プライマー層が適度な硬さとタック性を有するために、プライマー層が接着剤層として機能するためと考えられる。
【0020】
本発明に係るウレタンプレポリマーは、紫外線の照射により硬化させることができるため、硬化時間が短い。また、非紫外線硬化性モノオールに占める導電性モノオールの割合を増減させることで、硬化後のポリマーの導電性を容易に制御することができる。さらに、本発明に係るウレタンプレポリマーは、溶剤で希釈することなく使用することができるので、溶剤及び/又は低分子量の添加剤のブリードアウト、並びに、これに起因する環境リスクを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るOA用ローラの正面図(左図)及びそのA-A’線断面図(右図)である。
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. ウレタンプレポリマー]
本発明に係るウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)は、
ポリオールとポリイソアネートとを反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーとし、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止する
ことにより得られる。
【0023】
[1.1. 成分]
[1.1.1. ポリオール]
[A. 材料]
ポリオールは、NCO基末端ウレタンプレポリマーを製造するための主原料の1つである。本発明において、ポリオールの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
また、本発明において、ポリオールの官能基数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
さらに、本発明において、いずれか1種のポリオールを用いても良く、あるいは、2種以上のポリオールを組み合わせて用いても良い。
【0024】
ポリオールとしては、
(a)開始剤にアルキレンオキサイドを付加重合させることにより得られるポリエーテルポリオール、
(b)カルボン酸と多価アルコールとを脱水縮合させることにより得られるポリエステルポリオール、
(c)ポリエーテルポリオール中に、アクリロニトリルやスチレンを共重合させることにより得られるポリマー微粒子が分散しているポリマーポリオール
などがある。
【0025】
[B. 数平均分子量]
本発明において、ポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
一般に、ポリオールの数平均分子量が小さくなりすぎると、ウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるポリマーの硬度が過度に高くなり、基材への追従性が悪くなる場合がある。従って、ポリオールの数平均分子量は、1000以上が好ましい。数平均分子量は、さらに好ましくは、1500以上、あるいは、2000以上である。
一方、ポリオールの数平均分子量が大きくなりすぎると、ウレタンプレポリマーの粘度が過度に高くなり、基材表面への塗布が困難となる場合がある。従って、ポリオールの数平均分子量は、6000以下が好ましい。数平均分子量は、さらに好ましくは、5500以下、あるいは、5000以下である。
【0026】
[1.1.2. ポリイソシアネート]
[A. 材料]
ポリイソシアネートは、NCO基末端ウレタンプレポリマーを製造するための主原料の他の1つである。本発明において、ポリイソシアネートの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
また、本発明において、ポリイソシアネートの官能基数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
さらに、本発明において、いずれか1種のポリイソシアネートを用いても良く、あるいは、2種以上のポリイソシアネートを組み合わせて用いても良い。
【0027】
ポリイソシアネートとしては、
(a)芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物、若しくは、脂環族系イソシアネート化合物、
(b)上記化合物の変性物
などがある。
【0028】
芳香族系イソシアネート化合物としては、例えば、
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、
粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、
ナフタレンジイソシアネート(NDI)、
p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、
テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、
トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
【0029】
脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、
リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
【0030】
脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、
シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水素添加XDI(H6XDI)、
水素添加MDI(H12MDI)等が挙げられる。
【0031】
変性イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0032】
[B. 分子量]
本発明において、ポリイソシアネートの分子量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
【0033】
[1.1.3. 紫外線硬化性モノオール]
「紫外線硬化性モノオール」とは、分子内に1個又は2個以上の光重合性官能基と、1個のOH基とを備えた有機化合物をいう。紫外線硬化性モノオールは、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を封止すると同時に、ウレタンプレポリマーに光重合性官能基を付加する機能を持つ。
【0034】
本発明において、紫外線硬化性モノオールの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
さらに、本発明において、いずれか1種の紫外線硬化性モノオールを用いても良く、あるいは、2種以上の紫外線硬化性モノオールを組み合わせて用いても良い。
【0035】
光重合性官能基としては、例えば、アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、メタクリレート基などがある。紫外線硬化性モノオールは、特に、アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、及び、メタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有するモノオールが好ましい。
【0036】
アリル基を有する紫外線硬化性モノオールとしては、例えば、アリルアルコール、アリルエーテルグリコール、ヒドロキシエチルアリルエーテルなどがある。
ビニルエーテル基を有する紫外線硬化性モノオールとしては、例えば、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどがある。
【0037】
アクリレート基を有する紫外線硬化性モノオールとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートなどがある。
メタリレート基を有する紫外線硬化性モノオールとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレートなどがある。
【0038】
[1.1.4. 非紫外線硬化性モノオール]
「非紫外線硬化性モノオール」とは、分子内に1個のOH基を備えているが、光重合性官能基を備えていない有機化合物をいう。非紫外線硬化性モノオールは、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を封止すると同時に、ウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるポリマーの分子量が過度に高くなるのを抑制する機能(架橋調整機能)を持つ。
【0039】
非紫外線硬化性モノオールは、導電性モノオールと、非導電性モノオールに大別される。
「導電性モノオール」とは、イオン性化合物からなり、かつ、光重合性官能基を備えていないモノオールをいう。導電性モノオールは、ウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるポリマーの体積抵抗率を下げる機能を持つ。
「非導電性モノオール」とは、非イオン性化合物からなり、かつ、光重合性官能基を備えていないモノオールをいう。非導電性モノオールは、ウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるポリマーの体積抵抗率を下げる機能を持たない。
【0040】
本発明において、非紫外線硬化性モノオールの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
さらに、本発明において、いずれか1種の非紫外線硬化性モノオールを用いても良く、あるいは、2種以上の非紫外線硬化性モノオールを組み合わせて用いても良い。
【0041】
導電性モノオールとしては、例えば、
(a)水酸基含有第四級アンモニウム塩型カチオン性導電材(例えば、日油(株)製、「カチオンIN」)、
(b)水酸基含有イミダゾリウム塩型カチオン性導電材、
(c)水酸基含有ピリジン塩型カチオン性導電材、
(d)水酸基含有ピロリジウム塩型カチオン性導電材、
(e)水酸基含有ホスホニウム塩型カチオン性導電材、
などがある。
【0042】
非導電性モノオールとしては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどがある。
【0043】
[1.2. 反応]
[1.2.1. 反応条件]
まず、NCO基過剰の条件下において、ポリオールとポリイソアネートとを反応させる。これにより、NCO基末端ウレタンプレポリマーが得られる。
次に、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止する。これにより、本発明に係るウレタンプレポリマーが得られる。
【0044】
本発明において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
同様に、NCO基末端ウレタンプレポリマーと、紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールとの反応条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
【0045】
[1.2.2. 原料配合]
本発明に係るウレタンプレポリマーは、次の式(1)~式(4)を満たしている必要がある。
0.30≦Y1/X≦0.70 …(1)
0.10≦Y2/X≦0.50 …(2)
0.05≦Y3/X≦0.40 …(3)
1.00≦(Y1+Y2+Y3)/X≦1.05 …(4)
但し、
Xは、ポリイソシアネートに含まれるNCO基のモル数、
1は、ポリオールに含まれるOH基のモル数、
2は、紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数、
3は、非紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数。
【0046】
また、本発明に係る紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーは、次の式(5)をさらに満たしているのが好ましい。
0.00≦Y31/Y3≦1.00 …(5)
但し、
3は、非紫外線硬化性モノオールに含まれるOH基のモル数、
31は、導電性モノオールに含まれるOH基のモル数。
【0047】
[A. 式(1)]
式(1)中、Y1/Xは、NCO基の総モル数に対するポリオール中のOH基のモル数の比を表す。Y1/Xが小さくなりすぎると、未反応のポリイソシアネートが過度に残存する場合がある。従って、Y1/Xは、0.30以上である必要がある。Y1/Xは、好ましくは、0.35以上、0.40以上、0.45以上、0.46以上、あるいは、0.47以上である。
一方、Y1/Xが大きくなりすぎると、未反応のポリオールが過度に残存する場合がある。従って、Y1/Xは、0.70以下である必要がある。Y1/Xは、好ましくは、0.65以下、0.60以下、0.55以下、0.54以下、あるいは、0.53以下である。
【0048】
[B. 式(2)]
式(2)中、Y2/Xは、NCO基の総モル数に対する紫外線硬化性モノオール中のOH基のモル数の比を表す。Y2/Xが小さくなりすぎると、ウレタンプレポリマーを光重合させることにより得られるポリマーの硬度が過度に低くなる場合がある。従って、Y2/Xは、0.10以上である必要がある。Y2/Xは、好ましくは、0.15以上、0.20以上、0.22以上、あるいは、0.24以上である。
一方、Y2/Xが大きくなりすぎると、光重合後のポリマーの硬度が過度に高くなる場合がある。従って、Y2/Xは、0.50以下である必要がある。Y2/Xは、好ましくは、0.45以下、0.40以下、0.38以下、あるいは、0.36以下である。
【0049】
[C. 式(3)]
式(3)中、Y3/Xは、NCO基の総モル数に対する非紫外線硬化性モノオール中のOH基のモル数の比を表す。Y3/Xが小さくなりすぎると、光重合後のポリマーの硬度が過度に高くなる場合がある。従って、Y3/Xは、0.05以上である必要がある。Y3/Xは、好ましくは、0.10以上、あるいは、0.15以上である。
一方、Y3/Xが大きくなりすぎると、光重合後のポリマーの硬度が過度に低下する場合がある。従って、Y3/Xは、0.40以下である必要がある。Y3/Xは、好ましくは、0.35以下、0.30以下、0.25以下、あるいは、0.20以下である。
【0050】
[D. 式(4)]
式(4)中、(Y1+Y2+Y3)/Xは、NCO基のモル数に対する、原料中に含まれるOH基のモル数の比を表す。理想的には、NCO基末端ウレタンプレポリマーに含まれるすべてのNCO基が紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止されるのが好ましいが、原料の配合比が不適切であると、未反応のOH基又はNCO基が残留する場合がある。
【0051】
未反応のNCO基があると、環境負荷が増大する場合がある。従って、(Y1+Y2+Y3)/Xは、1.00以上である必要がある。
一方、未反応のOH基が過剰になると、光重合後のポリマーから低分子量の成分がブリードアウトするおそれがある。従って、(Y1+Y2+Y3)/Xは、1.05以下である必要がある。(Y1+Y2+Y3)/Xは、好ましくは、1.04以下、あるいは、1.03以下である。
【0052】
[E. 式(5)]
式(5)中、Y31/Y3は、非紫外線硬化性モノオール中のOH基のモル数に対する、導電性モノオール中のOH基のモル数の比を表す。Y31/Y3はゼロでも良い。しかしながら、Y31/Y3が小さくなりすぎると、光重合後のポリマーの体積抵抗率が過度に上昇する場合がある。従って、Y31/Y3は、0.10以上が好ましい。Y31/Y3は、さらに好ましくは、0.12以上、あるいは、0.14以上である。
一方、Y31/Y3は1.00でも良い。しかしながら、Y31/Y3を必要以上に大きくしても、効果に差が無く、実益がない。また、Y31/Y3が大きくなりすぎると、高コスト化を招く場合がある。従って、Y31/Y3は、0.90以下が好ましい。Y31/Y3は、さらに好ましくは、0.70以下、0.50以下、あるいは、0.30以下である。
【0053】
[2. OA用ローラ]
図1に、本発明に係るOA用ローラの正面図(左図)及びそのA-A’線断面図(右図)を示す。図1において、OA用ローラ10は、
シャフト12と、
シャフト12の外周面に形成された基材層14と、
基材層14の外周面に形成されたプライマー層16と、
プライマー層16の外周面に形成されたエラストマー層18と
を備えている。
エラストマー層18の表面には、さらにOC層(図示せず)が形成されていても良い。
【0054】
[2.1. シャフト]
本発明において、シャフト12の材料は、特に限定されない。シャフト12は、導電性を有する材料でも良く、あるいは、導電性を有さない材料でも良い。シャフト12の材料としては、例えば、
(a)ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金などの金属、
(b)樹脂からなるマトリックス中に導電材を分散させた複合材料、
(c)樹脂の表面に導電性被膜を形成した複合材料、
(d)非導電性の樹脂、
などがある。
特に、シャフト12は、金属シャフトが好ましい。これは、金属シャフトは、他の材料からなるシャフトに比べて、導電性及び強度が高く、かつ、低コストであるためである。
【0055】
シャフト12の直径及び長さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。シャフト12は、中実のシャフトであっても良く、あるいは、中空のシャフトであっても良い。
【0056】
[2.2. 基材層]
シャフト12の外周面には、基材層14が形成されている。本発明において、基材層14は、発泡樹脂と、発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含む。基材層14は、発泡樹脂及び顔料のみからなるものでも良く、あるいは、これらに加えて、イオン導電材Aをさらに含むものでも良い。
【0057】
[2.2.1. 材料]
[A. 発泡樹脂]
本発明において、発泡樹脂の種類は、特に限定されない。発泡樹脂の材料としては、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などがある。
【0058】
これらの中でも、発泡樹脂は、発泡ポリウレタンが好ましい。OA用ローラ10は、使用中に対象物との接触及び対象物からの離脱を高速で繰り返し、それに応じて変形及び復元を繰り返す。この時、OA用ローラ10の表面の復元力が弱いと、表面が凹んだ状態のままOA用ローラ10と次の対象物とが接触するために、画像に横方向の白筋や色ムラが発生する場合がある。発泡ポリウレタンは、他の材料に比べて復元力が大きいので、このような白筋や色ムラが発生しにくいという利点がある。また、発泡ポリウレタンは、耐摩耗性に優れているという利点もある。
【0059】
本発明において、発泡樹脂の密度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、密度が小さくなりすぎると、基材層14の表面に液体状のプライマー原料を塗布したときに、基材層14の表面にプライマー原料を保持するのが困難となる場合がある。従って、密度は、35kg/m3以上が好ましい。
一方、密度が大きくなりすぎると、発泡樹脂を製造するのが困難となる場合がある。従って、密度は、800kg/m3以下が好ましい。密度は、さらに好ましくは、720kg/m3以下である。
なお、本発明において、「基材層14の密度」とは、顔料、及び、必要に応じて添加されるイオン導電材Aを含む発泡樹脂の密度をいう。
【0060】
発泡樹脂に含まれる気泡は、独立気泡が好ましい。これは、基材層14の表面にプライマー層16を形成する場合において、プライマー層16の原料が発泡樹脂の内部まで浸み込みづらいためである。
さらに、基材層14の表面は、凹凸が小さいことが好ましい。これは、基材層14の表面の凹凸が小さくなるほど、基材層14の表面の凹部をプライマーで埋めることが容易となるためである。
【0061】
[B. 顔料]
基材層14は、発泡樹脂内に分散している顔料を含む。
「顔料が発泡樹脂内に分散している」とは、
(a)発泡樹脂を構成する高分子鎖の隙間に顔料が充填されていること、及び/又は、
(b)発泡樹脂の気泡内に顔料が充填されていること
をいう。
【0062】
顔料は、主として、基材層14を所望の色に着色し、発泡樹脂の変色(黄変)を目立たないようにするため、及び、基材層14の導電性を制御するために添加される。本発明において、顔料は、紫外線を吸収する材料からなる。顔料は、高い導電性を有する材料であっても良く、あるいは、高い導電性を有しない材料であっても良い。
顔料としては、例えば、
(a)カーボン、
(b)アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、
(c)酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物粉末、
などがある。
特に、顔料は、カーボンが好ましい。これは、基材層14が黒く着色されるために黄変が目立ちにくくなり、かつ、基材層14の導電性を比較的容易に制御できるためである。
【0063】
カーボンには、形状や導電性の異なる種々の材料がある。カーボンとしては、例えば、
(a)アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのストラクチャーが大きいカーボンブラックであって、基材層14の導電性を高める機能が大きいもの(以下、これらを総称して「導電性カーボン」ともいう)、
(b)ファーネスブラックなどのストラクチャーが小さいカーボンブラックであって、基材層14の導電性を高める機能が小さいもの(以下、これらを総称して「顔料カーボン」ともいう)、
(c)グラファイト粉末、
(d)カーボンファイバー
などがある。
【0064】
[C. イオン導電材A]
OA用ローラ10を例えば転写ローラとして使用する場合、基材層14、プライマー層16及びエラストマー層18には、所定の導電性が必要となる。基材層14への顔料の添加、並びに、プライマー層16及びエラストマー層18の最適化(各層の厚さの最適化を含む)のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られる場合、イオン導電材Aは、必ずしも必要ではない。一方、基材層14への顔料の添加、並びに、プライマー層16及びエラストマー層18の最適化のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られない場合、基材層14にイオン導電材Aを添加するのが好ましい。
【0065】
本発明において、基材層14に添加されるイオン導電材Aの材料は、特に限定されない。イオン導電材Aとしては、例えば、以下のようなものがある。
(a)テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩。
【0066】
(b)リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩。
(c)カチオン種にイミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、ピロリジニウム系イオン、ピペリジニウム系イオン、ホスホニウム系イオンを持ち、
アニオン種に塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン系イオン、テトラフルオロホウ素酸イオンなどのホウ素酸系イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどのリン酸系イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンなどの硫酸系イオンを持つ塩。
【0067】
[2.2.2. 含有量]
基材層14に含まれる顔料の含有量は、特に限定されるものではなく、顔料の種類、イオン導電材Aの有無、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
同様に、基材層14がイオン導電材Aを含む場合、イオン導電材Aの含有量は、特に限定されるものではなく、顔料の種類、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
【0068】
一般に、顔料の含有量が少なくなりすぎると、黄変が目立ちやすくなり、あるいは、目的とする導電性が得られない場合がある。従って、顔料の含有量は、0.4mass%以上が好ましい。
一方、顔料の含有量が過剰になると、これを含む原料の粘度が過度に増大し、基材層14の製造が困難となる場合がある。また、顔料の含有量が過剰になると、基材層14が脆くなる場合がある。従って、顔料の含有量は、19.6mass%以下が好ましい。
【0069】
イオン導電材Aの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な含有量を選択することができる。一般に、イオン導電材Aの含有量が多くなるほど、高い導電率が得られる。一方、イオン導電材Aの含有量が過剰になると、基材層14の機械物性が低下する場合がある。イオン伝導材Aの含有量は、具体的には、0.01mass%以上10.0mass%以下が好ましい。
【0070】
[2.2.3. 厚さ]
基材層14の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。基材層14の厚さは、通常、1mm~10mm程度である。
【0071】
[2.3. プライマー層]
基材層14の外周面には、プライマー層16が形成されている。プライマー層16は、エラストマー層18の硬化不良を抑制するために、基材層14とエラストマー層18との間に挿入される。
【0072】
[2.3.1. 材料]
本発明において、プライマー層16は、第1の紫外線硬化型エラストマーを含む。
「第1の紫外線硬化型エラストマー」とは、本発明に係るウレタンプレポリマーを含む原料を光重合させることにより得られるエラストマーをいう。
第1の紫外線硬化型エラストマーは、特に、本発明に係るウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)を含む原料溶液Aを基材層14の表面に塗布し、原料溶液Aからなる塗膜に紫外線を照射し、光重合させることにより得られたエラストマーが好ましい。
ウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0073】
プライマー層16形成用の原料溶液Aは、ウレタンプレポリマーのみを含むものでも良く、あるいは、他の成分が含まれていても良い。他の成分としては、
(a)ウレタンポリマーの光重合性官能基とエン-チオール反応を生じさせるための、チオール基を有するポリチオール、
(b)プライマー層16の酸化を抑制するための酸化防止剤、
(c)プライマー層16の光酸化劣化を抑制するための光安定剤、
(d)プライマー層16内に気泡が生成するのを抑制するための消泡剤、
(e)ラジカルを発生させるための光重合開始剤、
(f)プライマー層16に導電性を付与するためのイオン導電材C
などがある。
【0074】
ポリチオール、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、及び、光重合開始剤の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
また、イオン導電材Cの詳細については、イオン導電材Aと同様であるので、説明を省略する。
【0075】
但し、プライマー層16は、紫外線を吸収する顔料を含まないことが必要である。これは、プライマー層16が紫外線を吸収する顔料を含んでいる場合、プライマー層16形成用の原料溶液Aを紫外線により硬化させるのが困難となるだけでなく、プライマー層16の上に形成されるエラストマー層18形成用の原料溶液Bを紫外線により硬化させるのが困難となるためである。
なお、プライマー層16は、発泡している材料でも良く、あるいは、発泡していない材料でも良い。但し、プライマー層16が発泡している材料である場合において、プライマー層16の気泡内にエラストマー層18の原料が浸み込み、エラストマー層18の原料が基材層14と接触した時には、原料の硬化が不十分となる場合がある。このような原料の浸み込みを抑制するためには、プライマー層16は、発泡していない材料が好ましい。
【0076】
[2.3.2. 厚さ]
プライマー層16は、後述するように、プライマー層16形成用の原料溶液Aを基材層14の表面に塗布し、塗膜を硬化させることにより形成される。この場合、基材層14は、気泡を含むので、基材層14の気泡内に原料溶液Aの一部が浸み込み、気泡内において原料溶液Aが硬化する場合がある。
本発明において、「プライマー層16の厚さ」とは、基材層14の最表面からプライマー層16の最表面までの距離をいい、基材層14の気泡内に原料溶液Aが浸み込み、硬化した領域の厚さを含まない。
【0077】
プライマー層16の厚さは、OA用ローラ10の性能やコストに影響を与える。プライマー層16の厚さが薄くなりすぎると、エラストマー層18を形成する際に、エラストマー層18の硬化不良が生じる場合がある。従って、プライマー層16の厚さは、0mm超が好ましい。厚さは、さらに好ましくは、0.2mm以上である。
一方、プライマー層16の厚さを必要以上に厚くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、プライマー層16の厚さは、0.8mm以下が好ましい。
【0078】
[2.4. エラストマー層]
プライマー層16の外周面には、エラストマー層18が形成されている。エラストマー層18は、基材層14の凹凸に起因する静電気力の不足を抑制するために形成される。本発明において、エラストマー層18は、第2の紫外線硬化型エラストマーを含む。エラストマー層18は、第2の紫外線硬化型エラストマーのみからなるものでも良く、あるいは、これに加えて、イオン導電材Bをさらに含むものでも良い。
【0079】
[2.4.1. 材料]
[A. 第2の紫外線硬化型エラストマー]
エラストマー層18は、第2の紫外線硬化型エラストマーを含む。第2の紫外線硬化型エラストマーは、紫外線を用いて硬化させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。第2の紫外線硬化型エラストマーは、相対的に高い導電性を示すものと、相対的に低い導電性を示すものとがある。エラストマー層18の材料には、いずれを用いても良い。
【0080】
エラストマー層18は、特に、
アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、又は、メタクリレート基を末端官能基として有する第2のウレタンプレポリマーと、チオール基を有するポリチオールとを含む原料溶液Bを前記プライマー層の表面に塗布し、
前記原料溶液Bからなる塗膜に紫外線を照射し、エン-チオール反応を生じさせる
ことにより得られたエラストマーを含むものが好ましい。
アリル基等とチオール基との反応を効果的に行うためには、原料溶液B中に光重合開始剤を添加するのが好ましい。
【0081】
第2のウレタンプレポリマーは、具体的には、Y3/Xが0.05未満となるように原料を配合した以外は、本発明に係るウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)と同様の方法により製造されたものが好ましい。Y3/Xは、好ましくは、0.01以下である。
上記以外のエラストマー層18の材料としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーと紫外線重合開始剤とを含む組成物などがある。
【0082】
[B. イオン導電材B]
上述したように、OA用ローラ10を例えば転写ローラに適用する場合、基材層14、プライマー層16及びエラストマー層18には、所定の導電性が必要となる。エラストマー層18を構成する第2の紫外線硬化型エラストマーの材料の最適化、並びに、基材層14及びプライマー層16の最適化(各層の厚さの最適化を含む)のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られる場合、イオン導電材Bは、必ずしも必要ではない。一方、第2の紫外線硬化型エラストマーの材料の最適化、並びに、基材層14及びプライマー層16の最適化のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られない場合、エラストマー層18にイオン導電材Bを添加するのが好ましい。
【0083】
本発明において、エラストマー層18に添加されるイオン導電材Bの材料は、特に限定されない。基材層14がイオン導電材Aを含む場合、イオン導電材Bは、イオン導電材Aと同一の材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。イオン導電材Bに関するその他の点については、イオン導電材Aと同様であるので、説明を省略する。
【0084】
[2.4.2. 含有量]
エラストマー層18がイオン導電材Bを含む場合、イオン導電材Bの含有量は、特に限定されるものではなく、第2の紫外線硬化型エラストマーの種類、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
【0085】
一般に、イオン導電材Bの含有量が少なくなりすぎると、導電性が低下する場合がある。従って、イオン導電材Bの含有量は、0.05mass%以上が好ましい。
一方、イオン導電材Bの含有量が過剰になると、エラストマー層18の機械物性が低下する場合がある。従って、イオン導電材Bの含有量は、10.0mass%以下が好ましい。
【0086】
[2.4.3. 厚さ]
エラストマー層18の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。一般に、エラストマー層18の厚さが薄くなりすぎると、エラストマー層18を硬化させた後、エラストマー層18の表面を研磨加工する際に、エラストマー層18が剥離する場合がある。従って、エラストマー層18の厚さは、0.5mm以上が好ましい。
一方、エラストマー層18の厚さを必要以上に厚くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、エラストマー層18の厚さは、5.0mm以下が好ましい。厚さは、さらに好ましくは、4.0mm以下である。
【0087】
[2.5. OC層]
エラストマー層18の表面には、さらにOC層(図示せず)が形成されていても良い。ここで、「OC層」とは、OA用ローラ10に防汚性を持たせることを目的として、エラストマー層18の表面に形成される層(表面塗装層)をいう。
OC層の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を用いることができる。OC層の材料としては、例えば、水系のウレタン塗料などがある。
また、OC層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。OC層の厚さは、具体的には、0.5μm~40μmが好ましい。
【0088】
[2.6. OA用ローラの導電性(体積抵抗率)]
「体積抵抗率」とは、温度:22℃±3℃、相対湿度:55%±5%、電圧:100Vの条件下でシャフト12-OA用ローラ10の最表面間に電流を流した場合において、シャフト12-OA用ローラ10の最表面間に流れる電流値から算出される値をいう。
OA用ローラ10の体積抵抗率は、各層の組成や厚さにより制御することができる。
【0089】
OA用ローラ10の体積抵抗率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。OA用ローラ10の体積抵抗率は、具体的には、3(logΩ)以上10(logΩ)以下が好ましい。
【0090】
[2.7. 用途]
本発明に係るOA用ローラ10は、種々の用途に用いることができる。本発明に係るOA用ローラ10は、例えば、転写ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、定着ローラ、給紙ローラ、排紙ローラなどに用いることができる。
【0091】
[3. OA用ローラの製造方法]
本発明に係るOA用ローラ10は、
(a)シャフト12の外周面に基材層14を形成し、
(b)基材層14の外周面にプライマー層16を形成し、
(c)プライマー層16の外周面にエラストマー層18を形成し、
(d)必要に応じて、エラストマー層18の外周面にOC層をさらに形成する
ことにより製造することができる。
【0092】
[3.1. 第1工程]
まず、シャフト12の外周面に基材層14を形成する(第1工程)。本発明において、基材層14の形成方法は、特に限定されない。
基材層14の形成方法としては、例えば、
(a)発泡樹脂を含む筒状の発泡体を作製し、発泡体の貫通孔にシャフトを挿入し、発泡体とシャフトとを接着する方法、
(b)円筒形の型の中心にシャフトを立設し、型の内壁面とシャフトとの隙間に発泡樹脂の原料を流し込み、型内で原料を発泡及び硬化させる方法、
などがある。
【0093】
また、顔料及び/又はイオン導電材Aを含む発泡体の製造方法としては、例えば、
(a)発泡樹脂の原料に予め顔料及び/又はイオン導電材Aを添加し、原料を発泡及び硬化させる方法、
(b)顔料及びイオン導電材Aを含まない発泡樹脂の原料を用いて発泡体を作製し、顔料及び/又はイオン導電材Aを分散させた分散液に発泡体を浸漬し、発泡体を分散液から引き上げ、乾燥させる方法、
などがある。
【0094】
発泡樹脂を作製するための原料の組成は、特に限定されるものではなく、発泡樹脂の種類に応じて、最適な組成を選択することができる。
例えば、発泡樹脂が発泡ポリウレタンからなる場合、ポリオール、イソシアネート、整泡剤、樹脂化触媒、顔料、及び、イオン導電材Aを所定の比率で配合した原料を用いるのが好ましい。このような原料に不活性ガスを吹き込みながらミキサで混合することにより機械発泡させ、硬化させると、所定量の顔料及びイオン導電材Aを含む発泡ポリウレタンからなる発泡体を作製することができる。
【0095】
あるいは、ポリオール、イソシアネート、整泡剤、樹脂化触媒、発泡剤、泡化触媒、顔料、及び、イオン導電材Aを所定の比率で配合した原料を用いても良い。このような原料を型に流し込み、所定の温度に加熱すると、発泡及び硬化が生じ、所定量の顔料及び/又はイオン導電材Aを含む発泡ポリウレタンからなる発泡体を作製することができる。
【0096】
[3.2. 第2工程]
次に、基材層14の外周面にプライマー層16を形成する。
プライマー層16は、例えば、
(a)第1の紫外線硬化型エラストマーの原料(具体的には、本発明に係るウレタンプレポリマー)を含む原料溶液Aを基材層14の表面に塗布し、
(b)原料溶液Aからなる塗膜に紫外線を照射し、光重合させる
ことにより形成することができる。
プライマー層16の形成条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
【0097】
[3.3. 第3工程]
次に、プライマー層16の外周面にエラストマー層18を形成する。
エラストマー層18は、例えば、
(a)第2の紫外線硬化型エラストマーの原料を含む原料溶液Bをプライマー層18の表面に塗布し、
(b)原料溶液Bからなる塗膜に紫外線を照射し、光重合させる
ことにより形成することができる。
【0098】
エラストマー層18を形成するための原料溶液Bの組成は、特に限定されるものではなく、第2の紫外線硬化型エラストマーの種類に応じて、最適な組成を選択するのが好ましい。
例えば、エラストマー層18が第2のウレタンプレポリマーとポリチオールとを光重合させることにより得られるエラストマーを含む場合、原料溶液Bは、
(a)アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、又は、メタクリレート基を末端官能基として有する第2のウレタンプレポリマー、
(b)チオール基を有するポリチオール、
(c)光重合開始剤、及び、
(d)イオン導電材B
を所定の比率で配合されているものが好ましい。
【0099】
アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、又は、メタクリレート基を末端官能基として有する第2のウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネートから合成されたNCO基末端ウレタンプレポリマーに、アリル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、又は、メタクリレート基を有する化合物を付加することにより製造することができる。
ポリチオールとしては、例えば、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸ポリチオール、芳香族ポリチオールなどがある。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などがある。
【0100】
第2のウレタンプレポリマー及びポリチオールを含む原料溶液Bをプライマー層16の表面に塗布し、塗膜に紫外線を照射すると、エン-チオール反応が進行する。その結果、塗膜が硬化し、エラストマー層18が得られる。
硬化後、円筒研磨機を用いてエラストマー層18の表面を研磨し、形状を整える。
【0101】
[3.4. 第4工程]
次に、必要に応じて、エラストマー層18の表面にOC層(表面塗装層)を形成する。OC層の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
【0102】
[5. 作用]
NCO基末端ウレタンプレポリマーに紫外線硬化性モノオールを付加すると、紫外線硬化性ウレタンプレポリマーが得られる。紫外線を吸収する顔料と、発泡樹脂とを含む基材層の外周面に、直接、このような紫外線硬化性ウレタンプレポリマーを塗布し、塗膜に紫外線を照射した場合、塗膜の表面は十分に硬化した層(硬化層)となる。
【0103】
しかしながら、基材層と塗膜との界面近傍では、硬化が不十分な層(不完全硬化層)が生成する。これは、基材層と塗膜との界面近傍において、顔料が紫外線を吸収し、又は、顔料が紫外線を遮蔽するために、界面近傍にある塗膜に十分な量の紫外線が照射されないためと考えられる。
さらに、得られた硬化層の表面に摩擦力が作用すると、硬化層が基材層の表面から容易に剥離する。これは、硬化層と不完全硬化層との硬度差が大きいためと考えられる。
【0104】
これに対し、NCO基末端ウレタンプレポリマーのNCO基を紫外線硬化性モノオール及び非紫外線硬化性モノオールで封止すると、紫外線を照射して光重合させてもポリマーの硬度が過度に高くならないウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)が得られる。これは、ウレタンプレポリマーの末端に適量の非紫外線硬化性モノオールが結合しているために、ポリマーの分子量が過度に高くならないためと考えられる。
【0105】
紫外線を吸収する顔料と、発泡樹脂とを含む基材層の外周面に、直接、このような紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーを塗布し、塗膜に紫外線を照射した場合、塗膜の表面は硬化するが、硬化層に比べて硬度の低い層(半硬化層)となる。そのため、基材層と塗膜との界面近傍において不完全硬化層が発生したとしても、半硬化層と不完全硬化層との間の硬度差が小さくなる。さらに、半硬化層は、硬化層に含まれるポリマーに比べて分子量が小さいポリマーからなるため、タック性を示す。
【0106】
このような紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーを基材層表面に塗布し、紫外線を照射すると、硬度が適度に低く、かつ、タック性を示すプライマー層が得られる。さらに、プライマー層の表面に、紫外線硬化性ウレタンプレポリマーを塗布し、紫外線を照射すると、十分な硬度を有するエラストマー層が得られる。
このようにして得られた基材層/プライマー層/エラストマー層の積層体に摩擦力が作用しても、エラストマー層は剥離しにくくなる。これは、適度な硬さとタック性とを有するプライマー層が接着剤層として機能するためと考えられる。
【0107】
本発明に係るウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)は、紫外線の照射により硬化させることができる。そのため、これをOA用ローラのプライマー層の形成に用いた場合には、OA用ローラの製造時間を短縮することができる。
【0108】
また、熱硬化型エラストマー、湿気硬化型エラストマー等の非紫外線硬化型エラストマーを用いてプライマー層を形成する場合において、プライマー層の体積抵抗率を低下させるには、非紫外線硬化型エラストマーの原料に、イオン導電材を添加する必要がある。しかしながら、一般に、非紫外線硬化型エラストマーの原料にイオン導電材を均一に分散させるのは難しい。
これに対し、本発明に係る紫外線半硬化型ウレタンプレポリマーにおいて、非紫外線硬化性モノオールに占める導電性モノオールの割合を増減させると、プライマー層及びこれを含むOA用ローラの導電性を容易に制御することができる。
【0109】
さらに、本発明に係るウレタンプレポリマー(紫外線半硬化性ウレタンプレポリマー)は、溶剤で希釈することなく使用することができるので、溶剤及び/又は低分子量の添加剤のブリードアウト、並びに、これに起因する環境リスクを抑制することができる。
【実施例0110】
(実施例1~9、比較例1~14)
[1. 試料の作製]
[1.1. 基材層の作製]
[1.1.1. ENDUR(機械発泡ポリウレタンフォーム)]
基材層の素材には、(株)イノアックコーポレーション製、ENDUR(顔料無添加、顔料カーボン添加、又は、導電性カーボン添加)を用いた。素材にシャフトを挿入する穴を空けた。素材の穴にシャフトを挿入し、素材とシャフトとを接着した。さらに、素材表面の円筒研磨を行い、基材層を得た。基材層の厚みは、3.5~5.5mmであった。
【0111】
[1.1.2. UEM-55(スラブウレタンフォームA)]
基材層の素材には、(株)イノアックコーポレーション製、UEM-55を用いた。素材にシャフトを挿入する穴を空けた。次いで、一部の基材層については、含浸法により素材に顔料(導電性カーボン)を添加した。素材の穴にシャフトを挿入し、素材とシャフトとを接着した。さらに、素材表面の円筒研磨を行い、基材層を得た。基材層の厚みは、3.5~5.5mmであった。
【0112】
[1.1.3. EP-70(スラブウレタンフォームB)]
基材層の素材には、(株)イノアックコーポレーション製、EP-70を用いた。素材にシャフトを挿入する穴を空けた。次いで、含浸法により素材に顔料(導電性カーボン)を添加した。素材の穴にシャフトを挿入し、素材とシャフトとを接着した。さらに、素材表面の円筒研磨を行い、基材層を得た。基材層の厚みは、3.3~5.5mmであった。
【0113】
[1.1.4. NBR系ゴム]
アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム、顔料、発泡剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、及び、加工助剤を所定の比率で混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物を押出成形することにより、シャフトの表面に円筒状の成形体(以下、「基材層前駆体」ともいう)を付着させた。
これとは別に、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、加硫助剤、離型剤、加硫剤、加硫促進剤を所定の比率で混合し、原料組成物を得た。原料組成物を押出成形し、円筒状の成形体(以下、「エラストマー層前駆体」ともいう)を得た。
【0114】
円筒状のエラストマー層前駆体を、円筒状のロール成形用金型内にセットした。次いで、エラストマー層前駆体の中に、基材層前駆体が形成されたシャフトを挿入した。この状態でエラストマー層前駆体及び基材層前駆体を160℃で40分間加熱し、原料組成物を架橋及び発泡させた。
冷却後、金型から基材層及びエラストマー層付きシャフトを取り出した。次いで、エラストマー層の外周面を円筒研磨機で研磨し、厚さ2mmのエラストマー層を得た。
【0115】
[1.1.2. プライマー層の作製]
[A. 実施例1~9]
実施例1~9については、紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーを用いて、基材層の表面にプライマー層を形成した。表1に、プライマー層の形成に用いた原料溶液A1、A2に含まれる原料の種類、及び、原料溶液A1、A2の組成を示す。なお、A1は、合計約2mass%の非紫外線硬化性モノオールを含む原料溶液である。また、A2は、合計7mass%の非紫外線硬化性モノオールを含む原料溶液である。
【0116】
まず、ポリオール、ポリイソシアネート及び樹脂化触媒を所定の比率で混合し、これらを反応させることで、NCO基末端ウレタンプレポリマーを得た。次に、得られたNCO基末端ウレタンプレポリマーに所定量の導電性モノオール、非導電性モノオール、及び、紫外線硬化性モノオールを加え、これらを反応させることで、紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーを得た。さらに、紫外線半硬化性ウレタンプレポリマーに所定量の酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、及び光重合開始剤を加えて混合し、原料溶液A1、A2を得た。
この原料溶液A1、A2を基材層の表面に塗布し、塗膜に紫外線を照射して硬化させた。その際、原料溶液A1、A2の塗布量を調整し、プライマー層の厚みを変化させた。得られたプライマー層の厚みは、0.2mm、0.4mm、又は、0.8mmであった。
【0117】
[B. 比較例1~7]
比較例1~7については、基材層の表面にプライマー層を形成しなかった。
【0118】
[C. 比較例8~14]
比較例8~14については、溶剤揮発型のウレタン系プライマー(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5230)を用いてプライマー層を形成した。基材層の外周面に所定量のウレタン系プライマーを塗布し、乾燥させた。その際、ウレタン系プライマーの塗布量を調整し、プライマー層の厚みを変化させた。得られたプライマー層の厚みは、0.2~0.8mmであった。
なお、比較例14については、溶剤揮発型のウレタン系プライマーにイオン導電材Cを添加したものを用いてプライマー層を形成した。イオン導電材Cには、日油(株)製、「カチオンIN」を用いた。イオン導電材C(非紫外線硬化性モノオール)の添加量は、乾燥後のプライマー層の総質量に対して0.15mass%となる量とした。
【0119】
[1.1.3. エラストマー層の作製]
[A. 実施例1~9、比較例1~6、比較例8~14]
次に、プライマー層の外周面にエラストマー層を形成した。エラストマー層の形成には、UV硬化型の原料を用いた。表1に、エラストマー層の形成に用いた原料溶液B1、B2に含まれる原料の種類、及び、原料溶液B1、B2の組成を示す。
【0120】
まず、ポリオール、ポリイソシアネート及び樹脂化触媒を所定の比率で混合し、これらを反応させることで、NCO基末端ウレタンプレポリマーを得た。次に、得られたNCO基末端ウレタンプレポリマーに所定量の導電性モノオール、及び、紫外線硬化性モノオールを加え、これらを反応させることで、紫外線硬化性ウレタンプレポリマーを得た。さらに、紫外線硬化性ウレタンプレポリマーに所定量の酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、及び光重合開始剤を加えて混合し、原料溶液B1を得た。
また、導電性モノオールを使用しなかった以外は、原料溶液B1と同様にして、紫外線硬化性ウレタンプレポリマーを含む原料溶液B2を得た。
【0121】
原料溶液B1と原料溶液B2を質量比で2:1となるように混合した。これに、所定量のポリチオールを加え、原料溶液Bを得た。この原料溶液Bをプライマー層の表面又は基材層の表面に塗布し、塗膜に紫外線を照射して硬化させた。硬化後、円筒研磨機で外周面を研磨し、厚さ2mmのエラストマー層を得た。
【0122】
[B. 比較例7]
比較例7については、上述したように、基材層とエラストマー層とを一体成形した。
【0123】
[1.1.4. OC層の作製]
比較例2及び比較例7を除き、エラストマー層を形成した後、エラストマー層の外周面にOC層(表面塗装)を形成した。OC層は、ヘンケルジャパン製、BONDERITE(登録商標) S-FN T-862A ANを膜厚が5~40μmとなるように塗布し、乾燥させることにより形成した。
【0124】
【表1】
【0125】
[2. 試験方法]
[2.1. 体積抵抗率]
基材層を形成した後のローラの体積抵抗率を測定した。測定条件は、温度:22℃±3℃、相対湿度:55%±5%、電圧:100Vとした。
【0126】
[2.2. 接着性]
円筒研磨盤を用いて、エラストマー層の接着性を評価した。OA用ローラを回転させながら、OA用ローラのエラストマー層の表面を砥石で研削した。研削試験中にエラストマー層が剥離するか否かを評価した。研削条件は以下の通りである。
研削装置: (株)水口製作所製、円筒研磨盤「LEO-600-4」
砥石: 高速砥石#40
砥石回転数: 6000rpm
ワーク回転方向: COUNTER
ワーク回転数: 400rpm
トラバース速度: 250mm/min
【0127】
[2.3. 成形時間]
プライマー層及びエラストマー層の硬化に要した総時間を測定した。
【0128】
[2.4. ブリード]
OA用ローラに通電したときに、低分子量体がブリードしたか否かを目視で評価した。通電条件は、1000V×100時間通電とした。
【0129】
[3. 結果]
表2~表4に結果を示す。なお、表2~表4には、各試料の履歴も併せて示した。表2~表4より、以下のことが分かる。
【0130】
なお、「接着性」に関し、
「○」は研削試験中にエラストマー層が剥離しなかったことを表し、
「×」は研削試験中にエラストマー層が剥離したことを表す。
【0131】
「成形時間」に関し、
「○」は硬化に要した総時間が5分以下であることを表し、
「△」は硬化に要した総時間が5分超4時間以下であることを表し、
「×」は硬化に要した総時間が4時間超8時間以下であることを表し、
「××」は硬化に要した総時間が8時間超であることを表す。
【0132】
「ブリード」に関し、
「○」はOA用ローラに通電したときに低分子量体がブリードしなかったことを表し、
「×」はOA用ローラに通電したときに低分子量体がブリードしたことを表す。
【0133】
(1)比較例1、2は、エラストマー層の接着性が良好であった。しかしながら、比較例1、2は、基材層に顔料が添加されていないために、基材の体積抵抗率が高くなった。
(2)比較例3~6は、研削試験中にエラストマー層が剥離した。また、比較例3~6は、低分子量体のブリードが認められた。これは、カーボンを含む基材層の表面に、直接、紫外線硬化型エラストマーの原料を塗布したためと考えられる。
【0134】
(3)比較例7は、成形時間が5分を超えた。また、比較例7は、低分子量体のブリードが認められた。これは、可塑剤として含まれるオイルのブリード(染み出し)、あるいは、ヒドリン・硫黄・ハロゲン化物のブルーム(ケミカルアタック)が原因と考えられる。
(4)比較例8~14は、成形時間が5分を超えた。これは、プライマー層として溶剤揮発型のウレタン系プライマーを用いたためと考えられる。また、比較例14は、低分子量体のブリードが認められた。ブリードした低分子量体は、溶剤揮発型のウレタン系プライマーに後添加したイオン導電材と考えられる。
【0135】
(5)実施例1~9は、いずれも、エラストマー層の接着性が良好であり、成形時間は5分以下であった。さらに、実施例1~9は、低分子量体のブリードが認められなかった。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係るOA用ロールは、 転写ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、定着ローラ、給紙ローラ、排紙ローラなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
10 OA用ロール
12 シャフト
14 基材層
16 プライマー層
18 エラストマー層
図1