(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010354
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】水溶性添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
A23B 2/754 20250101AFI20250109BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20250109BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20250109BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20250109BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20250109BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A23L3/3508
A61K8/36
A61K8/99
A61Q13/00 101
A23L29/00
C11B9/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024192053
(22)【出願日】2024-10-31
(62)【分割の表示】P 2021509399の分割
【原出願日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019064431
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019064432
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019066870
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019066874
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019066883
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591178012
【氏名又は名称】公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】橘 賢也
(72)【発明者】
【氏名】宮内 啓行
(57)【要約】
【課題】環式カルボン酸を含む新規な組成物を提供する。
【解決手段】環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、以下の条件1~4の少なくとも1つを満たす、水溶性添加剤組成物が提供される:(条件1)成分(A)環式カルボン酸であって、以下の成分(B1)以外のもの、および成分(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上を含む;(条件2)Na+およびNH4
+の含有量の合計が、環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である;(条件3)総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である;(条件4)成分(A)環式カルボン酸であって、以下の成分(B2)以外のもの、および成分(B2)アミノ酸を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、以下の条件1~4の少なくとも1つを満たす、水溶性添加剤組成物。
(条件1)以下の成分(A)および(B1)を含む。
(A)前記環式カルボン酸であって、以下の成分(B1)以外のもの
(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上
(条件2)Na+およびNH4
+の含有量の合計が、前記環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である。
(条件3)総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、前記環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である。
(条件4)以下の成分(A)および(B2)を含む。
(A)前記環式カルボン酸であって、以下の成分(B2)以外のもの
(B2)アミノ酸
【請求項2】
当該水溶性添加剤組成物が前記条件1を満たすとともに、抗菌剤組成物である、請求項1に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項4】
当該抗菌剤組成物中の前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B1)の含有量((B1)/(A))が、質量比で0.01以上5以下である、請求項2または3に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項5】
当該水溶性添加剤組成物が前記条件2を満たす、請求項1に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項6】
当該水溶性添加剤組成物が前記条件3を満たす、請求項1に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項7】
前記環式カルボン酸が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上である、請求項5または6に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項8】
当該水溶性添加剤組成物中の前記環式カルボン酸の含有量が、当該水溶性添加剤組成物全体に対して95質量%以上99.9質量%以下である、請求項5乃至7いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項9】
当該水溶性添加剤組成物が前記条件4を満たす、請求項1に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項10】
前記成分(A)が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項9に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項11】
前記成分(B2)が、グルタミン酸、アラニン、バリン、グリシン、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、リシンおよびプロリンからなる群から選択される1または2以上のアミノ酸を含む、請求項9または10に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項12】
当該水溶性添加剤組成物中の前記成分(A)の含有量が、95質量%以上99.9質量%以下である、請求項9乃至11いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項13】
当該水溶性添加剤組成物中の前記成分(B2)の含有量が、0.001質量%以上5質量%以下である、請求項9乃至12いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項14】
前記成分(B2)がグルタミン酸を含み、当該水溶性添加剤組成物中の前記グルタミン酸の含有量が0.001質量%以上1質量%以下である、請求項9乃至13いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【請求項15】
植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品。
【請求項16】
前記環式化合物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項15に記載の食品。
【化1】
[上記一般式(1)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R
2~R
6(環Aが5員環の場合はR
2~R
5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。]
【請求項17】
前記環式化合物が、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項16に記載の食品。
【請求項18】
前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であり、前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子である請求項16に記載の食品。
【請求項19】
前記環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、前記炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種である請求項18に記載の食品。
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【請求項20】
前記環式化合物またはその誘導体が、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸である請求項15に記載の食品。
【請求項21】
前記微生物が、大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、コリネ菌、放線菌、ラン藻菌、メタン生成菌、好塩菌、耐熱性好酸菌、抗酸菌、カビ、酵母またはそれらの形質転換体である請求項15ないし20のいずれか1項に記載の食品。
【請求項22】
前記植物由来糖類の原料は、非可食のバイオマス資源である請求項15ないし21のいずれか1項に記載の食品。
【請求項23】
植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品添加物。
【請求項24】
食品または食品添加物として用いられる、環式化合物またはその誘導体の製造方法であって、
前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を生成するように、植物由来糖類と、微生物とを含む培養液を調製する工程と、
前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、
前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、環式化合物またはその誘導体の製造方法。
【請求項25】
植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、香料。
【請求項26】
前記環式化合物が下記一般式(1)で表される化合物である請求項25に記載の香料。
【化2】
[上記一般式(1)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R
2~R
6(環Aが5員環の場合はR
2~R
5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。]
【請求項27】
前記環式化合物が、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項26に記載の香料。
【請求項28】
前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であり、前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子である請求項26に記載の香料。
【請求項29】
前記環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、前記炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種である請求項28に記載の香料。
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【請求項30】
前記環式化合物またはその誘導体が、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸である請求項25に記載の香料。
【請求項31】
前記微生物が、大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、コリネ菌、放線菌、ラン藻菌、メタン生成菌、好塩菌、耐熱性好酸菌、抗酸菌、カビ、酵母またはそれらの形質転換体である請求項25ないし30のいずれか1項に記載の香料。
【請求項32】
前記植物由来糖類の原料は、非可食のバイオマス資源である請求項25ないし31のいずれか1項に記載の香料。
【請求項33】
香料として用いられる、環式化合物またはその誘導体の製造方法であって、
前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を生成するように、植物由来糖類と、微生物とを含む培養液を調製する工程と、
前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、
前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、環式化合物またはその誘導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性添加剤組成物に関する。
【0002】
環式カルボン酸が配合された組成物に関する技術として、特許文献6および7に記載のものがある。
特許文献6(特開2014-31347号公報)には、特定の構造を有する環状ヒドロキシ酸またはその誘導体ならびに、ステロールエステルを含む組成物について記載されている。同文献によれば、かかる構成により、優れたフリーラジカル消去効果を有し、刺激性、使用感、臭い、保存安定性においても優れた組成物を提供することができ、これにより、シワの生成、皮膚弾力の消失、脱毛といった老化現象を防止または改善することができるとされている。
【0003】
特許文献7(国際公開第2016/039407号)には、アシルプロリンまたはその塩の特異臭が低減され、しっとり感を有し、安定性に優れた組成物を提供するための技術として、特定の構造を有するアシルプロリンまたはその塩、および、ピロリドンカルボン酸亜鉛塩を含む組成物について記載されており、かかる組成物がヒドロキシカルボン酸を含みうることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-35440号公報
【特許文献2】特開2013-155158号公報
【特許文献3】特開2009-215266号公報
【特許文献4】特開平7-126135号公報
【特許文献5】特開2018-150288号公報
【特許文献6】特開2014-31347号公報
【特許文献7】国際公開第2016/039407号
【特許文献8】特開2007-238469号公報
【特許文献9】特開平8-92589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環式カルボン酸を含む新規な組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、以下の条件1~4の少なくとも1つを満たす、水溶性添加剤組成物が提供される。
(条件1)以下の成分(A)および(B1)を含む。
(A)前記環式カルボン酸であって、以下の成分(B1)以外のもの
(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上
(条件2)Na+およびNH4
+の含有量の合計が、前記環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である。
(条件3)総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、前記環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である。
(条件4)以下の成分(A)および(B2)を含む。
(A)前記環式カルボン酸であって、以下の成分(B2)以外のもの
(B2)アミノ酸
【0007】
本発明によれば、
植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品または香料が提供される。
【0008】
本発明によれば、
植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品添加物が提供される。
【0009】
本発明によれば、
食品または食品添加物あるいは香料として用いられる、環式化合物またはその誘導体の製造方法であって、
前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を生成するように、植物由来糖類と、微生物とを含む培養液を調製する工程と、
前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、
前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、環式化合物またはその誘導体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環式カルボン酸を含む新規な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体例を挙げて説明する。実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。また、数値範囲を表す「~」は、以上から以下を表し、両端の値をいずれも含む。
【0013】
(第1の実施形態)
本実施形態は、抗菌剤組成物に関する。
【0014】
抗菌成分が配合された組成物に関する技術として、特許文献1~3に記載のものがある。
特許文献1(特開2004-35440号公報)には、特定のメラニン生成抑制剤、特定の線維芽細胞増殖促進剤および特定の血行促進剤を含有するくすみ抑制剤が記載されており、かかる剤に、シキミ酸等の抗菌剤をさらに添加剤として併用してもよいことが記載されている。
【0015】
特許文献2(特開2013-155158号公報)には、タマネギ外皮抽出物を含有し、尋常性ざ瘡の原因菌およびう蝕の原因菌からなる群より選択される1種以上に対する、抗菌剤組成物について記載されており、具体的には、ケルセチン、ケルセチン-4'グルコシドおよびプロトカテク酸をそれぞれ特定量含む抗菌剤組成物を得たことが記載されている。
【0016】
特許文献3(特開2009-215266号公報)には、シキミ酸及びその塩から選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分とするメラニン生成抑制剤について記載されており、かかる剤の使用形態としては、キレート剤や抗菌剤としての使用や、頭髪用としての使用は除かれることが記載されている。
【0017】
また、技術分野は異なるが、ポリフェノールを含む組成物として、特許文献4に記載のものがある。
特許文献4(特開平7-126135号公報)には、コウジ酸および/またはその誘導体と紫外線吸収剤を含む外用剤にアルコール類および/またはポリフェノール類の少なくとも一種を添加した皮膚外用剤について記載されており、ポリフェノール類として、没食子酸、没食子酸エステル、シキミ酸を含む多数が例示されている。
【0018】
前述した各特許文献に記載の技術について本発明者らが検討したところ、抗菌特性の向上の点で改善の余地があることが明らかになった。
そこで、本実施形態は、抗菌特性に優れる組成物を提供するものである。
【0019】
本実施形態によれば、
以下の成分(A)および(B1):
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B1)を除く。)
(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上
を含む、抗菌剤組成物が提供される。
【0020】
また、本実施形態によれば、たとえば、前述の本実施形態における抗菌剤組成物が配合されてなる、日用品または化粧品を得ることもできる。
【0021】
本実施形態によれば、抗菌特性に優れる組成物を提供することができる。
【0022】
以下、実施の形態についてさらに具体的に説明する。本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0023】
本実施形態において、抗菌剤組成物は、以下の成分(A)および(B1)を含む。
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B1)を除く。)
(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上
【0024】
(成分(A))
成分(A)は、環式カルボン酸であって、後述する成分(B1)以外の成分である。
成分(A)として、具体的には、1または2以上のヒドロキシ基を有する環式カルボン酸、1または2以上のアミノ基を有する環式カルボン酸が挙げられ、好ましくは2以上のヒドロキシ基を有する環式ポリヒドロキシカルボン酸である。
【0025】
環式カルボン酸として、たとえば、安息香酸が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、芳香族ヒドロキシカルボン酸および脂環式ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、ヒドロキシ(メトキシ)安息香酸等のモノヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
プロトカテク酸、ゲンチジン酸等のジヒドロキシ安息香酸、オルセリン酸等のジヒドロキシ(メチル)安息香酸等のジヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
フェルラ酸等のモノヒドロキシケイ皮酸およびその誘導体が挙げられる。
脂環式ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、シキミ酸、キナ酸等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する環式カルボン酸は、好ましくは2以上のヒドロキシ基を有する。
【0026】
また、アミノ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、4-アミノ安息香酸等のモノアミノ安息香酸およびその誘導体、その他の芳香族アミノカルボン酸;ならびに
脂環式アミノカルボン酸が挙げられる。
【0027】
抗菌剤組成物の抗菌特性を向上する観点から、成分(A)は、好ましくはプロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはプロトカテク酸およびシキミ酸からなる群から選択される1種以上である。
【0028】
抗菌剤組成物中の成分(A)の含有量は、抗菌特性を向上する観点から、抗菌剤組成物全体に対して、たとえば50質量%以上であってよく、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらにより好ましくは98質量%以上である。
また、同様の観点から、抗菌剤組成物中の成分(A)の含有量は、抗菌剤組成物全体に対して、100質量%未満であり、好ましくは99.999質量%以下、より好ましくは99.990質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、さらにより好ましくは98質量%以下である。
【0029】
(成分(B1))
成分(B1)は、没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上である。没食子酸エステルとして、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ペンチル、没食子酸ヘキシル、没食子酸ヘプチル、没食子酸オクチル、没食子酸ノニル、没食子酸デシル、没食子酸ラウリル、没食子酸ステアリル等の、炭素数1以上20以下の直鎖アルキルのエステルが挙げられる。
【0030】
抗菌剤組成物の抗菌特性を向上する観点から、成分(B1)は、好ましくは没食子酸である。
【0031】
抗菌剤組成物中の成分(B1)の含有量は、抗菌特性を向上する観点から、抗菌剤組成物全体に対して、たとえば0.001質量%以上であってよく、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上である。
また、同様の観点から、抗菌剤組成物中の成分(B1)の含有量は、抗菌剤組成物全体に対して、たとえば10質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0032】
また、抗菌剤組成物中の成分(A)の含有量に対する成分(B1)の含有量((B1)/(A))は、抗菌剤組成物の抗菌特性を向上する観点から、質量比で好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.015以上、さらに好ましくは0.02以上である。
また、同様の観点から、上記質量比((B1)/(A))は、好ましくは5以下であり、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下、さらにより好ましくは0.1以下である。
【0033】
抗菌剤組成物は、上述の成分(A)および(B1)以外の成分を含んでもよい。
本実施形態において、抗菌剤組成物は、たとえば、上述の成分(A)、(B1)および適宜他の成分を準備し、これらを所定の割合で配合し、混合することにより得ることができる。
【0034】
また、抗菌剤組成物の別の調製方法として、たとえば、バイオプロセスにより環式カルボン酸を含む培養液を得た後、培養液の濃縮精製により、成分(A)および(B1)を含む組成物を得る方法が挙げられる。以下、バイオプロセスにより、成分(A)および(B1)を含む培養液を得る方法を説明する。
バイオプロセスにおいては、微生物、培地、培養設備および培養条件を適切に選定することで、環式カルボン酸およびその誘導体の回収率を向上させることができる。
バイオプロセスにより、成分(A)および(B1)を含む培養液を得る方法は、原料液体調製工程S01、活性炭処理工程S02、晶析工程S03および固液分離工程S04を含む。
【0035】
(原料液体調製工程S01)
まず、バイオマスを準備する。ここで、バイオマスとは、植物由来の有機性資源を指す。具体的にはデンプンやセルロース等の形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等がバイオマスに含まれる。
【0036】
バイオマスとして、より具体的には、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣等)、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、おから、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油等)、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、キャッサバ、サゴヤシ等)、バガス、そば、大豆、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油等)、パルプ黒液、生ごみ、植物油カス、水産物残渣、家畜排泄物、食品廃棄物、排水汚泥等が挙げられる。バイオマスとして、さらに具体的にはサトウキビのしぼりかすが挙げられる。
【0037】
-前処理-
次に、バイオマスに前処理を施し、混合糖を得る。
このような前処理としては、たとえば、物理的処理、化学的処理、物理化学的処理、生物学的処理等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせた処理が採用される。
【0038】
このうち、物理的処理としては、たとえば、ディスクミル、グラインダー等による微細化処理、圧縮処理、電磁波照射処理、電子線照射処理等が挙げられる。
【0039】
また、化学的処理としては、たとえば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、アルカリのようなイオン液体による処理、水熱処理、亜臨界水処理、超臨界流体処理、触媒による処理、酸化剤処理、熱エネルギーを付与する処理、光エネルギーを付与する処理等が挙げられる。
【0040】
また、物理化学的処理としては、たとえば、水蒸気爆砕処理、アンモニア爆砕処理等が挙げられる。
また、生物学的処理としては、たとえば、菌類、細菌等を用いた処理が挙げられる。
【0041】
以上のようにして、混合糖が得られる。得られる混合糖の一例としては、グルコース単位を有するオリゴ糖または多糖類が含まれる。具体的には、グルコース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、ガラクトースのような単糖類、セロビオース、ショ糖、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、キシロビオースのような二糖類、デキストリンまたは可溶性澱粉のような多糖類等が挙げられる。
【0042】
また、混合糖としては、上記の他に、わら(稲わら、大麦わら、小麦わら、ライ麦わら、オート麦わら等)、バガスのような非可食農産廃棄物、スイッチグラス、ネピアグラス、ミスキャンサス等のエネルギー作物や、木くず、古紙のようなものを、糖化酵素で糖化してなる糖化液、あるいは糖蜜を含むものも用いられる。
【0043】
-原料液体の調製-
次に、混合糖を含有する反応液中で、微生物またはその形質転換体を培養または反応させて原料液体を調製する。
【0044】
・微生物またはその形質転換体
微生物またはその形質転換体は、混合糖との反応に先立ち、培地において培養して増殖させることが好ましい。
【0045】
・培地
用いられる培地としては、炭素源、窒素源、無機塩類、その他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地が挙げられる。培地の具体例として、LB培地が挙げられる。
【0046】
培地中における窒素源の濃度は、使用する窒素源によっても異なるが、たとえば0.1~10(mass/v%)とされる。
【0047】
培地中における無機塩類の濃度は、使用する無機塩類によっても異なるが、たとえば0.01~1(mass/v%)とされる。
【0048】
培地中における栄養物質の濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、たとえば0.1~10(mass/v%)とされる。
【0049】
さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。
【0050】
培地のpHは、6~8であるのが好ましい。
【0051】
・反応液
反応液としては、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する天然反応液または合成反応液が用いられる。
【0052】
このうち、炭素源としては、前述した混合糖が用いられる。反応液中の混合糖の濃度は、1~20(mass/v%)であるのが好ましく、2~10(mass/v%)であるのがより好ましく、2~5(mass/v%)であるのがさらに好ましい。
【0053】
また、その他に、前述した炭素源から適宜選択されたものが用いられる。なお、混合糖を含む全炭素源の濃度は、2~5(mass/v%)であるのが好ましい。
【0054】
窒素源としては、前述した窒素源から適宜選択されたものが用いられる。反応液中の窒素源の濃度は、使用する窒素源の濃度によっても異なるが、たとえば0.01~1(mass/v%)とされる。
【0055】
無機塩類としては、前述した無機塩類から適宜選択されたものが用いられる。反応液中の栄養物質の濃度は、使用する栄養物質の濃度によっても異なるが、たとえば0.1~10(mass/v%)とされる。
さらに、必要に応じて、前述したビタミン類から適宜選択されたものが用いられる。
【0056】
・反応条件
混合糖と微生物またはその形質転換体との反応温度、すなわち微生物またはその形質転換体の生存温度は、効率よく環式カルボン酸を生産させる観点から、20~50℃が好ましく、25~47℃がより好ましい。
【0057】
また、反応時間は、1~7日間であるのが好ましく、1~3日間であるのがより好ましい。
【0058】
培養は、バッチ式、流加式、連続式のいずれであってもよいが、中でもバッチ式が好ましい。
反応は、好気的条件でおこなってもよく、還元条件でおこなってもよい。
【0059】
還元条件にある反応液の調製方法は、公知の方法を制限なく使用できる。たとえば、加熱処理や減圧処理して溶解ガスを除去することにより、還元条件の反応液用水溶液を得ることができる。この場合、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは5mmHg以下、さらに好ましくは3mmHg以下の減圧下で、好ましくは1~60分程度、より好ましくは5~40分程度、処理することによって、溶解ガス(より具体的には溶解酸素)を除去し、還元条件にある反応液用水溶液を作製することができる。
【0060】
また、適当な還元剤(たとえば、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオン、硫化ソーダ)を添加して還元条件にある反応液用水溶液を調製するようにしてもよい。
さらに、これらの方法を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0061】
還元条件下で反応させる場合は、反応中も反応液を還元条件に維持することが好ましい。反応途中での還元条件を維持するために、反応系外からの酸素の混入を可能な限り防止するのが好ましい。具体的には、反応系を窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガス下に封入する方法が挙げられる。酸素混入をより効果的に防止する方法としては、反応途中において好気性細菌の菌体内の代謝機能を効率よく機能させるために、反応系のpH維持調整液の添加や各種栄養素溶解液を適宜添加する必要が生じる場合もあるが、このような場合には添加する溶液から酸素をあらかじめ除去しておくのが好ましい。
【0062】
なお、原料液体の調製後、微生物またはその形質転換体を分離除去する。分離除去法としては、たとえば、沈降分離法、遠心分離法、ろ過分離法等が挙げられる。また、これらのうちの複数を組み合わせた方法であってもよい。
【0063】
また、本工程は、必要に応じて設けられればよく、たとえばリサイクル等によって生成された環式カルボン酸を含む液体を用意する工程で置き換えられてもよい。
【0064】
-濃縮処理-
なお、得られた原料液体を必要に応じて濃縮するようにしてもよい。
濃縮方法には、たとえば、蒸留、吸着、抽出、膜分離、透析、逆浸透等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が組み合わされて用いられる。
【0065】
このうち、濃縮処理は、加熱された伝熱面に原料液体を接触させ、原料液体に含まれる溶媒を蒸発させる処理であって、伝熱面に原料液体を繰り返し接触させる処理であるのが好ましい。このような処理によれば、原料液体に含まれる溶媒を蒸発させる際、原料液体によって伝熱面を常時濡らすことができるので、焦げの発生を抑制することができる。
【0066】
具体的には、内壁面が伝熱面になっている撹拌槽に原料液体を入れ、底部に溜まった原料液体を汲み上げ、内壁面に散布しつつ原料液体を撹拌する装置を用いつつ、濃縮すればよい。これにより、伝熱面の有効面積を最大限に利用することができ、濃縮効率を高めることができる。また、伝熱面が乾燥することによる焦げの発生が抑制され、析出する固体の着色を抑制することができる。
【0067】
濃縮処理における加熱温度は、限定されないが、15~120℃程度であるのが好ましく、20~90℃程度であるのがより好ましい。これにより、焦げの発生や溶質の変性等を抑えつつ、濃縮の効率を高めることができる。
【0068】
また、濃縮処理における原料溶液は、減圧下に置かれるようにしてもよい。これにより、溶媒の揮発が促進され、濃縮効率を高めることができる。原料溶液が置かれる環境の圧力は、限定されないが、80kPa以下であるのが好ましく、0.1~50kPaであるのがより好ましい。
【0069】
なお、濃縮にあたっては、塩基性物質を用いて環式カルボン酸の塩を調製し、水性媒体に溶解させるようにしてもよい。
また、濃縮処理は必要に応じておこなえばよく、省略されてもよい。
【0070】
なお、原料液体を濃縮することにより、原料液体の単位量から回収可能な固体の量の割合(収率)を高めることができる。このため、後述する工程に要する時間やエネルギーを削減することができ、固体の製造効率(単位時間当たりの固体の生産能力)を高めることができる。
【0071】
(活性炭処理工程S02)
次に、原料液体に活性炭処理を施す。具体的には、原料液体に活性炭を添加し、撹拌する。これにより、原料液体の溶質について脱色することができる。
【0072】
なお、活性炭には、粉末活性炭、粒状活性炭、繊維状活性炭、シート状活性炭、ハニカム状活性炭等が挙げられるが、限定されない。
【0073】
また、活性炭処理の温度は、10~150℃程度であるのが好ましい。また、活性炭処理の時間は、限定されないが、10分~40時間程度であるのが好ましい。
【0074】
また、原料液体100gに対する活性炭の添加量は、限定されないが、溶質までが活性炭に吸着されてしまうのを抑制しつつ、十分な脱色作用を享受する観点から、0.01~10gであるのが好ましく、0.1~5gであるのがより好ましい。
【0075】
なお、活性炭処理は必要に応じておこなえばよく、省略されてもよい。また、活性炭処理工程の順序は、本実施形態に限定されず、たとえば溶離工程後であってもよい。
また、処理後の活性炭は、ろ過等の固液分離によって除去される。
【0076】
(晶析工程S03)
次に、原料液体に晶析処理を施し、原料液体の溶質を固体として析出させる。このような晶析処理によれば、溶液中の溶質の溶解度を下げることによって固体を析出させるというプロセスを経るため、その後の固液分離工程を経ることによって純度の高い固体の物質を回収することができる。このため、日用品、化粧品、医薬品、食品の原料等として有用な環式カルボン酸を容易に製造することができる。
【0077】
晶析処理は、原料液体から溶質を固体として析出させる処理であれば、いかなる方法であってもよい。
具体的には、原料液体の温度を変化させ溶解度の温度依存性を利用して晶析する処理、加熱または減圧等の操作により原料液体から溶媒を揮発除去し晶析する処理、溶質の溶解度が低い溶媒を添加し溶解度の溶媒種依存性を利用して晶析する処理、原料溶液のpHを変化させ溶解度のpH応答性を利用して晶析する処理等が挙げられ、これらのうちの1種または複数種を組み合わせて用いられる。
【0078】
たとえばpH応答性を利用して晶析する処理を用いる場合、溶質に含まれる環式カルボン酸は一般に低pHにおいて水への溶解度が低下する。したがって、晶析工程においてpHをたとえば1~4程度まで下げることにより、溶解度を低下させ、溶質を析出させることができる。
【0079】
このときの温度は、限定されないが、たとえば15~80℃程度であるのが好ましく、20~60℃程度であるのがより好ましい。これにより、晶析処理の能力と収率とを両立することができる。
【0080】
また、晶析操作は、バッチ操作であっても連続操作であってもよい。
また、晶析操作には、公知の撹拌槽が用いられる。
【0081】
また、晶析を促進させるため、必要に応じて、析出させようとする固体の成分を含む種晶を添加するようにしてもよい。これにより、種晶が核となって晶析が促進され、晶析効率を高めるとともに、高純度化が図られやすくなる。
【0082】
(固液分離工程S04)
次に、原料液体から固体の環式カルボン酸を回収する。
固液分離としては、たとえば、ろ過分離、沈降分離、減圧脱水、加圧脱水等が挙げられるが、操作の容易さや分離の正確性の観点からろ過分離が好ましく用いられる。具体的には、遠心ろ過機を用いることができる。
また、固液分離操作は、バッチ操作であっても連続操作であってもよい。
【0083】
その後、適宜貧溶媒を用いて洗浄操作をおこなった後、適宜乾燥させる。
以上により成分(A)および(B1)を含む、固体状等の抗菌剤組成物を回収することができる。
【0084】
また、得られた抗菌剤組成物を用いて、水、エタノール等の媒体を含む抗菌剤組成物配合液を得てもよい。このとき、上記配合液中の媒体の含有量は、たとえば、上記配合液中の媒体以外の成分を除いた残部とすることができる。
また、上記配合液中の成分(A)の濃度は、たとえば0.01質量%以上であってよく、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上、さらにより好ましくは0.4質量%以上であり、また、たとえば10質量%以下であってよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下である。
【0085】
本実施形態において得られる抗菌剤組成物の性状に制限はなく、たとえば粉体状、粒状等の固形状、液状とすることができる。
また、本実施形態において得られる抗菌剤組成物は、日用品、化粧品、医薬品、食品等に用いることができ、中でも、日用品、化粧品に好適に用いられる。
日用品の具体例として、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、洗剤、衛生用品、風呂用品、家庭用化学製品、オーラルケア用品などが挙げられる。
また、化粧品として、乳液、クリーム、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリームなどが挙げられる。
【0086】
また、本実施形態における抗菌剤組成物は、細菌であれば黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌など、酵母であればカンジダ菌など、カビであればクロコウジカビなどからなる群から選択される1種または2種以上の増殖の抑制の抑制に好適に用いることができる。
【0087】
本実施形態は、以下の態様を含む。
I-1. 以下の成分(A)および(B1):
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B1)を除く。)
(B1)没食子酸およびそのエステルからなる群から選択される1種以上
を含む、抗菌剤組成物。
I-2. 前記成分(A)が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上である、I-1.に記載の抗菌剤組成物。
I-3. 当該抗菌剤組成物中の前記成分(A)の含有量に対する前記成分(B1)の含有量((B1)/(A))が、質量比で0.01以上5以下である、I-1.またはI-2.に記載の抗菌剤組成物。
【0088】
(第2の実施形態)
本実施形態は、水溶性添加剤組成物に関する。
【0089】
環式カルボン酸の溶解性を向上しようとする技術として、特許文献5(特開2018-150288号公報)に記載のものがある。同文献には、溶解性に優れ、高湿度条件下において安定なプロトカテク酸(PCA)カチオン塩の結晶およびその製造方法を提供するための技術として、カチオン含有化合物が溶解したPCAのアルコール溶液にアルコール溶液又はニトリル溶液を滴下又は添加することによりPCAカチオン塩の結晶を析出させる工程、及び該溶液からPCAカチオン塩の結晶を採取する工程、を含むPCAカチオン塩の結晶の製造方法について記載されている。
【0090】
前述した特許文献5に記載の技術について本発明者らが検討したところ、環式カルボン酸の純度が高く、環式カルボン酸の水溶性に優れる組成物を得るという点で、依然として改善の余地があることが明らかになった。
【0091】
本実施形態によれば、
環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、
Na+およびNH4
+の含有量の合計が、前記環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である、水溶性添加剤組成物が提供される。
【0092】
また、本実施形態によれば、
環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、
総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、前記環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である、水溶性添加剤組成物が提供される。
【0093】
また、本実施形態によれば、たとえば、前述の本実施形態における水溶性添加剤組成物が配合されてなる、日用品または化粧品を得ることもできる。
【0094】
本実施形態によれば、環式カルボン酸の純度が高く、環式カルボン酸の水溶性に優れる組成物を提供することができる。
【0095】
以下、実施の形態についてさらに具体的に説明する。本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0096】
(第2-1の実施形態)
本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、環式カルボン酸を含む。そして、水溶性添加剤組成物中のNa+およびNH4
+の含有量の合計が、環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である。
【0097】
(第2-2の実施形態)
本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、環式カルボン酸を含む。そして、水溶性添加剤組成物中の総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である。
【0098】
以下、水溶性添加剤組成物の構成成分についてさらに具体的に説明する。以下の構成は、上述の各実施形態のそれぞれに用いることができる。また、上述の各実施形態に記載の構成は、他の実施形態にも組み合わせて用いることができる。
【0099】
(環式カルボン酸)
環式カルボン酸として、具体的には、1または2以上のヒドロキシ基を有する環式カルボン酸、1または2以上のアミノ基を有する環式カルボン酸が挙げられる。
【0100】
ヒドロキシ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、芳香族ヒドロキシカルボン酸および脂環式ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、ヒドロキシ(メトキシ)安息香酸等のモノヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
プロトカテク酸、ゲンチジン酸等のジヒドロキシ安息香酸、オルセリン酸等のジヒドロキシ(メチル)安息香酸等のジヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
フェルラ酸等のモノヒドロキシケイ皮酸およびその誘導体が挙げられる。
脂環式ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、シキミ酸、キナ酸等が挙げられる。
【0101】
また、アミノ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、4-アミノ安息香酸等のモノアミノ安息香酸およびその誘導体、その他の芳香族アミノカルボン酸;ならびに
脂環式アミノカルボン酸が挙げられる。
【0102】
水溶性添加剤組成物の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸は、好ましくはプロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはプロトカテク酸およびシキミ酸からなる群から選択される1種以上である。
【0103】
水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の含有量は、より高濃度の組成物を得る観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは95.3質量%以上、さらに好ましくは95.6質量%以上である。
また、水溶性添加剤組成物の水溶性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の含有量は、水溶性添加剤組成物全体に対して、100質量%未満であり、たとえば99.97質量%以下であってよく、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下である。
【0104】
水溶性添加剤組成物のNa+およびNH4
+の含有量の合計は、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸に対して、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは200ppm以上、さらに好ましくは300ppm以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物のNa+およびNH4
+の含有量の合計は、環式カルボン酸に対して、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、さらにより好ましくは500ppm以下である。
【0105】
水溶性添加剤組成物のNa+の含有量は、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸に対して、たとえば10ppm以上またはたとえば90ppm以上であってよく、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは200ppm以上、さらに好ましくは300ppm以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物のNa+の含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは4500ppm以下、さらに好ましくは4000ppm以下、さらにより好ましくは3000ppm以下、よりいっそう好ましくは1000ppm以下、さらにまた好ましくは500ppm以下である。
【0106】
水溶性添加剤組成物のNH4
+の含有量は、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸に対して、たとえば10ppm以上であってよく、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは200ppm以上、さらに好ましくは300ppm以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物のNH4
+の含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、さらにより好ましくは500ppm以下である。
【0107】
ここで、水溶性添加剤組成物のNa+およびNH4
+の含有量ならびに後述のK+、SO4
2-、PO4
3-、NO2
-、NO3
-およびCl-の含有量は、いずれも、イオンクロマトグラフィーもしくはキャピラリー電気泳動法により測定される。
【0108】
水溶性添加剤組成物の総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)は、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸に対して、好ましくは300ppm以上であり、より好ましくは500ppm以上、さらに好ましくは800ppm以上、さらにより好ましくは1500ppm以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物の総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)は、環式カルボン酸に対して、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下、さらにより好ましくは2000ppm以下である。
【0109】
ここで、水溶性添加剤組成物に含まれる無機イオン(水素イオンと水酸基イオンを除く。)のうち、前述のNa+およびNH4
+以外のものとして、たとえば、K+等の陽イオン;SO4
2-、PO4
3-、NO2
-、NO3
-、Cl-等の陰イオンが挙げられる。
【0110】
水溶性添加剤組成物のK+の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上である。
また、水溶性添加剤組成物がK+を含むとき、その含有量は、水溶性添加剤組成物中の環式カルボン酸の水溶性を安定的に向上する観点から、環式カルボン酸に対して、たとえば10ppm以上であってよく、好ましくは50ppm以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物のK+の含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。
【0111】
水溶性添加剤組成物のSO4
2-の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上である。
また、水溶性添加剤組成物がSO4
2-を含むとき、その含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。
また、SO4
2-の含有量は、環式カルボン酸に対して、たとえば10ppm以上であってもよい。
【0112】
水溶性添加剤組成物のPO4
3-の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上であり、たとえば10ppm以上であってもよい。
また、水溶性添加剤組成物がPO4
3-を含むとき、その含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。
【0113】
水溶性添加剤組成物のNO2
-の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上であり、たとえば1ppm以上であってもよい。
また、水溶性添加剤組成物がNO2
-を含むとき、その含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0114】
水溶性添加剤組成物のNO3
-の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上であり、たとえば10ppm以上であってもよい。
また、水溶性添加剤組成物がNO3
-を含むとき、その含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0115】
水溶性添加剤組成物のCl-の含有量は、環式カルボン酸に対して、0ppm以上であり、たとえば5ppm以上であってもよい。
また、水溶性添加剤組成物がCl-を含むとき、その含有量は、環式カルボン酸に対して、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0116】
水溶性添加剤組成物は、上述の環式カルボン酸以外の成分を含んでもよい。
たとえば、水溶性添加剤組成物は、水、エタノール等の媒体を含んでもよい。このとき、組成物中の媒体の含有量は、たとえば、組成物中の媒体以外の成分を除いた残部とすることができる。
【0117】
次に、水溶性添加剤組成物の製造方法を説明する。
水溶性添加剤組成物の調製方法としては、たとえば、後述の方法でバイオプロセスにより環式カルボン酸を含む培養液を得た後、培養液の濃縮精製により、環式カルボン酸を含む組成物を得る方法が挙げられる。
ここで、Na+およびNH4+の含有量の合計、または、総無機イオン含量が、前述した特定の範囲になるように制御するためには、バイオプロセスにおける環式カルボン酸の製造条件を適切に選択するとともに、精製条件を適切に選択することが重要である。たとえば精製条件として、濃縮、濾過の条件や洗浄の回数を適切に選択する。
【0118】
本実施形態において得られる水溶性添加剤組成物は、Na+およびNH4
+の含有量の合計または総無機イオン含量が特定の範囲にあるため、環式カルボン酸の純度が高く、環式カルボン酸の水溶性に優れるものである。
【0119】
以下、バイオプロセスにより、環式カルボン酸を含む培養液を得る方法を説明する。
バイオプロセスにより、環式カルボン酸を含む培養液を得る方法は、原料液体調製工程S01、活性炭処理工程S02、晶析工程S03および固液分離工程S04を含む。
【0120】
(原料液体調製工程S01)
原料液体調製工程S01は、たとえば、第1の実施形態に記載の原料液体調製工程S01に準じておこなうことができる。たとえば、原料液体調製工程S01で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0121】
(活性炭処理工程S02)
活性炭処理工程S02は、たとえば、第1の実施形態に記載の活性炭処理工程S02に準じて適宜おこなうことができる。たとえば、活性炭処理工程S02で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0122】
(晶析工程S03)
晶析工程S03は、たとえば、第1の実施形態に記載の晶析工程S03に準じておこなうことができる。たとえば、晶析工程S03で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0123】
(固液分離工程S04)
固液分離工程S04は、たとえば、第1の実施形態に記載の固液分離工程S04に準じておこなうことができる。たとえば、固液分離工程S04で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0124】
その後、適宜貧溶媒を用いて洗浄操作をおこなった後、適宜乾燥させる。
以上において、たとえば精製条件を適切に選択することにより、イオン含有量が特定の範囲にある固体状等の水溶性添加剤組成物を回収することができる。
【0125】
本実施形態において得られる水溶性添加剤組成物の性状に制限はなく、たとえば粉体状、粒状等の固形状、液状とすることができる。
また、本実施形態において得られる水溶性添加剤組成物は、日用品、化粧品、医薬品、食品等に用いることができ、中でも、日用品、化粧品に好適に用いられる。
日用品として、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、洗剤、衛生用品、風呂用品、家庭用化学製品、オーラルケア用品などが挙げられる。
また、化粧品として、乳液、クリーム、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリーム等などが挙げられる。
また、本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、たとえば、抗菌剤、味覚増強剤として用いることができる。
【0126】
本実施形態は、以下の態様を含む。
II-1. 環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、
Na+およびNH4
+の含有量の合計が、前記環式カルボン酸に対して100ppm以上5000ppm以下である、水溶性添加剤組成物。
II-2. 環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物であって、
総無機イオン含量(水素イオンと水酸基イオンを除く。)が、前記環式カルボン酸に対して300ppm以上5000ppm以下である、水溶性添加剤組成物。
II-3. 前記環式カルボン酸が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上である、II-1.またはII-2.に記載の水溶性添加剤組成物。
II-4. 当該水溶性添加剤組成物中の前記環式カルボン酸の含有量が、当該水溶性添加剤組成物全体に対して95質量%以上99.9質量%以下である、II-1.乃至II-3.いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【0127】
(第3の実施形態)
本実施形態は、水溶性添加剤組成物に関する。
【0128】
環式カルボン酸が配合された組成物に関する技術として、背景技術の項で述べた特許文献6(特開2014-31347号公報)および特許文献7(国際公開第2016/039407号)に記載のものがある。
【0129】
前述した特許文献6および7に記載の技術について本発明者らが検討したところ、保湿性および抗菌特性の向上の点で改善の余地があることが明らかになった。
そこで、本実施形態は、保湿性および抗菌特性に優れる組成物を提供するものである。
【0130】
本実施形態によれば、
以下の成分(A)および(B2):
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B2)を除く。)
(B2)アミノ酸
を含む、水溶性添加剤組成物が提供される。
【0131】
また、本実施形態によれば、たとえば、前述の本実施形態における水溶性添加剤組成物が配合されてなる、日用品または化粧品を得ることもできる。
【0132】
本実施形態によれば、保湿性および抗菌特性に優れる組成物を提供することができる。
【0133】
以下、実施の形態についてさらに具体的に説明する。本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0134】
本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、以下の成分(A)および(B2)を含む。
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B2)を除く。)
(B2)アミノ酸
【0135】
(成分(A))
成分(A)は、環式カルボン酸であって、後述する成分(B2)以外の成分である。
成分(A)として、具体的には、1または2以上のヒドロキシ基を有する環式カルボン酸、1または2以上のアミノ基を有する環式カルボン酸が挙げられる。
【0136】
ヒドロキシ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、芳香族ヒドロキシカルボン酸および脂環式ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、ヒドロキシ(メトキシ)安息香酸等のモノヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
プロトカテク酸、ゲンチジン酸等のジヒドロキシ安息香酸、オルセリン酸等のジヒドロキシ(メチル)安息香酸等のジヒドロキシ安息香酸およびその誘導体;
フェルラ酸等のモノヒドロキシケイ皮酸およびその誘導体が挙げられる。
脂環式ヒドロキシカルボン酸として、たとえば、シキミ酸、キナ酸等が挙げられる。
【0137】
また、アミノ基を有する環式カルボン酸として、たとえば、4-アミノ安息香酸等のモノアミノ安息香酸およびその誘導体、その他の芳香族アミノカルボン酸;ならびに
脂環式アミノカルボン酸が挙げられる。
【0138】
水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、成分(A)は、好ましくはプロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはプロトカテク酸およびシキミ酸からなる群から選択される1種以上である。
【0139】
水溶性添加剤組成物中の成分(A)の含有量は、保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物中の成分(A)の含有量は、水溶性添加剤組成物全体に対して、100質量%未満であり、たとえば99.999質量%以下またはたとえば99.98質量%以下であってよく、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下である。
【0140】
(成分(B2))
成分(B2)は、アミノ酸である。成分(B2)として、たとえば、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸が挙げられる。
中性アミノ酸として、たとえば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等の脂肪族アミノ酸;
セリン、スレオニン等のオキシアミノ酸;
システイン、シスチン、メチオニン等の含硫アミノ酸;
フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等の芳香族アミノ酸;
プロリン等のイミノ酸;および
アスパラギン、グルタミン等の酢酸アミノ酸アミドが挙げられる。
酸性アミノ酸として、たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。
塩基性アミノ酸として、たとえば、リシン、ヒスチジン、アルギニンが挙げられる。
【0141】
水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、成分(B2)は、好ましくはグルタミン酸、アラニン、バリン、グリシン、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、リシンおよびプロリンからなる群から選択される1または2以上のアミノ酸であり、より好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リシンおよびプロリンからなる群から選択される1または2以上のアミノ酸であり、さらに好ましくはグルタミン酸である。
【0142】
水溶性添加剤組成物中の成分(B2)の含有量は、保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、たとえば0.001質量%以上であってよく、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物中の成分(B2)の含有量は、水溶性添加剤組成物全体に対して、たとえば5質量%以下であってよく、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0143】
また、水溶性添加剤組成物は、好ましくはグルタミン酸を含み、水溶性添加剤組成物中のグルタミン酸の含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
また、同様の観点から、水溶性添加剤組成物がグルタミン酸を含むとき、水溶性添加剤組成物中のグルタミン酸の含有量は、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.2質量%以下である。
【0144】
水溶性添加剤組成物がアスパラギン酸を含むとき、水溶性添加剤組成物中のアスパラギン酸の含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、また、好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下である。
【0145】
水溶性添加剤組成物がグリシンを含むとき、水溶性添加剤組成物中のグリシンの含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、また、好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。
【0146】
水溶性添加剤組成物がアラニンを含むとき、水溶性添加剤組成物中のアラニンの含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、また、好ましくは3000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下である。
【0147】
水溶性添加剤組成物がバリンを含むとき、水溶性添加剤組成物中のバリンの含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上であり、また、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下である。
【0148】
水溶性添加剤組成物がイソロイシンを含むとき、水溶性添加剤組成物中のイソロイシンの含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは2ppm以上であり、また、好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下である。
【0149】
水溶性添加剤組成物がプロリンを含むとき、水溶性添加剤組成物中のプロリンの含有量は、水溶性添加剤組成物の保湿性および抗菌特性を向上する観点から、水溶性添加剤組成物全体に対して、好ましくは5ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、また、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下である。
【0150】
水溶性添加剤組成物は、上述の成分(A)および(B2)以外の成分を含んでもよい。
たとえば、水溶性添加剤組成物は、水、エタノール等の媒体を含んでもよい。このとき、組成物中の媒体の含有量は、たとえば、組成物中の媒体以外の成分を除いた残部とすることができる。
【0151】
次に、水溶性添加剤組成物の製造方法を説明する。
本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、たとえば、上述の成分(A)、(B2)および適宜他の成分を準備し、これらを所定の割合で配合し、混合することにより得ることができる。
【0152】
また、水溶性添加剤組成物の別の調製方法として、たとえば、バイオプロセスにより成分(A)および(B2)を含む培養液を得た後、培養液の濃縮精製により、成分(A)および(B2)を含む組成物を得る方法が挙げられる。以下、バイオプロセスにより、環式カルボン酸を含む培養液を得る方法を説明する。
バイオプロセスにより、成分(A)および(B2)を含む培養液を得る方法は、原料液体調製工程S01、活性炭処理工程S02、晶析工程S03および固液分離工程S04を含む。
【0153】
(原料液体調製工程S01)
原料液体調製工程S01は、たとえば、第1の実施形態に記載の原料液体調製工程S01に準じておこなうことができる。たとえば、原料液体調製工程S01で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0154】
(活性炭処理工程S02)
活性炭処理工程S02は、たとえば、第1の実施形態に記載の活性炭処理工程S02に準じて適宜おこなうことができる。たとえば、活性炭処理工程S02で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0155】
(晶析工程S03)
晶析工程S03は、たとえば、第1の実施形態に記載の晶析工程S03に準じておこなうことができる。たとえば、晶析工程S03で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0156】
(固液分離工程S04)
固液分離工程S04は、たとえば、第1の実施形態に記載の固液分離工程S04に準じておこなうことができる。たとえば、固液分離工程S04で用いる材料、手順、方法、条件等には、たとえば第1の実施形態に記載のものを用いることができる。
【0157】
その後、適宜貧溶媒を用いて洗浄操作をおこなった後、適宜乾燥させる。
以上により成分(A)および(B2)を含む、固体状等の水溶性添加剤組成物を回収することができる。
【0158】
本実施形態において得られる水溶性添加剤組成物の性状に制限はなく、たとえば粉体状、粒状等の固形状、液状とすることができる。
また、本実施形態において得られる水溶性添加剤組成物は、日用品、化粧品、医薬品、食品等に用いることができ、中でも、日用品、化粧品に好適に用いられる。
日用品の具体例として、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、洗剤、衛生用品、風呂用品、家庭用化学製品、オーラルケア用品などが挙げられる。
また、化粧品として、乳液、クリーム、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリームなどが挙げられる。
また、本実施形態において、水溶性添加剤組成物は、たとえば、保湿剤、抗菌剤として用いることができる。
また、本実施形態によれば、たとえば、皮膚への刺激性の低い水溶性添加剤組成物を得ることも可能となる。
【0159】
本実施形態は、以下の態様を含む。
III-1. 以下の成分(A)および(B2):
(A)環式カルボン酸(以下の成分(B2)を除く。)
(B)アミノ酸
を含む、水溶性添加剤組成物。
III-2. 前記成分(A)が、プロトカテク酸、シキミ酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-アミノ安息香酸およびフェルラ酸からなる群から選択される1種または2種以上である、III-1.に記載の水溶性添加剤組成物。
III-3. 前記成分(B2)が、グルタミン酸、アラニン、バリン、グリシン、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、スレオニン、アルギニン、チロシン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、プロリンからなる群から選択される1または2以上のアミノ酸を含む、III-1.またはIII-2.に記載の水溶性添加剤組成物。
III-4. 当該水溶性添加剤組成物中の前記成分(A)の含有量が、95質量%以上99.9質量%以下である、III-1.乃至III-3.いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
III-5. 当該水溶性添加剤組成物中の前記成分(B2)の含有量が、0.001質量%以上5質量%以下である、III-1.乃至III-4.いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
III-6. 前記成分(B2)がグルタミン酸を含み、当該水溶性添加剤組成物中の前記グルタミン酸の含有量が0.001質量%以上1質量%以下である、III-1.乃至III-5.いずれか1項に記載の水溶性添加剤組成物。
【0160】
(第4の実施形態)
本実施形態は、食品、食品添加物、および環式化合物またはその誘導体の製造方法に関する。
【0161】
特定の構造を有する環式化合物は、食品添加物として用いられることが知られている。例えば特許文献8(特開2007-238469号公報)には、芳香族ヒドロキシカルボン酸が、食品の防腐・保存料として重要であることが記載されている。
【0162】
しかし、上記のような環式化合物は、石油から得られるのが通常である。このような場合、石油を分留精製することにより回収され得る石油由来の環式化合物(化学品)は、化学構造の単純な、いわゆる基幹化合物である。一方、化学構造がより複雑な高付加価値化合物は、この基幹化合物から合成プロセスを経て誘導せざるを得ない。この場合、製造コストを度外視して石油を高度に分留精製しない限り、原料や合成工程に由来する各種異性体や触媒由来の微量成分、イオン成分、鉱物成分等が、石油由来の化学品に残存し得る。石油由来の化学品に含まれるこれらの不純物は、人体に対する安全性の観点で好ましいとは言えない。
【0163】
本実施形態の目的は、石油由来の不純物を含まない、より安全な食品および食品添加物を提供することにある。また、食品または食品添加物として用いることが可能な環式化合物またはその誘導体の製造方法を提供することにある。
【0164】
このような目的は、下記(VI-1)~(VI-10)に記載の本実施形態により達成される。
(VI-1) 植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品。
【0165】
(VI-2) 前記環式化合物が下記一般式(1)で表される化合物である上記(VI-1)に記載の食品。
【化1】
[上記一般式(1)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R
2~R
6(環Aが5員環の場合はR
2~R
5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。]
【0166】
(VI-3) 前記環式化合物が、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である上記(VI-2)に記載の食品。
【0167】
(VI-4) 前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であり、前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子である上記(VI-2)に記載の食品。
【0168】
(VI-5) 前記環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、前記炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種である上記(VI-4)に記載の食品。
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【0169】
(VI-6) 前記環式化合物またはその誘導体が、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸である上記(VI-1)に記載の食品。
【0170】
(VI-7) 前記微生物が、大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、コリネ菌、放線菌、ラン藻菌、メタン生成菌、好塩菌、耐熱性好酸菌、抗酸菌、カビ、酵母またはそれらの形質転換体である上記(VI-1)ないし(VI-6)のいずれかに記載の食品。
【0171】
(VI-8) 前記植物由来糖類の原料は、非可食のバイオマス資源である上記(VI-1)ないし(VI-7)のいずれかに記載の食品。
【0172】
(VI-9) 植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、食品添加物。
【0173】
(VI-10) 食品または食品添加物として用いられる、環式化合物またはその誘導体の製造方法であって、
前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を生成するように、植物由来糖類と、微生物とを含む培養液を調製する工程と、
前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、
前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、環式化合物またはその誘導体の製造方法。
【0174】
本実施形態によれば、石油由来の不純物を含まない、より安全な食品および食品添加物を提供することができる。
【0175】
また、本実施形態によれば、石油由来の不純物を含まない、より安全な食品または食品添加物を効率よく製造することができる。
【0176】
以下、本実施形態の食品、食品添加物、および環式化合物またはその誘導体の製造方法について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0177】
≪食品および食品添加物≫
本発明者らが鋭意検討した結果、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含むことで、石油由来の不純物を含まない食品または食品添加物を提供し得ることを見出した。この際、植物由来糖類(原料)と微生物とを用いたバイオプロセスにより、環式化合物またはその誘導体を製造することが好ましいことを見出した。
【0178】
すなわち、本実施形態の食品は、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する。換言すれば、本実施形態の食品は、植物由来糖類と微生物との反応(バイオプロセス)によって製造された環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する。
【0179】
これにより、石油由来の不純物を含まない食品を提供することができる。このような食品は、石油由来の不純物を含む食品に比べて、安全性が高い。
【0180】
また、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方は、食品添加物としても用いられる。
【0181】
これにより、環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有し、石油由来の不純物を含まない食品添加物を提供することができる。このような食品添加物は、石油由来の不純物を含む食品添加物に比べて、安全性が高い。
【0182】
このように食品または食品添加物が含有する環式化合物としては、例えば、環構成原子が炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等であり、環員数が3~12程度の化合物が挙げられる。また、環を構成する原子間の結合は、単結合であっても、二重結合であってもよい。
【0183】
このような環式化合物は、限定されないが、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0184】
【0185】
[上記一般式(1)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R2~R6(環Aが5員環の場合はR2~R5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。]
【0186】
飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環としては、例えば、フラン構造、チオフェン構造、ピロール構造、ピロリジン構造、テトラヒドロフラン構造、2,3-ジヒドロフラン構造、ピラゾール構造、イミダゾール構造、オキサゾール構造、イソオキサゾール構造、チアゾール構造、イソチアゾール構造等が挙げられる。
【0187】
飽和環の6員環としては、例えば、シクロヘキサン構造のような炭化水素系飽和環、ピペリジン構造、ピペラジン構造、トリアジナン構造、テトラジナン構造、ペンタジナン構造、キヌクリジン構造のような含窒素飽和環、テトラヒドロピラン構造、モルホリン構造のような含酸素飽和環、テトラヒドロチオピラン構造のような含硫黄飽和環等が挙げられる。
【0188】
部分飽和環の6員環としては、シクロヘキセン構造、シクロヘキサジエン構造のような炭化水素系部分飽和環、ピペリジン構造のような含窒素部分飽和環、ピラン構造のような含酸素部分飽和環、チアジン構造のような含硫黄部分飽和環等が挙げられる。
【0189】
芳香環の6員環としては、ベンゼン構造のような炭化水素系芳香環、ピリジン構造、ピリダジン構造、ピリミジン構造、ピラジン構造、トリアジン構造、テトラジン構造、ペンタジン構造のような含窒素芳香環(含窒素不飽和環)等が挙げられる。
【0190】
Xは、単結合または1つ以上の炭素を含む(炭素数が1以上の)結合である。
Xが単結合である場合、環Aの環構成原子に対して酸素原子が直接結合している。
【0191】
一方、1つ以上の炭素を含む結合としては、例えば、炭素数1~4の炭化水素基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、ビニリデン基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものとされる。
【0192】
このうち、炭素数1~4の炭化水素基は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。なお、炭化水素基の水素原子は、炭素数1~2のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0193】
なお、Xには、上述した結合に加え、任意の原子または原子団が含まれていてもよい。例えば、Xは、カルボニル基と1つ以上の炭素を含む結合とを含む原子団であってもよい。
【0194】
Yは、水素原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数は好ましくは1~12とされ、より好ましくは1~4とされる。
【0195】
環Aが6員環である場合、R2~R6は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。また、環Aが5員環である場合、R2~R5は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。
【0196】
なお、環Aが6員環である場合のR2~R6のいずれか、または、環Aが5員環である場合のR2~R5のいずれか、がカルボニル基である場合、環Aの環構成原子が炭素原子であり、かつ、その炭素原子と酸素原子との間が二重結合になっている構造を指して、カルボニル基という。
環Aが6員環である場合、環Aを構成する炭素原子は、独立して、1つの炭素原子にR2~R6のいずれか1つが結合していてもよいし、いずれか2つが結合していてもよい。また、環Aが5員環である場合、環Aを構成する炭素原子は、独立して、環Aを構成する1つの炭素原子にR2~R5のいずれか1つが結合していてもよいし、いずれか2つが結合していてもよい。
【0197】
環式化合物の具体例としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、フェニル酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酪酸(フェニルラクテート)、ヒドロキシフェニル酪酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニル乳酸、アントラニル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸(クマル酸)、ケイ皮酸、サリチル酸(2-ヒドロキシ安息香酸)、m-サリチル酸(3-ヒドロキシ安息香酸)、p-サリチル酸(4-ヒドロキシ安息香酸)、メトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ピロカテク酸(2,3-ジヒドロキシ安息香酸)、β-レソルシル酸(2,4-ジヒドロキシ安息香酸)、ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)、γ-レソルシル酸(2,6-ジヒドロキシ安息香酸)、プロトカテク酸(3,4-ジヒドロキシ安息香酸)、α-レソルシル酸(3,5-ジヒドロキシ安息香酸)、トリヒドロキシ安息香酸、バニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸)、イソバニリン酸(3-ヒドロキシ-4-メトキシ安息香酸)、ベラトルム酸、没食子酸、シリング酸、アサロン酸、マンデル酸、バニルマンデル酸、アニス酸、ホモプロトカテク酸、ホモバニリン酸、ホモイソバニリン酸、ホモベラトルム酸、ホモフタル酸、ホモイソフタル酸、ホモテレフタル酸、フタロン酸、イソフタロン酸、テレフタロン酸、アトロラクチン酸、トロパ酸、メリロト酸、フロレト酸、ジヒドロカフェー酸、ヒドロフェルラ酸、ヒドロイソフェルラ酸、ウンベル酸、カフェー酸(コーヒー酸)、フェルラ酸、イソフェルラ酸、シナピン酸、シリンガ酸、デヒドロキナ酸、デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸、L-トリプトファン、L-チロシン、プレフェン酸、アロゲン酸、L-フェニルアラニン等が挙げられる。
【0198】
また、環式化合物の別の具体例としては、フラボノイド、リグナン、カルコン、スチルベノイド、アルカロイド、クルクミノイド、テルペノイド、サポニン、各種配糖体、各種ポリフェノール系芳香族化合物のようなポリフェノール類の他、アミノ酸、ビタミン等が挙げられる。
【0199】
このうち、フラボノイドとしては、例えば、オーランチニジン、シアニジン、デルフィニジン、ヨーロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、ペオニジン、ペチュニジン、ロシニジンのようなアントシアニジン、プロシアニジンのようなアントシアニン、ナリンゲニン、エリオシトリン、ピノセムブリン、エリオジクチオールのようなフラバノン、カテキンのようなフラバン、アピゲニン、ルテオリン、バイカレイン、クリシンのようなフラボン、ケルセチン、ケンプフェロールのようなフラボノール、イソフラボン、イソフラバン、イソフラバンジオール、ゲニステインのようなイソフラボノイドの他、ネオフラボノイド、ビフラボノイド、オーロン、プレニル化フラボノイド、O-メチル化フラボノイド等が挙げられる。
【0200】
また、リグナンとしては、例えば、ピノレシノール、ラリシレシノール、セコイソラリシレシノール、マタイレシノール、ヒドロキシマタイレシノール、シリンガレシノール、セサミン、アルクチゲニン、セサミノール、ポドフィロトキシン、ステガナシン等が挙げられる。
【0201】
さらに、スチルベノイドとしては、例えば、ピセアタンノール、ピノシルビン、プテロスチルベン、レスベラトロール、4'-メトキシレスベラトロール、ピノスチルベン、ピシアタノールのようなアグリコン、α-ビニフェリン、アンペロプシンA、アンペロプシンE、ジプトインドネシンC-カワン、ジプトインドネシンF-ダマールブア、ε-ビニフェリン、フレクスオソールA、グネチンH、ヘムスレヤノールD、ホペアフェノール、ジプトインドネシンB、バチカノールBのようなオリゴマー等が挙げられる。
【0202】
また、クルクミノイドとしては、例えば、クルクミン、ショウガオール等が挙げられる。
【0203】
さらに、テルペノイドとしては、例えば、ルテイン、ビタミンA、ビタミンE、βカロテンのようなカロテノイドの他、シトステロールのようなステロイド等が挙げられる。
【0204】
また、各種配糖体としては、例えば、サリシン、β-グルコガリン、サリチル酸グルコシド、サリドロシド、ガストロジン、ポプリン、フロリジン、アルブチンのようなフェノール配糖体、エスクリンのようなクマリン配糖体、ヘスペリジン、ルチンのようなフラボノイド配糖体、アストリンギン、ピセイド、ジプトインドネシンAのようなスチルベノイド配糖体等が挙げられる。
【0205】
さらに、各種ポリフェノール系芳香族化合物としては、例えば、チロソール、ヒドロキシチロソール、エスクレチン、フロレチン、ロスマリン酸、サルビアン酸A、レチクリン、パラクマリルアルコール、コニフェリルアルコール、カフェイルアルコール等が挙げられる。
【0206】
また、アミノ酸としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン等が挙げられる。
さらに、ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE等が挙げられる。
【0207】
また、環式化合物のさらに別の具体例としては、芳香族化合物、脂環式化合物、脂肪族化合物、複素環式化合物等が挙げられる。
【0208】
このうち、芳香族化合物としては、例えば、バニリン、2-フェニルエタノール、フェニル酢酸、シンナミックアルコール、イソオイゲノール、フェルラ酸、4-アミノ安息香酸、アネトール、エストラゴール、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、酢酸シンナミル、レゾルシン、4-ビニルフェノール、4-ビニル-2-メトキシフェノール、3,4-ジヒドロキシスチレン、ドーパミン、レボドパ、ハイドロキノン、クマリン、7-ヒドロキシクマリン、4-ヒドロキシクマリン、キシアメンマイシンA等が挙げられる。
【0209】
また、脂環式化合物としては、例えば、カルベオール、ペリラアルコール、ボルネオール、ジャスモン酸メチル、1,8-シネオール、L-メントン、バレンセン、ヌートカトン、α-ピネン、カンフェン、L-カルボン、ペリラアルデヒド、ミルテナール、酢酸L-メンチル、β-イオノン等が挙げられる。
【0210】
さらに、脂肪族化合物としては、例えば、シス-3-ヘキセノール、酢酸シス-3-ヘキセニル、アセトイン、ネロール、ファルネソール、アルギニン、ムコン酸等が挙げられる。
【0211】
また、複素環式化合物としては、例えば、ナイアシン、ナイアシンアミド、マルトール、インドール等が挙げられる。
【0212】
一方、環式化合物の誘導体としては、例えば、上述した化合物のエステル、酸無水物、アミド、酸ハロゲン化物、塩等、または、環式化合物から誘導される全ての化合物が挙げられる。
【0213】
以上のような環式化合物の中でも、上記一般式(1)で表される環式化合物は、さらに、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これらを用いることにより、多様な効能を有し、かつ、より安全な食品または食品添加物を実現することができる。
【0214】
なお、環式化合物またはその誘導体の分子量は、限定されないが、120~1000であるのが好ましく、130~800であるのがより好ましい。
【0215】
また、上記一般式(1)で表される環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であるのが好ましい。また、上記一般式(1)で表される環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であるのが好ましい。
【0216】
このような場合、環式化合物は立体異性体となるが、これにより有意な食品または食品添加物を実現することができる。また、このような環式化合物を、植物由来糖類から製造することにより、特定の立体異性体を高純度に含む食品または食品添加物を得ることができる。すなわち、特定の立体異性体を高純度に含み、かつ、それ以外の立体異性体の含有率が低い食品または食品添加物を得ることができる。このような食品または食品添加物は、安全性および効能に優れた食品または食品添加物を実現し得るという観点から有用である。また、不要な立体異性体の除去に伴う複雑な製造工程が必要ないため、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0217】
また、上記一般式(1)で表される環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、これらの炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種であることが好ましい。
C1~C6はそれぞれ異なる炭素原子であってもよいし、C1~C6のいずれか2つが同一の炭素原子であってもよい。
【0218】
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【0219】
なお、下記一般式(2)は、上記一般式(1)で表される環式化合物に対し、上記C1~C6の表示を追記した式である。
【0220】
【0221】
[上記一般式(2)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R2~R6(環Aが5員環の場合はR2~R5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。また、C1~C6は、それぞれ、環Aの環構成原子としての炭素原子である。]
【0222】
このような場合、環式化合物は立体異性体となるが、これによりさらに有意な食品または食品添加物を実現することができる。また、このような環式化合物を、植物由来糖類から製造することにより、上記(a)~(h)からなる群から選択される1種である特定の立体異性体を高純度に含む食品または食品添加物を得ることができる。すなわち、特定の立体異性体を高純度に含み、かつ、それ以外の立体異性体の含有率が低い食品または食品添加物を得ることができる。このような食品または食品添加物は、安全性および効能に優れた食品または食品添加物を実現し得るという観点から有用である。また、不要な立体異性体の除去に伴う複雑な製造工程を減らすことができるため、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0223】
なお、本実施形態に係る環式化合物およびその誘導体は、上記一般式(2)で表される化合物であって、さらに、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸であるのが好ましい。これらの化合物は、いずれも植物由来糖類から製造可能であって、かつ、食品または食品添加物として有用である。したがって、植物由来糖類から製造されたこれらの化合物を用いることにより、より優れた効能を有し、かつ、より安全な食品または食品添加物を実現することができる。
なお、これらの環式化合物の構造は、以下の式で表される。
【0224】
・3-デヒドロキネート
【0225】
【0226】
・3-デヒドロシキミ酸
【0227】
【0228】
・シキミ酸
【0229】
【0230】
・コリスミ酸
【0231】
【0232】
・プレフェン酸
【0233】
【0234】
以上のような環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する食品としては、一般的に食べられている飲食物であれば、限定されない。一例を挙げると、ガム、キャンデーのような口腔用組成物、かまぼこ、ちくわのような水産ねり製品、ソーセージ、ハムのような畜産製品、洋菓子類、和菓子類、中華めん、うどん、そばのようなめん類、ソース、醤油、たれのような調味料、惣菜、ジュース、スープ等である。
【0235】
この他、サプリメントまたは健康食品とする場合には、医薬品のようにカプセルや錠剤のような形態で提供してもよいし、飲料、調味料、菓子等の各種の食品に添加した態様で提供することもできる。サプリメントまたは健康食品の機能としては、例えば、抗酸化作用、抗動脈硬化、抗高血圧、ラジカル捕捉活性、酵素阻害作用、皮膚内側の細胞組織の健全化、毛細血管の再生、細菌に対する抵抗力の強化、赤血球の再生、血圧の調節、免疫増強、抗癌、抗ウイルス、血糖値上昇抑制、肝機能改善、腸内フローラ改善、便通改善、脂質代謝改善、抗酸化機能増強、体力増強、美肌促進、育毛、血管関連疾病(動脈硬化、高血圧、心臓病)、神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、および眼疾患のうちの少なくとも1つを予防または改善する機能等が挙げられる。
【0236】
また、環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する食品添加物としては、食品衛生法に基づいて指定されている添加物が挙げられる。一例を挙げると、保存料、甘味料、着色料、食品香料(フレーバー)等である。このうち、例えばプロトカテク酸は、甘味増強剤として用いられる。このような甘味増強剤を用いることにより、食品の甘味強度を高めることができるので、相対的に糖分の添加量を減らすことができる。その結果、低糖という観点で付加価値を有し、かつ安全な食品を実現することができる。また、食品香料の機能としては、例えば、着香、賦香、風味矯正、甘味増強、酸味苦味低減、食欲増進等が挙げられる。
【0237】
なお、食品添加物の形態としては、例えば、水溶性液体、油溶性液体、乳化体(エマルジョン)、粉末等が挙げられる。
【0238】
≪環式化合物またはその誘導体の製造方法≫
上述した環式化合物またはその誘導体は、植物由来糖類を原料として、微生物を用いたバイオプロセスにより製造されたものである。すなわち、上述した環式化合物またはその誘導体は、植物由来糖類および微生物を由来とするものである。
【0239】
植物由来糖類としては、限定されず、単糖や多糖およびこれらの混合物が挙げられる。
【0240】
単糖は、限定されず、後述する微生物の形質転換体で処理できる糖類が挙げられる。このような糖類(単糖)としては、形質転換体のフェノール生産性を向上させる観点から、例えば、テトロース(C4糖)、ペントース(C5糖)、ヘキソース(C6糖)、ヘプトース(C7糖)が挙げられる。これらの中でも、単糖としては、さらにアラビノース、キシロース、グルコース、マンニトール、フルクトース、マンノース、ガラクトース、およびスクロースからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、このような糖類は、1種で用いてもよく、または複数を組み合わせて混合糖として用いてもよい。
【0241】
多糖は、単糖の重合体である。多糖の平均重合度は、限定されないが、微生物を用いたバイオプロセスにおける生産性を向上させる観点から、2以上100以下が好ましく、2以上50以下がさらに好ましい。また、多糖は、1種で用いてもよく、または複数を組み合わせて用いてもよい。多糖としては、例えば、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロース、アカルボース、スタキオース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等が挙げられる。
【0242】
植物由来糖類は、非可食のバイオマス資源から製造されたものであることが好ましい。換言すれば、前記植物由来糖類の原料が、非可食のバイオマス資源であることが好ましい。
【0243】
前記バイオマス資源としては、上述したような糖類を得る観点から、単糖または多糖を少なくとも含むものであれば種々のものを用いることができる。前記バイオマス資源は、都市部もしくは耕作地から発生する雑草類や林産地における間伐材等に代表される草木資源の他、一般食品工業の工程残滓もしくは廃棄物として回収される廃セルロースや廃デンプン、廃糖蜜、または製糖工業におけるサトウキビの絞りかすや酒造業における酒粕や焼酎粕等が挙げられ、これらは1種または複数を組み合わせて用いることができる。また、バイオマス資源としては、加工品を用いることもできる。
【0244】
このようなバイオマス資源を糖化することにより、前記植物由来糖類を得ることができる。このような植物由来糖類としては、廃セルロースを糖化したセルロース由来糖類が好ましく、セルロース由来混合糖がより好ましい。以下、植物由来糖類を原料とし、微生物を用いて環式化合物またはその誘導体を製造するプロセスについて詳細に説明する。
【0245】
前記植物由来糖類を原料とする微生物を用いたプロセスとは、前記植物由来糖類を原料として微生物によって生産された(植物由来糖類を微生物が変換することから生産された)前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含む培養液を得る工程と、前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、を有するプロセスである。このようなプロセスを経ることで、前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を効率よく得ることができる。また、このような微生物を用いたプロセスによれば、原料と微生物との反応の結果として環式化合物またはその誘導体が生産される。このため、原料および微生物の種類を限定(例えば、原料を植物由来糖類と限定し、かつ、微生物の種類を細菌類に限定)することで、環式化合物またはその誘導体を効率よく得ることができる。このような効果は、原料および微生物の種類をさらに限定(例えば、原料をセルロース由来混合糖と限定し、かつ、細菌の種類を限定)することにより、顕著に発揮され得る。この点で、微生物を用いないプロセス(例えば植物からの抽出液を用いるプロセス)とは異なる。このような観点から、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体とは、環式化合物およびその誘導体(植物抽出液由来のものを除く)ということができる。
【0246】
前記バイオプロセスにおいては、微生物、培地、培養設備および培養条件を適切に選定することで、環式化合物およびその誘導体の回収率を向上させることができる。
【0247】
<培養液を調製する工程>
まず、原料、微生物、培地等を含む培養液を調製する。この培養液において、微生物を培養するとともに、原料等と微生物とを反応させることにより(バイオプロセスにより)、環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方が生産される。
【0248】
前記微生物としては、前記環式化合物およびその誘導体を高効率に生成し得るものであればその種類は問わない。一般的には大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コリネ菌(Corynebacterium glutamicum)等の細菌類、ストレプトミセス属(Streptomyces griseus)等の放線菌、ミクロシスティス属(Microcystis aeruginosa)等のラン藻菌、メタン生成菌(Methanobacterium thermoautotrophicum)、好塩菌(Halobacterium salinarum)、高温好酸菌(Sulfolobus acidocaldarius)、耐熱性好酸菌(Alicyclobacillus acidoterrestris)、抗酸菌(acid-fast bacterium)等の古細菌、コウジカビ(Aspergillus oryzae)等のカビ、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母から、目的に応じたものが選定され、必要に応じ既知の方法により得られるこれらの形質転換体が利用される。
【0249】
培地としては、微生物の培養に通常使用される培地を適用すればよい。培地は、微生物の生育に必要な環境を整えるべく、培地成分を含む。培地成分は、炭素源、窒素源、無機塩類またはその他の栄養分等を使用する微生物の種類に応じて適切量含有することが好ましい。したがって、バイオプロセス前における培養液は、原料、微生物および培地成分を含むことが好ましい。
【0250】
炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、アラビノース、ガラクトース、でんぷん、糖蜜、ソルビトール、グリセリン等の糖質または糖アルコール;酢酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸またはグルコン酸等の有機酸;エタノール、プロパノール等のアルコールが挙げられる。炭素源としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0251】
窒素源としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機または有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられる。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、NZ-アミン、タンパク質加水分解物、アミノ酸等の含窒素有機化合物等も利用できる。窒素源としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0252】
無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機塩類としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0253】
栄養分としては、例えば、肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物、または動植物もしくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。さらに、必要に応じて、ビタミン類を培地に添加することもできる。ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
【0254】
培養設備は、バッチ式、流加式および連続式のうちのいずれであってもよいが、多品種生産を想定する場合にはバッチ式が好ましい。また、一般的にはフラスコスケールの培養から段階的に拡大培養を行うシード培養方式を採用することが多く、生産規模に応じて大きさが数段階に異なる培養器群をひと組として使用する。また、培養条件としては、培地温度は約15~45℃が好ましく、培地のpHは約6~8が好ましい。その他、培養槽への通気方式および通気量、撹拌方式および回転数、撹拌翼形状、培養時間等のパラメータについては、培養設備の規模および仕様、使用する微生物の種類および濃度に応じて適切に設定され、培養過程はリアルタイム監視により適切に調整される。
【0255】
<濃縮工程および単離精製工程>
バイオプロセスにより得られる培養液は、微生物生育環境が適切に選択されていれば前記環式化合物またはその誘導体を好適な濃度で含有した状態で調製され得る。このように調製された培養液から環式化合物またはその誘導体を選択的に効率よく回収する目的で、培養液の濃縮工程と、単離精製工程と、を含む回収プロセスが適用される。このような方法によれば、環式化合物またはその誘導体を効率よく製造することができる。
【0256】
前記濃縮工程は、バイオプロセス後に得られる培養液の環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方の含有濃度を向上させ、これに続く単離精製工程において目的化合物を高収率かつ高純度で回収する目的で行われる。以下、濃縮工程について説明する。
【0257】
バイオプロセス後における培養液は、バイオプロセスにより生成した前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方に加え、培地成分としての炭素源、窒素源、無機塩類、栄養分等を含むほか、バイオプロセスの際に副生する有機酸やアミノ酸およびそれらの塩類を含有する。なお、バイオプロセス後における培養液の全重量のうち70~99%は通常は水分である。従って濃縮工程においては、環式化合物またはその誘導体を変質または減耗させることなく、かつ濃縮に伴いさらに副生物量を増加させることなく、水分を効率的に除去出来るものが望ましい。この目的を達する為に、加熱濃縮、減圧蒸留、溶剤抽出、固体抽出、膜分離等の化学工学的手法を適用することができるが、濃縮工程中の環式化合物またはその誘導体の熱や酸化による変質および減耗を避けるべく、また、水分除去に伴う熱エネルギー投入量を低減すべく、減圧濃縮がさらに好適に用いられる。
【0258】
前記単離精製工程は、濃縮工程により得られる濃縮液から環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を選択的に回収する目的で行われる。
【0259】
単離精製工程では、例えば、水蒸気蒸留、精密分留、温度晶析、酸晶析、塩析、再沈殿、昇華、カラム精製、抽出、膜分離等、様々な化学工学的手法が適用可能である。目的化合物の性質および除去されるべき不純物や副生物の性質を考慮して、好適な手法が選択される。環式化合物は、置換基の種類や数によって性質が異なるが、環式化合物またはその誘導体が常温で固体であり、かつ不純物や副生物の水溶性が比較的高い場合には、晶析法(温度晶析または酸晶析)が好適に用いられる。
【0260】
<食品または食品添加物への加工>
以上のようにして製造された環式化合物またはその誘導体を必要に応じて加工することにより、食品または食品添加物が得られる。かかる加工の一例としては任意の成分の添加が挙げられる。本実施形態の食品または食品添加物は、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、いかなる他の成分を含んでいてもよい。
【0261】
他の成分としては、例えば、砂糖、練乳、小麦粉、ショートニング、食塩、ブドウ糖、鶏卵、バター、マーガリン、水飴、カルシウム、鉄分、調味料、香辛料や油分(動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス油、シリコーン油、高級アルコール、リン脂質類、脂肪酸類等)、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性界面活性剤)、ビタミン類(ビタミンA群、ビタミンB群、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、ビタミンC群、ビタミンD群、ビタミンE群、その他フェルラ酸、γ-オリザノール等)、紫外線吸収剤(p-アミノ安息香酸、アントラニル酸、サルチル酸、クマリン、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、イミダゾリン、ピリミジン、ジオキサン、フラン、ピロン、カンファー、核酸、アラントインまたはそれらの誘導体、アミノ酸系化合物、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリン等)、抗酸化剤(ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等)、増粘剤(ヒドキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アラビアゴム、トラガントゴム、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、アルギン酸またはその塩等)、保湿剤(プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、コンドロイチン硫酸またはその塩、ヒアルロン酸またはその塩、乳酸ナトリウム等)、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、pH調整剤、防腐・防黴剤、着色料、香料、清涼剤、安定化剤、動・植物抽出物、動・植物性蛋白質またはその分解物、動・植物性多糖類またはその分解物、動・植物性糖蛋白質またはその分解物、微生物培養代謝成分、血流促進剤、消炎剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、細胞賦活剤、アミノ酸またはその塩、角質溶解剤、収斂剤、創傷治療剤、増泡剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、乳化剤等が挙げられる。なお、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0262】
なお、本実施形態の食品の形態は、任意であり、限定されない。
以上、本実施形態の食品または食品添加物について説明したが、食品または食品添加物の具体例は、前述したものに限定されず、いかなるものであってもよい。
【0263】
(第5の実施形態)
本実施形態は、香料、および環式化合物またはその誘導体の製造方法に関する。
【0264】
特定の構造を有する環式化合物は、香料として用いられることが知られている。例えば特許文献9(特開平8-92589号公報)には、アルコール類と芳香族アルデヒド類とを含有する香料組成物が開示されている。
【0265】
しかし、上記芳香族アルデヒド類のような環式化合物は、石油から得られるのが通常である。このような場合、石油を分留精製することにより回収され得る石油由来の環式化合物(化学品)は、化学構造の単純な、いわゆる基幹化合物である。一方、化学構造がより複雑な高付加価値化合物は、この基幹化合物から合成プロセスを経て誘導せざるを得ない。この場合、製造コストを度外視して石油を高度に分留精製しない限り、原料や合成工程に由来する各種異性体や触媒由来の微量成分、イオン成分、鉱物成分等が、石油由来の化学品に残存し得る。石油由来の化学品に含まれるこれらの不純物は、人体に対する安全性の観点で好ましいとは言えない。
【0266】
本実施形態の目的は、石油由来の不純物を含まない、より安全な香料を提供することにある。また、香料として用いることが可能な環式化合物またはその誘導体の製造方法を提供することにある。
【0267】
このような目的は、下記(V-1)~(V-9)に記載の本実施形態により達成される。
(V-1) 植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する、香料。
【0268】
(V-2) 前記環式化合物が下記一般式(1)で表される化合物である上記(V-1)に記載の香料。
【化9】
[上記一般式(1)中、環Aは、飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の5員環または飽和環、部分飽和環もしくは芳香環の6員環であり、Xは単結合または1つ以上の炭素を含む結合であり、Yは水素原子またはアルキル基であり、R
2~R
6(環Aが5員環の場合はR
2~R
5)は、独立して、水素原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基またはカルボニル基である。]
【0269】
(V-3) 前記環式化合物が、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種である上記(V-2)に記載の香料。
【0270】
(V-4) 前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であり、前記環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子である上記(V-2)に記載の香料。
【0271】
(V-5) 前記環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、前記炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種である上記(V-4)に記載の香料。
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【0272】
(V-6) 前記環式化合物またはその誘導体が、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸である上記(V-1)に記載の香料。
【0273】
(V-7) 前記微生物が、大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、コリネ菌、放線菌、ラン藻菌、メタン生成菌、好塩菌、耐熱性好酸菌、抗酸菌、カビ、酵母またはそれらの形質転換体である上記(V-1)ないし(V-6)のいずれかに記載の香料。
【0274】
(V-8) 前記植物由来糖類の原料は、非可食のバイオマス資源である上記(V-1)ないし(V-7)のいずれかに記載の香料。
【0275】
(V-9) 香料として用いられる、環式化合物またはその誘導体の製造方法であって、
前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を生成するように、植物由来糖類と、微生物とを含む培養液を調製する工程と、
前記培養液を濃縮して濃縮液を得る工程と、
前記濃縮液から晶析法、沈殿法、抽出法、昇華精製法または蒸留法により前記環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を回収する工程と、
を含む、環式化合物またはその誘導体の製造方法。
【0276】
本実施形態によれば、石油由来の不純物を含まない、より安全な香料を提供することができる。
【0277】
また、本実施形態によれば、石油由来の不純物を含まない、より安全な香料を効率よく製造することができる。
【0278】
以下、本実施形態の香料、および環式化合物またはその誘導体の製造方法について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0279】
≪香料≫
本発明者らが鋭意検討した結果、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含むことで、石油由来の不純物を含まない香料を提供し得ることを見出した。この際、植物由来糖類(原料)と微生物とを用いたバイオプロセスにより、環式化合物またはその誘導体を製造することが好ましいことを見出した。
【0280】
すなわち、本実施形態の香料は、植物由来糖類および微生物を由来とする環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する。換言すれば、本実施形態の香料は、植物由来糖類と微生物との反応(バイオプロセス)によって製造された環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する。
【0281】
これにより、石油由来の不純物を含まない香料を提供することができる。このような香料は、石油由来の不純物を含む香料に比べて、安全性が高い。
【0282】
このように香料が含有する環式化合物としては、例えば、環構成原子が炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等であり、環員数が3~12程度の化合物が挙げられる。また、環を構成する原子間の結合は、単結合であっても、二重結合であってもよい。
【0283】
このような環式化合物は、限定されないが、第4の実施形態で前述した一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。そして、一般式(1)で表される化合物の具体的構成は、第4の実施形態で前述の構成とすることができる。
【0284】
環式化合物の具体例としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、フェニル酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、フェニル酪酸(フェニルラクテート)、ヒドロキシフェニル酪酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニル乳酸、アントラニル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸(クマル酸)、ケイ皮酸、サリチル酸(2-ヒドロキシ安息香酸)、m-サリチル酸(3-ヒドロキシ安息香酸)、p-サリチル酸(4-ヒドロキシ安息香酸)、メトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ピロカテク酸(2,3-ジヒドロキシ安息香酸)、β-レソルシル酸(2,4-ジヒドロキシ安息香酸)、ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)、γ-レソルシル酸(2,6-ジヒドロキシ安息香酸)、プロトカテク酸(3,4-ジヒドロキシ安息香酸)、α-レソルシル酸(3,5-ジヒドロキシ安息香酸)、トリヒドロキシ安息香酸、バニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸)、イソバニリン酸(3-ヒドロキシ-4-メトキシ安息香酸)、ベラトルム酸、没食子酸、シリング酸、アサロン酸、マンデル酸、バニルマンデル酸、アニス酸、ホモプロトカテク酸、ホモバニリン酸、ホモイソバニリン酸、ホモベラトルム酸、ホモフタル酸、ホモイソフタル酸、ホモテレフタル酸、フタロン酸、イソフタロン酸、テレフタロン酸、アトロラクチン酸、トロパ酸、メリロト酸、フロレト酸、ジヒドロカフェー酸、ヒドロフェルラ酸、ヒドロイソフェルラ酸、ウンベル酸、カフェー酸(コーヒー酸)、フェルラ酸、イソフェルラ酸、シナピン酸、シリンガ酸、デヒドロキナ酸、デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸、L-トリプトファン、L-チロシン、プレフェン酸、アロゲン酸、L-フェニルアラニン等が挙げられる。
【0285】
また、環式化合物の別の具体例としては、フラボノイド、リグナン、カルコン、スチルベノイド、アルカロイド、クルクミノイド、テルペノイド、サポニン、各種配糖体、各種ポリフェノール系芳香族化合物のようなポリフェノール類の他、アミノ酸、ビタミン等が挙げられる。
【0286】
このうち、フラボノイドとしては、例えば、オーランチニジン、シアニジン、デルフィニジン、ヨーロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、ペオニジン、ペチュニジン、ロシニジンのようなアントシアニジン、プロシアニジンのようなアントシアニン、ナリンゲニン、エリオシトリン、ピノセムブリン、エリオジクチオールのようなフラバノン、カテキンのようなフラバン、アピゲニン、ルテオリン、バイカレイン、クリシンのようなフラボン、ケルセチン、ケンプフェロールのようなフラボノール、イソフラボン、イソフラバン、イソフラバンジオール、ゲニステインのようなイソフラボノイドの他、ネオフラボノイド、ビフラボノイド、オーロン、プレニル化フラボノイド、O-メチル化フラボノイド等が挙げられる。
【0287】
また、リグナンとしては、例えば、ピノレシノール、ラリシレシノール、セコイソラリシレシノール、マタイレシノール、ヒドロキシマタイレシノール、シリンガレシノール、セサミン、アルクチゲニン、セサミノール、ポドフィロトキシン、ステガナシン等が挙げられる。
【0288】
さらに、スチルベノイドとしては、例えば、ピセアタンノール、ピノシルビン、プテロスチルベン、レスベラトロール、4'-メトキシレスベラトロール、ピノスチルベン、ピシアタノールのようなアグリコン、α-ビニフェリン、アンペロプシンA、アンペロプシンE、ジプトインドネシンC-カワン、ジプトインドネシンF-ダマールブア、ε-ビニフェリン、フレクスオソールA、グネチンH、ヘムスレヤノールD、ホペアフェノール、ジプトインドネシンB、バチカノールBのようなオリゴマー等が挙げられる。
【0289】
また、クルクミノイドとしては、例えば、クルクミン、ショウガオール等が挙げられる。
【0290】
さらに、テルペノイドとしては、例えば、ルテイン、ビタミンA、ビタミンE、βカロテンのようなカロテノイドの他、シトステロールのようなステロイド等が挙げられる。
【0291】
また、各種配糖体としては、例えば、サリシン、β-グルコガリン、サリチル酸グルコシド、サリドロシド、ガストロジン、ポプリン、フロリジン、アルブチンのようなフェノール配糖体、エスクリンのようなクマリン配糖体、ヘスペリジン、ルチンのようなフラボノイド配糖体、アストリンギン、ピセイド、ジプトインドネシンAのようなスチルベノイド配糖体等が挙げられる。
【0292】
さらに、各種ポリフェノール系芳香族化合物としては、例えば、チロソール、ヒドロキシチロソール、エスクレチン、フロレチン、ロスマリン酸、サルビアン酸A、レチクリン、パラクマリルアルコール、コニフェリルアルコール、カフェイルアルコール等が挙げられる。
【0293】
また、アミノ酸としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン等が挙げられる。
さらに、ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE等が挙げられる。
【0294】
また、環式化合物のさらに別の具体例としては、芳香族化合物、脂環式化合物、脂肪族化合物、複素環式化合物等が挙げられる。
【0295】
このうち、芳香族化合物としては、例えば、バニリン、2-フェニルエタノール、フェニル酢酸、シンナミックアルコール、イソオイゲノール、フェルラ酸、4-アミノ安息香酸、アネトール、エストラゴール、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、酢酸シンナミル、レゾルシン、4-ビニルフェノール、4-ビニル-2-メトキシフェノール、3,4-ジヒドロキシスチレン、ドーパミン、レボドパ、ハイドロキノン、クマリン、7-ヒドロキシクマリン、4-ヒドロキシクマリン、キシアメンマイシンA等が挙げられる。
【0296】
また、脂環式化合物としては、例えば、カルベオール、ペリラアルコール、ボルネオール、ジャスモン酸メチル、1,8-シネオール、L-メントン、バレンセン、ヌートカトン、α-ピネン、カンフェン、L-カルボン、ペリラアルデヒド、ミルテナール、酢酸L-メンチル、β-イオノン等が挙げられる。
【0297】
さらに、脂肪族化合物としては、例えば、シス-3-ヘキセノール、酢酸シス-3-ヘキセニル、アセトイン、ネロール、ファルネソール、アルギニン、ムコン酸等が挙げられる。
【0298】
また、複素環式化合物としては、例えば、ナイアシン、ナイアシンアミド、マルトール、インドール等が挙げられる。
【0299】
一方、環式化合物の誘導体としては、例えば、上述した化合物のエステル、酸無水物、アミド、酸ハロゲン化物、塩等、または、環式化合物から誘導される全ての化合物が挙げられる。
【0300】
以上のような環式化合物の中でも、上記一般式(1)で表される環式化合物は、さらに、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、および3,5-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これらを用いることにより、多様な効能を有し、かつ、より安全な香料を実現することができる。
【0301】
なお、環式化合物またはその誘導体の分子量は、限定されないが、120~1000であるのが好ましく、130~800であるのがより好ましい。
【0302】
また、上記一般式(1)で表される環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の5員環である場合、R2~R5およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であるのが好ましい。また、上記一般式(1)で表される環式化合物の環Aが、環構成原子が全て炭素原子である飽和環または部分飽和環の6員環である場合、R2~R6およびXが結合する環Aの炭素原子のうち、1つ以上が不斉炭素原子であるのが好ましい。
【0303】
このような場合、環式化合物は立体異性体となるが、これにより有意な香料を実現することができる。また、このような環式化合物を、植物由来糖類から製造することにより、特定の立体異性体を高純度に含む香料を得ることができる。すなわち、特定の立体異性体を高純度に含み、かつ、それ以外の立体異性体の含有率が低い香料を得ることができる。このような香料は、安全性および効能に優れた香料を実現し得るという観点から有用である。また、不要な立体異性体の除去に伴う複雑な製造工程が必要ないため、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0304】
また、上記一般式(1)で表される環式化合物においてXが結合する環Aの炭素原子をC1とし、R2が結合する環Aの炭素原子をC2とし、R3が結合する環Aの炭素原子をC3とし、R4が結合する環Aの炭素原子をC4とし、R5が結合する環Aの炭素原子をC5とし、R6が結合する環Aの炭素原子をC6としたとき、これらの炭素原子が不斉炭素原子である組み合わせが、下記(a)~(h)からなる群から選択される1種であることが好ましい。
【0305】
(a)C1
(b)C2
(c)C3
(d)C4
(e)C1およびC4
(f)C3およびC4
(g)C1、C3およびC4
(h)C3、C4およびC5
【0306】
第4の実施形態に記載の一般式(2)は、上記一般式(1)で表される環式化合物に対し、上記C1~C6の表示を追記した式である。
【0307】
このような場合、環式化合物は立体異性体となるが、これによりさらに有意な香料を実現することができる。また、このような環式化合物を、植物由来糖類から製造することにより、上記(a)~(h)からなる群から選択される1種である特定の立体異性体を高純度に含む香料を得ることができる。すなわち、特定の立体異性体を高純度に含み、かつ、それ以外の立体異性体の含有率が低い香料を得ることができる。このような香料は、安全性および効能に優れた香料を実現し得るという観点から有用である。また、不要な立体異性体の除去に伴う複雑な製造工程を減らすことができるため、製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0308】
なお、本実施形態に係る環式化合物およびその誘導体は、上記一般式(2)で表される化合物であって、さらに、3-デヒドロキネート、3-デヒドロシキミ酸、シキミ酸、コリスミ酸またはプレフェン酸であるのが好ましい。これらの化合物は、いずれも植物由来糖類から製造可能であって、かつ、香料として有用である。したがって、植物由来糖類から製造されたこれらの化合物を用いることにより、より優れた効能を有し、かつ、より安全な香料を実現することができる。
なお、これらの環式化合物の構造は、以下の式で表される。
【0309】
・3-デヒドロキネート
【0310】
【0311】
・3-デヒドロシキミ酸
【0312】
【0313】
・シキミ酸
【0314】
【0315】
・コリスミ酸
【0316】
【0317】
・プレフェン酸
【0318】
【0319】
以上のような環式化合物およびその誘導体の少なくとも一方を含有する香料としては、例えば食品香料(フレーバー)、化粧品香料(フレグランス)等が挙げられる。このうち、食品香料の機能としては、例えば、着香、賦香、風味矯正、甘味増強、酸味苦味低減、食欲増進等が挙げられる。また、化粧品香料の用途としては、例えば、香水、コロン、トイレタリー製品、ハウスホールド製品、芳香剤等が挙げられる。
【0320】
なお、香料の形態としては、例えば、水溶性液体、油溶性液体、乳化体(エマルジョン)、粉末等が挙げられる。
【0321】
≪環式化合物またはその誘導体の製造方法≫
上述した環式化合物またはその誘導体は、植物由来糖類を原料として、微生物を用いたバイオプロセスにより製造されたものである。すなわち、上述した環式化合物またはその誘導体は、植物由来糖類および微生物を由来とするものである。
環式化合物またはその誘導体の由来となる材料、原料、使用材料等の具体例および製造方法については、たとえば第4の実施形態に記載の方法とすることができる。さらに具体的には、第4の実施形態に準じて、培養液を調製する工程、ならびに、濃縮工程および単離精製工程をおこなうことができる。
【0322】
<香料への加工>
以上のようにして製造された環式化合物またはその誘導体を必要に応じて加工することにより、香料が得られる。かかる加工の一例としては任意の成分の添加が挙げられる。本実施形態の香料は、本実施形態の効果を損なわない範囲内で、いかなる他の成分を含んでいてもよい。
【0323】
他の成分としては、例えば、砂糖、練乳、小麦粉、ショートニング、食塩、ブドウ糖、鶏卵、バター、マーガリン、水飴、カルシウム、鉄分、調味料、香辛料や油分(動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス油、シリコーン油、高級アルコール、リン脂質類、脂肪酸類等)、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性界面活性剤)、ビタミン類(ビタミンA群、ビタミンB群、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、ビタミンC群、ビタミンD群、ビタミンE群、その他フェルラ酸、γ-オリザノール等)、紫外線吸収剤(p-アミノ安息香酸、アントラニル酸、サルチル酸、サリチル酸グルコシド、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、イミダゾリン、ピリミジン、ジオキサン、フラン、ピロン、カンファー、核酸、アラントインまたはそれらの誘導体、アミノ酸系化合物、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリン等)、抗酸化剤(ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等)、増粘剤(ヒドキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、アラビアゴム、トラガントゴム、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、アルギン酸またはその塩等)、保湿剤(プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、コンドロイチン硫酸またはその塩、ヒアルロン酸またはその塩、乳酸ナトリウム等)、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、pH調整剤、防腐・防黴剤、着色料、香料、清涼剤、安定化剤、動・植物抽出物、動・植物性蛋白質またはその分解物、動・植物性多糖類またはその分解物、動・植物性糖蛋白質またはその分解物、微生物培養代謝成分、血流促進剤、消炎剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、細胞賦活剤、アミノ酸またはその塩、角質溶解剤、収斂剤、創傷治療剤、増泡剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、乳化剤等が挙げられる。なお、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0324】
以上、本実施形態の香料について説明したが、香料の具体例は、前述したものに限定されず、いかなるものであってもよい。
【0325】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0326】
(実施例I)
(実施例I-1~I-4、比較例I-1~I-4)
本例では、組成物の抗菌特性を評価した。
表1~表4に記載の配合に従い成分を配合し、各例の水溶性添加剤組成物、具体的には抗菌剤組成物を得た。すなわち、各実施例においては、プロトカテク酸(試薬、東京化成工業社製)98質量%および没食子酸2質量%を混合して抗菌剤組成物を得た。一方、各比較例においては、上記プロトカテク酸をそのまま用いた。
【0327】
各例について、得られた組成物を用いて、抗菌剤組成物の濃度が0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%および0.5質量%の水溶液(抗菌剤組成物配合液)を得た。
得られた組成物について、以下の方法で抗菌特性を評価した。
【0328】
(評価方法)
各例について、1%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有する細菌用培地に上述の各の濃度に調整した試験溶液と試験菌体を混合した。攪拌後、650nmの吸光度を測定し、これを初期値とした。37℃の好気条件にて24時間培養し、再び650nmの吸光度を測定し、これから初期値を差し引いて菌体由来の濁度を求めた。試験結果は試験試料0%の吸光度を100とした百分率(%)で示した。また、試験菌体としてはStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌、実施例I-1および比較例I-1)、Escherichia. coli(大腸菌、実施例I-2および比較例I-2)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌、実施例I-3および比較例I-3)、Candida albicans(酵母、実施例I-4および比較例I-4)を用いた。
評価結果を表1~表4にあわせて示すとともに、
図1~
図4に示す。
図1~
図4は、抗菌剤組成物の評価結果を示す図である。
【0329】
【0330】
【0331】
【0332】
【0333】
表1~表4および
図1~
図4より、各実施例で得られた組成物は、比較例のものにくらべて吸光度が低くなる傾向がみられ、抗菌特性に優れていた。
【0334】
(実施例I-5~I-7、比較例I-5~I-7)
表5~表7に記載の配合に従い成分を配合し、実施例I-1または比較例I-1に準じて環式カルボン酸を含む水溶性添加剤組成物を得た。
ここで、実施例I-5および比較例I-5においては、シキミ酸(試薬、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。実施例I-6および比較例I-6においては、4-ヒドロキシ安息香酸(試薬、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。実施例I-7および比較例I-7においては、4-アミノ安息香酸(試薬、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。
【0335】
各例について、得られた組成物を用いて、抗菌剤組成物の濃度が0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%および0.5質量%の水溶液(抗菌剤組成物配合液)を得た。
得られた組成物について、試験菌体をStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)とし、実施例I-1または比較例I-1に準じて抗菌特性を評価した。評価結果を表5~表7にあわせて示す。
【0336】
【0337】
【0338】
【0339】
(実施例II)
(実施例II-1~II-4、比較例II-1およびII-2)
本例では、水溶性添加剤組成物を調製し、その溶解度特性を評価するとともに、組成物中の環式カルボン酸の純度について評価した。
【0340】
(実施例II-1)
<バイオプロセスによるプロトカテク酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、プロトカテク酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0341】
<培養液から濃縮精製プロセスを経てプロトカテク酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で3回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、プロトカテク酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0342】
(実施例II-2)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例II-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0343】
(実施例II-3)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例II-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0344】
(実施例II-4)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を1回おこなった以外は、実施例II-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0345】
(比較例II-1)
市販されているプロトカテク酸の試薬(東京化成工業社製)を準備した。
【0346】
(比較例II-2)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の洗浄をおこなわなかった以外は、実施例II-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0347】
(評価方法)
(環式カルボン酸濃度)
各例で得られた組成物について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、環式カルボン酸の濃度を測定した。測定条件は以下のとおりである。
カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II(φ4.6mm×250mm)ナカライテスク社製
移動相:水/メタノール/過塩素酸=4/1/0.0075(vol/vol/vol)イソクラティック溶出
流量:1mL/mmin
カラム温度:40℃
検出方法:フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(210nm)
【0348】
(イオン濃度)
各例で得られた組成物について、イオンクロマトグラフィーにより、Na+、NH4
+、K+、SO4
2-、PO4
3-、NO2
-、NO3
-およびCl-の各イオン濃度ならびに総無機イオン濃度(ppm、水素イオンと水酸基イオンを除く。)を測定した。測定条件は以下のとおりである。
カラム:(カチオン)Shim-pack IC-C4(島津製作所株式会社製)、(アニオン)Shim-pack IC-SA2(島津製作所株式会社製)
移動相:(カチオン)水/シュウ酸二水和物=1000/0.315(mass/mass)、(アニオン)水/炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム=1000/1.008/0.0636(mass/mass/mass)、アニオン・カチオンともにイソクラティック溶出
流量:(カチオン・アニオンともに)1mL/mmin
カラム温度:(カチオン)40℃、(アニオン)30℃
検出方法:電気伝導度検出器
各イオンの濃度は、組成物中の環式カルボン酸のHPLCで測定した濃度(ppm)に対する各イオンの濃度(ppm)の割合(ppm)として算出した。測定結果を表8に示す。
【0349】
(純度)
前述のイオン濃度の測定結果のうち、総無機イオン濃度(水素イオンと水酸基イオンを除く。)に基づき、以下の基準で組成物中の環式カルボン酸の純度を判定し、以下の「◎」および「○」のものを合格とした。結果を表8に示す。
◎:総無機イオン量が0~1000未満
○:総無機イオン量が1000~5000未満
×:総無機イオン量が5000ppm以上
【0350】
(溶解度)
各例で得られた組成物について、組成物50gを液温が25℃に調整された純水1Lに加えて、スターラーで1日撹拌した後、上清の環式カルボン酸濃度をHPLCで測定することで溶解度を算出した。溶解度が12g/L以上であるものを合格とした。測定結果を表8に示す。
【0351】
【0352】
表8より、各実施例で得られた組成物は、プロトカテク酸の純度が高く、プロトカテク酸の水溶性にも優れていた。
【0353】
(実施例II-5~II-8、比較例II-3およびII-4)
プロトカテク酸にかえてシキミ酸を含む水溶性添加剤組成物を調製し、その溶解度特性を評価するとともに、組成物中の環式カルボン酸の純度について評価した。
【0354】
(実施例II-5)
<バイオプロセスによるシキミ酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、シキミ酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0355】
<培養液から濃縮精製プロセスを経てシキミ酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で3回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、シキミ酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0356】
(実施例II-6)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例II-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0357】
(実施例II-7)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例II-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0358】
(実施例II-8)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を1回おこなった以外は、実施例II-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0359】
(比較例II-3)
市販されているシキミ酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0360】
(比較例II-4)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の洗浄をおこなわなかった以外は、実施例II-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0361】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例II-1~II-4、比較例II-1およびII-2に準じて、環式カルボン酸濃度、イオン濃度、純度および溶解度を評価した。結果を表9に示す。
【0362】
【0363】
(実施例II-9~II-12、比較例II-5およびII-6)
プロトカテク酸にかえて4-ヒドロキシ安息香酸を含む水溶性添加剤組成物を調製し、その溶解度特性を評価するとともに、組成物中の環式カルボン酸の純度について評価した。
【0364】
(実施例II-9)
<バイオプロセスによる4-ヒドロキシ安息香酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、4-ヒドロキシ安息香酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0365】
<培養液から濃縮精製プロセスを経て4-ヒドロキシ安息香酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で3回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、4-ヒドロキシ安息香酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0366】
(実施例II-10)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例II-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0367】
(実施例II-11)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例II-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0368】
(実施例II-12)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を1回おこなった以外は、実施例II-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0369】
(比較例II-5)
市販されている4-ヒドロキシ安息香酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0370】
(比較例II-6)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の洗浄をおこなわなかった以外は、実施例II-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0371】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例II-1~II-4、比較例II-1およびII-2に準じて、環式カルボン酸濃度、イオン濃度、純度および溶解度を評価した。結果を表10に示す。
【0372】
【0373】
(実施例II-13~II-16、比較例II-7およびII-8)
プロトカテク酸にかえて4-アミノ安息香酸を含む水溶性添加剤組成物を調製し、その溶解度特性を評価するとともに、組成物中の環式カルボン酸の純度について評価した。
【0374】
(実施例II-13)
<バイオプロセスによる4-アミノ安息香酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、4-アミノ安息香酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0375】
<培養液から濃縮精製プロセスを経て4-アミノ安息香酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で3回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、4-アミノ安息香酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0376】
(実施例II-14)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例II-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0377】
(実施例II-15)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例II-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0378】
(実施例II-16)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を1回おこなった以外は、実施例II-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0379】
(比較例II-7)
市販されている4-アミノ安息香酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0380】
(比較例II-8)
培養液の濃縮後、濾過した析出物の洗浄をおこなわなかった以外は、実施例II-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0381】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例II-1~II-4、比較例II-1およびII-2に準じて、環式カルボン酸濃度、イオン濃度、純度および溶解度を評価した。結果を表11に示す。
【0382】
【0383】
(実施例III)
(実施例III-1~III-4、比較例III-1)
本例では、組成物を調製し、保湿性および抗菌特性を評価した。各例の組成物の製造方法および評価方法は以下のとおりである。
【0384】
(実施例III-1)洗浄1
<バイオプロセスによるプロトカテク酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、プロトカテク酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0385】
<培養液から濃縮精製プロセスを経てプロトカテク酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が30~50質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が30~50質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で1回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、プロトカテク酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0386】
(実施例III-2)洗浄2
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例III-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0387】
(実施例III-3)洗浄3
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を3回おこなった以外は、実施例III-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0388】
(実施例III-4)洗浄4
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例III-1に準じてプロトカテク酸を含む組成物を回収した。
【0389】
(比較例III-1)試薬
市販されているプロトカテク酸の試薬(東京化成工業社製)を準備した。
【0390】
(アミノ酸濃度)
各例で得られた組成物について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、オルトフタルアルデヒドを反応試薬に用いるポストカラム蛍光検出、カラムは島津製作所社製のShim-pack Amino-Na)法により、各アミノ酸の濃度を測定した。結果を表12に示す。
【0391】
(PCA純度)
各例で得られた組成物について、組成物中の環式カルボン酸の純度を測定した。
まず、各例で得られた組成物について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、環式カルボン酸の濃度を測定した。測定条件は以下のとおりである。
カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II(φ4.6mm×250mm)ナカライテスク社製
移動相:水/メタノール/過塩素酸=4/1/0.0075(vol/vol/vol)イソクラティック溶出
流量:1mL/mmin
カラム温度:40℃
検出方法:フォトダイオードアレイ(PDA)検出器(210nm)
また、イオンクロマトグラフィーにより、総無機イオン濃度(ppm)を測定した。ここで、各イオンの濃度は、組成物中の環式カルボン酸のHPLCで測定した濃度(ppm)に対する各イオンの濃度(ppm)の割合(ppm)として算出した。
そして、総無機イオン濃度の測定量に基づき、以下の基準で組成物中の環式カルボン酸の純度を判定した。結果を表12に示す。
◎:総無機イオン量が0~1000未満
○:総無機イオン量が1000~5000未満
×:総無機イオン量が5000ppm以上
【0392】
(保湿性)
各例で得られた水溶性添加剤組成物の2.0質量%水溶液を調製し、試験溶液とした。試験溶液を皮膚に塗布した直後および15分後に角質水分量を測定した。試験結果は塗布した直後の角質水分量を100とした百分率で示した。評価基準を以下に示す。評価結果が「◎」および「○」のものを合格とした。
◎:角質水分量の減少率が10%未満
〇:角質水分量の減少率が10%以上50%未満
×:角質水分量の減少率が50%以上
評価結果を表12にあわせて示す。
【0393】
(抗菌性)
各例で得られた水溶性添加剤組成物の2.0質量%水溶液を調製し、試験溶液とした。
1%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有する細菌用培地に、各例の試験溶液と試験菌体を混合した。攪拌後、650nmの吸光度を測定し、これを初期値とした。37℃の好気条件にて24時間培養し、再び650nmの吸光度を測定し、これから初期値を差し引いて菌体由来の濁度を求めた。試験結果は試験試料0%の吸光度を100とした百分率で示した。また、試験菌体としてはStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Escherichia. coli(大腸菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)、Candida albicans(酵母)の4種を用いた。
評価基準を以下に示す。評価結果が「◎」および「○」のものを合格とした。
◎:吸光度が10%未満
○:吸光度が10%以上50%未満
×:吸光度が50%以上
評価結果を表12にあわせて示す。
【0394】
【0395】
表12より、各実施例で得られた組成物は、保湿性および抗菌特性に優れていた。
【0396】
(実施例III-5~III-8、比較例III-2)
本例では、プロトカテク酸にかえてシキミ酸を含む組成物を調製し、保湿性および抗菌特性を評価した。各例の組成物の製造方法および評価方法は以下のとおりである。
【0397】
(実施例III-5)洗浄1
<バイオプロセスによるシキミ酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、シキミ酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0398】
<培養液から濃縮精製プロセスを経てシキミ酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が30~50質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が30~50質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で1回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、シキミ酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0399】
(実施例III-6)洗浄2
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例III-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0400】
(実施例III-7)洗浄3
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を3回おこなった以外は、実施例III-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0401】
(実施例III-8)洗浄4
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例III-5に準じてシキミ酸を含む組成物を回収した。
【0402】
(比較例III-2)試薬
市販されているシキミ酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0403】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例III-1~III-4および比較例III-1に準じて、アミノ酸濃度、純度、保湿性および抗菌性を評価した。結果を表13に示す。
【0404】
【0405】
(実施例III-9~III-12、比較例III-3)
本例では、プロトカテク酸にかえて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を調製し、保湿性および抗菌特性を評価した。各例の組成物の製造方法および評価方法は以下のとおりである。
【0406】
(実施例III-9)洗浄1
<バイオプロセスによる4-ヒドロキシ安息香酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、4-ヒドロキシ安息香酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0407】
<培養液から濃縮精製プロセスを経て4-ヒドロキシ安息香酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が30~50質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が30~50質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で1回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、4-ヒドロキシ安息香酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0408】
(実施例III-10)洗浄2
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例III-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0409】
(実施例III-11)洗浄3
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を3回おこなった以外は、実施例III-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0410】
(実施例III-12)洗浄4
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例III-9に準じて4-ヒドロキシ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0411】
(比較例III-3)試薬
市販されている4-ヒドロキシ安息香酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0412】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例III-1~III-4および比較例III-1に準じて、アミノ酸濃度、純度、保湿性および抗菌性を評価した。結果を表14に示す。
【0413】
【0414】
(実施例III-13~III-16、比較例III-4)
本例では、プロトカテク酸にかえて4-アミノ安息香酸を含む組成物を調製し、保湿性および抗菌特性を評価した。各例の組成物の製造方法および評価方法は以下のとおりである。
【0415】
(実施例III-13)洗浄1
<バイオプロセスによる4-アミノ安息香酸の製造>
10Lジャーファーメンターでのバイオプロセスにより、4-アミノ安息香酸の製造をおこなった。培地はLB培地を用い、これにサトウキビのしぼりかすから精製した糖を10%の割合で溶解させたものを用いた。
【0416】
<培養液から濃縮精製プロセスを経て4-アミノ安息香酸組成物の回収>
バイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が30~50質量%となるように濃縮処理をおこなった。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理をおこなった。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が30~50質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、析出物の20質量倍の純水で1回洗浄したのち、減圧乾燥をおこない、4-アミノ安息香酸を含む粉体状の水溶性添加剤組成物を回収した。
【0417】
(実施例III-14)洗浄2
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を2回おこなった以外は、実施例III-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0418】
(実施例III-15)洗浄3
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を3回おこなった以外は、実施例III-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0419】
(実施例III-16)洗浄4
培養液の濃縮後、濾過した析出物の20質量倍の純水による洗浄を4回おこなった以外は、実施例III-13に準じて4-アミノ安息香酸を含む組成物を回収した。
【0420】
(比較例III-4)試薬
市販されている4-アミノ安息香酸の試薬(富士フイルム和光純薬社製)を準備した。
【0421】
(評価方法)
各例で得られた組成物について、前述の実施例III-1~III-4および比較例III-1に準じて、アミノ酸濃度、純度、保湿性および抗菌性を評価した。結果を表15に示す。
【0422】
【0423】
(実施例VI)
(実施例VI-1)
<バイオプロセスによる3,4-ジヒドロキシ安息香酸の製造>
植物由来糖および微生物を利用したバイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理を行った。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理を行った。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、適宜洗浄ののち、減圧乾燥を行い、純度99%以上の高純度3,4-ジヒドロキシ安息香酸を回収した。
【0424】
回収した高純度3,4-ジヒドロキシ安息香酸、すなわち環式化合物は、石油由来の不純物を含まないものであった。
【0425】
(実施例VI-2)
<バイオプロセスによるシキミ酸の製造>
植物由来糖および微生物を利用したバイオプロセスにより得られた培養液に活性炭を添加し、活性炭処理を施した。次に、イオン交換樹脂を充填したカラムを用意し、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で処理した。なお、使用したイオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂である。流出水が中性になるまでカラムに純水を通液し、その後に活性炭処理を施した原料液体をカラムに通液した後、純水を通液した。その後、溶離液として2mol/Lの酢酸水溶液を通液し、酸性画分を回収した。回収した各画分について、シキミ酸の濃度を測定し、シキミ酸の溶出が完了するまで溶離液を通液した。溶離液に対して濃縮晶析により固体を析出させ、固体のシキミ酸を得た。なお、濃縮晶析とは、濃縮処理と、冷却晶析処理と、を順次行って固体のシキミ酸を析出させる処理のことである。
【0426】
回収した高純度シキミ酸、すなわち環式化合物は、石油由来の不純物を含まないものであった。
【0427】
(実施例V)
(実施例V-1)
<バイオプロセスによる3,4-ジヒドロキシ安息香酸の製造>
植物由来糖および微生物を利用したバイオプロセスにより得られた培養液を、減圧濃縮により総固形分濃度が15~30質量%となるように濃縮処理を行った。減圧度を100~5000Pa、液温を30~80℃とし、減圧蒸留設備による濃縮処理を行った。濃縮度は処理時間に依存するが、6~8時間の濃縮処理により総固形分濃度が15~30質量%の濃縮液を回収した。この濃縮液に塩酸を添加してpH4以下とし、さらに0℃~室温に冷却した。晶析物を濾過により回収し、適宜洗浄ののち、減圧乾燥を行い、純度99%以上の高純度3,4-ジヒドロキシ安息香酸を回収した。
【0428】
回収した高純度3,4-ジヒドロキシ安息香酸、すなわち環式化合物は、石油由来の不純物を含まないものであった。
【0429】
(実施例V-2)
<バイオプロセスによるシキミ酸の製造>
植物由来糖および微生物を利用したバイオプロセスにより得られた培養液に活性炭を添加し、活性炭処理を施した。次に、イオン交換樹脂を充填したカラムを用意し、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で処理した。なお、使用したイオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂である。流出水が中性になるまでカラムに純水を通液し、その後に活性炭処理を施した原料液体をカラムに通液した後、純水を通液した。その後、溶離液として2mol/Lの酢酸水溶液を通液し、酸性画分を回収した。回収した各画分について、シキミ酸の濃度を測定し、シキミ酸の溶出が完了するまで溶離液を通液した。溶離液に対して濃縮晶析により固体を析出させ、固体のシキミ酸を得た。なお、濃縮晶析とは、濃縮処理と、冷却晶析処理と、を順次行って固体のシキミ酸を析出させる処理のことである。
【0430】
回収した高純度シキミ酸、すなわち環式化合物は、石油由来の不純物を含まないものであった。