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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103552
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】消臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20250702BHJP
【FI】
A61L9/01 K
A61L9/01 H
A61L9/01 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221008
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 道貴
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直文
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB06
4C180BB08
4C180BB12
4C180BB13
4C180BB14
4C180BB15
4C180CB01
4C180EA23X
4C180EA24X
4C180EA52X
4C180EA59X
4C180EA63X
4C180EA64X
4C180EA65X
4C180EB02X
4C180EB03X
4C180EB05X
4C180EB06X
4C180EB15X
4C180GG07
4C180MM02
4C180MM03
4C180MM06
(57)【要約】
【課題】消臭剤組成物中ではアルデヒド系香料に対する影響が少なく、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能に優れた消臭方法を提供する。
【解決手段】(a)1級アミン化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数2以上10以下の有機カルボン酸化合物〔以下、(b)成分という〕、及び(c)香料組成物〔以下、(c)成分という〕を含有し、(c)成分は、アルデヒド系香料を含み、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)が0.05以上1.6未満であり、(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.01質量%以上3.0質量%以下である消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させる、消臭方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1級アミン化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数2以上10以下の有機カルボン酸化合物〔以下、(b)成分という〕、及び(c)香料組成物〔以下、(c)成分という〕を含有し、(c)成分は、アルデヒド系香料を含み、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)が0.05以上1.6未満であり、(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.01質量%以上3.0質量%以下である消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させる、消臭方法。
【請求項2】
(a)成分は、ヒドロキシ基を有する不揮発性1級アミンである、請求項1に記載の消臭方法。
【請求項3】
(a)成分は、水への溶解度が5g/100g-水(25℃)以上であり、且つ760mmHgにおける沸点が120℃以上の化合物である、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項4】
(a)成分は、1-アミノ-3-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、アミノ糖及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項5】
(b)成分は、炭素数2以上8以下の1価カルボン酸、炭素数2以上10以下の2価カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項6】
(b)成分は、コハク酸、プロピオン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項7】
(c)成分中のアルデヒド系香料〔以下、(cald)成分という〕の含有量が0.5質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項8】
アルデヒド類に由来する臭いを消臭する、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、香りに対するニーズが増加しており、トイレなどの硬質表面やリビングなどの居住空間、布団、カーペット、ソファー、衣料などの繊維製品に消臭芳香剤を接触させて好ましい香りを付与することが習慣化している。また、このような芳香剤には好ましい香りを設計するために、しばしばアルデヒド基を有するアルデヒド系香料が頻繁に応用される。
一方、香りを付与するだけでなく、生活臭、体臭、食品臭などの悪臭を消臭する技術も期待される。悪臭には脂肪酸などに由来する酸臭、アンモニアなどに由来するアルカリ臭があり、これらの臭いに対してはpH緩衝能を消臭剤に付与することで高い消臭効果を得ることができるが、例えば体臭として知られるノネナールなどのアルデヒド臭は化学的に消臭することが難しく、シクロデキストリンなどの包摂化合物による消臭が行われているが効果は十分ではない。
【0003】
一般にアルデヒド臭を化学的に消臭する技術としては1級アミンを接触させてイミンを生成させて消臭することが行われる。例えば、特許文献1には、所定のポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、多価有機酸(b)及び水を含有する水性消臭剤組成物であって、(a)成分の含有量が0.06~10質量%であり、〔(a)成分/(b)成分〕のモル比が1.1~6.0であり、pHが6.0~9.5である水性消臭剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、所定のポリヒドロキシアミン化合物を0.005~30質量%含有し、かつpH緩衝能が0.3~300mmol/kgである空間及び/又は硬質表面用消臭剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-28071号公報
【特許文献2】特開2006-320711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にアルデヒド化合物と1級アミンの反応は酸性又はアルカリ性で進行する。特許文献1及び特許文献2にはポリヒドロキシアミン化合物及びアルデヒド系香料を含む消臭剤組成物が開示されているが、これら組成物のpHは中性であるため、組成物中でのアルデヒド系香料の分解は起こらない。一方で、消臭対象物に存在するアルデヒド化合物においてアセトアルデヒドのような低級のアルデヒドはポリヒドロキシアミン化合物の作用により一定の消臭効果を得ることができるが、調理臭や大人臭に含まれる炭素数3以上16以下の中鎖又は長鎖の有機アルデヒド化合物の消臭効果、特に噴霧した後の時間が経過した時点の消臭効果に対して更なる向上が求められる。
また、消臭剤組成物において、アルデヒド系香料を用いることと、アルデヒド類に由来する臭いの消臭性能の向上を両立することが困難である。
本発明は、消臭剤組成物中ではアルデヒド系香料に対する影響が少なく、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能に優れた消臭方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)1級アミン化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数2以上10以下の有機カルボン酸化合物〔以下、(b)成分という〕、及び(c)香料組成物〔以下、(c)成分という〕を含有し、(c)成分は、アルデヒド系香料を含み、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)が0.05以上1.6未満であり、(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.01質量%以上3.0質量%以下である消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させる、消臭方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消臭剤組成物中ではアルデヒド系香料に対する影響が少なく、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能に優れる消臭方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の消臭方法により、消臭剤組成物中ではアルデヒド系香料に対する影響が少なく、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能に優れるメカニズムは不明であるが、次のように考えられる。
通常アルデヒドを消臭するために1級アミンとアルデヒドを反応させてイミンを生成させ、アルデヒドの揮発性を低下させて臭いを抑えることが考えられる。しかしながらこのような反応は脱水反応であるため過剰の水が存在する系では反応が進みにくく、しかも通常は酸性又はアルカリ条件下で反応が進むため、中性に近い水溶液である消臭剤組成物中ではイミノ化反応がほとんど進まない。その結果、消臭剤組成物中ではアルデヒド系香料の分解を抑制でき、組成物の香りの安定性が良好になると推察される。
一方消臭対象物に存在するアルデヒド系悪臭成分に本発明の消臭方法に係る消臭剤組成物を接触させた場合、乾燥が進むに従って組成物が濃縮される。本発明者らは(a)成分及び(b)成分を本発明の特定のモル比で含有する組成物を乾燥により濃縮させると(a)成分と(b)成分のクラスターが形成し、(a)成分の求核性が向上することを見出した。これにより、(a)成分とアルデヒド類の求核付加反応が促進されたものと推察される。
また、(a)成分とアルデヒド類との反応により生じるイミンに(b)成分のカルボン酸が塩基として作用し、イミンと(b)成分がクラスターを形成することで、イミンの加水分解が抑制され、消臭処理後、経時での臭い戻りが抑制されるものと推察される。
更に、当該(a)成分と(b)成分との作用は、本発明の消臭方法に係る消臭剤組成物中では起こりにくく、該消臭剤組成物を消臭対象に適用後、消臭剤組成物が乾燥する過程でより反応性が高くなるものと推察される。これにより、消臭剤組成物中のアルデヒド系香料に対する影響力が少なく、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能が向上すると推察される。
なお、本発明の消臭方法は、これら作用機構になんら限定されるものではない。
【0009】
本発明の消臭方法は、アルデヒド類に由来する臭い、特に調理臭や大人臭に含まれる中鎖又は長鎖の有機アルデヒド化合物に由来する臭いの低減効果に優れる。本明細書において、中鎖又は長鎖の有機アルデヒド化合物とは炭素数3以上18以下の炭化水素基を有する有機アルデヒド化合物が挙げられる。例えば加齢臭や衣類の部屋干し時に発生する臭い成分には炭素数7以上12以下の脂肪族アルデヒドが含まれることが知られており(繊消誌Vol.44 No.3 150~156(2003))、天ぷら油の酸化などで発生する臭気中にはヘキセナール、ヘプタジエナール、デカジエナールやこれらの異性体などの炭素数6以上12以下の不飽和アルデヒドが多く検出されることが知られている(日本家政学会誌Vol.41 No.11 1023~1030(1990))。
【0010】
本発明の消臭方法は、(a)1級アミン化合物〔以下、(a)成分という〕、(b)炭素数2以上10以下の有機カルボン酸化合物〔以下、(b)成分という〕、及び(c)香料組成物〔以下、(c)成分という〕を含有し、(c)成分は、アルデヒド系香料を含み、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)が0.05以上1.6未満であり、(a)成分と(b)成分の合計含有量が0.01質量%以上3.0質量%以下である消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させる、消臭方法である。
まず、本発明の消臭方法に用いられる消臭剤組成物〔以下、本発明の消臭剤組成物という〕について、詳細に説明する。
【0011】
<消臭剤組成物>
本発明の消臭剤組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分と(b)成分の合計含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下である。
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、1級アミン化合物である。(a)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(a)成分は、脂肪族アルデヒド化合物と反応してイミンを形成し得る1級アミンを用いることができる。
(a)成分は、求核性及び水溶性の観点から、分子中にヒドロキシ基を1以上5以下、且つ1級アミノ基を1つ有し、総炭素数が2以上18以下である化合物が好ましい。
また、(a)成分は、消臭効果及び組成物の臭いなどの観点から、水への溶解度が5g/100g-水(25℃)以上の水溶性化合物が好ましく、760mmHgにおける沸点が120℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上の不揮発性アミンが好ましい。
そのような1級アミンとしては、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(bp.219℃(760mmHg)、水(25℃)への溶解度50g/100g-水)、1-アミノ-3-プロパノール(bp.187.5 ℃(760mmHg)、水に任意に混和)、2-アミノ-1-ブタノール(bp.177℃(760mmHg)、水に任意に混和)、3-アミノ-1,2-プロパンジオール(bp.264-265℃(739mmHg)、水に任意に混和)、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(bp.115-120℃(0.06mmHg)、水に任意に混和)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(bp.約151℃(10mmHg) 、水に任意に溶解)、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(bp.152-153℃(10mmHg)、水に任意に溶解)、4-アミノ-1,2-ブタンジオール(bp.200℃以上(760mmHg)、水に易溶)などのポリヒドロキシアミン化合物、ジエチレントリアミン(bp.204.1℃(760mmHg)、水に任意に混和)、トリエチレンテトラミン(bp.278℃(760mmHg)、水に任意に混和)などのエチレンイミン誘導体、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン(bp.207℃(760mmHg)、水に任意に混和)、グルコサミン、ガラクトサミン、ヘキソサミンなどの糖アミン(沸点は無し、水に混和)を挙げることができる。なお、760mmHg以下の圧力で測定された沸点が示されている化合物は、少なくとも760mmHgのおける沸点が120℃以上の化合物である。
【0013】
(a)成分は、消臭効果の観点から、ヒドロキシ基を有する不揮発性1級アミンが好ましく ポリヒドロキシアミン化合物がより好ましい。(a)成分は、消臭効果の観点から、下記一般式(1a)で表されるポリヒドロキシアミン化合物又はその塩が好ましい。なお、本明細書において、(a)成分の不揮発性1級アミンとは、760mmHgにおいて沸点が120℃以上である1級アミンをいう。
【0014】
【化1】
【0015】
〔式中、R1aは、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基、R2a及びR3aは、それぞれ独立して炭素数1以上5以下のアルカンジイル基である。〕
【0016】
一般式(1a)において、R1aは、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基である。
炭素数1以上5以下のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基が挙げられる。
1aは、消臭効果をより高める観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又は2-ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基又は2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0017】
一般式(1a)において、R2a及びR3aは、それぞれ独立して炭素数1以上5以下のアルカンジイル基である。R2a及びR3aは、同一でも異なっていてもよい。消臭効果をより高める観点から、R2a及びR3aの炭素数1以上5以下のアルカンジイル基は、それぞれ独立してメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン-1,2-ジイル基又はテトラメチレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0018】
一般式(1a)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0019】
(a)成分の具体例としては、例えば、1-アミノ-3-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-4-ヒドロキシプロピル-1,7-ヘプタンジオール、アミノ糖及びそれらの塩が挙げられる。(a)成分の塩は、上記化合物を無機酸又は有機酸で中和した酸塩であってよい。(a)成分の塩において(a)成分を中和する酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられ、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1以上12以下の脂肪酸、及び炭素数1以上3以下のアルキル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中では、(a)成分は、消臭性能の観点から、好ましくは1-アミノ-3-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、アミノ糖及びそれらの塩から選ばれる1種以上、より好ましくは2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール及びそれらの塩から選ばれる1種以上、更に好ましくは2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール又はその塩を含むものが好ましい。
【0020】
<(b)成分>
(b)成分は、炭素数2以上10以下の有機カルボン酸化合物である。(b)成分は炭素数2以上10以下の有機カルボン酸又はそれらの塩であってよい。(b)成分は、単独で又は2種以上を用いることができる。(b)成分は、消臭効果の観点から、炭素数2以上10以下の1価カルボン酸、炭素数2以上10以下の2価カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上が好ましい。
(b)成分としては炭素数2以上8以下、好ましくは炭素数2以上5以下のヒドロキシ基を有していてもよい1価カルボン酸、炭素数2以上10以下、好ましくは炭素数2以上7以下のヒドロキシ基を有していてもよい2価カルボン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましい。
また、(b)成分は、推定されるクラスター形成の容易性による消臭効果をより高める観点から、α位に水酸基を有しない1価又は2価カルボン酸若しくはその塩が好ましい。本発明においてα位とは、カルボキシ基が結合している炭素原子をα位とする。また、2価カルボン酸においては、それぞれのカルボキシ基が結合している炭素原子をα位とする。
(b)成分の1価カルボン酸としては、例えば、プロピオン酸、酢酸、酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸、吉草酸、3-ヒドロキシ吉草酸、γ-ヒドロキシ吉草酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、(b)成分の2価カルボン酸としては、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、2-メチルマロン酸、2-エチルマロン酸、2-イソプロピルマロン酸、2,2-ジメチルマロン酸、2-エチル-2-メチルマロン酸、2,2-ジエチルマロン酸、2,2-ジイソプロピルマロン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸(トランス体:5.99、シス体:6.57)、1,2-シクロオクタンジカルボン酸、1,2-シクロヘプタンジカルボン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2,3-ジエチルコハク酸、2-エチル-3-メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、2,3-ジ-t-ブチルコハク酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルグルタル酸、3-イソプロピル-3-メチルグルタル酸、3-t-ブチル-3-メチルグルタル酸、3,3-ジイソプロピルグルタル酸、3-メチル-3-エチルグルタル酸、3,3-ジプロピルグルタル酸、2-エチル-2-(1-エチルプロピル)グルタル酸、シクロヘキシル-1,1-ジ酢酸、2-メチルシクロヘキシル-1,1-ジ酢酸、シクロペンチル-1,1-ジ酢酸、3-メチル-3-フェニルグルタル酸、3-エチル-3-フェニルグルタル酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
(b)成分は、更に、α位に水酸基を有する1価以上3価以下のカルボン酸若しくはその塩を含むこともできる。このようなカルボン酸としてはクエン酸、酒石酸を挙げることができる。(b)成分中のα位に水酸基を有する1価以上3価以下のカルボン酸若しくはその塩の含有量は、消臭効果をより高める観点から、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、20質量%以下がより更に好ましく、そして、0質量%以上が好ましく、0質量%であってよい。
【0022】
(b)成分の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。
【0023】
(b)成分は、推定される立体障害及び分配性(クラスターの形成容易性)による消臭効果をより高める観点から、1価カルボン酸のなかでは、プロピオン酸、酢酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、特にプロピオン酸又はその塩が好ましい。また、(b)成分は、推定される立体障害及び分配性(クラスターの形成容易性)による消臭効果をより高める観点から、2価カルボン酸のなかでは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、コハク酸又はその塩を含むものがより好ましい。
(b)成分は、消臭効果をより高める観点から、コハク酸、プロピオン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、コハク酸又はその塩を含むことがより好ましい。
【0024】
<(c)成分>
(c)成分は、香料組成物であり、アルデヒド系香料〔以下、(cald)成分という〕を含有する香料組成物である。アルデヒド系香料とは、分子内にアルデヒド基を有する香料化合物を意味する。(c)成分は、1種の(cald)成分を含む香料組成物を用いてもよく、(cald)成分を1種以上含む複数の香料化合物を特定の比率で含有する香料組成物として用いることもできる。また、(cald)成分と、(cald)成分以外の香料組成物をそれぞれ別々に配合することができ、本発明においては、別々に配合したとしても(c)成分の香料組成物とみなす。(c)成分に含まれる香料化合物としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編産業化学シリーズ昭和58年9月16日発行)や「増補新版 合成香料 化学と商品知識」(合成香料編集委員会編集、化学工業日報社、2016年12月20日発行)や「香料と調香の基礎知識」(中島基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)、“Perfume and Flavor Chemicals”(STEFFENARCTANDER著、MONTCLAIR, N. J.、1969年)に記載のものを用いることができる。
【0025】
(cald)成分のアルデヒド系香料としては、脂肪族アルデヒド香料、テルペン系アルデヒド香料、芳香族系アルデヒド香料が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。(c)成分は、これらのアルデヒド系香料の中でも、芳香族系アルデヒド香料を含有することができる。芳香族系アルデヒド香料とは、分子内に芳香族炭化水素基とアルデヒド基を有する香料化合物を意味する。
【0026】
(cald)成分のアルデヒド系香料は、具体的には、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、メチルオクチルアセトアルデヒド、メチルノニルアセトアルデヒド、トランス-2-ヘキセナール、シス-4-ヘプテナール、2,6-ノナジエノール、シス-4-デセナール、ウンデシレンアルデヒド、トランス-2-ドデセナール、トリメチルウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ペリラアルデヒド、メトキシジヒドロシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、イソシクロシトラール、センテナール、ベルンアルデヒド、デュピカール、マセアール、ボロナール、セトナール、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヒドラトロピックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-メチルフェニルアセトアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロピルアルデヒド、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、10-ウンデセナール、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-8,8-ジメチル-2-ナフトアルデヒド、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド(マイラックアルデヒド)、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、3,5-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドと3,5-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドの混合物(商品名=リグストラールまたはトリプラール)、ベンズアルデヒド、3-(4-tert-ブチルフェニル)ブタナール(商品名=リリアール)、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドと3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドの混合物(商品名=リラル/アイエフエフ社:登録商標)、3,6(4,6)-ジメチル-3-シクロヘキセン-1カルボアルデヒド(商品名=シクロベルタール/花王:登録商標)、フローラルオゾン、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナールが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
本発明においては、これらの中でも芳香族系アルデヒド香料、特にヘリオトロピン、リリアール(商品名)、リラル(登録商標)、トリプラール(商品名)、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド及びクミンアルデヒドから選ばれる1種以上の芳香族系アルデヒド香料が(a)成分による影響を受けやすい。しかしながら、本発明の消臭剤組成物は、これらの芳香族系アルデヒドを(cald)成分の香料成分として含有する場合でも、本発明の効果を享受することができる。
【0028】
(c)成分はアルデヒド系香料以外の香料を含有してもよい。アルデヒド系香料以外の香料としては、炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、ケトン系香料、エステル系香料、ラクトン系香料、環状ケトン系香料、及び含窒素系香料などの公知のものを挙げることができ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
(c)成分は、(cald)成分や前記の(cald)成分以外の香料を含む香料組成物として、該消臭剤組成物に配合することができる。
(c)成分は、(cald)成分を、香調、強度及び残香性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下含有する。
【0030】
<組成等>
本発明の消臭剤組成物は、(a)成分を、消臭効果をより高める観点から、塩ではない場合はそのまま、塩の場合は塩でない化合物に換算して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.15質量%以上、そして、好ましくは3.0質量%未満、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、更により好ましくは1.0質量%以下含有する。本明細書において、(a)成分の質量の規定は、特に断りが無い限り、(a)成分が塩の場合は、対応するアミンに換算した質量である。
【0031】
本発明の消臭剤組成物は、(b)成分を、(a)成分による消臭効果をより高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは3.0質量%未満、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、更により好ましくは1.0質量%以下含有する。(b)成分の質量の規定は、(b)成分を酸に換算した質量である。以下、特に断りが無い限り、(b)成分の質量の規定について同じである。
【0032】
本発明の消臭剤組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)は、(a)成分の消臭性能を高める観点から、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上、そして、1.6未満、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.8以下である。モル比の算出において、(a)成分のモル数は、本発明の組成物中に含まれる1級アミン化合物においてアミンのモル数として算出するものとする。(b)成分のモル数も、(b)成分の酸型で算出するものとする。
【0033】
本発明の消臭剤組成物中、(a)成分と(b)成分の合計含有量は、アルデヒド系香料に対する影響を低減し、且つアルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能を向上する観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
【0034】
すなわち、本発明の消臭剤組成物は、(c)成分の安定性の観点から、(a)成分と(b)成分を合計で、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、消臭効果の観点から、3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下含有する。
【0035】
本発明の消臭剤組成物は、(c)成分を、香料の臭気強度と残香性、及び安定性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更により好ましくは0.08質量%以下含有する。
【0036】
本発明の消臭剤組成物は、(cald)成分を、香料の臭気強度と残香性、及び安定性の観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下、更により好ましくは0.015質量%以下含有する。
【0037】
本発明の消臭剤組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(a)/(c)は、液に対する可溶化能の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは14以下である。
【0038】
本発明の消臭剤組成物において、(a)成分の含有量と(cald)成分の含有量の質量比(a)/(cald)成分は、液に対する可溶化能の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。
【0039】
<水>
本発明の消臭剤組成物は、(c)成分の安定性の観点、及び消臭対象物に本発明の消臭成分を効果的に接触させる観点から、任意に水を含有することができる。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水、精製水、地下水、井戸水等を用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。
本発明の消臭剤組成物は、(c)成分の安定性の観点、及び消臭対象物に本発明の消臭成分を効果的に接触させる観点から、水を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。
【0040】
本発明の消臭剤組成物の性状としては、液体や固体であってもよく、液体と固体が共存する性状であってもよい。消臭対象物に(a)成分及び(b)成分を効果的に接触させる観点から、本発明の消臭剤組成物は液体であることが好ましい。本発明の消臭剤組成物は、液体消臭剤組成物であってよい。
【0041】
本発明の消臭剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、一般に添加される各種の他の消臭剤、溶剤〔但し、水を除く〕、油剤、ゲル化剤(増粘剤)、消泡剤、キレート剤、硫酸ナトリウムやN,N,N-トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、速乾助剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、植物抽出物、色素、紫外線吸収剤等の他の成分〔ただし、(a)成分及び(b)成分に該当するものを除く〕を任意に含有することができる。
任意成分の界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。任意成分の界面活性剤は、消臭性能の観点から、非イオン性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
通常、臭気成分は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、界面活性剤は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分である(a)成分を安定に分散させ、繊維製品等に対する接触性を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
【0042】
非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物又は炭素数10以上16以下の脂肪族炭化水素基を有するアミンオキシドが、特に好ましい。
-A-(DO)-R (1)
〔式(1)中、Rは、炭素数10以上、そして、22以下、好ましくは16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Aは、-O-基又は-COO-基を示し、Dは、エチレン基、トリメチレン基及びプロパン-1,2-ジイル基から選ばれる1種以上の基を示し、nは平均付加モル数であり、5以上15以下の数である。n個の(DO)は同じでも異なっていてもよい。また、DOが異なる場合、DOはブロック結合であっても、ランダム結合であってもよい。〕
【0043】
一般式(1)のRは、消臭性能向上の観点から、好ましくは炭素数10以上、そして、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは、好ましくは水素原子又は炭素数1以上2以下のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
一般式(1)のDは、エチレン基が好ましい。また、nは、好ましくは5以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下、更に好ましくは12以下である。
非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数n=6~12。以下のかっこ内の数字も同じである。)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5~12)モノアルキル(炭素数12~14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシエチレン(n=6~13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0044】
炭素数10以上16以下の脂肪族炭化水素基を有するアミンオキシドは、N-脂肪族アルキル-N,N-低級アルキルアミンオキシド、N-脂肪族アシルアミノプロピル-N,N-低級アルキルアミンオキシドが好ましい。脂肪族アルキルとしては、ラウリル基、ミリスチル基及びパルミチル基から選ばれる1種以上の基が好ましい。脂肪族アシル基は、ラウロイル基、ミリストイル基及びパルミトイル基から選ばれる1種以上が好ましい。低級アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基及び2-ヒドロキシエチル基から選ばれる1種以上が好ましい。
【0045】
陽イオン性界面活性剤としては、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。第4級アンモニウム塩としては、4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数8以上28以下のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1以上5以下のアルキル基及び炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数8以上28以下のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。
【0046】
また、溶剤〔但し、水を除く〕としては、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3以上4以下)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2以上12以下)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0047】
本発明の消臭剤組成物の25℃におけるpHは、組成物中のアルデヒド系香料の安定性、アルデヒド類に由来する悪臭に対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7.0以上、更により好ましくは7.5以上、そして、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。このpHは以下のpHの測定法によるものである。また、本発明の消臭剤組成物のpHの調整は、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを該組成物に添加することにより行うことができる。
通常アルデヒド及びアミンのイミノ化反応は酸性又はアルカリ性で進行するが、消臭剤組成物のpHを中性に近い値に調整すると、該組成物中のアルデヒド系香料の分解を抑制し香りをより安定化する一方で、消臭対象物に存在するアルデヒド系悪臭成分に対しては、乾燥などにより組成物が濃縮してイミノ化反応が進行し、高い消臭効果を得ることができ好ましい。
【0048】
<pHの測定法>
pHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、pH/イオンメーター F-23)にpH電極内部液を飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)としたpH測定用複合電極(例えば、株式会社堀場製作所製、ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となる消臭剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をこの消臭剤組成物に浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0049】
本発明の消臭剤組成物は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に付着したアルデヒド類に由来する臭いを消臭する消臭剤組成物として、好適に使用することができる。したがって、本発明の消臭剤組成物は、アルデヒド類に由来する臭いを消臭するアルデヒド臭消臭剤組成物、更には、中鎖又は長鎖の有機アルデヒド化合物に由来する臭いを消臭するアルデヒド臭消臭剤組成物であってよい。
【0050】
<消臭方法>
本発明の消臭方法は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)が0.05以上1.6未満であり、(a)成分と(b)成分の合計含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下である消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させることを行う。
本発明の消臭方法は、本発明の消臭剤組成物を消臭対象に接触させ、乾燥させることを行う、消臭方法であってよい。
また、本発明の消臭方法は、前記の消臭剤組成物を消臭対象に噴霧する消臭方法であってよい。
本発明の消臭方法において、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び任意成分の好ましい態様並びにそれらの好ましい含有量及び含有量のモル比又は質量比は、本発明の消臭剤組成物と同じである。
以下、本発明の消臭方法について、具体的な例を挙げて説明するが、本発明の消臭方法は、具体的な例になんら限定されるものではない。
【0051】
本発明の消臭方法は、上記の本発明の消臭剤組成物を消臭対象に接触させる工程〔以下、工程1という〕と、その後、接触させた消臭剤組成物を乾燥する工程〔以下、工程2という〕と、を行う消臭方法であってよい。
【0052】
工程1において、本発明の消臭剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量のモル比(a)/(b)は、(a)成分の消臭性能を高める観点から、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上、そして、1.6未満、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.8以下である。
【0053】
工程1において、本発明の消臭剤組成物中、(a)成分と(b)成分の合計含有量は、アルデヒド系香料に対する影響を低減し、且つアルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能を向上する観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
【0054】
工程2において、本発明の消臭剤組成物が乾燥する過程で、該組成物中の(a)成分と(b)成分の合計含有量が高まることとなる。工程2の本発明の消臭剤組成物の乾燥は、特に限定するものではないが、例えば、本発明の消臭剤組成物を自然乾燥することであってよい。
【0055】
工程2において、噴霧後90分後の本発明の消臭剤組成物中、本発明の(a)成分と(b)成分の合計含有量は、アルデヒド類に由来する臭いに対する消臭性能を更に向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
工程2で、噴霧後90分後における消臭剤組成物中の(a)成分と(b)成分の合計含有量がこの濃度範囲を満たすように、工程1で消臭対象に接触させる消臭剤組成物中の(a)成分と(b)成分の合計含有量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0056】
本発明の消臭方法において、消臭剤組成物を対象に接触させる方法としては、スプレー、ローション等として用いることが好適である。例えば、本発明の消臭剤組成物をミストタイプのスプレー容器に充填し、1回の噴霧量を0.1~1mLに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
本発明の消臭方法の消臭対象は、固体表面を有するものであれば特に制限はない。例えば、カーテン等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に本発明の消臭剤組成物を噴霧又は塗布して、対象の臭いを効果的に低減させることができる。特に、繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象において効果的である。
【実施例0057】
・実施例及び比較例
<消臭剤組成物の調製>
香料1の香料組成物及び表1に示す香料組成物(香料2、3)を用いて、表2~4に示す配合処方の消臭剤組成物を調製した。
香料1の香料組成物は、ケイ皮酸エチル5部、酢酸リナリル10部、リラール部15部、ヘキシルシンナミックアルデヒド10部、パーライド10部、フェニルエチルアルデヒド20部、セダーアルコール10部、及びリモネン20部からなる調合香料であり、香料1中のアルデヒド系香料の割合は45質量%であった。
【0058】
【表1】
【0059】
表2の実施例の消臭剤組成物においては、(a)成分として、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(分子量121)、(b)成分としてコハク酸(分子量118)又はクエン酸(分子量192)、(c)成分として香料3を使用し、得られた組成物は、1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。
また、表3、4の実施例及び比較例の消臭剤組成物においては、(a)成分として、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(分子量121)、(b)成分としてコハク酸(分子量118)、クエン酸(分子量192)、プロピオン酸(分子量141)、(c)成分として上記香料1若しくは表1に示した香料2又は香料3を使用した。更に、表3、4の実施例及び比較例の消臭剤組成物には、その他の成分として、エタノール、ラウロイルアミノプロピルアミンオキサイド(界面活性剤)、緑茶乾留抽出物(植物抽出物)、ヒドロキシエチルセルロース(増粘剤)、シリコーンコンパウンド(消泡剤)、エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム塩(キレート剤)、ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン(BHT、抗酸化剤)、プロピレングリコール(多価アルコール)ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(抗菌剤)、を使用し、得られた組成物は、1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。
なお、表中、(a)成分の欄には、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールを、Tris(トリス:トリスヒドロキシメチルアミノメタン)と省略して表記している。
【0060】
<乾燥による悪臭成分であるアルデヒドの分解評価>
木綿メリヤス布(6cm×6cm)に2,4-デカジエナールを0.1質量%含むエタノール溶液を30質量%o.w.f.の塗布量で付着させ、試験片とした。なお、o.w.f.(on the weight of fiber)とは、上記の場合においては、2,4-デカジエナールを0.1質量%含むエタノール溶液の木綿メリヤス布に対する質量を示す。また、2,4-デカジエナールは、アルデヒド類由来悪臭の主成分である。
この試験片に表2の消臭剤組成物を30質量%o.w.f.の量となるように塗布し、気温20℃、湿度40%RHの環境調整室で乾燥させた。消臭剤組成物を塗布した試験布において、塗布直後、塗布後30分経過後、60分経過後、90分経過後、120分経過後の試験布をそれぞれアセトンで抽出し、ガスクロマトグラフィーで(a)成分、(b)成分及び2,4-デカジエナールを定量した。
この定量結果に基づいて、試験布に付着した消臭剤組成物における(a)成分と(b)成分の合計濃度〔(a)+(b)の濃度〕及び2,4-デカジエナールの分解率を算出した。結果を表2に示す。
また、下記<組成物における香りの安定性の評価>と同じ操作を行い、香りの安定性の評価を行ったところ、実施例の消臭剤組成物の安定性は良好であった。
表2の結果より、アルデヒド系香料を含有する消臭剤組成物中では組成物の香りの安定性が良好であるが、アルデヒド類由来悪臭の主成分である2,4-デカジエナールに該組成物を接触させ乾燥すると、2,4-デカジエナールが優位に分解することがわかる。
【0061】
【表2】
【0062】
<消臭効果の評価>
(1)消臭対象物の調製
〔調理臭試験片〕
実験用ドラフト内にて、牛肉500g(オーストラリア産)と牛脂2つを使いホットプレートを用いて30分間調理し、ホットプレートの上方1.5mに吊り下げた木綿メリヤス布(6cm×6cm)にアルデヒド類由来悪臭(主成分:2,4-デカジエナール)を付着させ、試験片とした。
〔加齢臭試験片〕
アルデヒド由来悪臭(2-ノネナール)が付着した40代男性の使用済み綿シーツを6cm×6cmに裁断し、試験片とした。
【0063】
(2)消臭方法
上記(1)で得られた各試験片に、表3又は表4に示す配合処方の消臭剤組成物を、スプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて4回スプレーし(計約0.16g)、所定の時間乾燥させた。
【0064】
(3)消臭性能評価
20歳代から50歳代の6人の熟練パネラーが、「消臭剤組成物を噴霧する前の試験片(噴霧前)」及び「消臭剤組成物をスプレーした後の試験片」の臭いを嗅ぎ、それぞれ下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。この平均値が低い消臭剤組成物ほど、調理臭又は加齢臭に対して優れた消臭効果を有する組成物であり、特にこの平均値が2未満の消臭剤組成物の消臭効果が高く好ましい。また、実施例の消臭剤組成物、更には前記平均値が2未満の消臭剤組成物は、消臭対象物に付着させてもアルデヒド系香料の変質が生じていないことを示し、好ましい。
(評価基準)
0:消臭対象物又は香料由来の臭いは感じられない(消臭対象物を付着させる前の前記の木綿メリヤス布)
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ((香料由来の香り以外の異臭がややかすかに感じる強さ)検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い((香料由来の香り以外の異臭が容易に感じる弱い臭いがする)認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い(香料由来の香り以外の異臭が明らかに感じる弱い臭いがする)
4:強い臭い(香料由来の香り以外の異臭が強く感じる)
5:消臭剤組成物を噴霧する前の試験片(耐えられないほど強い臭い)
【0065】
表3には、調理臭試験片に対して、消臭剤組成物をスプレーした評価結果を示した。調理臭試験片での評価は、試験片に消臭剤組成物をスプレーしたときから2時間後と24時間後にそれぞれ行った。
また、表4には、加齢臭試験片に対して、消臭剤組成物をスプレーした評価結果を示した。加齢臭試験片での評価は、試験片に消臭剤組成物をスプレーしたときから24時間後にそれぞれ行った。
【0066】
<組成物における香りの安定性の評価>
実施例2-1~2-6の消臭剤組成物を広口規格ビンPS-No.11に100ml入れ、蓋をして5℃の恒温室(標準品)と40℃の恒温室(評価品)で7日間貯蔵した。貯蔵後の標準品と評価品において香りを比較した結果、実施例2-1~2-6の消臭剤組成物の評価品は標準品と同等であり、下記評価基準においてAランクであった。これら消臭剤組成物は、イミン形成性の(a)成分が配合されているにもかかわらず、アルデヒド系香料を含有する香料組成物を配合した消臭剤組成物の安定性が高いことがわかる。
一方比較例2-2及び2-4は(a)成分及び(b)成分が多く含まれるため下記評価基準においてCランクであった。
〔評価基準〕
A:標準品と同等 (直後品はAのみ合格)
B:標準品と比較し若干異なる
C:標準品と比較しやや異なるが限度内
D:標準品と比較し明らかに異なる
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
これら表3、4に示した調理臭又は加齢臭に対する消臭性能評価及び組成物における香りの安定性の評価より、実施例の消臭剤組成物は、アルデヒド類に由来する悪臭を消臭でき、更にアルデヒド類を含有する香料由来の香りが変質しなかった。このことより、実施例の消臭剤組成物は、香料の香りを損なうことなく、アルデヒド類に由来する悪臭を顕著に消臭できることがわかる。
【0070】
本発明の消臭剤組成物の配合例を表5、6に示す。表5、6の各配合例の消臭剤組成物は、香料の安定性を損なうことなく、アルデヒド類を含む臭い成分に対して優れた消臭効果を有する。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】