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▶ 井関農機株式会社の特許一覧

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  • 特開-作業車の操縦者用騒音低減装置 図1
  • 特開-作業車の操縦者用騒音低減装置 図2
  • 特開-作業車の操縦者用騒音低減装置 図3
  • 特開-作業車の操縦者用騒音低減装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103566
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】作業車の操縦者用騒音低減装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20250702BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20250702BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
G10K11/178
H04R3/00 310
G10K15/04 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221033
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA02
5D220AA31
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業者が操縦操作を行う作業車で、作業中に発生する不愉快な騒音を消して軽快な作業を行えるようにしながら、エンジンの異常状態や機体の不具合発生の異常音を作業者に聞かせて注意を促せる作業車の操縦者用騒音低減装置にすることを課題とする。
【解決手段】機体の周囲で発生する環境音を集音マイク1で取り込み、環境音と逆位相の制御音を逆相出力回路3から消音スピーカ4に出力して環境音を消音する作業車の操縦者用騒音低減装置において、集音マイク1に取り込んだ環境音を音源分析回路2で分析して音源データ5に登録した通常騒音と違う特異音を検出するとその特異音を消音スピーカ4に出力する作業車の操縦者用騒音低減装置とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の周囲で発生する環境音を集音マイク(1)で取り込み、環境音と逆位相の制御音を逆相出力回路(3)から消音スピーカ(4)に出力して環境音を消音する作業車の操縦者用騒音低減装置において、集音マイク(1)に取り込んだ環境音を音源分析回路(2)で分析して音源データ(5)に登録した通常騒音と違う特異音を検出すると特異音を消音スピーカ(4)に出力する作業車の操縦者用騒音低減装置。
【請求項2】
環境音中の音声を消音スピーカ(4)に出力中に特異音を音声よりも大きく出力することを特徴とする請求項1に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置。
【請求項3】
特異音を消音スピーカ(4)から出力中に警報を出すことを特徴とする請求項1に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置。
【請求項4】
特異音が雷鳴の時は消音スピーカ(4)で雷鳴を出力すると共に降雨警報を出すことを特徴とする請求項3に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業や土木作業に使用する作業車を操縦する作業者が使用する騒音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車は、動力源としてディーゼルエンジンが使われ、走行時や作業時に大きな騒音を発生するために、特許文献1には、作業車の騒音低減装置として機体に搭載したエンジンで発生する騒音振動を低減するために、騒音と逆位相の制御音を発生して騒音が作業車を操縦する作業者に聞こえないようにするアイデアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-96566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の作業車の騒音低減装置は、機体で発生する騒音をマイクで拾い、その騒音と逆位相の制御音を操縦席近くの消音スピーカに流すことで騒音を打ち消して操縦者に騒音が聞こえないようにしているので、エンジンに異常が生じたり機体が障害物と接触したりしても、操縦者が気付き難く、重大な事故に至る危険性がある。
【0005】
本発明は、作業者が操縦操作を行う作業車で、作業中に発生する不愉快な騒音を消して軽快な作業を行えるようにしながら、エンジンの異常状態や機体の不具合発生の異常音を作業者に聞かせて注意を促せる作業車の操縦者用騒音低減装置にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、機体の周囲で発生する環境音を集音マイク1で取り込み、環境音と逆位相の制御音を逆相出力回路3から消音スピーカ4に出力して環境音を消音する作業車の操縦者用騒音低減装置において、集音マイク1に取り込んだ環境音を音源分析回路2で分析して音源データ5に登録した通常騒音と違う特異音を検出すると特異音を消音スピーカ4に出力する作業車の操縦者用騒音低減装置とする。
【0008】
請求項2の発明は、環境音中の音声を消音スピーカ4に出力中に特異音を音声よりも大きく出力することを特徴とする請求項1に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置とする。
【0009】
請求項3の発明は、特異音を消音スピーカ4から出力中に警報を出すことを特徴とする請求項1に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置とする。
【0010】
請求項4の発明は、特異音が雷鳴の時は消音スピーカ4で雷鳴を出力すると共に降雨警報を出すことを特徴とする請求項3に記載の作業車の操縦者用騒音低減装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、作業者が機体を操縦して走行しながら作業を行っている際に機体の周りで発生する騒音を環境音として集音マイク1で拾い、その環境音と逆位相の制御音を逆相出力回路3で消音スピーカ4に出力することで作業者の周りで発生する騒音が制御音で打ち消されるが、音源分析回路2で音源データ5に登録の通常騒音とは違う特異音を検出するとその特異音を消音スピーカ4に送ることで、特異音が消音スピーカ4から出力されて、作業者が特異音を聞いて機体に異常状態が発生していることに気付き、危険を回避することが出来る。
【0012】
請求項2の発明で、環境音に含まれる人の話す音声は消音スピーカ4に直接出力されて作業者に聞こえているが、特異音を検出して消音スピーカ4から出力される場合は音声よりも大きく出力されて作業者が会話中であっても機体に異常が生じていることに気付き、危険を回避できる。
【0013】
請求項3の発明で、消音スピーカ4から特異音が出力されさらに警報が出されることで、作業者が確実に異常確認行える。
【0014】
請求項4の発明で、環境音に雷鳴が含まれていると消音スピーカ4からその雷鳴が出力され降雨警報が出されることで、作業者に降雨対策を促せる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における実施の形態の作業車の操縦者用騒音低減装置に関する作業者が消音スピーカを身に着けた斜視図である。
図2】本発明における実施の形態の作業車の操縦者用騒音低減装置に関する環境音の波形を示すグラフである。
図3】本発明における実施の形態の作業車の操縦者用騒音低減装置に関する環境音中の特異音を示すスペクトル図である。
図4】本発明における実施の形態の作業車の操縦者用騒音低減装置に関する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、作業者Mが集音マイク1と消音スピーカ4を有するイヤーホーンを両耳に取り付けることで、作業者Mの両耳に到達する騒音を集音マイク1で集音し、集音した音の逆位相の音を消音スピーカ4から発することで作業者Mに聞こえる音の大きさを低減する。人の話す音声やエンジンの異常音や機体が障害物と接触した音や雷鳴の特異音は消音スピーカ4としてのこのイヤーホーンから出力される。なお、作業車がトラクターで作業者がキャビン内の操縦席に座って操縦を行う場合は、消音スピーカ4をキャビン内に設けるスピーカにすると良い。
【0018】
なお、作業車の操縦中にも周りの人との会話は消音スピーカ4から音声を出力することで可能にしているが、特異音が発生すると音声よりも大きく出力されるので、異常発生に気が付くようにしている。
【0019】
図2は、作業車の周りで発生する騒音の波形で、騒音には図3のスペクトル図の如く異常に高い波形や周波数が異なる波形が含まれている。集音マイク1で集音する音を図2のようにグラフ化すると、横軸が時間、縦軸が振幅の波のグラフで表される。集音マイク1で集音する音を所定時間で区切り、フーリエ変換することにより周波数ごとの音の大きさを表すデータを取得できる。時間が経過すると、周波数ごとの音の大きさを表すデータが蓄積していくので、蓄積したデータの平均値を計算することで、定常の騒音データを取得できる。
【0020】
定常の騒音データを取得した後も所定時間で区切った波のグラフをフーリエ変換して周波数ごとの音の大きさを表すデータをリアルタイムで取得していく。リアルタイムで取得した周波数ごとの音の大きさを表すデータと定常の騒音データを比較し、定常の騒音データにはない周波数の音や、定常の騒音データと比較して大きさが所定値を超える音を検知した場合、異常音が発生したと判断する。
【0021】
図4は、制御ブロック図で、集音マイク1で機体周りの環境音を拾い、音源分析回路2に入力してフーリエ変換で音源を分析し、分析した音源が音源データ5に記憶した正常騒音と違うエンジン異音や機体接触音や雷鳴等の特異音であれば、異常音が発生したと判断する。この時取得した周波数ごとの音の大きさを表すデータから定常の騒音データを差し引くと異常音の特性データだけが残るため、これを逆フーリエ変換して出力することにより、異常音のみを抽出した音を作業者Mが効くことができる。
【0022】
なお、音源分析回路2で騒音中に音声が含まれていると分析するとその音声は消音スピーカ4で音声として出力して会話が可能になるが、特異音が含まれていると音声を小さくし特異音を大きくすることで異常状態に気付かせると共に、自動音声で「異常な音です。」や「雷鳴です。」と発したり、機体に設けた警報表示装置に異常の文字や点滅を表示したりする。この時、人の声の特徴データや雷鳴音の特徴データを予め記憶させておくことにより、リアルタイムで取得した周波数ごとの音の大きさを表すデータの中に特徴データと類似したものを検知することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 集音マイク
2 音源分析回路
3 逆相出力回路
4 消音スピーカ
5 音源データ
図1
図2
図3
図4