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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103930
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20250702BHJP
   B05B 12/08 20060101ALI20250702BHJP
   B05B 15/68 20180101ALI20250702BHJP
   B05C 11/10 20060101ALN20250702BHJP
   B05C 11/08 20060101ALN20250702BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B12/08
B05B15/68
B05C11/10
B05C11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221684
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395018251
【氏名又は名称】マッスル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湊 允哉
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 英一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健
(72)【発明者】
【氏名】野田 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】井川 清朋
(72)【発明者】
【氏名】和田 好隆
(72)【発明者】
【氏名】中西 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】朝野 千明
(72)【発明者】
【氏名】重永 勉
(72)【発明者】
【氏名】玉井 博文
【テーマコード(参考)】
4D073
4F035
4F042
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA18
4D073CB03
4D073CB15
4D073CB20
4D073CB21
4D073CB23
4D073CB24
4D073CB26
4D073DA03
4D073DA05
4F035AA03
4F035BB04
4F035BB13
4F035BB32
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB04
4F035CB05
4F035CB13
4F035CB24
4F035CB27
4F035CB29
4F035CD06
4F035CD08
4F035CD12
4F035CD15
4F035CD18
4F035CD19
4F042AA02
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA25
4F042BA27
4F042EB08
4F042EB11
4F042EB18
4F042EB19
(57)【要約】
【課題】対象物の回転軸部分及びその周辺において膜厚が厚くなることを抑制する。
【解決手段】被塗布面を上方に指向して対象物Wを固定するとともに回転軸20を中心に対象物Wを回転させる基台2と、基台2を指向するスプレー部3と、基台及びスプレー部の少なくとも一方に設けられ、回転する被塗布面に対してスプレー部を相対移動させる移動機構4及びスプレー部3と被塗布面との距離を変更する距離調整機構5と、を備え、距離調整機構は、移動機構によってスプレー部が被塗布面の外周側から回転軸へ近づくほど、被塗布面とスプレー部との距離が長くなるように、基台又はスプレー部を駆動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する対象物の被塗布面に塗布材料を吹き付けて塗膜を形成する塗布装置であって、
被塗布面を上方に指向して前記対象物を固定するとともに回転軸を中心に前記対象物を回転させる基台と、
前記基台を指向するスプレー部と、
前記基台及び前記スプレー部の少なくとも一方に設けられ、
回転する被塗布面に対して前記スプレー部を相対移動させる移動機構及び前記スプレー部と被塗布面との距離を変更する距離調整機構と、
を備え、
前記距離調整機構は、前記移動機構によって前記スプレー部が被塗布面の外周側から前記回転軸へ近づくほど、被塗布面と前記スプレー部との距離が長くなるように、前記基台又は前記スプレー部を駆動することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記移動機構は、前記スプレー部が被塗布面の外周側から前記回転軸へ近づくほど、前記相対移動の移動速度が速くなるように前記基台又は前記スプレー部を駆動することを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置において、
前記距離調整機構は、前記回転軸に対して交差する方向へ延びる揺動軸と、該揺動軸周りに前記スプレー部を揺動させる揺動機構を含み、前記揺動機構の揺動速度は、前記スプレー部が被塗布面の外周側から前記回転軸へ近づくほど速くなることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載に塗布装置において、
前記スプレー部は、被塗布面の近傍に揺動中心を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記スプレー部は、被塗布面に対する所定方向の相対移動において、被塗布面の一方の外周縁部から他方の外周縁部へ達するまで、塗布材料の吹き付けを継続することを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
平面視で円形、かつ、径方向に段差部を有する被塗布面へ塗布材料を吹き付ける、請求項3又は4に記載の塗布装置であって、
前記揺動機構は、段差部における被塗布面の角度に基づいて前記スプレー部の揺動角度を変化させ、径方向内側の段差部に対する揺動角度の変化速度は、径方向外側の段差部に対する揺動角度の変化速度よりも速いことを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記スプレー部は、前記回転軸の直上を通過可能に配置されることを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、塗布装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
回転する対象物に対して塗布材料を吹き付ける塗布装置は様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、回転している基板の内周側上方から塗布材料を噴霧し、回転による遠心力によって基板の内周側から外周側へ流延させる塗布装置が開示されている。このような構成に加え、特許文献2には、対象物の回転速度を第1の塗布材料の吐出時と第2の塗布材料の吐出時とで相違させる塗布方法が開示されている。また、特許文献3には、対象物が固定されるテーブルをX軸移動及びY軸移動可能とし、塗布材料を吐出するノズルをZ軸方向に移動可能とし、塗布材料によりパターンを形成するパターン膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-33318号公報
【特許文献2】特許第7092508号公報
【特許文献3】特開平11-347478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような塗布装置において、対象物の回転軸に近い内周側と回転軸から遠い外周側とでは、慣性モーメントの違いから、内周側ほど厚く塗布されるという問題がある。しかしながら、上記の特許文献には、これを課題として解決する手段は開示されていない。
【0005】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、対象物の回転軸部分及びその周辺において膜厚が厚くなることを抑制した塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術は、回転する対象物の被塗布面に塗布材料を吹き付けて塗膜を形成する塗布装置であって、被塗布面を上方に指向して前記対象物を固定するとともに回転軸を中心に前記対象物を回転させる基台と、前記基台を指向するスプレー部と、前記基台及び前記スプレー部の少なくとも一方に設けられ、回転する被塗布面に対して前記スプレー部を相対移動させる移動機構及び前記スプレー部と被塗布面との距離を変更する距離調整機構と、を備え、前記距離調整機構は、前記移動機構によって前記スプレー部が被塗布面の外周側から前記回転軸へ近づくほど、被塗布面と前記スプレー部との距離が長くなるように、前記基台又は前記スプレー部を駆動する、という構成とした。
【0007】
上記の構成によれば、スプレー部が被塗布面の外周側から内周側へ相対移動し、回転軸へ近づくほど被塗布面から離れることで、被塗布面における回転軸及びその周辺において、塗布範囲が広くなり、塗布材料が分散する。そのため、被塗布面における回転軸及びその周辺が外周側よりも厚く塗布されることを抑制し、膜厚を均一化できる。
【0008】
一実施形態では、前記移動機構は、前記スプレー部が被塗布面の外周側から前記回転軸へ近づくほど、前記相対移動の移動速度が速くなるように、前記基台又は前記スプレー部を駆動してもよい。
【0009】
この構成によると、スプレー部の移動速度が被塗布面の外周側から回転軸へ近づくほど速くなるように相対移動させることで、被塗布面における回転軸及びその周辺が外周側よりも厚く塗布されることをより効果的に抑制し、膜厚を均一化できる。
【0010】
一実施形態では、前記距離調整機構は、前記回転軸に対して交差する方向へ延びる揺動軸と、該揺動軸周りに前記スプレー部を揺動させる揺動機構を含み、前記揺動機構の揺動速度は、前記スプレー部が被塗布面の外周縁部から前記回転軸へ近づくほど速くなるように構成してもよい。
【0011】
この構成によると、被塗布面が平面のみならず凹凸を有していても、揺動機構が被塗布面の形状に合わせてスプレー部の角度を変更できるため、被塗布面の形状に関わらず膜厚を均一化できる。さらに、揺動速度は被塗布面の外周縁部から回転軸へ近づくほど速くなるため、被塗布面における回転軸及びその周辺が外周側よりも厚く塗布されることをより効果的に抑制し、膜厚を均一化できる。
【0012】
一実施形態では、前記スプレー部は、被塗布面の近傍に揺動中心を有してもよい。
【0013】
この構成によると、スプレー部は、揺動中心を被塗布面の近傍とすることにより、揺動角の変化による被塗布面とスプレー部との距離の変化を抑制することが可能となる。
【0014】
一実施形態では、前記スプレー部は、被塗布面に対する所定方向の相対移動において、被塗布面の一方の外周縁部から他方の外周縁部へ達するまで、塗布材料の吹き付けを継続することが好ましい。
【0015】
この構成によると、スプレー部が被塗布面の途中で吹き付けを停止した場合、膜厚にばらつきが生じるが、被塗布面の一方の外周縁部から他方の外周縁部へ達するまで、塗布材料の吹き付けを継続することで、膜厚の不均一化を防ぐことができる。
【0016】
一実施形態では、平面視で円形、かつ、径方向に段差部を有する被塗布面へ塗布材料を吹き付けるものとし、前記揺動機構は、段差部における被塗布面の角度に基づいて前記スプレー部の揺動角度を変化させ、径方向内側の段差部に対する揺動角度の変化速度は、径方向外側の段差部に対する揺動角度の変化速度よりも速くなるように構成してもよい。
【0017】
この構成によると、被塗布面が径方向に段差部を有していても、揺動角度や揺動角度の変化速度を変化させることにより被塗布面全体の膜厚を均一化することができる。
【0018】
一実施形態では、前記スプレー部は、前記回転軸の直上を通過可能に配置してもよい。
【0019】
この構成によると、スプレー部が回転軸の直上を通過しながら塗布を行うことで、被塗布面の全体において、より効果的に膜厚のばらつきを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、ここに開示された塗布装置によると、対象物の回転軸部分及びその周辺において膜厚が厚くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】例示的な塗布装置の概略正面図である。
図2】例示的な塗布装置の概略平面図である。
図3】例示的な塗布装置の概略側面図である。
図4】スプレー部を取り外した状態の塗布装置の要部を示す斜視図である。
図5】例示的な塗布装置の概略ブロック図である。
図6】スプレー部及び対象物の断面模式図である。
図7】塗布装置の要部を示す斜視図である。
図8】塗布装置の要部を示す斜視図である。
図9】塗布装置の要部を示す斜視図である。
図10】塗布装置の要部を示す斜視図である。
図11】塗布装置の要部を示す斜視図である。
図12】対象物と塗布装置の要部を示す斜視図である。
図13】スプレー部と対象物を示す断面模式図である。
図14】対象物と塗布装置の要部を示す斜視図である。
図15】スプレー部と対象物を示す断面模式図である。
図16】対象物と塗布装置の要部を示す斜視図である。
図17】スプレー部と対象物を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、左右、上下、前後といった方向を示す用語を用いるが、これらの方向を示す用語は構成要素の配置や塗布装置の駆動方向を限定するものではない。
【0023】
図1は、例示的な塗布装置1の概略的な正面図、図2は概略的な平面図、図3は概略的な側面図である。図4はスプレー部を取り外した状態の塗布装置の要部を示す斜視図である。図中に示すX,Y及びZは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を示す。下記の実施形態において、X軸方向は左右方向を示し、Y軸方向は前後方向を示し、Z軸方向は上下方向を示す。これらの方向は実施形態によって変更可能であり、塗布装置の駆動方向を限定するものではない。
【0024】
塗布装置1は、回転する対象物Wの被塗布面に塗布材料を吹き付けて塗膜を形成する塗布装置である。塗布装置1は、基台2、スプレー部3、移動機構4、距離調整機構5及び駆動部6を備える。
【0025】
基台2は、Z軸方向に延びる回転軸20を有する。基台2は、対象物Wの被塗布面を上方に指向して対象物Wを固定するとともに回転軸20を中心に対象物Wを回転させる。対象物Wは、被塗布面の中心が回転軸20と一直線上に位置するように配置されることが好ましい。基台2には、移動機構4が設けられる。基台2は、移動機構4により、回転軸20と直交する方向へ移動可能である。基台2は、X軸方向に移動可能である。移動機構4はX軸方向に延びる摺動レール41を有する。移動機構4が、基台2を摺動レール41に沿ってX軸方向に摺動させることにより、回転する被塗布面に対してスプレー部3が相対移動する。
【0026】
スプレー部3は、筒状部材であり、塗布材料を被塗布面へ吹き付ける部材である。スプレー部3には、距離調整機構5が設けられる。スプレー部3は距離調整機構5を介して、摺動レール41に隣接して立設する胴部8に支持され、基台2の上部に位置する。スプレー部3は、回転軸20の直上を通過可能に配置されることが好ましい。スプレー部3は下方へ噴射口を有し、噴射口は基台2を指向する。距離調整機構5は、スプレー部3と被塗布面との相対的な距離を変更する。本実施形態において、距離調整機構5は、Z軸方向におけるスプレー部3と被塗布面との距離を変更する。距離調整機構5は、揺動軸70と、揺動軸70周りにスプレー部3を揺動させる揺動機構7を含む。
【0027】
揺動機構7は、揺動軸70、第1揺動アーム71、及び第2揺動アーム72を有する。揺動軸70は、回転軸20に対して交差する方向へ延びる。本実施形態においては、揺動軸70は、回転軸20及び基台2の移動方向に対して直交し、Y軸方向に延びる。揺動軸70は胴部8に設けられる。揺動軸70は、スプレー部3の下端部と基台2の上面との間に設けられる。揺動中心である揺動軸70は、対象物Wの被塗布面の近傍に設けられることが好ましい。第1揺動アーム71は、一方側端部が揺動軸70に連結される。
【0028】
第1揺動アーム71は、揺動軸70を中心に揺動可能である。第2揺動アーム72は、第1揺動アーム71の他方側端部に連結される。第2揺動アーム72は、第1揺動アーム71の揺動に伴い揺動する。また、第2揺動アーム72は、第1揺動アーム71の延設方向へ摺動可能である。第2揺動アーム72にはスプレー部3を固定するための固定部73が設けられる。スプレー部3は、固定部73を介して第2揺動アーム72に固定される。スプレー部3は、第2揺動アーム72とともに第1揺動アーム71の延設方向へ摺動するとともに揺動軸70を中心に揺動する。
【0029】
距離調整機構5は、図4に示すように、第1リンク51、第2リンク52、及び連結軸50a,50bを有する。連結軸50a,50bはそれぞれY軸方向に延びる。第1リンク51は、一方側端部が揺動軸70に連結され、揺動軸70を中心に回動可能である。第2リンク52の一方側端部は、連結軸50aを介して第1リンク51の他方側端部へ連結される。第2リンク52の他方側端部は、連結軸50bを介して第2揺動アーム72に連結される。第2リンク52は、連結軸50a,50bを中心に回動可能である。
【0030】
第1リンク51が回動すると、その動きに伴い第2リンク52が下方へ引き込まれ、又は、上方へ押し出される。第2リンク52に連結された第2揺動アーム72は、第2リンク52の動きに伴い、第1揺動アーム71に沿って摺動する。距離調整機構5は、第1リンク51の回転運動を直線運動に変換し、第2揺動アーム72を第1揺動アーム71に沿って摺動させる。
【0031】
図5は、例示的な塗布装置の概略ブロック図である。図1及び図5を参照して、塗布装置1を更に説明する。なお、図5において構成要素を結ぶ実線は、信号の伝達経路を示し、破線は動力の伝達経路を示す。
【0032】
駆動部6は、第1駆動部61、第2駆動部62、第3駆動部63及び第4駆動部64を備える。
【0033】
第1駆動部61は、距離調整機構5を駆動する。具体的には、第1駆動部61は、第1リンク51を駆動する。第1駆動部61には、第1シャフト61aが連結される。第1シャフト61aは、第1駆動部61によって回転駆動され、その動力を揺動軸70へ入力し、第1リンク51を回動させる。
【0034】
第2駆動部62は、揺動機構7を駆動する。具体的には、第2駆動部62は、第1揺動アーム71を駆動する。第2駆動部62には、第2シャフト62aが連結される。第2シャフト62aは、第2駆動部62によって回転駆動され、その動力を揺動軸70へ入力し、第1揺動アーム71を回動させる。
【0035】
第3駆動部63は、回転軸20を回転駆動する。第3駆動部63には、第3シャフト63aが連結される。第3シャフト63aは、第3駆動部63によって回転駆動され、その動力を回転軸20へ入力し、基台2を回転させる。
【0036】
第4駆動部64は、移動機構4を駆動する。第4駆動部64には、第4シャフト64aが連結される。第4シャフト64aは、第4駆動部64によって回転駆動され、その動力を移動機構4へ入力し、基台2を摺動レール41に沿って摺動させる。
【0037】
本実施形態において、距離調整機構5はスプレー部3に設け、移動機構4は基台2に設けたが、このような構成に限定されない。移動機構4及び距離調整機構5は基台2及びスプレー部3の少なくとも一方に設けられていればよい。距離調整機構5は、スプレー部3と被塗布面との相対的な距離を変更可能であればよく、基台2に設けられてもよい。移動機構4は、被塗布面に対してスプレー部3が相対移動するように駆動可能であればよく、スプレー部3に設けられてもよい。
【0038】
本実施形態において、塗布装置1は、1組のスプレー部3及び基台2を備えるものとしたが、スプレー部3及び基台2は2組以上を備えてもよい。複数のスプレー部3に対応する複数の基台2は、互いに同期して作動する構成としてもよい。例えば本実施形態において、X軸方向に複数のスプレー部3及び複数の基台2を設置すれば、第1駆動部61、第2駆動部62、第3駆動部63及び第4駆動部64によって、複数のスプレー部3及び複数の基台2を同期して作動させる構成とすることができる。
【0039】
制御部9は、駆動部6を制御することにより、回転軸20、移動機構4、距離調整機構5、及び揺動機構7を制御する。制御部9は、駆動信号を生成し、駆動信号を駆動部6へ出力する。制御部9は、例えば、対象物の形状に基づいてあらかじめ入力されたプログラムに従って、又は、対象物の形状を検出するセンサによって得られた情報に従って、駆動部6を制御する。
【0040】
制御部9の制御によって、距離調整機構5は、例えば、以下のように駆動する。図6は、距離調整機構の作用を説明するための図であって、スプレー部と対象物を模式的に示す断面である。図6において、対象物Wの被塗布面は、平面状であり、平面視円形状である。このような被塗布面に対して、距離調整機構5は、移動機構4によってスプレー部3が被塗布面の外周縁部から回転軸20へ近づくほど、被塗布面とスプレー部3との距離が長くなるよう、スプレー部3を駆動する。本実施形態において、基台2が左から右へ移動することにより、スプレー部3は被塗布面の右側の外周縁部から回転軸20へ近づき、回転軸20の直上を通過し、左側の外周縁部へ到達する。スプレー部3は、外周縁部に位置する場合よりも回転軸20の直上に位置する場合の方が、被塗布面までの距離が長い。
【0041】
制御部9の制御によって、各構成要素は、例えば、以下のように駆動する。移動機構4は、スプレー部3の移動速度が被塗布面の外周縁部から回転軸20へ近づくほど速くなるよう、基台2を駆動する。揺動機構7は、スプレー部3が被塗布面の外周縁部から回転軸20へ近づくほど揺動速度が速くなるよう、スプレー部3を駆動する。そして、スプレー部3は、被塗布面に対する所定方向の相対移動において、被塗布面の一方の外周縁部から他方の外周縁部へ達するまで、塗布材料の吹き付けを継続する。
【0042】
距離調整機構5及び揺動機構7によって、スプレー部3は、Z軸方向に移動可能であるとともに、Y軸方向に延びる揺動軸70を中心に揺動可能である。図7から11は、塗布装置の要部を示す斜視図である。図7から11を参照して、距離調整機構5及び揺動機構7の動作を具体的に説明する。
【0043】
図7において、スプレー部3は、基台2の上面に対して垂直に向いており、回転軸20の直上に配置されている。具体的には、第1リンク51及び第2リンク52は一直線上に位置し、揺動軸70の上方に連結軸50aが位置する。このとき、第2揺動アーム72は、第1揺動アーム71の上方に位置し、スプレー部3はZ軸方向において、基台2から最も離れた位置にある。
【0044】
図8では、図7の状態から、スプレー部3が右へ揺動するとともに、下降している。具体的には、第1揺動アーム71及び第2揺動アーム72は、揺動軸70を中心に右へ揺動している。また、第1リンク51がやや左へ回動して第1リンク51と第2リンク52とが屈折することにより、第2揺動アーム72が揺動軸70へ近づく方向へ引き込まれている。スプレー部3は、回転軸20の左側を指向している。
【0045】
図9では、図7の状態から、スプレー部3が下降している。具体的には、第1リンク51が左へ回動してX軸方向と平行となり、第1リンク51と第2リンク52とが屈折することにより、第2揺動アーム72が揺動軸70へ近づく方向へ引き込まれている。
【0046】
図10では、図9の状態から、スプレー部3が更に下降している。具体的には、第1リンク51が図7の状態から180°回動して、Z軸方向と平行となっている。揺動軸70の下方に連結軸50aが位置し、第1リンク51と第2リンク52とが一直線上に重なり合うことにより、第2揺動アーム72は揺動軸70へ近づく方向へ更に引き込まれている。
【0047】
図11は、図10の状態から、スプレー部3が左へ揺動している。具体的には、第1リンク51及び第2リンク52の配置を保ちながら第1揺動アーム71及び第2揺動アーム72が揺動軸70を中心に左へ揺動している。
【0048】
以上のように構成した塗布装置1は、被塗布面における回転軸及びその周辺が外周側よりも厚く塗布されることを抑制し、膜厚を均一化できる。
【0049】
塗布装置1は、対象物Wの被塗布面に凹凸がある場合も同様に被塗布面における回転軸及びその周辺が外周側よりも厚く塗布されることを抑制し、膜厚を均一化できる。図12、14及び16は、対象物と塗布装置の要部を示す斜視図であって、段差部を有する被塗布面へ塗布材料を塗布する様子を示す。また、図13、15及び17は、スプレー部と対象物を示す断面模式図である。図12から図17に基づいて、被塗布面の段差部とスプレー部3の角度について説明する。
【0050】
図12から図17に示す対象物の被塗布面は、平面視で円形、かつ、径方向に段差部を有する。具体的には、被塗布面は、外周側対して内周側が低く形成された複数の段差部を有するとともに、回転軸20上又は回転軸20の近傍に位置する中央部において、上方に隆起する湾曲部を有する。
【0051】
図12から図17において、基台2はスプレー部3の左側から右側へ向かって移動する。図12及び図13に示すように、スプレー部3は、対象物Wの右側端部から塗布を始める。対象物Wの右側端部における被塗布面は水平面である。スプレー部3は、右側端部における被塗布面に対して略垂直方向に指向する。
【0052】
図14及び図15に示すように、基台2が更に右側へ移動すると、スプレー部3は段差部を指向する。このとき、揺動機構7は、被塗布面の段差に基づいてスプレー部3の揺動角度を変化させ、段差部における被塗布面に対して、スプレー部3が略垂直方向に指向するように駆動する。
【0053】
図16及び図17に示すように、基台2が更に右側へ移動すると、スプレー部3は略中央部において、上方に隆起する湾曲部を指向する。このとき、揺動機構7は、被塗布面の段差に基づいてスプレー部3の揺動角度を変化させ、段差部における被塗布面に対して、スプレー部3が略垂直方向に指向するように駆動する。また、揺動機構7は、径方向内側の段差部に対する揺動角度の変化速度が、径方向外側の段差部に対する揺動角度の変化速度よりも速くなるようスプレー部3を駆動する。
【0054】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
ここに開示された技術は、回転する対象物に対して塗布材料を吹き付ける塗布装置として様々な製造現場に好適に利用される。
【符号の説明】
【0056】
1 塗布装置
2 基台
3 スプレー部
4 移動機構
5 距離調整機構
6 駆動部
7 揺動機構
8 胴部
9 制御部
20 回転軸
50a 連結軸
50b 連結軸
51 第1リンク
52 第2リンク
70 揺動軸
71 第1揺動アーム
72 第2揺動アーム
W 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図17