(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103998
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】スクリーン印刷用マスク
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20250702BHJP
【FI】
B41N1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221809
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴士
(72)【発明者】
【氏名】日下部 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 強
(72)【発明者】
【氏名】原 正吉
【テーマコード(参考)】
2H114
【Fターム(参考)】
2H114AB02
2H114AB07
2H114AB09
2H114AB15
2H114BA02
2H114DA04
(57)【要約】
【課題】スクリーン印刷用マスクにおいて、弾性限度を超えるような引張応力がマスク本体に生じることに起因して、マスク本体の平坦性が損なわれることを防ぐ。
【解決手段】本発明のスクリーン印刷用マスクは、上下方向に貫通する多数独立の通孔8を有するマスク本体2と、マスク本体2が配置されるマスク開口3を有する保持枠4と、マスク開口3の内周面から開口中心に向かって延出されてマスク本体2と保持枠4とを連結する連結体5とを備える。連結体5を自己復元性を有する伸縮体で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に貫通する多数独立の通孔(8)を有するマスク本体(2)と、
マスク本体(2)が配置されるマスク開口(3)を有する保持枠(4)と、
マスク開口(3)の内周面から開口中心に向かって延出されてマスク本体(2)と保持枠(4)とを連結する連結体(5)と、
を備え、
連結体(5)が、自己復元性を有する伸縮体で構成されていることを特徴とするスクリーン印刷用マスク。
【請求項2】
連結体(5)が樹脂を素材とするメッシュシートからなる請求項1に記載のスクリーン印刷用マスク。
【請求項3】
マスク本体(2)の外周縁に沿う表面に固定されて、マスク本体(2)を補強する補強枠(9)を備える請求項1に記載のスクリーン印刷用マスク。
【請求項4】
補強枠(9)はマスク本体(2)の上面に固定されており、
マスク本体(2)が補強枠(9)を介して連結体(5)に接続されている請求項3に記載のスクリーン印刷用マスク。
【請求項5】
補強枠(9)はマスク本体(2)の下面に固定されており、
マスク本体(2)が連結体(5)に接続されている請求項3に記載のスクリーン印刷用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の内部電極等の微細なパターンをスクリーン印刷法で形成する際に用いられるスクリーン印刷用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスクリーン印刷用マスクは、例えば本特許出願人による特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の印刷用マスクは、電鋳法により形成されたマスク本体と、マスク本体が配置されるマスク開口を有する枠体とを含んで構成される。マスク本体は、その内方領域にパターン部が形成されており、パターン部には多数独立の印刷用の通孔からなる印刷パターンが形成されている。枠体は、マスク本体の外周縁を支持するように、マスク本体の上面に固定される支持体と、支持体の上面に固定される枠本体とで構成される。マスク本体、支持体、及び枠本体は、それぞれ金属を素材として形成されており、マスク本体と支持体、支持体と枠本体はそれぞれ不離一体的に固定されている。スクリーン印刷用マスクは、スクリーン印刷機に枠本体が固定され印刷に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリーン印刷法には、印刷用マスクの下面が、印刷面(印刷対象の上面)に接触する状態で、マスク本体の上面に載せられた印刷材をスキージングするコンタクト印刷と、印刷用マスクの下面が印刷面から浮き離れた状態で、マスク本体の上面に載せられた印刷材をスキージングするオフセット印刷(オフコンタクト印刷)がある。オフセット印刷では、スキージの押圧力でマスク本体を下向きに変位させることで、スキージが接触する裏側部分のマスク本体の下面が印刷面に接触し、当該接触部分が移動しながらスキージングが進行するので、印刷面にうねりを有する印刷対象であっても、マスク本体が印刷対象に密着して、印刷面に適正な形状の印刷パターンを形成することができる。
【0005】
特許文献1の印刷用マスクを用いてオフセット印刷を行うには、金属からなるマスク本体及び支持体を弾性変形させて下向きに変位させる必要がある。しかし、マスク本体を弾性変形させると、マスク本体の伸長によって内部に引張応力が生じ、この引張応力がマスク本体を形成する金属素材の弾性限度を超えると、マスク本体に永久ひずみが生じてしまう。このように、マスク本体に永久ひずみが生じると、スキージによる押圧力を解除してもマスク本体の伸びや湾曲として残るので、マスク本体の平坦性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、スクリーン印刷用マスクにおいて、弾性限度を超えるような引張応力がマスク本体に生じることに起因して、マスク本体の平坦性が損なわれることを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスクリーン印刷用マスクは、上下方向に貫通する多数独立の通孔8を有するマスク本体2と、マスク本体2が配置されるマスク開口3を有する保持枠4と、マスク開口3の内周面から開口中心に向かって延出されてマスク本体2と保持枠4とを連結する連結体5とを備える。そして、連結体5が、自己復元性を有する伸縮体で構成されていることを特徴とする。
【0008】
連結体5は樹脂を素材とするメッシュシートからなる。
【0009】
マスク本体2の外周縁に沿う表面に固定されて、マスク本体2を補強する補強枠9を備える。
【0010】
補強枠9はマスク本体2の上面に固定されており、マスク本体2が補強枠9を介して連結体5に接続されている。
【0011】
補強枠9はマスク本体2の下面に固定されており、マスク本体2が連結体5に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリーン印刷用マスクのように、マスク本体2と保持枠4とを連結する連結体5を自己復元性を有する伸縮体で構成していると、オフセット印刷時においてマスク本体2に対して、これを押し下げるような外力が付与された場合でも、連結体5が伸長変形することで当該外力を緩和吸収して、当該外力がマスク本体2に直接的に作用することを防ぐことができる。以上より、本発明によれば、弾性限度を超えるような引張応力がマスク本体2に生じることを防ぐことができるので、マスク本体2に永久ひずみが生じて、マスク本体2の平滑性が損なわれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの縦断面図である。
【
図3】同スクリーン印刷用マスクの分解斜視図である。
【
図4】同スクリーン印刷用マスクを用いたオフセット印刷を説明するための図である。
【
図5】(a)~(e)は本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
【
図6】(a)~(c)は本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの縦断面図である。
【
図8】同スクリーン印刷用マスクを用いたオフセット印刷を説明するための図である。
【
図9】(a)~(c)は本発明の第2実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1から
図6に本発明に係るスクリーン印刷用マスクの第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1及び
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2においてスクリーン印刷用マスク(以下、単にマスクと記す。)1は、銅やニッケル、ニッケルコバルト等のニッケル合金、その他の電着金属を素材として、電鋳法により形成されたマスク本体2と、マスク本体2が配置されるマスク開口3を有して、マスク本体2を支持する保持枠4と、マスク開口3の内周面から開口中心に向かって延出されてマスク本体2と保持枠4とを連結する連結体5とを含んで構成される。なお、各図は、実際のマスク1の様子を示したものではなく、それを模式的に示している。また、
図1等における通孔8の数や開口寸法、マスク本体2の厚み寸法等は、図面作成の便宜上示したものである。
【0015】
図2及び
図3に示すようにマスク本体2は、平面視が正方形の金属薄板で形成されており、外周側に設けられて、正方形状の外形を有する通孔のないベタ部6と、ベタ部6の内部に形成された正方形状の外形を有するパターン部7とで構成される。
図1に示すようにパターン部7には、上下方向に貫通する多数独立の印刷用の通孔8からなる印刷パターンが形成されている。
【0016】
図1及び
図3に示すようにマスク本体2のベタ部6の上面には、該マスク本体2を補強するための補強枠9が不離一体的に固定されている。補強枠9は、42アロイ、インバー材、SUS430等のマスク本体2を構成する電着金属よりも熱線膨張係数の小さな金属(低熱膨張材)を素材とする四角枠体であり、その外周形状はマスク本体2の外周形状と一致するように形成することが望ましい。補強枠9を構成する四角枠体の各辺部の幅寸法は同一とされている。補強枠9の厚み寸法は、マスク本体2の厚み寸法より大きく形成されている。以上のような補強枠9は、板材にプレス機による打抜き加工、エッチング液によるエッチング加工、レーザー光によるレーザー加工、或いは電鋳(めっき)により形成することができる。
【0017】
図1及び
図2に示すように、保持枠4は、中央部に四角形状の開口であるマスク開口3を有する四角枠状の金属成形品である。保持枠4の内周形状、すなわちマスク開口3の開口寸法は、マスク本体2の外形形状よりも大きく設定されている。保持枠4を構成する金属は、補強枠9を構成する金属と熱線膨張係数が同等、或いは補強枠9を構成する金属よりも熱線膨張係数が大きいものとされている。保持枠4の肉厚寸法は、補強枠9の肉厚寸法よりも大きいものとされている。以上のような構成からなる保持枠4は、板材にプレス機で打抜き加工を施す、或いは板材からレーザー加工により切り出すことにより形成することができる。
【0018】
図1及び
図2に示すように、連結体5は、内周形状が補強枠9の外周形状より小さく、外周形状が保持枠4の内周形状より大きい四角枠体からなる。補強枠9と連結体5とは、補強枠9の各辺部における上面の外周縁部分(外側過半部)と、連結体5の各辺部における下面の内周縁部分とを接着することにより、不離一体的に接合されている。また、連結体5と保持枠4とは、連結体5の各辺部における上面の外周縁部分と、保持枠4の各辺部における下面の内周縁部分(内側半部)とを接着することにより、不離一体的に接合されている。本実施形態では、補強枠9と連結体5の各辺部における固定幅は同一に形成されており、連結体5と保持枠4の各辺部における固定幅は同一とされている。また、補強枠9と連結体5の固定幅(断面視における接着領域)と、連結体5と保持枠4の固定幅(断面視における接着領域)は同一とされている。以上より、本実施形態のマスク1では、保持枠4の下側に連結体5が配され、連結体5の下側に補強枠9が配され、補強枠9の下側にマスク本体2が配されている。
【0019】
連結体5は、自己復元性を有する伸縮体で構成されている。具体的には、連結体5は、ポリエステル(樹脂)を素材として形成されるメッシュシート(ポリエステル繊維からなる織布)を四角枠状に裁断してなる。このようなメッシュシートは、引張力を加えると伸長し、引張力が解除されると元の形状へ収縮する自己復元性を発揮する。このため、本実施形態のマスク1においては、マスク本体2に対して上下方向の押圧力が加えられると、連結体5に引張力が加えられて当該連結体5は伸長し、これによりマスク本体2は押圧力の作用方向(上下方向)へ変位する。また、この状態からマスク本体2に対する押圧力が解除されると、連結体5は復元力により元の姿勢に戻り、これによりマスク本体2も元の位置へ復帰させることができる。連結体5を構成するメッシュシートのメッシュサイズは、#100~#300のものが望ましい。
【0020】
次に、マスク1を用いたスクリーン印刷法におけるオフセット印刷について、
図1および
図4を参照して説明する。まず、マスク1を図外のスクリーン印刷機に取り付ける。このとき、マスク1は、マスク本体2が印刷対象16の上面17(印刷面)と対峙する印刷姿勢と、マスク本体2が印刷対象16の上面17から退避する退避姿勢との間で姿勢変更可能な状態でスクリーン印刷機に装着される。また、印刷対象16はスクリーン印刷機の印刷台上に保持されている。オフセット印刷を行う際には、まず、
図1に示すように、印刷台に印刷対象16をセットし、さらにマスク1を退避姿勢から印刷姿勢へと切換えて、印刷対象16の上面17にマスク本体2を対峙させる。このとき、印刷対象16の上面17とマスク本体2の下面18とは、所定の距離Lだけ浮き離れるように配される。この距離Lは、マスク本体2の厚み寸法以上に設定される。
【0021】
続いて、
図4に示すように、マスク本体2の上面に印刷材20を載せ、この印刷材20をスキージ19で一方向に延ばしながら通孔8内に充填して、印刷対象16の上面17に印刷パターンを形成する。具体的には、マスク本体2の上面に印刷材20を載せたのち、スキージ19の先端をマスク本体2の上面に接触させ、さらにマスク本体2を下向きに変位させるようにスキージ19を下方向に押付けて、印刷対象16の上面17にマスク本体2の下面18を当接させる。このとき、スキージ19からの押圧力を受ける部分は、連結体5が伸長することによって保持枠4に対して下向きに部分的に変位されるものの、マスク本体2の全体は、連結体5の自己復元力により、僅かに上方に変位されることとなる。以上より、
図4に示すように、マスク本体2は、スキージ19の押圧位置を最下点とする下突状に湾曲変形される。
【0022】
続いて、スキージ19の押圧力をマスク本体2に作用させたまま、スキージ19をその移動方向上流側から下流端に向かって移動させる。このとき、印刷対象16の上面17とマスク本体2の下面18とが当接する部位が、スキージ19の進行方向に移動しながら、通孔8に印刷材20が充填される。また、スキージ19の押圧力が作用している部分では、マスク本体2は印刷対象16の上面17に密着している。最後に、スキージ19による押圧力を解除し、マスク1を退避姿勢に切換えてマスク本体2を印刷対象16の上方から取り除く。以上より、印刷対象16の上面17に印刷材20からなる印刷パターンを形成することができる。本実施形態のマスク1においては、マスク本体2がマスク1の最下層に配されているため、印刷対象16の上面17の平面サイズが、マスク本体2の平面サイズを超える場合でも、支障なく印刷対象16の上面17に印刷パターンを形成することができる。
【0023】
図5及び
図6に本実施形態に係るマスク1の製造方法の一例を示す。まず、
図5(a)に示すように、導電性を有する例えばステンレス鋼製や真ちゅう製の母型22の表面にフォトレジスト層23を形成し、このフォトレジスト層23の上に、前記の通孔8及びマスク本体2の外周形状に対応する透光孔24aを有するパターンフィルム24を密着させる。フォトレジスト層23は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。次に、紫外光ランプ25で紫外線光を照射してフォトレジスト層23を露光し、現像・乾燥の各処理を行ったのち、未露光部分を溶解除去することにより、
図5(b)に示すような、通孔8及びマスク本体2の外周形状に対応するストレート状のレジスト体26aを有するパターンレジスト26を母型22上に形成した。
【0024】
続いて、母型22を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、
図5(c)に示すように、マスク本体2の厚み寸法を超え、且つレジスト体26aの高さの範囲内で、母型22のレジスト体26aで覆われていない表面にニッケル合金等の電着金属を電鋳(めっき)して、電鋳層27を形成した。次に、
図5(d)に示すように、パターンレジスト26及び電鋳層27の表面に研磨処理を施して平坦化し、さらにパターンレジスト26を溶解除去することにより、
図5(e)に示すような、マスク本体2の厚み寸法に調整されるとともに、表面が平滑な面に仕上げられた電鋳層27を母型22上に形成した。
【0025】
続いて、
図6(a)に示すように、予め形成された補強枠9を接着剤等で電鋳層27の上面に固定したのち、電鋳層27を母型22から剥離して、
図6(b)に示すような補強枠9が上面側に一体化されたマスク本体2を形成した。最後に、治具を用いて、予め形成された連結体5を補強枠9の上面に接着剤等で固定し、次に、予め形成された保持枠4を接着剤等で連結体5の上面に固定する。以上より、
図6(c)に示すような、マスク本体2が保持枠4で支持されるマスク1を得ることができる。なお、平面サイズがマスク本体2の外形形状に合致している母型22を使用してマスク本体2を形成する際には、母型22の表面に形成されたフォトレジスト層23上に密着されるパターンフィルム24(
図5(a)参照)は、前記の通孔8に対応する透光孔24aを有するものを使用する。
【0026】
本実施形態のマスク1は、オフセット印刷に好適に用いられるが、コンタクト印刷にも用いることができる。マスク1は、1個のマスク本体2を備えるものであったが、複数のマスク本体2を備える形態であってもよい。例えば、マスク1が4個のマスク本体2を備えるものである場合には、保持枠4は、4個のマスク開口3を備える格子状に形成すればよい。連結体5は、金属を素材とするメッシュ体、或いはゴムを素材とするシート体であってもよい。連結体5は、保持枠4の上面に固定することもできる。補強枠9と連結体5の固定幅(断面視における接着領域)は、連結体5と保持枠4の固定幅(断面視における接着領域)と同幅、或いは大きく形成することが望ましい。
【0027】
マスク1の製造工程において、補強枠9は、マスク本体2の形成後に補強枠9に対応するレジストパターンを形成し電鋳(めっき)を行って、マスク本体2と一体に形成することもできる。上記の製造工程においては、母型22上の電鋳層27に補強枠9を固定(
図6(a)参照)するようにしたが、先に電鋳層27を母型22から剥離し、剥離した電鋳層27に治具を用いて補強枠9、連結体5、保持枠4を固定してマスク1を得ることもできる。また、母型22上の電鋳層27に補強枠9を固定する工程(
図6(a)参照)に次いで、補強枠9に連結体5を固定し、さらに連結体5に保持枠4を固定したのち、これら電鋳層27、補強枠9、連結体5、及び保持枠4を母型22から剥離して、マスク1を得ることもできる。連結体5と保持枠4は予め一体化したものを用意し、これを補強枠9に固定することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図7から
図9に本発明に係るスクリーン印刷用マスクの第2実施形態を示す。本実施形態では、マスク本体2が、連結体5に接合されている点が、先の第1実施形態と相違する。マスク本体2と連結体5とは、マスク本体2のベタ部6の各辺部における上面の外周縁部分と、連結体5の各辺部における下面の内周縁部分とを接着することにより、不離一体的に接合されている。また、連結体5と保持枠4とは、連結体5の各辺部における上面の外周縁部分と、保持枠4の各辺部における下面の内側半部とを接着することにより、不離一体的に接合されている。本実施形態では、マスク本体2と連結体5の各辺部における固定幅は同一に形成されており、連結体5と保持枠4の各辺部における固定幅は同一とされている。また、マスク本体2と連結体5の固定幅と、連結体5と保持枠4の固定幅は同一とされている。以上より、本実施形態のマスクでは、保持枠4の下側に連結体5が配され、連結体5の下側にマスク本体2が配され、マスク本体2の下側に補強枠9が配されている。
【0029】
図9に本実施形態に係るマスク1の製造方法を示す。まず、先の第1実施形態の製造方法(
図5(a)~(e)、
図6(a)参照)と同一の工程を経て、
図9(a)に示すように、補強枠9を電鋳層27の上面に固定する。次に、電鋳層27を母型22から剥離し、さらにこれを上下反転させて、
図9(b)に示すような補強枠9が下面側に一体化されたマスク本体2を形成する。最後に、予め形成された連結体5をマスク本体2のベタ部6の上面に接着剤等で固定し、次に、予め形成された保持枠4を接着剤等で連結体5の上面に固定することにより、
図9(c)に示すような、マスク本体2が保持枠4で支持されたマスク1を得ることができる。他は第1実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。次の第3実施形態においても同様とする。
【0030】
(第3実施形態)
図10に本発明に係るスクリーン印刷用マスクの第3実施形態を示す。本実施形態では、マスク本体2を補強する補強枠9を廃した点が先の各実施形態と相違する。
【0031】
上記各実施形態に係るマスク1においては、マスク本体2と保持枠4とを連結する連結体5を自己復元性を有する伸縮体で構成したので、オフセット印刷時においてマスク本体2に対して、これを押し下げるような外力が付与された場合でも、連結体5が伸長変形することで当該外力を緩和吸収して、当該外力がマスク本体2に直接的に作用することを防ぐことができる。以上より、このマスク1によれば、弾性限度を超えるような引張応力がマスク本体2に生じることを防ぐことができるので、マスク本体2に永久ひずみが生じて、マスク本体2の平滑性が損なわれることを防ぐことができる。また、このマスク1によれば、弾性限度を超えるような引張応力がマスク本体2に生じることを防ぐことで印刷材20が通過される通孔8が変形することを防ぐことができるので、印刷面に対してより適正な形状の印刷パターンを形成することができる。
【0032】
連結体5を樹脂を素材とするメッシュシートで構成したので、より耐久性に優れたマスク1を得ることができる。つまり、樹脂は金属に比べて、繰り返される伸縮に伴う弾性変形によって生じる疲労破壊に対する耐性を備えているため、上記各実施形態によれば、より耐久性に優れたマスク1を得ることができる。また、連結体5をメッシュシートで構成したので、板状のシートで連結体5を構成する場合に比べて、連結体5に対してより大きな伸縮性を付与することができる。以上より、マスク本体2をより大きく上下方向に変位させることができるので、マスク本体2に永久ひずみが生じて、マスク本体2の平滑性が損なわれることをより確実に防ぐことができる。
【0033】
マスク本体2の外周縁に沿う表面に固定されて、マスク本体2を補強する補強枠9を備えるようにしたので、当該補強枠9によってマスク本体2の弾性変形を抑えることができる。これによってもマスク本体2に永久ひずみが生じて、マスク本体2の平滑性が損なわれることを防ぐことができる。
【0034】
補強枠9をマスク本体2の上面に固定し、マスク本体2を補強枠9を介して連結体5に接続したので、マスク本体2をマスク1の最下層に配することができる。これによれば、オフセット印刷時におけるマスク本体2の下面18と、印刷対象16の上面17との距離Lをより小さくすることができるので、マスク本体2の下方向の変位量をより小さくすることができる。したがって、マスク本体2の変位によって引張応力がマスク本体2の内部に生じることを抑えることができる。
【0035】
補強枠9をマスク本体2の下面に固定し、マスク本体2を連結体5に接続したので、上述のマスク本体2が補強枠9を介して連結体5に支持される形態に比べて、マスク本体2と連結体5との間に介在する部材がない分、保持枠4とマスク本体2との相対位置精度を高めることができる。したがって、オフセット印刷時に印刷対象16に対してマスク本体2を最適な位置に配して、印刷対象16の上面17に精度よく印刷パターンを形成することができる。
【0036】
本発明に係るスクリーン印刷用マスクは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)および目標12(つくる責任、つかう責任)に貢献することができる。また、本発明に係るスクリーン印刷用マスクの構造は、蒸着用、半田ボール配列用、或いは半田ボール吸着用等の各種メタルマスクにも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 スクリーン印刷用マスク
2 マスク本体
3 マスク開口
4 保持枠
5 連結体
8 通孔
9 補強枠