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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010403
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01S7/484
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024193465
(22)【出願日】2024-11-05
(62)【分割の表示】P 2023505597の分割
【原出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021038082
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 洋右
(57)【要約】
【課題】人体に対する安全を確保した上で、測定可能距離を長くすることが一例として挙げられる。
【解決手段】測定装置(10)は、パルス光で対象を走査して測定する装置である。測定装置(10)は、発光素子(12)、受光部(14)、可動ミラー(16)、および制御部(18)を備える。発光素子(12)は、パルス光を発する。受光部(14)は、反射したパルス光を受光する。可動ミラー(16)は、パルス光の出射方向を変化させる。制御部(18)は、発光素子(12)の発光強度を制御する。測定装置(10)では、可動ミラー(16)の反射面が正弦波状に揺動されることにより、パルス光の出射方向が第1の方向(101)に行き来する。制御部(18)は、走査範囲の第1の方向(101)の端を含む端部領域(112)において、走査範囲の第1の方向(101)の中心を含む中心領域(114)よりも高強度のパルス光を出射させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光で対象を走査して測定する測定装置であって、
前記パルス光を発する発光素子と、
反射した前記パルス光を受光する受光部と
前記パルス光の出射方向を変化させる可動ミラーと、
前記発光素子の発光強度を制御する制御部とを備え、
前記可動ミラーの反射面が正弦波状に揺動されることにより、前記パルス光の出射方向が第1の方向に行き来し、
前記制御部は、走査範囲の前記第1の方向の端を含む端部領域において、前記走査範囲の前記第1の方向の中心を含む中心領域よりも高強度の前記パルス光を出射させる
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、位置特定システム、測定システム、および監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転の精度向上等のために、周囲の状況を測定する測定装置の性能向上が重要である。そのような測定装置の一つとして、パルス光で周囲を走査して測定を行うものがある。
【0003】
特許文献1には、車両の走行状態情報や外部環境情報に基づいて、検出領域のうち一部の感度を上げることが記載されている。感度を上げる方法としては、受光素子群の少なくとも一部の受光値を複数の検出期間にわたって加算する方法や、投光部が測定光を投光する間隔を短くし、検出期間内に測定光を投光する回数を増やす方法等が挙げられている。
【0004】
特許文献2には、パルス照射源及び感光検出器が基部フレームに対して回転するLIDAR装置において、照射強度が異なる複数パルスのパターンで測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-135273号公報
【特許文献2】特表2019-512705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、測定装置で用いられるパルス光は高いパワー密度を有する。したがって、パルスの照射によって使用者や周囲の人に障害を発生させることがないよう、人体に対する安全を確保する必要がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、人体に対する安全を確保した上で、測定可能距離を長くすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、
パルス光で対象を走査して測定する測定装置であって、
前記パルス光を発する発光素子と、
反射した前記パルス光を受光する受光部と
前記パルス光の出射方向を変化させる可動ミラーと、
前記発光素子の発光強度を制御する制御部とを備え、
前記可動ミラーの反射面が正弦波状に揺動されることにより、前記パルス光の出射方向が第1の方向に行き来し、
前記制御部は、走査範囲の前記第1の方向の端を含む端部領域において、前記走査範囲の前記第1の方向の中心を含む中心領域よりも高強度の前記パルス光を出射させる
測定装置である。
【0009】
第2の発明は、
移動体に設けられた第1の発明に係る測定装置と、
地図情報を取得する取得部と、
取得された前記地図情報および前記測定装置の測定結果に基づいて前記移動体の位置を特定する位置特定部とを備える
位置特定システムである。
【0010】
第3の発明は、
第1の発明に係る測定装置を複数備え、
一つの前記測定装置の前記走査範囲と、他の一つの前記測定装置の前記走査範囲とが、前記第1の方向に隣り合っている
測定システムである。
【0011】
第4の発明は、
第1の発明に係る測定装置を二つ以上備え、
一つの前記測定装置、および他の一つの前記測定装置は、平面視で互いに対向するように設けられている監視システムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
図2】第1の実施形態に係る制御部のハードウエア構成を例示する図である。
図3】第1の実施形態に係るパルス光の出射方向(出射角度)を例示する図である。
図4】第1の実施形態に係る第1の方向の一つのライン走査における、時間と出射角度の関係を例示する図である。
図5】第1の実施形態に係るパルス強度(出射パワー)の変化を例示する図である。
図6】第1の実施形態に係る測定装置の測定可能領域を例示する図である。
図7】第1の実施形態に係るパルス強度の変化の第1の変形例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係るパルス強度の変化の第2の変形例を示す図である。
図9】第1の実施形態に係るパルス強度の変化の第3の変形例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る発光素子と可動ミラーの関係を例示する図である。
図11】第2の実施形態に係る測定装置の測定可能領域を例示する図である。
図12】第2の実施形態に係る測定装置の機能構成を例示するブロック図である。
図13】第3の実施形態に係る位置特定システムの構成を例示するブロック図である。
図14】第3の実施形態に係る位置特定システムの使用環境を例示する図である。
図15】第4の実施形態に係る測定システムの構成を例示するブロック図である。
図16】第4の実施形態に係る測定システムの使用環境を例示するブロック図である。
図17】第5の実施形態に係る監視システムの構成および使用環境を例示する図である。
図18】監視システムの比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。測定装置10は、パルス光で対象を走査して測定する装置である。測定装置10は、発光素子12、受光部14、可動ミラー16、および制御部18を備える。発光素子12は、パルス光を発する。受光部14は、反射したパルス光を受光する。可動ミラー16は、パルス光の出射方向を変化させる。制御部18は、発光素子12の発光強度を制御する。測定装置10では、可動ミラー16の反射面が正弦波状に揺動されることにより、パルス光の出射方向が第1の方向101に行き来する。制御部18は、走査範囲の第1の方向101の端を含む端部領域112において、走査範囲の第1の方向101の中心を含む中心領域114よりも高強度のパルス光を出射させる。以下に詳しく説明する。
【0015】
測定装置10は、たとえばパルス光の出射タイミングと反射光(反射したパルス光)の受信タイミングとの差に基づいて、測定装置10から走査範囲内にある物体までの距離を測定する装置である。パルス光はたとえば赤外光等の光である。また、パルス光はたとえばレーザパルスである。発光素子12から出力され、測定装置10の外部へ出射されたパルス光は物体で反射されて少なくとも一部が測定装置10に向かって戻る。そして、反射光が測定装置10に入射する。測定装置10に入射した反射光は受光部14で受光され、強度が検出される。ここで、測定装置10では発光素子12からパルス光が出射されてから反射光が受光部14で検出されるまでの時間が測定される。そして、制御部18は、測定された時間とパルス光の伝搬速さを用いて測定装置10と物体との距離を算出する。測定装置10はたとえばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging, Laser Illuminated Detection and Ranging またはLiDAR:Light Detection and Ranging)装置やレーダ装置等である。
【0016】
受光部14は測定装置10に入射したパルス光を受光する。後述する図2に示すように、受光部14は受光素子142および検出回路141を含む。受光素子142は、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)等のフォトダイオードである。受光素子142は、I-Vコンバータや増幅器を含み、受光素子142による光の検出強度を示す信号を出力する。
【0017】
可動ミラー16は、たとえば一軸可動または二軸可動のMEMSミラーである。可動ミラー16の反射面の向きを変えることにより、測定装置10から出射されるパルス光の出射方向を変化させることができる。可動ミラー16は少なくとも一つの軸を揺動軸として正弦波状に揺動する。この正弦波状の揺動は可動ミラー16の共振周波数での揺動であり得る。可動ミラー16の正弦波状の揺動により、パルス光の出射方向は第1の方向101に変化する。
【0018】
可動ミラー16が二軸可動のMEMSミラーである場合、可動ミラー16は少なくとも一方の軸に対して正弦波状に揺動すればよい。他方の軸に対してはたとえば、三角波状、またはノコギリ波状に揺動しても良い。可動ミラー16を二軸駆動する事により、所定の範囲内をパルス光でラスタスキャンすることができる。パルス光による走査については詳しく後述する。
【0019】
本図の例において、測定装置10は孔付きミラー15、および集光レンズ17をさらに備える。発光素子12から出力されたパルス光は孔付きミラー15の孔を通過し、可動ミラー16で反射された後に測定装置10から出射される。また、測定装置10に入射した反射光は可動ミラー16および孔付きミラー15で反射された後、集光レンズ17を介して受光部14に入射する。なお、測定装置10は、コリメートレンズやミラー等をさらに含んでもよい。
【0020】
制御部18は、発光素子12、受光部14および可動ミラー16を制御する。また、制御部18は、上述したように測定装置10から走査範囲内の物体までの距離を算出する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る制御部18のハードウエア構成を例示する図である。本図において制御部18は、集積回路80および電子回路を用いて実装されている。集積回路80は、例えば SoC(System On Chip)である。電子回路はたとえば発光素子12の駆動回路120や可動ミラー16の駆動回路160である。
【0022】
集積回路80は、バス802、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812を有する。バス802は、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ804などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ804は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ806は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス808は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0023】
入出力インタフェース810は、集積回路80を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース810には発光素子12の駆動回路120、受光素子142の検出回路141、および可動ミラー16の駆動回路160が接続されている。
【0024】
ネットワークインタフェース812は、集積回路80を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース812が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0025】
ストレージデバイス808は、制御部18の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、制御部18の機能を実現する。
【0026】
集積回路80のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ806に格納されてもよい。この場合、集積回路80は、ストレージデバイス808を備えていなくてもよい。
【0027】
図3は、本実施形態に係るパルス光の出射方向(出射角度)を例示する図である。本図は、可動ミラー16が二軸可動であり、パルス光でラスタスキャンを行う場合の例を示している。可動ミラー16の二つの揺動軸は直交している。本図の例において、水平方向が第1の方向101に相当する。本実施形態において、走査範囲110の一端から他端まで、パルス光の出射角度は第1の方向101に等間隔に変化する。また、本図の例では、パルス光の出射方向は、第1の方向101の方向に往復しつつ、第1の方向101に垂直な第2の方向にも変化する。このように、可動ミラー16でパルス光の出射方向を変化させる事により、走査範囲110内をパルス光で走査する事ができる。そして、走査範囲110内に存在する物体からの反射光を検出して、測定装置10から物体までの距離を測定する事ができる。なお、本図では第1の方向101への走査の往路および復路の両方でパルス光が出射される例を示しているが、往路および復路のいずれかのみでパルス光が出射されても良い。
【0028】
走査範囲110は、端部領域112および中心領域114を含む。端部領域112は、走査範囲110の第1の方向101方向の端を含む。端部領域112は、一つの走査範囲110において両端に存在する。中心領域114は、走査範囲110の第1の方向101方向の中心を含む。端部領域112および中心領域114の幅はたとえば、単位時間あたりの走査幅である。ここで、単位時間とはアイセーフの規定に基づく単位時間であり、たとえば5μ秒間である。また、端部領域112は各端において、端から1つ目および二つ目のパルス光を含み、三つ目のパルス光を含まない領域であっても良い。端部領域112および中心領域114の角度幅は走査範囲110の第1の方向101の走査角度幅の10%であってもよく、20%であってもよい。
【0029】
端部領域112の端は、走査範囲110の端と一致する。端部領域112の内部においてパルス強度は変化していても良いし、変化していなくても良い。また、中心領域114の内部においてパルス強度は変化していても良いし、変化していなくても良い。
【0030】
図4は、本実施形態に係る第1の方向101の一つのライン走査における、時間と出射角度の関係を例示する図である。本図のように時間を横軸とし、第1の方向101における出射角度を縦軸としたグラフに、出射されたパルス光をプロットした場合、プロットは正弦波を描く。可動ミラー16が正弦波状に揺動する場合、揺動の中心付近では端付近よりも、反射面の角度変化の角速度が速くなる。したがって、図3に示したように等しい角度間隔でパルス光を出射する場合、Δc<Δeが成り立つ。ここで、Δcは第1の方向101の中心におけるパルス光の時間間隔であり、Δeは、第1の方向101の端におけるパルス光の時間間隔である。言い換えると、端部領域112のパルス数密度は、中心領域114のパルス数密度よりも小さい。
【0031】
パルス光出射について、人体に対する安全を確保するための条件が定められている。具体的には、以下の第1~第3条件を満たすことが必要である。
(第1条件)各パルス光のエネルギーが所定の値以下であること。
(第2条件)パルス数とパルス列で決まるエネルギーが所定の値以下であること。ただし、5μ秒間以内のパルス光は一つのパルス光とみなす。
(第3条件)10秒間あたりのパルス光の平均エネルギーが所定の値以下であること。
【0032】
ここで、第2条件を満たそうとする場合、5μ秒間以内のパルス光の合計エネルギーを所定の値以下とする必要がある。本実施形態に係る測定装置10では、上述したとおり、ΔcとΔeとが異なり、端部領域112の5秒間あたりのパルス数は中心領域114の5秒間あたりのパルス数よりも少ない。たとえば端部領域112における5秒間あたりのパルス数は1以下であり、中心領域114における5秒間あたりのパルス数は1超過である。その結果、端部領域112と中心領域114とで、一つのパルスエネルギーの上限値に違いが生じ得る。
【0033】
本実施形態において、中心領域114ではパルス光の出射間隔が5μ秒間未満であり、端部領域112ではパルス光の出射間隔が5μ秒間以上である。なお、端部領域112の幅が5μ秒間あたりの走査幅である場合、各端部領域112には端から1つ目のパルス光のみが含まれる事となる。Δcは5μ秒未満であり、Δeは5μ秒以上である。
【0034】
図5は、本実施形態に係るパルス強度(出射パワー)の変化を例示する図である。領域201は、パルス間隔が5μ秒以上の領域である。すなわち、領域201内の任意の5μ秒間で出射されるパルスの数は1以下である。端部領域112は領域201に含まれる。また、領域202は、パルス間隔が5μ秒よりも短い領域である。具体的には、領域202ではパルス間隔が2.5μ秒以上5μ秒未満であり、5μ秒間に2パルスが出射される。中心領域114は領域202に含まれる。
【0035】
本実施形態では領域202のパルス強度が上述した第2条件を満たすように設定されている。そして、領域202では5μ秒間に2パルスが出射されるのに対し、領域201ではパルス間隔が5μ秒よりも長い。したがって、領域201において第2条件により定まるパルス強度の上限は領域202におけるパルス強度の上限の2倍となる。端部領域112におけるパルス強度は、中心領域114において第2条件により定まるパルス強度の上限より大きくすることができる。
【0036】
本図の例において、領域201内のパルス強度は一定であり、領域202内のパルス強度は一定である。ただし、領域201内のパルス強度は一定でなくても良いし、領域202内のパルス強度は一定でなくてもよい。領域201の各パルスの強度は領域202の各パルスの強度よりも大きい。領域201のパルス光の平均強度は領域202のパルス光の平均強度よりも大きい。端部領域112内に複数のパルス光が出射される場合、端部領域112内でのパルス光の強度は一定でも良いし、互いに異なっていても良い。中心領域114内に複数のパルス光が出射される場合、中心領域114内でのパルス光の強度は一定でも良いし、互いに異なっていても良い。端部領域112内のパルス光の平均強度は中心領域114内のパルス光の平均強度よりも大きい。ただし、パルス強度のパターンは本図の例に限定されない。
【0037】
なお、各領域のパルス強度は第2条件により定まる上限より小さければよく、一致する必要はない。たとえば、端部領域112の各パルスの強度は中心領域114の各パルスの強度の1.9倍以上2.1倍以下である。また、たとえば端部領域112における5μ秒間のパルス強度の合計は、中心領域114での5μ秒間のパルス強度の合計の90%以上110%以下であっても良いし、95%以上105%以下であってもよい。
【0038】
制御部18は、たとえば本図のようにパルス強度を制御する事により、端部領域112において中心領域114よりも高強度のパルス光を出射させる。なお、制御部18は、第1の方向101の走査ライン中でパルス強度を変化させるモードと、変化させないモードとを切り替え可能であっても良いし、常に端部領域112において中心領域114よりも高強度のパルス光を出射させてもよい。
【0039】
図6は、本実施形態に係る測定装置10の測定可能領域20を例示する図である。本図は、第1の方向101への走査ラインを含む平面に垂直な方向から見た様子を示している。本実施形態において、端部領域112のパルス強度が中心領域114のパルス強度よりも高い事により、端部領域112のパルス光による測定可能距離は中心領域114のパルス光による測定可能距離よりも長くなる。したがって、走査範囲110の第1の方向101方向の端において、測定可能距離を長くする事ができる。また、走査範囲110の端において、S/N比が高くなり、測定精度を高める事ができる。このように各領域の上限値を考慮しつつ端部領域112のパルス強度を中心領域114のパルス強度よりも大きくすることにより、すべてのパルスの強度を中心領域114における上限に合わせて一定に定めるよりも、測定装置10全体としての測定性能の向上を図ることができる。
【0040】
制御部18は、端部領域112における受光部14の信号増倍率を、中心領域114における受光部14の信号増倍率よりも低くするよう、受光部14を制御してもよい。また、パルス強度が高い領域ほど、受光部14の信号増倍率を下げるよう、受光部14を制御しても良い。受光部14の信号増倍率の変更は、たとえば受光素子142がアバランシェフォトダイオードである場合、アバランシェフォトダイオードへの印加電圧を変更することにより可能である。パルス強度が高い領域において受光部14の信号増倍率を下げることにより、受光素子142の信号飽和を避け、高精度な測定をすることができる。
【0041】
図7は、本実施形態に係るパルス強度の変化の第1の変形例を示す図である。本変形例では、制御部18は、第1の方向101において、パルス光の強度を3段階以上に変化させる。領域201は、パルス間隔が5μ秒以上の領域である。領域202は、パルス間隔が5μ秒よりも短い領域である。本変形例では、各領域201内でさらにパルス強度を変化させている。そうすることにより、隣り合うパルス間でのパルス強度の変化量を小さくする事ができ、ひいては測定装置10の動作を安定化させる事ができる。本変形例においても、端部領域112のパルス強度は中心領域114のパルス強度よりも高い。また、走査範囲110の端に向かうほど、パルス強度が段階ごとに高くなっている。
【0042】
図8は、本実施形態に係るパルス強度の変化の第2の変形例を示す図である。本変形例では、制御部18は、第1の方向101において、パルス光の強度を連続的に変化させる。領域201は、パルス間隔が5μ秒以上の領域である。領域202は、パルス間隔が5μ秒よりも短い領域である。本変形例では、領域201内において、パルス光の強度を線形に変化させている。そうすることにより、第1の変形例と同様、隣り合うパルス間でのパルス強度の変化量を小さくする事ができ、ひいては測定装置10の動作を安定化させる事ができる。本変形例においても、端部領域112のパルス強度は中心領域114のパルス強度よりも高い。また、走査範囲110の端に向かうほど、パルス強度がパルスごとに高くなっている。
【0043】
図9は、本実施形態に係るパルス強度の変化の第3の変形例を示す図である。本変形例では、制御部18は、第1の方向101において、パルス光の強度を3段階以上に変化させる。領域201は、パルス間隔が5μ秒以上の領域である。領域202は、5μ秒間に二つのパルスが出射される領域である。領域203は、5μ秒間に3つのパルスが出射される領域である。領域203ではパルス間隔が1.7μ秒以上2.5μ秒未満である。領域201において第2条件により定まるパルス強度の上限は領域203におけるパルス強度の上限の3倍となる。領域203は中心領域114を含む。領域201は端部領域112を含む。たとえば、端部領域112の各パルスの強度は中心領域114の各パルスの強度の2.9倍以上3.1倍以下である。本図の例において、端部領域112における5μ秒間のパルス強度の合計は、中心領域114での5μ秒間のパルス強度の合計の90%以上110%以下である。
【0044】
本変形例において、領域201内のパルス強度は一定であり、領域202内のパルス強度は一定であり、領域203内のパルス強度は一定である。ただし、領域201内のパルス強度は一定でなくても良いし、領域202内のパルス強度は一定でなくてもよいし、領域203内のパルス強度は一定でなくてもよい。領域201の各パルスの強度は領域202の各パルスの強度よりも大きく、領域202の各パルスの強度は領域203の各パルスの強度よりも大きい。領域201のパルス光の平均強度は領域202のパルス光の平均強度よりも大きく、領域202のパルス光の平均強度は領域203のパルス光の平均強度よりも大きい。ただし、パルス強度のパターンは本図の例に限定されない。
【0045】
なお、以上に複数のパルス強度の変化パターンを例示したが、本実施形態に係るパルス強度の変化パターンはこれらの例に限定されない。端部領域112において中心領域114よりも高強度のパルス光を出射させる限り、それ以外のパルスの強度は第1~第3の条件を満たす範囲内で様々に設定可能である。
【0046】
また、本実施形態では、両端の端部領域112のパルス強度が同じである例を示したが、両端の端部領域112のパルス強度は互いに異なっていても良い。両側の端部領域112のうち、一方の端部領域112のみで、パルス強度が中心領域114のパルス強度よりも高くなっていても良いし、両方の端部領域112で、パルス強度が中心領域114のパルス強度よりも高くなっていても良い。また、たとえばラスタスキャンを行う場合、第1の方向101の複数の走査ラインにおいて、パルス強度のパターンは互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。
【0047】
以上、本実施形態によれば、制御部18は、走査範囲の第1の方向101の端を含む端部領域112において、走査範囲の第1の方向101の中心を含む中心領域114よりも高強度のパルス光を出射させる。したがって、走査範囲の端の領域において測定可能距離を長くしたり、測定精度を向上させたりする事ができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る発光素子12と可動ミラー16の関係を例示する図である。図11は、本実施形態に係る測定装置10の測定可能領域を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、以下に説明する点を除いて第1の実施形態に係る測定装置10と同じである。
【0049】
本実施形態に係る測定装置10は、二つの発光素子12を備える。そして、一方の発光素子12(第1の発光素子12a)からのパルス光による走査範囲と、他方の発光素子12(第2の発光素子12b)からのパルス光による走査範囲とは第1の方向101に隣り合っている。以下に詳しく説明する。
【0050】
本実施形態に係る測定装置10では、第1の発光素子12aからのパルス光と、第2の発光素子12bからのパルス光とのそれぞれで測定が行われる。また、測定装置10では二つの発光素子12からの光を同一の可動ミラー16で反射させる。そうすることにより、第1の発光素子12aからのパルス光の出射方向と第2の発光素子12bからのパルス光の出射方向を同期させつつ変化させる。その結果、第1の発光素子12aからのパルス光の出射方向と第2の発光素子12bからのパルス光の出射方向とが交わることがない。第1の発光素子12aからのパルス光の出射方向と第2の発光素子12bからのパルス光の出射方向とを常にずらすことができるため、周囲の人にとってより安全である。
【0051】
本実施形態においても制御部18は、第1の発光素子12aからのパルス光による走査範囲と、第2の発光素子12bからのパルス光による走査範囲とのそれぞれにおいて、端部領域112のパルス強度を中心領域114のパルス強度よりも高くする。したがって、各走査範囲の第1の方向101方向の端において、測定可能距離を長くする事ができる。また、各走査範囲の端において、S/N比が高くなり、測定精度を高める事ができる。
【0052】
本実施形態に係る測定装置10の測定可能領域は、図11に示すように、第1の発光素子12aによる測定可能領域20aと、第2の発光素子12bによる測定可能領域20bとを足し合わせた領域となる。そして、測定可能領域20aと測定可能領域20bのそれぞれにおいて走査範囲の端の測定可能距離が長い事により、測定装置10の全体として走査範囲の端付近のみならず、中央付近の測定可能距離を長くする事ができる。また、測定装置10の全体として走査範囲の端付近のみならず、中央付近の測定精度を高める事ができる。なお、第1の発光素子12aの走査範囲と第2の発光素子12bの走査範囲は端で重なり合っていても良いし、重なり合っていなくても良い。ただし、第1の発光素子12aの走査範囲と第2の発光素子12bの走査範囲とは第1の方向101方向に連続していることが好ましく、間に隙間が無いことが好ましい。
【0053】
図12は、本実施形態に係る測定装置10の機能構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る測定装置10は、第1の受光部14a、第2の受光部14b、および結合部19をさらに備える。第1の発光素子12aから出力されたパルス光は、可動ミラー16で反射されて測定装置10の外部に出射される。そして外部の物体で反射されたパルス光が測定装置10に戻り、第1の受光部14aで受光される。また、第2の発光素子12bから出力されたパルス光は、可動ミラー16で反射されて測定装置10の外部に出射される。そして外部の物体で反射されたパルス光が測定装置10に戻り、第2の受光部14bで受光される。
【0054】
本実施形態に係る制御部18は、第1の発光素子12a、第2の発光素子12b、第1の受光部14a、第2の受光部14b、および可動ミラー16を制御する。また、制御部18は第1の受光部14aおよび第2の受光部14bからの信号を受けて、第1の実施形態と同様、測定装置10から物体までの距離を算出する。制御部18は具体的には第1の発光素子12aの出力タイミングと第1の受光部14aの受光タイミングとに基づいて第1の発光素子12aによる走査範囲の測定結果を算出する。また、制御部18は第2の発光素子12bの出力タイミングと第2の受光部14bの受光タイミングとに基づいて第2の発光素子12bによる走査範囲の測定結果を算出する。結合部19は、制御部18から第1の発光素子12aによる走査範囲の測定結果と第2の発光素子12bによる走査範囲の測定結果とを取得して結合する。そして結合部19は結合して得られた結果を、連続したひとつの領域の測定結果として出力する。結合部19は、予め定められた第1の発光素子12aの走査範囲と第2の発光素子12bの走査範囲との位置関係に基づいて、第1の発光素子12aによる測定結果と第2の発光素子12bによる測定結果とを結合する事ができる。第1の発光素子12aによる測定結果および第2の発光素子12bによる測定結果がそれぞれ画像である場合、結合部19はそれらを結合したひとつの画像を生成する。
【0055】
結合部19はたとえば図2に示した集積回路80を用いて実現される。ストレージデバイス808は、結合部19の機能を実現するためのプログラムモジュールをさらに記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、結合部19の機能をさらに実現する。
【0056】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態に係る測定装置10と同様の作用および効果を得られる。また、第1の発光素子12aからのパルス光による走査範囲と、第2の発光素子12bからのパルス光による走査範囲とは第1の方向101に隣り合っている。したがって、測定装置10全体の走査範囲において、中央付近の測定可能距離を長くしたり、測定精度を向上させたりすることができる。
【0057】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る位置特定システム40の構成を例示するブロック図である。図14は、本実施形態に係る位置特定システム40の使用環境を例示する図である。
【0058】
本実施形態に係る位置特定システム40は、測定装置10、取得部42、および位置特定部44を備える。測定装置10は移動体30に設けられている。取得部42は地図情報を取得する。位置特定部44は、取得された地図情報および測定装置10の測定結果に基づいて、移動体30の位置を特定する。測定装置10は、第1および第2の実施形態の少なくともいずれかに係る測定装置10と同じである。以下に詳しく説明する。
【0059】
移動体30はたとえば車両であり、測定装置10は移動体30の前方中央に取り付けられている。ただし、測定装置10は移動体30の後方中央に取り付けられていても良い。位置特定システム40は、移動体30の位置を特定するシステムである。
【0060】
取得部42および位置特定部44はたとえば図2に示した集積回路80を用いて実現される。ストレージデバイス808は、取得部42および位置特定部44の機能を実現するためのプログラムモジュールをそれぞれ記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、取得部42および位置特定部44の機能をさらに実現する。
【0061】
地図情報はたとえば地図情報提供サービス等のサーバー46に予め保持されている。地図情報は、建物や標識等の構造物の三次元情報とそれらの位置情報(たとえば緯度および経度)を含む。位置特定システム40は外部のサーバー46と通信し、取得部42はサーバー46から地図情報を取得する。移動体30がGPS等を備えている場合、取得部42は移動体30の位置情報に基づいて、移動体30の近辺の地図情報のみを取得すればよい。
【0062】
測定装置10は測定を行うことにより、移動体30の周囲の物体を検出する。測定装置10では図6および図11に示したように走査範囲の端付近で測定可能距離が長く、高精度の測定をすることができる。その結果、測定装置10が取り付けられた移動体30が道路上を走行する場合、道路の周囲にある構造物を高精度に検出することが可能である。
【0063】
位置特定部44は、取得部42で取得された地図情報に示される構造物と、測定装置10で検出された構造物とをマッチングさせることにより、移動体30の正確な位置情報を生成する。具体的には、位置特定部44は、マッチングされた構造物の地図情報における位置情報、および、測定装置10で得られた構造物と測定装置10との距離に基づいて、移動体30の位置を算出する。本実施形態に係る測定装置10は、道路の周囲にある構造物を特に高精度に検出することが可能であるため、位置特定部44が生成する移動体30の位置情報の精度をも向上させる事ができる。ひいては、位置特定部44により生成された位置情報を用いてたとえば自動運転やナビゲーションの精度を向上させる事ができる。
【0064】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態に係る測定装置10と同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態に係る位置特定システム40では、位置特定部44は、取得された地図情報および測定装置10の測定結果に基づいて、移動体30の位置を特定する。したがって、移動体30の位置情報の精度を向上させることができる。
【0065】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態に係る測定システム50の構成を例示するブロック図である。図16は、本実施形態に係る測定システム50の使用環境を例示するブロック図である。本実施形態に係る測定システム50は、測定装置10を複数備える。そして、一つの測定装置10(第1の測定装置10c)の走査範囲と、他の一つの測定装置10(第2の測定装置10d)の走査範囲とが、第1の方向101に隣り合っている。測定装置10は第1および第2の実施形態の少なくともいずれかに係る測定装置10と同じである。以下に詳しく説明する。
【0066】
本実施形態に係る測定システム50では、第1の測定装置10cと第2の測定装置10dとのそれぞれで測定が行われる。本実施形態においても各測定装置10の制御部18は、走査範囲において端部領域112のパルス強度を中心領域114のパルス強度よりも高くする。したがって、各走査範囲の第1の方向101方向の端において、測定可能距離を長くする事ができる。また、各走査範囲の端において、S/N比が高くなり、測定精度を高める事ができる。
【0067】
たとえば第1の測定装置10cおよび第2の測定装置10dは、車両等である移動体30の前方中央付近に並べて取り付けられている。ただし、第1の測定装置10cおよび第2の測定装置10dは移動体30の後方中央に取り付けられていても良い。
【0068】
本実施形態に係る測定システム50の測定可能領域は、図16に示すように、第1の測定装置10cによる測定可能領域20cと、第2の測定装置10dによる測定可能領域20dとを足し合わせた領域となる。そして、測定可能領域20cと測定可能領域20dのそれぞれにおいて走査範囲の端の測定可能距離が長い事により、測定システム50の全体として走査範囲の端付近のみならず、中央付近の測定可能距離を長くする事ができる。また、測定システム50の全体として走査範囲の端付近のみならず、中央付近の測定精度を高める事ができる。なお、第1の測定装置10cの走査範囲と第2の測定装置10dの走査範囲は端で重なり合っていても良いし、重なり合っていなくても良い。ただし、第1の測定装置10cの走査範囲と第2の測定装置10dの走査範囲とは第1の方向101に連続していることが好ましく、間に隙間が無いことが好ましい。
【0069】
図15を参照して測定システム50の処理についてさらに詳しく説明する。本実施形態に係る測定システム50は、結合部52をさらに備える。結合部52は、第1の測定装置10cおよび第2の測定装置10dから測定結果を取得して結合する。そして結合部52は、結合して得られた結果を、連続したひとつの領域の測定結果として出力する。結合部52は、予め定められた第1の測定装置10cの走査範囲と第2の測定装置10dの走査範囲との位置関係に基づいて、第1の測定装置10cの測定結果と第2の測定装置10dの測定結果とを結合する事ができる。第1の測定装置10cの測定結果および第2の測定装置10dの測定結果がそれぞれ画像である場合、結合部52はそれらを結合したひとつの画像を生成する。
【0070】
結合部19はたとえば図2に示した集積回路80を用いて実現される。ストレージデバイス808は、結合部19の機能を実現するためのプログラムモジュールをさらに記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、結合部19の機能をさらに実現する。
【0071】
本実施形態において複数の測定装置10のパルス光の出射口は1cm以上離れていることが好ましい。そうすれば、周囲の人体に対し、同時に同方向からのパルス光が照射されることが避けられ、安全である。
【0072】
また、本実施形態において、複数の測定装置10の出射方向が同期していることが好ましい。同期している状態とはたとえば、出射方向のなす角が一定である状態である。そうすることにより、第1の測定装置10cからのパルス光の出射方向と第2の測定装置10dからのパルス光の出射方向とが交わることがない。第1の測定装置10cからのパルス光の出射方向と第2の測定装置10dからのパルス光の出射方向とを常にずらすことができるため、周囲の人にとってより安全である。
【0073】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態に係る測定装置10と同様の作用および効果が得られる。くわえて、第1の測定装置10cの走査範囲と、第2の測定装置10dの走査範囲とが、第1の方向101に隣り合っている。したがって、測定システム50全体の走査範囲において、中央付近の測定可能距離を長くしたり、測定精度を向上させたりすることができる。
【0074】
(第5の実施形態)
図17は、第5の実施形態に係る監視システム60の構成および使用環境を例示する図である。本実施形態に係る監視システム60は、測定装置10を二つ以上備える。一つの測定装置10(第3の測定装置10e)、および他の一つの測定装置10(第4の測定装置10f)は、平面視で互いに対向するように設けられている。本実施形態に係る測定装置10は第1および第2の実施形態の少なくともいずれかに係る測定装置10と同じである。以下に詳しく説明する。
【0075】
本図には、矩形の監視対象領域70を、第3の測定装置10eおよび第4の測定装置10fを用いて監視する監視システム60が示されている。監視対象領域70はたとえばひとつの部屋の内部である。ただし監視対象領域70は廊下や屋内の特定の領域であっても良いし、屋外であっても良い。第3の測定装置10eは監視対象領域70のひとつの角のたとえば天井付近に設置されている。また、第4の測定装置10fは、第3の測定装置10eが設けられた角の対角に位置する角の天井付近に設置されている。ただし、第3の測定装置10eおよび第4の測定装置10fの設置される高さは特に限定されない。
【0076】
上述したとおり、第3の測定装置10eおよび第4の測定装置10fは平面視で互いに対向するように設けられている。なお、対向する状態は、たとえば各測定装置10の走査範囲(画角)の中心線が交わる角度が45°以下の状態である。
【0077】
図18は、監視システムの比較例を示す図である。本比較例では、監視対象領域70を二つの測定装置90で監視している。また、各測定装置90の測定可能領域92を本図中に示している。本比較例では、測定装置90のパルス光の強度は一定であり、測定可能距離は一定である。その結果、本図中破線で囲まれた領域、すなわち測定装置90が設けられていない監視対象領域70の角付近において、いずれの測定装置90でも測定が不可能な領域が生じている。
【0078】
一方、図17で示した本実施形態に係る監視システム60によれば、各測定装置10の走査範囲の端付近で測定可能距離が長いため、測定装置10が設けられていない監視対象領域70の角付近も監視可能である。本図中、第3の測定装置10eによる測定可能領域20eおよび第4の測定装置10fによる測定可能領域20fが監視対象領域70の角付近をカバーしている。このように、監視対象領域70の隅や角など、死角となりやすい領域も含めた監視をすることができる。
【0079】
監視システム60は監視端末62をさらに含む。監視端末62はたとえば汎用コンピュータや携帯端末等である。第3の測定装置10eおよび第4の測定装置10fによる測定結果は、同一の監視端末62の画面に表示される。そうすることにより、監視者は第3の測定装置10eによる測定結果と第4の測定装置10fによる測定結果とを同時に確認することができ、監視対象領域70を効率よく監視できる。
【0080】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態に係る測定装置10と同様の作用および効果が得られる。くわえて、第3の測定装置10eおよび第4の測定装置10fが、平面視で互いに対向するように設けられている。そうすることにより、監視対象領域70の隅や角など、死角となりやすい領域も含めた監視をすることができる。
【0081】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. パルス光で対象を走査して測定する測定装置であって、
前記パルス光を発する発光素子と、
反射した前記パルス光を受光する受光部と
前記パルス光の出射方向を変化させる可動ミラーと、
前記発光素子の発光強度を制御する制御部とを備え、
前記可動ミラーの反射面が正弦波状に揺動されることにより、前記パルス光の出射方向が第1の方向に行き来し、
前記制御部は、走査範囲の前記第1の方向の端を含む端部領域において、前記走査範囲の前記第1の方向の中心を含む中心領域よりも高強度の前記パルス光を出射させる
測定装置。
2. 1.に記載の測定装置において、
前記パルス光の出射角度は等間隔に変化する
測定装置。
3.
1.または2.に記載の測定装置において、
前記中心領域では前記パルス光の出射間隔が5μ秒間未満であり、前記端部領域では前記パルス光の出射間隔が5μ秒間以上である
測定装置。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記端部領域における5μ秒間のパルス強度の合計は、前記中心領域での5μ秒間のパルス強度の合計の90%以上110%以下である
測定装置。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記制御部は、前記第1の方向において、前記パルス光の強度を3段階以上に変化させる
測定装置。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記制御部は、前記第1の方向において、前記パルス光の強度を連続的に変化させる
測定装置。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記制御部は、前記端部領域における前記受光部の信号増倍率を、前記中心領域における前記受光部の信号増倍率よりも低くするよう、前記受光部を制御する
測定装置。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載の測定装置において、
二つの前記発光素子を備え、
一方の前記発光素子からの前記パルス光による前記走査範囲と、他方の前記発光素子からの前記パルス光による前記走査範囲とは前記第1の方向に隣り合っている
測定装置。
9. 移動体に設けられた1.~8.のいずれか一つに記載の測定装置と、
地図情報を取得する取得部と、
取得された前記地図情報および前記測定装置の測定結果に基づいて前記移動体の位置を特定する位置特定部とを備える
位置特定システム。
10. 1.~8.のいずれか一つに記載の測定装置を複数備え、
一つの前記測定装置の前記走査範囲と、他の一つの前記測定装置の前記走査範囲とが、前記第1の方向に隣り合っている
測定システム。
11. 10.に記載の測定システムにおいて、
前記複数の測定装置の前記パルス光の出射口は1cm以上離れている
測定システム。
12.
10.または11.に記載の測定システムにおいて、
前記複数の測定装置の出射方向は同期している
測定システム。
13. 1.~8.のいずれか一つに記載の測定装置を二つ以上備え、
一つの前記測定装置、および他の一つの前記測定装置は、平面視で互いに対向するように設けられている監視システム。
【0082】
この出願は、2021年3月10日に出願された日本出願特願2021-038082号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0083】
10 測定装置
12 発光素子
14 受光部
15 孔付きミラー
16 可動ミラー
17 集光レンズ
18 制御部
19 結合部
20 測定可能領域
30 移動体
40 位置特定システム
42 取得部
44 位置特定部
46 サーバー
50 測定システム
52 結合部
60 監視システム
62 監視端末
70 監視対象領域
80 集積回路
101 第1の方向
110 走査範囲
112 端部領域
114 中心領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18