(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104055
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20250702BHJP
B60R 22/14 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R22/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221883
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】柿本 憲志
(72)【発明者】
【氏名】島津 克也
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA25
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグの導管部の捩じれを抑制するとともに、ラップベルト部による乗員の拘束性能が低下することを抑制することができる乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員保護装置10は、乗員を受け止めるバッグ本体部30aと、膨張用ガスをバッグ本体部30aに案内してバッグ本体部30aに膨張用ガスを流入させる導管部30bとを有するラップベルト部13に取り付けられたエアバッグ30と、ラップベルト部13と導管部30bとの間に配置され、導管部30bの捻じれを規制する規制ベルト60とを備える。規制ベルト60は、導管部30bより剛性が高く、ラップベルト部13の長手方向において異なる位置に配置された板状の二つの板状部60aと、当該二つの板状部60aの間に配置されてこれらを接続する接続部60bであって当該二つの板状部60aより剛性が低く構成された接続部60bとを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座する乗員を保護する乗員保護装置であって、
前記シートに着座する乗員の腰部を拘束するように構成されたラップベルト部を有するシートベルトと、
膨張用ガスを放出するインフレーターと、
前記ラップベルト部に取り付けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止めるバッグ本体部と、前記インフレーターに接続され、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記バッグ本体部に案内して前記バッグ本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、
前記ラップベルト部と前記導管部との間に配置され、前記導管部の捻じれを規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、
前記導管部より剛性が高い板状の第1板状部と、
前記導管部より剛性が高い板状の第2板状部であって、前記ラップベルト部の長手方向において前記第1板状部と異なる位置に配置された第2板状部と、
前記長手方向において前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接続する接続部であって、前記第1板状部及び前記第2板状部より剛性が低く構成された接続部と、
を備えることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記接続部の厚みは、前記第1板状部及び前記第2板状部の厚みより薄いことを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記ラップベルト部の厚み方向から見たとき、前記第1板状部及び前記第2板状部は、前記長手方向に沿った辺を短辺とし、前記長手方向と前記厚み方向とに直交する方向に沿った辺を長辺とする長方形状であることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記ラップベルト部と前記規制部材とを一体的に保持する保持部材をさらに備え、該保持部材は前記導管部に連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
シートに着座する乗員を保護する乗員保護装置であって、
前記シートに着座する乗員の腰部を拘束するように構成されたラップベルト部を有するシートベルトと、
膨張用ガスを放出するインフレーターと、
前記ラップベルト部に取り付けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止めるバッグ本体部と、前記インフレーターに接続され、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記バッグ本体部に案内して前記バッグ本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、
前記ラップベルト部と前記導管部との間に配置され、前記導管部の捻じれを規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材は、
前記導管部より剛性が高い板状の第1板状部と、
前記導管部より剛性が高い板状の第2板状部であって、前記ラップベルト部の長手方向において前記第1板状部と隣接して配置され、前記第1板状部に対して前記長手方向と交差する方向に回動可能に構成された第2板状部と、
を備えることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項6】
前記規制部材は、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結するとともに、前記第2板状部が前記第1板状部に対して回動可能となるように前記第2板状部を保持する連結部材をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記第1板状部に形成された第1穴部と前記第2板状部に形成された第2穴部とに挿通される軸部材を有し、
前記第2板状部は、前記第1板状部に対して前記軸部材を中心に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記ラップベルト部と前記規制部材とを一体的に保持する保持部材をさらに備え、該保持部材は前記導管部に連結されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座する乗員を保護する乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員を保護する乗員保護装置として、乗員をシートに拘束するシートベルトを設ける構成が広く知られている。また、特許文献1では、シートベルトにおける乗員の腰部を拘束するラップベルト部にエアバッグを設け、エアバッグによって乗員を受け止めて保護する構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のエアバッグは、膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止めるバッグ本体部と、インフレーターに接続され、インフレーターから放出される膨張用ガスをバッグ本体部に案内してバッグ本体部に膨張用ガスを流入させる導管部を有する。導管部は、捻じれ難い材料で形成されており、これによって導管部が捩じれて膨張用ガスが流れにくくなることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の構成のように、導管部を捻じれ難い材料で形成することにより捻じれを抑制する場合、導管部の剛性によって導管部が取り付けられているラップベルト部が曲がり難くなるおそれがある。その場合、ラップベルト部が乗員の腰回りに沿いにくくなってラップベルト部と乗員の腰部との間に隙間ができ、ラップベルト部による乗員の拘束性能が低下するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、エアバッグの導管部の捩じれを抑制するとともに、ラップベルト部による乗員の拘束性能が低下することを抑制することができる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る乗員保護装置の代表的な構成は、シートに着座する乗員を保護する乗員保護装置であって、前記シートに着座する乗員の腰部を拘束するように構成されたラップベルト部を有するシートベルトと、膨張用ガスを放出するインフレーターと、前記ラップベルト部に取り付けられたエアバッグであって、前記膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員を受け止めるバッグ本体部と、前記インフレーターに接続され、前記インフレーターから放出される前記膨張用ガスを前記バッグ本体部に案内して前記バッグ本体部に前記膨張用ガスを流入させる導管部と、を有するエアバッグと、前記ラップベルト部と前記導管部との間に配置され、前記導管部の捻じれを規制する規制部材と、を備え、前記規制部材は、前記導管部より剛性が高い板状の第1板状部と、前記導管部より剛性が高い板状の第2板状部であって、前記ラップベルト部の長手方向において前記第1板状部と異なる位置に配置された第2板状部と、前記長手方向において前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接続する接続部であって、前記第1板状部及び前記第2板状部より剛性が低く構成された接続部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、乗員保護装置において、エアバッグの導管部の捩じれを抑制するとともに、ラップベルト部による乗員の拘束性能が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
【
図4】エアバッグが膨張した際のシートの左側面図である。
【
図5】
図3に示すA-A部を切断したバッグ組付体の断面図である。
【
図6】エアバッグが膨張した状態のバッグ組付体を下側から見た斜視図である。
【
図7】規制ベルトの正面図と平面図と斜視図である。
【
図8】エアバッグが膨張した状態のバッグ組付体を下側から見た斜視図である。
【
図9】規制ベルトの正面図と平面図と分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明において、左右方向は、乗員保護装置10を搭載したシート1の左方向と右方向、具体的にはシート1に着座する乗員Mから見た左方向と右方向を意味する。前後方向は、シート1の前方向と後方向、具体的にはシート1に着座する乗員Mから見た前方向と後方向を意味する。上下方向は、鉛直方向の上方向と下方向を意味する。
【0011】
図1は、乗員保護装置10を搭載したシート1の斜視図である。
図2は、シート1の左側面図である。
図3は、シート1の正面図であり、シート1に着座してシートベルト11を装着した状態の乗員Mと乗員保護装置10の膨張した状態のエアバッグ30を二点鎖線で示している。
図4は、エアバッグ30が膨張した状態のシート1の左側面図であり、シート1に着座してシートベルト11を装着した状態の乗員Mを二点鎖線で示している。
【0012】
図1~
図4に示す様に、乗員保護装置10は、車両のシート1に搭載されており、シート1に着座する乗員Mを保護する。乗員保護装置10は、シートベルト11、エアバッグ30を備えるバッグ組付体29、及びエアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター24から構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5を備える。
【0013】
シートベルト11は、乗員Mをシート1に拘束する帯状の部材である。シートベルト11は、背もたれ部2の左上縁付近の内部に設けられた巻き取り機構15から繰り出し可能に構成されている。シートベルト11の下端部は、座部5の左側に設けられたアンカ部材17に固定された固定端となっている。また、シートベルト11の中間部位には、タング20が設けられている。タング20は、シート1の座部5の右側に設けられたバックル19に締結される。乗員Mがシート1に着座し、タング20がバックル19に締結された状態が、乗員Mにシートベルト11が装着された状態である。
【0014】
乗員Mに装着された状態のシートベルト11は、タング20から巻き取り機構15側に延び、乗員Mの上半身MUの前面側に配置され、乗員Mの上半身MUを拘束する部位であるショルダーベルト部12と、タング20からアンカ部材17側に延び、乗員Mの腰部MWの前面側に配置され、腰部MWを拘束する部位であるラップベルト部13を有する。つまりラップベルト部13は、乗員Mの腰部MWを拘束するように構成されている。なお、乗員Mは、バックル19に設けられた不図示のリリースボタンを押圧操作することによってタング20のバックル19に対する締結状態を解除し、タング20をバックル19から取り外すことができる。
【0015】
巻き取り機構15は、シートベルト11の急激な引き出しがある場合は引き出しを停止させ、さらに車両の衝突等があれば引き出したシートベルト11を巻き取るように構成されたプリテンショナー機構16を有する。プリテンショナー機構16は、内蔵するガスジェネレータを作動させることによってシートベルト11が巻き付けられた軸を回転させてシートベルト11を瞬時に巻き取る。
【0016】
インフレーター24は、膨張用ガスを放出するインフレーター本体25と、インフレーター本体25から放出された膨張用ガスをエアバッグ30に案内するパイプ部26から構成されている。インフレーター本体25は、シート1の座部5を支持するシートフレーム4に取り付けられている。パイプ部26は、インフレーター本体25から延出し、座部5の底面から側面に沿うように略L字状に屈曲した形状をしている。
【0017】
バッグ組付体29は、バッグ本体部30aと導管部30bとを備えるエアバッグ30、エアバッグ30とラップベルト部13とを連結するバッグ連結部52、導管部30bの捻じれを規制する
図5に示す規制ベルト60(規制部材)、及びエアバッグカバー59から構成されている。バッグ本体部30aは、インフレーター24から膨張用ガスが供給される前の段階では、折り畳まれた状態でエアバッグカバー59の内部に収容されている。エアバッグ30の導管部30bは、インフレーター24のパイプ部26に接続されており、インフレーター24から放出される膨張用ガスを取り込んでバッグ本体部30aまで案内する。エアバッグ30の導管部30bの基端部30b2と、インフレーター24のパイプ部26は、クランプ27で締結されることによって連結されている。バッグ組付体29を構成する各部材の詳しい構成については後述する。
【0018】
次に、乗員保護装置10による乗員Mの保護動作について説明する。まず車両が衝突すると、巻き取り機構15のプリテンショナー機構16が作動し、乗員Mのシート1への着座姿勢を安定させるために乗員Mに装着したシートベルト11が巻き取られる。これによりシートベルト11のラップベルト部13がタング20側に引き込まれるとともに、ラップベルト部13から連なるショルダーベルト部12が乗員Mの肩口側に引き込まれる。
【0019】
次に、インフレーター24が作動し、膨張用ガスがインフレーター本体25からパイプ部26、エアバッグ30の導管部30bを経由してエアバッグ30のバッグ本体部30aに供給される。これによりバッグ本体部30aが膨張する。その後、車両の衝突の衝撃によって前方移動する乗員Mの上半身MUは、バッグ本体部30aに受け止められる。このようにして乗員保護装置10は乗員Mを保護する。
【0020】
次に、バッグ組付体29を構成する各部材について説明する。
図5は、
図3に示すA-A断面で切断したバッグ組付体29の断面図である。
図6は、エアバッグ30が膨張した状態のバッグ組付体29を下方から見た斜視図であって、エアバッグカバー59は省略している。
図7は、規制ベルト60の正面図(
図7A)と平面図(
図7B)と斜視図(
図7C)である。
【0021】
図5、
図6に示す様に、エアバッグ30は、膨張用ガスが供給されることにより膨張して乗員Mを受け止めるバッグ本体部30aと、インフレーター24のパイプ部26に接続され、インフレーター24から放出される膨張用ガスをバッグ本体部30aの流入口30a3aまで案内してバッグ本体部30aに膨張用ガスを流入させる導管部30bから構成されている。バッグ本体部30aと導管部30bは、それぞれポリエステル繊維を平織り等して形成された織布であるバッグ用の基布で形成されており、縫合されることによって連結されている。
【0022】
膨張完了時のバッグ本体部30aは、乗員Mの直ぐ前方で乗員Mと対向するように配置され、前方移動する乗員Mの上半身MUに接触して上半身MUを受け止める後壁部30a1と、後壁部30a1と反対の前側に配置される前壁部30a2と、下側に配置され、乗員Mの大腿部に支持される下壁部30a3と、左右にそれぞれ配置される左壁部30a4及び右壁部30a5を有する。バッグ本体部30aの下壁部30a3には、導管部30b内の膨張用ガスを流入させるための開口部である二つの流入口30a3aが設けられている。
【0023】
導管部30bは、インフレーター24のパイプ部26とバッグ本体部30aにそれぞれ連結され、ラップベルト部13の長手方向に沿って延びる筒状の部材である。導管部30bは、バッグ本体部30aの流入口30a3aと連通する連通口30b1を有する。導管部30bの内部の膨張用ガスは、連通口30b1、流入口30a3aを経由して、バッグ本体部30aの内部に流入する。
【0024】
バッグ連結部52(保持部材)は、エアバッグ30とラップベルト部13と規制ベルト60とを連結する部材であって、エアバッグ30を形成するバッグ用の基布と同様の素材で形成されている。バッグ連結部52の上面とエアバッグ30の導管部30bの下面は縫合されて連結されている。バッグ連結部52には、ラップベルト部13が挿通されるラップベルト挿通部52aと、規制ベルト60が挿通される規制ベルト挿通部52bが設けられている。ラップベルト挿通部52aは、ラップベルト部13の長手方向に貫通する貫通孔である。規制ベルト挿通部52bは、ラップベルト部13の長手方向に沿って延びる筒状の部位であって、当該長手方向の両端部はバッグ連結部52を構成する基布同士が縫合されることによって封止されている。ラップベルト挿通部52aにラップベルト部13が挿通され、規制ベルト挿通部52bに規制ベルト60が挿通されることにより、ラップベルト部13と規制ベルト60はバッグ連結部52に一体的に保持される。なお、ラップベルト部13と規制ベルト60の長手方向、厚み方向、及び長手方向と厚み方向とに直交する幅方向はそれぞれ同じ方向である。
【0025】
上記のようにラップベルト挿通部52aにラップベルト部13が挿通され、バッグ連結部52の上面がエアバッグ30の導管部30bの下面に縫合されることにより、エアバッグ30がバッグ連結部52を介してラップベルト部13に取り付けられる。また、ラップベルト部13の厚み方向において、規制ベルト挿通部52bはラップベルト挿通部52aに対してエアバッグ30側に配置されている。そのため、規制ベルト挿通部52bに規制ベルト60が挿通され、バッグ連結部52の上面がエアバッグ30の導管部30bの下面に縫合されることによって規制ベルト60がラップベルト部13とエアバッグ30の導管部30bとの間の位置に配置される。このようにして規制ベルト60がバッグ連結部52を介して導管部30bに取り付けられ、導管部30bは規制ベルト60に支持される。
【0026】
エアバッグカバー59は、ラップベルト部13に取り付けられた筒状の部材であり、折り畳まれた状態のエアバッグ30のバッグ本体部30aの全体、導管部30bの一部、バッグ連結部52の全体、及びラップベルト部13の一部を筒内部に収容する。ここでバッグ連結部52の内部には規制ベルト60の全体が収容されているため、エアバッグカバー59は規制ベルト60全体を筒内部に収容するとも言える。エアバッグカバー59は、バッグ本体部30aが膨張する際にバッグ本体部30aから圧力を受けて破断して開口部を形成し、この開口部からバッグ本体部30aを繰り出させる。
【0027】
規制ベルト60は、エアバッグ30の導管部30bを支持し、導管部30bの捻じれを抑制する部材である。
図7に示す様に、規制ベルト60は、ラップベルト部13の長手方向に沿って並ぶ板状の複数の板状部60aと、当該長手方向において隣接する二つの板状部60aの間に配置され、隣接する二つの板状部60aを接続する接続部60bから構成されている。本実施形態では、規制ベルト60は樹脂製であって、板状部60aと接続部60bは一体成型されている。これら複数の板状部60aのうち、一つの板状部60aは第1板状部の一例であり、ラップベルト部13の長手方向において当該板状部60aに隣接して配置された板状部60aは第2板状部の一例である。これらの第1板状部と第2板状部はラップベルト部13の長手方向において異なる位置に配置されている。
【0028】
板状部60aは、正面(ラップベルト部13の厚み方向)から見たとき、ラップベルト部13の長手方向に沿った辺60a1を短辺とし、ラップベルト部13の長手方向と厚み方向とに直交する幅方向に沿った辺60a2を長辺とする長方形状となっている。ここでいう長方形状には、通常の長方形の他に、本実施形態のように長方形の四つの頂点60a3がそれぞれ面取りされている形状も含まれる。板状部60aの剛性は、エアバッグ30の導管部30bやラップベルト部13の剛性より高く設定されている。
【0029】
接続部60bは、ラップベルト部13の長手方向において隣接する二つの板状部60aと一体成型されることにより当該二つの板状部60aを接続している。接続部60bの厚みL1は板状部60aの厚みL2より薄く設定されており、板状部60aと接続部60bは同じ材料で形成されている。これにより接続部60bの剛性は板状部60aの剛性より低く構成されている。
【0030】
このように構成された規制ベルト60がラップベルト部13とエアバッグ30の導管部30bとの間に配設されていることにより以下の効果を奏する。すなわち、シートベルト11の装着時に導管部30bがその表裏が反転するように捩じれている場合、乗員保護装置10の作動時に膨張用ガスが導管部30b内を流れにくくなる。そのため、導管部30bの捻じれは抑制されることが望ましい。但し、導管部30bを単に捻じれ難い材料で形成する場合、導管部30bが取り付けられたラップベルト部13が曲がり難くなり、ラップベルト部13が乗員の腰回りに沿いにくくなるおそれがある。その場合、ラップベルト部13と乗員Mの腰部MWとの間に隙間ができやすくなり、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下するおそれや、ラップベルト部13の装着性が悪化するおそれがある。
【0031】
一方、本実施形態の乗員保護装置10においては、エアバッグ30の導管部30bより剛性が高い板状部60aを有する規制ベルト60が上記位置に設けられているため、板状部60aの剛性によってエアバッグ30の導管部30bがその表裏が反転するように捻じれ難くなる。また、規制ベルト60は、ラップベルト部13の長手方向において異なる位置に配置された二つの板状部60aの間に、板状部60aより剛性が低い接続部60bを有する。そのため、接続部60bが曲がって関節のように機能し、規制ベルト60が乗員Mの腰部MW回りに沿うように曲がりやすくなり、規制ベルト60によってラップベルト部13が曲がりにくくなることが抑制される。したがって、ラップベルト部13と乗員Mの腰部MWとの間に隙間ができにくくなることから、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下することや、ラップベルト部13の装着性が悪化することが抑制される。
【0032】
そのため、本実施形態の乗員保護装置10によれば、エアバッグ30の導管部30bの捩じれを抑制するとともに、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下することを抑制することができる。
【0033】
また、ラップベルト部13の厚み方向から見たとき、規制ベルト60の板状部60aはラップベルト部13の長手方向に沿った辺60a1を短辺とし、当該長手方向と厚み方向とに直交する方向に沿った辺60a2を長辺とする長方形状となっている。そのため、規制ベルト60の表裏を反転するような捻じれに対する強度が確保しやすい。また、ラップベルト部13の長手方向に沿って板状部60aを数多く配置しやすくなり、接続部60bの数も増やしやすくなるため、規制ベルト60が乗員Mの腰部MW回りに沿うように曲がりやすくなる。その結果、エアバッグ30の導管部30bの捩じれを抑制する効果や、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下することを抑制する効果を向上させることができる。なお、この点を考慮しなければ、板状部60aの形状は長方形に限られず、他の多角形や円形等であってもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、板状部60aを十二個有し、接続部60bを十一個有する規制ベルト60を例示したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、板状部60aや接続部60b数は、板状部60aが二つ以上、接続部60bが一つ以上あれば任意であり、規制ベルト60の長手方向の長さなどに応じて適宜設定することができる。しかし、これらの個数が多い方が、上記の通り乗員Mの腰部MW回りに規制ベルト60やラップベルト部13を沿わせやすくなるため好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、板状部60aと接続部60bとを同じ材料で形成し、これらの厚みを変えることによって両者の剛性を変える構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、接続部60bの剛性が板状部60aの剛性より低く構成されていれば剛性の調整方法は本実施形態のものに限られない。例えば接続部60bを板状部60aより剛性が低い材料で形成し、両者をビス等で固定する構成としてもよい。但し、本実施形態のように板状部60aと接続部60bとを同じ材料で形成し、形状を変えることによって剛性を調整することにより、規制ベルト60を簡易に製造しやすくなるため好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の図面を使用し、又は同一の符号を用いて説明を簡略化若しくは省略する。
【0037】
本実施形態に係る乗員保護装置10は、第1実施形態の規制ベルト60の代わりに規制ベルト90が設けられている点のみ第1実施形態の構成と異なる。つまり本実施形態に係る乗員保護装置10の構成は、規制ベルト60の構造を除いて、第1実施形態の構成と同じである。なお、規制ベルト90の収納部位についても、第1実施形態と同様にバッグ連結部52の規制ベルト挿通部52bである。そのため、本実施形態においても、規制ベルト90はラップベルト部13とエアバッグ30の導管部30bとの間に配置されており、導管部30bを支持し、導管部30bの捻じれを規制している。また、ラップベルト部13と規制ベルト90の長手方向、厚み方向、及び長手方向と厚み方向とに直交する幅方向はそれぞれ同じ方向である。
【0038】
図8は、エアバッグ30が膨張した状態のバッグ組付体29を下方から見た斜視図であって、エアバッグカバー59は省略している。
図9は、規制ベルト90の正面図(
図9A)と平面図(
図9B)と分解斜視図(
図9C)である。
【0039】
図8、
図9に示す様に、規制ベルト90(規制部材)は、ラップベルト部13の長手方向と厚み方向とに直交する幅方向の中心に配置される複数の板状の中駒90aと、ラップベルト部13の幅方向において中駒90aの両側に配置される複数の板状の外駒90bを備える。すなわち、複数の中駒90aと複数の外駒90bはそれぞれラップベルト部13の長手方向に沿って並設されている。本実施形態では、中駒90aや外駒90bはアルミ等の金属で形成されており、これらの剛性はラップベルト部13やエアバッグ30の導管部30bの剛性より高く構成されている。ラップベルト部13の長手方向において、中駒90aと外駒90bの中心位置C1、C2はずれて配置されており、一つの中駒90aの両側に配置される二つの外駒90bの中心位置C2は一致するように配置されている。
【0040】
ラップベルト部13の長手方向における中駒90aの一端と他端には、ラップベルト部13の幅方向に貫通するピン孔90a1が形成されている。同様に、ラップベルト部13の長手方向における外駒90bの一端と他端には、ラップベルト部13の幅方向に貫通するピン孔90b1が形成されている。ピン孔90a1、90b1は、ラップベルト部13の長手方向の同じ位置に配置されて孔同士が連通しており、これらのピン孔90a1、90b1にピン90cが挿入されることによって中駒90aと外駒90bが連結される。なお、中駒90aのピン孔90a1には、ピン90cの挿入前にC字状のCリング90dが挿入される。
【0041】
上記連結構成により、中駒90aと外駒90bは、ピン90cを中心に回動可能に構成される。具体的には、外駒90bと中駒90aは、相対移動するようにそれぞれ回動可能に構成される。また、ラップベルト部13の長手方向に隣接する二つの中駒90aのうち、一方の中駒90aは他方の中駒90aに対して当該長手方向と交差する方向に回動可能に構成される。また、ラップベルト部13の長手方向に隣接する二つの外駒90bのうち、一方の外駒90bは他方の外駒90bに対して当該長手方向と交差する方向に回動可能に構成される。
【0042】
すなわち、複数の中駒90aのうち、一つの中駒90aは第1板状部の一例であり、ラップベルト部13の長手方向において当該中駒90aに隣接して配置された中駒90aは第2板状部の一例である。また、複数の外駒90bのうち、一つの外駒90bは第1板状部の一例であり、ラップベルト部13の長手方向において当該外駒90bに隣接して配置された外駒90bは第2板状部の一例である。見方を変えれば、外駒90bは、ラップベルト部13の長手方向において隣接する二つの中駒90aを連結するとともに、一方の中駒90aが他方の中駒90aに対して回動可能となるようにこれらの中駒90aを保持する連結部材である。同様に、中駒90aは、ラップベルト部13の長手方向において隣接する二つの外駒90bを連結するとともに、一方の外駒90bが他方の外駒90bに対して回動可能となるようにこれらの外駒90bを保持する連結部材である。
【0043】
このような構成により以下の効果を奏する。すなわち、エアバッグ30の導管部30bより剛性が高い中駒90aや外駒90bを有する規制ベルト90が上記位置に設けられていることにより、中駒90aや外駒90bの剛性によってエアバッグ30の導管部30bがその表裏が反転するように捻じれ難くなる。
【0044】
また、規制ベルト90は、ラップベルト部13の長手方向において隣接する二つの中駒90aのうち、一方の中駒90aが他方の中駒90aに対して当該長手方向と交差する方向に回動可能に構成されている。同様に、当該長手方向において隣接する二つの外駒90bのうち、一方の外駒90bは他方の外駒90bに対して当該長手方向と交差する方向に回動可能に構成されている。そのため、中駒90aや外駒90bのこれらの回動部分が関節のように機能し、規制ベルト90が乗員Mの腰部MW回りに沿うように曲がりやすくなり、規制ベルト90によってラップベルト部13が曲がりにくくなることが抑制される。したがって、ラップベルト部13と乗員Mの腰部MWとの間に隙間ができにくくなることから、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下することや、ラップベルト部13の装着性が悪化することが抑制される。
【0045】
そのため、本実施形態の乗員保護装置10によれば、エアバッグ30の導管部30bの捩じれを抑制するとともに、ラップベルト部13による乗員Mの拘束性能が低下することを抑制することができる。
【0046】
なお、規制ベルト90を構成する中駒90aや外駒90bの数は
図9で示した数に限られず、規制ベルト90の長手方向の長さなどに応じて適宜設定することができる。但し、これらの個数が多い方が、乗員Mの腰部MW回りに規制ベルト90やラップベルト部13を沿わせやすくなるため好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、規制ベルト90が中駒90aと外駒90bとを有する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、
図10に示す様に、本実施形態に係る一つの中駒90aとその両側に配置される二つの外駒90bとを一体化して一つの板状の駒部材90xとしてもよい。
【0048】
本構成においては、駒部材90xは、ラップベルト部13の幅方向に貫通する三つのピン孔90x1、90x2、90x3を有している。なお、ピン孔90x2、90x3は必ずしも貫通している必要はなく、規制ベルト90の幅方向の端面に底部を有していてもよい。ラップベルト部13の長手方向に隣接する二つの駒部材90xは、次のように連結される。すなわち、一方の駒部材90xのピン孔90x1(第1穴部)と他方の駒部材90xのピン孔90x2、90x3(第2穴部)とが連通する位置にこれらの駒部材90xを配置し、この連通したピン孔90x1~90x3にピン90h(軸部材)を挿通することによって連結される。なお、ピン孔90x1には、ピン90hの挿入前にC字状のCリング90gが挿入される。
【0049】
このような構成により、ラップベルト部13の長手方向において隣接する二つの駒部材90xのうち、一方の駒部材90xは他方の駒部材90xに対し、ピン90hを中心にラップベルト部13の長手方向と交差する方向に回動可能に構成される。つまり当該一方の駒部材90xは第1板状部の一例であり、当該他方の駒部材90xは第2板状部の一例である。このような構成としても、上記同様のメカニズムにより、上記同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、第1実施形態、第2実施形態では、バッグ連結部52に規制ベルト60、90を収納する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、規制ベルト60、90がラップベルト部13とエアバッグ30の導管部30bとの間に配置される構成であれば、規制ベルト60、90はエアバッグカバー59等の他の部材に収納される構成としても、上記同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、第1実施形態、第2実施形態では、規制ベルト60、90がエアバッグ30の導管部30bを部分的に支持する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、規制ベルト60、90とこれらの収納部の長さを延ばして、規制ベルト60、90が導管部30bのほぼ全域を支持する構成としても上記同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、第1実施形態、第2実施形態では、シートベルト11がショルダーベルト部12とラップベルト部13を備えるいわゆる三点式のシートベルト11を例示して乗員保護装置10を説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、シートベルト11がショルダーベルト部12を備えずにラップベルト部13を備えるいわゆる二点式のシートベルト11に本発明を適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…シート、10…乗員保護装置、11…シートベルト、13…ラップベルト部、24…インフレーター、30…エアバッグ、30a…バッグ本体部、30b…導管部、52…バッグ連結部(保持部材)、60…規制ベルト(規制部材)、60a…板状部、60a1…辺(短辺)、60a2…辺(長辺)、60b…接続部、90…規制ベルト(規制部材)、90a…中駒(第1板状部、第2板状部、連結部材)、90b…外駒(第1板状部、第2板状部、連結部材)、90h…ピン(軸部材)、90x…駒部材(第1板状部、第2板状部)、M…乗員、MW…腰部