(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104164
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】籾摺・調製設備
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20250702BHJP
B02B 1/02 20060101ALI20250702BHJP
B02B 5/02 20060101ALI20250702BHJP
B02B 7/00 20060101ALI20250702BHJP
F26B 17/14 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
G06Q50/02
B02B1/02
B02B5/02 A
B02B7/00 C
F26B17/14 B
F26B17/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001549
(22)【出願日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2023220621
(32)【優先日】2023-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】梶山 慎介
【テーマコード(参考)】
3L113
4D043
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AC82
3L113AC86
3L113AC90
3L113BA03
3L113CA02
3L113CA05
3L113DA24
3L113DA25
4D043AA02
4D043KA02
4D043LA18
4D043LA20
4D043MA01
4D043MA04
4D043MA09
4D043MA14
4D043MA23
4D043MA30
(57)【要約】
【課題】籾殻の除去、屑米の除去を行ったとしても、正確に籾摺・調製設備の作業完了時間を予測することができる。
【解決手段】籾摺・調製設備20には、演算手段による品位結果及び選別結果を少なくとも含む穀物の調製データを蓄積するサーバー30と、作業者に対して情報を提供する携帯端末40と、を備え、さらに、各センサ、サーバー30及び携帯端末40はネットワーク60を介して相互に通信可能に構成されており、サーバー30には、粒選別機23における屑粒の除去率の多寡及び/又は光学選別機24における不良品の除去率の多寡に基づいて、袋詰め計量機25における単位時間当たりの袋詰数又は単位時間当たりの流量から作業完了予測時間を演算するプログラムを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を所定の水分値まで乾燥処理する穀物乾燥機と、前記穀物乾燥機により乾燥処理された穀物を籾摺選別する籾摺選別機と、前記籾摺選別機により籾摺選別処理された玄米を粒選別する粒選別機と、前記粒選別機により粒選別された整粒玄米を良品と不良品とに選別するとともに、選別された不良品を、さらに、着色粒、被害粒、青未熟粒、籾及び異物が、それぞれどの程度の割合で混入しているかを品位ごとに集計する演算手段を備えた光学選別機と、前記光学選別機により選別されて得られた精品を計量・袋詰めする計量袋詰め機と、を備えた籾摺・調製設備において、
前記穀物乾燥機には乾燥籾の量や乾燥籾の水分を把握するセンサを、前記籾摺選別機には機械から排出される精品玄米の流量及び/又は籾殻の流量を把握するセンサを、前記粒選別機には機械から排出される整粒玄米の流量及び/又は屑米の流量を把握するセンサを、前記袋詰め計量機には精品の袋詰め数及び/又は精品の流量を把握できるセンサを、それぞれ設ける一方、前記籾摺・調製設備には、前記演算手段による前記品位結果及び前記選別結果を少なくとも含む穀物の調製データを蓄積するサーバーと、作業者に対して情報を提供する携帯端末と、を備え、
さらに、前記各センサ、前記サーバー及び前記携帯端末はネットワークを介して相互に通信可能に構成されており、
前記サーバーには、前記粒選別機における屑粒の除去率の多寡及び/又は前記光学選別機における不良品の除去率の多寡に基づいて、前記袋詰め計量機における単位時間当たりの袋詰数又は単位時間当たりの流量から作業完了予測時間を演算するプログラムが備えられていることを特徴とする籾摺・調製設備。
【請求項2】
前記携帯端末には、前記サーバーのプログラムにより演算された作業完了予測時間と、前記光学選別機の演算手段により演算された品位の詳細な分析結果を示すグラフと、を同時に表示してなる請求項1記載の籾摺・調製設備。
【請求項3】
前記携帯端末には、農業データ連携プラットフォームから得られたデータに基づく次年度の対策を考慮した栽培管理指針を表示可能としてなる請求項2記載の籾摺・調製設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺・調製設備に関し、籾摺・調製設備の下流域、特に、籾摺選別機から袋詰め計量機までの作業完了時間を予測するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、籾摺・調製設備における作業完了時間予測システムとして、特許第6876243号公報の段落[0039]と、段落[0040]に記載された技術がある。この段落[0039]と、段落[0040]に記載された技術は、袋詰め作業開始から5分間で袋詰めされる袋詰めされた袋数を計測して能率(例えば、5袋(約150kg)/5分=1袋(約30kg)/分)を算出し、穀物乾燥機から排出される残りの籾の量を、袋詰めの能率で除算することで、籾摺・調製作業の作業完了時間を予測するものである。例えば、乾燥終了時点の籾の重量が1600kgで、袋詰め作業開始から5分間で袋詰めされた袋数が5袋(約150kg)で、穀物乾燥機から排出された籾量が160kgであった場合には、残りの籾を袋詰めするのに要する時間は約45分(((1600-160)/160)×5=45)と演算できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の作業完了時間予測システムでは、原料流量の多寡によって作業完了時間の予測にばらつきが生じることがある。すなわち、籾摺選別機においては、籾から籾殻が除去されて玄米が生成され、粒選別機においては、籾摺後の玄米から屑米が除去されるから、年による豊作・凶作などの作柄や、圃場ごとの籾の生育度合いによって、籾摺・調製設備のラインの下流域の機械(例えば、粒選別機の後工程の、光学式選別機および袋詰め計量機など。)では、インプットされる原料流量が異なってくることとなる。このように、ラインの下流域の機械にインプットされる原料流量が異なると、作業完了時間の予測値がばらつくこととなる。
【0005】
本発明は上記問題点にかんがみ、籾殻の除去、屑米の除去を行ったとしても、正確に籾摺・調製設備の作業完了時間を予測することのできるシステムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、穀物を所定の水分値まで乾燥処理する穀物乾燥機と、前記穀物乾燥機により乾燥処理された穀物を籾摺選別する籾摺選別機と、前記籾摺選別機により籾摺選別処理された玄米を粒選別する粒選別機と、前記粒選別機により粒選別された整粒玄米を良品と不良品とに選別するとともに、選別された不良品を、さらに、着色粒、被害粒、青未熟粒、籾及び異物が、それぞれどの程度の割合で混入しているかを品位ごとに集計する演算手段を備えた光学選別機と、前記光学選別機により選別されて得られた精品を計量・袋詰めする計量袋詰め機と、を備えた籾摺・調製設備において、
前記穀物乾燥機には乾燥籾の量や乾燥籾の水分を把握するセンサを、前記籾摺選別機には機械から排出される精品玄米の流量及び/又は籾殻の流量を把握するセンサを、前記粒選別機には機械から排出される整粒玄米の流量及び/又は屑米の流量を把握するセンサを、前記袋詰め計量機には精品の袋詰め数及び/又は精品の流量を把握できるセンサを、それぞれ設ける一方、前記籾摺・調製設備には、前記演算手段による前記品位結果及び前記選別結果を少なくとも含む穀物の調製データを蓄積するサーバーと、作業者に対して情報を提供する携帯端末と、を備え、
さらに、前記各センサ、前記サーバー及び前記携帯端末はネットワークを介して相互に通信可能に構成されており、
前記サーバーには、前記粒選別機における屑粒の除去率の多寡及び/又は前記光学選別機における不良品の除去率の多寡に基づいて、前記袋詰め計量機における単位時間当たりの袋詰数又は単位時間当たりの流量から作業完了予測時間を演算するプログラムを備える、という技術的手段を講じた。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記携帯端末には、前記サーバーのプログラムにより演算された作業完了予測時間と、前記光学選別機の演算手段により演算された品位の詳細な分析結果を示すグラフと、を同時に表示することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明では、前記携帯端末には、農業データ連携プラットフォームから得られたデータに基づく次年度の対策を考慮した栽培管理指針を表示可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記穀物乾燥機には乾燥籾の量や乾燥籾の水分を把握するセンサを、前記籾摺選別機には機械から排出される精品玄米の流量及び/又は籾殻の流量を把握するセンサを、前記粒選別機には機械から排出される整粒玄米の流量及び/又は屑米の流量を把握するセンサを、前記袋詰め計量機には精品の袋詰め数及び/又は精品の流量を把握できるセンサを、それぞれ設ける一方、籾摺・調製設備には、演算手段による品位結果及び選別結果を少なくとも含む穀物の調製データを蓄積するサーバーと、作業者に対して情報を提供する携帯端末と、を備え、
さらに、各センサ、サーバー及び携帯端末はネットワークを介して相互に通信可能に構成されており、
サーバーには、粒選別機における屑粒の除去率の多寡及び/又は光学選別機における不良品の除去率の多寡に基づいて、袋詰め計量機における単位時間当たりの袋詰数又は単位時間当たりの流量から作業完了予測時間を演算するプログラムを備えたので、籾殻の除去、屑米の除去を行ったとしても、正確に籾摺・調製設備の作業完了時間を予測することのできるシステムを提供することができる。
【0010】
さらに、請求項2のように、携帯端末に、サーバーのプログラムにより演算された作業完了予測時間と、光学選別機の演算手段により演算された品位の詳細な分析結果を示すグラフと、を同時に表示することにより、正確に籾摺・調製設備の作業完了時間を予測するとともに、作業完了時間が遅いロットについて良品とそれ以外の不良品とに区分した分析結果を示し、作業完了時間が早いロットとの品位の比較ができる。
【0011】
そして、請求項3のように、携帯端末に、農業データ連携プラットフォームから得られたデータに基づく次年度の対策を考慮した栽培管理指針を表示可能とすれば、作業完了時間が遅い(すなわち品位の悪い)ロットについての次年度の対策を考慮した栽培管理指針(アドバイス)を作業者に対し提供できるので、水稲栽培において極めて有用な技術となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る概略ブロック図である。
【
図3】光学選別機の制御回路を示すブロック図である。
【
図4】表示部の画面に表示された分析結果の表示例である。
【
図5】栽培管理システムの携帯端末画面に表示された作業者に提供する栽培管理の事例である。
【
図6】各種調製機械から集められた集計データに基づき、作業完了時間を予測した演算結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る概略ブロック図である。
【0015】
(全体構成)
本発明の実施形態に係る籾摺・調製設備10は、個人の農家や、営農法人が想定する経営規模としては、圃場面積が1~3ha(ヘクタール)程度の中規模から30ha(ヘクタール)以上の大規模を含むものとなっている。
図11に示すように本発明の実施形態に係る籾摺・調製設備10は、穀物調製ライン20と、穀物調製ラインでの穀物の調製加工データを蓄積するサーバー30と、携帯端末40と、民間又は公的機関によって農業に関するあらゆるデータを集約した農業データ連携プラットフォーム50とを、通信回線60を介して接続している。通信回線60は、例えばLAN(Local Area Network)やインターネット回線などのネットワークで構成されている。このネットワークは有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0016】
(穀物調製ライン)
穀物調製ライン20は、作業場や加工場など建家内に設置される。建家は、個人の農家にあっては納屋や作業場、大規模な営農法人にあっては、ライスセンタや加工場が想定される。穀物調製ライン20は、圃場内を移動しながら収穫する圃場機械(field machinery、例えば、コンバイン)に対し、建家の中に固定された屋内機械(barn machinery)である。圃場機械で収穫した収穫物を建家まで運んできて調製加工する。穀物調製ライン20は、例えば、穀物の乾燥を行う穀物乾燥機21と、穀物乾燥機で乾燥した乾燥籾を放冷する放冷タンク(図示せず)と、放冷後の籾を脱ぷして玄米に仕上げる籾摺選別機22と、該籾摺選別機22で得られた玄米を基準に合った粒径と基準外の粒径とに粒の径(厚み(大きさ))により選別を行う粒選別機23と、該粒選別機23で得られた整粒玄米を光学的な方法によって穀物検査を行う光学選別機24と、該光学選別機24により光学選別した後の精品となる玄米を計量・袋詰めして出荷を行う計量袋詰め機25とを、一ラインに接続して構成されている。
【0017】
(穀物乾燥機)
穀物乾燥機21は、穀粒の貯槽となる貯留部211と、貯留部211から流下する穀粒に対し、バーナによって加熱した空気を送給させて乾燥を行う乾燥部212と、乾燥部212から排出された穀粒を上部の貯留部211に返還する揚穀部213とを備えた循環式穀物乾燥機を採用することができる。
【0018】
貯留部211の正面壁には、貯留部211内における穀粒の堆積高さ及び貯留部2内部の様子を外部から目視で確認するための、透明部材からなる窓214…が高さ方向に複数形成されている。窓214の形状、大きさ、数及び位置は特に限定されることはない。また、窓214…に隣接する位置には、作業者が穀粒の堆積高さを目安として目視で把握することのできる文字盤215が併設されている。さらに、穀粒の堆積高さを目視で把握するのではなく、自動的に検知できるような技術的手段を採用してもよい。例えば、貯留部211の内壁には、窓214…及び文字盤215…が設置される高さ位置に、穀粒の有無を検知することのできる穀粒検知センサ216…をそれぞれ設けることとしてもよい。これにより、穀粒の堆積高さを、穀粒検知センサ216…により機械的に把握することができるため、作業者(人間)の個人差や作業者の見る角度による誤差をなくし、堆積高さの把握をより正確に行うことができる。
【0019】
この外、前述の貯留部211内における穀粒の堆積高さを検知するセンサとして、貯留部211内の上部に設置したマイクロ波を使ったレベル計217を採用してもよい(例えば、特許第7344445号公報の段落[0016]など。ここでの詳細な説明は省略する。)。さらに、貯留部211内における穀粒の貯留量を計測するために、穀物乾燥機21の土台部分にロードセルなどの重量センサ218を設けることとしてもよい。
【0020】
揚穀部213の側壁には、水分計219が設置されており、この水分計219により穀物の荷受(張込)時や、穀物の乾燥(通風乾燥、熱風乾燥)時や、穀物の排出(乾燥仕上がり時)時の水分を測定している。
【0021】
(籾摺選別機)
籾摺選別機22は、一対のロールからなる脱ぷ部221と、脱ぷ部221により摺落とされた摺落米を風選して籾殻を除去する風選部222と、風選部222により風選された混合米を玄米と籾とに選別を行う揺動選別部223とを備えた揺動式の籾摺選別機を採用することができる。
【0022】
籾摺選別機22には、脱ぷされた摺落米をサンプリングし、発光素子から受光素子へ投光されるセンサ光を透過させ、このセンサ光の摺落米に対する透過率によって、玄米か籾かを判別する脱ぷ率センサ224が備えられる。
また、籾摺選別機22は、その駆動部の電気諸量(例えば、電流値、電力値又は電力量等)を計測する電気諸量計測部225を備えている。脱ぷ率センサ224及び電気諸量計測部225による計測値により、基準内か否かによって籾摺選別機22に供給される籾の性状を知ることができる。
さらに、籾摺選別機22には、精品排出筒226から排出される精品玄米の流量を把握することのできる流量センサ(玄米)227、及び籾殻排出筒228から排出される籾殻の流量を把握することができる流量センサ(籾殻)229が設けられる。
【0023】
(粒選別機)
粒選別機23は、玄米を整粒と未熟粒とに選別する選別網筒が内装してある。未熟粒の混入量が多いと商品価値が低下したり、その年の稲の生育状況が悪いことの指標となったりする。例えば、稲作期間中の異常低温と極度の日照不足や、稲作期間中の連日の猛暑による異常高温は、稲の生育不良の原因となり、籾の中に極めて貧弱な実(未熟粒)が入っていたり、中には籾の中に実が稔らない不稔(ふねん)粒となったりする。
【0024】
そこで、粒選別機23には、選別網筒を通過しない整粒を袋受けして計量する整粒計量器231と、選別網筒を通過した未熟粒などを袋受けして計量する屑粒計量器232と、を備えている。整粒と未熟粒との選別割合を知ることで、整粒の歩留りを算出したり、その年の稲の生育状況の判別の指標に利用したりすることができる。そして、整粒計量器231からは、時間あたりの重量を計測すれば、整粒玄米の流量を算出することができ、屑粒計量器232からは、時間あたりの重量を計測すれば、屑粒の流量を算出することができる。また、次工程の光学選別機24に連絡したい場合は、整粒排出樋233を233a,233bの二股に設けるとともに、切り換え弁(図示せず)を設け、整粒の流量を知りたいときのみ整粒を排出する排出の方向を、整粒排出樋を233bに切り換える仕様とすればよい。
【0025】
(光学選別機)
光学選別機24は、粒選別機23により粒径選別された整粒玄米を、良品と不良品とに選別するとともに、選別された不良品を、さらに、害虫による着色粒、ヤケ米による被害粒、青未熟粒、籾、乳白粒などの着色粒、及び小石などの異物が、それぞれどの程度の割合で混入しているか品位ごとに詳細に調べることができるものである。
【0026】
図2に示すように、光学選別機24は、被選別部の供給部としてのフィーダ24aと、フィーダ24aから受けた被選別物を流下させるシュート24bと、シュート24bにより流下させシュート24b下端から放出させた被選別物の良否を検査する光学選別部24cと、光学選別部24cにより良否を検査した被選別物のうち不良品のみを排除する(又は良品のみを排除する)ための排除部24dと、被選別物の良品と被選別物の不良品とをそれぞれ分別して回収する排出ホッパ24eと、を備えて構成されている。
【0027】
供給部としてのフィーダ24aは、タンク241と、タンク241からの被選別物を受けるトラフ242と、トラフ242に振動を付与する加振部243とを備える。被選別物を流下させるシュート24bは、所定幅を有していてトラフ242の先端側下方位置に傾斜した状態で配置され、トラフ242から供給される被選別物を自然流下させる構成となっている。
【0028】
光学選別部24cは、シュート24bの下端から落下する被選別物の落下軌跡の前後に配設される一対の光学検出部244a,244bと、この光学検出部244a,244bの撮像信号に基づいて被選別物を良品と不良品とを判別する演算手段245と、を有している。演算手段245は、さらに、被選別物を不良品と判断した集合物について、複数の品位に判別することが可能である。すなわち、演算手段245は、不良品と判断した集合物を、害虫による着色粒、ヤケ米による被害粒、青未熟粒、籾、乳白粒などの着色粒及び異物の6種類に品位判別し、例えば、操作部の表示用ディスプレイに表示して作業者に知らせることができる。
【0029】
排除部24dは、演算手段245からの信号を受けてエジェクタを駆動するか否かを決定するエジェクタ駆動回路246と、エジェクタ駆動回路246からの排除信号を受けて噴射弁を作動させ不良品を噴風により除去するエジェクタ手段247と、を有している。
【0030】
排出ホッパ24eは、被選別物の流れから良品を回収する良品回収樋248と、エジェクタ手段247により噴風を受けて被選別物の流れから逸脱した不良品を回収する不良品回収樋249と、から構成される。
【0031】
光学選別部24cの演算手段245は、被選別物を良品と不良品とに判別することができることから、これに基づいて、単位あたりの良品の粒数と不良品の粒数とをカウントすることもできる。つまり、良品回収樋248に回収される整粒玄米の流量、及び不良品回収樋249に回収される不良品の流量を把握することができる。
【0032】
(計量袋詰め機)
図1に示すように、計量袋詰め機25は、精品計量器260と、精品計量器260上に載置される米袋などの容器261と、容器261の傾倒を抑止する袋立て器262と、容器261内に精品となる穀物を投入するシャッタ機構263と、を備えて構成される。これにより、シャッタ機構263を開くことによって精品となる穀物が容器261に投入され、精品計量器260によって計量された所定の計量値に達すると、シャッタ機構263のシャッタが自動的に閉鎖して、精品となる穀物の計量・袋詰めが完了するという仕組みである。計量表示部264では、計量・袋詰めの完了信号を記憶し、現在の袋詰め数をカウントして表示するとともに、精品計量器260からの時間あたりの重量から算出した整粒の流量を表示する。
【0033】
(センサ類)
図1に示す穀物調製ライン20においては、例えば、複数のセンサ類及び制御手段が通信回線60に接続されている。具体的には、穀物乾燥機21からは穀粒検知センサ216、レベル計217、重量センサ218、水分計219が通信回線60に接続される。これにより、穀物乾燥機21に貯留されている乾燥仕上げ籾の量や水分を把握することができる。籾摺選別機22からは流量センサ(玄米)227及び流量センサ(籾殻)229が通信回線60に接続される。これにより、籾摺選別機22に供給された乾燥仕上げ籾のうち、籾殻がどの程度除去され、玄米がどの程度仕上がったかを把握することができる。粒選別機23からは整粒計量器231及び屑粒計量器232が通信回線60に接続される。これにより、粒選別機23に供給された仕上げ玄米のうち、未熟粒がどの程度除去され、整粒玄米がどの程度仕上がったかを把握することができる。光学選別機24からは演算手段245及びエジェクタ駆動手段246が通信回線60に接続される。これにより、光学選別機24に供給された整粒玄米のうち、着色粒などの不良品がどの程度除去され、良品(精粒)がどの程度仕上がったかを把握することができる。計量袋詰め機25からは精品計量器260が通信回線に接続される。これにより、精品を袋詰めした後の紙袋の数や、時間あたりに仕上がる精品の流量を把握することができる。
【0034】
(サーバー)
図1に示すサーバー30は、外部の端末と情報の送受信を行うWebサーバーと、各種データを蓄積してデータベースとして機能させるファイルサーバと、クライアントコンピュータやタブレット端末にインストールが必要なアプリケーションを配信するためのアプリケーションサーバなど汎用的な基本機能を備えたものである。サーバー30についても、通信回線60に接続されている。
【0035】
(携帯端末)
携帯端末40は、圃場や穀物調製ラインなど現場において携帯して閲覧ができる閲覧用の複数のタブレット端末とするのがよい。該タブレット端末の代替機としては、ノート型の汎用パーソナルコンピュータやスマートフォンであってもよい。携帯端末40は、通信回線60に接続される。
【0036】
(農業データ連携プラットフォーム)
農業データ連携プラットフォーム50は、農業に関する土壌や、市況や、気象等の公的データや、民間企業の様々な有償データ等を整備・提供することで、データを活用した新たなサービスの提供や農家の戦略的な経営判断を実現することを目的とするものであり、民間又は公的機関が主催している。
【0037】
図1に示す農業データ連携プラットフォーム50は、例えば、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が主催する「WAGRI」を活用することができる。このプラットフォーム50には、過去の収量データ、市況データ、土壌データ及び農地データを格納した農業用データベース501と、農業用の気象データを格納した気象用データベース502と、過去の履歴を参照することのできる過去履歴データベース503と、を備えて構成される。これらデータベース501,502,503は、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)の形で提供され、ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に向けて公開されているから、このデータベースを利用する第三者が開発したソフトウェアと機能とを共有できる仕組みである。このプラットフォーム50は、通信回線60に接続される。
【0038】
(光学選別機の制御回路構成)
次に、前記光学選別機24の制御回路について詳述する。光学選別機24の演算手段245は、被選別物を良品と不良品とに判別し、さらに、不良品を、害虫による着色粒、ヤケ米による被害粒、青未熟粒、籾と、乳白粒などの着色粒及び小石などの異物に品位判別するものである。
【0039】
図3は光学検出部244a,244bの制御回路を示すブロック図である。光学検出部244a,244bは、例えば、CCDラインセンサにより構成される。CCDラインセンサは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に感度を有するR素子250、G素子251、B素子252を備えている。受光信号は、R素子250、G素子251、B素子252に供給され、それぞれR信号、G信号、B信号に光電変換されて出力される。R,G,B信号は、演算手段245内に設けた増幅器253,254,255にそれぞれ入力され、さらに、信号処理回路256に入力される。
【0040】
信号処理回路256では、R,G,Bの各信号の入力値を二値化するとともに、加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って信号変換を行う。この信号変換は、光学検出部244a,244bで受光した信号を特徴づけて被検査物を特定することである。この信号が比較回路257に入力されることで、被検査物の品位判別、良否判別が行われる。
【0041】
符号258は遅延回路である。光学検出部244a,244bで被検査物を観察する位置と、エジェクタ手段247により不良品を排除する排除位置と、の距離に応じて、噴射タイミングを決定するものである。前記比較器257から遅延回路258を経て排除信号がエジェクタ駆動回路246に出力される。エジェクタ駆動回路246により決定した排除信号はエジェクタ手段247に出力される。
【0042】
(品位判別アルゴリズム)
図3に示す信号処理回路256では、被検査物の各粒について二値化処理を行って得られたR,G,Bの各値から、分光比R/Gと、分光比R/Bと、を演算する。そして、この演算した値を、比較回路257に格納された判別式(例えば、特開平9-292344号公報の
図6乃至
図10などを参照)と比較し、例えば、6種類の品位に判別する。6種類の品位判別区分として、(a)害虫による被害粒(カメムシ被害粒)とそれ以外は良品と区分し、(b)ヤケ米による着色粒とそれ以外は良品と区分し、(c)青未熟粒とそれ以外は良品と区分し、(d)乳白粒とそれ以外は良品と区分し、(e)籾とそれ以外は良品と区分し、(f)異物とそれ以外は良品と区分する、といったプログラムをあらかじめ組んでおくと、品位判別の統計処理を速やかに実行することができる。
【0043】
(表示部)
図3の符号259は光学選別機の表示部である。光学選別時の品位結果や選別結果を表示するとともに、光学選別機の操作部を兼ねている。
【0044】
図4は表示部259の画面259aに表示された分析結果の表示例である。
図4(a)に示すものは、良品とそれ以外の不良品とに区分した結果を示し、本実施例では、良品が93%、不良品が7%の占有率であった。
図4(b)に示すものは、良品が93%、不良品が7%の占有率であり、不良品7%のうち、青未熟が2%であり、残りの、異物が1%、籾が1%、乳白粒が1%、ヤケ米による着色粒が1%、害虫による着色粒が1%、の結果であった。
【0045】
(栽培管理システム)
図1に示す栽培管理システム10のサーバー30には、次年度の栽培管理指針を農家に提供する栽培管理プログラムが組み込まれている。すなわち、この栽培管理プログラムでは、前述した穀物調製ライン20の各種調製機械から得られたデータと、前述した農業データ連携プラットフォーム50の各種サーバーから得られたデータとを参照し、今年度の圃場での稲の栽培条件など農家に対してフィードバックし、次年度の栽培管理(例えば、翌年の灌水、施肥、農薬散布時期)に役立てることができる。
【0046】
図5は、栽培管理システム10の携帯端末40の画面40aに表示された農家に提供する栽培管理の事例である。
図5では、圃場番号と、この圃場番号で収穫した穀物を穀物調製ライン20で調製した後の各種データと、農業データ連携プラットフォーム50から得られたデータとを農家に対してフィードバックし、これに基づき、次年度の栽培管理についてのアドバイスを記述している。
【0047】
例えば、
図5において、No.1の圃場では、穀物調製加工の結果が穀物調製ライン20の各種データから取得されて記録される。この記録から、粒選別機23で選別した屑粒の割合が平年より多く、かつ、光学式選別機24での未熟粒の割合が平年より多かったときは、その根拠や要因が、農業データ連携プラットフォーム50から参照して取得することができる。以上のことから、次年度の対策としては、「施肥管理」「刈り取り時期」を考慮した栽培管理指針(アドバイス)を農家に対して提供できるのである。
【0048】
同様に、
図5において、No.2の圃場では、次年度の栽培管理指針(アドバイス)として、収穫時の雨を考慮して「刈り取り前後の管理」を考慮することを農家に対し提供することができる。
図5において、No.3の圃場では、次年度の栽培管理指針(アドバイス)として、「種籾消毒や害虫防除計画」を重視することを農家に対し提供することができる。
【0049】
このような栽培管理指針(アドバイス)に限らず、籾摺選別機22の脱ぷ率が平年よりも低く、かつ、光学選別機24での籾の割合が平年より多かったときは、携帯端末40の画面40aに警報を発することもできる。脱ぷ率が平年よりも低い場合、籾摺選別機22の能力が通常よりも劣っている可能性があるため、警報を発して、籾摺選別機22の調整やメンテナンスを促すように農家に対してお知らせするとよい。
【0050】
次に、本発明の要部となる籾摺・調製設備における作業完了時間予測システムの演算手法について説明する。作業完了予測時間を演算するプログラムはサーバー30に格納されている。
図6は、各種調製機械から集められた集計データに基づき、作業完了時間を予測した演算結果の一例である。
図6(a)は、ロットNo.1からロットNo.3における作業完了予測時間を示した表であり、
図6(b)はロットNo.3(品質不良)の品位の詳細な分析結果を示すグラフであり、
図6(c)はロットNo.3(品質不良)に対しての次年度の栽培管理指針(アドバイス)を示す表である。
【実施例0051】
図6(a)において、ロットNo.1の作業完了予測時間を概観してみる。まず、穀物乾燥機21において、荷受時の初期水分が26.2%であり、穀物乾燥機21に16石(籾の1石が100kgであるとする。)の1600kgを張り込んで、仕上げ水分15.5%まで乾燥するとすれば、乾燥後の籾の重量は、以下の式で算出することができる。
【数1】
【0052】
上記式1により、ロットNo.1の籾の乾燥重量は1397kgと試算される。このほか、穀粒検知センサ216、レベル計217又は重量センサ218を使用して誤差が生じないよう籾の乾燥重量を実測してもよい。次に、乾燥済の籾は、籾摺選別機22、粒選別機23、光学選別機24及び計量袋詰め機25に順次供給され、処理が行われていくが、このとき、特許第6876243号公報の段落[0027]に記載のように籾摺の開始から所定時間、例えば、5分間の袋数又は製品重量をカウントして選別機による能率を換算し、併せて穀物乾燥機の籾の残重量から換算して作業完了予測時間を算出することができる。
【0053】
実施例1では、籾摺の開始から5分間の間に籾摺選別機22に供給される籾の量は(1398-1184.5)=213.5kgであった。
【0054】
籾摺選別機22は脱ぷ率が80%程度であれば、供給された籾の重量に対して約2割が籾殻として除去される。籾殻として除去される量を推定するため、このほか、玄米が精製される量を流量センサ(玄米)227や、籾殻として除去される量を流量センサ(籾殻)229などで実測することとしてもよい。実施例1では、2割の籾殻が除去されたため、粒選別機23に供給される玄米の量は170kgであった。
【0055】
粒選別機23では、供給された玄米に対して5~20%の範囲で小米などの屑粒が除去される(概算値。玄米の品位の良・不良により除去される量が異なる。)。このほか、整粒計量器231又は屑粒計量器232などで実測することとしてもよい。実施例1では、供給された玄米の重量に対して10%の屑粒が除去されたため、光学選別機24に供給される整粒の量は153kgであった。
【0056】
光学選別機24では、供給された整粒に対して2~10%の範囲で着色粒、青未熟及び異物などの不良品が除去される(概算値。整粒の品位によって除去される不良品の量が異なる。)。このほか、演算手段245及び/又はエジェクタ駆動手段246により、着色粒などの不良品がどの程度除去され、良品(精粒)がどの程度仕上がったかを実測することしてもよい。実施例1では、供給された整粒の重量に対して2%の不良品が除去されたため、計量袋詰め機25に供給される精品の量は150kgであった。
【0057】
計量袋詰め機25では、籾摺の開始から5分間の間に容量30kgの袋に5袋を袋詰めすることができた。流量とすれば30kg/分の作業能率である。以上のことから、穀物乾燥機21の籾の残重量1184.5kgを袋詰めするのに要する時間(作業完了予測時間)は約27.9分((1184.5/212.5)×5=27.87)と演算できる。
実施例2では、籾摺の開始から5分間の間に籾摺選別機22に供給される籾の量は(1414-1224)=190kgであった。ロットNo.1と比較すると、30kg程度少なくなっていた。
籾摺選別機22は脱ぷ率が80%程度であれば、供給された籾の重量に対して約2割が籾殻として除去される。実施例2では、2割の籾殻が除去されたため、粒選別機23に供給される玄米の量は152kgであった。ロットNo.1と比較すると、18kg程度少なくなっていた。
粒選別機23では、供給された玄米に対して5~20%の範囲で小米などの屑粒が除去される。実施例2では、供給された玄米の重量に対して15%の屑粒が除去されたため、光学選別機24に供給される整粒の量は129kgであった。ロットNo.1と比較すると、24kg程度少なくなっていた。
光学選別機24では、供給された整粒に対して2~10%の範囲で着色粒、青未熟及び異物などの不良品が除去される。実施例2では、供給された整粒の重量に対して7%の不良品が除去されたため、計量袋詰め機25に供給される精品の量は120kgであった。ロットNo.1と比較すると、30kg程度少なくなっていた。
計量袋詰め機25では、籾摺の開始から5分間の間に容量30kgの袋に4袋を袋詰めすることができた。流量とすれば24kg/分の作業能率である。以上のことから、穀物乾燥機21の籾の残重量1224kgを袋詰めするのに要する時間(作業完了予測時間)は約32.2分((1224/190)×5=32.21)と演算できる。ロットNo.1と比較すると、約4.4分遅れて作業が終了することとなる。