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特開2025-104414転写シート、転写用基材付き樹脂成形品、及び樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104414
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】転写シート、転写用基材付き樹脂成形品、及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20250703BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20250703BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20250703BHJP
【FI】
B44C1/17 G
B44C1/17 L
B32B7/06
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222191
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】峪中 一行
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昂秀
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005EA07
3B005EB01
3B005EB09
3B005EC01
3B005FA04
3B005FA17
3B005FB03
3B005FB13
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3B005FC02Z
3B005FC08X
3B005FC08Y
3B005FC08Z
3B005FC09X
3B005FE04
3B005FE22
3B005FE39
3B005FF06
3B005FG04X
3B005FG08Y
3B005FG09Y
3B005FG10Y
3B005FG20Y
3B005GA06
3B005GB01
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AK25
4F100AK25B
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4F100AK42A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
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4F100EC04B
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4F100EJ53
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4F100GB33
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4F100JK15
4F100JK15B
4F100JL14
4F100JL14B
4F100JN21
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の表面に対して、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る、転写シートを提供する。
【解決手段】少なくとも、転写用基材と、転写層とが積層された転写シートであって、
前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、転写シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、転写用基材と、転写層とが積層された転写シートであって、
前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、転写シート。
【請求項2】
前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大山の高さSpの比(Sp/Sz)が、0.30以上である、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sz)が、0.40以上である、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzが、8.00以上である、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項5】
前記転写層は、保護層、プライマー層、装飾層、及び接着層からなる群より選択される少なくとも1種の層をさらに含んでいる、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項6】
前記転写層の前記転写用基材側の表面は、保護層により形成されている、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項7】
前記転写層と前記転写用基材との間に、離型層が積層されている、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項8】
前記転写用基材の前記転写層とは反対側に、ブロッキング防止層をさらに備える、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項9】
少なくとも、成形樹脂層と、転写層と、転写用基材とがこの順に積層された、転写用基材付き樹脂成形品であって、
前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、転写用基材付き樹脂成形品。
【請求項10】
少なくとも、成形樹脂層と、転写層とが積層された、樹脂成形品であって、
前記転写層の前記成形樹脂層側とは反対側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シート、転写用基材付き樹脂成形品、及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内外装、建材内装材、家電製品などに使用される樹脂成形品や、無機ガラス代替材料として用いられる有機ガラス等に用いられる樹脂成形品などにおいては、表面保護や意匠性の付与などを目的として、加飾シートを用いた積層技術が用いられている。このような技術に使用される加飾シートとしては、ラミネート型の加飾シートと、転写型の加飾シート(すなわち転写シート)とに大別することができる。
【0003】
ラミネート型の加飾シートは、支持基材上に保護層が最表面に位置するように積層されており、支持基材側に成形樹脂を積層することで、樹脂成形品中に支持基材が取り込まれるように用いられる。一方、転写型の加飾シート(転写シート)は、支持基材(転写用基材)上に直接、または必要により設けられる離型層を介して保護層が積層されており、転写用基材とは反対側に成形樹脂層を積層後、転写用基材を剥離することで、樹脂成形品に転写用基材が残らないようにして用いられる。これら2種類の加飾シートは、樹脂成形品の形状や求める機能などに応じて使い分けがなされている。
【0004】
三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられてきた。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際にインモールド成形用金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体の表面に加飾を施す方法である。さらに、樹脂成形体と一体化される加飾シートの構成の違い(前述のラミネート型と転写型の加飾シート(転写シート))によって、通常、射出成形同時ラミネート加飾法と、射出成形同時転写加飾法とに大別される。
【0005】
射出成形同時転写加飾法においては、転写シートの転写層側を金型の内側に向けて転写シートを配置し、転写層側から熱盤によって加熱し、該転写シートが金型内形状に沿うように成形する。次いで、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出し、射出樹脂を冷却することで成形樹脂層とし、転写シートと成形樹脂層とを一体化する。そして、転写シートが成形樹脂層と一体化された積層体を金型から取り出した後、転写用基材を剥離することにより、転写層を含む樹脂成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-163434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
転写シートによって製造される樹脂成形品の表面の意匠性を向上させるために、樹脂成形品の表面の少なくとも一部を、艶消し調とする技術が知られている。樹脂成形品の表面を艶消し調とする方法としては、例えば、樹脂成形品の表面に微細な凹凸形状を形成する方法が知られている。
【0008】
しかしながら、このような艶消し調の意匠を備える樹脂成形品の表面を手指で触れた場合に、表面に指紋が付きやすいという問題がある。
【0009】
また、転写シートが三次元成形に供される際には、転写シートは、高温高圧環境で成形樹脂層と一体化されて樹脂成形品(加飾樹脂成形品)が製造される。転写層に艶消し調の意匠を備える転写シートが高温高圧環境に曝されることにより、転写層表面の艶消し調の意匠が劣化し、樹脂成形品の表面に対して、優れた艶消し調の意匠を付与することが困難という問題もある。
【0010】
このような状況下、本開示は、樹脂成形品の表面に対して、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る、転写シートを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該転写シートを利用した、転写用基材付き樹脂成形品、及び転写用基材が剥離されてなる樹脂成形品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、転写用基材と、転写層とがこの順に積層された転写シートにおいて、転写層の転写用基材側の表面の少なくとも一部の表面形状を、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が所定値以上となるように調整することで、樹脂成形品の表面に対して、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る、転写シートが得られることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、転写用基材と、転写層とが積層された転写シートであって、
前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、転写シート。
項2. 前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大山の高さSpの比(Sp/Sz)が、0.30以上である、項1に記載の転写シート。
項3. 前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sz)が、0.40以上である、項1又は2に記載の転写シート。
項4. 前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzが、8.00以上である、項1~3に記載の転写シート。
項5. 前記転写層は、保護層、プライマー層、装飾層、及び接着層からなる群より選択される少なくとも1種の層をさらに含んでいる、項1~4のいずれか1項に記載の転写シート。
項6. 前記転写層の前記転写用基材側の表面は、保護層により形成されている、項1~5のいずれか1項に記載の転写シート。
項7. 前記転写層と前記転写用基材との間に、離型層が積層されている、項1~5のいずれか1項に記載の転写シート。
項8. 前記転写用基材の前記転写層とは反対側に、ブロッキング防止層をさらに備える、項1~7のいずれか1項に記載の転写シート。
項9. 少なくとも、成形樹脂層と、転写層と、転写用基材とがこの順に積層された、転写用基材付き樹脂成形品であって、
前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、転写用基材付き樹脂成形品。
項10. 少なくとも、成形樹脂層と、転写層とが積層された、樹脂成形品であって、
前記転写層の前記成形樹脂層側とは反対側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する、樹脂成形品。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、樹脂成形品の表面に対して、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る、転写シートを提供することができる。さらに、本開示によれば、当該転写シートを利用した、転写用基材付き樹脂成形品、及び転写用基材が剥離されてなる樹脂成形品を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図2】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図3】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図4】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図5】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図6】本開示の転写シートの一形態の断面構造の模式図である。
図7】本開示の転写用基材付き樹脂成形品の一形態の断面構造の模式図である。
図8】本開示の樹脂成形品の一形態の断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の転写シートは、少なくとも、転写用基材と、転写層とが積層された転写シートであって、転写層の転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有することを特徴とする。本開示の転写シートは、このような構成を有することにより、樹脂成形品の表面に対して、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る。さらに、本開示の転写シートを用いて製造された樹脂成形品は、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を有する。なお、後述の通り、本開示の転写シートは、装飾層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。以下、本開示の転写シートについて詳述する。
【0016】
本明細書において、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
【0017】
転写シートの積層構造
本開示の転写シート10は、少なくとも、転写用基材1と、転写層8とをこの順に有する。本開示の転写シート10において、転写層8の転写用基材1側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する。当該表面形状は、転写層8の転写用基材1側の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、転写層8の当該表面形状を有する部分が、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を付与し得る。当該表面形状は、転写層8の転写用基材1側の表面の面積の割合は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上であり、100%(すなわち全面に前記表面形状が形成されている)であってもよい。
【0018】
転写層8は、保護層2、接着層3、プライマー層4、装飾層5などのうち少なくとも1層をさらに含むことができる。転写層8は、少なくとも保護層2を含むことが好ましい。保護層2の密着性を向上させる観点から、保護層2の転写用基材1側とは反対側に、プライマー層4を含むことが好ましい。また、本開示の転写シート10は、転写シート10に装飾性を付与することなどを目的として、装飾層5を含んでもよい。本開示の転写シート10において、転写層8が成形樹脂層9に転写されて本開示の樹脂成形品20となる。本開示の転写シート10の転写層8を成形樹脂層9に強く密着させる観点から、転写層8の転写用基材1側とは反対側の表面に接着層3を備えていることが好ましい。
【0019】
転写用基材1と転写層8との間には、転写用基材1と転写層8との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、離型層6を設けてもよい。後述のように、例えば離型層の転写用基材1側とは反対側の表面に対して、所定の方法で微細な凹凸形状を形成し、さらに当該表面上に、転写層8を積層して、転写層8の転写用基材1側の表面に当該凹凸形状を転写することで、転写層8の転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を形成できる。なお、この場合、離型層の表面に形成される凹凸形状と、転写層8の表面形状(凹凸形状)とは、反転した構造(いわゆるネガ・ポジの関係)となることから、ISO25178-2:2012に規定される形状(例えば最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)、算術平均高さSa等の形状)は異なる。
【0020】
また、本開示の転写シート10において、転写用基材1の転写層8とは反対側に、転写シートのブロッキングを防止するため、ブロッキング防止層7を有していてもよい。本開示の転写シート10においては、転写用基材1、必要に応じて設けられる離型層6、及び、必要に応じて設けられるブロッキング防止層7は、支持体を構成している。当該支持体は、転写シート10の転写層8を成形樹脂層9に一体化させた後に、剥離除去される。
【0021】
本開示の転写シートの積層構造として、転写用基材/保護層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/保護層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/保護層/プライマー層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造;ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/保護層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図2に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/保護層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図3に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/保護層/プライマー層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図4に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図5に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図6に、本開示の転写シートの積層構造の一態様として、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された転写シートの一形態の断面構造の模式図を示す。なお、「/」は、層間の区切りを意味している。
【0022】
転写シートを形成する各層
[支持体]
本開示の転写シートは、支持体として、転写用基材1を有している。支持体は、必要に応じて、離型層6、ブロッキング防止層7をさらに有する。転写用基材1の上に形成された、保護層2、接着層3、プライマー層4、装飾層5などの少なくとも1層が、転写層8を構成する。本開示においては、転写シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体と転写層8の界面が引き剥がされて、樹脂成形品が得られる。
【0023】
(転写用基材1)
本開示において、転写用基材1は、転写シートにおいて支持部材としての役割を果たす支持体として用いられる。本開示で用いられる転写用基材1は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0024】
転写シート10の転写によって、成形樹脂層9に転写させる転写層8の表面に好適に凹部を賦形する観点から、本開示においては、転写用基材1として、ポリエステルシートを用いることが好ましい。ポリエステルシートを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを示し、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
【0025】
本開示で転写用基材1として好適に用いられるポリエステルシートは、例えば以下のように製造される。まず上記のポリエステル系樹脂とその他の原料をエクストルーダーなどの周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してシート化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前又は後に再度縦及び/又は横方向に延伸してもよい。本開示においては十分な寸法安定性を得るため延伸倍率を面積倍率として7倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、得られるポリエステルシートを転写シートに用いた場合、該転写シートが成形樹脂を射出する際の温度域で再び収縮せず、当該温度域で必要なシート強度が得られる。なお、ポリエステルシートは、上記のように製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。
【0026】
また、転写用基材1は、後述する離型層6を設ける場合、当該離型層6との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、転写用基材1の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。また、転写用基材1は、転写用基材1とその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施してもよい。なお、ポリエステルシートとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着層が設けられたものも用いることができる。
【0027】
転写用基材1の厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。転写用基材1の厚みの好ましい範囲は50μm以上100μm以下程度であり、さらに好ましくは60μm以上75μm以下程度である。転写用基材1としては、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
【0028】
(離型層6)
離型層6は、転写用基材1と転写層8との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材1の転写層8が積層される側の表面に設けられる。
【0029】
また、離型層6は、転写層8の転写用基材1側の表面の少なくとも一部に対して、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を形成するためにも、好適に用いることができる。具体的には、離型層6を形成するための未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物を転写用基材1の表面に積層し、未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物の層に対して、エキシマランプ等から短波長紫外線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させ、離型層6を形成すると共に表面に微小な凹凸形状を形成する。電離放射線硬化性樹脂組成物の組成、短波長紫外線の照射条件などを調整することにより、離型層の表面に形成される微細な凹凸形状を調整する。電離放射線硬化性樹脂組成物の組成、短波長紫外線の照射条件の具体例については、後述する。離型層6の微細な凹凸形状の上に、転写層8を形成する未硬化の樹脂組成物(例えば保護層2を形成する未硬化の樹脂組成物)を積層させることで、離型層6の凹凸形状が反転した表面形状が、転写層8の転写用基材1側の表面に形成される。離型層6の凹凸形状を調整することによって、転写層8の転写用基材1側の表面を所望の形状に調整することが可能である。なお、前述の通り、離型層6の表面に形成される凹凸形状と、転写層8の表面形状(凹凸形状)とは、反転した構造(いわゆるネガ・ポジの関係)となることから、ISO25178-2:2012に規定される形状(例えば最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)、算術平均高さSa等の形状)は異なる。
【0030】
なお、支持体に離型層6を設けない場合には、前述の転写用基材1の表面に対して、微細な凹凸形状を形成し、転写層8の転写用基材1側の表面を所望の形状に調整してもよい。
【0031】
離型層6は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
【0032】
離型層6は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル-メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、電離放射線硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成できる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル-メラミン系樹脂単独、アクリル-メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル-メラミン系樹脂単独又はアクリル-メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層6を構成することが特に好ましい。
【0033】
(電離放射線硬化性樹脂)
離型層6の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで、電離放射線とは、後述の[保護層2]の欄に記載の通りである。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
離型層6を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の好ましい組成としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートモノマー(好ましくは、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能(メタ)アクリレートモノマーなど)、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(好ましくは、2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなど)、シリコーン、微粒子(シリカ粒子など)、及び光重合開始剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0037】
電離放射線硬化性樹脂を用いて離型層6を形成する場合、離型層6の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
【0038】
本開示においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0039】
離型層6を形成するための未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物の層(未硬化樹脂層)に対して、短波長紫外線(少なくとも100nm以上280nm以下の波長光)を照射することにより、離型層6の表面に、微細な凹凸形状を形成することができる。離型層6を形成するための未硬化樹脂層の表面に対して、短波長の紫外線を照射すると、当該紫外線のエネルギーが未硬化樹脂層の表面部分のみに浸透し、それより下部分にはエネルギーが到達しにくい。これにより、未硬化樹脂層の表面部分だけが硬化をはじめ、硬化収縮を生じることで、微細な凹凸形状(シワ)が形成するものと考えられる。このように、微細な凹凸形状の形成は、短波長の紫外線の照射により、離型層6形成用の未硬化樹脂層の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
【0040】
離型層6の表面に微小な凹凸形状を形成する際の短波長紫外線の照射条件の具体例については、以下の通りである。
【0041】
短波長紫外線(少なくとも100nm以上380nm以下の波長光)としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばAr2のエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar2)」のように略称する。)、146nm(Kr2)、157nm(F2)、172nm(Xe2)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)、351nm(XeF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれを用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、当該光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、離型層6の表面に対して、好適に微細な凹凸形状を形成することができ、転写層8の表面形状を所望の形状となるように好適に調整することができる。
【0042】
離型層6の表面に対して微細な凹凸形状を好適に形成する観点から、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは155nm以上であり、上限として好ましくは320nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm未満であり、最も好ましくは、172nm(Xe2)である。このように、本開示においては、離型層6の表面に対して微細な凹凸形状を好適に形成する観点から、より短波長の波長光を用いることが好ましく、中波長紫外線(波長:280~320nm)、短波長紫外線(波長:280nm以下)がより好ましく、短波長紫外線が更に好ましい、ともいえる。短波長紫外線は、波長200nm未満の領域が好ましい。
【0043】
本開示において、離型層6の表面に対して微細な凹凸形状を好適に形成する観点から、上記波長光の積算光量は、好ましくは1mJ/cm2以上、より好ましくは10mJ/cm2以上、更に好ましくは30mJ/cm2以上、より更に好ましくは50mJ/cm2以上である。また上限としては特に制限はなく、波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性の観点から、上限として好ましくは1,000mJ/cm2以下、より好ましくは500mJ/cm2以下、更に好ましくは300mJ/cm2以下である。これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.001W/cm以上、より好ましくは0.01W/cm以上、更に好ましくは0.03W/cm以上であり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
【0044】
離型層6を形成する際、前記の短波長紫外線での照射の他、離型層6を形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化に寄与する他の処理を行ってもよい。例えば、既述の表面部分と表面から深さ方向に離れた深奥部分の硬化の進行度合いの違いによる凹凸形状を安定させ、かつ深奥部分への硬化の進行を促進する観点から、例えば380nmを超える波長光、好ましくは385nm以上400nm以下程度の波長光で予め照射して樹脂組成物を全体的に予備硬化させた後に、100nm以上380nm以下の波長光で照射してもよいし、また100nm以上380nm以下の波長光での照射後に、樹脂組成物を更に硬化させるために後硬化を行ってもよい。予備硬化、後硬化については、離型層6に求められる所望の性状(例えば、加工特性、耐汚染性等の表面特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。例えば、後硬化においては、艶消層の表面特性の向上の観点から、電子線が好ましく用いられ得る。
【0045】
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70kV以上、また、300kV以下が挙げられる。
【0046】
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、離型層6の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと離型層6の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層6の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
【0047】
また、照射線量は、離型層6の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5kGy以上(0.5Mrad以上)、好ましくは10kGy以上(1Mrad以上)であり、また、通常300kGy以下(30Mrad以下)、好ましくは50kGy以下(5Mrad以下)である。照射線量は、通常5kGy以上300kGy以下(0.5Mrad以上30Mrad以下)、好ましくは10kGy以上50kGykGy以下(1Mrad以上5Mrad以下)の範囲で選定される。
【0048】
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0049】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190nm以上、380nm以下の紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
【0050】
離型層6の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、また、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。離型層6の厚みの好ましい範囲は、0.01μm以上好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上3μm以下である。
【0051】
(ブロッキング防止層7)
本開示の転写シートにおいて、ブロッキング防止層7は、転写シートにおけるブロッキングを効果的に抑制するために、転写用基材1の転写層8とは反対側に設けられる層である。ブロッキング防止層7は、粒子と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により形成することが好ましい。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
粒子としては、特に制限されず、ブロッキング防止剤として公知のものを用いることができる。粒子としては、例えば、無機粒子、樹脂粒子などの粒子が挙げられる。
【0054】
無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
また、樹脂粒子としては、樹脂により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。樹脂粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
粒子の粒子径としては、例えば0.5μm以上、好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。粒子の粒子径の好ましい範囲としては、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下が挙げられる。なお、本開示において、粒子の粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する、噴射型乾式測定方式により測定される値である。
【0057】
ブロッキング防止層7の粒子の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下が挙げられる。ブロッキング防止層7の粒子の含有量の好ましい範囲としては、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下が挙げられる。
【0058】
また、ブロッキング防止層7の厚みとしては、特に制限されないが、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下であり、また、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上が挙げられる。ブロッキング防止層7の厚みの好ましい範囲としては、例えば1μm以上10μm以下であり、より好ましくは2μm以上5μm以下である。なお、本開示において、ブロッキング防止層7の厚みは、粒子による凸部が存在していない部分における厚みを意味する。
【0059】
粒子の粒子径は、ブロッキング防止層7の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば、粒子の粒子径は、ブロッキング防止層7の厚みの1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、また、5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。例えば、粒子の粒子径は、ブロッキング防止層7の厚みの1.1倍以上5倍以下であることが好ましく、1.3倍以上3倍以下であることがより好ましい。
【0060】
[転写層8]
本開示の転写シートにおいては、支持体の上に形成された、保護層2、接着層3、プライマー層4、装飾層等のうち少なくとも1層が転写層8を構成している。本開示の転写シートにおいては、転写層8は、保護層2に加えて、接着層3、プライマー層4、装飾層5などのうち少なくとも1層を含むことが好ましい。
【0061】
本開示においては、転写シートと成形樹脂を一体成形した後に、支持体と転写層8の界面が引き剥がされ、転写シートの転写層8が成形樹脂層9に転写された樹脂成形品が得られる。この際、本開示の樹脂成形品において、耐指紋性に優れ、かつ、優れた艶消し調の意匠を有する転写層8の表面形状が露出する。
【0062】
本開示の転写シート10において、転写層8の転写用基材1側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する。本開示の加飾シートは、表面形状の凹凸の山と谷のバランスを調整することで、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)及び算術平均高さSaを、それぞれ所定値以上とし、凹凸の溝部分に指紋(皮脂)が入り込みにくくなっていると考えられる。また、凹凸の溝部分に指紋(皮脂)が入ったとしても、凹凸が埋まるほどではないと考えられる。このため、加飾シート表面を手で触る前後において、見た目での変化が少なく、耐指紋性が高められていると考えられる。また、本開示の加飾シートは、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)及び算術平均高さSaを、それぞれ所定値以上にすることで、加飾シート表面を様々な角度(正面方向、斜め方向)から観察した場合に、凹凸を視認しやすく、優れた艶消し調の意匠を発揮していると考えられる。転写層8の転写用基材1側の表面形状の測定方法は、後述の通りである。
【0063】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.00以上であり、また、好ましくは2.40以下、より好ましくは2.20以下、さらに好ましくは2.00以下であり、好ましい範囲としては、0.60~2.40、0.60~2.20、0.60~2.00、0.80~2.40、0.80~2.20、0.80~2.00、1.00~2.40、1.00~2.20、1.00~2.00などが挙げられる。
【0064】
本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、前記算術平均高さSaが、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.70以上、さらに好ましくは1.00以上であり、また、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.70以下、さらに好ましくは1.50以下であり、好ましい範囲としては、0.10~2.00、0.10~1.70、0.10~1.50、0.50~2.00、0.50~1.70、0.50~1.50、0.70~2.00、0.70~1.70、0.70~1.50、1.00~2.00、1.00~1.70、1.00~1.50、などが挙げられる。
【0065】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大山の高さSpの比(Sp/Sz)が、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上であり、また、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.50以下であり、好ましい範囲としては、
0.30~0.60、0.30~0.55、0.30~0.50、0.35~0.60、0.35~0.55、0.35~0.50、0.40~0.60、0.40~0.55、0.40~0.50などが挙げられる。
【0066】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSzに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sz)が、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.50以上であり、また、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.60以下であり、好ましい範囲としては、
0.40~0.70、0.40~0.65、0.40~0.60、0.45~0.70、0.45~0.65、0.45~0.60、0.50~0.70、0.50~0.65、0.50~0.60などが挙げられる。
【0067】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大高さSz(表面の最も高い点から最も低い点までの距離であり、Sp+Svに相当)が、好ましくは8.00以上、より好ましくは8.50以上、さらに好ましくは9.00以上であり、また、好ましくは16.00以下、より好ましくは15.00以下、さらに好ましくは10.00以下であり、好ましい範囲としては、8.00~16.00、8.00~15.00、8.00~10.00、8.50~16.00、8.50~15.00、8.50~10.00、9.00~16.00、9.00~15.00、9.00~10.00などが挙げられる。
【0068】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpが、好ましくは2.00以上、より好ましくは3.00以上、さらに好ましくは4.00以上であり、また、好ましくは10.00以下、より好ましくは8.00以下、さらに好ましくは6.00以下であり、好ましい範囲としては、2.00~10.00、2.00~8.00、2.00~6.00、3.00~10.00、3.00~8.00、3.00~6.00、4.00~10.00、4.00~8.00、4.00~6.00などが挙げられる。
【0069】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、最大谷の深さSvが、好ましくは5.20以上、より好ましくは6.00以上、さらに好ましくは6.50以上であり、また、好ましくは10.00以下、より好ましくは9.00以下、さらに好ましくは8.00以下であり、好ましい範囲としては、5.20~10.00、5.20~9.00、5.20~8.00、6.00~10.00、6.00~9.00、6.00~8.00、6.50~10.00、6.50~9.00、6.50~8.00などが挙げられる。
【0070】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、転写層8の前記表面形状は、ISO25178-2:2012に規定される、二乗平均平方根高さSqが、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは1.00以上であり、また、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.75以下、さらに好ましくは1.50以下であり、好ましい範囲としては、0.50~2.00、0.50~1.75、0.50~1.50、0.75~2.00、0.75~1.75、0.75~1.50、1.00~2.00、1.00~1.75、1.00~1.50などが挙げられる。
【0071】
<表面形状の測定>
転写シート及び樹脂成形品の表面の保護層の表面について、それぞれ、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSp、最大谷の深さSv、最大高さSz、二乗平均平方根高さSq、及び算術平均高さSaを測定する。測定領域は、保護層表面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)の領域とする。なお、転写シートについては、支持体(ブロッキング防止層、転写用基材、及び離型層等)を転写層から剥離除去してから、転写層表面(例えば保護層表面)について表面形状の測定を行う。測定装置は、形状解析レーザ顕微鏡を用い、対物レンズ:50倍、レーザ波長:658nm、測定モード:表面形状モード、測定ピッチ:0.13μm、測定品質:高速モードにて測定した。算術平均粗さRaのカットオフ値は0.8mmとする。
【0072】
(保護層2)
保護層2は、樹脂成形品の耐傷付き性、耐薬品性などを高めるために、必要に応じて、樹脂成形品の表面に位置するようにして、転写層8に設けられる層である。転写層8の転写用基材1側の表面は、保護層2によって形成されていることが好ましい。すなわち、本開示においては、保護層2の転写用基材1側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、前記の表面形状を備えていることが好ましい。
【0073】
保護層2を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
【0074】
保護層2を形成する熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリル-ウレタンポリオールなどのウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオール;などのポリオール樹脂と硬化剤とを含む樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
保護層2を形成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
(電離放射線硬化性樹脂)
保護層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、保護層2の形成において好適に使用される。
【0077】
なお、本開示の積層体において、保護層2の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合、積層体の状態での保護層2は硬化したものであってもよいし、未硬化または半硬化であってもよい。積層体の状態での保護層2が未硬化または半硬化である場合には、積層体を形成した後、保護層2を硬化させる。
【0078】
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)を用いることが好ましく、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)と、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを併用することが特に好ましい。
【0081】
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
【0082】
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2~50個の、より好ましくは3~50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO-R1-OHで表される。ここで、R1は、炭素数2~20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
【0083】
ジオール化合物(A)の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1当量以上、5当量以下のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比(B/A)は、50/50以上、99/1以下の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2当量以上、2当量以下であることが好ましい。
【0087】
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは50以下、より好ましくは20以下である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
【0088】
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64-1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3-181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
【0089】
本開示に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の好ましい範囲は、500以上100,000以下であり、より好ましくは1,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、2,000以上30,000以下である。なお、本開示におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0090】
電離放射線硬化性樹脂組成物において、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比(ポリカーボネート(メタ)アクリレート/多官能(メタ)アクリレート)としては、50/50以上、98/2以下であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98/2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、前述の耐久性、及び耐薬品性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50/50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が60/40以上、95/5以下である。
【0091】
本開示においてポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される、該ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。官能基数としては、好ましくは2以上、または、好ましくは6以下が挙げられる。
【0092】
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0093】
ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0094】
さらに、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
【0095】
また、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
本開示においては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される前記多官能(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本開示の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限されないが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下であり、また、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量の好ましい範囲としては、好ましくは50質量%以上98質量%以下、より好ましくは65質量%以上90質量%以下である。
【0098】
電離放射線硬化性樹脂を用いて保護層2を形成する場合、保護層2の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
【0099】
本開示においては、調製された塗布液を、所望の厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0100】
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて保護層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70kV以上、また、300kV以下が挙げられる。
【0101】
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、保護層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと保護層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。また、転写用基材層の上に形成された離型層6と、保護層2と共に電子線によって硬化させる場合には、電子線の透過深さと離型層6及び保護層2の合計厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層6の下に位置する転写用基材層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による転写用基材層の劣化を最小限にとどめることができる。
【0102】
また、照射線量は、保護層2の架橋密度が十分な値となる量であり、好ましくは30kGy(3Mrad)以上であり、また、好ましくは300kGy(30Mrad)以下、より好ましくは100kGy(10Mrad)以下が挙げられる。照射線量は、好ましくは30kGy(3Mrad)以上300kGy(30Mrad)以下、より好ましくは30kGy(3Mrad)以上100kGy(10Mrad)以下が挙げられる。照射線量をこのよう範囲に設定することにより、保護層2を透過した電離放射線による保護層2の下に位置する層の劣化を抑制することができる。なお、上記例は多官能(メタ)アクリレートの官能基数を2とした場合であり、官能基数に応じて適切な照射線量が必要である。
【0103】
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0104】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190nm以上、380nm以下の紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
【0105】
保護層2の厚みについては、特に制限されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下が挙げられる。保護層2の厚みの好ましい範囲は1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下、さらに好ましくは3μm以上15μm以下が挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、積層体が優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮し得る。また、保護層2を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。
【0106】
(接着層3)
接着層3は、転写層8と成形樹脂層9との密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて設けられる層であり、転写層8の転写用基材1側とは反対側の表面を構成する層である。したがって、本開示の転写シートを成形樹脂層9と積層する際、接着層3は成形樹脂層9と接する層となる。
【0107】
接着層は、被着体の素材に適した接着性を有する樹脂を使用することが好ましい。例えば、被着体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、被着体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、被着体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。接着層には、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。接着層の厚みは、0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。
【0108】
接着層は、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式等の公知の印刷方式で形成することができる。
【0109】
(プライマー層4)
プライマー層4は、保護層2の密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて転写層8に設けられる層である。プライマー層4は、保護層2に隣接するように設けられることが好ましい。プライマー層4は、プライマー層形成用樹脂組成物により形成することができる。
【0110】
プライマー層形成用樹脂組成物に用いる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びアクリルウレタン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
本開示において、プライマー層4は、ポリオールとウレタン樹脂を含む樹脂組成物により形成することが好ましい。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、好ましくはアクリルポリオールが挙げられる。
【0112】
プライマー層4の形成にポリオールとウレタン樹脂とを使用する場合、これらの質量比(ポリオール/ウレタン樹脂)としては、好ましくは5/5以上、好ましくは7/3以上であり、または、好ましくは9.5/0.5以下、より好ましくは9/1以下が挙げられる。質量比(ポリオール/ウレタン樹脂)の好ましい範囲としては、5/5以上9.5/0.5以下、より好ましくは7/3以上9/1以下が挙げられる。
【0113】
ポリオールの硬化物としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。
【0114】
イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。イソシアネートを硬化剤として用いる場合、プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は特に制限されないが、密着性の観点や、後述の装飾層5などを積層する際の印刷適性の観点からは、上記のポリオール100質量部に対して好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは45質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は上記のポリオール100質量部に対して好ましくは3質量部以上45質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上25質量部以下である。
【0115】
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
【0116】
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0117】
アクリルウレタン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル-ウレタンブロック共重合が挙げられ、具体的には例えばアクリル-ポリエステルウレタンブロック共重合体が挙げられる。アクリル-ウレタンブロック共重合体におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、好ましくは9/1以下、より好ましくは8/2以下であり、また、好ましくは1/9以上、より好ましくは2/8以上が挙げられる。アクリル/ウレタン比(質量比)の好ましい範囲は、1/9以上9/1以下、より好ましくは2/8以上8/2以下が挙げられる。
【0118】
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは10μm以下である。すなわち、塗布量が例えば0.1g/m2以上、好ましくは1g/m2以上、また、好ましくは10g/m2以下である。プライマー層4の厚みの好ましい範囲は、0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下である。プライマー層4がこのような厚みを充足することにより、保護層2の密着性を効果的に高めることができる。
【0119】
プライマー層4を形成する組成物には、備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0120】
プライマー層4は、プライマー層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材層)にプライマー層4や接着層の塗膜を形成し、その後に積層体中の対象となる層表面に被覆する方法である。
【0121】
転写シートの製造時において、プライマー層4を保護層2の表面に形成する際には、硬化後の保護層2の上に形成してもよい。また、保護層2を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層してプライマー層4を形成した後、電離放射線硬化性樹脂からなる層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂からなる層を硬化させて保護層2を形成してもよい。
【0122】
(装飾層5)
装飾層5は、樹脂成形品に装飾性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。装飾層5は、例えば、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層である。また、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり成形樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層は、樹脂成形品において、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けてもよく、また隠蔽層単独で装飾層5を形成してもよい。
【0123】
絵柄層の絵柄については、特に制限されないが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字等からなる絵柄が挙げられる。
【0124】
装飾層5は、着色剤、バインダー樹脂、及び溶剤又は分散媒を含む印刷インキを用いて形成される。
【0125】
装飾層5の形成に用いられる印刷インキの着色剤としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0127】
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキの溶剤又は分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
また、装飾層5の形成に使用される印刷インキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
【0129】
装飾層5は、例えば保護層2やプライマー層4上など隣接する層の上に、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。また、装飾層5を絵柄層及び隠蔽層の組み合わせとする場合には、一方の層を積層させて乾燥させた後に、もう一方の層を積層させて乾燥させればよい。
【0130】
装飾層5の厚さについては、特に制限されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。装飾層5の厚さの好ましい範囲は1μm以上40μm以下であり、より好ましくは3μm以上30μm以下である。
【0131】
装飾層5は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
【0132】
2.樹脂成形品及びその製造方法
本開示の樹脂成形品は、本開示の転写シートの転写層と成形樹脂層とを一体化させることにより成形されてなるものである。具体的には、当該転写シートの支持体とは反対側に成形樹脂層9を積層することにより、少なくとも成形樹脂層9と、転写層8と、転写用基材1とがこの順に積層された、転写用基材付き樹脂成形品21が得られる(例えば図7を参照)。次に、転写用基材付き樹脂成形品21から支持体を剥離することにより、少なくとも成形樹脂層9と転写層8とが積層された本開示の樹脂成形品が得られる(例えば図8を参照)。
【0133】
本開示の転写用基材付き樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、転写層と、転写用基材とがこの順に積層された転写用基材付き樹脂成形品であって、本開示の転写シート10と同じく、転写層8の転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する。また、本開示の樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、転写層とが積層された樹脂成形品であって、本開示の転写シート10と同じく、前記転写層の前記転写用基材側の表面の少なくとも一部に、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSpに対する最大谷の深さSvの比(Sv/Sp)が、0.60以上であり、かつ、算術平均高さSaが、0.10以上である表面形状を有する。
【0134】
本開示の転写用基材付き樹脂成形品及び樹脂成形品において、それぞれ、転写層8の転写用基材1側の好ましい表面形状(ISO25178-2:2012に規定される前述の各表面形状)については、前述した本開示の転写シート10と同様であり、記載を省略する。
【0135】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本開示の樹脂成形品の表面(転写層8)は、以下の<艶消し調の意匠性の評価>に記載の方法によって測定される60度鏡面光沢度が、好ましくは9以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、下限については、例えば1以上であり、好ましい範囲としては、1~9、1~5、1~4などが挙げられる。
【0136】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本開示の樹脂成形品の表面(転写層8)は、以下の<艶消し調の意匠性の評価>に記載の方法によって測定される85度鏡面光沢度が、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下であり、下限については、例えば9以上であり、好ましい範囲としては、9~40、9~30、9~20などが挙げられる。
【0137】
<艶消し調の意匠性の評価>
樹脂成形品の表面の保護層の表面について、3角度表面光沢計を用い、60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度の観点から、艶消し調の意匠性を評価する。60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度が小さい程、優れた艶消し調の意匠性を有していると評価される。
【0138】
本開示の樹脂成形品は、以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
転写シート10を金型内に配置し、転写層8側から金型内に流動状態の樹脂を射出し、射出樹脂を固化させて、射出成形と同時に成形樹脂層9の外表面に転写シート10を一体化させる工程。
前記工程で得られた転写用基材付き樹脂成形品21から、転写用基材1を剥離する(離型層6、ブロッキング防止層7を有する場合はこれらの層も剥離する)ことにより、表面に転写層8を備える樹脂成形品を得る工程。
【0139】
転写シートを例えば射出成形同時転写加飾法に適用する場合、本開示の樹脂成形品の製造方法としては、例えば以下の工程(1)~(5)を含む方法が挙げられる。
(1)まず、上記転写用転写シートの転写層8側を金型内に向けて、熱盤によって転写層8側から転写シートを加熱する工程、
(2)該転写シートを金型内形状に沿うように予備成形(真空成形)して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂を冷却した後に金型から樹脂成形品(転写用基材付き樹脂成形品)を取り出す工程、及び
(5)樹脂成形品から転写用基材(支持体ごと)を剥離する工程。
【0140】
上記両工程(1)及び(2)において、転写シートを加熱する温度は、転写用基材1のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲を指し、転写用基材1として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70~130℃程度である。なお、あまり複雑でない形状の金型を用いる場合は、転写シートを加熱する工程や、転写シートを予備成形する工程を省略し、後記する工程(3)において、射出樹脂の熱と圧力によって転写シートを金型の形状に成形してもよい。
【0141】
上記両工程(3)において、後述する成形用樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該転写シートと成形用樹脂とを一体化させる。成形用樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、成形用樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、転写シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、転写用基材付き樹脂成形品となる。成形用樹脂の加熱温度は、成形用樹脂の種類によるが、一般に180℃以上、320℃以下である。
【0142】
このようにして得られた転写用基材付き樹脂成形品は、工程(4)において冷却した後に金型から取り出した後、工程(5)において支持体を保護層2から剥離することにより樹脂成形品を得る。また、支持体を保護層2から剥離する工程は、加飾樹脂成形品を金型から取り出す工程と同時に行われてもよい。すなわち、工程(5)は工程(4)に含まれるものであってもよい。
【0143】
本開示の樹脂成形品において、成形樹脂層9は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層9を形成する成形用樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0144】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0145】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0146】
なお、転写用基材付き樹脂成形品において、転写用基材は、樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、転写用基材付き樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、使用時に支持体を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
【0147】
本開示の樹脂成形品は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
【実施例0148】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0149】
<転写シートの製造>
[実施例1]
転写用基材として、一方面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層が形成された面とは反対側の面に、ブロッキング防止層(シリカ粒子1%を含有するアクリル樹脂 厚み1.5μm)を塗布した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層の面に、後述する樹脂A1(表1)の塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。
【0150】
次に、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm2)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe2)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm2、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して(紫外線出力密度:200W/cm)、離型層の表面に微細な凹凸形状を形成した。
【0151】
次いで、微細な凹凸形状を形成した離型層の上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を、乾燥塗布量が3.0g/m2となるようにバーコーターにより塗工し、保護層形成用塗布膜を形成した。電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレートである。この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、保護層形成用塗布膜を硬化させて保護層を形成した。保護層の離型層側の表面形状には、離型層の微細な凹凸形状が転写(ネガ・ポジの関係)された形状となっている。
【0152】
次に、この保護層の上に、プライマー層形成用の樹脂組成物(アクリルポリオール)をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、バインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)を含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、全面黒単色の装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ1.5μm)をグラビア印刷により形成することにより、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0153】
[実施例2]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂A2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0154】
[実施例3]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂A3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0155】
[実施例4]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0156】
[実施例5]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0157】
[実施例6]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂D1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0158】
[実施例7]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂D2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0159】
[実施例8]
離型層の形成において、樹脂A1の代わりに樹脂D3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0160】
[実施例9]
保護層の形成において、電離放射線硬化性樹脂組成物の乾燥塗布量が5.0g/m2となるようにバーコーターにより塗工して、保護層形成用塗布膜を形成したこと以外は、実施例8と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0161】
[実施例10]
保護層の形成において、電離放射線硬化性樹脂組成物の乾燥塗布量が2.4g/m2となるようにバーコーターにより塗工して、保護層形成用塗布膜を形成したこと以外は、実施例8と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0162】
[比較例1]
転写用基材として、一方面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層が形成された面とは反対側の面に、ブロッキング防止層(シリカ粒子1%を含有するアクリル樹脂 厚み1.5μm)を塗布した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層の面に、後述する樹脂E(表1)の塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。
【0163】
次いで、離型層の上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を、乾燥塗布量が3.0g/m2となるようにバーコーターにより塗工し、保護層形成用塗布膜を形成した。電離放射線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレートである。この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、保護層形成用塗布膜を硬化させて保護層を形成した。保護層の離型層側の表面形状には、シリカ粒子の存在に起因する微細な凹凸形状が形成されている。
【0164】
次に、この保護層の上に、プライマー層形成用の樹脂組成物(アクリルポリオール)をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、バインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)を含む装飾層形成用黒色系インキ組成物を用いて、全面黒単色の装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ1.5μm)をグラビア印刷により形成することにより、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0165】
[比較例2]
樹脂Eに含まれるシリカ粒子の添加量を減らしたこと以外は、比較例1と同様にして、ブロッキング防止層/転写用基材/離型層/保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された積層体からなる転写シートを得た。
【0166】
<離型層を形成する樹脂組成物>
樹脂A1:2官能アクリレートモノマー40.0質量部、3官能アクリレートモノマー30.0質量部と重量平均分子量約5,000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン0.1質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂A2: 2官能アクリレートモノマー40.0質量部、3官能アクリレートモノマー30.0質量部と重量平均分子量約5,000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン0.5質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂A3:2官能アクリレートモノマー40.0質量部、3官能アクリレートモノマー30.0質量部と重量平均分子量約5,000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン1.0質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂B:2官能アクリレートモノマー70.0質量部と重量平均分子量約2,500の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン0.5質量%とシリカ粒子、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂C:2官能アクリレートモノマー70.0質量部と3官能アクリレートモノマー30.0質量部に、シリコーン0.5質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂D1:2官能アクリレートモノマー55.0質量部、3官能アクリレートモノマー15.0質量部と重量平均分子量約2,500の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン0.1質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂D2:2官能アクリレートモノマー55.0質量部、3官能アクリレートモノマー15.0質量部と重量平均分子量約2,500の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン0.5質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂D3:2官能アクリレートモノマー55.0質量部、3官能アクリレートモノマー15.0質量部と重量平均分子量約2,500の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー30.0質量部に、シリコーン1.0質量%とシリカ粒子6質量%、光重合開始剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
樹脂E:2官能アクリレートオリゴマー85.0質量部、3官能モノマー15.0質量部にシリコーン1.0質量%とシリカ粒子4.4質量%を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物
【0167】
<樹脂成形品の製造>
得られた各転写シートを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状(板状)に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率50%)。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該転写シートと射出樹脂とを一体化成形し、転写用基材付き樹脂成形品を得た。成形樹脂温度は240℃とし、射出樹脂としてABS樹脂を用いた。転写用基材付き樹脂成形品を金型から取り出すと同時に支持体(ブロッキング防止層、転写用基材、及び離型層)を転写層から剥離除去することにより、樹脂成形品を得た。
【0168】
<表面形状の測定>
転写シート及び樹脂成形品の表面の保護層の表面について、それぞれ、ISO25178-2:2012に規定される、最大山の高さSp、最大谷の深さSv、最大高さSz、二乗平均平方根高さSq、及び算術平均高さSaを測定した。測定領域は、保護層表面の任意の箇所の長方形(1024μm×768μm)の領域とした。なお、転写シートについては、支持体(ブロッキング防止層、転写用基材、及び離型層)を転写層から剥離除去してから、保護層表面について表面形状の測定を行った。測定装置は、形状解析レーザ顕微鏡(「スタンド:VK-D1測定部:VK―X1050」、株式会社キーエンス製)を用い、対物レンズ:50倍、レーザ波長:658nm、測定モード:表面形状モード、測定ピッチ:0.13μm、測定品質:高速モードにて測定した。算術平均粗さRaのカットオフ値は0.8mmとした。結果を表1及び表2に示す。
【0169】
<耐指紋性の評価>
以下の手順により、樹脂成形品の表面の保護層の表面について、耐指紋性を評価した。耐指紋性の評価基準は、以下の通りである。結果を表2に示す。
(i)オレイン酸を染み込ませた不織布ウエス(ベンコット)に、指をつける。
(ii)未使用の不織布ウエスに指を10回押しつけ、余分なオレイン酸を除去する。
(iii)樹脂成形品の表面に指を押し付けて、オレイン酸を付着させる。
(iv)径2.5cmの円筒に未使用の不織布ウエスを四つ折りし、輪ゴムで固定後、300g荷重下、10往復で拭き取る。
(v)蛍光灯下、樹脂成形品の表面の拭き取った箇所を目視で確認する。
【0170】
(耐指紋性の評価基準)
A+:指紋拭き取り後、指紋の跡が全く観えない
A:指紋ふき取り後、視認する角度を任意に変えると、わずかに観える(跡が1割以下)
B:指紋ふき取り後、跡が1割超、3割以下、残る。
C:指紋ふき取り後、跡が3割超、5割以下、残る。
D:指紋ふき取り後、跡が5割超、残る。
【0171】
<離型層の剥離強度の測定>
以下の方法により、前記で得られた転写用基材付き樹脂成形品の表面から支持体を手で剥離する際の剥がれやすさについて、以下の方法で測定した。評価基準は、以下の通りである。結果を表2に示す。
【0172】
(剥離強度の評価基準)
A:容易に剥がれる。
B:剥がれにくいが、転写層側に離型層が残存しない
C:さらに剥がれにくいが、転写層側に離型層が存在しない
D:剥がれにくく、転写層側に離型層の残存が認められる
E:剥がれないもしくは、基材が破断する
【0173】
<艶消し調の意匠性の評価>
樹脂成形品の表面の保護層の表面について、BYK社マイクロトリグロス3角度表面光沢計を用い、60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度の観点から、艶消し調の意匠性を評価した。60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度が小さい程、優れた艶消し調の意匠性を有していると評価される。結果を表2に示す。
【0174】
<端部密着性の評価>
樹脂成形品の端部について、以下の方法により、密着性を評価した。ニチバン製セロハンテープ(登録商標)(No.405)を用いて、成形品端部の同じ個所で10回繰り返し90度剥離試験を行い、密着性を確認する。剥がれが観られた場合は、成形品端部からどれだけ剥がれたかを、物差しで距離を測長し評価を行った。評価基準は、以下の通りである。結果を表2に示す。
【0175】
(端部密着性の評価基準)
A:全く剥がれていない
B:剥がれが観られ、3mmより小さい
C:剥がれが観られ、3~5mm
D:剥がれが観られ、5mmより大きい
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【符号の説明】
【0178】
1 転写用基材
2 保護層
3 接着層
4 プライマー層
5 装飾層
6 離型層
7 ブロッキング防止層
8 転写層
9 成形樹脂層
10 転写シート
20 樹脂成形品
21 転写用基材付き樹脂成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8