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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104425
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20250703BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20250703BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222214
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】殺菌効率を高めることができる流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】流体殺菌装置1は、壁面が凹球面状に形成された流体の殺菌室60を有し、光源用開口14、流体を殺菌室60に流入するための室流入口12、および、流体を殺菌室60から流出するための室流出口13が殺菌室60に開口するように形成された殺菌室本体10と、光源用開口14を閉塞し、光源用開口14から殺菌室60に紫外光を出射するように構成された光源部20と、を備え、光源部20は、紫外光を発光する発光素子22を備え、光源用開口14は、光源用開口14の縁線が発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように形成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面が凹球面状に形成された流体の殺菌室を有し、光源用開口、前記流体を前記殺菌室に流入するための室流入口、および、前記流体を前記殺菌室から流出するための室流出口が前記殺菌室に開口するように形成された殺菌室本体と、
前記光源用開口を閉塞し、前記光源用開口から前記殺菌室に紫外光を出射するように構成された光源部と、を備え、
前記光源部は、紫外光を発光する発光素子を備え、
前記光源用開口は、前記光源用開口の縁線が前記発光素子の半値角の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように形成されている、流体殺菌装置。
【請求項2】
前記半値角は、110°~130°である、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記発光素子は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸を通る断面において、前記光学的軸を基準として対称となる2つの最大照度軸を有するように構成されている、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記光源用開口の縁線は、円形に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌室の直径Dと前記光源用開口の直径dの比率D/dは、1.8~2.2の範囲に設定されている、請求項4に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記発光素子は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸が前記光源用開口の縁線である円形の中心軸に一致するように配置されている、請求項4に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
前記室流入口および前記室流出口は、前記光源用開口を含む平面のうち前記殺菌室側の面に対向するように配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紫外光を発光する発光素子を用いる流体殺菌装置が開示されている。この流体殺菌装置は、流体を収容するための略凹球面状の殺菌室(貯留部)と、殺菌室内に流体を流入するための室流入口(供給口)と、殺菌室内の流体を取り出すための室流出口(取出口)と、紫外光を照射するための光源部と、を有する。
【0003】
殺菌室は、室流入口における流体の流動方向において上流側に位置する略半凹球面状の第1殺菌室と、下流側に位置する略半凹球面状の第2殺菌室と、を含む。第1殺菌室の側に、室流入口が形成され、第2殺菌室の側には、室流出口が形成されている。光源部は、第2殺菌室の側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-6710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体殺菌装置において、光源部は、殺菌室の光源用開口に配置されている。光源部を構成する発光素子が紫外光を発光し、発光した紫外光が光源用開口から殺菌室の内部に出射される。
【0006】
殺菌室の内部における殺菌効率を高めるためには、光源部が発光した紫外光を満遍なく照射することが求められる。しかし、発光素子の発光特性と、発光素子の位置と光源用開口との位置関係とによっては、殺菌室における殺菌効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、殺菌効率を高めることができる流体殺菌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、壁面が凹球面状に形成された流体の殺菌室を有し、光源用開口、前記流体を前記殺菌室に流入するための室流入口、および、前記流体を前記殺菌室から流出するための室流出口が前記殺菌室に開口するように形成された殺菌室本体と、
前記光源用開口を閉塞し、前記光源用開口から前記殺菌室に紫外光を出射するように構成された光源部と、を備え、
前記光源部は、紫外光を発光する発光素子を備え、
前記光源用開口は、前記光源用開口の縁線が前記発光素子の半値角の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように形成されている、流体殺菌装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、光源用開口の縁線が、発光素子の半値角の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように位置する。発光素子の半値角とは、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸を中心軸として、照度が最大値の50%になる角度である。そして、上記のとおり、発光素子の半値角の-10°~+10°は、照度が最大値の50%近傍となる角度である。したがって、発光素子の半値角の-10°~+10°を構成する領域は、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有する領域となる。つまり、光源用開口から出射される紫外光の照度は、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有することになる。殺菌室の内部には、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有する紫外光が照射され、殺菌室を流通する流体を効率的に殺菌することができる。
【0010】
以上のように、殺菌効率を高めることができる流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、流体殺菌装置の構成を示した断面図。
図2】流体殺菌装置における流体の流れを模式的に示した図。
図3】殺菌室本体の構成を示した図。(a)は、殺菌室本体10の分解図であり、(b)は、実際に組付けられた状態での殺菌室本体10を示した図である。
図4】殺菌室本体の外側を光源用開口の中心軸方向から見た場合の光源用開口、室流入口、および室流出口の位置を示した図。
図5】光源部の構成を示した断面図。
図6】筐体の外側を筐体供給口の中心軸方向から見た場合の筐体供給口および光源部の位置を示した図。
図7】室流出口と筐体排出口の接続部分を拡大して示した断面図。
図8】水流シミュレーションの結果を示す図。
図9】殺菌室本体の光源用開口において殺菌室の接線を示した断面図。
図10】光源部を構成する発光素子の配光特性を示した図。
図11】光源部の半値角の範囲を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
流体殺菌装置は、壁面が凹球面状に形成された流体の殺菌室を有し、光源用開口、前記流体を前記殺菌室に流入するための室流入口、および、前記流体を前記殺菌室から流出するための室流出口が前記殺菌室に開口するように形成された殺菌室本体と、前記光源用開口を閉塞し、前記光源用開口から前記殺菌室に紫外光を出射するように構成された光源部と、を備える。そして、前記光源部は、紫外光を発光する発光素子を備える。前記光源用開口は、前記光源用開口の縁線が前記発光素子の半値角の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように形成されている。
【0013】
前記半値角は、110°~130°としてもよい。例えば、半値角が110°の場合には、以下のようになる。発光素子の配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸を中心軸に対して、+55°から-55°までの範囲が、照度50%以上となる。そして、半値角の-10°~+10°を構成する領域は、光学的軸を中心軸とするときの配光角100°~120°の範囲となる。この場合、配光角100°~120°の範囲に、光源用開口の縁線が含まれるように形成される。
【0014】
半値角が120°の場合には、光学的軸を中心軸とするときの配光角110°~130°の範囲に、光源用開口の縁線が含まれるように形成される。半値角が130°の場合には、光学的軸を中心軸とするときの配光角120°~140°の範囲に、光源用開口の縁線が含まれるように形成される。
【0015】
このように半値角を110°~130°とすることによって、凹球面状の殺菌室内に、高い照度の紫外光を出射することができる。したがって、殺菌効率を高めることができる。
【0016】
また、前記発光素子は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸を通る断面において、前記光学的軸を基準として対称となる2つの最大照度軸を有するように構成されてもよい。このような配光特性を有する発光素子を用いることにより、殺菌室内に満遍なく紫外光を照射することができる。その結果、殺菌効率を高めることができる。
【0017】
また、前記光源用開口の縁線は、円形に形成されてもよい。これにより、所望の照度を有する紫外光を、適切に殺菌室内に出射することができる。その結果、殺菌効率を高めることができる。
【0018】
また、前記殺菌室の直径Dと前記光源用開口の直径dの比率D/dは、1.8~2.2の範囲に設定されてもよい。比率D/dを1.8~2.2の範囲に設定することにより、凹球面状の殺菌室内にて、所望の照度を有する紫外光を照射することができる。
【0019】
特に、半値角が120°の場合には、比率D/dが2.0の場合に、半値角の境界面が、殺菌室における光源用開口での接線に一致する状態となる。したがって、半値角120°の場合において、比率D/dが2.0の場合には、最も適切に紫外光を照射することができる。そこで、半値角が110°~130°であり、比率D/dを1.8~2.2の範囲に設定するとよい。このように構成することで、光源用開口から出射される紫外光の照度を半値以上にでき、殺菌効率を高めることができる。
【0020】
また、前記発光素子は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸が前記光源用開口の縁線である円形の中心軸に一致するように配置されてもよい。これにより、殺菌室内に、所望の照度を有する紫外光を照射することができる。
【0021】
また、前記室流入口および前記室流出口は、前記光源用開口を含む平面のうち前記殺菌室側の面に対向するように配置されてもよい。これにより、室流入口の近傍および室流出口の近傍において、紫外光の照度を所望値にすることができる。さらには、室流入口の流路の開口付近および室流出口の流路の開口付近において、紫外光を照射することができる。このことにより、殺菌効率を高めることができる。
【0022】
(実施形態1)
1.流体殺菌装置1の基本構成
流体殺菌装置1の基本構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、流体殺菌装置1は、主として、殺菌室60を有した殺菌室本体10と、殺菌室60に紫外光を出射する光源部20と、殺菌室本体10および光源部20を内包する筐体30と、を有している。
【0023】
殺菌室本体10と筐体30との間には、空間が形成されている。その空間は殺菌室本体10の外側に位置することから、その空間を外側領域70と呼ぶことにする。さらに、流体殺菌装置1は、第1シール部材40と、第2シール部材50とを有している。ただし、第1シール部材40および第2シール部材50については、後述する。
【0024】
流体殺菌装置1は、外部から外側領域70を介して殺菌室60へと流体を流入させ、殺菌室60内の流体に光源部20からの紫外光を照射して流体を殺菌する装置である。殺菌対象の流体は、気体でも液体でもよく、流動性を有する範囲であれば、気体と液体の混合物、気体と粉状の固体の混合物、などであってもよい。液体の場合、たとえば水、油、アルコール、これらを溶媒とする溶解液などである。
【0025】
殺菌室本体10は、殺菌室60を内部に有している。殺菌室60は、流動している流体に対して、光源部20から出射された紫外光を照射する空間である。殺菌室60の壁面は、凹球面状に形成されている。殺菌室60を凹球面状とすることにより、紫外光を凹球面で効率的に反射させることができ、殺菌室60内の紫外光の照度を高めることができるので、流体の殺菌効率を向上させることができる。
【0026】
殺菌室本体10は、紫外光の反射率が高い材料を用いる。殺菌室本体10は、たとえば、全体がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により形成されている。PTFEを用いることにより、紫外光の反射率を高めることができ、殺菌効率の向上を図ることができる。光源部20からの紫外光に対して高い反射率を有する材料であれば、PTFE以外の材料を用いてもよい。特に、殺菌室本体10の材料は、光源部20からの紫外光に対して反射率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の材料とするとよい。また、殺菌室本体10は、凹球面を構成する表層のみを、紫外光に対する反射率が80%以上の材料、たとえば、PTFEやアルミニウムなどにより形成するようにしてもよい。
【0027】
殺菌室本体10には、殺菌室60に開口するように光源用開口14が形成されている。光源用開口14は、光源部20から出射された紫外光を殺菌室60に入射させるための開口である。
【0028】
殺菌室本体10には、さらに、殺菌室60に開口するように室流入口12が形成されている。室流入口12は、殺菌室60と外側領域70とを導通する。室流入口12は、外側領域70から殺菌室60に流体を流入させるための入口である。
【0029】
殺菌室本体10には、さらに、殺菌室60に開口するように室流出口13が形成されている。室流出口13は、殺菌室60と外部とを導通する。室流出口13は、殺菌室60から外部へ流体を流出させるための出口である。
【0030】
光源部20は、光源用開口14を閉塞するように配置されている。光源部20は、光源用開口14から殺菌室60に紫外光を出射するように構成されている。光源部20のうち光源用開口14に露出する部位、すなわち光源部20における紫外光を出射する出射面20Aは、殺菌室60の壁面の一部を構成する。そのため、殺菌室60の流体は光源部20の出射面20Aと接触する。したがって、光源部20は、殺菌室60内の流体によって冷却される。その結果、光源部20の発光効率を高めることができる。
【0031】
筐体30は、殺菌室本体10と光源部20を内包するようにして設けられている。つまり、筐体30は、殺菌室本体10および光源部20を覆うように配置されている。詳細には、筐体30の内面は、殺菌室本体10の外面に対向する。また、筐体30の内面は、光源部20の外面に対向する。つまり、筐体30の内面は、光源部20の外面を構成する外側裏面20Bおよび外周面20Cに対向する。
【0032】
そして、筐体30の内面と殺菌室本体10の外面との隙間、および、筐体30の内面と光源部20の外面との隙間により、外側領域70が形成されている。外側領域70の一部は、筐体30の内面に面し、かつ、殺菌室本体10の外面に面する領域である。外側領域70の他の一部は、筐体30の内面に面し、かつ、光源部20の外面に面する領域である。
【0033】
筐体30には、流体が供給される筐体供給口31Aが形成されている。筐体供給口31Aは、外側領域70に導通されている。つまり、筐体供給口31Aから供給された流体は、外側領域70を通過して、室流入口12から殺菌室60に流入する。
【0034】
筐体30には、さらに、流体を排出する筐体排出口32Aが形成されている。筐体排出口32Aは、殺菌室本体10の室流出口13に導通されている。したがって、殺菌室60で殺菌された流体は、室流出口13を介して、筐体排出口32Aから外部へ排出される。
【0035】
2.流体殺菌装置1における流体の流路について
流体殺菌装置1における流体の流路について図2を参照して説明する。図2に示すように、流体は、筐体供給口31Aから外側領域70に供給される。
【0036】
まずは、筐体供給口31Aから供給された流体は、外側領域70のうち、筐体30の内面と光源部20の外側裏面20Bとの隙間に流入する。このとき、流体は、光源部20の外側裏面20Bに接触して、光源部20を冷却する。続いて、流体は、外側領域70のうち、筐体30の内面と光源部20の外周面20Cとの隙間に流入する。このとき、流体は、光源部20の外周面20Cに接触して、光源部20を冷却する。続いて、流体は、外側領域70のうち、筐体30の内面と殺菌室本体10の外面との隙間に流入する。
【0037】
このように、筐体供給口31Aから供給された流体は、最初に、光源部20の外面である外側裏面20Bおよび外周面20Cに接触する。したがって、光源部20は、筐体供給口31Aから供給された流体によって効率的に冷却される。その結果、光源部20の発光効率を高めることができる。
【0038】
続いて、外側領域70の流体は、殺菌室本体10の室流入口12から殺菌室60へと流れ込む。殺菌室60に流入した流体は、螺旋流を維持しながら、室流出口13に向かって進んでいく。流体は、室流出口13から筐体排出口32Aへ流動し、外部へ排出される。
【0039】
ここで、殺菌室60が凹球面状の壁面を有するため、殺菌室60における流体は、螺旋流を構成する。さらに、室流入口12および室流出口13は、室流入口12から流入した流体が殺菌室60における凹球面状の壁面に沿って発生する螺旋流が、室流入口12寄りから室流出口13に進むに従って、螺旋流の中心軸の方向が変化するように、構成されている。
【0040】
図2に示すように、殺菌室60における螺旋流の中心軸方向は、室流入口12から室流出口13へ向かって変化するように構成されている。室流入口12と室流出口13との位置関係から、殺菌室60に流入した流体の螺旋流の中心軸方向は、室流出口13の中心軸L3の方向に近づいていくように変化するように構成されている。
【0041】
本形態においては、室流入口12から流入した直後に発生する螺旋流の中心軸方向が、室流出口13の中心軸L3の方向に対して角度を有しているために、螺旋流の中心軸方向が変化する。特に、螺旋流の中心軸方向と室流出口13の中心軸L3の方向とのなす角度が、大きな角度(90°に近い角度)を有しているため、螺旋流の中心軸方向が変化する角度が大きくなる。このように構成されることにより、殺菌室60において、流体のよどみ部分がなくなり流れが良好とできる。特に、室流出口13の近傍における流体の流れを良好にできる。
【0042】
このように、殺菌室60内において、室流入口12から流入した流体が直ちに室流出口13へ向かうことを抑制でき、効果的に螺旋流を発生させることができる。殺菌室60全体において螺旋流を維持することができるため、殺菌室60における流体の流路を長くすることができる。その結果、光源部20からの紫外光による所望の積算照量を確保することができ、所望の殺菌性能を確保できる。さらに、圧損を小さくすることができ、殺菌効率を高めることができる。
【0043】
また、殺菌室60において螺旋流を維持することができるため、殺菌室60における流体の圧損を小さくすることができる。このことからも、殺菌効率を高めることができる。
【0044】
3.殺菌室本体10の構成部材
殺菌室本体10の構成部材について図3を参照して説明する。殺菌室本体10は、少なくとも2つに分割された複数の本体構成部材を備える。殺菌室本体10は、2つの本体構成部材により構成されている場合を例にあげる。
【0045】
殺菌室本体10は、図3に示すように、第1本体構成部材10Aと、第2本体構成部材10Bとに2分割されている。
【0046】
第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bは、殺菌室60が2つの半球状に2分割されるように構成されている。つまり、第1本体構成部材10Aは、殺菌室本体10を構成する複数の本体構成部材の1つを構成し、壁面が半凹球面状に形成されている。第2本体構成部材10Bは、殺菌室本体10を構成する複数の本体構成部材の1つを構成し、壁面が半凹球面状に形成されている。第2本体構成部材10Bは、第1本体構成部材10Aに対向して配置されている。
【0047】
第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bには、分割面として、リング状に境界面10Aa、10Baがそれぞれ現れる。第1本体構成部材10Aのリング状の境界面10Aaと第2本体構成部材10Bのリング状の境界面10Baとを合わせることで内部に殺菌室60が現れるように構成されている。
【0048】
殺菌室本体10の凹球面の直径は、Dである。第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bとの分割面における殺菌室60の開口の直径が、Dに一致する。殺菌室本体10をこのように2分割することで、殺菌室本体10の作製を容易にすることができる。
【0049】
第1本体構成部材10Aには、光源用開口14が形成されている。光源用開口14を含む平面Pは、境界面10Aa、10Baに平行な面となるように構成されている。つまり、光源用開口14の中心軸L1は、境界面10Aa、10Baに直交する。したがって、光源用開口14は、第1本体構成部材10Aにおいて、境界面10Aa、10Baから最も遠い位置に形成されている。光源用開口14の縁線は、たとえば円である。したがって、光源用開口14は、同一平面状に位置する。光源用開口14の縁線の直径は、dである。
【0050】
殺菌室60の直径Dと光源用開口14の直径dの比率D/dは、たとえば1.8~2.2の範囲に設定されている。この場合、殺菌室60の中心点O1を中心とした場合に、第1本体構成部材10Aに形成された光源用開口14の開口角θ1は、約60°となる。同様の基準として、第1本体構成部材10Aの凹球面状を形成する部分の角度θ2、θ3の合計は、残りの120°(60°ずつ)となる。この構成により、室流入口12から流入した流体が凹球面状の壁面に確実に当たり、効果的に螺旋流を発生させることができる。その結果、圧損を小さくすることができ、殺菌効率を高めることができる。
【0051】
第2本体構成部材10Bには、室流入口12と室流出口13が形成されている。室流入口12の中心軸L2は、殺菌室60の中心点O1からオフセットしている。室流入口12の中心軸L2は、光源用開口14の中心軸L1に平行に形成されている。ただし、室流入口12の中心軸L2が中心点O1からオフセットしていれば、室流入口12の中心軸L2と光源用開口14の中心軸L1とは、交差する位置関係や、ねじれの位置関係としてもよい。
【0052】
室流入口12は、たとえば円筒状の内周面を有する。室流入口12の内径は、diである。室流入口12の中心軸L2が殺菌室60の中心点O1からオフセットしているため、室流入口12における殺菌室60側の開口の縁線は、卵型に近似した形状を有している。
【0053】
室流入口12は、室流入口12における殺菌室60側の開口が光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面に対向するように配置されている。図3(b)においては、室流入口12における殺菌室60側の開口が下方を向いており、光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面が上方を向いている。
【0054】
室流出口13の中心軸L3は、殺菌室60の中心点O1からオフセットしている。室流出口13の中心軸L3は、室流入口12の中心軸L2に平行に形成されている。したがって、室流出口13の中心軸L3は、光源用開口14の中心軸L1にも平行に形成されている。ただし、室流出口13の中心軸L3が中心点O1からオフセットしていれば、室流出口13の中心軸L3と室流入口12の中心軸L2とは、交差する位置関係や、ねじれの位置関係としてもよい。また、室流出口13の中心軸L3と光源用開口14の中心軸L1とは、交差する位置関係や、ねじれの位置関係としてもよい。
【0055】
室流出口13は、たとえば円筒状の内周面を有する。室流出口13の内径は、doである。室流出口13の中心軸L3が殺菌室60の中心点O1からオフセットしているため、室流出口13における殺菌室60側の開口の縁線は、卵型に近似した形状を有している。
【0056】
室流出口13は、室流出口13における殺菌室60側の開口が光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面に対向するように配置されている。図3(b)においては、室流出口13における殺菌室60側の開口が下方を向いており、光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面が上方を向いている。
【0057】
上述したように、光源用開口14の中心軸L1は、境界面10Aa、10Baに直交する。この場合、境界面10Aa、10Baの全面が、光源用開口14の中心軸L1に対して最大の角度を有する面となる。したがって、境界面10Aa、10Baに入り込む紫外光を少なくすることができるので、境界面10Aa、10Baを介した紫外光の漏れを低減することができる。
【0058】
4.殺菌室本体10の各口12,13,14の位置関係
殺菌室本体10の各口12,13,14の位置関係について、図4を参照して説明する。詳細には、室流入口12、室流出口13および光源用開口14の位置関係について説明する。
【0059】
上述したように、光源用開口14の中心軸L1、室流入口12の中心軸L2、および室流出口13の中心軸L3は、たとえば平行である。そして、光源用開口14の縁線、室流入口12の内周面の断面形状、および室流出口13の内周面の断面形状は、それぞれ円形である。
【0060】
室流入口12は、室流入口12の開口が光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面に対向するように配置されている。光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流入口12の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。本形態においては、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流入口12の開口の他の一部が、光源用開口14に重なるように配置されている。つまり、室流入口12は、図4に示した方向から見て、その少なくとも一部のみが光源用開口14の外側となるようにその位置が設定されている。
【0061】
上述したように、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流入口12の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。光源用開口14の中心軸L1と室流入口12の中心軸L2とは平行である。つまり、室流入口12の中心軸L2の方向から見た場合においても、室流入口12の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。
【0062】
したがって、室流入口12から流入した流体は、全てが光源用開口に向かって進むことがなく、流入した流体の少なくとも一部が、殺菌室60の凹球面状の壁面に当たることになる。このように、流入した流体の少なくとも一部が凹球面状の壁面に当たることによって、殺菌室において螺旋流を発生することができる。そして、殺菌室60に流入した直後に螺旋流を発生させることにより、凹球面状の殺菌室60の全ての領域において螺旋流を維持させることができる。したがって、所望の積算照量を確保することができ、所望の殺菌性能を確保できる。
【0063】
なお、上記構成の他に、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流入口12の開口の全てが、光源用開口14に重ならないように配置されるようにしてもよい。つまり、室流入口12の中心軸L2の方向から見た場合において、室流入口12の開口の全てが、光源用開口14に重ならないように配置してもよい。この場合、殺菌室60において螺旋流を効果的に発生することができる。殺菌室60に流入した直後に、より強い螺旋流を発生させることにより、凹球面状の殺菌室60の全ての領域において螺旋流を維持させることができる。
【0064】
室流出口13は、室流出口13の開口が光源用開口14を含む平面Pのうち殺菌室60側の面に対向するように配置されている。光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流出口13の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。本形態においては、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流出口13の開口の他の一部が、光源用開口14に重なるように配置されている。つまり、室流出口13もまた、図4に示した方向から見て、その少なくとも一部のみが光源用開口14の外側となるようにその位置が設定されている。
【0065】
上述したように、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流出口13の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。光源用開口14の中心軸L1と室流出口13の中心軸L3とは平行である。つまり、室流出口13の中心軸L3の方向から見た場合においても、室流出口13の開口の少なくとも一部が、光源用開口14に重ならないように配置されている。
【0066】
したがって、室流出口13へ向かう流体の少なくとも一部が、殺菌室60における凹球面状の壁面に当たりながら、室流出口13へ流動する。室流出口13へ向かう流体は、螺旋流を維持した状態にできる。その結果、室流入口12から室流出口13へ流通する流体が、全体に亘って、螺旋流を維持することができる。殺菌室60において螺旋流を維持することができるため、殺菌室60における流体の圧損を小さくすることができ、殺菌効率を高めることができる。したがって、所望の積算照量を確保することができ、所望の殺菌性能を確保できる。
【0067】
なお、上記構成の他に、光源用開口14の中心軸L1の方向から見た場合において、室流出口13の開口の全てが、光源用開口14に重ならないように配置されるようにしてもよい。つまり、室流出口13の中心軸L3の方向から見た場合において、室流出口13の開口の全てが、光源用開口14に重ならないように配置してもよい。この場合、室流出口13へ向かう流体に、強い螺旋流を維持させることができる。
【0068】
また、室流出口13の内径は、室流入口12の内径よりも大きく形成している。室流入口12の内径を小さくすることにより、殺菌室60に流入する流速を大きくすることができ、効果的に螺旋流を発生することができる。さらに、室流出口13の内径を大きくすることにより、流出する流体が、螺旋流を維持した状態で流出させることができる。したがって、室流出口13付近における圧損を小さくすることができ、殺菌効率を高めることができる。
【0069】
なお、図4に示した方向から見て、室流入口12や室流出口13の面積における光源用開口14の外側となる面積の割合は、50%以上が好ましいく、さらに大きいほどより好ましい。これにより、螺旋流を形成することがより容易となる。なお、この面積に割合は、殺菌室60の直径D、室流入口12の内径di、室流出口13の内径doの大きさに応じて、設定する必要がある。
【0070】
5.境界面10Aa,10Baの構成および第1シール部材40
第1本体構成部材10Aの境界面10Aa、第2本体構成部材の境界面10Baおよび第1シール部材40について、図3を参照して説明する。
【0071】
第1本体構成部材10Aの境界面10Aaは、リング状に形成されている。境界面10Aaには、リング状の凹溝15が形成されている。この凹溝15は、リング状の第1シール部材40を嵌め込んで境界面10Aaにおける第1シール部材40の位置を固定するために設けたものである。凹溝15の断面形状は、矩形、V字、円など、第1シール部材40を嵌め込める形状であれば任意である。
【0072】
第1シール部材40は、フッ素ゴムまたはフッ素エラストマーによって形成されている。いずれの材料も、紫外光による劣化に強く、紫外光の反射率が高い弾性材料である。第1シール部材40は、断面円形のリング状を例にあげるが、任意の断面形状とすることができる。
【0073】
第1シール部材40は、凹溝15に嵌め込まれている。第1シール部材40を凹溝15に嵌め込むことにより、第1本体構成部材10Aの境界面10Aaにおける第1シール部材40を固定し安定させることができ、位置決めすることができる。また、第1シール部材40を凹溝15に嵌め込むことで第1シール部材40の露出面積を小さくすることができ、紫外光が第1シール部材40に直接照射されないようにすることができる。そのため、第1シール部材40の寿命を向上させることができる。
【0074】
図3(b)に示すように、流体殺菌装置1においては、第1本体構成部材10Aの境界面10Aaと第2本体構成部材10Bの境界面10Baとが対向するように配置されている。そして、殺菌室本体10は、図3(b)の上下方向において、筐体30の内部において筐体30から押圧されるように配置される。その押圧によって、第1シール部材40が、第1本体構成部材10Aの境界面10Aaおよび第2本体構成部材10Bの境界面10Baに、周方向全周に亘って密着する。このようにして、第1シール部材40は、殺菌室60と外側領域70とを区画している。
【0075】
この状態において、第1本体構成部材10Aの境界面10Aaと第2本体構成部材10Bの境界面10Baとは、密着する状態、または、僅かに隙間を有する状態となる。このようにして、第1本体構成部材10Aの半凹球面と第2本体構成部材10Bの半凹球面とにより殺菌室60が構成され、殺菌室本体10が構成される。
【0076】
上記構成により、仮に殺菌室60から第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bの境界面10Aa、10Baに流体が浸入したとしても、第1シール部材40によってこれよりも外側には流体が流動しない。つまり、第1シール部材40によって第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bの境界面10Aa、10Baがシールされ、殺菌室60と外側領域70との間での流体の漏れを防止することができる。
【0077】
なお、境界面10Aa、10Baの寸法精度や表面粗さによっては、周方向の一部において接触し、周方向の残りの部位において離間している場合もある。これらの場合においても、第1シール部材40は、第2本体構成部材10Bの境界面10Baに全周に亘って密着している。したがって、上記と同様の効果を発揮する。
【0078】
また、第1シール部材40がフッ素ゴムまたはフッ素エラストマーであるため、第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bとの境界面10Aa、10Baに光源部20からの紫外光が進入したとしても、紫外光を第1シール部材40によって反射させることができる。したがって、第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bとの境界面10Aa、10Baから殺菌室本体10の外部に紫外光の漏れが生じるのを防止することができる。
【0079】
また、第1シール部材40は、凹溝15に嵌め込まれているので、光源用開口14からの紫外光が直接照射されない。そのため、第1シール部材40の寿命を向上されることができる。
【0080】
なお、本形態では殺菌室本体10は第1本体構成部材10Aと第2本体構成部材10Bの2つで構成されているが、3つ以上の本体構成部材で構成されていてもよい。その場合も各本体構成部材との境界面に第1シール部材40を配置することで、殺菌室60と外側領域70との間の流体の漏れを防止し、殺菌室本体10外部への紫外光の漏れを防止することができる。
【0081】
また、本形態では、凹溝15を第1本体構成部材10Aに設けていたが、第2本体構成部材10Bに設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0082】
6.光源部20の構成
光源部20の構成について、図5を参照して説明する。図5は、光源部20の構成を示した断面図である。光源部20は、殺菌室本体10の光源用開口14を塞ぐようにして配置されている。また、光源部20の紫外光放射側が殺菌室60側となるように配置されている。光源部20から放射される紫外光は、光源用開口14から殺菌室60へと入射する。
【0083】
光源部20は、実装基板21と、発光素子22と、窓部材23と、光源筐体24と、ガスケット25と、を有している。光源部20全体としての形状は、たとえば円盤状である。ただし、光源部20の形状は、任意の形状とすることができる。
【0084】
実装基板21は、実装面を有する基板である。実装基板21には、配線パターンが形成されている。実装基板21の裏面には、電力を供給する配線80が接続されている。
【0085】
発光素子22は、紫外光を発光する素子である。たとえば、発光素子22は、III族窒化物半導体を用いたものであり、発光波長は、200~280nmである。発光波長がUVC領域にあるため、流体を効率的に殺菌することができる。発光素子22は、実装基板21の実装面に直接実装してもよいし、パッケージ化されたLEDパッケージを実装基板21の実装面に実装してもよい。LEDパッケージは、発光素子22を筐体に配置してガラス板やレンズにより封止したユニットである。また、実装基板21の実装面には、発光素子22の駆動や保護に必要な各種素子(たとえばツェナーダイオード)などが実装されている。
【0086】
窓部材23は、円形のガラス板であり、ガスケット25上に配置されている。窓部材23は、石英からなる。紫外光を透過する材料であれば石英以外を用いてもよい。たとえば、サファイアなどを用いてもよい。また、窓部材23は、板状に限らず、レンズ状であってもよく、たとえば、TIRレンズ、フライアイレンズ、フレネルレンズなどであってもよい。
【0087】
光源筐体24は、少なくとも窓部材23の中心付近を覆わないように、他の部位を覆うように設けられている。光源筐体24は、たとえば、実装基板21の裏面および側面、ならびに窓部材23の側面に連続して覆うように設けられている。光源筐体24は、1つの部材により構成してもよいし、複数の部材により構成してもよい。
【0088】
光源筐体24は、放熱性の高い材料により形成される。たとえば、光源筐体24は、SUS、Alなどの金属や、放熱性の高い樹脂材料などにより形成される。光源部20の光源筐体24は流体に接触するため、光源部20を効率的に冷却することができる。
【0089】
ガスケット25は、リング状に形成されており、実装基板21上であって端部近傍に沿って配置され、ガスケット25の内側に発光素子22や各種素子が位置している。ガスケット25の高さは、発光素子22や各種素子よりも高く設定されている。ガスケット25は、紫外光に対して耐性のある弾性材料からなる。第1シール部材40と同じ材料としてもよい。
【0090】
ガスケット25は、弾性変形して、実装基板21、窓部材23、光源筐体24と密着している。これにより、光源筐体24、窓部材23、およびガスケット25で囲まれた内部空間が密閉され、流体がその内部空間に漏れないようにしている。したがって、発光素子22や各種素子が配置された領域に流体が浸入しないようにできる。なお、ガスケット25は、実装基板21と窓部材23のみに密着するようにしてもよいし、窓部材23と光源筐体24のみに密着するようにしてもよい。
【0091】
ここで、光源部20の外面は、紫外光を出射する出射面20Aと、出射面の裏面に位置する外側裏面20Bと、外周面20Cとを有する。出射面20Aは、光源用開口14に対応して位置し、窓部材23のうち光源筐体24に覆われていない部位により構成される。つまり、出射面20Aは、窓部材23の表面により構成される。外側裏面20Bは、光源筐体24の裏面側の部位により構成される。外周面20Cは、光源筐体24の外周面の部位により構成される。
【0092】
7.筐体30の構成および第2シール部材50
筐体30の構成および第2シール部材50について図1図6および図7を参照して説明する。上述したように、筐体30は、殺菌室本体10と光源部20を内包するようにして設けられている。筐体30は、第1筐体部材31と、第2筐体部材32とを備える。第1筐体部材31と第2筐体部材32との分割位置は、任意に設定することができる。また、筐体30は、1部材により構成してもよいし、3以上の部材により構成してもよい。なお、第1筐体部材31と第2筐体部材32との接合部分には、図示しないシール構造を有している。
【0093】
第1筐体部材31は、殺菌室本体10の外面の一部、および、光源部20の外面を覆うように構成されている。したがって、第1筐体部材31の内面と、殺菌室本体10の外面および光源部20の外面との間に、外側領域70の一部が形成される。
【0094】
第1筐体部材31には、筐体供給口31Aが形成されている。筐体供給口31Aは、筒状に形成されており、たとえば円筒状や多角形筒状に形成される。図1および図6に示すように、筐体供給口31Aは、光源部20の外側裏面20Bに対向するように配置されている。筐体供給口31Aの中心軸方向から見た場合に、筐体供給口31Aの開口の少なくとも一部が光源部20の外側裏面に対向するように設定されている。これにより、筐体供給口31Aから外側領域70に流入した流体が直接光源部20に当たるようにでき、光源部20の冷却効率を向上させることができる。
【0095】
特に、筐体供給口31Aの中心軸方向から見た場合に、筐体供給口31Aの開口の全体が光源部20の外側裏面20Bに対向するように設定されているとよい。光源部20の冷却効率をより向上させることができる。
【0096】
さらに、第1筐体部材31には、光源部20と外部とを接続する配線80を通すための開口部31Bが設けられている。開口部31Bは、たとえば円筒状であり、円筒の一端は光源部20の外側裏面20Bに接触している。そして、開口部31Bの円筒の内部に配線80を通すことで、光源部20と配線80の接続部、および配線80が流体と接触しないようにしている。
【0097】
第2筐体部材32は、殺菌室本体10の外面の残りの部分を覆うように構成されている。第2筐体部材32の内面と、殺菌室本体10の外面との間に、外側領域70の一部が形成される。
【0098】
第2筐体部材32には、筐体排出口32Aが形成されている。筐体排出口32Aは、殺菌室本体10の室流出口13に接続されている。殺菌室本体10の室流出口13と筐体30の筐体排出口32Aの接続構造について図7を参照して説明する。
【0099】
図7に示すように、筐体排出口32Aは、室流出口13側に突出する円筒状部分32Aaを有し、その円筒状部分32Aaを室流出口13に嵌め込むことによって室流出口13と接続されている。また、室流出口13のうち、筐体排出口32A側の領域は他の領域に比べて内径が大きく、その内径は上記円筒状部分32Aaの外径とおよそ一致している。
【0100】
この内径の違いによって室流出口13には段差部分13Aが形成されている。この段差部分13Aにリング状の第2シール部材50が配置されている。第2シール部材50は、第1シール部材40と同様の材料により形成されている。すなわち、第2シール部材50は、フッ素ゴムまたはフッ素エラストマーによって形成されている。
【0101】
第2シール部材50は、リング状に形成されている。第2シール部材50は、室流出口13と筐体排出口32Aとの境界面に挟まれて配置されている。第2シール部材50は、筐体30からの押圧によって弾性変形しており、室流出口13の段差部分13Aと筐体排出口32Aの円筒状部分32Aaの先端の双方に密着している。このような構造により、第2シール部材50は、室流出口13と筐体排出口32Aとの境界面をシールする。したがって、第2シール部材50によって、室流出口13と筐体排出口32Aとの境界面を介した室流出口13と外側領域70との間の流体の漏れを防止している。
【0102】
8.水流シミュレーション
本形態における殺菌室60をモデル化して、水流シミュレーションを行った。水流シミュレーション結果は、図8に示すように、殺菌室60において螺旋流を形成していることが分かる。
【0103】
また、殺菌室60を流通する水の単位時間当たりの流量が、8L/secである場合に、水が室流入口12から流入してから、室流出口13から流出するまでの時間、すなわち、殺菌室60における滞在時間は、0.14secであった。流出された水の殺菌性能は、非常に高く、目的の細菌やウイルスの殺菌または不活化が、90%以上であることが確認できた。
【0104】
以上のことから、殺菌室本体10は、殺菌室60を流通する流体の単位時間当たりの流量が、0.5~50L/secである場合に、殺菌室60における流体の滞在時間が、0.02~2secとなるように構成されるとよい。これにより、所望の積算照量を確保することができ、所望の殺菌性能を確保できる。
【0105】
9.殺菌室60における光源用開口14での接線のなす角度θ4
殺菌室60における光源用開口14での接線のなす角度θ4について図9を参照して説明する。
【0106】
図9において、L4、L5は、光源用開口14の中心軸L1を通る殺菌室本体10の断面において、殺菌室60における光源用開口14での接線である。接線L4、L5のなす角度が、θ4である。
【0107】
上述したように、殺菌室60の直径Dと光源用開口14の直径dの比率D/dは、1.8~2.2の範囲に設定されている。比率D/dが2.0の場合には、接線L4、L5のなす角度θ4は、120°となる。比率D/dが1.8の場合には、なす角度θ4は、約113°となる。比率D/dが2.2の場合には、なす角度θ4は、約126°となる。
【0108】
比率D/dが1.8~2.0の範囲の場合には、なす角度θ4が113°~120°となる。理由は後述するが、比率D/dが1.8~2.0の範囲に設定されると、よりよい。
【0109】
10.発光素子22の配光特性
発光素子22の配光特性について図10を参照して説明する。図10に示すように、発光素子22の配光特性は、ハート形を構成する。詳細には、発光素子22は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸(図10の0°の位置)を通る断面において、光学的軸を基準として対称となる2つの最大照度軸を有するように構成されている。最大照度軸は、+30°付近および-30°付近の2箇所である。
【0110】
図10に示す配光特性において、照度が最大値の50%の照度となる軸は、+60°付近および-60°付近に位置する。したがって、図10に示す配光特性において、照度が最大値の50%の照度となる軸間角度である半値角は、120°となる。理由は後述するが、半値角は、110°~130°の範囲に設定されるとよい。
【0111】
11.光源用開口14と発光素子22の半値角θ5との関係
殺菌室60における光源用開口14と発光素子22の半値角θ5との関係について、図9図11を参照して説明する。
【0112】
図9に示す光源用開口14の中心軸L1と、図11に示す発光素子22の光学的軸L6とが一致するように、殺菌室本体10と光源部20とが配置されている。
【0113】
発光素子22の半値角θ5は、図10および図11に示すように、照度が最大値の50%となる軸L7、L10のなす角度である。半値角θ5は、たとえば120°付近に設定されている。たとえば、半値角θ5は、120°を中心として、-10°~+10°の範囲に設定されている。つまり、半値角θ5は、110°~130°の範囲に設定されている。
【0114】
図11に示すように、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5の範囲に含まれる領域の直径は、d1となる。つまり、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5に対応する軸L7、L10との交点間距離が、d1となる。
【0115】
また、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5の-10°の範囲に含まれる領域の直径は、d2となる。つまり、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5の-10°に対応する軸L8、L11との交点間距離が、d2となる。発光素子22の半値角θ5の-10°に対応する軸L8、L11とは、軸L7から-5°の軸と、軸L10から+5°の軸である。ここで、図11において、正の角度は、右回りの角度とする。
【0116】
また、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5の+10°の範囲に含まれる領域の直径は、d3となる。つまり、光源部20の出射面20Aにおいて、発光素子22の半値角θ5の+10°に対応する軸L9、L12との交点間距離が、d3となる。発光素子22の半値角θ5の-10°に対応する軸L9、L12とは、軸L7から-5°の軸と、軸L10から+5°の軸である。
【0117】
そして、光源用開口14は、光源用開口14の縁線が発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように形成されている。したがって、図11において、光源用開口14の縁線の一方が軸L8と軸L9の間に位置し、および、光源用開口14の縁線の他方が軸L11と軸L12との間に位置する。つまり、光源用開口14の直径dが、発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°の範囲に含まれる領域の直径d2~d3に含まれている。
【0118】
上述したように、光源用開口14の縁線が、発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°を構成する領域に含まれるように位置する。そして、発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°は、照度が最大値の50%近傍となる角度である。したがって、発光素子22の半値角θ5の-10°~+10°を構成する領域は、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有する領域となる。つまり、光源用開口14から出射される紫外光の照度は、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有することになる。殺菌室60の内部には、照度が最大値の50%近傍以上の照度を有する紫外光が照射され、殺菌室60を流通する流体を効率的に殺菌することができる。
【0119】
特に、半値角θ5は、110°~130°としている。例えば、半値角θ5が110°の場合には、以下のようになる。発光素子22の配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸L6を中心軸に対して、+55°から-55°までの範囲が、照度50%以上となる。そして、半値角θ5の-10°~+10°を構成する領域は、光学的軸L6を中心軸とするときの配光角100°~120°の範囲となる。この場合、配光角100°~120°の範囲に、光源用開口14の縁線が含まれるように形成される。
【0120】
半値角θ5が120°の場合には、光学的軸L6を中心軸とするときの配光角110°~130°の範囲に、光源用開口14の縁線が含まれるように形成される。半値角θ5が130°の場合には、光学的軸L6を中心軸とするときの配光角120°~140°の範囲に、光源用開口14の縁線が含まれるように形成される。
【0121】
このように半値角θ5を110°~130°とすることによって、凹球面状の殺菌室60内に、高い照度の紫外光を出射することができる。したがって、殺菌効率を高めることができる。
【0122】
また、発光素子22は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸L6を通る断面において、光学的軸L6を基準として対称となる2つの最大照度軸を有するように構成されている。つまり、発光素子22の配光特性がハート形となっている。このような配光特性を有する発光素子22を用いることにより、殺菌室60内に満遍なく紫外光を照射することができる。その結果、殺菌効率を高めることができる。
【0123】
さらに、光源用開口14の縁線は、円形に形成されている。これにより、所望の照度を有する紫外光を、適切に殺菌室60内に出射することができる。その結果、殺菌効率を高めることができる。
【0124】
また、殺菌室60の直径Dと光源用開口14の直径dの比率D/dは、1.8~2.2の範囲に設定されている。比率D/dを1.8~2.2の範囲に設定することにより、凹球面状の殺菌室60内にて、所望の照度を有する紫外光を照射することができる。
【0125】
特に、半値角θ5が120°の場合には、比率D/dが2.0の場合に、半値角θ5の境界面が、殺菌室60における光源用開口14での接線L4、L5に一致する状態となる。したがって、半値角θ5が120°の場合において、比率D/dが2.0の場合には、最も適切に紫外光を照射することができる。そこで、半値角θ5が110°~130°であり、比率D/dを1.8~2.2の範囲に設定するとよい。このように構成することで、光源用開口14から出射される紫外光の照度を半値以上にでき、殺菌効率を高めることができる。
【0126】
そして、発光素子22は、配光特性の広がりの中で中心方向に位置する光学的軸L6が光源用開口14の縁線である円形の中心軸L1に一致するように配置されている。これにより、殺菌室60内に、所望の照度を有する紫外光を照射することができる。
【符号の説明】
【0127】
1:流体殺菌装置
10:殺菌室本体
12:室流入口
13:室流出口
14:光源用開口
15:凹溝
20:光源部
22:発光素子
30:筐体
31A:筐体供給口
32A:筐体排出口
60:殺菌室
θ5:発光素子の半値角
L1:光源用開口の中心軸
L6:発光素子の光学的軸
図1
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