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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104468
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】搬送装置および搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/36 20060101AFI20250703BHJP
   B65G 35/06 20060101ALI20250703BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20250703BHJP
   H05K 3/34 20060101ALN20250703BHJP
【FI】
B41F15/36 B
B65G35/06 J
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222294
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深草 祥史
【テーマコード(参考)】
2C035
5E319
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FA25
2C035FA26
2C035FB26
2C035FD01
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB05
5E319BB05
5E319CC33
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】搬送対象物をより確実に所定位置で位置決めする。
【解決手段】搬送装置は、水平方向に平行に延在する一対のレールを備え、生産ラインで用いられる搬送対象物を前記一対のレール上で搬送して所定位置に位置決めする。搬送装置は、レールの延在方向に直交する面で搬送対象物の被吸着部に吸着する吸着部を有する押圧部材と、押圧部材を昇降する昇降部と、一対のレールの延在方向に押圧部材を移動させる移動部と、一対のレール上の搬送対象物を一対のレールに対してクランプするクランプ部と、押圧部材が下降して押圧部材の吸着部が搬送対象物の被吸着部に吸着するように昇降部と移動部とを制御し、搬送対象物が所定位置まで搬送されるように移動部を制御し、搬送対象物が所定位置でクランプされるようにクランプ部を制御した後、押圧部材が搬送対象物から退避するように昇降部と移動部とを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に平行に延在する一対のレールを備え、生産ラインで用いられる搬送対象物を前記一対のレール上で搬送して所定位置に位置決めする搬送装置であって、
前記レールの延在方向に直交する面で前記搬送対象物の被吸着部に吸着する吸着部を有する押圧部材と、
前記押圧部材を昇降する昇降部と、
前記一対のレールの延在方向に前記押圧部材を移動させる移動部と、
前記一対のレール上の前記搬送対象物を該一対のレールに対してクランプするクランプ部と、
前記押圧部材が下降して該押圧部材の吸着部が前記搬送対象物の被吸着部に吸着するように前記昇降部と前記移動部とを制御し、前記搬送対象物が前記所定位置まで搬送されるように前記移動部を制御し、前記搬送対象物が前記所定位置でクランプされるように前記クランプ部を制御した後、前記押圧部材が前記搬送対象物から退避するように前記昇降部と前記移動部とを制御する制御部と、
を備える搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記押圧部材の吸着部は、磁石および磁性体の一方であり、
前記搬送対象物の被吸着部は、磁石および磁性体の他方である、
搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送装置であって、
前記搬送対象物は、前記レール上を転動するローラを有する、
搬送装置。
【請求項4】
水平方向に平行に延在する一対のレールと、押圧部材と、を用いて、生産ラインで用いられる搬送対象物を前記一対のレール上で搬送して所定位置に位置決めする搬送方法であって、
前記レールの延在方向に直交する面で前記押圧部材を搬送対象物に吸着させ、
前記押圧部材を前記一対のレールの延在方向に移動させて前記搬送対象物を前記所定位置まで搬送し、
前記搬送対象物を前記所定位置でクランプした後、前記押圧部材を前記搬送対象物から退避させる、
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、搬送装置および搬送方法について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送装置としては、前後に延在する左右一対の支持レールと、プッシャとプッシャを昇降させるプッシャ昇降装置とを含むヘッドと、ヘッドを前後に移動させるヘッド移動装置と、を備える作業装置(印刷装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この作業装置は、プッシャ昇降装置によりプッシャを下降させて下方に突出させ、ヘッド移動装置によりヘッドと共にプッシャを前後に移動させることにより、支持レール上の搬送対象物(スクリーンマスクや搬送治具)を前後に押して搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/234649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した作業装置では、支持レール上の搬送対象物をプッシャで前後に押して搬送するため、搬送対象物が目標位置まで移動してプッシャを停止させた後も、搬送対象物が慣性により目標位置を超えて進み、搬送対象物を目標位置で位置決めさせることができない場合が生じる。
【0005】
本開示は、レール上の搬送対象物を押圧部材で押して搬送するものにおいて、搬送対象物をより確実に所定位置で位置決めすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の搬送装置は、
水平方向に平行に延在する一対のレールを備え、生産ラインで用いられる搬送対象物を前記一対のレール上で搬送して所定位置に位置決めする搬送装置であって、
前記レールの延在方向に直交する面で前記搬送対象物の被吸着部に吸着する吸着部を有する押圧部材と、
前記押圧部材を昇降する昇降部と、
前記一対のレールの延在方向に前記押圧部材を移動させる移動部と、
前記一対のレール上の前記搬送対象物を該一対のレールに対してクランプするクランプ部と、
前記押圧部材が下降して該押圧部材の吸着部が前記搬送対象物の被吸着部に吸着するように前記昇降部と前記移動部とを制御し、前記搬送対象物が前記所定位置まで搬送されるように前記移動部を制御し、前記搬送対象物が前記所定位置でクランプされるように前記クランプ部を制御した後、前記押圧部材が前記搬送対象物から退避するように前記昇降部と前記移動部とを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の搬送装置では、押圧部材(吸着部)に搬送対象物(被吸着部)を吸着させてから、押圧部材により搬送対象物を押圧して所定位置まで搬送し、搬送対象物を所定位置でクランプしてから、押圧部材を搬送対象物から退避させる。これにより、搬送対象物をより確実に所定位置で位置決めすることができる。
【0009】
本開示の搬送方法は、
水平方向に平行に延在する一対のレールと、押圧部材と、を用いて、生産ラインで用いられる搬送対象物を前記一対のレール上で搬送して所定位置に位置決めする搬送方法であって、
前記レールの延在方向に直交する面で前記押圧部材を搬送対象物に吸着させ、
前記押圧部材を前記一対のレールの延在方向に移動させて前記搬送対象物を前記所定位置まで搬送し、
前記搬送対象物を前記所定位置でクランプした後、前記押圧部材を前記搬送対象物から退避させる、
ことを要旨とする。
【0010】
この本開示の搬送方法では、本開示の搬送装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】印刷機および収容ラックの斜視図である。
図2】印刷機および収容ラックの側面図である。
図3】プッシャの斜視図である。
図4】基板支持部材と交換フレームの斜視図である。
図5】収容ラックと交換フレームと搬送レールの斜視図である。
図6】搬送レールの斜視図である。
図7】印刷機の電気的な接続関係を示すブロック図である。
図8】基板支持部材交換処理の一例を示すフローチャートである。
図9】プッシャを交換フレームに吸着する様子を示す説明図である。
図10】プッシャで交換フレームを押して搬送する様子を示す説明図である。
図11】停止位置で交換フレームを停止する様子を示す説明図である。
図12】停止位置で交換フレームをクランプする様子を示す説明図である。
図13】プッシャを交換フレームから退避する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、印刷機10および収容ラック60の斜視図である。図2は、印刷機10および収容ラック60の側面図である。図3は、プッシャ24の斜視図である。図4は、基板支持部材32と交換フレーム80の斜視図である。図5は、収容ラック60と交換フレーム80と搬送レール40の斜視図である。図6は、搬送レール40の斜視図である。図7は、印刷機の電気的な接続関係を示すブロック図である。図1図6において、左右方向をX軸とし、前後方向をY軸とし、上下方向をZ軸とする。
【0014】
本実施形態の印刷機10は、スキージ22を用いてスクリーンマスクM上のはんだペーストをスクリーンマスクMに形成されたパターン孔に押し込むことにより当該パターン孔を介して下方の基板Sにはんだペーストを印刷するものである。印刷機10は、はんだが印刷された基板Sに電子部品を実装する部品実装機と組み合わされて生産ラインを構成する。更に、印刷機10は、生産する基板Sの種類を変更する際に、基板Sの種類に合わせて、スクリーンマスクMや基板Sを支持する基板支持部材32の自動交換が可能である。
【0015】
印刷機10は、図1図2に示すように、印刷機本体11と、印刷機本体11を収容する筐体12と、交換装置50と、収容ラック60と、印刷機全体を制御する制御装置100(図7参照)と、を備える。印刷機本体11は、ヘッド装置20と、基板搬送装置30と、認識部35と、搬送レール40と、を有する。
【0016】
ヘッド装置20は、印刷機本体11の上段部に設置されている。ヘッド装置20は、図1に示すように、ヘッド本体21と、ヘッド本体21を印刷方向である前後方向(Y軸方向)に移動させるヘッド移動部26と、を備える。ヘッド移動部26は、前後方向に延在するガイドレール28と、ガイドレール28に沿って移動するY軸スライダ27と、Y軸スライダ27を駆動するモータ29aと、ヘッド本体21の位置を検出する位置センサ(エンコーダ)29bと、を有する。ヘッド本体21は、図2に示すように、前後一対のスキージ22と、例えばエアシリンダにより構成され対応するスキージ22を昇降させる一対のスキージ昇降部23と、プッシャ24と、例えばエアシリンダにより構成されプッシャ24を昇降させるプッシャ昇降部25と、を有する。前後一対のスキージ22は、印刷方向に直交する左右方向(X軸方向)に延びる板状部材であり、左右方向から見て下方に向かうにつれて互いに離間するように傾斜する。プッシャ24は、図3に示すように、前後方向(Y軸方向)に直交する面に当接面が形成された前後、左右一対の第1押圧部24aと、下方に当接面が形成された左右一対の第2押圧部24bと、を有する。印刷機本体11の中段部には前後に延在する左右一対の搬送レール40が設置されており、プッシャ24は、プッシャ昇降部25により下降させられた状態で、ヘッド移動部26により前後に移動させられることで、搬送レール40上の交換フレーム70,80を第1押圧部24aで前後に押して移動させる。交換フレーム70,80は、図2に示すように、筐体12の前面中段部に設けられた通過口38を介して筐体12の内外に移動する。なお、通過口38には、交換フレーム70,80の通過を検知する検知センサ39が設けられている。
【0017】
基板搬送装置30は、印刷機本体11の下段部に設置されている。基板搬送装置30は、基板Sを搬入して位置決め支持すると共に、基板SをスクリーンマスクM(裏面)に接触・離間させるものである。基板搬送装置30は、図2に示すように、基板Sを左右方向(X軸方向)に搬送する基板搬送部31と、基板搬送部31により搬送された基板Sを下方から支持する基板支持部材32と、基板支持部材32が載置される昇降テーブル34と、昇降テーブル34と共に基板支持部材32を昇降させる基板支持部材昇降部33と、を備える。基板支持部材32は、基板Sの種類に応じて当該基板Sを支持するのに適したサイズのものに交換される。
【0018】
認識部35は、基板Sや基板支持部材32を認識するものである。認識部35は、図1に示すように、カメラ本体36と、カメラ本体36を移動させるカメラ移動部37と、を備える。認識部35は、基板搬送装置30により基板Sが搬送され位置決めされた際に当該基板Sの上面に付されたマークを読み取って基板Sの位置を認識する。また、認識部35は、搬送レール40上を交換フレーム80が搬送され位置決めされた際に当該交換フレーム80が保持する基板支持部材32に付されたマークを読み取って基板支持部材32の位置やサイズを認識する。
【0019】
交換装置50は、交換フレーム70,80を用いて印刷機本体11で使用される交換部材(スクリーンマスクMや基板支持部材32)を収容した収容ラック60を受け入れ、収容ラック60と印刷機本体11との間で交換部材を搬送するものである。交換装置50は、図1に示すように、印刷機本体11の正面(前面)における左側に設置された左側ユニット51aと、印刷機本体11の正面における右側に設置された右側ユニット51bと、を備える。左側ユニット51aおよび右側ユニット51bは、収容ラック60を受け入れてその下面を左右両側から支持するラック支持部材52と、ラック支持部材52を昇降させるラック昇降部53と、を有する。ラック昇降部53は、例えばボールねじ機構とモータとの組み合わせや、リニアモータにより構成される。ラック支持部材52に支持された収容ラック60は、ラック昇降部53よりラック支持部材52と共に昇降する。更に、左側ユニット51aおよび右側ユニット51bは、収容ラック60内の交換フレーム70,80をベルトやローラ等により左右両側面から前後に送るフレーム前後移動部54を有する。
【0020】
収容ラック60は、図1に示すように、左右一対の支持レール61を上下に複数段有し、各支持レール61に交換部材(交換フレーム70,80)を収容可能な収容体である。収容ラック60の印刷機本体11とは反対側の前面と印刷機本体11側の背面とには開口部62,63が形成されている。交換部材(交換フレーム70,80)は、前面側の開口部62を介して作業者等により出し入れされ、背面側の開口部63を介してフレーム前後移動部54により印刷機本体11に対して搬入出される。フレーム前後移動部54は、交換装置50に収容ラック60が受け入れられた状態で、収容ラック60の複数段の支持レール61のうちラック昇降部53により印刷機本体11の搬送レール40と略同じ高さに位置する支持レール61に支持された交換部材を印刷機本体11へ送り出す。また、フレーム前後移動部54は、印刷機本体11の搬送レール40に支持された交換部材を当該搬送レール40と略同じ高さに位置する収容ラック60の支持レール61に送り入れる。なお、収容ラック60は、作業者により交換装置50の受け入れ位置まで搬送されてもよいし、自動搬送装置(AGV)に搭載されて自動搬送装置によって交換装置50の受け入れ位置まで自動搬送されてもよい。
【0021】
交換フレーム70は、スクリーンマスクMを支持する枠体である。スクリーンマスクMは、金属製の薄板であり、所定のテンションが付与された状態で交換フレーム70により支持される。スクリーンマスクMは、交換フレーム70に支持されたままの状態で、搬送レール40上の作業位置で位置決め固定され、印刷に使用される。
【0022】
交換フレーム80は、図4に示すように、基板支持部材32を支持する枠体であり、交換フレーム70と略同じ左右幅を有する。交換フレーム80は、矩形状の外枠81と、互いの先端部が向かい合うように外枠81に取り付けられて当該先端部で基板支持部材32を両側から支持する一対の支持アーム82と、を備える。一方の支持アーム82の基端部は、外枠81の左辺部81aの近傍に配置されると共に左辺部81aに平行な回動軸83に回動可能に支持されている。他方の支持アーム82の基端部は、外枠81の右辺部81bの近傍に配置されると共に右辺部81bに平行な回動軸に回動可能に支持されている。一対の支持アーム82は、スプリングにより水平姿勢に付勢され、水平姿勢で基板支持部材32を支持する。また、左右一対の支持アーム82は、プッシャ24により下方に押下されて下方に拡開することで、基板支持部材32の支持を解除する。プッシャ24には、上述したように、左右一対の第2押圧部24b(図3参照)が設けられ、プッシャ24は、一対の支持アーム82の上方において、プッシャ昇降部25によって下降させられることにより、一対の第2押圧部24bで当該一対の支持アーム82を押下する。
【0023】
また、交換フレーム80は、本実施形態では、図4に示すように、カムフォロア84と、磁石部材85と、を備える。カムフォロア84は、交換フレーム80が搬送レール40上を転動可能となるように、外枠81の左辺部81aおよび右辺部81bの下面に複数個(例えば5個)ずつ取り付けられている。
【0024】
磁石部材85は、本実施形態では、永久磁石により形成され、外枠81のうち左辺部81aおよび右辺部81bに直交する辺部81cの内面に取り付けられている。辺部81cは、外枠81のうち左辺部81aおよび右辺部81bに直交する二つの辺部のうち、収容ラック60から昇降テーブル34の上方へ向かう方向における先端側の辺部である。そして、辺部81cの内面は、プッシャ24の第1押圧部24aで交換フレーム80を前後に押して搬送する際に、当該第1押圧部24aが当接される被当接面である。プッシャ24の第1押圧部24aは、磁性体により形成されている。このため、第1押圧部24aを磁石部材85に近接させることで、プッシャ24は、当該磁石部材85の磁気吸引力によって交換フレーム80に吸着される。
【0025】
搬送レール40は、図2に示すように、印刷機本体11の中段部の通過口38と略同じ高さとなるように固定台43に設置され、前後方向(Y軸方向)に延在する左右一対の長尺のレールである。搬送レール40は、図5図6に示すように、左右一対の第1搬送面41と、左右一対の第1搬送面41よりも内側かつ低い位置に設けられる左右一対の第2搬送面42と、を備える。左右一対の第1搬送面41は、交換フレーム70(スクリーンマスクM)の搬送に用いられ、当該交換フレーム70を水平姿勢で支持する。左右一対の第2搬送面42は、交換フレーム80(基板支持部材32)の搬送に用いられ、当該交換フレーム80を水平姿勢で支持する。上述したように、交換フレーム80の外枠81の左辺部81aおよび右辺部81bにおける下面には、カムフォロア84が取り付けられており、交換フレーム80は、カムフォロア84が第2搬送面42上を転動することで、第2搬送面42上を走行する。
【0026】
また、左右一対の搬送レール40の上方には、交換フレーム70(スクリーンマスクM)や交換フレーム80(基板支持部材32)をクランプするためのクランプ部45が搬送レール40に沿って複数個(例えば3個)ずつ設けられている。各クランプ部45は、当接部46と、固定台43に設置されて当接部46を昇降させる昇降部47(例えば、エアシリンダ)と、を有する。各クランプ部45は、搬送レール40上に交換フレーム70,80が位置した状態で当接部46を下降させることで、当接部46で当該交換フレーム70,80を搬送レール40に押し付けてクランプする。
【0027】
制御装置100は、図7に示すように、CPU101を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU101の他にROM102やRAM103、記憶装置104を備える。制御装置100は、ヘッド装置20や基板搬送装置30、認識部35、クランプ部45、交換装置50に対して信号をやり取りする。また、制御装置100は、印刷機10を含む生産ラインを管理する管理装置200と通信可能に接続される。
【0028】
次に、こうして構成された印刷機10の動作、特に、段取り替えに際して、スクリーンマスクMや基板支持部材32を交換フレーム70,80と共に搬送して交換する動作について説明する。ここで、本実施形態の搬送レール40、プッシャ24、プッシャ昇降部25およびヘッド移動部26が本開示の搬送装置の一例である。
【0029】
スクリーンマスクMの交換は、以下のようにして行なわれる。すなわち、制御装置100のCPU101は、まず、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、使用済みのスクリーンマスクMを支持した、第1搬送面41上の交換フレーム70をプッシャ24で押して第1搬送面41上を移動させ、交換フレーム70を通過口38から筐体12外へ搬出させる。続いて、CPU101は、交換装置50を制御して、交換フレーム70を収容ラック60に回収する。次に、CPU101は、交換装置50を制御して、新たなスクリーンマスクMを支持した交換フレーム70を収容ラック60から取り出して、通過口38から筐体12内へ搬入させる。そして、CPU101は、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、搬入した交換フレーム70をプッシャ24で押して第1搬送面41上を移動させることで、交換フレーム70(新たなスクリーンマスクM)を作業位置まで搬送して位置決めする。
【0030】
また、制御装置100は、生産する基板Sの種類に応じて基板支持部材32の交換も行なう。図8は、制御装置100のCPU101により実行される基板支持部材交換処理の一例を示すフローチャートである。基板支持部材交換処理は、搬送レール40上のスクリーンマスクM(交換フレーム70)を収容ラック60に退避させると共に、昇降テーブル34に載置されている使用済みの基板支持部材32を収容ラック60に回収した後に行なわれる。なお、使用済みの基板支持部材32の回収は、以下のようにして行なわれる。すなわち、CPU101は、基板支持部材32を支持していない空の交換フレーム80を収容ラック60から取り出して、通過口38から筐体12内へ搬入させる。続いて、CPU101は、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、搬入した空の交換フレーム80をプッシャ24で押して第2搬送面42上を移動させることで、空の交換フレーム80を停止位置(昇降テーブル34の上方)まで搬送して位置決めする。次に、CPU101は、昇降テーブル34に載置されている使用済みの基板支持部材32を昇降テーブル34から空の交換フレーム80に受け渡す。基板支持部材32の昇降テーブル34から交換フレーム80への受け渡しは、以下のようにして行なわれる。CPU101は、プッシャ昇降部25を制御してプッシャ24の一対の第2押圧部24bで一対の支持アーム82を押し下げて当該一対の支持アーム82を拡開させる。続いて、CPU101は、一対の支持アーム82の間に使用済みの基板支持部材32が入り込むように、基板支持部材昇降部33を制御して昇降テーブル34(使用済みの基板支持部材32)を上昇させる。そして、CPU101は、プッシャ昇降部25を制御してプッシャ24を上昇させて、一対の第2押圧部24bによる一対の支持アーム82の押し下げを解除する。これにより、使用済みの基板支持部材32は、一対の支持アーム82に支持される。CPU101は、使用済みの基板支持部材32を交換フレーム80に支持させた後、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、交換フレーム80をプッシャ24で押して第2搬送面42上を移動させることで通過口38から筐体12外へ搬出させる。そして、CPU101は、交換装置50を制御して、当該交換フレーム80を収容ラック60に回収する。
【0031】
以下、基板支持部材交換処理について図9図13を参照しながら説明する。
【0032】
基板支持部材搬入処理では、制御装置100のCPU101は、まず、交換装置50を制御して、新たな基板支持部材32を支持した交換フレーム80を収容ラック60から取り出して、通過口38から筐体12内へ搬入させる(S100)。続いて、CPU101は、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、搬入した交換フレーム80の磁石部材85にプッシャ24の第1押圧部24aが吸着するように当該プッシャ24を移動させる(S110、図9参照)。次に、CPU101は、ヘッド移動部26を制御して、プッシャ24の第1押圧部24aで交換フレーム80を押して第2搬送面42上を移動させることで、交換フレーム80(新たな基板支持部材32)を搬送する(S120、図10参照)。そして、CPU101は、位置センサ29bからの信号に基づいて交換フレーム80が停止位置(昇降テーブル34の上方)に到達したか否かを判定する(S130)。
【0033】
CPU101は、交換フレーム80が停止位置に到達したと判定すると(図11参照)、ヘッド移動部26によるプッシャ24の移動を停止させた後、クランプ部45を制御して当接部46を下降させることにより、当接部46で交換フレーム80を第2搬送面42に押し付けてクランプする(S140、図12参照)。CPU101は、交換フレーム80をクランプした後、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、交換フレーム80の磁石部材85から第1押圧部24aが脱離するように当該プッシャ24を移動(退避)させる(S150、図13参照)。
【0034】
このように、CPU101は、プッシャ24の第1押圧部24aに交換フレーム80の磁石部材85を吸着させてから、プッシャ24により交換フレーム80を押して停止位置まで搬送し、交換フレーム80を停止位置でクランプしてから、プッシャ24を交換フレーム80から退避させる。これにより、プッシャ24で交換フレーム80を押すのを止めた後も、慣性により交換フレーム80が移動するのを防止し、交換フレーム80(基板支持部材32)をより確実に停止位置で位置決めすることができる。したがって、その後の基板支持部材32のマークの読み取りや、基板支持部材32の受け渡しをより確実に行なうことが可能となる。
【0035】
次に、CPU101は、カメラ移動部37を制御して、予め定められた認識位置にカメラ本体36を移動させ、当該認識位置で交換フレーム80が支持する基板支持部材32に付されたマークを当該カメラ本体36で読み取る(S160)。そして、CPU101は、読み取りに成功すると、基板支持部材32を交換フレーム80から昇降テーブル34に受け渡し(S170)、空の交換フレーム80を収容ラック60に回収して(S180)、基板支持部材交換処理を終了する。基板支持部材32の交換フレーム80から昇降テーブル34への受け渡しは、基板支持部材昇降部33を制御して昇降テーブル34を上昇させた状態で、昇降テーブル34の上方において、プッシャ24の一対の第2押圧部24bで一対の支持アーム82を押し下げて当該一対の支持アーム82による基板支持部材32の支持を解除することにより行なわれる。また、空の交換フレーム80の回収は、プッシャ昇降部25とヘッド移動部26とを制御して、空の交換フレーム80をプッシャ24で押して第2搬送面42上を移動させることで通過口38から筐体12外へ搬出させ、交換装置50を制御して、空の交換フレーム80を収容ラック60に回収することにより行なわれる。
【0036】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の搬送レール40(第2搬送面42)が本開示のレールの一例であり、交換フレーム80(基板支持部材32)が搬送対象物の一例であり、プッシャ24が押圧部材の一例であり、プッシャ昇降部25が昇降部の一例であり、ヘッド移動部26が移動部の一例であり、クランプ部45がクランプ部の一例であり、制御装置100が制御部の一例である。また、カムフォロア84がローラの一例である。
【0037】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、交換フレーム80には磁石部材85が設けられ、プッシャ24の第1押圧部24aは、磁性体により形成されるものとした。しかし、プッシャ24の第1押圧部24aには磁石部材が設けられ、交換フレーム80の第1押圧部24aが当接する面は磁性体により形成されてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、交換フレーム80は、その外枠81に設けられたカムフォロア84が第2搬送面42上を転動することで搬送されるものとした。しかし、カムフォロア84を省略し、交換フレーム80は、第2搬送面42を摺動することで搬送されてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、第2搬送面42は、基板支持部材32が取り付けられる交換フレーム80の搬送に用いられるものとした。しかし、第2搬送面42は、印刷機10で用いられるものであれば、スクリーンマスクM以外の他の交換部材(例えば、スキージ22)が取り付けられる交換フレームの搬送に用いられてもよい。なお、交換部材としてスキージ22を交換フレームに取り付けて第2搬送面42上を搬送させた際の、当該スキージ22のヘッド本体21への受け渡しについては、例えば、国際公開第2018/105016号公報に記載の手法を用いることができる。
【0041】
上述した実施形態では、プッシャ24の第1押圧部24aが、基板支持部材32を支持する枠体である交換フレーム80に吸着し、交換フレーム80を押して交換フレーム80を搬送するものとした。しかし、プッシャ24の第1押圧部24aは、スクリーンマスクMを支持する枠体である交換フレーム70に吸着し、交換フレーム70を押して交換フレーム70を搬送してもよい。この場合、交換フレーム70の外枠のうち左辺部および右辺部に直交する二つの辺部のうち、収容ラック60から作業位置へ向かう方向における先端側の辺部の内面に、磁石部材が取り付けられてもよい。あるいは、プッシャ24の第1押圧部24aに磁石部材が設けられる場合は、交換フレーム70の第1押圧部24aが当接する面が磁性体により形成されてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、本開示の搬送装置を印刷機10に適用して説明した。しかし、生産ラインに用いる部材を搬送するものであれば、他の如何なる作業装置に適用されてもよい。
【0043】
以上説明したように、本開示の搬送装置では、押圧部材(吸着部)に搬送対象物(被吸着部)を吸着させてから、押圧部材により搬送対象物を押圧して所定位置まで搬送し、搬送対象物を所定位置でクランプしてから、押圧部材を搬送対象物から退避させる。これにより、搬送対象物をより確実に所定位置で位置決めすることができる。
【0044】
こうした本開示の搬送装置において、前記押圧部材の吸着部は、磁石および磁性体の一方であり、前記搬送対象物の被吸着部は、磁石および磁性体の他方であってもよい。こうすれば、簡易な構成により搬送対象物に対して押圧部材を着脱させることができる。
【0045】
また、本開示の搬送装置において、前記搬送対象物は、前記レール上を転動するローラを有してもよい。こうすれば、レール上の搬送対象物をスムーズに搬送することができると共に搬送対象物をより確実に所定位置で位置決めすることができる。
【0046】
本開示では、搬送装置の形態とする他、搬送方法の形態としたり、印刷機の形態としたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示は、搬送装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 印刷機、11 印刷機本体、12 筐体、20 ヘッド装置、21 ヘッド本体、22 スキージ、23 スキージ昇降部、24 プッシャ、24a 第1押圧部、24b 第2押圧部、25 プッシャ昇降部、26 ヘッド移動部、27 Y軸スライダ、28 ガイドレール、30 基板搬送装置、31 基板搬送部、32 基板支持部材、33 基板支持部材昇降部、34 昇降テーブル、35 認識部、36 カメラ本体、37 カメラ移動部、38 通過口、39 検知センサ、40 搬送レール、41 第1搬送面、42 第2搬送面、43 固定台、45 クランプ部、46 当接部、47 昇降部、50 交換装置、51a 左側ユニット、51b 右側ユニット、52 ラック支持部材、53 ラック昇降部、54 フレーム前後移動部、60 収容ラック、61 支持レール、62,63 開口部、70,80 交換フレーム、81 外枠、81a 左辺部、81b 右辺部、81c 辺部、82 支持アーム、83 回動軸、84 カムフォロア、85 磁石部材、100 制御装置、101 CPU、102 ROM、103 RAM、104 記憶装置、200 管理装置、M スクリーンマスク、S 基板。
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