(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104509
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20250703BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20250703BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61F13/53 100
A61F13/533 200
A61F13/53 300
A61F13/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222359
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 青
(72)【発明者】
【氏名】平山 遥菜
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA04
3B200BB01
3B200BB02
3B200BB05
3B200BB17
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB14
3B200DB19
3B200DB20
(57)【要約】
【課題】吸収性物品において厚み方向の肌側から非肌側に排泄物を移行させやすくする。
【解決手段】互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収性コア(11)と、吸収性コア(11)より肌側に設けられたコアラップシート(12)とを備えた吸収性物品(1)であって、吸収性コア(12)は、粉砕された繊維を有し、コアラップシート(12)は、セルロース繊維を有し、粉砕された繊維の平均繊維長は、セルロース繊維の平均繊維長よりも短いことを特徴とする吸収性物品(1)である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
吸収性コアと、
前記吸収性コアより肌側に設けられたコアラップシートと
を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有し、
前記コアラップシートは、セルロース繊維を有し、
前記粉砕された繊維の平均繊維長は、前記セルロース繊維の平均繊維長よりも短い
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部を有し、
前記吸収体圧搾部の前記幅方向の長さが、前記粉砕された繊維の平均繊維幅より太く、
前記厚さ方向に見て、前記吸収体圧搾部と複数の前記粉砕された繊維とが重なる部分を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した中央圧搾部と、複数の前記吸収体圧搾部とを有し、
前記中央圧搾部は、前記長手方向に沿い、且つ前記幅方向の中央部に設けられており、
前記中央圧搾部の前記幅方向の両側に、複数の前記吸収体圧搾部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアの肌側面と前記コアラップシートの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを有し、
前記セルロース繊維は、平均繊維長が、
生理食塩水に浸漬していない状態の高吸収性ポリマーの直径の平均値よりも大きく、
前記生理食塩水に60分間浸漬させた後、15分間水切りを行った状態の前記高吸収性ポリマーの直径の平均値よりも小さい
繊維を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記コアラップシートは、前記吸収性コアより肌側において、前記コアラップシート同士が重なった重なり部を有し、
前記重なり部において前記コアラップシート同士の間に、前記接着剤が設けられておらず、
前記重なり部は、前記幅方向の中央部で、且つ前記長手方向に沿って設けられており、
前記重なり部の前記幅方向の長さは、前記粉砕された繊維の平均繊維長より長く、且つ、
前記重なり部の前記幅方向の長さは、前記セルロース繊維の平均繊維長より長いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記粉砕された繊維のうち前記長手方向に沿った繊維の重量割合が、前記セルロース繊維のうち前記長手方向に沿った繊維の重量割合より大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記粉砕された繊維の平均繊維幅が、前記セルロース繊維の平均繊維幅より大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、
前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、
前記吸収性コアの前記非圧搾部における、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、
前記コアラップシートの非圧搾部における、前記コアラップシートの平均密度よりも高く且つ前記セルロース繊維が密集した繊維塊の数より多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品であって、
前記コアラップシートの非圧搾部における、前記コアラップシートの平均密度よりも高く且つ前記セルロース繊維が密集した繊維塊の数が、零であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、
前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、
前記吸収性コアの前記非圧搾部において、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊を有し、
前記吸収性コアは、前記吸収性コアを前記厚さ方向に3等分した際の肌側部と中間部と非肌側部を有しており、
前記中間部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、前記肌側部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数より多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、
前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、
前記吸収性コアの前記非圧搾部において、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊を有し、
前記長手方向及び前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときに、それぞれ、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、
前記中央部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、前記一方側部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数よりも多いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、
前記粉砕された繊維に対する前記広葉樹繊維の重量割合が、85%以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記コアラップシートは、紙力増強剤を含み、
前記吸収性コアは、前記紙力増強剤を含まないことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
経血、尿等の排泄物を吸収する吸収性物品が知られている。吸収性物品は、吸収性部材を備えており、例えば、特許文献1には、針葉樹由来のパルプや広葉樹由来のパルプ等のフラッフパルプを用いた吸収性部材が開示されている。この吸収性部材に用いる繊維は、繊維の長さが長いほど、繊維に沿って吸収した排泄物を拡散させやすいことが知られており、例えば、針葉樹由来のパルプ繊維の繊維長は比較的長く、広葉樹由来のパルプ繊維の繊維長は比較的短いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の着用時には、吸収性物品の肌側から吸収した排泄物を非肌側に移行させて、排泄物を早く着用者の肌から遠ざけることが好ましい。従来の吸収性物品では、吸収性物品が吸収した排泄物が、肌側から非肌側への排泄物の移行よりも、平面的に拡散しやすいことで、吸収性物品の肌側面に排泄物が留まって着用者に不快感を与えたり、吸収性物品から排泄物が漏れるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収性物品において厚み方向の肌側から非肌側に排泄物を移行させやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収性コアと、前記吸収性コアより肌側に設けられたコアラップシートとを備えた吸収性物品であって、前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有し、前記コアラップシートは、セルロース繊維を有し、前記粉砕された繊維の平均繊維長は、前記セルロース繊維の平均繊維長よりも短いことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品において厚み方向の肌側から非肌側に排泄物を移行させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】
図4A中のK―K矢視断面の拡大模式図である。
【
図8】広葉樹繊維と針葉樹繊維の繊維長の分布を示す図である。
【
図9】吸収体10の排泄物の吸収を説明する拡大模式図である。
【
図10】広葉樹繊維と針葉樹繊維の平均繊維幅の分布を示す図である。
【
図11】所定の吸水倍率/保水倍率でSAPを膨潤させたときのSAP径の変化について表す表である。
【
図12】本実施形態に用いられるSAPの粒径分布を示す表である。
【
図13】吸収性コア11の長手方向及び幅方向の各部について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、吸収性コアと、前記吸収性コアより肌側に設けられたコアラップシートとを備えた吸収性物品であって、前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有し、前記コアラップシートは、セルロース繊維を有し、前記粉砕された繊維の平均繊維長は、前記セルロース繊維の平均繊維長よりも短いことを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
態様1によれば、粉砕された繊維の平均繊維長をセルロース繊維の平均繊維長より長くした場合よりも、吸収性コアの内側で排泄物が粉砕された繊維に接触する接触点が多くなるので、吸収性コアにおいて繊維を伝って厚み方向の肌側から非肌側に排泄物を移行しやすくなる。
【0011】
(態様2)
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部を有し、前記吸収体圧搾部の前記幅方向の長さが、前記粉砕された繊維の平均繊維幅より太く、前記厚さ方向に見て、前記吸収体圧搾部と複数の前記粉砕された繊維とが重なる部分を有することを特徴とする態様1の吸収性物品である。
【0012】
態様2によれば、吸収性コアにおける粉砕された繊維の密度を部分的に高めた部分を複数設けることができるため、コアラップシートから吸収性コアに排泄物を引き込みやすくして、吸収性コアにおける吸収を促しやすくなる。
【0013】
(態様3)
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した中央圧搾部と、複数の前記吸収体圧搾部とを有し、前記中央圧搾部は、前記長手方向に沿い、且つ前記幅方向の中央部に設けられており、前記中央圧搾部の前記幅方向の両側に、複数の前記吸収体圧搾部が設けられていることを特徴とする態様2の吸収性物品である。
【0014】
態様3によれば、中央圧搾部を有することで幅方向の中央部を肌側に突出させるように吸収性コアを変形させ、長手方向への拡散を促しつつ、吸収体圧搾部によって、吸収性コア内での拡散を促しやすくなる。また、中央圧搾部及び吸収体圧搾部によって、吸収性コアの形状の崩れを抑止しやすくなる。
【0015】
(態様4)
前記吸収性コアの肌側面と前記コアラップシートの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことを特徴とする態様1から3のいずれかの吸収性物品である。
【0016】
態様4によれば、吸収性コアの肌側面とコアラップシートの非肌側面との間に接着剤を設けた場合よりも吸収性コアとコアラップシートとが接触した部分を少なくすることができるため、コアラップシートにおいて排泄物を拡散させた状態から、吸収性コアへの厚さ方向への吸収を促しやすくなるため、排泄物の吸収速度を向上させやすくなる。
【0017】
(態様5)
前記吸収性コアは、高吸収性ポリマーを有し、前記セルロース繊維は、平均繊維長が、生理食塩水に浸漬していない状態の高吸収性ポリマーの直径の平均値よりも大きく、前記生理食塩水に60分間浸漬させた後、15分間水切りを行った状態の前記高吸収性ポリマーの直径の平均値よりも小さい繊維を有することを特徴とする態様1から4のいずれかの吸収性物品である。
【0018】
態様5によれば、コアラップシートが高吸収性ポリマーの膨潤を妨げる恐れを軽減させ、吸収性コア内における高吸収性ポリマーの吸収機能を発揮させやすくなる。
【0019】
(態様6)
前記コアラップシートは、前記吸収性コアより肌側において、前記コアラップシート同士が重なった重なり部を有し、前記重なり部において前記コアラップシート同士の間に、前記接着剤が設けられておらず、前記重なり部は、前記幅方向の中央部で、且つ前記長手方向に沿って設けられており、前記重なり部の前記幅方向の長さは、前記粉砕された繊維の平均繊維長より長く、且つ、前記重なり部の前記幅方向の長さは、前記セルロース繊維の平均繊維長より長いことを特徴とする態様1から5のいずれかの吸収性物品である。
【0020】
態様6によれば、吸収性コアに接着されておらず、且つ重なり部においてコアラップシート同士が接着されていないことで、重なり部における厚さ方向への排泄物の浸透を遅らせて、コアラップシートでの平面的な排泄物の拡散、特に長手方向への拡散を促しやすくなるため、その後に吸収性コアに吸収された排泄物を吸収性コア内の広い範囲で保持しやすくなる。
【0021】
(態様7)
前記粉砕された繊維のうち前記長手方向に沿った繊維の重量割合が、前記セルロース繊維のうち前記長手方向に沿った繊維の重量割合より大きいことを特徴とする態様1から6のいずれかの吸収性物品である。
【0022】
態様7によれば、コアラップシートにおいて長手方向及び幅方向に排泄物を拡散させやすくしつつ、吸収性コアにおいて長手方向に拡散させやすくすることで、吸収性物品の幅方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0023】
(態様8)
前記粉砕された繊維の平均繊維幅が、前記セルロース繊維の平均繊維幅より大きいことを特徴とする態様1から7のいずれかの吸収性物品である。
【0024】
態様8によれば、粉砕された繊維の平均繊維幅をセルロース繊維の平均繊維幅より小さくした場合よりも、コアララップシートよりも吸収性コアにおいて液体を保持しやすくなるため、吸収性物品から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0025】
(態様9)
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、前記吸収性コアの前記非圧搾部における、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、前記コアラップシートの非圧搾部における、前記コアラップシートの平均密度よりも高く且つ前記セルロース繊維が密集した繊維塊の数より多いことを特徴とする態様1から8のいずれかの吸収性物品である。
【0026】
態様9によれば、コアラップシートでは排泄物の吸収よりも広い範囲に拡散させやすくしつつ、吸収性コアでは、繊維塊の数が多いことで、毛細管現象により吸収性コア内での吸収及び液体の保持性を向上させることができる。
【0027】
(態様10)
前記コアラップシートの非圧搾部における、前記コアラップシートの平均密度よりも高く且つ前記セルロース繊維が密集した繊維塊の数が、零であることを特徴とする態様9の吸収性物品である。
【0028】
態様10によれば、コアラップシートでは排泄物の吸収よりも広い範囲に拡散させやすくしつつ、吸収性コアでは、繊維塊の数が多いことで、毛細管現象により吸収性コア内での吸収及び液体の保持性を向上させることができる。
【0029】
(態様11)
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、前記吸収性コアの前記非圧搾部において、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊を有し、前記吸収性コアは、前記吸収性コアを前記厚さ方向に3等分した際の肌側部と中間部と非肌側部を有しており、前記中間部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、前記肌側部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数より多いことを特徴とする態様1から10のいずれかの吸収性物品である。
【0030】
態様11によれば、吸収性コアの肌側部から中間部に排泄物を引き込みやすくなり、且つ、一旦中間部で吸収した排泄物が肌側部に戻ることを抑止しやすくなる。
【0031】
(態様12)
前記吸収性コアと前記コアラップシートを前記厚さ方向に圧搾した複数の吸収体圧搾部と、前記厚さ方向に見て、前記吸収性コアと前記コアラップシートが重なる部分で、且つ前記吸収体圧搾部が設けられていない非圧搾部と、を有し、前記吸収性コアの前記非圧搾部において、前記吸収性コアの平均密度よりも密度が高く且つ前記粉砕された繊維が密集した繊維塊を有し、前記長手方向及び前記幅方向において、前記吸収性コアを3等分したときに、それぞれ、一方側から順に一方側部、中央部、他方側部を有し、前記中央部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数が、前記一方側部における前記粉砕された繊維が密集した繊維塊の数よりも多いことを特徴とする態様1から11のいずれかの吸収性物品である。
【0032】
態様12によれば、着用者の排泄口に近い部分における吸収性を向上させることができる。
【0033】
(態様13)
前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれており、前記粉砕された繊維に対する前記広葉樹繊維の重量割合が、85%以上であることを特徴とする態様1から12のいずれかの吸収性物品である。
【0034】
態様13によれば、吸収性コアの内部に、粉砕された繊維が密集した繊維塊を作りやすくなり、繊維密度が高い繊維塊の部分と、繊維塊より繊維密度が低い部分とが設けられる。これにより、繊維塊の部分の毛細管現象による吸収性を向上させつつ、繊維塊より繊維密度が低い部分の繊維間の隙間で排泄物を保持しやすくなるため、吸収性コアで効率的に排泄物の吸収しやすくなる。
【0035】
(態様14)
前記コアラップシートは、紙力増強剤を含み、前記吸収性コアは、前記紙力増強剤を含まないことを特徴とする態様1から13のいずれかの吸収性物品である。
【0036】
態様14によれば、コアラップシートに紙力増強剤を設けることで、コアラップシートの強度を向上させつつ、吸収性コアは紙力増強剤によって保水性が低下する恐れを軽減させることで、保水性の低下を軽減させた吸収性コアを、強度が向上したコアラップシートで覆うことで吸収性コアの形状を維持しやすくなる。
【0037】
===本実施形態===
以下、本実施形態に係る吸収性物品の一例として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。ただし、生理用吸収性物品は生理用ナプキンに限定されず、ショーツ型のナプキン、パンツ型使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ等、吸収性パッド等であってもよい。
【0038】
<<<本実施形態のナプキン1の構成>>>
図1は、ナプキン1を肌側から見た平面図である。
図2は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3は、
図1中のA―A矢視概略断面図である。ナプキン1は、長手方向と幅方向と厚さ方向を有する。長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側とし、着用者の臀部に当接する側を後側とする。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。
図1等に示す中心線C-Cは、幅方向におけるナプキン1の中心を示し、中心線CLは、長手方向におけるナプキン1の中心を示す。
図3等の断面図は、ナプキン1を模式的に示しており、必ずしも寸法は正確ではない。
【0039】
ナプキン1は、吸収体10、トップシート21、一対のサイドシート23、バックシート31を有する。吸収体10より肌側で、トップシート21より非肌側に、シート状のセカンドシート22を有してもよい。厚さ方向に互いに隣接する各資材はホットメルト等の接着剤で接合されている。
【0040】
ナプキン1は、長手方向の中央部に、幅方向の両外側に延出した一対のウイング部1Wを有する。ウイング部1Wは、主にサイドシート23とバックシート31によって形成されている。なお、必ずしもウイング部1Wを備えない構成であってもよい。
【0041】
トップシート21は、吸収体10より肌側に位置する液透過性のシートである。トップシート21は、吸収体10より肌側に位置する、着用者の肌に当接可能な表面シートである。トップシート21としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成繊維からなる不織布(例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等)や、貫通孔を有する合成樹脂フィルム、綿からなる不織布シート等の柔軟なシートを例示することができる。本実施形態のトップシート21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)、若しくは、コットンやレーヨン等の保水性繊維を含んだエアスルー不織布やスパンレース不織布の液透過性のシートで形成されている。
【0042】
一対のサイドシート23は、トップシート21及びセカンドシート22より非肌側で、吸収体10より肌側に設けられており、トップシート21等の幅方向の両側部からそれぞれ外側に延出したシートである。サイドシート23としては、トップシート21と同じ柔軟な液透過性の不織布や、疎水性の不織布等を例示することができる。また、トップシート21、セカンドシート22、及び吸収体10より幅方向の外側で、サイドシート23とバックシート31との厚さ方向の間には、サイドシート23の強度を補強するための補強シート24が設けられている。補強シート24としては、例えば、バックシート31と同様のシート部材、紙やSMS等のシート部材を用いることができる。
【0043】
バックシート(非肌側シート)31は、吸収体10より非肌側に位置し、ナプキン1の最も非肌側に設けられたシートである。バックシート31としては、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等の液不透過性のシートを例示することができる。バックシート31の形状は、ナプキン1の外形とほぼ同一である。
【0044】
バックシート31の非肌側面に複数の本体粘着部(粘着部)32を備える。本実施形態の本体粘着部32は、長手方向に沿った複数の帯状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、本体粘着部32を下着(着衣)の股下部(クロッチ部)の内側に貼付することで、着用者の身体に対してナプキン1の位置がずれないようにすることができる。
【0045】
ウイング部1Wは、バックシート31の非肌面側に、ウイング粘着部33を備える。本実施形態のウイング粘着部33は、矩形形状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、ウイング部1Wを下着の非肌側面に折り返し、ウイング粘着部33を下着の股下部における非肌側面に貼付することで、ナプキン1を下着に固定することができる。
【0046】
長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置(
図1参照)は、股下領域CAである。股下領域CAは、着用状態において長手方向における着用者の股下と当接する領域であり、着用者の排泄物が排出される排血口と当接する領域である。
【0047】
吸収体10は、吸収性コア11と、コアラップシート12を有する。吸収性コア11は、液体吸収性繊維を所定の形状に成形したものであり、液体吸収性繊維として、粉砕された繊維を有している。粉砕された繊維には、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれている。本実施形態の吸収性コア11は、粉砕された繊維(パルプ繊維)を含んでおり、粉砕された繊維としては広葉樹繊維のみ(広葉樹繊維100%)で形成されている。なお、吸収性コア11は、広葉樹繊維からなる粉砕された繊維のみに限られず、粉砕された繊維が、広葉樹繊維に加えて、針葉樹からなる針葉樹繊維等のパルプ繊維を備えてもよく、吸収性コア11が、セルロース系吸収性繊維等や、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、アクリレート等からなる合成繊維などの液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(SAP)を備えてもよい。
図4Aは、吸収性コア11の平面図である。
図4Bは、
図4A中のJ―J矢視概略断面図である。
図5は、
図4A中のK―K矢視断面の拡大模式図である。
図6は、
図3中の吸収体10の拡大図である。なお、
図4A、
図4B及び
図5において、圧搾部EL等の圧搾部による凹凸を省略して示している。
【0048】
吸収性コア11は、周囲よりも液体吸収性繊維の坪量が高い中高部11dを有する。中高部11dは、周囲よりも吸収性コア11の厚みが厚い(厚さ方向の長さが長い)部分である。本実施形態の中高部11dは、厚さ方向において肌側に突出した部分であり、平面視で略楕円形状の領域である。中高部11dを吸収性コア11の幅方向における中央部で、且つ平面視で股下領域CAと重なる位置に設けることで、着用状態において、着用者の排泄口に当接させやすくなり、ナプキン1を着用者の身体にフィットさせやすくしつつ、排泄物を素早く吸収させやすくなる。また、液体吸収性繊維の坪量が高い中高部11dを平面視で股下領域CAと重なる位置に備えることで、着用状態において着用者の排泄口から排出された排泄物を吸収性コア11内で保持しやすくなる。
【0049】
コアラップシート12は、液透過性のシート部材である。本実施形態のコアラップシート12は、セルロース繊維を有したティッシュである。コアラップシート12は、吸収性コア11を覆うことで、吸収性コア11の形状を維持したり、吸収性コア11への液体の拡散を促したりする。
【0050】
図6に示すように、コアラップシート12は、吸収性コア11より肌側に位置する肌側部12aと、吸収性コア11より非肌側に位置する非肌側部12bを有する。本実施形態では、
図6等に示すように、コアラップシート12の両側端部を吸収性コア11の肌側に折り返すことで、吸収性コア11の肌側面及び非肌側面をコアラップシート12で覆っている。具体的には、コアラップシート12の長手方向に沿った先端12eaを外側、もう一方側の長手方向に沿った先端12ebを内側として、吸収性コア11の幅方向の側端を覆うようにコアラップシート12で吸収性コア11を包んでいる。但し、コアラップシート12の形状及び形態は、これに限られない。例えば、コアラップシート12を2枚のシート部材として、吸収性コア11の肌側と非肌側にそれぞれ配置する構成であってもよい。なお、本実施形態のコアラップシート12の内側には接着剤が設けられていない。つまり、吸収性コア11とコアラップシート12との間には接着剤で固定されておらず、吸収性コア11はコアラップシート12で包まれることでその形状が維持されている。
【0051】
図7は、吸収体10を肌側から見た平面図である。
図7において、吸収性コア11における中高部11dを省略して示している。
図7に示すように、吸収体10は、中央圧搾部14と複数の吸収体圧搾部15を有する。中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、それぞれ、吸収性コア11とコアラップシート12とを厚さ方向に圧搾した部分である。
【0052】
中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、例えば、複数の凸部を有する凸ローラーと、表面が平らなアンビルローラーとの間のロール間隙に製造過程の吸収体10を通して、圧搾することで形成される。本実施形態の中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、それぞれ、吸収体10の非肌側面に凸ローラー、肌側面にアンビルローラーが当接する状態で、ロール間隙に吸収体10を通すことで、吸収体10の非肌側から肌側に向かって押圧した部分である。
【0053】
中央圧搾部14は、長手方向に沿い、且つ幅方向の中央部に設けられた直線状の圧搾部である。中央圧搾部14は、吸収体10の前端から後端まで、肌側又は非肌側から厚さ方向に凹んだ部分である。中央圧搾部14は、中央圧搾部14を起点として吸収体10を厚さ方向の肌側に折れ曲がるように誘導する誘導部である。また、中央圧搾部14は、圧搾されていない部分よりも繊維密度が高い部分であるため、毛細管現象により排泄物を長手方向に誘導する誘導部でもある。
【0054】
吸収体圧搾部15は、吸収体10の全域に亘って、略千鳥状に配置された圧搾部である。本実施形態の吸収体圧搾部15は、楕円形状の圧搾部が複数設けられている。吸収体圧搾部15も中央圧搾部14と同様に、肌側又は非肌側から厚さ方向に凹んだ部分である。吸収体圧搾部15を設けることで、吸収体10の形状を保持しやすくしている。また、吸収体圧搾部15は、圧搾されていない部分よりも繊維密度が高い部分であるため、毛細管現象により吸収性コア11のうちの排泄物を吸収しやすい部分となる。吸収体圧搾部15と、圧搾されていない部分との密度の差によって、後述の吸収性コア11中の油剤Yの拡散を抑制しやすくなる。
【0055】
また、
図1等に示すように、ナプキン1は、線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeを有する。
線状圧搾部ELは、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。本実施形態のナプキン1の線状圧搾部ELは、長手方向の中央線CLより前側に設けられた前側圧搾部ELaと、中央線CLより後側に設けられた後側圧搾部ELbと、前側圧搾部ELaと後側圧搾部ELbとの間に設けられた中央圧搾部ELcとを有する。線状圧搾部ELを備えることで、各部材の厚さ方向の接合を強固にし、繊維の密度を高くして、液体の吸液性を向上させることができる。線状圧搾部ELは、平面視で長手方向に沿った線状の圧搾部であり、幅方向に所定の間隔を空けた状態で一対設けられている。
幅方向における中央部、且つ、長手方向における股下領域CAと重なる位置に、複数の円形圧搾部eeを備える。円形圧搾部eeは、平面視で円形状の圧搾部であり、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。
【0056】
線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、厚さ方向に重ねられた部材を押しつぶされた部分であるため、各圧搾部における各部材の繊維密度は、圧搾部が設けられていない部分の繊維密度よりも高い。線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、例えば、複数の凸部を有する凸ローラーと、表面が平らなアンビルローラーとの間のロール間隙に製造過程のナプキン1を通して、圧搾することで形成される。
【0057】
<<<吸収体10について>>>
ナプキン1の吸収体10は、吸収性コア11と、吸収性コア11より肌側に設けられたコアラップシート12の肌側部12aを備えている。吸収性コア11は、粉砕された繊維11fを有し、肌側部12a(コアラップシート12)は、セルロース繊維12fを有する。そして、吸収性コア11の粉砕された繊維11fの平均繊維長が、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長よりも短い。
【0058】
吸収性コア11は、粉砕された繊維11fを有する。粉砕された繊維11fとしては、パルプ、例えば、針葉樹(例えば、サザンイエローパイン)又は広葉樹(例えば、ユーカリ)を原料として得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維等の半合成繊維等が挙げられる。吸収性物品には、比較的、繊維長が長い針葉樹繊維(針葉樹パルプ)が用いられることが多い。これに対し、本実施形態の吸収性コア11の粉砕された繊維11fは、広葉樹繊維(広葉樹パルプ)のみで構成されている(広葉樹繊維100%)。
【0059】
図8は、広葉樹繊維と針葉樹繊維の繊維長の分布を示す図である。針葉樹繊維(針葉樹パルプ)の平均繊維長は2.5mmであり、広葉樹繊維(広葉樹パルプ)の平均繊維長は0.79mmである。つまり、広葉樹繊維の平均繊維長は、針葉樹繊維の平均繊維長より短い。
【0060】
肌側部12a(コアラップシート12)は、セルロース繊維12fを有する。セルロース繊維12fは、木材又は再生紙から作られた繊維であり、その主成分がセルロースである繊維である。本実施形態のコアラップシート12は、ティッシュである。ティッシュを構成する繊維としては、例えば、針葉樹由来や広葉樹由来の木材パルプ古紙を再生した古紙パルプ、ケナフや竹などの植物から作られた非木材パルプ、合成繊維パルプ等が挙げられる。本実施形態の肌側部12aのティッシュは、針葉樹由来の針葉樹繊維の重量割合が60%~70%であり、広葉樹由来の広葉樹繊維の重量割合が30~40%で構成されており、平均繊維長が長い針葉樹繊維の方が多く含まれる。なお、肌側部12aのセルロース繊維の平均繊維長は、1.8mmである。
【0061】
図9は、吸収体10の排泄物の吸収を説明する拡大模式図である。
図9では、肌側部12aと吸収性コア11の一部を拡大して示した模式図であり、便宜上、吸収性コア11より肌側でコアラップシート12(肌側部12a)同士が重ねられた部分や吸収性コア11の中高部11dを省略して示している。
【0062】
繊維の長さが長いほど、その繊維を伝って排泄物(液体)が拡散しやすくなる。また、繊維の長さが短いほど、繊維間距離が短くなりやすい。吸収性コア11の粉砕された繊維11fの平均繊維長が、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長より短いことで、粉砕された繊維11fの平均繊維長をセルロース繊維12fの平均繊維長より長くした場合よりも、肌側部12aにおいて排泄物を肌側部12aで水平的に拡散させやすい。肌側部12aで拡散された排泄物が吸収性コア11に到達すると、吸収性コア11の内側で、排泄物が粉砕された繊維12fに接触する接触点が多くなるため、粉砕された繊維11fを伝って、且つ粉砕された繊維11f間で排泄物が非肌側に落ちるように、厚み方向の肌側から非肌側に向かって排泄物を移行させやすくなる。具体的には、着用時には、経血等の排泄物が股下領域CAに排出されると、まず、平均繊維長の長いセルロース繊維12fを備えた肌側部12aで股下領域CAから外側に向かって拡散させやすくし、拡散された排泄物が肌側部12aから吸収性コア11に移行すると、平均繊維長の短い粉砕された繊維11f間で肌側から非肌側に向かって落ちるように排泄物が移動するため、股下領域CAの肌側面に排泄物が留まって、着用者の肌に悪影響を与えたり、不快感を与えたりする恐れを軽減させることができる。
【0063】
肌側部12a(コアラップシート)の繊維は、例えば、下記の方法で取り出すことができる。
まず、ナプキン1を、トルエンを用いて分解して、コアラップシート12を取り出す。
取り出したコアラップシートを乾燥させる。
そして、コアラップシート15gと約1.5Lの水(コアラップシートの重さに対して、1%の濃度となるように水を調整する。)をプラスチック容器(内径:120mm、高さ:220mm)に入れて、撹拌機(EYELA MAZELA Z 東京理化器械株式会社 製)を用いて約24時間、室温で攪拌する。このとき、繊維がきれないようにゆっくりと攪拌する。
その後、水の中に分散している繊維を水と一緒にスポイト(穴径:2~3mm)で吸い取る。
取り出した繊維を吸引ろ過で集めて、乾燥させる。
取り出した繊維について、電子顕微鏡を用いて繊維長を測定し、測定した繊維長から平均繊維長を算出する。
【0064】
なお、吸収性コア11の粉砕された繊維の平均繊維長及び肌側部12aの繊維の平均繊維長は、周知の方法で測定することができ、例えば、上述の繊維長分布測定装置(「Valmet FS5」バルメット株式会社 製)を用いて画像を撮影して、繊維長を測定することで得られる。
【0065】
なお、吸収性コア11の粉砕された繊維11fは、肌側部12aのセルロース繊維12fより平均繊維長が短いものであればよく、任意の粉砕された繊維(針葉樹繊維、広葉樹繊維等)を用いることができる。なお、粉砕された繊維11fがセルロース繊維12fより平均繊維長が短いものであることを考慮すると、粉砕された繊維11fが広葉樹繊維を備えることが好ましい。
【0066】
図7に示すように、ナプキン1(吸収体10)は、吸収性コア11と肌側部12a(コアラップシート12)とを厚さ方向に圧搾した吸収体圧搾部15を複数有することが好ましい。この吸収体圧搾部15について、吸収体圧搾部15の幅方向の長さW15が、粉砕された繊維11fの平均繊維幅より太く、厚さ方向に見て、吸収体圧搾部15と複数の粉砕された繊維11fとが重なる部分を有することが好ましい。なお、複数の吸収体圧搾部15において、幅方向の長さが異なるものがある場合には、幅方向の長さが最も長い部分の長さW15が粉砕された繊維11fの平均繊維幅より太いものを有していればよい。本実施形態において、吸収体圧搾部15の幅方向の長さW15は0.5~1.0mmであり、粉砕された繊維11fは広葉樹繊維であることから、広葉樹繊維の平均繊維幅は約15μmである。
図10は、広葉樹繊維と針葉樹繊維の平均繊維幅の分布を示す図である。
【0067】
吸収体圧搾部15は、圧搾により繊維密度が高められた部分である。そのため、吸収体圧搾部15と複数の粉砕された繊維11fとが重なる部分を有することで、吸収性コア11における粉砕された繊維11fの繊維密度を部分的に高めた部分を複数設けることができる。これにより、毛細管現象によって、肌側部12aから吸収性コア11に向かって排泄物を引き込みやすくなり、吸収性コア11における排泄物の吸収を促しやすくなる。
【0068】
粉砕された繊維11fの平均繊維幅は、周知の方法で測定可能である。例えば、下記の方法で測定することができる。
測定対象のサンプルに該当する部位(吸収性コア11)を四角形形状に切り出したものを試料とし、マイクロスコープ(KEYENCE製 VHX-2000、レンズ VH-Z20W絞り開放)の3D画像連結機能を用いて、試料の表面から深度100μmまで焦点が一致している拡大画像(例えば、広葉樹繊維は500倍、針葉樹繊維は100倍の画像)を得て、かかる画像の繊維幅を複数本測定して平均繊維幅を算出する。
【0069】
さらに、ナプキン1(吸収体10)が、複数の吸収体圧搾部15に加えて、中央圧搾部14を有することが好ましい。中央圧搾部14は、長手方向に沿い、且つ幅方向の中央部に設けられている。これらの圧搾部について、中央圧搾部14の幅方向の両側に、複数の吸収体圧搾部15が設けられていることが好ましい。このような吸収体10であることで、中央圧搾部14によって、吸収体10の幅方向の中央部を肌側に突出させるように吸収性コア11を変形させ、長手方向への排泄物の拡散を促しやすくなる。また、吸収体圧搾部15によって、吸収性コア11(吸収体10)内での拡散を促しやすくなる。また、中央圧搾部14及び吸収体圧搾部15は、それぞれ肌側部12aと吸収性コア11とを厚さ方向に押し固めた部分であるため、これらの圧搾部14、15を備えることで、吸収性コア11の形状の崩れを抑止しやすくなる。
【0070】
コアラップシート12のうち吸収性コア11より肌側に位置する肌側部(コアラップシート)12aについて(
図6)、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことが好ましい。つまり、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aとは、接着剤で接着されていないことが好ましい。これにより、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤を設けた場合よりも、吸収性コア11と肌側部12aとが接触した部分を少なくすることができるため、
図9に示すように、一旦、肌側部12aで水平方向に排泄物を拡散させた状態から、それ以上の水平方向への拡散を促すよりも、肌側部12aから吸収性コア11への厚さ方向(非肌側)への排泄物の移行及び吸収性コア11内での吸収を促しやすくなる。そのため、着用時に、ナプキン1の肌側面で吸収した排泄物を、肌側部12aにおける拡散及び吸収性コア11の厚さ方向への吸収を促すことで、ナプキン1としての排泄物の吸収速度を向上させることができ、ナプキン1の肌側面に排泄物が留まって、着用者の肌に悪影響を与えたり、不快感を与えたりする恐れを軽減させることができる。
【0071】
図6等に示すように、コアラップシート12(肌側部12a)は、吸収性コア11より肌側において、コアラップシート12同士が重なった重なり部12rを有することが好ましい。本実施形態では、肌側部12aでは、
図6及び
図7に示すように、コアラップシート12が吸収性コア11の非肌側面を覆いつつ、コアラップシート12の両側端部を吸収性コア11の肌側に折り返し、幅方向の他方側から肌側に向かって折り返された長手方向に沿った先端12eaを外側(肌側)とし、幅方向の一方側から肌側に向かって折り返された長手方向に沿った先端12ebを内側(非肌側)とし、先端12eaが先端12ebよりも幅方向の一方側に位置するように配置することで、肌側部12aに重なり部12rが設けられている。
【0072】
ナプキン1のコアラップシート12同士が重なった重なり部12rを有する場合において、吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤が設けられていないことが好ましく、
図7に示すように、重なり部12rが幅方向の中央部で、且つ長手方向に沿って設けられていることが好ましい。そして、重なり部12rの幅方向の長さW12r(本実施形態では、長さW12rは5mm)が、粉砕された繊維の平均繊維長(本実施形態では、0.79mm)より長く、且つ、重なり部W12rの幅方向の長さW12rが、セルロース繊維の平均繊維長(本実施形態では、1.8mm)より長いことが好ましい。肌側部12aが吸収性コア11に接着されておらず、且つ重なり部12rにおいてコアラップシート12同士が接着されていないことで、コアラップシート12同士及び肌側部12aと吸収性コア11とが密着していない部分を設けやすくなる。そして、重なり部12rの幅方向の長さW12rが粉砕された繊維の平均繊維長より長く、且つ、重なり部W12rの幅方向の長さW12rがセルロース繊維の平均繊維長より長いことで、肌側部12aから吸収性コア11への排泄物の浸透及び重なり部12rにおける厚さ方向への排泄物の浸透を遅らせやすくなる。そのため、着用時に排泄物を吸収した場合に、コアラップシート12での平面的な拡散、特に、重なり部12rが長手方向に沿うことから排泄物の長手方向への拡散を促しやすくなるため、一旦、肌側部12aで拡散した排泄物を、その後に吸収性コア11に移行させて吸収させることで、吸収性コア11内の広い範囲で排泄物を吸収及び保持しやすくなる。
【0073】
吸収性コア11の肌側面と肌側部12aの非肌側面との間に接着剤が設けられておらず、吸収性コア11が高吸収性ポリマー(以下、「SAP」ともいう。))を有する場合において、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長は、生理食塩水に浸漬していない状態の高吸収性ポリマーの粒子径の平均値よりも大きい。また、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長は、生理食塩水に60分間浸漬させた後、15分間水切りを行った状態の高吸収性ポリマーの粒子径の平均値よりも小さいことが好ましい。
【0074】
生理食塩水に浸漬していない状態、つまり、排泄物を吸収する前の状態は、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長を高吸収性ポリマーの粒子径の平均値よりも大きくし、生理食塩水に浸漬させた後、つまり、排泄物を吸収した後の状態では、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維長が高吸収性ポリマーの粒子径の平均値よりも小さいことで、肌側部12aが高吸収性ポリマーの膨潤を妨げる恐れを軽減させることができ、高吸収性ポリマーが備える水分の吸収機能及び保水機能を発揮させやすくなる。
【0075】
図11は、所定の吸水倍率・保水倍率でSAPを膨潤させたときのSAP径の変化について表す表である。
図11において、左側端部に示されるSAP粒径は、膨潤前のSAPの粒径を表しており、右側に示されるSAP直径は、給水倍率(保水倍率)に応じて膨潤させた後のSAPの平均粒子径(平均直径)を表している。具体的に、膨潤前の粒子径(直径)が150~850μmのSAPに対して、10~120倍の吸水倍率(保水倍率)で水分(生理食塩水)を吸収(脱水)させた際の各SAPの直径の平均値を算出した結果を表している。ここで、「吸水倍率」とは、SAP等の吸水媒体が吸水保持できる水の飽和量を、吸水前の吸水媒体の重量で割った値のことを言う。また、「保水倍率」とは、SAP等の吸水媒体が吸水した水分を放散させた(脱水した)後で保持可能な水の量を、吸水前の吸水媒体の重量で割った値のことを言う。
【0076】
SAPの吸水倍率(保水倍率)の測定は、「JIS K 7223-1996 高吸水性樹脂の吸水量試験方法」を参照し、以下の手順に従って行った。
先ず、温度:20℃、相対湿度:60%、圧力(標準気圧):1atm(101.325kPa)の条件下(例えば当該条件に保たれた実験室内)で、測定対象となるSAPを準備する。SAPを所定の容器に保存して上下を逆さにして10回以上振り、SAPの粒子を均等に混合させる。混合されたSAPを、薬さじ等を用いて正確に1.00g計り取り、別途用意してあったナイロンネット袋に入れる。ナイロンネット袋は、例えば、200mm×200mmの正方形のナイロンネットを2枚重ね合わせ、正方形の3辺について、ナイロンネットの端から5mmの位置でヒートシールを行い、正方形の1辺のみが開口された袋状に成型されたものを利用できる。ナイロンネットとしては、例えば、NBC工業製の250メッシュナイロンネット(N-No.250HD)を用いることができる。
【0077】
ナイロンネット袋にSAPを入れた後、ナイロンネット袋の開口部をヒートシールし、ナイロンネット袋からSAPがこぼれないように封入する。そして、ビーカーに生理食塩水を1000ml入れ、SAPが封入されたナイロン袋の一辺がビーカーの底に触れる程度に、ナイロン袋(SAP)を生理食塩水に浸漬させる。そして、SAPとナイロンメッシュとがなるべく密着しないように、ナイロン袋の上部の一辺を洗濯バサミ等でビーカーの縁に固定する。この状態で60分間放置する。
【0078】
使用する生理食塩水は、電子天秤上に3リットルのビーカーを置いてゼロリセットした後、27.0gの塩化ナトリウム(試薬1級)にイオン交換水を加え3000.0gとし、塩化ナトリウムが溶解したことが目視できるまでかき混ぜ棒で撹拌したものである。
【0079】
60分間放置した後、SAPが封入されたナイロン袋をビーカーから引き揚げ、ナイロン袋の中央上部(例えば、ナイロン袋の上端から5mm、両側端から50mmの位置)を洗濯バサミで挟んで大気中に吊り下げた状態で15分間放置し、水切りを行う。そして、15分後に、SAPが封入されたナイロン袋の重量を測定する。この実験を複数回(例えば5回)繰り返し、測定された重量の平均値を吸水重量Bとする。
【0080】
次いで、水切りしたナイロン袋(SAP)を、(株)コクサン製の遠心分離器(HI30)を用いて脱水する。例えば、回転数850rpm(150G)で90秒間の脱水を行う。そして、脱水後のナイロン袋(SAP)の重量を測定する。この実験を複数回(例えば5回)繰り返し、測定された重量の平均値を保水重量Cとする。
【0081】
吸水重量Bから、ブランク試験にて求めたナイロンネットの重量Kを減ずることによってSAPの吸水量が求められ、当該吸水量をサンプル重量(1.00g)で割ることにより、SAPの吸水倍率が算出される。同様に、保水重量Cから、ブランク試験にて求めたナイロンネットの重量K´を減ずることによってSAPの保水量が求められ、当該保水量を元のサンプル重量(1.00g)で割ることにより、SAPの保水倍率が算出される。
【0082】
また、マイクロスコープを用いてSAPの膨潤前の直径(粒子径)と、膨潤後の直径(粒子径)とを測定する。そして、SAPの吸水倍率(保水倍率)について測定した結果と、測定された直径(粒子径)との関係に基づいて、SAPの吸水倍率と膨潤前後の直径(粒子径)との関係を表す表(
図11)を作成した。
【0083】
図11に示されるように、SAPの吸水倍率(保水倍率)が10倍~120倍の範囲において、膨潤後(吸水後若しくは脱水後)のSAPの平均直径(平均粒子径)は、何れも膨潤前のSAPの直径(150~850μm)よりも大きくなっている。例えば、
図11において、吸収倍率(保水倍率)が40倍である場合、膨潤前のSAPの直径が500μm(0.5mm)であるのに対して、膨潤後(吸水後)のSAPの直径は、2.12mmとなる。なお、
図11において、吸水倍率と保水倍率が同じ倍率である時には、膨潤後のSAPの平均直径も同じ値となる。これは、膨潤後のSAPの直径は、当該SAPに保持されている水分(本実施形態では生理食塩水)の量によって規定されるためである。すなわち、脱水後のSAPが保持している水分の量と、吸水後のSAPが保持している水分の量とが等しければ、SAPの平均直径も等しくなる。
【0084】
上述のとおり、肌側部12aのセルロース繊維の平均繊維長は、1.8mmである。
図11に示すように、膨潤後の高吸収性ポリマーの粒子径(粒径)が、肌側部12aのセルロース繊維の平均繊維長(1.8mm)より大きくなる場合があることがわかる。
【0085】
図12は、本実施形態に用いられるSAPの粒径分布を示す表である。
図12に示すように、本実施形態に用いられるSAPは、膨潤前の粒径が250~600μmの範囲に含まれるものが全体の79%(平均値)を占め、粒径600μm~850μmの範囲に含まれるものが全体の12%(平均値)、粒径850μm以上のものは0パーセント(平均値)であった。また、粒径0μm~250μmの範囲に含まれるものが全体の10%(平均値)であった。したがって、
図11のデータによれば、本実施形態の吸収体10に含まれるSAPの約32%は、膨潤後の高吸収性ポリマーの平均粒子径(粒径)がセルロース繊維の平均繊維長(1.8mm)よりも大きくなることが分かる。
【0086】
このように膨潤後の高吸収性ポリマーの平均粒子径が、肌側部12aのセルロース繊維の平均繊維長よりも大きくなることにより、SAPの吸水性能を向上させることができる。すなわち、肌側部12aのセルロース繊維の繊維長の平均値が、生理食塩水に60分間浸漬させた後15分間水切りを行った状態のSAP(高吸収性ポリマー)の直径の平均値よりも小さくなっていることにより、吸収体10の吸水性を向上させることができる。
【0087】
また、吸収性コア11の粉砕された繊維11fの平均繊維幅が、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維幅より大きいことが好ましい。本実施形態では、吸収性コア11の粉砕された繊維11fの平均繊維幅は約15μmであり、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維幅は24μmである。平均繊維幅が大きいほど、排泄物(液体)の保持性が高い。そのため、吸収性コア11の粉砕された繊維11fの平均繊維幅が、肌側部12aのセルロース繊維12fの平均繊維幅より大きいことで、粉砕された繊維11fの平均繊維幅をセルロース繊維12fの平均繊維幅より小さくした場合よりも、肌側部12aにおける液保持性より、吸収性コア11における液保持性が高くなりやすい。その結果、肌側部12aから吸収した排泄物を吸収性コア11で吸収しやすくし、肌側部12aで排泄物が留まる恐れを軽減させ、吸収性コア11で排泄物を保持しやすくすることで、ナプキン1から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0088】
また、吸収性コア11の粉砕された繊維11fのうち長手方向に沿った繊維の重量割合が、肌側部12aのセルロース繊維12fのうち長手方向に沿った繊維の重量割合より大きいことが好ましい。つまり、セルロース繊維12fは、粉砕された繊維11fよりも、幅方向に沿った繊維の重量割合が多い。本実施形態の肌側部12aのセルロース繊維12fは、長手方向及び幅方向にそれぞれランダムに沿って設けられており、吸収性コア11の粉砕された繊維11fは、粉砕された繊維11fのうち、長手方向に沿った繊維の重量割合が幅方向に繊維の重量割合より多い。排泄物は、繊維に沿って拡散しやすい。そのため、肌側部12aではセルロース繊維12fによって長手方向及び幅方向に排泄物を拡散させやすく、吸収性コア11では粉砕された繊維11fによって長手方向に排泄物を拡散させやすくなる。その結果、ナプキン1全体として幅方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0089】
肌側部12a(コアラップシート12)が紙力増強剤を含む一方で、吸収性コア11が紙力増強剤を含まないことが好ましい。紙力増強剤とは、パルプ繊維同士を結合して、液体に対して破れにくく強化しつつ、肌触りを向上させて、柔らかく弾力がある紙とするための薬剤である。紙力増強剤としては、例えば、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAE)等が挙げられる。この紙力増強剤を肌側部12a(コアラップシート12)に設けることで、肌側部12aの強度を向上させることができる。一方、吸収性コア11に紙力増強剤が設けられていないことで、吸収性コア11の保水性が低下する恐れを軽減させることができる。つまり、紙力増強剤を備えないことで保水性の低下を軽減させた吸収性コア11を、紙力増強剤を備えることで強度を向上させた肌側部12aで覆うことで、吸収性コア11の形状を維持しやすくなる。
【0090】
吸収性コア11において、粉砕された繊維11fには、広葉樹からなる広葉樹繊維が含まれていることが好ましい。そして、吸収性コア11中の、粉砕された繊維に対する広葉樹繊維の重量割合が85%以上であることが好ましい。従来のナプキン1等の吸収性物品では、粉砕された繊維として、比較的平均繊維長が長い針葉樹繊維を有することが一般的である。これに対し、本実施形態のナプキン1の吸収性コア11に粉砕された繊維11fとして広葉樹繊維を用いており、吸収性コア11の粉砕された繊維11fは広葉樹繊維100%で構成されている。吸収性コア11内において粉砕された繊維11f中の、比較的平均繊維長が短い広葉樹繊維の重量割合が大きいほど、吸収性コア11の内部に粉砕された繊維が密集した繊維塊fkが設けられやすくなる。繊維塊fkを備えた吸収性コア11は、繊維密度が高い繊維塊fkの部分と、繊維塊fkより繊維密度が低い部分とが設けられる。このように、繊維密度が異なる部分を備えることで、繊維塊fkの部分の毛細管現象による吸収性を向上させ、繊維塊fkより繊維密度が低い部分における繊維間の隙間で排泄物を保持しやすくなるため、吸収性コア11内で効率的に排泄物を吸収しやすくなる。
【0091】
また、上述のとおり、ナプキン1は、吸収性コア11と肌側部12a(コアラップシート12)とを厚さ方向に圧搾した吸収体圧搾部15を有している。厚さ方向に見て、吸収性コア11と肌側部12aとが重なる部分で、且つ、吸収体圧搾部15が設けられていない部分を非圧搾部としたとき、吸収性コア11の非圧搾部における繊維塊fkの数が、肌側部12a(コアラップシート)の非圧搾部における繊維塊の数より多いことが好ましい。
さらに、肌側部12a(コアラップシート12)の非圧搾部における繊維塊の数が、0(零)であることが好ましい。
吸収性コア11の繊維塊fkは、吸収性コア11において、吸収性コア11の平均密度よりも密度が高く且つ粉砕された繊維が密集した部分である。肌側部12a(コアラップシート12)の繊維塊は、肌側部12aにおいて、肌側部12aの平均密度よりも密度が高く且つセルロース繊維12fが密集した部分である。
【0092】
吸収性コア11における繊維塊fkの数が、肌側部12aにおける繊維塊の数より多いことで、肌側部12aでは排泄物の吸収や厚さ方向の非肌側への浸透よりも、水平方向の広い範囲に排泄物を拡散させやすい。また、繊維塊fkの数が多い吸収性コア11では、繊維塊fkにおける毛細管現象によって吸収性コア11内での排泄物の吸収及び液体(排泄物)の保持性を向上させやすくなる。
【0093】
なお、非圧搾部について、吸収体10及びナプキン1が、吸収体圧搾部15にっ加えて、中央圧搾部14や線状圧搾部EL、点状圧搾部ee等の圧搾部を備える場合には、非圧搾部は、これらのすべての圧搾部が設けられていない部分とする。
【0094】
繊維塊fkとは、製造過程において、パルプ繊維が粉砕されずに玉状に残った部分である。繊維塊fkは、パルプ繊維が毛玉状に密集した高密度部である。繊維塊が設けられると、繊維塊fkは繊維が高密度部分であり、繊維塊fkの周囲は繊維塊fkよりも繊維密度が低い低密度部分となるため、繊維密度の高低差が生じて、毛細管現象により吸収が進みやすくなる。また、繊維塊fkを有することで、吸収性コア11やコアラップシート12において、厚さ方向に高密度部と低密度部を有することになり、例えば、圧搾部14、15等のように、厚さ方向において高密度部が連続している場合と比較して、その部材の厚み(嵩)を維持しやすく、柔らかくクッション性を高めやすい。
【0095】
また、吸収性コア11が非圧搾部に繊維塊fkを有する場合において、吸収性コア11の非圧搾部において、
図5に示すように、吸収性コア11を厚さ方向に3等分した際に、肌側から非肌側に向かって、順に上側部(肌側部)11a、中間部11b、下側部(非肌側部)11cを有している。このような場合に、中間部11bにおける繊維塊fkの数が、上側部11aにおける繊維塊fkの数より多いことが好ましい。吸収性コア11中の繊維塊fkは、繊維密度が高い部分であるため、中間部11bにおける繊維塊fkの数が上側部11aにおける繊維塊fkの数より多いことで、吸収性コア11の上側部11aから中間部11bに、つまり厚さ方向の肌側から非肌側に排泄物を引き込みやすくなり、且つ、一旦、中間部11bで吸収した排泄物が上側部11aに戻ることを抑止しやすくなる。
【0096】
図13は、吸収性コア11の長手方向及び幅方向の各部について説明する図である。
図13に示すように、ナプキン1の長手方向において、吸収性コア11を3等分したときに、長手方向の前側(一方側)から順に前側部(一方側部)Ta、中央部Tb、後側部(他方側部)Tcを有している。また、ナプキン1の幅方向において、吸収性コア11を3等分したときに、一方側から順に左側部(一方側部)Wa、中央部Wb、右側部(他方側部)Wcを有している。
【0097】
このような場合において、中央部Tbにおける粉砕された繊維11fが密集した繊維塊fkの数が、前側部Taにおける粉砕された繊維11fが密集した繊維塊fkの数より多く、中央部Wbにおける粉砕された繊維11fが密集した繊維塊fkの数が、左側部Waにおける粉砕された繊維11fが密集した繊維塊fkの数より多いことが好ましい。吸収性コア11の長手方向及び幅方向における中央部(中央部Tbであり、且つ中央部Wbである部分)は、着用時において、着用者の膣口等の排泄口に当接しやすい部分である。そのため、中央部Tb及び中央部Wbにおける繊維塊fkの数が多いことで、着用者の排泄口に近い部分における吸収性を向上させることができる。
【0098】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0099】
1 ナプキン(吸収性物品)、
1W ウイング部、
10 吸収体、
11 吸収性コア、
11d 中高部、
12 コアラップシート、
12a 肌側部(コアラップシート)、
12b 非肌側部、
14 中央圧搾部、
15 吸収体圧搾部、
21 トップシート(表面シート)、
22 セカンドシート、
23 サイドシート、
24 補強シート、
31 バックシート(非肌側シート)、
32 本体粘着部(粘着部)、
33 ウイング粘着部、
CA 股下領域、
ee 円形圧搾部、
EL 線状圧搾部