(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104534
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】カメラの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 1/26 20220101AFI20250703BHJP
【FI】
B60R1/26 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222412
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 真悟
(57)【要約】
【課題】車両の窓の車内側に配置されるカメラを窓に取り付けるための取付構造において、窓に対するカメラの着脱作業の作業効率を向上させる。
【解決手段】カメラの取付構造20は、カメラ21に取り付けられる取付部材22と、窓の内面に固定され、取付部材を保持する保持部材23とを有する。保持部材は、窓の内面に固定される固定枠25と、固定枠から車内側に向かって突出するフード26と、フードから車内側に向かって延在し、カメラを受容する受容筒27とを有する。受容筒は、弾性変形可能な一対の係合爪51を有する。取付部材は、カメラを支持する土台部61と、土台部から車外側に向かって延在し、受容筒の両側に配置される一対の側壁部62と、を有する。各側壁部には、各係合爪が軸線の側から係合する係合孔66が設けられ、係合孔は、各側壁部を軸線と直交する方向に貫通している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓の車内側に配置されるカメラを前記窓に取り付けるための取付構造であって、
前記カメラに取り付けられる取付部材と、
前記窓の内面に固定され、前記取付部材を保持する保持部材と、を有し、
前記保持部材は、
前記窓の内面に固定される固定枠と、
前記固定枠から車内側に向かって突出し、前記カメラの視野空間を画定するフードと、
前記フードから車内側に向かって軸線周りに延在し、前記カメラを受容する受容筒と、を有し、
前記受容筒は、弾性変形可能な一対の係合爪を有し、
前記取付部材は、
前記カメラを支持する土台部と、
前記土台部から車外側に向かって延在し、前記受容筒の両側に配置される一対の側壁部と、を有し、
前記各側壁部には、前記各係合爪が前記軸線の側から係合する係合孔が設けられ、前記係合孔は、前記各側壁部を前記軸線と直交する方向に貫通しているカメラの取付構造。
【請求項2】
前記係合孔は、前記土台部と、前記各側壁部とに跨って形成されており、前記土台部を前記軸線と平行な方向に貫通する請求項1に記載のカメラの取付構造。
【請求項3】
前記土台部は、前記各係合孔の縁部から車内側に向かって突出する突出部を有する請求項2に記載のカメラの取付構造。
【請求項4】
前記突出部の前記軸線と相反する側の面は、前記軸線と平行である請求項3に記載のカメラの取付構造。
【請求項5】
前記各係合爪は、
前記軸線と平行な方向に沿って延在する片部と、
前記片部の先端から前記軸線と相反する側に向かって突出する爪部と、を有し、
前記爪部が、前記各係合孔に係合する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカメラの取付構造。
【請求項6】
前記各係合爪は、前記受容筒に設けられたスリットにより画定されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカメラの取付構造。
【請求項7】
前記カメラには、ハーネスが接続され、
前記固定枠には、前記ハーネスを保持するハーネス保持部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカメラの取付構造。
【請求項8】
前記ハーネス保持部は、前記固定枠の車内側の面から突出し、且つ互いに間隔を空けて配置される一対の突片を有し、
前記ハーネスは、前記一対の突片に挟持されている請求項7に記載のカメラの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるカメラの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1には、車両の周辺の状況を撮影するためのカメラの取付構造が開示されている。特許文献1に記載のカメラの取付構造は、カメラと、カメラをフロントガラスに取り付けるためのブラケット(保持部材)とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の製造後においても、カメラの故障時などには、カメラを窓に対して着脱する必要が生じる。但し、カメラの周辺が車体フレームに囲まれていたり、カメラが車体の奥まった位置に搭載されていたりする場合には、カメラの着脱のための作業スペースが限られており、作業者が作業スペースに腕を1本しか挿入できないこともある。このような場合には、窓に対するカメラの着脱作業の作業効率が低下する虞がある。
【0006】
以上の背景を鑑み、本発明は、車両の窓の車内側に配置されるカメラを窓に取り付けるための取付構造において、窓に対するカメラの着脱作業の作業効率を向上させることを課題とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両(1)の窓(8)の車内側に配置されるカメラ(21)を前記窓に取り付けるための取付構造(20)であって、前記カメラに取り付けられる取付部材(22)と、前記窓の内面に固定され、前記取付部材を保持する保持部材(23)と、を有し、前記保持部材は、前記窓の内面に固定される固定枠(25)と、前記固定枠から車内側に向かって突出し、前記カメラの視野空間(S)を画定するフード(26)と、前記フードから車内側に向かって軸線(A2)周りに延在し、前記カメラを受容する受容筒(27)と、を有し、前記受容筒は、弾性変形可能な一対の係合爪(51)を有し、前記取付部材は、前記カメラを支持する土台部(61)と、前記土台部から車外側に向かって延在し、前記受容筒の両側に配置される一対の側壁部(62)と、を有し、前記各側壁部には、前記各係合爪が前記軸線の側から係合する係合孔(66)が設けられ、前記係合孔は、前記各側壁部を前記軸線と直交する方向に貫通している。
【0008】
この態様によれば、作業者は、カメラに取り付けられた取付部材を窓の内面に固定された保持部材に対して車内側から押し込むことで、保持部材の係合爪を取付部材の係合孔に係合させることができる。これにより、カメラが取付部材及び保持部材を介して窓に取り付けられる。作業者は、取付部材の係合孔に係合した保持部材の係合爪を軸線の側に向けて押圧しつつ、取付部材を保持部材に対して車内側に引き抜くことにより、保持部材から取付部材を取り外すことができる。これにより、カメラが窓から取り外される。以上のように、作業者は、単純な作業によってカメラを窓に対して着脱することができる。そのため、カメラの着脱のための作業スペースが限られており、作業者が作業スペースに腕を1本しか挿入できない場合であっても、窓に対するカメラの着脱作業の作業効率を向上させることができる。
【0009】
上記の態様において、前記係合孔は、前記土台部と、前記各側壁部とに跨って形成されており、前記土台部を前記軸線と平行な方向に貫通してよい。
【0010】
この態様によれば、作業者は、取付部材の係合孔と保持部材の係合爪との係合位置を視認できない状況でも、係合孔を介して係合爪に指で触れることにより、係合孔と係合爪との係合位置を確認することができる。そのため、作業者は、係合孔に係合した係合爪を軸線の側に向けて容易に押圧し、保持部材から取付部材を容易に取り外すことができる。
【0011】
上記の態様において、前記土台部は、前記各係合孔の縁部から車内側に向かって突出する突出部(71)を有してよい。
【0012】
この態様によれば、作業者は、取付部材の係合孔と保持部材の係合爪との係合位置を視認できない状況でも、突出部に指で触れることにより、係合孔と係合爪との係合位置を容易に確認することができる。そのため、作業者は、係合孔に係合した係合爪を軸線の側に向けて一層容易に押圧し、保持部材から取付部材を一層容易に取り外すことができる。
【0013】
上記の態様において、前記突出部の前記軸線と相反する側の面は、前記軸線と平行であってよい。
【0014】
この態様によれば、作業者は、取付部材を安定して把持することができる。そのため、作業者は、係合孔に係合した係合爪を軸線の側に向けて一層容易に押圧し、保持部材から取付部材を一層容易に取り外すことができる。
【0015】
上記の態様において、前記各係合爪は、前記軸線と平行な方向に沿って延在する片部(51A)と、前記片部の先端から前記軸線と相反する側に向かって突出する爪部(51B)と、を有し、前記爪部が、前記各係合孔に係合してよい。
【0016】
この態様によれば、簡素な構成によって係合爪が形成される。
【0017】
上記の態様において、前記各係合爪は、前記受容筒に設けられたスリット(53)により画定されてよい。
【0018】
この態様によれば、簡素な構成によって係合爪が形成される。
【0019】
上記の態様において、前記カメラには、ハーネス(57)が接続され、前記固定枠には、前記ハーネスを保持するハーネス保持部(35)が設けられてよい。
【0020】
この態様によれば、ハーネスと車両に設けられた他の部材との干渉が抑制される。
【0021】
上記の態様において、前記ハーネス保持部は、前記固定枠の車内側の面から突出し、且つ互いに間隔を空けて配置される一対の突片を有し、前記ハーネスは、前記一対の突片に挟持されてよい。
【0022】
この態様によれば、ハーネスが一対の突片に挟持されることにより、ハーネスの移動が規制されるため、ハーネスと車両に設けられた他の部材との干渉がより抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上の構成によれば、車両の窓の車内側に配置されるカメラを窓に取り付けるための取付構造において、窓に対するカメラの着脱作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る車両の側部構造の後部を示す側面図
【
図2】実施形態に係るカメラの取付構造を車両の車内側から視た斜視図
【
図3】実施形態に係るカメラの取付構造を示す分解斜視図
【
図4】実施形態に係るカメラの取付構造を示す側断面図
【
図5】実施形態に係るカメラの取付構造を示す平面図
【
図6】実施形態に係るカメラの取付構造を後方(車内側)から視た斜視図
【
図7】取付部材にカメラが取り付けられた状態を示す側面図
【
図8】取付部材にカメラが取り付けられた状態を示す平面図
【
図9】取付部材にカメラが取り付けられた状態を示す背面図
【
図10】カメラが取り付けられた取付部材を保持部材に保持させるための手順を説明する説明図
【
図11】カメラが取り付けられた取付部材を保持部材から取り外すための手順を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係るカメラの取付構造(以下、「カメラ取付構造20」と称する)が設けられた車両1の実施形態について説明する。各図に適宜付される矢印FRは、車両1の前方を示している。
【0026】
車両1は、例えば、4輪自動車である。
図1に示すように、車両1は、車両1の左右の側部を構成する側部構造2を有する。車両1の側部構造2は、車体フレーム3(
図2参照)を有する。車体フレーム3は、例えば車両1の左右外側に配置されるアウタパネル4と、アウタパネル4の左右内側に配置されるインナパネル5(
図2参照)とを互いに接合して形成されている。
【0027】
アウタパネル4のうちの側部構造2の後部に対応する部分には、左右方向に貫通する開口部6が設けられている。アウタパネル4の開口部6は、略三角形状に形成されている。アウタパネル4の開口部6には、クォータガラス8(窓の一例)が設けられている。本実施形態では、クォータガラス8は、基材層11と、基材層11に車内側から重ね合わされる遮光層12とを有する。基材層11は、ガラスによって形成されており、透明性を有している。遮光層12は、基材層11の内面(車内側の面)にプリントされた黒セラミックによって形成されており、透明性を有していない。遮光層12には、略方形状の第1開口部14及び略台形状の第2開口部16が設けられている。
【0028】
図2に示すように、インナパネル5には、左右方向に貫通する開口部17が設けられている。インナパネル5の開口部17の大きさは、作業者の腕が1本通過できる程度に設けられている。作業者は、腕をインナパネル5の開口部17に車内側から通過させることにより、クォータガラス8の内面(車内側の面)にアクセスすることができる。
【0029】
図3に示すように、カメラ取付構造20は、クォータガラス8の車内側に配置されるカメラ21をクォータガラス8に取り付けるための構造である。カメラ取付構造20は、車両1の周辺を撮影するカメラ21と、カメラ21に取り付けられる取付部材22と、クォータガラス8の内面(車内側の面)に固定され、取付部材22を保持する保持部材23とを有する。本実施形態では、カメラ21は、車両1の前方且つ左右外方を撮影するように配置されている。即ち、カメラ21の光軸A1は、車両1の前方且つ左右外方を向いている。
【0030】
図3から
図6に示すように、保持部材23は、クォータガラス8の内面に固定される固定枠25と、固定枠25から車内側に向かって突出し、カメラ21の視野空間Sを画定するフード26と、フード26から車内側に向かって軸線A2周りに延在し、カメラ21を受容する受容筒27とを有する。
【0031】
固定枠25は、クォータガラス8の内面に沿う方形枠状に形成されており、方形の開口25Aを画定している。固定枠25は、車両1の前後方向に延在する下板部29と、下板部29の前端部から上方に延在する前板部30と、下板部29の後端部から上方に延在する後板部31と、車両1の前後方向に延在し、前板部30の上端部及び後板部31の上端部を接続する上板部32とを有する。下板部29の外側面(車外側の面)、前板部30の外側面(車外側の面)、後板部31の外側面(車外側の面)及び上板部32の外側面(車外側の面)は、例えば接着剤等により、クォータガラス8の内面(車内側の面)に接着されている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、固定枠25には、車両1の左右方向に貫通する複数の貫通孔34と、後述するカメラ21のハーネス57を保持する一対のハーネス保持部35と、カメラ21のハーネス57が引っ掛けられる引掛爪39とが設けられている。本実施形態では、3つの貫通孔34が、固定枠25の上板部32から固定枠25の前板部30に亘って間隔を空けて設けられている。具体的には、貫通孔34は、固定枠25の開口25Aよりも上方に設けられた第1貫通孔34Aと、固定枠25の開口25Aよりも車両1の前方且つ上方に設けられた第2貫通孔34Bと、固定枠25の開口25Aよりも車両1の前方に設けられた第3貫通孔34Cとを有する。
【0033】
各ハーネス保持部35は、固定枠25の内側面(車内側の面)から突出し、互いに間隔を空けて配置される一対の突片37を有する。各突片37は、板状に形成されている。本実施形態では、各突片37は、固定枠25の第1貫通孔34Aの縁部及び固定枠25の第3貫通孔34Cの縁部から車両1の左右内方に向けて突出している。各突片37の先端(車両1の左右内方の端部)は、対応する貫通孔34A、34Cの中心軸側に向けて膨出している。
【0034】
引掛爪39は、固定枠25の第2貫通孔34Bの縁部から車両1の左右内方に向けて突出する突出部39A(
図6参照)と、突出部39Aの先端(車内側の端部)から第2貫通孔34Bの中心軸側に向けて屈曲する屈曲部39Bとを有する。突出部39A及び屈曲部39Bは、板状に形成されている。突出部39Aは、第2貫通孔34Bの縁部のうち、固定枠25の開口25Aの側の縁部に設けられている。
【0035】
フード26は、固定枠25と一体に形成されている。フード26は、固定枠25の前板部30から車両1の後方に向けて左右内方に傾斜する前壁部41と、固定枠25の後板部31から左右内方に向けて車両1の前方に傾斜し、前壁部41の後端部(車内側の端部)に接続される後壁部42と、固定枠25の上板部32から車両1の左右内方に延在し、前壁部41の上端部及び後壁部42の上端部を接続する上壁部43と、固定枠25の下板部29から車両1の左右内方に延在し、前壁部41の下端部及び後壁部42の下端部を接続する底壁部44とを有する。後壁部42には、カメラ21の光軸A1と平行な方向に貫通する受容孔46が形成されている。受容孔46には、後述するカメラ21のレンズ55が配置される。
【0036】
図3から
図5に示すように、カメラ21の視野空間Sは、前壁部41、後壁部42、上壁部43及び底壁部44によって画定されている。カメラ21の視野空間Sは、車両1の外側からの光を後述するカメラ21のレンズ55に入射させるための空間である。カメラ21の視野空間Sは、クォータガラス8の遮光層12の第1開口部14(
図1参照)に対応する位置に設けられている。即ち、車両1の外側からの光は、クォータガラス8の遮光層12の第1開口部14を通過して、カメラ21の視野空間Sに入射する。
【0037】
図3から
図6に示すように、受容筒27は、固定枠25及びフード26と一体に形成されている。本実施形態では、受容筒27は、角筒状に形成されている。受容筒27の軸線A2は、カメラ21の光軸A1に整合する。即ち、受容筒27は、フード26からカメラ21の光軸A1に沿って車内側に向けて突出している。
【0038】
受容筒27は、フード26の上壁部43に接続された上壁47と、フード26の底壁部44に接続された下壁48と、上壁47の両側部及び下壁48の両側部を接続する一対の側壁49とを有する。
【0039】
受容筒27は、受容筒27の軸線A2と交差する方向に弾性変形可能な一対の係合爪51を有する。各係合爪51は、受容筒27の軸線A2と平行な方向に沿って延在する片部51Aと、片部51Aの先端(車内側の端部)から受容筒27の軸線A2と相反する側に向かって突出する爪部51Bとを有する。また、
図5に示すように、各係合爪51は、受容筒27に設けられた一対のスリット53により画定されている。
【0040】
本実施形態では、一対のスリット53は、受容筒27の軸線A2と平行な方向に沿って延在し、互いに間隔を空けて配置される。本実施形態では、一方の係合爪51の片部51Aは、受容筒27の上壁47に設けられた一対のスリット53により画定されている。上壁47に設けられる各スリット53は、上壁47の中央部から上壁47の先端(車内側の端部)に亘って形成されている。また、他方の係合爪51の片部51Aは、受容筒27の下壁48に設けられた一対のスリット53により画定されている。下壁48に設けられる各スリット53は、下壁48の中央部から下壁48の先端(車内側の端部)に亘って形成されている。各係合爪51の先端(車内側の端部)は、受容筒27の先端(車内側の端部)よりも車外側に位置する。
【0041】
図4に示すように、各係合爪51の爪部51Bは、車外側を向く当接面51Cを有する。また、各係合爪51の爪部51Bの外側面(受容筒27の軸線A2と相反する側の面)は、先端(車内側)に向けて受容筒27の軸線A2の側に傾斜している。
【0042】
図4、
図7及び
図8に示すように、カメラ21は、例えば光学系をなすレンズ55と、CCD(Charge Coupled Devices)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子(図示せず)と、レンズ55及び撮像素子を収容するケーシング56と、撮像素子に接続された端子(図示せず)と、一端が端子に接続されたハーネス57と、ハーネス57の一端を収容するコネクタ部58とを有する。
【0043】
ケーシング56は、受容筒27の軸線A2(即ち、カメラ21の光軸A1)と平行な方向に延在する略角筒状に形成されている。ケーシング56の前部(車外側の部分)には、レンズ55が配置されている。カメラ21のレンズ55は、フード26の後壁部42に設けられた受容孔46に受容されている。ケーシング56の後部(車内側の部分)には、コネクタ部58が設けられている。ケーシング56の後端面(車内側の端面)には、受容筒27の軸線A2と平行な方向に貫通する複数の締結孔(図示せず)が設けられている。各締結孔には、雌ねじ(図示せず)が形成されている。
【0044】
図7から
図9に示すように、取付部材22は、樹脂材料から形成されている。取付部材22は、カメラ21を支持する土台部61と、土台部61から車外側に向かって延在する一対の側壁部62とを有する。
【0045】
土台部61は、板状に形成されている。土台部61の主面は、受容筒27の軸線A2(即ち、カメラ21の光軸A1)と平行な方向を向く。
図9に示すように、土台部61には、受容筒27の軸線A2と平行な方向に貫通する第1貫通孔63及び複数の第2貫通孔64が形成されている。第1貫通孔63は、土台部61の中央部に設けられている。カメラ21のコネクタ部58は、第1貫通孔63を貫通している。各第2貫通孔64の中心軸は、カメラ21のケーシング56の対応する締結孔の中心軸に整合する。カメラ21は、例えば土台部61の第2貫通孔64を貫通し、ケーシング56の締結孔の雌ねじに螺合するボルト65により取付部材22に締結されている。
【0046】
図7及び
図8に示すように、各側壁部62は、板状に形成されている。各側壁部62の主面は、受容筒27の軸線A2と直交する方向を向く。本実施形態では、一対の側壁部62は、土台部61の上端部及び下端部に接続されている。
【0047】
図7に示すように、各側壁部62は、カメラ21のケーシング56の対応する上下の面と隙間Gを空けて配置される。具体的には、土台部61の上端部に接続された側壁部62は、対応するカメラ21のケーシング56の上面よりも上方に配置される。土台部61の上端部に接続された側壁部62とカメラ21のケーシング56の上面との間の隙間Gには、受容筒27の上壁47が配置されている。また、土台部61の下端部に接続された側壁部62は、対応するカメラ21のケーシング56の下面よりも下方に配置される。土台部61の下端部に接続された側壁部62とカメラ21のケーシング56の下面との間の隙間Gには、受容筒27の下壁48が配置されている。
【0048】
図8及び
図9に示すように、取付部材22には、一対の係合孔66が設けられている。各係合孔66には、受容筒27の各係合爪51が受容筒27の軸線A2の側から係合している。各係合孔66は、土台部61及び各側壁部62に設けられている。即ち、各係合孔66は、土台部61と各側壁部62とに跨って形成されている。係合孔66のうち、土台部61に設けられる部分は、受容筒27の軸線A2と平行な方向に土台部61を貫通している。また、係合孔66のうち、各側壁部62に設けられる部分は、受容筒27の軸線A2と直交する方向に各側壁部62を貫通している。
図8に示すように、各側壁部62は、係合孔66の一端部(車外側の端部)を画定する第1端縁67と、第1端縁67から車内側に向かって延在する一対の第1側縁68とを有する。
図9に示すように、土台部61は、各係合孔66の他端部(カメラ21の光軸A1の側の端部)を画定する第2端縁69と、第2端縁69からカメラ21の光軸A1と相反する側に延在し、対応する第1側縁68に接続される一対の第2側縁70とを有する。土台部61の第2端縁69から側壁部62の内側面(受容筒27の軸線A2の側の面)の上下方向の間隔は、側壁部62の第1端縁67と係合爪51の当接面51Cとの当接が解除されるのに必要な係合爪51の変位量のうちの上下方向の成分の量と略等しい。
【0049】
図4に示すように、各側壁部62の第1端縁67は、対応する係合爪51の爪部51Bの当接面51Cに当接している。また、受容筒27の端部(車内側の端部)は、土台部61の外側面(車外側の面)に当接している。受容筒27の各係合爪51の先端(車内側の端部)は、土台部61の外側面(車外側の面)よりも車内側に位置する。
【0050】
図7から
図9に示すように、土台部61には、一対の突出部71が設けられている。各突出部71は、各係合孔66の縁部から車内側に向かって突出している。各突出部71の外側面(受容筒27の軸線A2と相反する側の面)は、土台部61の第2端縁69(
図8参照)と同一平面上に配置されている。また、各突出部71の外側面は、受容筒27の軸線A2と平行である。
【0051】
土台部61の両側部には、土台部61の内側面(車内側の面)から車内側に向かって突出する第1立壁部73が設けられている。また、各側壁部62の周縁部には、第1立壁部73に接続され、受容筒27の軸線A2と相反する側に向かって突出する第2立壁部74が設けられている。
【0052】
以上のように構成されたカメラ取付構造20において、カメラ21をクォータガラス8に取り付けるための作業を説明する。以下、保持部材23はクォータガラス8の内面に既に固定された状態であり、カメラ21は取付部材22に既に取り付けられた状態であるという前提で説明を行う。
【0053】
最初に、作業者は、取付部材22を把持する。具体的には、作業者は、取付部材22の土台部61に設けられた一対の突出部71をカメラ21の光軸A1と相反する側から把持する。次に、作業者は、一対の突出部71を把持した状態で、一対の突出部71を把持した側の腕をインナパネル5の開口部17に車内側から通過させる。
図10(A)に示すように、次に、作業者は、取付部材22に取り付けられたカメラ21を保持部材23の受容筒27に挿入する。このとき、取付部材22の各側壁部62とカメラ21のケーシング56との間に設けられた隙間Gに、受容筒27の上壁47及び下壁48のそれぞれが挿入される。カメラ21が受容筒27の所定の位置まで挿入されたとき、受容筒27に設けられた各係合爪51の爪部51Bが、対応する側壁部62の内側面(受容筒27の軸線A2の側の面)に当接する。
図10(B)に示すように、カメラ21が受容筒27に更に挿入されるにつれて、各係合爪51の爪部51Bが対応する側壁部62の内側面により押圧され、各係合爪51の片部51Aが受容筒27の軸線A2の側に向かって弾性変形する。
図10(C)に示すように、カメラ21を受容筒27に更に挿入させるために、作業者が取付部材22を受容筒27に対して車内側から押し込むと、側壁部62の第1端縁67が対応する係合爪51の爪部51Bの当接面51Cよりも車外側に移動する。このとき、各係合爪51の片部51Aの弾性変形が解除され、各係合爪51の片部51Aが元の位置に復帰する。また、側壁部62の第1端縁67に対応する係合爪51の爪部51Bの当接面51Cが当接する。このように、各係合爪51は、受容筒27の軸線A2の側から対応する係合孔66に係合する。
【0054】
次に、作業者は、カメラ21のハーネス57を保持部材23の固定枠25に設けられたハーネス保持部35に保持させる。また、作業者は、カメラ21のハーネス57を保持部材23の固定枠25に設けられた引掛爪39に引っ掛ける。以上により、カメラ21が取付部材22及び保持部材23を介してクォータガラス8に取り付けられる。
【0055】
なお、他の実施形態では、作業者は、カメラ21のハーネス57をハーネス保持部35に保持させた後、カメラ21を保持部材23の受容筒27に挿入してもよい。
【0056】
次に、カメラ取付構造20において、カメラ21をクォータガラス8から取り外すための作業を説明する。
【0057】
最初に、作業者は、カメラ21のハーネス57を保持部材23のハーネス保持部35から取り外す。次に、作業者は、腕をインナパネル5の開口部17に車内側から通過させる。
図11(A)に示すように、次に、作業者は、取付部材22の一対の突出部71を把持する。更に、作業者は、手の指75で各係合爪51の爪部51Bを受容筒27の軸線A2の側に押圧し、各係合爪51の片部51Aを受容筒27の軸線A2の側に向けて弾性変形させる。これにより、各係合爪51の爪部51Bの当接面51Cと対応する側壁部62の第1端縁67との当接が解除され、各係合爪51が対応する係合孔66から離脱する。次に、作業者は、各係合爪51の爪部51Bを受容筒27の軸線A2の側に向けて押圧した状態を維持しつつ、カメラ21を受容筒27から車内側に向けて引き抜く。カメラ21が所定の位置まで受容筒27から引き抜かれると、側壁部62の第1端縁67が対応する係合爪51の爪部51Bの当接面51Cよりも車内側に移動する。これにより、各係合爪51の爪部51Bが対応する側壁部62の内側面(受容筒27の軸線A2の側の面)により押圧される。
図11(B)に示すように、カメラ21が更に受容筒27から引き抜かれ、各側壁部62の先端(車外側の端部)が対応する係合爪51の爪部51Bよりも車内側に移動すると、各係合爪51の片部51Aの弾性変形が解除され、各係合爪51の片部51Aが元の位置に復帰する。以上により、カメラ21がクォータガラス8から取り外される。
【0058】
以上のように構成されたカメラ取付構造20において、受容筒27に設けられた各係合爪51は、受容筒27の軸線A2の側から対応する係合孔66に係合する。そのため、カメラ21に取り付けられた取付部材22をクォータガラス8の内面に固定された保持部材23に対して車内側から押し込むことで、保持部材23の係合爪51を取付部材22の係合孔66に係合させることができる。これにより、カメラ21が取付部材22及び保持部材23を介してクォータガラス8に取り付けられる。また、作業者は、取付部材22の係合孔66に係合した保持部材23の係合爪51を受容筒27の軸線A2の側に向けて押圧しつつ、取付部材22を保持部材23に対して車内側に引き抜くことにより、保持部材23から取付部材22を取り外すことができる。これにより、カメラ21がクォータガラス8から取り外される。以上のように、作業者は、単純な作業によってカメラ21をクォータガラス8に対して着脱することができる。そのため、カメラ21の着脱のための作業スペースが限られており、作業者が作業スペースに腕を1本しか挿入できない場合であっても、クォータガラス8に対するカメラ21の着脱作業の作業効率を向上させることができる。
【0059】
各係合孔66は、対応する側壁部62及び土台部61に跨って形成され、各係合孔66のうち、土台部61に設けられる部分は、受容筒27の軸線A2と平行な方向に土台部61を貫通している。また、土台部61には、各係合孔66の縁部から車内側に向かって突出する突出部71が設けられている。そのため、例えば車体フレーム3のインナパネル5により、取付部材22の係合孔66と保持部材23の係合爪51との係合位置を視認できない状況でも、作業者は、突出部71に指75で触れることにより、係合孔66と係合爪51との係合位置を容易に確認することができる。したがって、作業者は、係合孔66に係合した係合爪51を受容筒27の軸線A2の側に向けて一層容易に押圧し、保持部材23から取付部材22を一層容易に取り外すことができる。
【0060】
各突出部71の外側面(受容筒27の軸線A2と相反する側の面)は、受容筒27の軸線A2と平行である。これにより、作業者は、取付部材22を安定して把持することができる。そのため、作業者は、係合孔66に係合した係合爪51を受容筒27の軸線A2の側に向けて一層容易に押圧し、保持部材23から取付部材22を一層容易に取り外すことができる。
【0061】
各係合爪51は、受容筒27の軸線A2と平行な方向に沿って延在する片部51Aと、片部51Aの先端(車内側の端部)から受容筒27の軸線A2と相反する側に向かって突出する爪部51Bとを有する。また、各係合爪51は、受容筒27に設けられたスリット53により画定されている。これらにより、簡素な構成によって係合爪51が形成される。
【0062】
固定枠25には、カメラ21のハーネス57を保持する一対のハーネス保持部35が設けられている。各ハーネス保持部35は、固定枠25の車内側の面から突出し、互いに間隔を空けて配置される一対の突片37を有する。カメラ21のハーネス57は、一対の突片37に挟持される。これにより、ハーネス57の移動が規制されるため、ハーネス57と車両1に設けられた他の部材との干渉がより抑制される。
【0063】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、取付部材22の側壁部62は、土台部61の上端部及び下端部に設けられているが、土台部61の左右の端部に設けられてもよい。上記実施形態では、クォータガラス8を窓の一例としているが、他の実施形態では、クォータガラス8以外の構成要素(例えば、フロントガラスやリヤガラス)を窓の一例としても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 :車両
8 :クォータガラス(窓)
20 :カメラ取付構造
21 :カメラ
22 :取付部材
23 :保持部材
25 :固定枠
26 :フード
27 :受容筒
35 :ハーネス保持部
51 :係合爪
51A :片部
51B :爪部
53 :スリット
57 :ハーネス
61 :土台部
62 :側壁部
66 :係合孔
71 :突出部
A2 :受容筒の軸線(軸線)
S :カメラの視野空間