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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010461
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】生分解性樹脂水分散体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20250110BHJP
   D21H 19/28 20060101ALI20250110BHJP
   C08L 89/02 20060101ALI20250110BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20250110BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20250110BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20250110BHJP
【FI】
C08L67/00
D21H19/28
C08L89/02
C08L93/04
C09D167/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200486
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2023111832
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩城 直陶
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
4J002AF022
4J002AF032
4J002CF191
4J002GH01
4J002HA06
4J038BA192
4J038BA232
4J038NA27
4J038PC10
4L055AG50
4L055AG53
4L055AG82
4L055BE08
4L055CH14
4L055EA32
4L055FA30
4L055GA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、紙用塗工剤として利用可能な生分解性を有するバイオマス素材を利用した生分解性樹脂水分散体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明によれば、ポリエステル系生分解性樹脂(a)とロジン類(b)及びカゼイン類(c)からなる生分解性樹脂水分散体を用いることで、従来の水系紙用塗工剤に必要とされる耐水性、ヒートシール性の性能を満たしつつ、環境負荷が低い紙用の水系塗工剤として使用することができる生分解性樹脂水分散体を得ることができる。前記ポリエステル系生分解性樹脂(a)は、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系生分解性樹脂(a)とロジン類(b)及びカゼイン類(c)からなる生分解性樹脂水分散体。
【請求項2】
ポリエステル系生分解性樹脂(a)が、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の生分解性樹脂水分散体。
【請求項3】
ポリエステル系生分解性樹脂(a)の含有質量比が(a)/{(a)+(b)+(c)}=10~85%、ロジン類(b)の含有質量比が、(b)/{(a)+(b)+(c)}=10~85%、カゼイン類(c)の含有質量比が(c)/{(a)+(b)+(c)}=3~10%である事を特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂水分散体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂水分散体を紙又は板紙に塗工することを特徴とする、塗工紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂水分散体及び当該生分解性樹脂水分散体を塗工層として有する塗工紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に端を発し、脱石油、脱プラスチックの風潮から、再生可能な資源である「紙」への関心が高まっており、各種プラスチック製品から紙製品への転換がなされる中、紙に塗工する事でヒートシール性等の性能を付与する事が可能な石油系の水分散体(特許文献1)が広く使用されている。
【0003】
しかし、直近では、マイクロプラスチックを始めとするプラスチックごみ問題がよりクローズアップされ、紙に塗工するコート剤自体についても生分解性の付与が求められるようになってきており、石油系の水分散体の代替として、生分解性樹脂水分散体(特許文献2)が提案されている。
【0004】
また、生分解性に加え、バイオマス素材の活用についてもニーズが高まっており、生分解性樹脂とバイオマス素材を併用した水分散体(特許文献3)についても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-179909号公報
【特許文献2】特開2022-060830号公報
【特許文献3】特開2023-036546号公報
【0006】
その一方、樹脂の水分散体化に使用する分散剤又は乳化剤については依然として、石油系分散剤又は乳化剤が使用されており、分散剤又は乳化剤についてもバイオマス素材及び生分解性を有したものへの切り替えが課題とされていたものの、これまでの知見では水分散体を得ることは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、生分解性を有するバイオマス素材を利用した生分解性樹脂水分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題の解決に向け鋭意検討した結果、ポリエステル系生分解樹脂とバイオマス素材であるロジン類とカゼイン類を組み合わせて用いることで、所望する性能を損ねることなく課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
<1>ポリエステル系生分解性樹脂(a)とロジン類(b)及びカゼイン類(c)からなる生分解性樹脂水分散体、
<2>ポリエステル系生分解性樹脂(a)が、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、前記<1>に記載の生分解性樹脂水分散体、
<3>ポリエステル系生分解性樹脂(a)の含有質量比が(a)/{(a)+(b)+(c)}=10~85%、ロジン類(b)の含有質量比が、(b)/{(a)+(b)+(c)}=10~85%、カゼイン類(c)の含有質量比が(c)/{(a)+(b)+(c)}=3~10%である事を特徴とする<1>又は<2>に記載の生分解性樹脂水分散体、
<4>前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の生分解性樹脂水分散体を紙又は板紙に塗工することを特徴とする塗工紙の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂の水分散体にポリエステル系生分解性樹脂ならびにバイオマス素材であり生分解性を有するロジン類及びカゼイン類を用いることで、従来の水系紙用塗工剤に必要とされる耐水性、ヒートシール性の性能を満たしつつ、環境負荷が低い紙用の水系塗工剤として使用することができる生分解性樹脂水分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、本実施形態は本発明を実施するための一形態であり、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。本明細書において、部や%を使用するがこれらは質量基準である。また、「~」を用いて表される数値範囲はその前後に記載される数値を含む。
【0011】
本発明の生分解性樹脂水分散体は、ポリエステル系生分解性樹脂(a)をロジン類(b)及びカゼイン類(c)とともに水に分散させたものである。
【0012】
<ポリエステル系生分解性樹脂(a)>
ポリエステル系生分解性樹脂(a)は、ポリ乳酸類を除く、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシヘキサノエート、ポリグリコール酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、乳化性、ヒートシール性の観点から、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリカプロラクトンであることが好ましく、ポリカプロラクトンであることがより好ましい。
【0013】
<ロジン類(b)>
ロジン類(b)は、植物から得られたままの生ロジン及び/又はそれに酸変性、エステル化等一部又は全部を化学変性したものを指す。さらにそれらをアルカリ性化合物によって、含有する酸基の一部又は全部を中和したものを含む。ロジン類(b)の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンといった生ロジン、生ロジンに水素を添加した水添ロジン、あるいは、それらにマレイン酸やフマル酸等のα、β-不飽和ジカルボン酸を付加反応させた酸変性ロジン、さらに、これらのロジン類にエタンジオール、ペンタエリスリトール等のヒドロキシ基含有化合物でエステル化したエステル化ロジンが挙げられる。また、上記原料ロジンの産地も特に限定されず、中国産ガムロジン(以下、CGRと略すことがある)、ベトナム産ガムロジン(以下、VGRと略すことがある)、インドネシア産ガムロジン(以下、IGRと略すことがある)、ブラジル産ガムロジン(以下、BGRと略すことがある)等が例示される。これらの中でもガムロジン及びその酸変性ロジンが好ましい。これらの中の1種あるいは複数を組み合わせて使用することができる。中和に用いるアルカリ性化合物の具体例としては、アンモニア、エタノールアミンやトリエタノールアミン等のアルキロールアミン類、ジメチルエタノールアミンやメチルジエタノールアミン等のアルキルアルキロールアミン類、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類が挙げられる。これらの中でも、アンモニアが好ましい。アンモニアであると、塗膜の乾燥時に酸基から揮発しやすく、ロジン類の疎水性が高まることで、乾燥後の塗膜の耐水性に優れる。
【0014】
<カゼイン類(c)>
カゼイン類(c)は、酸カゼイン、レンネットカゼイン及びカゼイネート等が挙げられる。酸カゼインとは、乳を酸によって沈殿させて得られたカゼイン類を意味する。レンネットカゼインとは、乳を、レンネットを用いて凝固させることで得られたカゼイン類を意味する。カゼイネートとは、乳を酸によって沈殿させて得られた酸カゼインを、アルカリによって中和させたカゼイン類を意味する。入手のしやすさの観点から酸カゼインが好ましい。
【0015】
本発明の生分解性樹脂水分散体は、乳化性、塗工紙の耐水性及びヒートシール性の観点から、生分解性樹脂水分散体に含まれるポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、及びカゼイン類(c)の各成分質量割合(%)が、(a)~(c)成分の合計を100とした場合に、(a):(b):(c)=10~85:10~85:3~10であることが好ましい。特に、塗工紙の耐水性を重視する場合は、(a):(b):(c)=10~75:20~85:3~10に調整し、塗工紙のヒートシール性を重視する場合は、(a):(b):(c)=20~85:10~75:3~10に調整することが好ましい。性能バランスを考慮すれば、(a):(b):(c)=20~75:20~75:3~10であることがより好ましい。
【0016】
<添加剤>
本発明において、生分解性樹脂水分散体には、上記(a)~(c)成分以外に、その物性及び効果を損なわない範囲で、乳化剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、表面調整剤、染料、表面張力調整剤、滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤等の塗料に一般的に使用される各種添加剤を添加することができる。各種添加剤の使用量は、バイオマス素材の活用及び生分解性の観点から、ポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、カゼイン類(c)の合計量に対して10%以下が望ましい。
【0017】
<生分解性樹脂水分散体の製造方法>
本発明の生分解性樹脂水分散体の製造方法は限定されないが、反転乳化法が例示される。反転乳化法として、上記(a)、(b)、(c)の混合物を100℃以上200℃以下に昇温、混錬した後、熱水を徐々に添加して転相乳化させて分散体化する方法が例示される。
【0018】
生分解性樹脂水分散体は、ポリエステル系生分解性樹脂(a)をロジン類(b)及びカゼイン類(c)とともに水中に均質に粒子状に分散させたものであり、粒子の平均粒径は0.1~100μmの範囲内が好ましく、0.5~50μmの範囲内がより好ましく、0.5~20μmの範囲内がさらに好ましい。粒子の平均粒径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA―910(堀場製作所社製)で測定することができる。
【0019】
<ヒートシール剤>
本発明の生分解性樹脂水分散体は、ヒートシール剤の成分として用いることができる。本発明で得られる生分解性樹脂水分散体を含むヒートシール剤を製造する際、必要に応じてイソプロピルアルコールやブチルセルソルブなどの汎用の有機溶剤や、フィラー、ワックス、造膜助剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤を添加することができる。本発明で得られる生分解性樹脂水分散体を含むヒートシール剤を用いる際の塗工基材は紙、板紙である。ヒートシール剤の用途は特に限定されないが、ヒートシール性が必要な用途であればいずれも利用に適しており、とりわけ、従来ポリエチレンラミネートによりヒートシール性を得ていた用途におけるポリエチレンラミネートの代替に好適である。
【0020】
<紙、板紙>
本利用形態に用いられる紙又は板紙は、生分解性を有するパルプを主成分とした一般的な紙や板紙であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、上質紙、純白ロール紙、未晒又は晒クラフト紙、グラシン紙、コート紙、ライナー原紙、紙管原紙、白ボール、チップボール等が例示できる。
【0021】
<塗工・乾燥方法>
塗工方法は、公知の手法であれば制限なく用いることができる。例えば、バーコート、ブレードコート、ダイコート、カーテンコート、エアナイフコート、スプレーコート、グラビアコート、フレキソコート、サイズプレスコート等が挙げられ、生分解性樹脂水分散体の塗工量としては塗工層の固形分が0.1~15g/mとすることが好ましく、1~10g/mとすることがさらに好ましい。
【0022】
ウエット塗膜の乾燥方法は、公知の手法であれば制限なく用いることができる。例えば、シリンダー加熱、蒸気加熱、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられる。
【0023】
本発明の生分解性樹脂水分散体を塗工した塗工紙は、そのまま、又は各種樹脂と積層する、各種フイルム、アルミ箔と貼合するなどして、食品、医療品、電子部品等の包装用材料として好適に用いることができる。
【実施例0024】
以下、本発明の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、%、部は特に断りが無い限り、各々、質量%、質量部を示す。
【0025】
<ロジン類(b)の調製>
(酸変性ロジンの製造例)
加熱装置、撹拌装置、温度計、窒素導入管を具備した四つ口セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下ガムロジン(IGR:CGR:VGR=8:1:1の質量比でブレンドしたもの)90部を投入し加熱溶融した。次いで無水マレイン酸(純正化学(株)製)10部を加えた後200℃になるまで加熱撹拌し、さらに温度を保持したまま4時間反応させることにより、マレイン酸変性ロジンを得た。
【0026】
<ポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、カゼイン類(c)からなる生分解性樹脂水分散体の調製>
(実施例1)
加熱装置、撹拌装置、冷却管、温度計を具備した四つ口セパラブルフラスコに、ポリカプロラクトン(製品名「Capa6800」、INGEVITY社製)85部、酸変性ロジンの製造例で得られたMロジン10部、酸カゼイン(富士フイルム和光純薬(株)製)5部を投入し、150℃に昇温、混錬した。攪拌しながら、中和用の28%アンモニア水1部を加えた90℃の水30部を徐々に添加混合し、転相乳化を実施して油中水型エマルジョンとした。これに更に90℃の水120部を徐々に添加して安定な水中油型エマルションとした後、冷却して内温を30℃以下とし、濃度40%の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0027】
(実施例2~15)
ポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、カゼイン類(c)の種類及び添加部数を表1の様に変え、実施例6、7については乳化剤として表1に示す添加剤を追加した以外は実施例1と同様にし、実施例10については加圧下で転相乳化を実施した以外は実施例1と同様にし、濃度40%の生分解性樹脂水分散体を得た。
【0028】
(比較例1~13)
ポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、カゼイン類(c)の種類及び添加部数を表1の様に変え、比較例7,8,11は加圧下で転相乳化を実施し、それ以外は実施例1と同様にしたものの分散体とはならなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
表中の略称
PCL:ポリカプロラクトン(商品名:Capa6800、INGEVITY社製)
PBS:ポリブチレンサクシネート(商品名:FORZEASDM9B01、三菱ケミカル(株)製)
PBAT:ポリブチレンアジペートテレフタレート(商品名:TH801T、XINJIANG BLUE RIDGE TUNHE POLYESTER CO.,LTD.製)
Mロジン:マレイン酸変性ロジン
未変性ロジン:ガムロジン(IGR)
酸カゼイン:酸カゼイン(商品名:カゼイン-乳由来、富士フイルム和光純薬(株)製
OT-70:スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム(商品名:サンモリンOT-70、三洋化成工業(株)製)
AD-25:ドデシル硫酸アンモニウム水溶液(商品名:ラテムルAD-25、花王(株)製)
【0031】
<実施例1~15、比較例1~13の物性及び性能>
表1に示した成分割合で得られた生分解性樹脂水分散体について、物性及び性能について以下のようにして測定、評価を行った。
〔分散状態〕
粒子の平均粒径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA―910(堀場製作所社製)を用いて測定した。平均粒径が0.1~50μmの場合をA、50μm超~100μmの場合をBとし、100μm超及び測定不能の場合はCとし、B以上あれば工業的に使用可能と判断した。
〔ヒートシール性〕
得られた生分解性樹脂水分散体を坪量50g/mの片艶晒クラフト紙に、付着量が固形分で8g/mになるよう、バーコーターNo.12を用いて非艶面に塗工し、温風乾燥機を用いて110℃で0.5分間乾燥した。実施例10については、150℃で1分間乾燥した。その後、23℃、50%RHにおいて24時間調湿を行った後、各塗工紙を75mm×110mmに裁断して、塗工面を内側に縦半分に折った。折目側を端から20mmのシール幅で、ヒートシールテスターTP-701-B(テスター産業製)を用いて、120℃、1秒、2kgf/cmで熱圧着した。これを5等分し、15mm×55mmの試験片を5つ作製した。それぞれの試験片において、シール部を中央にして180°開き、テンシロン万能試験機RTG1210(エー・アンド・デイ製)を使用し、つかみ具間隔:30mm、剥離速度:300mm/minで上下方向に引っ張り、最大荷重の値を測定した。5つの試験片での平均値をヒートシール強度の値とした。4.0N/15mm以上のものをA、2.0~4.0N/15mmのものをB、2.0N/15mm未満のものをCとし、B以上あれば工業的に使用可能と判断した。
〔耐水性試験〕
得られた生分解性樹脂水分散体を坪量50g/mの片艶晒クラフト紙に、付着量が固形分で8g/mになるよう、バーコーターNo.12を用いて非艶面に塗工し、温風乾燥機を用いて110℃で0.5分間乾燥した。実施例10については、150℃で1分間乾燥した。その後、23℃、50%RHにおいて24時間調湿を行った後、Cobb吸水度を、以下のとおり測定した。得られた塗工紙を10cm角に裁断し、質量を測定した。塗工紙の接液面に、JIS P 8140:1998に準拠して20℃のイオン交換水を2分間接触させた後、質量を測定した。イオン交換水との接触前後の質量差から、JIS P 8140:1998に準拠してCobb吸水度を測定した。0g/m~3g/mをA、3g/m超~10g/mをB、10g/m超をCとし、B以上あれば工業的に使用可能と判断した。
【0032】
結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2より、本発明で規定するポリエステル系生分解性樹脂(a)、ロジン類(b)、カゼイン類(c)の全てを用いた実施例1~15は、これらの成分いずれかを使用していない比較例1~13と比較し乳化性に優れ、バイオマス素材でありかつ生分解性を有した樹脂及び分散剤を用いて水分散体を得ることが可能であることが示された。また、表2より、実施例1~14と実施例15の比較により、ポリエステル系生分解性樹脂(a)及びロジン類(b)の含有質量比を好ましい範囲内とすることで、よりヒートシール性に優れた生分解性樹脂水分散体が得られることが示され、実施例2~15と実施例1の比較により、ポリエステル系生分解性樹脂(a)及びロジン類(b)の含有質量比を好ましい範囲内とすることで、より塗膜の耐水性に優れた生分解性樹脂水分散体が得られることが示された。さらに、ポリエステル系生分解性樹脂(a)及びロジン類(b)の含有質量比を前記好ましい範囲内の双方に含まれる範囲内とすることで、両性能がバランス良く優れた生分解性樹脂水分散体が得られることが示された。