(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104616
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】危険回避システム、情報処理装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250703BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20250703BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60J5/00 H
B60J5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222542
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】飯田 吉信
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】
自車両の後方から接近する物体に応じて警告やドアの開動作制限が可能な危険回避システムを提供する。
【解決手段】
危険回避システムにおいて、車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、前記ドアの開動作制限を行うためのドア開動作制限機構と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、
前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、
前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、
前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、
前記ドアの開動作制限を行うためのドア開動作制限機構と、を有することを特徴とする危険回避システム。
【請求項2】
前記後方画像取得部は、前記後方画像を取得するための後方撮像装置から前記後方画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項3】
前記危険回避処理部は、前記種類及び前記速度に応じて、危険度を取得する危険度取得部を備え、前記危険度に応じて、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項4】
前記危険度取得部は、前記種類が自動車又は自動二輪車の場合は、前記種類が人間の場合よりも、前記危険度を高くすることを特徴とする請求項3に記載の危険回避システム。
【請求項5】
前記危険度取得部は、前記速度が速い程、前記危険度を高くすることを特徴とする請求項3に記載の危険回避システム。
【請求項6】
前記危険回避処理部は、前記物体の走行経路を予測する接近物経路検出部を備え、
前記車両の前記ドアを開けると、前記ドアが前記走行経路と重なると判別される場合に、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項7】
前記危険回避処理部は、前記速度に応じて前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを変更することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項8】
前記危険回避処理部は、前記ドアと前記物体が衝突する予想時間に応じて、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項9】
前記危険回避処理部は、前記警告及び前記ドアの開動作制限を実行する場合に、前記警告及び前記ドアの開動作制限のタイミングをずらして設定することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項10】
前記危険回避処理部は、前記車両の両サイドの近傍に他の物体が存在している場合は、前記後方から接近する前記物体の前記種類を歩行者と判断することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項11】
前記危険回避処理部は、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方の実行を自動で行う自動モードを有すると共に、前記自動モードをオフ可能であることを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項12】
前記危険回避処理部は、前記ドアが開けられた際に後方の車両へ、警告を送信することを特徴とする請求項1に記載の危険回避システム。
【請求項13】
車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、
前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、
前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、
前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の危険回避システム又は請求項13に記載の情報処理装置の各部をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア開動作における危険回避システム、情報処理装置、及びコンピュータプログラム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐車場や路肩に停車すると車外に出るためにドアを開ける動作が発生する。その際に、ドアを開けるタイミングで、車両の近くを通る人や車がいると衝突してしまうという課題がある。特に、後部座席のドアは子供が開けることが多く、サイドミラーなどで車両後方からの人を確認することが難しいという課題がある。
【0003】
上記課題を解決する手段として、特許文献1では、車両に取り付けられたカメラやセンサを用いて、車両後方からの人や車などを検知して車内に警告したり、ドアの開動作を制限するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両を駐車場などに停車し車両から降車する場合、隣に駐車している車両に対して、開いたドアがぶつけないように注意する。又、運転席や助手席から降車する場合は、サイドミラーやバックミラーなどを見て、後方からの人や車両が接近してきていないかを確認する。
【0006】
しかしながら、車両の後部座席に乗車している人は、サイドミラーやバックミラーを見ても、後方からの人や車両を確認することが難しい。この場合、運転席や助手席の人が後部座席の人に注意を促すこともあるが、その注意が間に合わないことも十分にあり得る。その結果、開けたドアと後方からの人や車が接触する事故が発生してしまうことになる。
【0007】
特許文献1では、車両後方からの接近物がある場合に、車内への警告やドアの開動作制限を行うため、開けたドアと後方からの人や車との接触を回避することはできる。しかしながら、例えば歩行者などがゆっくり近づいてきている場合でも、車両に接近していれば、警告やドアの開動作制限を実行することになる。
【0008】
そうなると、危険度が高くないシーンでも警告などが行われるため、ユーザーとしては、警告に慣れてしまい、注意力が低下してしまう。その結果、開けたドアと後方からの人や車が接触する事故が発生してしまう可能性がある。
【0009】
そこで本発明では、自車両の後方から接近する物体に応じて警告やドアの開動作制限が可能な危険回避システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1側面の危険回避システムは、
車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、
前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、
前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、
前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、
前記ドアの開動作制限を行うためのドア開動作制限機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自車両の後方から接近する物体に応じて警告やドアの開動作制限が可能な危険回避システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例における危険回避システム100の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例における後方撮像装置120及び周辺撮像装置130の配置例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例における危険回避システム100による危険回避方法の1例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例における自車と接近物との関係の1例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例における自車後方から接近している物体の種類や速度の分類に応じた危険度の設定例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例における危険度毎の警告及びドア制御の1例を示す図である。
【
図7】(A)は、本発明の実施例における接近物41の警告とドア開動作制限のタイミングの例を示すタイミングチャートであり、(B)は、接近物42の警告のタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を、実施例を用いて説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各図において、同一の部材または要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0014】
図1は、本発明の実施例における危険回避システム100の構成例を示す機能ブロック図であり、110は情報処理装置である。尚、
図1に示される機能ブロックの一部は、危険回避システム100に含まれる不図示のコンピュータとしてのCPU等に、不図示の記憶媒体としてのメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行させることによって実現されている。
【0015】
しかし、それらの一部又は全部をハードウェアで実現するようにしても構わない。ハードウェアとしては、専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。
【0016】
又、
図1に示される夫々の機能ブロックは、同じ筐体に内蔵されていなくても良く、互いに信号路を介して接続された別々の装置により構成しても良い。又、情報処理装置110は車両に搭載されていなくても良く、外部の制御端末に搭載されていても良い。
【0017】
図1において、後方画像取得部11は自車(自車両)の後方画像を撮像するための後方撮像装置120から後方画像を取得する。周辺画像取得部12は、車両の周辺の画像を撮像するための周辺撮像装置130から周辺画像を取得する。
【0018】
後方撮像装置120と周辺撮像装置130は光学レンズとCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の撮像素子を有する。光学レンズにより取り込まれた被写体の光学像は撮像素子により画像信号に変換され、アナログデジタル変換、画像調整処理などが行われ、画像データが生成される。
【0019】
図2は、本発明の実施例における後方撮像装置120及び周辺撮像装置130の配置例を示す図である。後方撮像装置120は、
図2で示すように自車10の後方に配置され、自車の後方の画像を取得する。又、周辺撮像装置130は、
図2で示すように自車の右側と、左側に配置され、夫々、自車の両サイドの画像を取得する。
【0020】
図2に示す例では、後方撮像装置120がバックドア付近、左右の周辺画像取得部12が夫々左右のサイドミラーの位置に配置されている。しかしながら、自車の後方の画像及び、両サイドの画像が取得できるのであれば
図2に示す位置でなくても構わない。
【0021】
危険回避システム100は、後方撮像装置120で撮像され、後方画像取得部11により取得された後方画像を接近物検出部101と接近物速度検出部102で受信する。接近物検出部101は、自車(自車両)の後方画像に基づき、自車両の後方から接近する物体の有無を検出すると共に、当該物体の種類を検出する。
【0022】
又、接近物速度検出部102は、接近物検出部101で検出した物体の速度を検出する。一方、両サイド車両検出部103は、周辺撮像装置130で撮像され周辺画像取得部12により取得された両サイドの画像を受信し、自車の両サイドの近傍(例えば1m以内)に他の車両等が存在しているか否かを検出する。
【0023】
危険回避処理部104は、接近物検出部101と接近物速度検出部102からの自車後方に物体の有無とその速度情報を受信すると共に、両サイド車両検出部103からの自車の両サイドの近傍(例えば1m以内)に他の車両等が存在しているか否かの情報を受信する。
【0024】
危険回避処理部104は、危険度取得部1041及び、接近物経路検出部1042を有すし、危険度取得部1041では、自車後方から接近する物体の危険度を、その物体の種類及び、その速度に応じて、危険度を取得する。
【0025】
尚、危険度取得部1041は数式等を用いて危険度を算出することで危険度を取得しても良いし、テーブルを参照して危険度を取得するものであっても良い。又、接近物経路検出部1042では、自車後方から接近する物体が通るであろう走行経路を予測する。
【0026】
そして、自車がドアを開ける際に、ドアが自車後方の物体の経路上にある場合、危険度に応じて、車内の乗員に警告を出したり、ドアの開動作制限を行う。音警告制御部105は、危険回避処理部104からの警告信号に基づいて、音声出力部13を制御する。又、ドア開動作制限部106は、危険回避処理部104からの開動作制限信号に基づいて、ドア開動作制限機構14を制御し、例えばドアをロックする。
【0027】
ここで、音声出力部13は、自車の車内に設置されている音声を出力可能なスピーカー等であり、警告音や、「後方からの物体に注意してドアを開けて下さい」などの音声を出力する。
【0028】
又、音声出力部13は、車内に設置しているスピーカーに限らず、乗員のスマートフォンなどに文字表示や音声警告を通知するものであっても良い。更には、後方から接近する物体がネットワークを介して通信できる車両である可能性があるので、後方の車両にネットワークを介して警告信号を送信し、後方の車両に警告を通知しても良い。即ち、危険回避処理部は、例えば自車のドアが開けられた際に後方の車両へ、警告を送信するようにしても良い。
【0029】
ドア開動作制限機構14は、ドアの開動作を制限するためのプランジャーやモーター等を内蔵した機構であって、例えば子供が車内からドアを開けられないように一時的にドアをロックする機能を有する。或いは、ドア開動作制限機構14は、ドアの開動作をロックする代わりに、ドアの開く角度を全開よりも小さい角度になるように制限しても構わない。
【0030】
図3は、本発明の実施例における危険回避システム100による危険回避方法の1例を示すフローチャートである。尚、危険回避システム内のコンピュータとしてのCPU等がメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって
図3のフローチャートの各ステップの動作が順次行われる。
【0031】
自車の電源が入ると
図3のフローがスタートする。ステップS1000で危険回避システムのCPUは、自動モードであるか判別する。ここで自動モードは自車のドアの開動作に際して警告やドア開動作制限を、自車の周囲の状況に応じて自動的に行うモードである。
【0032】
ステップS1000でNoと判別された場合には
図3のフローを終了する。即ち、運転者が自動モードをオフした場合は、警告やドア開動作制限の実行を停止する。このように、本実施例では、危険回避処理部は、警告及びドアの開動作制限の少なくとも一方の実行を自動で行う自動モードを有すると共に、当該自動モードを運転者等のユーザーがオフ可能となっている。
【0033】
ステップS1000でYesと判別された場合にはステップS1001において、危険回避システムのCPUは、自車が停止したか判別し、Noと判別された場合にはステップS1000に戻る。
【0034】
ステップS1001でYesと判別された場合には、ステップS1002において、危険回避システムのCPUは、接近物検出部101により、後方画像取得部11により取得された自車の後方画像に基づき、自車後方から物体が接近しているかを判定する。ステップS1002でNoと判別された場合にはステップS1000に戻る。
【0035】
ここで、両サイド車両検出部103によって、自車の近傍(例えば1m以内)に他車等が存在していることが検出されたサイドについては、後方から自動車やバイク、自転車が通り抜ける可能性は低くなる。従って、自車後方から接近し通り抜ける物体があった場合に、その物体を歩行者等に絞り込んでも良い。即ち、危険回避処理部は、車両の両サイドの近傍(例えば1m以内)に他の物体が存在している場合は、後方から接近する物体の種類を歩行者と判断しても良い。
【0036】
ステップS1003において、危険回避システムのCPUは、自車後方から接近している物体が自動車やバイク、自転車、歩行者等のいずれかであるかを検出する。又、ステップS1004において、危険回避システムのCPUは、接近物速度検出部102により、接近物の速度を検出する。
【0037】
次に、ステップS1005において、危険回避システムのCPUは、検出した接近物の走行経路を予測する。具体的な予測方法の例について、
図4で示す自車と接近物との関係を示す図を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例における自車と接近物との関係の1例を示す図である。
【0038】
図4においては、自車が駐車場に停車しており、その他に、他車Aと他車Bが停車している。そこに、接近物41として他の自動車が10km/時で自車の右後方から接近してきている例を示している。又、接近物42として歩行者が5km/時で自車の左後方から、他車43と他車44との間をすり抜けて接近してきている。又、自車のドアを開けた状態を、図の△表示で示している。
【0039】
次に、ステップS1006において、危険回避システムのCPUは、自車のドアを開けると、接近物の走行経路とドアが重なるか否かを判別する。例えば
図4において、右後方から接近物41が直進してきた場合は、予測走行経路45を通ることになり、自車の右ドアを開けた場合に衝突する可能性がある。一方、接近物42が直進してきた場合は、予測走行経路46を通ることになり、自車の左ドアを開けた場合に衝突する可能性がある。
【0040】
このような場合にはステップS1006でYesと判別され、ステップS1007において、危険回避システムのCPUは、検出した接近物の速度と、物体が何かに応じて危険度を算出する。ステップS1006でNoと判別された場合にはステップS1000に戻る。
【0041】
図5は、本発明の実施例における自車後方から接近している物体の種類や速度の分類に応じた危険度の設定例を示す図であり、物体の速度を高速(20km/時以上)、中速(20km/時未満、かつ5km/以上)、低速(5km/時未満)で分類している。更に、高速、中速、低速毎に物体を自動車やバイク等のモータやエンジン等の動力で動くもの、自転車などの人力で動くもの、歩行者に細分類している。
【0042】
そして、夫々の細分類について危険度を設定し、危険度を高、中、低の3段階に分類している。例えば、高速(20km/時以上)の自動車の場合は、危険度が最大の”高”としている。一方、低速(5km/時未満)の歩行者の場合は、危険度を”低”としている。
【0043】
このように、危険度取得部は、後方から接近する物体の速度が速い程、危険度を高くしている。又、後方から接近する物体の種類が自動車又は自動二輪車の場合は、人間の場合よりも、危険度を高くしている。
【0044】
図4に示す例の場合、接近物41は10km/時の自動車なので、
図5の分類からすると、危険度は”高”に相当する。一方、接近物42は5km/時の歩行者なので、同じく危険度は”中”に相当する。次にステップS1008において、危険回避システムのCPUは、接近物の危険度に応じて、警告及びドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させる。
【0045】
即ち、ステップS1007,ステップS1008では、危険回避処理部104により、物体の種類及び速度に応じて、危険度を取得し、危険度に応じて車両の操作者への警告及び車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させている。
【0046】
図6は、本発明の実施例における危険度毎の警告及びドア制御の1例を示す図である。
図6で示すように、危険度が”高”の場合は、警告及びドアロックを行う。又、危険度が”中”の場合は、警告のみを行い、危険度が”低”の場合は、なにも行わない。
【0047】
図7(A)は、本発明の実施例における接近物41の警告とドア開動作制限のタイミングの例を示すタイミングチャートであり、(B)は、接近物42の警告のタイミングの例を示すタイミングチャートである。
【0048】
図7のチャートにおいて、横軸は時間を示しており、夫々、時刻t0で接近物を検出し、時刻t1で警告を出し、時刻t2でドア開動作制限をする。時刻t3は、自車と衝突のタイミングである衝突予想時刻を示している。
【0049】
図4に示す例では、自車後方の後方撮像装置120の画角に接近物41である他車が入って、接近物検出部101が接近物41を確認できるのは、接近物41である他車とドアとの距離が9mまで接近した時である。
【0050】
一方、
図4の例では、接近物42を確認できるのは、接近物42とドアの距離が6mまで接近した時である。夫々の速度を考慮すると、接近物41は9m進むのに3.2秒かかり、接近物42は6m進むのに4.3秒かかることになる。即ち、
図7(A)では時刻t3は3.2秒となり、
図7(B)では時刻t3は4.3秒となる。
【0051】
ここで、警告を行うタイミングである時刻t1、ドア開動作制限を実行するタイミングである時刻t2については、自車と衝突するまでの時刻t3に基づき予め設定しておく。即ち、危険回避処理部は、後方から接近する物体の速度に応じて警告及びドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを変更する。
【0052】
又、本実施例では、警告を行う時刻を衝突予想時刻t3の3秒前、ドア開動作制限の時刻を衝突予想時刻t3の2秒前に設定している。その場合、接近物41はt0で検出した後、0.2秒後のt1に警告を出す。更にその1秒後のt2にドア開動作制限をかけることになる。
【0053】
即ち、危険回避処理部は、ドアと物体が衝突する予想時間に応じて、警告及びドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを設定している。又、警告及びドアの開動作制限を実行する場合に、警告及びドアの開動作制限のタイミングをずらして設定している。
【0054】
一方、接近物42はt0で検出した後、1.3秒後に警告を出す。接近物42は危険度が”中”のため、ドア開動作制限はかけない。ステップS1008における制限を実行した後で、再びステップS1000に戻る。
【0055】
尚、本実施例では、
図4において、自車が駐車場に停車した時の例を説明したが、走行中に路肩等に止めて、後部座席等の乗員が降りる場合にも同様の制限を行うことで、後方からのバイクや自転車、人などと衝突することを未然に防ぐことができる。
【0056】
又、左側通行の場合には、乗員は左側のドアを開けて降りることが一般的なので、右ドアはロック制御をしておくことで、自車の右後方からの他車の接近は無視するようにしても構わない。
【0057】
更には、物体の速度、危険度の分類、衝突を警告するタイミングやドア開動作制限の制御を行うタイミングを、運転者が任意に設定できるようにしても良い。
【0058】
以上のように、本実施例では、自車を停車させ乗員がドアを開けた際に、後方からの物体が接近していることを検出すると、乗員に音声で警告したり、ドアの開動作制限を行うように構成する。
又、車両のドアを開けると、ドアが、後方から接近する物体の走行経路と重なると判別される場合に、警告及びドアの開動作制限の少なくとも一方を実行している。従って、ドアに他の車両が衝突する事故を安定的に回避することができる。
【0059】
又、本実施例では、後方からの接近物の種類やその速度に応じて、警告やドアロックの有無を切り替えることで、より必要に応じた通知をすることができる。従って、乗員が警告に対して慣れてしまうことがなく、注意を払うことができる。
【0060】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形や上記実施例の組み合わせが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。尚、本発明は、以下の組み合わせを含む。
【0061】
(構成1)車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、前記ドアの開動作制限を行うためのドア開動作制限機構と、を有することを特徴とする危険回避システム。
【0062】
(構成2)前記後方画像取得部は、前記後方画像を取得するための後方撮像装置から前記後方画像を取得することを特徴とする構成1に記載の危険回避システム。
【0063】
(構成3)前記危険回避処理部は、前記種類及び前記速度に応じて、危険度を取得する危険度取得部を備え、前記危険度に応じて、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行することを特徴とする構成1又は2に記載の危険回避システム。
【0064】
(構成4)前記危険度取得部は、前記種類が自動車又は自動二輪車の場合は、前記種類が人間の場合よりも、前記危険度を高くすることを特徴とする構成3に記載の危険回避システム。
【0065】
(構成5)前記危険度取得部は、前記速度が速い程、前記危険度を高くすることを特徴とする構成3又は4に記載の危険回避システム。
【0066】
(構成6)前記危険回避処理部は、前記物体の走行経路を予測する接近物経路検出部を備え、前記車両の前記ドアを開けると、前記ドアが前記走行経路と重なると判別される場合に、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行することを特徴とする構成1~5のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0067】
(構成7)前記危険回避処理部は、前記速度に応じて前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを変更することを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0068】
(構成8)前記危険回避処理部は、前記ドアと前記物体が衝突する予想時間に応じて、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方を実行するタイミングを設定することを特徴とする構成1~7のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0069】
(構成9)前記危険回避処理部は、前記警告及び前記ドアの開動作制限を実行する場合に、前記警告及び前記ドアの開動作制限のタイミングをずらして設定することを特徴とする構成1~8のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0070】
(構成10)前記危険回避処理部は、前記車両の両サイドの近傍に他の物体が存在している場合は、前記後方から接近する前記物体の前記種類を歩行者と判断することを特徴とする構成1~9のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0071】
(構成11)前記危険回避処理部は、前記警告及び前記ドアの開動作制限の少なくとも一方の実行を自動で行う自動モードを有すると共に、前記自動モードをオフ可能であることを特徴とする構成1~10のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0072】
(構成12)前記危険回避処理部は、前記ドアが開けられた際に後方の車両へ、警告を送信することを特徴とする構成1~11のいずれか1つに記載の危険回避システム。
【0073】
(構成13)車両の後方画像を取得する後方画像取得部と、前記車両の後方から接近する物体の種類を検出する接近物検出部と、前記物体の速度を検出する接近物速度検出部と、前記物体の前記種類及び前記速度に応じて、前記車両の操作者への警告及び前記車両のドアの開動作制限の少なくとも一方を実行させるための危険回避処理部と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【0074】
(プログラム)構成1~12のいずれか1つに記載の危険回避システム又は構成13に記載の情報処理装置の各部をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【0075】
尚、上記実施例における制御の一部又は全部を実現するために、上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して危険回避システム等に供給するようにしてもよい。そしてその危険回避システム等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がそのプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0076】
11:後方画像取得部
12:周辺画像取得部
13:音声出力部
14:ドア開動作制限機構
100:危険回避システム
101:接近物検出部
102:接近物速度検出部
103:両サイド車両検出部
104:危険回避処理部
105:音警告制御部
106:ドア開動作制限部
120:後方撮像装置
130:周辺撮像装置
1041:危険度取得部
1042:接近物経路検出部