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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104665
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】紫外線発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10H 20/858 20250101AFI20250703BHJP
   H10H 20/857 20250101ALI20250703BHJP
   H10H 20/831 20250101ALI20250703BHJP
【FI】
H01L33/64
H01L33/62
H01L33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222621
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA66
5F142AA77
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA16
5F142CB03
5F142CD02
5F142CD49
5F142CF02
5F142CF42
5F142DB24
5F142GA31
5F241CA40
5F241CA93
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】発光効率が高く、寿命が長い発光素子を提供する。
【解決手段】紫外線発光素子は、半導体チップと、半導体チップと対向して配置された回路基板と、半導体チップと回路基板とを接続する複数の接続体と、を備えている。紫外線発光素子では、半導体チップの回路基板と対向する面上に、第一導電型電極及び第二導電型電極を有し、第一導電型電極は、接続体と接触する第一導電型電極直線部を有している。第二導電型電極は、接続体と接触し、第一導電型電極直線部に対して垂直方向に延伸する第二導電型電極直線部を有している。複数の接続体のうちの一部は、第二導電型電極直線部と接触して配置された複数の第二導電型電極直線部上接続体であり、複数の第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれが半導体チップと接触する面積が、第一導電型電極直線部に近づくにつれて大きくなっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップと対向して配置された回路基板と、
前記半導体チップと前記回路基板とを接続する複数の接続体と、
を備え、
前記半導体チップは、前記回路基板と対向する面上に、第一導電型電極及び第二導電型電極を有し、前記第一導電型電極は、前記接続体と接触する第一導電型電極直線部を有し、前記第二導電型電極は、前記接続体と接触し、前記第一導電型電極直線部に対して交差する方向に延伸する第二導電型電極直線部を有し、
前記複数の接続体のうちの一部は、前記第二導電型電極直線部と接触して配置された複数の第二導電型電極直線部上接続体であり、
複数の前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれが前記第二導電型電極直線部と接触する面積が、前記第一導電型電極直線部に近づくにつれて大きくなる
紫外線発光素子。
【請求項2】
前記第一導電型電極直線部と隣接する前記第二導電型電極直線部の端部は、前記第一導電型電極直線部側に突出する半円型の丸みがある凸形状となっている、
請求項1に記載の紫外線発光素子。
【請求項3】
前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれと前記回路基板との接触面積が、前記第一導電型電極直線部に近づくにつれて大きくなる
請求項2に記載の紫外線発光素子。
【請求項4】
前記半導体チップと前記回路基板との間に配置された前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれの高さが、前記第一導電型電極直線部に近づくにつれて低くなる
請求項3に記載の紫外線発光素子。
【請求項5】
前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれと前記回路基板との前記接触面積は、前記第二導電型電極直線部との前記接触面積より大きくなっている
請求項4に記載の紫外線発光素子。
【請求項6】
前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれは、前記回路基板に近い側に位置する下部円柱と、前記半導体チップに近い側に位置し、前記下部円柱より平面視での外形が小さい上部円柱とが、積層して重なった形状をしている
請求項5に記載の紫外線発光素子。
【請求項7】
前記第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれは、前記下部円柱の前記半導体チップ側に前記上部円柱が無い領域である空間領域を有し、
前記空間領域は、前記第一導電型電極直線部に近づくほど小さくなっている
請求項6に記載の紫外線発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は紫外線発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線発光素子は、発光層である半導体活性層の組成を制御することにより深紫外から赤外まで発光波長を制御することができ、照明のバックライトや計測器用光源、殺菌光源など様々な用途で利用されている。
紫外線発光素子の一般的な形態では、紫外線を発する半導体チップが、金属の接続体を介して対向配置された回路基板(パッケージ基板)に実装されている。この形態の一つであるフリップチップ構造の紫外線発光素子では、半導体チップの一方の面にp型電極とn型電極とが形成されており、この面とパッケージ基板とを対向させて、金属ボールなどの接続体で半導体チップとパッケージ基板とを接続することにより、半導体チップの他方の面から光が放射される。
【0003】
半導体チップのp型電極およびn型電極は、パッケージ基板上の対応する正極電極金属線、負極電極金属線とそれぞれ電気的に接合され、外部からの電圧印加により電流を半導体チップへ流す役割を担う。また、金属ボールなどの接続体は、半導体チップで発生した熱をパッケージ基板へ逃がす放熱作用も発揮する。
【0004】
紫外線発光素子の発光効率および電力変換効率を向上させる目的で、半導体チップのn型電極、p型電極が交互に並ぶように配置された形状にすることが行われている(特許文献1)。この場合、半導体チップのn型電極と回路基板のn型電極、あるいは半導体チップのp型電極と回路基板のp型電極とを接続する接続体は、それぞれの電極の直線部分上に接して、一定間隔で直線上に並ぶように設計する。この際、接続体は複数あり、各々の接続体は同一形状で半導体チップおよび回路基板と接続するよう設計する。
【0005】
さらに別の発明では、半導体チップのp型電極が、直線部分と、n型電極に3方向を囲まれた突起部とを組み合わせたH字状の電極レイアウトとなっていることが報告されている(特許文献2)。ここで、突起部においてのp型電極とn型電極との間の距離を、直線部でのp型電極とn型電極の間の距離より広げることで、突起部に電流が集中しないように電流を拡散させて、突起部での局所的な発熱を緩和する設計が為されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-62099号公報
【特許文献2】特開2019-29407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の紫外線発光素子では、電極間に流れる電流が部分的に集中することにより発光光量にムラが生じ、その結果として、紫外線発光素子の発光効率の低下が生じたり素子の局所破壊によって短寿命となる場合がある。
本開示の目的は、発光効率が高く、寿命が長い紫外線発光素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係る紫外線発光素子は、半導体チップと、半導体チップと対向して配置された回路基板と、半導体チップと回路基板とを接続する複数の接続体と、を備えている。本開示の一態様に係る紫外線発光素子では、半導体チップの回路基板と対向する面上に、第一導電型電極及び第二導電型電極を有し、第一導電型電極は、接続体と接触する第一導電型電極直線部を有し、第二導電型電極は、接続体と接触し、第一導電型電極直線部に対して交差する方向に延伸する第二導電型電極直線部を有し、複数の接続体のうちの一部は、第二導電型電極直線部と接触して配置された複数の第二導電型電極直線部上接続体であり、複数の第二導電型電極直線部上接続体のそれぞれが第二導電型電極直線部と接触する面積が、第一導電型電極直線部に近づくにつれて大きくなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発光効率が高く、寿命が長い素子を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る紫外線発光素子を構成する半導体チップと、接続体の配置位置の一構成例を示す平面模式図である。
図2】本開示の実施形態に係る紫外線発光素子を構成する半導体チップ、回路基板及び接続体の一構成例を示す断面模式図である。
図3】本開示の実施形態に係る紫外線発光素子を構成する半導体チップ、回路基板及び接続体の一構成例を拡大して示す拡大断面模式図である。
図4】本開示の変形例の第一の例に係る紫外線発光素子を構成する半導体チップ、回路基板及び接続体の一構成例を示す断面模式図である。
図5】本開示の変形例の第二の例に係る紫外線発光素子を構成する半導体チップ、回路基板及び接続体の一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を通じて本開示に係る紫外線発光素子を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
また、以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、面、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0012】
1.実施形態
本開示の実施形態に係る紫外線発光素子について説明する。なお、本実施形態では、紫外線発光素子の第一導電型がn型であり、第二導電型がp型である場合について説明するが、この限りではない。
【0013】
(1.1)紫外線発光素子の構成
本実施形態に係る紫外線発光素子1は、半導体チップ10と、半導体チップ10と対向して配置された回路基板20と、半導体チップ10と回路基板20とを接続する複数の接続体30(図中、n型用接続体31及びp型用接続体32として示す)と、を備えている。半導体チップ10では、回路基板20と対向する面上に、n型電極(第一導電型電極の一例)15及びp型電極(第二導電型電極の一例)を有している。n型電極15は、接続体30と接触するn型電極直線部(第一導電型電極直線部の一例)15Aを有し、p型電極(第二導電型電極の一例)16は、接続体30と接触し、n型電極直線部15Aに対して垂直に配置されたp型電極直線部(第二導電型電極直線部の一例)16A~16Dを有している。紫外線発光素子1における複数の接続体30のうちの一部である接続体(図1中のp型用接続体32A~32P)は、p型電極直線部16A~16Dと接触して配置された複数のp型用接続体32である。p型電極直線部16A~16D上に配置される複数のp型用接続体32(p型用接続体32A~32P)のそれぞれは、半導体チップ10と接触しており、p型用接続体32が半導体チップ10と接触する面積は、n型電極直線部15Aに近づくにつれて大きくなっている。
【0014】
本開示の実施形態に係る紫外線発光素子1について、図1から図3を用いて説明する。
図1は、紫外線発光素子1を構成する半導体チップ10を上面視した際のn型電極15及びp型電極16の配置位置を示す平面模式図である。図1では、半導体チップ10、半導体チップ10のn型電極15及びp型電極16、並びに接続体30の外形を示している。図2は、図1に示すA-A’断面の一構成例を示す断面模式図、図3図2に示すp型電極16上に形成された接続体30を拡大して示す拡大断面模式図である。
【0015】
なお、紫外線発光素子1は以下に示す実施形態に限定されない。本実施形態の例では、紫外線発光素子1がPN接合型の発光ダイオードであるものとして説明する。なお、以下に示す実施形態では、紫外線発光素子1を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は紫外線発光素子1の必須要件ではない。
【0016】
図1に示すように、紫外線発光素子1は、半導体チップ10と、回路基板20と、接続体30とを備えている。接続体30は、半導体チップ10のn型電極15と回路基板20のn型電極22とを接続する接続体30である複数のn型用接続体31(31A~31D)と、半導体チップ10のp型電極16と回路基板20のp型電極23とを接続する接続体30である複数のp型用接続体32(32A~32P)とを有する。
以下、半導体チップ10と、回路基板20と、接続体30のそれぞれについて説明する。
【0017】
[半導体チップ]
以下、図2を用いて、半導体チップ10の具体的構造について説明する。
【0018】
本開示の半導体チップ10は、ピーク波長が紫外線(200nmから380nm)の光を発する。このよう半導体チップ10は、例えば紫外線LED(Light-Emitting Diode:発光ダイオード)を用いることが出来る。特に、殺菌効果の高い波長220nm以上240nm未満の紫外線LEDが好ましい。ここで、人体に有害な波長成分の波長には諸説あり、例えば220nm以上230nm以下の場合もあれば、220nm以上235nm以下の場合もある。本開示では諸説に対して広く適用できるように、波長220nm以上240nm未満の紫外線光が好ましいと定義する。また、紫外線LEDは波長が長いほど発光効率が高いため、波長225nm以上240nm未満の紫外線LEDがさらに好ましい。
【0019】
図2に示すように、半導体チップ10は、チップ基板11と、n型半導体層(第一導電型半導体層)12と、半導体活性層13と、p型半導体層(第二導電型半導体層)14と、n型電極15と、p型電極16とを備えている。半導体チップ10は、n型半導体層12が、チップ基板11の一面上に形成されている。半導体チップ10には、n型半導体層12の一部と、半導体活性層13と、p型半導体層14とにより形成された半導体メサ構造部17が設けられている。半導体チップ10には、半導体メサ構造部17によりチップの厚さが比較的厚くなっている部分12Aを有する領域S1(図2参照)と、半導体メサ構造部17が設けられておらず、チップの厚さが領域S1よりも薄い部分12Bを有する領域S2(図2参照)とを有している。すなわち、上述したチップの厚さが比較的厚くなっている領域S1では、チップの厚さが比較的薄くなっている領域S2よりもn型半導体層12が薄くなっている。
n型電極15は、領域S2においてn型半導体層12の薄い部分に形成されている。p型電極16は、領域S1において、p型半導体層14上(半導体メサ構造部17上)に形成されている。なお、半導体チップ10は、n型半導体層12の厚い部分、半導体活性層13、p型半導体層14およびp型電極16と、n型電極15とを絶縁する絶縁層を有する(図2では図示を省略)。
【0020】
<電極>
図1に示すように、p型電極16は、図1の左右方向に直線的に延伸する複数のp型電極16の直線部(p型電極直線部16A~16D)と、図1の上下方向に直線的に延伸し、p型電極直線部16A~16Dを接続するp型電極16の直線部(p型電極直線部16E)とを有している。n型電極15は、p型電極直線部16A~16Dのn型電極直線部15Aと隣接する箇所(図1に示す凸部分、以下端部16Fと記載する)と反対側の端部がp型電極直線部16Eで接続された構成となっている。
【0021】
また、n型電極15は、p型電極直線部16A~16Dの延長線上に配置され、p型電極直線部16A~16Dの延伸方向と垂直な方向(図1の上下方向)に直線的に延伸するn型電極15の直線部(n型電極直線部15A)と、図1の左右方向に直線的に延伸し、n型電極直線部15Aによって接続される複数のn型電極直線部15B~15Fとを有している。n型電極15は、n型電極直線部15B~15Fの一端部が、n型電極直線部15Aで接続された構成となっている。
図1の左右方向に直線的に延伸するn型電極直線部15B~15F及びp型電極直線部16A~16Dは、上面視で図1の上下方向に交互に並んでいる。
【0022】
p型電極直線部16A~16Dの、n型電極直線部15Aと隣接する箇所(図1に示す凸部分、以下端部16Fと記載する)は、3方向でn型電極15に囲まれている。上述した通り、n型電極直線部15A側に突出する半円型の丸みがある凸形状をしている。このような凸形状を有する端部16Fは、端部が凸形状ではない場合と比較してより紫外線発光素子1内での電流の集中が大きくなる。すなわち、紫外線発光素子1に電流を流した際にp型電極16の端部16Fに電流が集中して、端部16Fにおいて局所的に発熱が生じやすくなる。p型電極16が局所的に発熱することで、「熱ドループ」と呼ばれる現象により紫外線発光素子1の発光効率が低下する。また、局所的に発熱するp型電極16の端部16Fの近傍では、素子破壊が起こりやすく、結果として紫外線発光素子1の寿命が短くなる。
【0023】
そこで、本実施形態の紫外線発光素子1では、電流の集中する端部16Fでの放熱性を高める接続体(バンプ)30の配置および形状設計を行うことで、半導体チップ10で発生する熱を効率的に回路基板20側へ放熱させる。具体的には、電流が集中する端部16Fに近い位置に配置された接続体30の構造を、電流が集中する端部16Fから離れた位置に配置された接続体30と異ならせることで、発熱が集中する端部16Fの放熱性を、端部16F以外の直線部の放熱性と比較して高めている。
このように、凸形状を有する端部16Fを有する紫外線発光素子1では、端部が凸形状ではない場合と比較してより紫外線発光素子1内での電流の集中が大きくなることから、放熱促進効果の高い本実施形態の接続体30による発光効率向上及び寿命長期化効果が大きくなる。
【0024】
以上のようなn型電極15及びp型電極16は、接触する積層薄膜等の半導体層とオーミック接続となる材料で形成されることが好ましい。
n型電極15を構成する材料としては、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W若しくはその合金、又はITO等が挙げられ、アルミニウムとニッケルとを含む材料がコンタクト抵抗低減の観点からより好ましい。
p型電極16を構成する材料としては、例えばNi、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu及びその合金、又はITO等が挙げられる。p型半導体層14が窒化物半導体層の場合、窒化物半導体層と接する電極を構成する材料は、窒化物半導体層とのコンタクト抵抗が小さいNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOが好ましい。
n型電極15及びp型電極16は、半導体層との接続のために、例えばAu、Al、Cu、Ag、W等の金属層が連続して形成された構成としても良い。n型電極15及びp型電極16は、導電性の高いAuが用いられることが望ましい場合がある。また、半導体層との密着性向上のため、n型電極15及びp型電極16と半導体層との界面にTiで形成された金属層をさらに有していても良い。
【0025】
<チップ基板>
チップ基板11は、回路基板20と対向する第一主面11A上に発光層を含む半導体活性層13等の積層薄膜を配置可能であればよく、形状は特に制限されない。チップ基板11は、発光層から発せられる光を透過する材料で形成されており、チップ基板11の発光層と反対側の第二主面11Bの方向に光を放射させる。
紫外線域の発光材料であるAlGaNで構成される発光層を含む半導体活性層13等の積層薄膜を配置する観点から、チップ基板11はサファイア基板又は窒化アルミニウム基板であることが好ましい。窒化アルミニウム基板は単結晶の窒化アルミニウム基板であることが好ましい。
【0026】
また、チップ基板11の第一主面11A以外の表面には、保護膜(不図示)を配置しても良い。保護膜の材料としては、二酸化ケイ素や窒化ケイ素を用いることができるが、これら材料に限られない。チップ基板11の第一主面11A以外の表面に保護膜を配置することにより、所望の波長の光の発光効率や取り出し効率の低減を防止することができる。これは、以下の理由による。
チップ基板11の第一主面11A以外が外界に露出している場合、チップ基板11がサファイア基板であると、半導体チップ10の発熱によりチップ基板11が外界の水等と反応してチップ基板11の露出面に水酸化膜が形成される場合がある。また、チップ基板11が窒化アルミニウム基板であると、半導体チップ10の発熱によりチップ基板11が外界の酸素と反応して酸化膜が形成される場合がある。これらの膜(水酸化膜又は酸化膜)は、発光スペクトルの中心波長を含む光を減衰させたり、反射させたりして、所望の波長の光の発光効率を低減、すなわち出力を低下させてしまう。これらの膜は、形成時に外界の二酸化炭素若しくはチップ基板に不純物として混入している炭素、又は半導体チップ10のパッケージで使用されている樹脂由来の炭素を含むことがある。これにより、各膜のバンドギャップエネルギーが発光エネルギーよりも大きいとしても、不純物由来の光の吸収が起こり、光の減衰が起こる。
【0027】
また、チップ基板11の第一主面11Aに屈折率の異なる層が形成されると、光の入射時にチップ基板11と屈折率の異なる層との界面で反射が起こる。特に、例えばチップ基板11として窒化アルミニウム基板を用い、チップ基板11の第一主面11Aに酸化アルミニウム層のようなチップ基板11よりも低屈折率の材料が形成されると、より強く入射光の反射が起こり、チップ基板11の第二主面11Bから外界に所望の波長範囲の光が取り出せなくなる。これらを防止する観点から、チップ基板11の表面に保護膜を配置することが好ましい。
【0028】
チップ基板11の転位密度は、10cm-2未満であることが好ましく、特に10cm-2未満であればより好ましい。チップ基板11の第一主面11A上に積層される積層薄膜の転位密度低減の観点から、チップ基板11の第一主面11Aの二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)高さ(二乗平均平方根高さRq)は、10μm×10μmの面積に対して約1nm未満であることが好ましい。また、薄膜表面を平坦かつ均一に形成するために、チップ基板11の第二主面11Bの二乗平均平方根(RMS)高さは、10μm×10μmの面積に対して約10nm未満であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るチップ基板11は、第二主面11Bに凸形状または凹形状の構造である凸部または凹部を有していても良い。
凸部は、円錐、角錐、半球形、錐台など多様な凸形状や・多様な密度で設けられてよい。チップ基板11がAlNで構成されている際に、安定した結晶面により物理的耐性、化学的耐性の高い凸形状を実現する観点から、凸部は、側面が(10-1-1)面で構成された角錐形を含むことが好ましい。この観点から、凸部は、六方晶の結晶構造の安定面を反映した六角錐又は六角錐台形状であることがさらに好ましい。この凸部は、複数個形成されていてもよい。凸部が複数個形成されている場合、凸部は一つの形状で形成されていても良く、複数の形状が混在していても良い。
【0030】
凹部は、円錐、角錐、半球形、錐台など多様な形状でへこむ凹形状や多様な密度で設けられてよい。チップ基板がAlNで構成されている際に、安定した結晶面により物理的耐性、化学的耐性の高い凹形状を実現する観点から、凹部は、側面が(10-1-1)面で構成された角錐形に凹む形状を含むことが好ましい。この観点から、凹部は、六方晶の結晶構造の安定面を反映した六角錐又は六角錐台形状がさらに好ましい。この凹部は、複数個形成されていてもよい。凹部が複数個形成されている場合、凹部は一つの形状で形成されていてもよく、複数の形状が混在していても良い。
【0031】
凸部及び凹部の大きさは特に制限されないが、高さが0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。凸部及び凹部の大きさは、倍率20000倍の電子線走査顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で凸部又は凹部の表面を観察したときの画像から測定することが可能である。
本実施形態において、チップ基板11の第二主面11B上に凹凸構造を有することにより、本開示の紫外線発光素子1の発光強度を高めることが出来る。
【0032】
<積層薄膜>
積層薄膜は、発光層を含み、チップ基板11の第一主面11A上に配置されていれば特に制限されない。
積層薄膜は、発光効率向上の観点から、発光層を含む半導体活性層13を挟むように第一導電型半導体層であるn型半導体層12と第二導電型半導体層であるp型半導体層14とを更に備えることが好ましい。ここで、「第一導電型」「第二導電型」は、互いに異なる導電性を示す半導体であることを意味し、一方がn型導電性の場合、他方はp型導電性となる。一般的には半導体活性層13とチップ基板11との間がn型半導体層であるが、本実施形態はこれに制限されない。
積層薄膜はAl,Ga,Nの混晶であるAlGaNを用いることが好ましく、さらにAlGaNを+c面に積層させることが好ましい。
【0033】
n型半導体層12、発光層を含む半導体活性層13及びp型半導体層14以外の層としては、例えば、半導体活性層13と、n型半導体層12及びp型半導体層14の少なくとも一方との間に、電子又は正孔をブロックする層が備えられていてもよい。
また、積層薄膜の結晶性向上の観点から、積層薄膜のチップ基板11と接する側の面にバッファ層を更に備えることが好ましい場合がある。
また、半導体活性層13に効率的に電力を供給する観点から、n型半導体層12と接するn型電極15と、p型半導体層14と接するp型電極16とを備えている。
【0034】
積層薄膜は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相成長)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法による装置、あるいはスパッタ装置で形成することが可能であるが、高品質な薄膜を成長させることが出来る観点からMOCVD装置で成長させることが好ましい。メサ構造を有する積層薄膜は、上述したMOCVD法等により積層薄膜を構成する薄膜層を形成した後に、所望の領域をエッチングすることで形成することができる。
【0035】
(半導体活性層)
半導体活性層13は、半導体活性層13に含まれる発光層に電力が印加された時に発光層のバンドギャップに応じた光を発する。本実施形態の半導体チップ10の半導体活性層13に含まれる発光層は、発光スペクトルのピーク波長が紫外線域であれば特に制限されない。ここで、発光スペクトルが複数のピークを有する場合、紫外線の波長領域の中で発光強度が最も大きいピークの波長を紫外線発光素子の発光波長として定義する。
発光層の具体的構造の一例としては、量子井戸構造が挙げられる。例えば、組成比が異なる(バンドギャップが異なる)AlGaN層を積層した量子井戸構造が採用可能である。より好ましくは組成比が異なる(バンドギャップが異なる)AlGaN層を多層積層した多重量子井戸が採用可能である。より具体的な構造としては、組成がAl0.83Ga0.17Nの井戸層(厚さ1nm)3層と、組成がAl0.9Ga0.1Nの障壁層(厚さ5nm)2層を交互に積層した3重量子井戸構造が挙げられる。
【0036】
(n型半導体層)
n型半導体層12としては、AlN、GaN、InNの単結晶及び混晶が挙げられ、またこれらの組み合わせ(多層)であっても良い。チップ基板11が窒化アルミニウム基板の場合、格子定数の差が小さいAl/(Al+Ga)比率が0.8以上のAlGaNがn型半導体層として好ましい。
図2に示すように、n型半導体層は、n型半導体層の一部が除去されることにより形成された領域S1と、領域S1上に位置して半導体メサ構造部を構成する領域S2とを有している。
n型半導体層12を構成するn型半導体としては、例えばSiを1×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、n型半導体として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりn型化したAlGaNを用いても良い。
なお、チップ基板11上に、第一導電型半導体層としてp型半導体を用いたp型半導体層を形成する場合、p型半導体として例えばMgが3×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、p型半導体として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりp型化したAlGaNを用いても良い。240nm未満のピーク波長を有する光を発光する半導体活性層13に効率良くキャリアを輸送する観点から、チップ基板11と半導体活性層13との間に設ける半導体薄膜としてAl/(Al+Ga)比率が0.8以上のAlGaNを用いることが好ましい。
【0037】
(p型半導体層)
p型半導体層14としては、AlN、GaN、InNの単結晶及び混晶が挙げられ、これらの組み合わせ(多層)であっても良い。
p型半導体層を構成するp型半導体としては、例えばMgが3×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。p型電極16とのコンタクト抵抗を下げる観点から、p型半導体層はAl/(Al+Ga)比率がチップ基板11から離れる方向に連続的又は段階的に小さくなるAlGaN傾斜組成を有していても良い。また、発光効率を低減させる電子やホールの動きを抑制する観点から、p型半導体層の半導体活性層13側にバンドギャップの大きいバリア層(不図示)を有していても良い。また、p型電極16との接触抵抗を低減する観点から、p型半導体層14のp型電極16側に不純物が多量にドーピングされたコンタクト層(不図示)を有していても良い。
なお、半導体活性層13の上層に、第二導電型半導体層としてn型半導体を用いたn型半導体層を形成する場合、n型半導体として例えばSiを1×1019cm-3の濃度でドープされたAlGaNを用いることができる。また、n型半導体として、極性を有する混晶半導体の混晶組成比率を連続的に変化させる分極ドーピング法によりn型化したAlGaNを用いても良い。
【0038】
[回路基板]
以下、図2を用いて、パッケージ基板である回路基板20の具体的構造について説明する。
【0039】
本実施形態の回路基板20は、例えばプリント回路板(PCB:Printed Circuit Board)であり、絶縁体基板21上に導体が形成され、電子部品が実装されている。なお、回路基板20は、電子部品が実装されていないプリント配線板(PWB:Printed Wiring Board)であってもよい。導体は、半導体チップ10のn型電極15と電気的に接続されるn型電極22と、半導体チップ10のp型電極16と電気的に接続されるp型電極23とを含む。
【0040】
図2に示すように、回路基板20に形成されたp型電極23のうち、p型電極直線部16A~16Dと対向する、すなわちp型用接続体32(p型用接続体32A~32P)と接触する部分は、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほどp型電極23の厚さが厚くなるように形成されている。これにより、本実施形態の紫外線発光素子1では、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほど、半導体チップ10と回路基板20との距離が小さくなる。このため、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほどp型用接続体32A~32Pの高さを低くすることができ、熱抵抗が低く放熱性が高いp型用接続体32A~32Pを得ることができる。また、p型用接続体32A~32Pのそれぞれを構成する導電性材料の量を均一とした場合、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほどp型用接続体32A~32Pとp型電極直線部16A~16Dとの接触面積及びp型用接続体32A~32Pとp型電極23との接触面積が大きくなる。このため、端部16Fに近づくほどp型用接続体32A~32Pの放熱性を向上させることができる。
【0041】
[接続体]
図1及び図2に示すように、接続体30は、半導体チップ10のn型電極15と回路基板20のn型電極22とを接続する接続体30である複数のn型用接続体31(31A~31D)と、半導体チップ10のp型電極16と回路基板20のp型電極23とを接続する接続体30である複数のp型用接続体32(32A~32P)とを含む。
【0042】
半導体チップ10のn型電極15と回路基板20のn型電極22とは、複数のn型用接続体31(31A~31D)で接続されている。n型用接続体31(31A~31D)は、半導体チップ10上のn型電極直線部15A上の位置に、一定間隔でそれぞれ離れて配置されている。半導体チップ10とn型用接続体31(31A~31D)それぞれとの接続面は円形となっている。また、回路基板20とn型用接続体31(31A~31D)それぞれとの接続面も同様に、円形となっている。
【0043】
半導体チップ10のp型電極16と回路基板20のp型電極23とは、複数のp型用接続体32(32A~32P)で接続されている。p型用接続体32(32A~32P)は、半導体チップ10上のp型電極直線部16A~16D上の位置に、一定間隔でそれぞれ離れて配置されている。半導体チップ10とp型用接続体32(32A~32P)それぞれとの接続面は円形となっている。また、回路基板20とp型用接続体32(32A~32P)それぞれとの接続面も同様に、円形となっている。
【0044】
p型用接続体32(32A~32P)は半導体チップ10の複数あるp型電極直線部16A~16Dのすべてに接続されている。p型用接続体32(32A~32P)は、そのすべてにおいて端部16Fから遠い側から近い側(図1中の右から左方向)、つまり、n型電極直線部15Aに近づくほど、p型用接続体32(32A~32P)それぞれと半導体チップ10との接触面積が大きくなっている。つまり、例えばp型電極直線部16Aの端部16Fに向かって、p型用接続体32D,32C,32B,32Aの順でp型電極直線部16Aとの接触面積が大きくなっている。
このため、最も電流が集中して発熱が大きくなるp型電極直線部16A~16Dの端部16Fでp型用接続体32と半導体チップ10との接触面積が最も大きくなり、放熱性が高くなっている。これにより、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fで局所的に高熱を発する紫外線発光素子1において、紫外線発光素子1内の熱分布の不均一性を和らげることが出来る。
【0045】
上述した通り、p型電極直線部16A~16Dのn型電極直線部15Aと隣接する端部16Fは、半円型の丸みがある凸形状をしているため、先端が凸形状ではない場合と比較してより紫外線発光素子1内での電流の集中が大きくなる。このため、端部16Fが凸形状である本実施形態の紫外線発光素子1では、端部16Fにおいてp型用接続体32(32A,32E,32I,32M)とp型電極16との接合面積を最も大きくして放熱を促進させることによる発光効率向上及び長寿命化の効果が大きい。
【0046】
また、紫外線発光素子1では、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに向かって、p型用接続体32(32A~32P)と回路基板20のp型電極23の接触面積がだんだん大きくなっており、
このため、最も電流が集中して発熱が大きくなるp型電極直線部16A~16Dの端部16Fでp型用接続体32と回路基板20との接触面積が最も大きくなり、放熱性が高くなっている。これにより、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fで局所的に高熱を発する紫外線発光素子1において、半導体チップ10の熱を効率よく回路基板20側へ放熱することが出来、紫外線発光素子1内での熱の不均一性を和らげることが出来る。
【0047】
紫外線発光素子1では、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに向かって、p型用接続体32(32A~32P)の高さが低く、つまり半導体チップ10と回路基板20との距離が近くなっている。p型用接続体32は、放熱機能を有するものの、熱を伝える際の熱抵抗にもなっている。p型用接続体32は、高さが低いほど熱抵抗が低く放熱性が高くなる。紫外線発光素子1では、最も電流が集中して発熱が大きくなるp型電極直線部16A~16Dの端部16Fに配置されたp型用接続体32Aの高さは、端部16Fから離れた位置に配置されたp型用接続体32B,32C,32Dの高さと比較して低く、放熱性が高くなっている。これにより、局所的に高熱を発する紫外線発光素子1において、半導体チップ10の熱を効率よく回路基板20側へ放熱することが出来、紫外線発光素子1内での熱の不均一性を和らげることが出来る。
【0048】
紫外線発光素子1では、p型用接続体32と回路基板20のp型電極23との接触面積が、p型用接続体32と半導体チップ10のp型電極16との接触面積よりも大きくなっている。多くの場合、半導体チップ10の方が回路基板20よりも複雑かつ細かいn型電極15およびp型電極16の電極パターンを取ることが多いことから、半導体チップ10側におけるp型用接続体32の接触面積がより小さいことで、半導体チップ10側で設計自由度を高めることができる効果がある。
【0049】
また、紫外線発光素子1では、p型用接続体32は回路基板20側で太く、半導体チップ10側で細くなっている。具体的には、図3で示すように、p型用接続体32は、回路基板20側の下部円柱321と、半導体チップ10側の上部円柱322とが重なった断面形状となっている。ここで、下部円柱321及び上部円柱322は、厳密な円柱形状である必要はなく、ほぼ円柱形状となっていればよい。
この構造により、紫外線発光素子1作製時に、p型用接続体32の高さが作製装置の誤差で変化したとしても、p型用接続体32と半導体チップ10との接触面積の変化を、p型用接続体32と回路基板20との接触面積の変化と比較して小さくすることが出来る。これにより、より複雑で細かい電極形状を半導体チップ10側で設計することが出来、設計自由度が向上する。
【0050】
紫外線発光素子1では、図3で示すように、p型用接続体32には下部円柱321上に上部円柱322が存在しない空間領域323が形成される。この空間領域323は、n型電極直線部15Aに近い位置に配置されるp型用接続体32ほど小さくなっている。このようなp型用接続体32構造により、放熱性が小さい空間領域323がp型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近いほど小さくなるので、n型電極15に近いほど、すなわち局所的に高熱を発するp型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近いほど、効率よく放熱できる。
なお、図1には、図2に示す半導体チップ10の半導体メサ構造部17の外形線は図示されていないが、半導体メサ構造部17の外形線は図1のn型電極15とp型電極16との間に位置している。
【0051】
このような接続体30は、以下のようにして作製することができる。
接続体30であるn型用接続体31およびp型用接続体32の形成方法は特に制限されないが、例えば、金属線を熱もしくは超音波、あるいはその両方を用いて溶融させて、金属線の一端を電極に固定する方法や、無電解めっき法によりAuを堆積させる方法が挙げられる。また、n型用接続体31およびp型用接続体32をなす金属としては、Pb、Al、Cu、Ag、Au、あるいはこれらの合金が挙げられるが、熱伝導率が高く、耐食性に優れ、接合が容易であるAuを用いることが望ましい。つまり、放熱用金属体の機能も有するn型用接続体31およびp型用接続体32の主成分は、金(Au)であることが好ましい。
【0052】
ここで、半導体チップ10のn型電極直線部15Aは、p型電極直線部16A~16Dのそれぞれの延長線と交差する方向に延伸している。なお、図1では、n型電極直線部15Aがp型電極直線部16A~16Dのそれぞれの延長線と垂直方向に延伸している場合の構成を示している。半導体チップ10と回路基板20とは、接続体30によりフリップチップ接合で接続されている。p型電極16(p型電極直線部16A~16D)上に配置されているp型用接続体32と半導体チップ10との接触面積がn型電極直線部15Aに近づくにつれて大きくなるようにするには、以下のような作製方法が挙げられる。
p型用接続体32を形成する際に、金属細線を回路基板20のp型電極直線部16A~16Dに押し付ける圧力を低く、あるいは押し付け時間を短くすることで、平面視で円形状となるp型用接続体32の外形(直径)を小さくすることが出来る。つまり、n型電極直線部15Aに近づくにつれて、p型用接続体32の形成時間を長く、押しつけ圧を大きくすることで、p型用接続体32の直径を大きくしていくことが出来る。この状態で半導体チップ10と回路基板20とのフリップチップ接合を行うと、p型電極16上に配置されているp型電極直線部16A~16Dと半導体チップ10との接触面積がn型電極直線部15Aに近づくにつれて大きくなる紫外線発光素子1を形成することが出来る。
【0053】
また、別の方法として、p型用接続体32を半田で形成する際に用いる半田マスクの開口の大きさを、n型電極直線部15Aに近づくほど大きくする方法が挙げられる。この場合、半田マスクの開口部の外形に応じた半田金属が半導体チップ10あるいは回路基板20上に形成できる。
これらの手法を用いることで、半導体チップ10のn型電極直線部15Aに近づくほどp型用接続体32と半導体チップ10のp型電極16及び回路基板20のp型電極23との接触面積を大きくすることも可能となる。
【0054】
p型電極直線部16A~16Dの端部16Fを凸形状とするには、例えば、p型電極直線部16A~16Dをリソグラフィー技術を用いて形成する際に用いるフォトマスクの形状を端部16Fが凸形状になる形状に設計すれば良い。この場合、例えばポジレジストを用いると、フォトマスクの開口部のレジストが現像液に浸されることで溶解し、p型電極16の成膜、レジストのリフトオフを行うことで、凸形状の端部16Fを有するp型電極16が形成できる。
【0055】
p型用接続体32の高さをn型電極直線部15Aに近づくにつれて低くなるようにするには、例えば図2に示すように、回路基板20上のp型電極23の膜厚を、n型電極直線部15Aに向かうほど厚くすれば良い。これにより、回路基板20のp型電極23上に形成されるp型用接続体32の高さをn型電極直線部15Aに近づくほど低くすることが出来る。
図3に示す、空間領域323が形成されたp型用接続体32を形成するには、p型用接続体32形成工程および半導体チップ10及び回路基板20の接合工程(フリップチップ工程)の条件を最適に設計すればよい。具体的には、p型用接続体32形成工程において、金属細線をp型電極直線部16A~16Dと対向する回路基板20のp型電極23上に押し付けて金属球形を作製したのち、適度な速度で細線を引き上げることで回路基板20側において直径が大きく半導体チップ10側において回路基板20側よりも直径の小さい形状(断面が凸形状に近しい形状)の金属材料が形成される。続いて、半導体チップ10と回路基板20とを、断面が凸形状に近しい形状の金属材料が球形状に変形しない力で互いに押し付ける。これにより、回路基板20側の下部円柱321と半導体チップ10側の上部円柱322とが重なった形状のp型用接続体32を形成することが可能となる。
【0056】
なお、空間領域323が形成されたp型用接続体32の形成方法は、上述した方法に限られない。例えば、金属細線をp型電極直線部16A~16Dと対向する回路基板20のp型電極23上に押し付けて金属球形を作製し、後に下部円柱321となる金属材料を配置した後、半導体チップ10のp型電極直線部16A~16D上の所定の位置に、p型電極23上の金属球形よりも直径の小さい金属球形を作製する。続いて、半導体チップ10と回路基板20とを、半導体チップ10側の直径の小さい金属球形と回路基板20側の直径の大きい金属球形とが一つの球体とはならない(完全に一体化して球形状に変化しない)力で互いに押し付ける。この方法によっても、回路基板20側の下部円柱321と半導体チップ10側の上部円柱322とが重なった形状のp型用接続体32を形成することが可能となる。
【0057】
このような方法でp型用接続体32を形成することで、下部円柱321上に上部円柱322の無い領域である空間領域323を有するp型用接続体32を形成することが出来る。さらに、このp型用接続体32形成技術及びフリップチップ技術に加えて、回路基板20上のp型電極23の膜厚をn型電極直線部15Aに近づくほど厚くすることで、空間領域323がn型電極直線部15Aに近づくほど小さくなり、放電性が向上する紫外線発光素子1を作製することも可能となる。
【0058】
一般的に、紫外線領域の光を発生する半導体発光素子では、材料として窒化物半導体を用いる。そして、発光波長が短いほど、Al組成が高いAlGaNやAlNを用いる。これらの材料は、可視光発光材料であるGaNやInGaNよりも、半導体発光素子とした場合の寄生抵抗が大きくなり、半導体発光素子の放熱が重要である。この発熱量は特に紫外線の発光波長が短くなるほど大きく、その結果半導体発光素子の消費電力が大きくなる。
つまり、本開示の紫外線発光素子1から発する光の発光波長が短くなるほど、上述したp型用接続体32を用いることによる効果が高くなる。
【0059】
(1.2)変形例
(1.2.1)変形例1
本実施形態に係る紫外線発光素子1では、図2に示すように、n型用接続体31がp型用接続体32と同様の空間領域を有する形状で示されているが、n型用接続体31の形状はこのような形状に限られず、空間領域を有しない円柱形状であってもよい。
例えば図4に示すように、変形例1に係る紫外線発光素子1Aは、p型用接続体32と同様の形状であるn型用接続体31に替えて、ほぼ円柱形状であり、p型用接続体32のような空間領域が設けられていないn型用接続体131(n型用接続体131A~131D)を備えていても良い。なお、図4中、n型用接続体131B~131Dは図示されていない。
空間領域が設けられていないn型用接続体131を形成するには、金属細線をn型電極直線部15Aと対向する回路基板20のn型電極22上に押し付けて金属球形を作製したあと、金属球形の形状を保ったまま半導体チップ10と回路基板20とを、互いに押し付ける。これにより、空間領域を有しない円柱形状のn型用接続体131を形成することができる。
【0060】
図2に示すような、p型用接続体32と同様の形状であるn型用接続体31が設けられた紫外線発光素子1では、各接続体(n型用接続体31及びp型用接続体32)を形成する際の形成方法を接続体ごとに変えることなく形成することができる。
一方、n型用接続体131を形成する場合、p型用接続体32となる位置に配置する金属材料等の導電性材料と、n型用接続体131となる位置に配置する導電性材料とで、導電性材料の配置方法を変更する必要がある。
このため、製造工程が煩雑にならない点で、p型用接続体32と同様の形状であるn型用接続体31を用いることが好ましい。
【0061】
(1.2.2)変形例2
本実施形態に係る紫外線発光素子1では、図2に示すように、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほどp型用接続体32A~32Pとp型電極直線部16A~16Dとの接触面積及びp型用接続体32A~32Pとp型電極23との接触面積が大きくなるようにすることで、端部16Fに近づくほどp型用接続体32A~32Pの放熱性を向上させている。
このような構成とするために、紫外線発光素子1では、p型用接続体32A~32Pのそれぞれを構成する導電性材料の量を均一とし、かつp型電極23の厚さがp型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほど厚くなるようにしているが、このような構成に限られない。
【0062】
例えば、図5に示すように、変形例2に係る紫外線発光素子1Bは、回路基板20に形成されたp型電極23のうち、p型用接続体132(p型用接続体132A~132P)と接触する部分を一定の厚さとし、端部16Fに近づくほど大きく形成されたp型用接続体132(p型用接続体132A~132P)を備えている。なお、図5中、p型用接続体132D~132Pは図示されていない。
このようなp型用接続体132(p型用接続体132A~132P)は、p型用接続体132を形成する際に、端部16Fに近づくほど金属細線を回路基板20のp型電極直線部16A~16Dに押し付ける圧力を強く、あるいは押し付け時間を長くすることで形成することができる。
これにより、p型電極直線部16A~16Dの端部16Fに近づくほど、p型用接続体132A~132Pとp型電極直線部16A~16Dとの接触面積及びp型用接続体132A~132Pとp型電極23との接触面積が大きくなり、端部16Fに近づくほどp型用接続体132A~132Pの放熱性を向上させることができる。
さらに、紫外線発光素子1Bにおけるn型用接続体31を、変形例1で説明したほぼ円柱形状のn型用接続体131としてもよい。
【0063】
(1.3)本開示の紫外線発光素子の適用分野
本開示の紫外線発光素子は、例えば、医療・ライフサイエンス分野、環境分野、産業・工業分野、生活・家電分野、農業分野、その他分野の装置に適用可能である。本開示の紫外線発光素子は、薬品や化学物質の合成・分解装置、液体・気体・固体(容器、食品、医療機器等)殺菌装置、半導体等の洗浄装置、フィルム・ガラス・金属等の表面改質装置、半導体・FPD(Flat Panel Display)・PCB(Printed Circuit Board)・その他電子品製造用の露光装置、印刷・コーティング装置、接着・シール装置、フィルム・パターン・モックアップ等の転写・成形装置、紙幣・傷・血液・化学物質等の測定・検査装置に適用可能である。
【0064】
液体殺菌装置の例としては、冷蔵庫内の自動製氷装置・製氷皿および貯氷容器・製氷機用の給水タンク、冷凍庫、製氷機、加湿器、除湿器、ウォーターサーバの冷水タンク・温水タンク・流路配管、据置型浄水器、携帯型浄水器、給水器、給湯器、排水処理装置、ディスポーザ、便器の排水トラップ、洗濯機、透析用水殺菌モジュール、腹膜透析のコネクタ殺菌器、災害用貯水システム等が挙げられるがこの限りではない。
【0065】
気体殺菌装置の例としては、空気清浄器、エアコン、天井扇、床面用や寝具用の掃除機、布団乾燥機、靴乾燥機、洗濯機、衣類乾燥機、室内殺菌灯、保管庫の換気システム、靴箱、タンス等が挙げられるがこの限りではない。固体殺菌装置(表面殺菌装置を含む)の例としては、真空パック器、ベルトコンベヤ、医科用・歯科用・床屋用・美容院用のハンドツール殺菌装置、歯ブラシ、歯ブラシ入れ、箸箱、化粧ポーチ、排水溝のふた、便器の局部洗浄器、便器フタ等が挙げられるがこの限りではない。
【0066】
以上、本開示を実施の形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0067】
1 紫外線発光素子
10 半導体チップ
11 チップ基板
11A 第一主面
11B 第二主面
12 n型半導体層
13 半導体活性層
14 p型半導体層
15 n型電極
15A~15F n型電極直線部
16 p型電極
16A~16E p型電極直線部
16F 端部
17 半導体メサ構造部
20 回路基板
21 絶縁体基板
22 n型電極
23 p型電極
30 接続体
31,31A~31D n型用接続体
32,32A~32P p型用接続体
321 下部円柱
322 上部円柱
323 空間領域
図1
図2
図3
図4
図5