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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104731
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】部品実装機及び部品の傾き検出方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222747
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 勇太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC04
5E353CC13
5E353EE24
5E353EE26
5E353EE53
5E353GG01
5E353JJ21
5E353JJ45
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK11
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】電極部を有する部品の傾き検出精度を高めるための改善が求められていた。
【解決手段】部品実装機は、部品を吸着する吸着ノズルと、前記吸着ノズルの側方に配置される撮像部と、前記吸着ノズルに吸着されている前記部品を側方から撮像するように前記撮像部を制御し、撮像により得られた画像に基づいて前記部品の傾きを検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像から前記部品の下縁のエッジ点を複数検出し、複数の前記エッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより前記部品の電極部に該当する電極エッジ点を複数特定し、前記電極エッジ点に基づいて前記傾きを検出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着する吸着ノズルと、
前記吸着ノズルの側方に配置される撮像部と、
前記吸着ノズルに吸着されている前記部品を側方から撮像するように前記撮像部を制御し、撮像により得られた画像に基づいて前記部品の傾きを検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記画像から前記部品の下縁のエッジ点を複数検出し、複数の前記エッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより前記部品の電極部に該当する電極エッジ点を複数特定し、前記電極エッジ点に基づいて前記傾きを検出する、部品実装機。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記エッジ点の位置を近似した近似直線を算出し、前記近似直線を基準とした前記エッジ点毎の高さ情報に基づき前記ピーク点を特定する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記制御部は、隣の前記エッジ点よりも下方への突出度合が所定の閾値以上であることを前記ピーク点の条件とする、請求項2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記エッジ点の中の最下端点を基準としたときに右側に位置する前記エッジ点の群と左側に位置する前記エッジ点の群とのうち、前記エッジ点の数が多い方の前記群から前記近似直線を算出する、請求項2または請求項3に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記傾きを検出するための第1の検出モードと第2の検出モードとを含む選択肢の中から、ユーザの操作による選択を受け付ける選択受付部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の検出モードが選択された場合に、複数の前記エッジ点の位置を近似した近似直線を算出し、前記近似直線の傾きにより前記傾きを検出し、前記第2の検出モードが選択された場合に、複数の前記エッジ点の中から前記電極エッジ点を特定し、前記電極エッジ点に基づき前記傾きを検出する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項6】
前記制御部は、検出した前記傾きが所定の許容範囲を超える前記部品は実装対象物へ実装しない制御を行う、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項7】
前記制御部は、検出した前記傾きが所定の正常角度である前記部品は所定の実装条件で実装対象物へ実装する制御を行い、検出した前記傾きが前記正常角度ではなく所定の許容範囲内である前記部品は、前記傾きによる影響を抑えるように前記所定の実装条件を変更した実装条件で前記実装対象物へ実装する制御を行う、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項8】
吸着ノズルにより吸着されている部品を側方から撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により得られた画像に基づいて前記部品の傾きを検出する傾き検出工程と、を備え、
前記傾き検出工程では、前記画像から前記部品の下縁のエッジ点を複数検出し、複数の前記エッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより前記部品の電極部に該当する電極エッジ点を複数特定し、前記電極エッジ点に基づいて前記傾きを検出する、部品の傾き検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、部品実装機及び部品の傾き検出の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着ノズルで吸着した部品を基板に実装する部品実装機において、吸着した部品を側方から撮像した画像に基づいて、部品の吸着姿勢の良否を判定するものが知られている。
【0003】
特許文献1によれば、部品実装機は、上述のように撮像した画像から部品の最下端位置を含む下縁の位置を複数検出する。そして、部品実装機は、最下端位置を含む複数の検出位置を近似する近似直線を求め、近似直線の角度を部品の吸着角度として検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2017/013781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板へ実装される部品には、電極部を有し、当該電極部が他の部分よりも膨らんだ形状となっているものがある。このような電極部を有する部品は、基板へ実装されるとき、電極部が基板へ接触する。そのため、電極部を有する部品の傾きを検出することを想定したとき、当該部品の形状の特徴を考慮して、傾き検出の精度を高めるための改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、部品実装機を開示する。部品実装機は、部品を吸着する吸着ノズルと、前記吸着ノズルの側方に配置される撮像部と、前記吸着ノズルに吸着されている前記部品を側方から撮像するように前記撮像部を制御し、撮像により得られた画像に基づいて前記部品の傾きを検出する制御部と、を備える。そして、前記制御部は、前記画像から前記部品の下縁のエッジ点を複数検出し、複数の前記エッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより前記部品の電極部に該当する電極エッジ点を複数特定し、前記電極エッジ点に基づいて前記傾きを検出する。
【0007】
前記構成によれば、前記制御部は、前記電極エッジ点に基づいて前記部品の傾きを検出する。これにより、実装されるときに前記電極部を実装対象物へ接触させる前記部品の傾きを、より高い精度で検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】部品実装機の概略構成を示す斜視図。
図2】ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図。
図3】制御部を含む部品実装機を簡易的に示すブロック図。
図4】傾き検出処理を示すフローチャート。
図5】部品の一例を示す図。
図6】側方画像の一例を示す図。
図7】エッジ点群と近似直線とを例示する図。
図8】実装処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御部は、複数の前記エッジ点の位置を近似した近似直線を算出し、前記近似直線を基準とした前記エッジ点毎の高さ情報に基づき前記ピーク点を特定するとしてもよい。
前記構成によれば、前記制御部は、前記近似直線を基準とした前記エッジ点毎の高さ情報を用いることにより、前記ピーク点である前記電極エッジ点を容易かつ高精度に特定することができる。
【0011】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御部は、隣の前記エッジ点よりも下方への突出度合が所定の閾値以上であることを前記ピーク点の条件とするとしてもよい。
前記構成によれば、前記制御部は、実際には前記電極エッジ点に該当しないピーク点を誤って特定することを、回避することができる。
【0012】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御部は、複数の前記エッジ点の中の最下端点を基準としたときに右側に位置する前記エッジ点の群と左側に位置する前記エッジ点の群とのうち、前記エッジ点の数が多い方の前記群から前記近似直線を算出するとしてもよい。
前記構成によれば、前記制御部は、実際の下縁に該当しない部品の一辺を下縁と誤認識して前記近似直線を算出することを、回避することができる。
【0013】
本明細書に開示する部品実装機は、前記傾きを検出するための第1の検出モードと第2の検出モードとを含む選択肢の中から、ユーザの操作による選択を受け付ける選択受付部をさらに備えるとしてもよい。そして、前記制御部は、前記第1の検出モードが選択された場合に、複数の前記エッジ点の位置を近似した近似直線を算出し、前記近似直線の傾きにより前記傾きを検出する。一方、前記第2の検出モードが選択された場合に、複数の前記エッジ点の中から前記電極エッジ点を特定し、前記電極エッジ点に基づき前記傾きを検出する。
前記構成によれば、ユーザは、前記部品の特徴に応じて第1の検出モードまたは第2の検出モードを任意に選択し、選択した検出モードによる前記傾きの検出を前記部品実装機に実行させることができる。
【0014】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御部は、検出した前記傾きが所定の許容範囲を超える前記部品は実装対象物へ実装しない制御を行うとしてもよい。
前記構成によれば、前記制御部は、前記部品が比較的大きく傾いた状態で実装されるのを防止して、前記部品の実装不良が生じるのを抑えることができる。
【0015】
本明細書に開示する部品実装機では、前記制御部は、検出した前記傾きが所定の正常角度である前記部品は所定の実装条件で実装対象物へ実装する制御を行い、検出した前記傾きが前記正常角度ではなく所定の許容範囲内である前記部品は、前記傾きによる影響を抑えるように前記所定の実装条件を変更した実装条件で前記実装対象物へ実装する制御を行うとしてもよい。
前記構成によれば、前記制御部は、前記部品の傾きが正常でないものの所定の許容範囲内である場合に、前記部品の実装不良が生じるのを抑えることができる。
【0016】
本明細書が開示する技術のカテゴリーは部品実装機に限らない。本明細書は、部品の傾き検出方法を開示する。当該方法は、吸着ノズルにより吸着されている部品を側方から撮像する撮像工程と、前記撮像工程により得られた画像に基づいて前記部品の傾きを検出する傾き検出工程と、を備える。前記傾き検出工程では、前記画像から前記部品の下縁のエッジ点を複数検出し、複数の前記エッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより前記部品の電極部に該当する電極エッジ点を複数特定し、前記電極エッジ点に基づいて前記傾きを検出する。
【実施例0017】
図面を参照して、実施例を説明する。各図は例示に過ぎず、本実施例は図示した内容に限定されない。また、各図は例示であるため、図示する形状が正確でなかったり、一部が省略されていたりする。
【0018】
図1は部品実装機10の概略構成を示す斜視図であり、図2はヘッドユニット60の概略構成を示す斜視図である。また、図3は、制御部40を含む部品実装機10の構成をブロック図により簡易的に示している。部品実装機10は、実装対象物に部品P(図5参照)を実装する装置である。図1において、X軸は左右方向、Y軸は前後方向、Z軸は上下方向を夫々示す。図1には、実装対象物の一例として基板12が示されている。図1によれば、部品実装機10は、概略、部品Pを収容したリールなどを備える部品供給装置20と、基板12を搬送する基板搬送装置30と、吸着ノズル71で部品Pを吸着して基板12に実装するヘッドユニット60と、ヘッドユニット60を移動させる移動機構50と、を備える。また、部品実装機10は、吸着ノズル71に吸着されている部品Pを下方から撮像するためのパーツカメラ90を有する。
【0019】
移動機構50は、装置上部にY軸方向に沿って設けられたガイドレール56と、ガイドレール56に沿って移動が可能なY軸スライダ58と、Y軸スライダ58の前面にX軸方向に沿って設けられたガイドレール52と、ガイドレール52に沿って移動が可能でヘッドユニット60が取り付けられたX軸スライダ54とを備える。制御部40は、Y軸スライダ58、X軸スライダ54夫々の移動を、図示しないアクチュエータを介して制御することで、XY平面上の任意の位置にヘッドユニット60を移動させることができる。
【0020】
図2に示すように、ヘッドユニット60は、複数の軸状の吸着ノズル71が周方向(回転軸と同軸の円周上)に所定角度間隔で配置されたロータリヘッド70と、吸着ノズル71を側方から撮像する側方カメラ80とを備える。側方カメラ80は、吸着ノズル71の側方に配置される「撮像部」の一例に該当する。ロータリヘッド70は所定角度ずつ間欠回転可能であり、ロータリヘッド70が間欠回転すると、各吸着ノズル71が所定角度ずつ円周上の各位置を移動する。また、ヘッドユニット60は、吸着ノズル71をZ軸方向に移動させるアクチュエータ78を備える。吸着ノズル71は、電磁弁79により図示しない吸引ポンプとの連通と遮断とが行われ、吸引ポンプからの負圧が作用することで部品Pを吸着可能となる。このような、ロータリヘッド70の回転や、吸着ノズル71のZ軸方向に沿った移動、吸着ノズル71による部品Pの吸着も、制御部40が制御する。
【0021】
側方カメラ80は、ヘッドユニット60の下部に取り付けられたカメラ本体82と、カメラ本体82への光路を形成する光学系ユニット84とにより構成されている。光学系ユニット84は、図示しない照射部を備えており、照射部からロータリヘッド70の下部の中心位置に取り付けられた図示しない円筒状の蛍光部材に向けて紫外光を照射する。その紫外光を受けて蛍光部材が発光すると、所定の撮像位置にある吸着ノズル71や部品Pで遮られた光を除いた光が、光学系ユニット84に入光し、光学系ユニット84の光路を経てカメラ本体82に導かれる。これにより、カメラ本体82が、所定の撮像位置にある吸着ノズル71や部品Pを撮像可能となる。
【0022】
図2の例では、側方カメラ80は一台のみ示されているが、ヘッドユニット60は、ロータリヘッド70の周囲において側方カメラ80を複数台有する構成であってもよい。つまり、複数台の側方カメラ80がそれぞれ撮像することにより、複数の吸着ノズル71が同時に撮像される構成であってもよい。制御部40は、側方カメラ80で撮像された画像に基づいて、部品Pの有無を判定したり、部品Pの傾きを検出したりすることができる。
【0023】
制御部40は、CPU等のプロセッサや、メモリや、その他の記憶媒体を有し、プロセッサがメモリ等に記憶されたプログラムや外部からの指令に従った演算処理を実行することにより、部品実装機10を制御する。図1に示すように、部品実装機10には、管理用のコンピュータ92が有線または無線により通信可能に接続していてもよい。コンピュータ92には、ユーザインターフェイス(UI)としての、ディスプレイ94や、マウスやキーボード等の入力デバイス96が接続されている。詳細は省くが、コンピュータ92は、基板12の生産プログラム等を記憶している。生産プログラムは、部品実装機10においてどのような部品Pをどのような順番で基板12へ実装するか、またそのような基板12の生産枚数等を定めたプログラムである。コンピュータ92は、生産プログラムに従って、部品Pが所定の実装位置に実装されるように制御部40に指令を出力する。制御部40は、当該指令に従った実装を実現するために部品実装機10を制御する。
【0024】
部品実装機10による部品実装処理の流れをごく簡単に説明する。部品実装処理の基本的な流れについては特許文献1の記載を適宜参照してもよい。制御部40は、基板搬送装置30を制御して基板12を所定位置へ搬送させる。次に、制御部40は、移動機構50を制御して、部品供給装置20の所定の供給位置上にヘッドユニット60を移動させる。次に、制御部40は、ロータリヘッド70を制御して各吸着ノズル71に部品Pを吸着させる。次に、制御部40は、移動機構50を制御し、パーツカメラ90の上方を経由して基板12上にヘッドユニット60を移動させる。
【0025】
制御部40は、ヘッドユニット60がパーツカメラ90の上方を移動するときに、パーツカメラ90を制御して各吸着ノズル71に吸着されている各部品Pを下方から撮像して下方画像を取得する。続いて、制御部40は、吸着ノズル71が吸着している部品Pの傾きを検出する「傾き検出処理」を実行し、傾き検出処理の結果を反映して部品Pを基板12に実装する「実装処理」を行う。本実施例では、傾き検出処理および実装処理の説明を以下に行う。
【0026】
図4は、制御部40が実行する傾き検出処理をフローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部40は、側方カメラ80を制御して、吸着ノズル71に吸着されている部品Pを側方から撮像させ、撮像結果としての画像(以下、側方画像)を側方カメラ80から取得する。ステップS100は「撮像工程」の一例に該当する。また、以下のステップS110~S160は、撮像により得られた画像に基づいて部品Pの傾きを検出する「傾き検出工程」の一例に該当する。
【0027】
ステップS110では、制御部40は、ステップS100で取得した側方画像から部品Pの下縁のエッジ点を複数検出する。この場合、制御部40は、側方画像を画像処理して、例えば輝度情報により判別した部品Pの領域の下縁にあたるエッジ画素を、水平方向に沿って一定間隔D(図6参照)で検出する。エッジ画素をエッジ点とも呼ぶ。
ステップS120では、制御部40は、ステップS110で検出した複数のエッジ点のうちZ方向の位置が最も小さい画素(最も下方の位置にある画素)を、最下端点Zpとして検出する。
【0028】
ステップS130では、制御部40は、最下端点Zpを基準としたときに右側に位置するエッジ点の群と左側に位置するエッジ点の群とのうち、エッジ点の数が多い方の群を、部品Pの下縁のエッジ点群として特定する。当該エッジ点群には最下端点Zpを含める。ここで言う左右は、図1に示す部品実装機10に関する左右ではなく、側方画像の左右である。ただし、側方画像の上下と、図1,2で示す上下とは一致しているものとする。側方画像内の部品Pは、概略矩形状であり、その一つの長辺が下縁となる。このようにしてエッジ点群を特定することで、部品Pの側面の一辺を下縁と誤認識することを回避することができる。
【0029】
ステップS130で特定したエッジ点群を、以下では単に、エッジ点群と呼ぶ。ステップS140では、制御部40は、エッジ点群に含まれる各エッジ点の位置を近似した近似直線を算出する。近似直線の算出方法は様々であるが、制御部40は、例えば最小二乗法を用いて近似直線を求める。
【0030】
図5は、本実施例が想定する部品Pの一例を示している。部品Pは、全体としては概ね直方体に近い形状であり、その両端が電極部Qとなっている。部品Pにおける電極部Qは、電極部Q以外の部分に比べてやや膨張した形状となっている。
【0031】
図6は、ステップS110~S140を説明するための図であり、側方画像の一例を示している。側方画像86には、吸着ノズル71および部品Pの画像が含まれている。図6では分かり易さを優先して吸着ノズル71と部品Pとの濃度を異ならせて表現している。いずれにしても、側方画像86は、撮像対象の物体の形状が判別できる画像である。図6において、部品Pの下縁に沿う複数の点が、ステップS110で検出された複数のエッジ点である。これらエッジ点のうち、最も下方に在るエッジ点が最下端点Zpに該当する。
【0032】
図6の例では、複数のエッジ点のうち、最下端点Zpおよび最下端点Zpよりも右側のエッジ点がステップS130においてエッジ点群として特定される。そして、ステップS140では、エッジ点群から近似直線F1が算出される。上述したように、部品Pの電極部Qは部品Pの電極部Q以外の部分よりもやや膨張した形状である。そのため、部品Pが基板12に実装されるとき、基本的には電極部Qのみが基板12へ接触する。このような部品Pに関しては、下縁全体ではなく、電極部Qに注目して傾きを求めることで、実装時に問題となる部品Pの傾きを、より正確に検出できるようになる。
【0033】
ステップS150では、制御部40は、複数のエッジ点の中から下方へ突出するピーク点を特定することにより、部品Pの電極部Qに該当する「電極エッジ点」を複数特定する。制御部40は、エッジ点群の中からピーク点を特定する。例えば、制御部40は、ステップS140で算出した近似直線F1を基準としたエッジ点毎の高さ情報に基づきピーク点を特定するとしてもよい。
【0034】
図7は、図6と同様にエッジ点群と近似直線F1とを示している。符号Hは、最下端点Zpの高さ情報Hを示している。高さ情報は、近似直線F1を基準とした、Z軸方向に沿う距離である。ピーク点を特定するためのアルゴリズムは種々存在するが、制御部40は、一例として、隣のエッジ点よりも下方であるか否かによりピーク点であるか否かを判別する。制御部40は、エッジ点群に属する一つのエッジ点を注目エッジ点としたとき、注目エッジ点の高さ情報と、両隣のエッジ点の高さ情報とを比較し、注目エッジ点が両隣のいずれのエッジ点よりもZ軸方向下方に位置する場合に、注目エッジ点をピーク点と特定する。エッジ点群の中で最も端に位置するエッジ点については、片側に隣り合うエッジ点との比較のみでピーク点か否かを判別すればよい。
【0035】
なお、近似直線F1は水平方向に対して傾いていることがあり、エッジ点の高さ情報の大小関係を比較するだけでは、どちらのエッジ点がより下方に位置するか正確に判別できないこともある。そのため、制御部40は、近似直線F1の傾きと水平方向におけるエッジ点毎の位置とに応じた補正値で補正したエッジ点毎の高さ情報を比較に用いて、ピーク点を特定するようにしてもよい。制御部40は、エッジ点群に含まれる全てのエッジ点を順次注目エッジ点とし、ピーク点の特定を行う。
【0036】
部品Pの下縁には細かな凹凸がある。そのため、実際には電極部Qのエッジ点に該当しないエッジ点が、隣のエッジ点との相対的な位置関係によりピーク点として誤って特定されることも有りうる。制御部40は、このような誤りの発生をできるだけ抑制するために、隣のエッジ点よりも下方への突出度合が所定の閾値以上であることをピーク点の条件とするとしてもよい。所定の閾値は、例えば、側方画像86における画素数として予め定義されている。このような条件を設定することで、部品Pの下縁における、電極部Qの膨らみに該当しない小さな凸部を誤ってピーク点の一つとして特定することを、回避することができる。図7の例では、ステップS150においてピーク点に特定されたエッジ点を破線の円で囲って示している。つまり、これらピーク点のそれぞれが電極エッジ点である。
【0037】
ステップS160では、制御部40は、ステップS150で特定された電極エッジ点に基づいて、部品Pの傾きを検出する。制御部40は、各電極エッジ点の位置を近似した近似直線を算出する。便宜上、ステップS140で算出した近似直線F1を第1近似直線F1と呼び、ステップS160で電極エッジ点から算出する近似直線を、第2近似直線F2と呼んでもよい。図7では、第2近似直線F2を二点鎖線で例示している。図7のように電極エッジ点が二つであれば、制御部40は、二つの電極エッジ点を結ぶ直線を第2近似直線F2とすればよい。電極エッジ点が3つ以上在る場合は、最小二乗法等により電極エッジ点から第2近似直線F2を算出すればよい。そして、制御部40は、水平方向に対する第2近似直線F2の傾きを、部品Pの傾きとして検出し、検出した傾きを記憶する。以上で、図4に示す傾き検出処理のフローチャートが終了する。
【0038】
図8は、制御部40が実行する実装処理をフローチャートにより示している。図8の説明においては、ステップS160で検出した部品Pの傾きを単に、傾きと呼ぶ。言うまでもないが、制御部40は、上述の傾き検出処理や当該実装処理を、ロータリヘッド70の各吸着ノズル71が吸着する部品P毎に繰り返し実行する。
【0039】
ステップS200では、制御部40は、傾きが所定の許容範囲内であるか否かを判定する。制御部40は、傾きが許容範囲内であればステップS200の“Yes”の判定からステップS210へ進み、傾きが許容範囲を超えていればステップS200の“No”の判定からステップS270へ進む。制御部40は、傾きが許容範囲内であれば、部品Pは基板12への実装が可能な姿勢(少なくとも実装が許容される姿勢)であると判定する。一方、制御部40は、傾きが許容範囲を超える部品Pについては、傾きが大きく姿勢不良であると判定し、その部品Pの実装をスキップし(ステップS270)、実装処理を終了する。実装のスキップは、部品Pを実装対象物である基板12へ実装しない制御に該当する。これにより、傾きが大きいことに起因する部品Pの実装不良の発生を、抑制することができる。制御部40は、実装をスキップした部品Pについては、所定の廃棄領域に廃棄する処理を行ったり、実装をスキップした旨の情報をコンピュータ92に送信したりすることができる。
【0040】
許容範囲は、例えば、所定の正常角度に対して、正側と負側にそれぞれ数度や十数度程度の範囲として定められている。また、正常角度は、部品Pが傾くことなく吸着ノズル71に吸着されている場合の角度であり、例えば、0度もしくは略0度とすることができる。ステップS210では、制御部40は、傾きが正常角度であるか否かを判定する。制御部40は、傾きが正常角度に該当すればステップS210の“Yes”の判定からステップS220へ進み、傾きが正常角度の範囲を超えていればステップS210の“No”の判定からステップS240へ進む。ステップS200,S210の各判定を経てステップS240へ進むケースは、傾きが正常角度ではなく許容範囲内である場合に該当する。言うまでもないが、ステップS200,S210の判定の順序は逆であってもよい。
【0041】
ステップS220では、制御部40は、予め設定した位置補正量に基づいて部品Pの所定の実装位置を補正する。そして、ステップS230では、制御部40は、移動機構50やヘッドユニット60を制御して、補正後の実装位置に通常動作で部品Pを実装し、実装処理を終了する。ステップS220,S230は、所定の実装条件で部品Pを実装対象物へ実装する制御の一例に該当する。
【0042】
位置補正量について簡単に説明する。制御部40は、上述のようにパーツカメラ90から取得した下方画像を処理して、実装時の位置補正量を設定しておく。例えば、制御部40は、下方画像を処理して吸着ノズル71に対する部品Pの吸着位置のずれを検出し、その位置ずれを解消し得る位置補正量を部品P毎に設定する。通常動作とは、例えば、部品Pが基板12に載置されるまで吸着ノズル71を下降させる際の下降速度が所定の通常速度であることを意味する。
【0043】
一方、ステップS240では、制御部40は、部品Pの傾きに応じた角度補正量を設定する。傾いている部品Pは、実装されるときに底面の角(最下端点Zp)から基板12に接触するため、基板12上を部品Pが滑るように移動して実装位置がずれることがある。このような部品Pの位置ずれ量(滑り量)やずれ方向は、部品Pの傾きや種類等の各種要因によって異なる。本実施例では、制御部40は、傾きを少なくとも含むこれら要因に応じた位置ずれを補正するための補正量を、実験やシミュレーション等に基づいて予め生成されたテーブルや関数等を用いて、角度補正量として設定する。
【0044】
ステップS250では、制御部40は、ステップS240で設定した角度補正量と、上述の位置補正量とに基づいて部品Pの所定の実装位置を補正する。そして、ステップS260では、制御部40は、移動機構50やヘッドユニット60を制御して、補正後の実装位置に低速動作で部品Pを実装し、実装処理を終了する。ステップS240~S260は、傾きによる影響を抑えるように前記所定の実装条件を変更した実装条件で部品Pを実装対象物へ実装する制御の一例に該当する。ステップS250では、部品Pが傾いた状態で基板12に載置される際のずれを想定した角度補正量を用いて実装位置が補正されるため、部品Pが実装される際に傾きによる位置ずれ(滑り)が生じても、適切な位置に実装することができる。
【0045】
また、低速動作とは、例えば、部品Pが基板12に載置されるまで吸着ノズル71を下降させる際の下降速度が前記通常速度よりも低速であることを意味する。つまり、ステップS260では、制御部40は、吸着ノズル71を低速で下降させ、傾いた部品Pの底面の角が基板12に接触する際の勢いを抑えることによって、部品Pが予期せぬ方向に移動することを防止する。このようなステップS240~S260によれば、制御部40は、傾きが正常でないものの許容範囲内である部品Pについて、実装不良が生じないように実装することができる。なお、ステップS220,S230や、ステップS240,S250,S260の詳細については、特許文献1の記載を適宜参照してもよい。
【0046】
このように本実施例によれば、制御部40は、電極エッジ点に基づいて部品Pの傾きを検出する。そのため、電極部Qを有する部品Pが基板12に接するときの傾きを、従来よりも高い精度で検出することができる。図7に例示する第1近似直線F1と第2近似直線F2との角度の違いからも分かるように、従来の方法では、部品Pの下縁全体における一定間隔のエッジ点群から傾きを求めていたため、ノイズを含んだ傾きを算出していた。これに対して、本実施例では、電極エッジ点のみを使用して傾きを算出することで、傾きの検出精度を向上させることができる。
【0047】
ただし、電極エッジ点に基づいて部品Pの傾きを検出するといった本実施例の概念には、電極エッジ点に該当しないエッジ点を含めて傾き検出に使用するケースを含んでもよい。ただしその場合であっても、重視すべきは電極エッジ点であるため、傾き検出に用いるエッジ点の中で電極エッジ点の比率を電極エッジ点に該当しないエッジ点よりも高める等の処理が必要である。
【0048】
変形例を説明する。部品実装機10は、部品Pの傾きを検出するための第1の検出モードと第2の検出モードとを含む選択肢の中から、ユーザの操作による選択を受け付ける選択受付部88(図3参照)を備えるとしてもよい。選択受付部88は、例えば、部品実装機10が有する、不図示のボタンやスイッチ類あるいはタッチパネル等のUIである。部品実装機10に対してコンピュータ92を介して繋がっているディスプレイ94や入力デバイス96を、選択受付部88の一例と捉えてもよい。
【0049】
ユーザは、第1の検出モードや第2の検出モードを任意に選択することができる。制御部40は、第1の検出モードが選択された場合に、部品Pの下縁の複数のエッジ点の位置を近似した近似直線を算出し、この近似直線の傾きにより部品Pの傾きを検出する。これは、ステップS140で算出した第1近似直線F1の傾きを部品Pの傾きとすることを意味する。一方、制御部40は、第2の検出モードが選択された場合に、複数の前記エッジ点の中から電極エッジ点を特定し、電極エッジ点に基づき部品Pの傾きを検出する。これは、さらにステップS150,S160を実行して第2近似直線F2の傾きを部品Pの傾きとすることを意味する。このような変形例によれば、ユーザは、図5に例示したような電極部Qを有する部品Pであるか否かといった、部品形状の特徴に応じて検出モードを選択し、部品形状に応じた適切な傾き検出を部品実装機10に実行させることができる。
【0050】
なお、ユーザの選択によることなく、制御部40は、部品Pの種類に応じて、第1の検出モードを選択するか、第2の検出モードを選択するかを決定してもよい。例えば、制御部40は、生産プログラムに基づくコンピュータ92からの情報により部品Pの種類を特定可能としておくことで、吸着ノズル71が吸着した部品Pが電極部Qを有する部品であるか否かを判定することができる。このため、制御部40は、部品Pが電極部Qを有しない部品であると判定したきは第1の検出モードを選択し、部品Pが電極部Qを有する部品であると判定したときは第2の検出モードを選択してもよい。
【0051】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0052】
10:部品実装機
12:基板
20:部品供給装置
30:基板搬送装置
40:制御部
50 移動機構
60:ヘッドユニット
70:ロータリヘッド
71:吸着ノズル
80:側方カメラ
86:側方画像
88:選択受付部
90:パーツカメラ
92:コンピュータ
94:ディスプレイ
96:入力デバイス
P:部品
Q:電極部
Zp:最下端点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8