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2025-104737水電解装置及び水電解装置の運転制御方法
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  • -水電解装置及び水電解装置の運転制御方法 図1
  • -水電解装置及び水電解装置の運転制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104737
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】水電解装置及び水電解装置の運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20250703BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20250703BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250703BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20250703BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20250703BHJP
【FI】
C25B15/00 303
C25B1/02
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222753
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】薄 一志
(72)【発明者】
【氏名】林(伊藤) 灯
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC06
4K021DB05
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】運転停止時に、エネルギー消費を抑えて、運転停止時におけるカソード側の水素流路内で発生する過酸化水素による電解質膜の劣化を抑えることができる水電解装置及び水電解装置の運転制御方法を提供する。
【解決手段】電解質膜によりアノード側の酸素流路5とカソード側の水素流路6とに分離され、酸素流路5に供給された純水を電気分解し、水素流路6から水素を排出する1以上の水電解セルを有した水電解装置の運転制御方法であって、水電解装置の運転中は、酸素流路5に純水を供給し、水電解装置の運転停止時に、酸素流路5に対する純水の供給を停止するとともに水素流路6に対して所定時間、純水を供給して外部に排出した後、水素流路6に対する純水の供給を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜によりアノード側の酸素流路とカソード側の水素流路とに分離され、前記酸素流路に供給された純水を電気分解し、前記水素流路から水素を排出する1以上の水電解セルを有した水電解装置であって、
純水を送出する給水ポンプと、
前記給水ポンプから第1開閉弁を介して前記酸素流路に純水を供給する酸素側供給配管と、
前記給水ポンプから第2開閉弁を介して前記水素流路に純水を供給する水素側供給配管と、
前記水電解装置の運転中は、前記給水ポンプを駆動し、前記第1開閉弁を開にするとともに前記第2開閉弁を閉にして前記酸素側供給配管を介して前記酸素流路に純水を供給し、前記水電解装置の運転停止時に、前記第1開閉弁を閉にするとともに前記第2開閉弁を開にして前記酸素側供給配管を介した前記酸素流路に対する前記純水の供給を停止するとともに前記水素側供給配管を介して前記水素流路に対して所定時間、前記純水を供給して外部に排出した後、前記水素側供給配管を介した前記水素流路に対する前記純水の供給を停止する制御を行う制御部と
を備えたことを特徴とする水電解装置。
【請求項2】
前記水素流路の出口側を接続する水素側排出配管に第3開閉弁を設けるとともに、前記水素流路の出口側と前記第3開閉弁との間に外部排出配管を接続し、該外部排出配管に第4開閉弁を設け、
前記制御部は、前記運転停止時における前記水素流路に対する前記純水の供給時に前記第3開閉弁を開から閉にするとともに第4開閉弁を閉から開にして前記外部排出配管から前記純水を外部に排出することを特徴とする請求項1に記載の水電解装置。
【請求項3】
前記酸素流路の出口側に接続される酸素側排出配管は酸素側気液分離器に接続され、該酸素側気液分離器を介して酸素が排出され、
前記水素流路の出口側に接続される水素側排出配管は水素側気液分離器に接続され、該水素側気液分離器を介して水素が排出され、
前記酸素側気液分離器及び前記水素側気液分離器を介して前記水電解セルに供給された純水は循環することを特徴とする請求項1に記載の水電解装置。
【請求項4】
複数の前記水電解セルは積層された水分解ユニットが複数直列接続されることを特徴とする請求項1に記載の水電解装置。
【請求項5】
前記水電解セルの電源は、太陽光発電装置または風力発電装置であり、
前記水電解セルから排出された水素は水素貯蔵タンクに貯蔵され、
前記制御部は、前記太陽光発電装置または前記風力発電装置が生成する電源の電源不足あるいは水素貯蔵タンクの残量が所定量以上の場合に前記水電解装置を運転停止することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の水電解装置。
【請求項6】
電解質膜によりアノード側の酸素流路とカソード側の水素流路とに分離され、前記酸素流路に供給された純水を電気分解し、前記水素流路から水素を排出する1以上の水電解セルを有した水電解装置の運転制御方法であって、
前記水電解装置の運転中は、前記酸素流路に純水を供給し、
前記水電解装置の運転停止時に、前記酸素流路に対する前記純水の供給を停止するとともに前記水素流路に対して所定時間、前記純水を供給して外部に排出した後、前記水素流路に対する前記純水の供給を停止することを特徴とする水電解装置の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転停止時に、エネルギー消費を抑えて、運転停止時におけるカソード側の水素流路内で発生する過酸化水素による電解質膜の劣化を抑えることができる水電解装置及び水電解装置の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子等の電解質膜を隔膜としてアノード側とカソード側とに分離し、アノード側に純水を供給しながら電気分解して、アノード側から酸素を、カソード側から水素をそれぞれ発生する水電解装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-293179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水電解装置は、複数の水分解セルが積層されており、運転中に水分解セルのアノード側の酸素流路に純水が供給され、純水は2H0→0+4H+4eの反応により分解され、酸素流路に酸素が発生する。一方、Hは電解質膜を介してカソード側の水素流路内で、4H+4e→2Hの反応により水素が発生する。
【0005】
ここで、運転が停止して酸素流路への純水の供給が止まると、酸素流路に発生した酸素の一部が電解質膜を介して水素流路内に移動し、水素流路内で滞留していた水素と結合して過酸化水素が発生する。この過酸化水素は、例えば、H+Fe →HO*+OH+Fe の反応により、HO*(ヒドロキシルラジカル)が発生する。ヒドロキシルラジカルは、電気的に不安定で反応性が高いラジカル分子であり、電解質膜の高分子鎖結合を解いてしまうなどの攻撃が行われ、電解質膜が損傷して劣化してしまう現象が発生する。
【0006】
特に、天候に左右される太陽電池装置や風力発電装置を電源として用いる場合や、生成された水素を圧縮して貯蔵する水素貯蔵タンクの貯蔵量が満タンに近い状態を発生しやすい環境である場合、頻繁に運転停止が発生する。この場合、過酸化水素の発生機会が増え、これにより、電解質膜の損傷や劣化が進むことになる。
【0007】
なお、特許文献1では、運転停止時にカソード側における配管からの金属イオン溶出を防止するため、アノード側及びカソード側の双方に純水を流し続けているため、運転停止状態におけるエネルギー消費が大きい。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、運転停止時に、エネルギー消費を抑えて、運転停止時におけるカソード側の水素流路内で発生する過酸化水素による電解質膜の劣化を抑えることができる水電解装置及び水電解装置の運転制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る水電解装置は、電解質膜によりアノード側の酸素流路とカソード側の水素流路とに分離され、前記酸素流路に供給された純水を電気分解し、前記水素流路から水素を排出する1以上の水電解セルを有した水電解装置であって、純水を送出する給水ポンプと、前記給水ポンプから第1開閉弁を介して前記酸素流路に純水を供給する酸素側供給配管と、前記給水ポンプから第2開閉弁を介して前記水素流路に純水を供給する水素側供給配管と、前記水電解装置の運転中は、前記給水ポンプを駆動し、前記第1開閉弁を開にするとともに前記第2開閉弁を閉にして前記酸素側供給配管を介して前記酸素流路に純水を供給し、前記水電解装置の運転停止時に、前記第1開閉弁を閉にするとともに前記第2開閉弁を開にして前記酸素側供給配管を介した前記酸素流路に対する前記純水の供給を停止するとともに前記水素側供給配管を介して前記水素流路に対して所定時間、前記純水を供給して外部に排出した後、前記水素側供給配管を介した前記水素流路に対する前記純水の供給を停止する制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る水電解装置は、上記の発明において、前記水素流路の出口側を接続する水素側排出配管に第3開閉弁を設けるとともに、前記水素流路の出口側と前記第3開閉弁との間に外部排出配管を接続し、該外部排出配管に第4開閉弁を設け、前記制御部は、前記運転停止時における前記水素流路に対する前記純水の供給時に前記第3開閉弁を開から閉にするとともに第4開閉弁を閉から開にして前記外部排出配管から前記純水を外部に排出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る水電解装置は、上記の発明において、前記酸素流路の出口側に接続される酸素側排出配管は酸素側気液分離器に接続され、該酸素側気液分離器を介して酸素が排出され、前記水素流路の出口側に接続される水素側排出配管は水素側気液分離器に接続され、該水素側気液分離器を介して水素が排出され、前記酸素側気液分離器及び前記水素側気液分離器を介して前記水電解セルに供給された純水は循環することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る水電解装置は、上記の発明において、複数の前記水電解セルは積層された水分解ユニットが複数直列接続されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水電解装置は、上記の発明において、前記水分解セルの電源は、太陽光発電装置または風力発電装置であり、前記水分解セルから排出された水素は水素貯蔵タンクに貯蔵され、前記制御部は、前記太陽光発電装置または前記風力発電装置が生成する電源の電源不足あるいは水素貯蔵タンクの残量が所定量以上の場合に前記水電解装置を運転停止することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る水電解装置の運転制御方法は、電解質膜によりアノード側の酸素流路とカソード側の水素流路とに分離され、前記酸素流路に供給された純水を電気分解し、前記水素流路から水素を排出する1以上の水電解セルを有した水電解装置の運転制御方法であって、
前記水電解装置の運転中は、前記酸素流路に純水を供給し、前記水電解装置の運転停止時に、前記酸素流路に対する前記純水の供給を停止するとともに前記水素流路に対して所定時間、前記純水を供給して外部に排出した後、前記水素流路に対する前記純水の供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転停止時に、エネルギー消費を抑えて、運転停止時におけるカソード側の水素流路内で発生する過酸化水素による電解質膜の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施の形態に係る水電解装置及び水電解装置の運転制御方法の概念を示す図である。
図2図2は、水電解装置を構成する水分解セルの構成及び積層配置関係を模式的に示す正面図である。
図3図3は、図2に示したセパレータのA-A線断面図である。
図4図4は、水電解装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、制御部Cによる水電解装置10の運転制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る水電解装置及び水電解装置の運転制御方法について説明する。
【0018】
<概要>
図1は、本実施の形態に係る水電解装置10及び水電解装置10の運転制御方法の概念を示す図である。図1に示すように、水分解セル1は、アノード側の酸素極2とカソード側の水素極3との間に電解質層4が介在し、この電解質層4により酸素極2と水素極3とが離隔される。アノード側には、水分解のための純水が供給され、水分解された酸素を含む純水を排出する酸素流路5が形成される。カソード側には、酸素流路5で生成されて電解質層4を浸透してきた水素イオンが水素となり、この水素を含む純水を排出する水素流路6が形成されている。
【0019】
図1(a)は、水電解装置10が運転中の状態を示しており、酸素流路5に純水が供給されて、酸素流路5から酸素を含む純水が排出され、水素流路6から水素を含む純水が排出される状態を示している。ここで、水電解装置10が運転停止すると、図1(b)に示すように、酸素流路5には酸素、水素流路6には水素が大半存在し、燃料電池における開回路電圧(0CV)状態となり水素極が0Vになる。この状態で、酸素が電解質層4に浸透して水素流路6に移動すると、水素流路6内に滞留していた水素と酸素とが結合して過酸化水素が生成される。この過酸化水素は、上記のように、HO*(ヒドロキシルラジカル)を生成し、電解質層4を攻撃して電解質膜に孔が空いて透過膜としての機能が劣化する。
【0020】
このため、本実施の形態では、図1(c)に示すように、水電解装置10の運転停止時に、酸素流路5に対する純水の供給を停止するとともに、水素流路6に対して所定時間、純水を供給して外部に排出した後、水素流路6に対する純水の供給を停止する。これにより、水素流路6内に生成された過酸化水素は水素流路6内に供給された純水により水分解セル1外に排出され、図1(b)に示すような電解質層4の劣化を抑えることができる。なお、この排出された過酸化水素を含む純水は循環させずに外部に廃棄するとよい。また、水素流路6に対する所定時間の純水の供給は、水素流路6内の過酸化水素がなくなる時間であるが、例えば、少なくとも水素流路6内の水量の数倍以上であって、この水素流路6内の過酸化水素を含む純水が廃棄されるまでの時間にするとよい。また、この所定時間は、実験等によって得られた、水素流路6内から過酸化水素がなくなる時間であってもよい。
【0021】
これにより、運転停止時における過酸化水素による電解質層4の劣化を防止できるとともに、酸素流路5への純水の供給はなく、水素流路6への純水の供給は所定時間のみであるので、運転停止時におけるエネルギー消費を抑えることができる。
【0022】
<水電解セルの構成>
図2は、水電解装置10を構成する水分解セル1の構成及び積層配置関係を模式的に示す正面図である。また、図3は、図2に示したセパレータ7のA-A線断面図である。図2に示すように、水分解セル1A(1)は、電解質層4のアノード側に触媒層2bが設けられ、電解質層4のカソード側に触媒層3bが設けられる。触媒層2bのアノード側には拡散層2aが設けられる。拡散層2a及び触媒層2bは酸素極2として機能する。拡散層2aの他面にはセパレータ7が設けられ、セパレータ7の拡散層2a側には、酸素流路5が形成される。図3に示すように、この酸素流路5は、純水が供給される入口開口5aから±X方向に延びる流路をジグザグに接続しつつ、+Z方向に向けて延びるサーペンタイン形流路を形成し、対向端の出口開口5bから酸素を排出する。一方、触媒層3bのカソード側には拡散層3aが設けられる。拡散層3a及び触媒層3bは水素極3として機能する。拡散層3aの他面にはセパレータ8が設けられ、セパレータ8の拡散層3a側には、水素流路6が形成される。この水素流路6は、酸素流路5と同様に、+Z方向に向けてジグザグに接続されたサーペンタイン形流路を形成し、水素を排出する。この水分解セル1Aと同じ構成を有する水分解セル1B(1)は、紙面の左右方向(A方向:±Y方向)に積層される。図2では、2つの水分解セル1A,1Bの積層状態を示しているが、通常、数十の水分解セル1が積層され、水分解ユニットを形成する。なお、水分解セル1を積層する場合、セパレータ8は、水分解セル1A(1)と水分解セル1B(1)のセパレータの機能を持たせ、水素流路6と酸素流路5とを対向する両面に形成した一体型となっている。この水分解ユニットは、それぞれ直列接続される。なお、水分解セル1をスタックする場合、セパレータ7,8をY軸まわりに交互に90度回転させて酸素流路5や水素流路6への外部接続が容易に行えるようにしてもよい。
【0023】
電解質層4は、固体高分子電解質膜であり、陽イオン透過膜の機能を有し、例えば、フッ素系高分子膜であるNafion(登録商標、デュポン社製)や、炭化水素系高分子膜であるAciplex(商品名、旭化成株式会社製)等を用いることができる。電解質層4は、アノード側の触媒層2bは、例えばIr/IrRuOX触媒を含む。また、カソード側の触媒層3bは、例えば白金触媒を含むカーボンである。拡散層2a及び拡散層3aは、チタン繊維焼結体またはチタン粉末焼結体の表面にAu/Pt/Irめっきを施したもの等の多孔質体を用いることができる。
【0024】
<水電解装置の構成>
図4は、水電解装置10の構成を示すブロック図である。なお、実線は水回路系を示し、破線は制御系を示している。図4に示すように、純水生成器11には、配管L1から工業用水などの水が給水ポンプ19により給水されて供給される。純水生成器11は、活性炭フィルタ、逆浸透膜、イオン交換膜などを用いて純水を生成する。生成された純水は、配管L2を介して純水タンク12に供給され、純水タンク12は純水を貯留する。
【0025】
純水タンク12内の純水は、給水ポンプ13によって配管L3又は配管L12側に給水される。運転中は、配管L3の開閉弁V1が開となり、配管L12の開閉弁V2が閉となっており、純水は配管L3側に給水される。配管L3は、配管L4及び配管L5に分岐して接続され、配管L4の純水は、酸素側気液分離器14に導出され、配管L5の純水は、水素側気液分離器16に導出される。
【0026】
酸素側気液分離器14内の純水は、配管L6及び配管L7を介して酸素流路5に供給される。なお、配管L6と配管L7との間には熱交換器HE1が介在し、クーリングタワーの冷却水を用いて純水の温度上昇を抑えている。なお、配管L3、L4、L6、L7は、酸素側供給配管に対応する。
【0027】
酸素流路5から排出された酸素を含む純水は、配管L8を介して酸素側気液分離器14に導出され、酸素が配管L21を介して排出されるとともに、純水は、酸素側供給配管に供給される。なお、配管L8は、酸素側排出配管に対応する。配管L6には分岐する配管L10が接続され、純水をイオン交換器15に導出する。イオン交換器15は、純水内の不純物を除去した純水を配管L11及び配管L2を介して純水タンク12に供給する。したがって、酸素流路5に供給された純水は不純物を除去しつつ、循環することになる。なお、配管L10の熱交換器HE2は、イオン交換器15に供給する純水の温度上昇を抑える。熱交換器HE2は、クーリングタワーの冷却水を用いている。
【0028】
一方、水素流路6から排出された水素を含む純水は、水素流路6の出口側と水素側気液分離器16との間を接続する配管(水素側排出配管)が設けられ、この配管には、開閉弁V3が設けられる。この開閉弁V3と水素流路6との出口側との間から分岐した外部排出配管としての配管L13が設けられる。また、この配管L13には、開閉弁V4が設けられる。運転中は、開閉弁V3が開となり、開閉弁V4が閉となる。また、運転停止中は、開閉弁V3が閉となり、開閉弁V4が開になる。
【0029】
運転中の場合、水素流路6から排出された水素を含む純水は、水素側気液分離器16に送出され、水素が配管L22を介して水素貯蔵タンク20側に導出される。水素側気液分離器16の純水は、配管L9を介して純水タンク12に戻される。すなわち、水素流路6からの純水も循環することになる。
【0030】
一方、運転停止時には、開閉弁V1が閉、開閉弁V2が開、開閉弁V3が閉、開閉弁V4が開となり、給水ポンプ13により、純水タンク12の純水は配管L12を介して水素流路6の入口側から所定時間、供給される。これにより、水素流路6内の過酸化水素を含む純水は、水素流路6の出口側から排出され、配管L13を介して廃棄される。給水ポンプ13は、所定時間後に駆動停止する。なお、水分解セル1の電源9は、太陽光発電装置30の電源を用いている。なお、電源9は風力発電装置であってもよい。
【0031】
制御部Cは、水電解装置10全体の制御を行う。制御部Cは、太陽光発電装置30が生成する電源9の電源不足あるいは水素貯蔵タンク20の残量が満タンに近い所定量以上の場合に水電解装置10の運転停止と判定する。なお、運転停止は、外部からの運転停止であってもよい。なお、制御部Cは、残量センサSBの検出値をもとに水素貯蔵タンク20の残量を取得する。
【0032】
制御部Cは、運転中及び運転停止時に対応した開閉弁V1~V4の開閉制御を行うとともに、給水ポンプ13の駆動停止制御を行う。なお、給水ポンプ19の駆動停止制御は、純水タンク12内の水位センサSAの検出結果をもとに、水位が所定水位以下となった場合に駆動して純水を生成するようにしている。なお、制御部Cは、酸素側気液分離器14及び水素側気液分離器16の水位をもとに、給水ポンプ13の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0033】
なお、開閉弁V1,V2に替えて切替弁や三方弁としてもよい。同様に開閉弁V3,V4に替えて切替弁や三方弁としてもよい。
【0034】
<運転制御>
図5は、制御部Cによる水電解装置10の運転制御手順を示すフローチャートである。図5示すように、まず、制御部Cは、運転開始指示があったか否かを判定する(ステップS101)。運転開始指示がない場合(ステップS101:No)には、本判定処理を繰り返す。一方、運転開始指示があった場合(ステップS101:Yes)には、開閉弁V1を開、開閉弁V2を閉、開閉弁V3を開、開閉弁V4を閉にして(ステップS102)、酸素流路5に純水を供給する。その後、給水ポンプ13を駆動して(ステップS103)、運転を開始する。
【0035】
その後、運転停止判定を含む運転停止指示があったか否かを判定する(ステップS104)。運転停止指示がない場合(ステップS104:No)には、ステップS103に移行して運転を継続する。一方、運転停止指示があった場合(ステップS104:Yes)には、開閉弁V1を閉、開閉弁V2を開、開閉弁V3を閉、開閉弁V4を開にして(ステップS105)、純水を水素流路6に供給するとともに過酸化水素を含む純水を廃棄する。その後、給水ポンプ13を所定時間、駆動を継続した後に駆動を停止し(ステップS106)、本処理を終了する。なお、上記の処理は、一定時間ごとに繰り返し行われる。
【0036】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の水電解装置及び水電解装置の運転制御方法は、運転停止時に、エネルギー消費を抑えて、運転停止時におけるカソード側の水素流路内で発生する過酸化水素による電解質膜の劣化を抑える場合に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B 水分解セル
2 酸素極
2a,3a 拡散層
2b,3b 触媒層
3 水素極
4 電解質層
5 酸素流路
5a 入口開口
5b 出口開口
6 水素流路
7,8 セパレータ
9 電源
10 水電解装置
11 純水生成器
12 純水タンク
13,19 給水ポンプ
14 酸素側気液分離器
15 イオン交換器
16 水素側気液分離器
20 水素貯蔵タンク
30 太陽光発電装置
C 制御部
HE1,HE2 熱交換器
L1~L13,L21,L22 配管
SA 水位センサ
SB 残量センサ
V1~V4 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5