(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010477
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】推定方法、推定装置、推定システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20250110BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056562
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023112228
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023199401
(32)【優先日】2023-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】武田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】針生 泰史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智成
【テーマコード(参考)】
2G045
4C117
【Fターム(参考)】
2G045CB09
2G045GC03
2G045GC24
2G045JA01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE43
4C117XG06
4C117XQ11
4C117XQ13
(57)【要約】
【課題】ユーザの肌に所定の組成物を塗布せずに、塗布した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する推定方法を提供する。
【解決手段】推定方法は、ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得し、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得し、
前記取得した肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布した場合の組成物の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデルとを用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する推定方法。
【請求項2】
前記肌状態指標は、所定の計測器で計測された肌状態を示す物性値に基づく評価項目を含むことを特徴とする請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
前記物性値に基づく評価項目は、角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、および接触角の少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の推定方法。
【請求項4】
前記肌状態指標は、前記ユーザの肌を撮像した肌画像と前記肌状態指標との関係を示す肌状態指標数理モデルとを用いて取得する評価項目を含むことを特徴とする請求項1に記載の推定方法。
【請求項5】
前記所定の組成物は紫外線を吸収する成分、または紫外線を散乱する成分の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料であり、
前記ユーザから取得した前記肌状態指標と前記数理モデルに基づき前記化粧料の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する推定方法であって、
複数人の被験者の肌状態指標をそれぞれ取得し、
前記化粧料を塗布した複数人の被験者の肌を紫外線照射下で撮像した紫外線肌画像から化粧料の塗膜の紫外線反射率をそれぞれ取得し、
前記数理モデルは、取得した前記複数人の被験者の肌状態指標と取得した前記複数人の被験者の化粧料の塗膜の紫外線反射率とに基づき機械学習を行って作成することを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項6】
前記所定の組成物は紫外線を吸収する成分、または紫外線を散乱する成分の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料であり、
前記ユーザから取得した前記肌状態指標と前記数理モデルに基づき前記化粧料の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する推定方法であって、
複数人の被験者の肌状態指標をそれぞれ取得し、
前記複数人の被験者の前記化粧料を塗布した肌の状態を示す塗布肌総合評価をそれぞれ取得し、
前記塗布肌総合評価は、前記化粧料を塗布した前記被験者の肌を撮像した塗布肌画像と前記塗布肌総合評価との関係を示す肌状態指標数理モデルとを用いて取得する評価項目であり、
前記数理モデルは、取得した前記複数人の被験者の肌状態指標と取得した前記複数人の被験者の塗布肌総合評価とに基づき機械学習を行って作成することを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項7】
前記推定した前記組成物の塗膜の形成状態に基づき、当該組成物が有する機能を評価することを特徴とする請求項1から6いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項8】
前記所定の組成物は紫外線を吸収する成分、または紫外線を散乱する成分の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料であり、
前記化粧料は、予め公表された公表紫外線防御値があり、
推定された前記化粧料の塗膜の形成状態と前記公表紫外線防御値に基づき、所定の機能として前記紫外線防御機能を推定評価する請求項1から7いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項9】
前記所定の組成物は紫外線を吸収する成分、または紫外線を散乱する成分の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料であり、
前記化粧料は所定の機能を有し、
推定された前記化粧料の塗膜の形成状態を用いて、前記化粧料と前記ユーザの肌との適合性を評価する請求項1から7いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項10】
前記所定の組成物を塗布した塗布後の第一時間帯の前記組成物の塗膜の形成状態である第一形成状態と当該第一時間帯よりも後の第二時間帯の前記組成物の塗膜の形成状態である第二形成状態との少なくともいずれか一つを推定することを特徴とする請求項1から9いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項11】
前記肌状態指標に基づき複数種類の肌タイプの何れかに前記ユーザの肌を分類し、
前記複数種類の肌タイプ毎に当該肌タイプを示す肌情報分類画像が予め決められており、
前記所定の組成物を示す組成物分類画像が予め決められており、
前記肌情報分類画像と前記組成物分類画像とにより、推定結果を表示することを特徴とする請求項1から10いずれか一項に記載の推定方法。
【請求項12】
前記推定結果は、前記肌情報分類画像と前記組成物分類画像とを組合わせて表示することを特徴とする請求項11に記載の推定方法。
【請求項13】
複数種類の肌タイプの特徴を示す特徴情報と、当該複数種類の肌タイプごとの前記塗膜の形成状態に基づく少なくとも一つ以上の化粧料の紫外線防御機能に関する評価を示す評価情報とを記憶し、
前記肌画像と前記肌状態指標数理モデルを基に取得した前記肌状態指標に基づき、前記複数種類の肌タイプの何れかに前記ユーザの肌を分類し、
前記分類した肌タイプに対応する前記特徴情報を出力し、
前記分類した肌タイプに対応する前記化粧料ごとの前記評価情報を出力する
請求項4に記載の推定方法。
【請求項14】
ユーザの肌特性を示す肌状態指標と、前記肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布した場合の組成物の塗膜の形成状態と、の相関関係を示す情報を記憶しておく記憶手段と、
前記肌状態指標を取得する肌状態取得手段と、
前記記憶手段を参照し、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する塗膜推定手段と、
を備えた推定装置。
【請求項15】
ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する推定装置を動作させるアプリケーションプログラムであって、
前記ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得する肌状態取得処理と、
前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に前記組成物の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する塗膜推定処理と、を含むアプリケーションプログラム。
【請求項16】
ユーザの肌特性を示す肌状態指標と、前記肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布した場合の組成物の塗膜の形成状態と、の相関関係を示す情報を記憶しておく記憶手段と、
前記肌状態指標を取得する肌状態取得手段と、
前記記憶手段を参照し、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定し、その結果に基づき紫外線防御機能を推定する塗膜推定手段と、
を備えた推定システム。
【請求項17】
請求項14記載の推定装置とネットワークを介して接続された推定システムに用いる情報処理端末であって、
ユーザの肌特性を示す肌状態指標を求めるためのデータを送信する送信手段と、前記塗膜推定手段から送られる推定結果を受信する受信手段と、
を備えた推定システムに用いる情報処理端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
問診データと角質および/または皮脂の画像データから肌または頭皮を診断するシステムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザが組成物、例えば、化粧料を肌に塗布した場合、その化粧料による塗膜が均一であると、化粧料に含まれる成分が肌上に均一に広がるため、化粧料の効果が十分に発揮されやすい状態になるため、化粧料の塗膜が十分に形成されているかはユーザの関心が高い項目である。しかし、特許文献1は、問診データと画像データから肌または頭皮を診断することはできていたが、化粧料を塗布した場合、化粧料による塗膜の状態を診断することは行われていなかった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ユーザの肌に所定の組成物を塗布しなくても、所定の組成物を塗布した場合の肌に形成される組成物の塗膜の形成状態を推定する推定方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得し、前記取得した肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデルとを用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する推定方法に関する。
【0007】
また、本発明は、ユーザの肌特性を示す肌状態指標と、前記肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態と、の相関関係を示す情報を記憶しておく記憶手段と、前記肌状態指標を取得する肌状態取得手段と、前記記憶手段を参照し、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する塗膜推定手段と、を備えた推定装置に関する。
【0008】
また、本発明は、ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する推定装置を動作させるアプリケーションプログラムであって、前記ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得する肌状態取得処理と、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に前記組成物の塗膜の形成状態を推定する塗膜推定処理と、を含むアプリケーションプログラムに関する。
【0009】
また、本発明は、ユーザの肌特性を示す肌状態指標と、前記肌状態指標と前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態と、の相関関係を示す情報を記憶しておく記憶手段と、前記肌状態指標を取得する肌状態取得手段と、前記記憶手段を参照し、前記取得した肌状態指標を用いて、前記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する塗膜推定手段と、を備えた推定システムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により提供される方法によれば、ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1の肌状態指標を取得する際のイメージ図である。
【
図2-1】実施形態1および2における所定の化粧料を塗布した肌の反射率を取得する際のイメージ図である。
【
図2-2】(a)は
図2-1で撮影された素肌の顔画像であり、(b)は
図2-1で撮影された化粧料を塗布した顔画像である。
【
図3】(a)は素肌にUVB領域の320nm波長を照射した場合のイメージ図、(b)は化粧料を塗布した塗布肌にUVB領域の320nm波長を照射した場合のイメージ図である。
【
図4】(a)は塗膜推定数理モデル1を用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果を示し、(b)は塗膜推定数理モデル1を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として示した図である。
【
図5】実施形態2および3における肌画像(素肌画像)を取得する際のイメージ図である。
【
図6】(a)は塗膜推定数理モデル2を用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果を示し、(b)は塗膜推定数理モデル2を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として示した図である。
【
図7】実施形態3における所定の化粧料を塗布した肌の総合評価の評価値を取得する際のイメージ図である。
【
図8】(a)は塗膜推定数理モデル3を用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果を示し、(b)は塗膜推定数理モデル3を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として示した図である。
【
図9】化粧料1~化粧料3を塗布した場合を想定し、当該化粧料が訴求する効果に関して推測する際の図である。
【
図12】(a‐1)~(a‐3)は肌情報分類画像の表示態様例であり、(b‐1)~(b‐3)は組成物分類画像の表示態様例であり、(c‐1)は肌情報分類画像と組成物分類画像との表示態様例であり、(d‐1)、(d‐2)は肌情報分類画像と組成物分類画像との表示態様例である。
【
図13】化粧料C乃至EのUV防御効果の比較試験の結果を示した図である。
【
図14】化粧料C乃至EのUV防御効果の他の比較試験の結果を示した図である。
【
図15】推定装置または推定システムによる肌画像に基づく肌タイプ特徴情報及び化粧料スコア情報の提示処理の流れを示したフローチャートである。
【
図16】推定装置または推定システムが生成して記憶する肌タイプ特徴情報の例を示した図である。
【
図17】推定装置または推定システムが生成して記憶する肌タイプごとの化粧料のUV防御効果に関するスコア情報の例を示した図である。
【
図18】(A)は推定装置または推定システムがユーザの情報処理端末に表示させる肌タイプ特徴情報の例を示した図であり、(B)は推定装置または推定システムがユーザの情報処理端末に表示させる化粧料スコア情報の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の図面は、いずれも本発明の技術思想、構成及び動作を説明するためのものであり、その構成を具体的に限定するものではない。また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
本実施形態における推定方法(以下、本方法と記載することもある)の概要について説明する。
本実施形態の推定方法は、ユーザの肌特性を示す肌状態指標を取得し、上記取得した肌状態指標と上記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデルとを用いて、上記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定する方法である。
「ユーザの肌特性を示す肌状態指標」とは、ユーザの肌に所定の組成物、所定の化粧料を塗布していない肌、洗顔後の肌、いわゆる素肌における肌特性を示す指標である。ここで、「肌特性」とは、肌の性質であり、例えば、乾燥肌、普通肌、脂性肌、混合肌などの肌タイプであり、この肌特性を示す指標が「肌状態指標」であり、例えば、角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性などのやわらかさ、接触角、色、メラニン含有量、メラニン密度、肌の温度、水分量、水分・油分バランス、表面形状、肌理、しわ、にきび、ほくろなどの肌の物性的な指標が好ましいが、肌年齢、化粧感、男性・女性らしさ、化粧くずれ度、パウダリー感などの肌の状態を示す、肌の印象も含まれる。なお、上記の一般的に知られている肌タイプ以外にも、上記肌状態指標に基づき適宜肌タイプを分類することができる。また、肌タイプの分類は、肌状態指標に含まれる所定の要素(例えば、「肌理」、「水分・油分バランス」、「やわらかさ」の3要素)に基づき分類する。肌タイプの分類方法はどのような方法でもよく、例えば、上記3要素の各値のうち所定要素の値が所定値以上の場合、全ての要素が所定値以上の場合、所定要素の値が所定位置以上かつ他の要素の値が所定値以下の場合など、各肌タイプに分類される条件が予め決められており、その条件に基づき分類してもよい。また、例えば、「肌理」、「水分・油分バランス」、「やわらかさ」の3要素の各値からクラスター分析により、例えば、5つのクラスターを作成し、作成した各クラスターに対応する肌タイプを関連付けておき、ユーザの肌状態指標に含まれる上記3要素の値から何れのクラスターに属するかを分析し、該当のクラスターに対応する肌タイプに分類してもよい。なお、上記の3要素は一例であり、要素の種類、数はこれに限らない。
「ユーザの肌」とは、生体の表層の軟部組織を意味し、顔、腕、手など、身体の部位は問わない。
「所定の組成物」とは、皮膚に塗布することを目的とした組成物であり、例えば、ローション、化粧水、クリーム、乳液などと呼ばれる化粧料、医薬部外品及び医薬品などを広く包含する。具体的には、例えば、ローション、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージパック、リップクリーム等のスキンケア化粧料;ファンデーション、化粧下地、液状ファンデーション、油性ファンデーション、パウダーファンデーション、コンシーラー、コントロールカラー、アイシャドウ、頬紅、口紅、リップグロス、リップライナー、ボディのデコルテ用等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日やけ止めジェル、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料;バスオイル、入浴剤等の入浴用化粧料、殺菌成分、痒み止め成分、炎症を抑える成分などを含んだ軟膏などが挙げられ、特にこれらに限定されるものではない。
「組成物の塗膜」とは、所定の組成物を肌に塗布したことにより、当該肌に形成される塗膜であり、詳細は後述するが、同一組成物を同一量塗布した場合でも塗布される肌の状態に応じて組成物の塗膜の形成状態は異なり、また、同一の肌に塗布した場合でも、組成物の種類(成分)および塗布量に応じて組成物の塗膜の形成状態は異なる。
「塗膜の形成状態」とは、組成物の塗膜が肌にどのように形成されているかであり、形成された塗膜の厚さ、形成された塗膜の厚さのむら、形成された塗膜の均一性で評価される。例えば、塗布する組成物が色を含む場合は色むらなく組成物の塗膜が形成されている状態、塗布する組成物が粒子を含む場合は粒子が均一な状態で組成物の塗膜が形成されている状態、塗布する組成物が紫外線吸収剤を含む場合は形成された組成物の塗膜の位置に関わらず紫外線を吸収する状態、塗布する組成物が紫外線散乱剤を含む場合は形成された組成物の塗膜の位置に関わらず紫外線を反射する状態、などである。
「推定する」とは、所定の組成物をユーザの肌に塗布することなく所定の組成物を塗布した場合に形成される組成物の塗膜の形成状態を推定することであり、推定結果は数値の出力、グラフによる出力、シミュレーション画像の出力など形態は問わない。
「肌情報分類画像」とは、前記肌状態指標に基づき分類した肌タイプを示す任意の画像である。
「組成物分類画像」とは、組成物の特性に基づき分類した組成物分類を示す任意の画像である。「組成物の特性」としては、組成物の塗膜の形成状態に係る因子であれば特に限定されず、組成物の剤型や、濡れ性などの物性、粘度、色などが挙げられる。
肌情報分類画像及び組成物分類画像は、それぞれ形状、模様若しくは色彩、若しくは濃淡又はこれらの結合により作成され、これらの画像を重ね合わせるなど、組み合わせることにより、推定結果を出力することができる。
【0014】
本実施形態で準備した塗膜数理モデルを作成するときに被験者の肌に塗布した所定の組成物は紫外線領域の波長を吸収する成分(以下、「紫外線吸収剤」と記載することもある)、または紫外線領域の波長を散乱する成分(以下、「紫外線散乱剤」と記載することもある)の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料を用いた。ここで、「添加された化粧料」とは、紫外線吸収剤、または紫外線散乱剤の少なくともいずれかの成分が既に添加された(これらの成分を含んだ)化粧料だけでなく、これらの成分を含まない化粧料に当該成分を所定割合添加した化粧料も含まれる。これにより、紫外線領域の波長を吸収および/または散乱する成分が含まれていない化粧料をユーザの肌に塗布したと仮定した場合を想定したときの化粧料の塗膜の形成状態も推定することが可能となる。
本実施形態では、例えば、W/O型化粧料(Water in Oil化粧料)やO/W型化粧料(Oil in Water化粧料)に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を添加した化粧料を用いた。したがって、ユーザの肌に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料を塗布したと仮定した場合を想定したときの、当該化粧料の肌上に形成される塗膜の形成状態を推定した推定結果を用いることで、化粧料による紫外線防御性を推定することが可能となる。なお、塗膜数理モデルを作成するときには、紫外線吸収剤のみが添加された化粧料でも、紫外線散乱剤のみが添加された化粧料でもよく、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤の両方が添加された化粧料でもよく、これらの場合でも推定結果に基づいて、化粧料による紫外線防御性を推定することが可能となる。
紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料には、紫外線防御性を示す指標が明示されているものがある(予め公表された公表紫外線防御値)。紫外線防御性を示す指標には、UVB領域の紫外線に関するサンプロテクション・ファクター(Sun Protection Factor(SPF))が最も広く知られており、紫外線防御効果がSPF値(例えば、「SPF30」等)として表示される。また、UVA領域の紫外線に関してPFA(Protection Factor of UVA)又はUVAPF(UVA Protection factor of product)が用いられる。化粧料による紫外線防御性を評価する際には、明示されている紫外線防御性を示す指標に対する評価を行ってもよい。
本実施形態で塗膜の形成状態を推定する所定の組成物は紫外線領域の波長を吸収する成分、または紫外線領域の波長を散乱する成分の少なくともいずれかの成分が添加された化粧料であり、推定した組成物の塗膜の形成状態は、化粧料の塗膜の形成状態として説明する。また、推定した化粧料の塗膜の形成状態に基づき、当該化粧料が有する機能(例えば、訴求する紫外線防御機能を期待できるか否か)を発揮できるかを推定することについて説明する。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1は、
図1に示すように、ユーザの肌(素肌)に対して所定の計測器10を用いて肌状態指標を計測(取得)し、計測した肌状態指標に基づき、所定の化粧料を塗布したと仮定した場合に形成される化粧料が肌上につくる塗膜の形成状態を推定する方法である。計測した肌状態指標と予め作成した数理モデル(実施形態1の塗膜推定に用いる数理モデルを「塗膜推定数理モデル1」とする)とに基づき、化粧料の塗膜の形成状態を推定する。実施形態1では、所定の化粧料として、化粧料A(SPF50)および化粧料B(SPF50+)を塗布したと仮定した場合に肌に形成される塗膜の形成状態を推定する。
実施形態1で取得する肌状態指標は、ユーザの肌に対して所定の計測器10を用いて計測する肌状態を示す物性値である。物性値は、例えば、角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、接触角などである。
【0016】
図1は、肌に接触子を接触させることで水分蒸散量を計測することを示している。以下に取得する肌状態指標を示す。
・角層水分量:角層水分計(Corneometer,Courage+Khazaka製)によって計測した値を用いる
・水分蒸散量:水分蒸散量計(Tewameter,Courage+Khazaka製)によって計測した値を用いる
・皮膚粘弾性:皮膚粘弾性計測器(Cutometer,Courage+Khazaka製)によって計測した値を用いる
・皮膚柔軟性:皮膚粘弾性計測器(Cutometer,Courage+Khazaka製)によって計測した値を用いる
・接触角:接触角計(接触角計PCA-11,協和界面科学社製)によって計測した値を用いる
なお、上記した計測器は一例であり、他の計測器で測定した値や肌を撮影し当該画像を画像処理することによって算出した値を用いてもよい。
このように、実施形態1では、肌状態指標は、所定の計測器によって計測された角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、および接触角の少なくとも1つ以上の評価項目を含むものである。
【0017】
次に、塗膜推定数理モデル1について説明する。
塗膜推定数理モデル1を作成するのに用いた教師データとその条件は以下の通りである。
・所定の組成物20:化粧料A(SPF50、剤型W/O)
化粧料B(SPF50+、剤型W/O)
・塗布面積 :4cm×4cm
・塗布量 :4cm×4cmに対し、16mg
・対象の被験者 :化粧料Aは19名の男女の額もしくは頬
化粧料Bは20名の男女の額もしくは頬
・使用カメラ :紫外線カメラ30
・塗布方法 :訓練された試験者が均一となるように塗布する
・光源 :MAX-303,朝日分光社製
・バンドパスフィルター(320nm±5nm)
・偏光板
図2‐1に示すように、被験者の肌に所定の組成物20を塗布し、被験者の肌を紫外線照射下で紫外線カメラ30によって撮影した画像データ(紫外線肌画像)を用いる。撮影した画像データから以下の手順で塗膜推定数理モデル1を作成する。
【0018】
1)肌上に形成されている各化粧料の塗膜の紫外線反射率を算出する
被験者の肌(皮膚15)に所定の組成物20(化粧料A)を塗布した状態の化粧料Aが肌上に形成する塗膜の紫外線反射率(「紫外線反射率A」とする)、および被験者の肌に所定の組成物20(化粧料B)を塗布した状態の化粧料Bが肌上に形成する塗膜の紫外線反射率(「紫外線反射率B」とする)を算出する。算出方法を以下に示す。
図3(a)は、被験者の肌(素肌)にUVB領域に含まれる波長320nmの紫外線(以下、「紫外光」)を照射した場合を示す。図中の「入射光」は照射した紫外光であり、「正反射光」は肌の表面で反射する紫外光であり、「内部散乱光」は肌の表面で反射しなかった紫外光が肌内部に侵入し、肌の内部で拡がり肌から出てくる紫外光である。正反射光を除去した内部散乱光の強度を取得する。これを素肌の内部散乱光強度とする。
図3(b)は、被験者の肌に所定の組成物20を塗布し、紫外光を照射した場合を示している。図中の「入射光」は照射した紫外光であり、「正反射光」は所定の組成物20の表面で反射する紫外光、および、肌の表面で反射する紫外光であり、「内部散乱光」は所定の組成物20の表面、および肌の表面で反射しなかった紫外光が肌内部に侵入し、肌の内部で拡がり肌から出てくる紫外光である。所定の組成物20として化粧料Aを塗布した場合の正反射光を除去した内部散乱光と、所定の組成物20として化粧料Bを塗布した場合の正反射光を除去した内部散乱光の強度を取得する。化粧料Aを塗布した塗布肌の内部散乱光強度A、化粧料Bを塗布した内部散乱光強度Bとする。
そして、所定の組成物20を塗布した場合の塗布肌の内部散乱光強度を素肌の内部散乱光強度で除算することにより、所定の組成物20を塗布した部位に存在している組成物の紫外線反射率を算出する(化粧料Aを塗布した塗布肌の内部散乱光強度A/素肌の内部散乱光強度=化粧料Aを塗布した部位に存在する化粧料Aが形成する塗膜の紫外線反射率(紫外線反射率A)、化粧料Bを塗布した塗布肌の内部散乱光強度B/素肌の内部散乱光強度=化粧料Bを塗布した部位に存在する化粧料Bが形成する塗膜の紫外線反射率(紫外線反射率B))。
このように、正反射光を除去し、内部散乱光の強度を用いて紫外線反射率を算出することで肌に形成される塗膜の塗布状態(塗膜の形成状態)を精度高く推定することが可能となる。
ここで、光源と紫外線カメラに偏光板を取り付け、化粧料A(または化粧料B)を塗布した肌に紫外光を照射し、正反射光を除去し、反射されてきた内部散乱光を紫外線カメラ30で撮影することで、内部散乱強度を測定できる。
なお、本実施形態では、UVB領域の波長域が320~280nmであることを考慮して、波長320nmの紫外線反射率を算出するようにしたが、波長域はこれに限らず、例えば、化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定し、推定結果からUVA領域の紫外線防御効果を推定する場合は、波長380~320nmの何れか、例えば、波長350nmの紫外線を用いて紫外線の反射率を算出するようにしてもよい。
2)紫外線反射率に応じて2群に分ける
算出した各化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率を紫外線反射率順に並べ、紫外線反射率の高い方(50%)と低い方(50%)との2群に各被験者を分ける。紫外線反射率の高い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群」、紫外線反射率の低い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが高い群」とする。一般的に、紫外線反射率が高い場合、化粧料の塗膜が薄く形成されており、紫外線反射率が低い場合、化粧料の塗膜が厚く形成されている。この差は、本実施形態のように化粧料を塗布する面積と化粧料の塗布量が一定の場合、例えば、化粧料を塗布した肌表面に、シワ、にきび痕などにより凹部分があると、凹部分を埋めるように化粧料が塗布され、その結果、化粧料が肌上に形成される塗膜が薄く形成される。このように、化粧料の塗膜の形成状態は塗布する肌の状態に影響されるからである。そのため、各被験者から算出した各化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率が異なる(順を付けられる)。なお、化粧料の塗膜の形成状態に影響する要因として肌表面の形状について記載したが、これはあくまでも一例であり、他の肌状態、肌の物性値の違いも化粧料の塗膜の形成状態に影響を与える要因となる。
3)被験者の肌状態指標を計測する
上記被験者に対して所定の計測器を用いて上述した肌状態指標(角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、および接触角)を計測する。
4)機械学習に用いる教師データを作成する
2)で2群に分けた結果と3)の計測結果を用いて、塗膜推定数理モデル1を作成するための教師データを作成する。
5)塗膜推定数理モデル1を作成する
各評価値について標準化処理を行い、複数の分類モデル(例えば、naive bayes(NB)、logestic regression(LR)、linear discriminant analysis(LDA)、random forest(RF)、gradient boosting(GB)、support vector machine(SVM)、Gaussian process(GP))から最適なものを選択し予測モデルとし、当該予測モデルを用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測する。予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出する。分類モデルの汎化性能を一個抜き交差検証(leave-one-out cross-validation(LOOCV))で評価し、最も正解率の高い計算モデルを最適なモデル:塗膜推定数理モデル1とする。なお、本実施形態では、化粧料Aの塗膜推定数理モデル1は分類モデルGBを用いて、また、化粧料Bの塗膜推定数理モデル1は分類モデルLDAを用いた。
【0019】
図4(a)には、塗膜推定数理モデル1を用いて化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果と実際の結果を、
図4(b)には、塗膜推定数理モデル1を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出した結果を示している。
図4(a)、
図4(b)より、塗膜推定数理モデル1を用いて化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を予測した場合、高い正解率を得られることがわかる。
したがって、所定の計測器を用いて取得したユーザの肌状態指標と塗膜推定数理モデル1を用いることで、所定の化粧料を肌に塗布することなく当該化粧料の塗膜の形成状態を推定できるため、所定の化粧料(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を肌に塗布しなくても、当該所定の化粧料をユーザの肌に塗布した場合に、肌上に形成する化粧料の塗膜の形成状態(化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態の良さの高低)を推定でき、これにより所定の化粧料が有する機能(例えば、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料であれば紫外線防御機能)に基づく効果をどの程度期待できるか評価することも可能となる。
【0020】
上述したように、実施形態1は、複数人の被験者(例えば、男女19~20名)のそれぞれの肌状態指標(例えば、計測器10により、角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、接触角)と複数人の被験者の紫外線肌画像(例えば、
図2‐1に示す撮影装置で撮影した
図2‐2に示す画像)から算出した化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率とを用いて、肌状態指標と化粧料の塗膜の紫外線反射率との関係を示す数理モデル(塗膜推定数理モデル1)を作成する。作成した塗膜推定数理モデル1と計測器10により計測したユーザの肌状態指標(例えば、角層水分量、水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮膚柔軟性、接触角)を用いてユーザの肌に化粧料を塗布したと仮定した場合の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定することが可能となり、当該化粧料が発揮する機能を推定評価することが可能となる。
【0021】
また、化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態は、UVBの波長域の波長320nmの紫外光の反射率を用いて推定したため、当該化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態により、当該化粧料が有する機能(UVB領域の紫外線防御機能を備えた化粧料であれば、UVB領域の紫外線防御機能)を直接的に推定評価することが可能である。具体的には、例えば、化粧料A(SPF50)の場合、複数の被験者(19人)それぞれの紫外線反射率を算出し、算出した紫外線反射率の標準値を特定する。本実施形態における「標準値」とは、『2)紫外線反射率に応じて2群に分ける』に記載した、紫外線反射率を紫外線反射率順に並べた際に中央に位置した紫外線反射率とする。そして、上述した方法で推定した被験者の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(紫外線反射率)が標準値の場合は、化粧料Aが訴求している効果(SPF50相当)が期待でき、標準値より高い場合は、化粧料Aが訴求している効果(SPF50相当)が十分期待でき、標準値より低い場合は、化粧料Aが訴求している効果(SPF50相当)があまり期待できないと推測できる。このように、ユーザは推定された化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態でその化粧料が自身の肌に適合するか否かの判断をすることができる。
【0022】
一般的に、所定の化粧料を肌に塗布してから時間が経過すると、化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態は変化する。これは、湿度、温度、風などの外的要因や対象者(ユーザ)の肌特性による要因、対象者(ユーザ)の体質(汗をかきやすいか否か、肌表面の動きが多いか否か(顔であれば、表情の変化が多いか否か))など、様々な要因によるものである。
そこで、ユーザの肌に所定の化粧料を塗布した後の第一時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(以下、「第一形成状態」という)と、第一時間帯よりも後の第二時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(以下、「第二形成状態」という)とを推定するように塗膜推定数理モデル1を構成してもよい。
【0023】
第一形成状態と第二形成状態を推定する方法について説明する。
ここでは、第一時間帯を例えば、塗布直後から1分後、第二時間帯を例えば、塗布直後から8時間後とする。そして、それぞれの時間における上記塗膜推定数理モデル1を作成すればよい。すなわち、上述した『1)肌上に形成されている各化粧料の塗膜の紫外線反射率を算出する』の工程を、複数の被験者の肌に所定の化粧料を塗布して1分経過したときと、複数の被験者の肌に所定の化粧料を塗布して8時間経過したときと、にそれぞれ各化粧料の紫外線反射率を算出し、上述した『2)紫外線反射率に応じて2群に分ける』~『5)塗膜推定数理モデル1を作成する』の工程を行い、塗布直後から1分後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル1と、塗布直後から8時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル1と、をそれぞれ構成すればよい。
このように、塗布直後から1分後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル1と、塗布直後から8時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル1と、を作成し、作成した2つの塗膜推定数理モデル1と所定の計測器を用いて取得したユーザの肌状態指標とを用いることで、所定の化粧料をユーザの肌に塗布することなく、かつ、塗布から所定時間(本実施形態では、第一時間帯:1分、または、第二時間帯:8時間)経たなくても、塗布から所定時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定できる。
このように、所定の組成物(例えば、化粧料A、化粧料B)を塗布した塗布後の第一時間帯(例えば、塗布後1分)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)と当該第一時間帯よりも後の第二時間帯(例えば、塗布後8時間)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)とを推定することが可能となる。なお、第一形成状態と第二形成状態の推定は、必ずしも両方を行う必要はなく、目的に応じて、いずれか一方のみの推定を行ってもよい。また、第三時間帯、第四時間帯など増やすことも可能である。
【0024】
また、第一形成状態および第二形成状態を用いることで、塗布した組成物が訴求している効果に対し、第一時間帯に期待できる効果と第二時間帯に期待できる効果それぞれを推測することが可能である。
このように、所定の化粧料は紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料(例えば、化粧料A、化粧料B)であり、第一形成状態および第二形成状態を推定し、当該推定した第一形成状態と第二形成状態とに基づき、化粧料が発揮する機能を推定評価(化粧料が有する機能に対しどの程度、効果を期待できるか評価)することが可能である。
したがって、例えば、外出前に塗布し、8時間後に紫外線を浴びやすい状況で活動するような場合の紫外線防御効果を推定評価したければ、第二時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定すればよいし、外出前に塗布し、その後、8時間、継続して紫外線を浴びやすい状況で活動するような場合の紫外線防御効果を評価したければ、第一時間帯および第二時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態の両方を推定し、両方を用いて推定評価するといったように目的に応じた塗膜推定数理モデル1の使い分けが可能となる。
【0025】
<実施形態2>
実施形態2は、ユーザの肌(素肌)を撮影した画像から数理モデルを用いて生成した肌状態指標と、この肌状態指標と肌に所定の組成物を塗布したときの紫外線反射率との関係を示す数理モデルに基づき所定の組成物を塗布したと仮定した場合に肌上に形成される塗膜の形成状態を推定する方法である。
本実施形態では、肌状態指標を生成するのに用いる数理モデルを「肌状態指標数理モデル」と称する。また、実施形態2で取得する肌状態指標と肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の紫外線反射率との関係を示す数理モデルを「塗膜推定数理モデル2」と称する。実施形態2では、「肌状態指標数理モデル」と「塗膜推定数理モデル2」とを用いて、ユーザの肌に組成物を塗布せずに、組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する。実施形態2では、所定の組成物として、化粧料C(SPF50+、剤型O/W)を塗布したと仮定した場合に肌に形成される塗膜の形成状態を「肌状態指標数理モデル」と「塗膜推定数理モデル2」との2種類の数理モデルを用いて推定する。
肌状態指標数理モデルと塗膜推定数理モデル2について説明する。
【0026】
「肌状態指標数理モデル」は、複数の教師データに基づいて学習されている学習済みの判別モデルであり、少なくとも次の7項目の肌状態指標を取得できるように学習されている判別モデルである。
・総合評価(総合的な肌の状態の良さ)
・肌の色(肌の白さ)
・化粧感(化粧肌らしいか否か)
・肌年齢(肌の老化程度を示す指標)
・男性・女性らしさ(肌質感が男女のどちらに近いか)
・化粧くずれ度(化粧くずれの度合いを示す指標)
・パウダリー感(肌のさらさら感を示す指標)
これら7つの肌状態指標を実施形態2での肌状態指標として取得する。これらの肌状態指標は、
図5に示すように、ユーザの肌(素肌)を撮影装置40で撮影し、撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルとに基づき取得できる。本実施形態で用いる撮影装置40は、どのようなものでもよく、独立したデジタルカメラ、ビデオカメラの他、一般的に移動端末と称される携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータが備える撮影装置でもよいが、ユーザの肌画像(素肌画像)は肌の見た目の状態又は属性を判別するため、可視光を撮像するカラー画像を撮像可能なカメラであることが好ましい。
このように、肌状態指標は、ユーザの肌を撮像した肌画像(素肌画像)と肌状態指標との関係を示す肌状態指標数理モデルとを用いて取得する評価項目(上記7項目)である。
【0027】
ここで、肌状態指標数理モデルの作成方法を説明する。
肌状態指標数理モデルを作成するのに用いた教師データは、複数人分の素肌の顔画像と所定の化粧料を塗布した顔画像とそのそれぞれの顔画像に写り込む人顔の肌状態を示す正解情報との組合せデータである。
顔画像は、対象の被験者の顔が推定項目の肌状態を解析可能な程度に写り込んでいればよく、対象の被験者の顔の全体又は一部が写り込んでいればよい。取得される顔画像には、髪、首等のように対象者の顔以外の部位或いは背景が写り込んでいてもよい。また、顔画像に写り込む人顔の肌状態を推定可能であれば、カラー画像であってもよいし、グレースケール画像であってもよい。また、所定矩形形状にそれぞれ正規化されていてもよいし、所定矩形形状の所定画像サイズとは異なる画像サイズ又は所定矩形形状とは異なる形状の顔画像を含んでいてもよい。
所定の化粧料はどのようなものでもよく、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が含まれていても含まれていなくてもよく、本実施形態では、ファンデーションを用いた。
正解情報は、対応する顔画像若しくはその顔画像の被写体自体を専門の評価者が目視或いは計測器等を用いて評価することで得られた人顔の肌状態を示す情報である。本実施形態では、5名の専門の評価者が顔画像を目視で評価した上記の肌状態指標(7項目)の情報を用いた。
・総合評価(総合的な肌の状態の良さ) 総合的な肌状態の良さを7段階評価
・肌の色(肌の白さ) 肌の白さを7段階で評価
・化粧感(化粧肌らしいか否か) 化粧肌らしいか否かの評価
・肌年齢(肌の老化程度を示す指標) 肌の老化程度を5段階評価
・男性・女性らしさ(肌質感が男女のどちらに近いか) 肌質感が男女のどちらに近いかの評価
・化粧くずれ度(化粧くずれの度合いを示す指標) 化粧くずれの度合いが高いか否かの評価
・パウダリー感(肌のさらさら感を示す指標) 肌のさらさら感があるか否かの評価
なお、本実施形態では、素肌の顔画像と所定の化粧料を塗布した顔画像の両画像のそれぞれについて上記7項目に対して評価を行った。
次に取得した顔画像に対して、顔画像毎に対象の顔画像に写り込む人顔の顔領域における複数の所定箇所の位置座標(所定位置座標)を特定する。所定位置座標には、顔領域の形状特徴点の位置座標が少なくとも含まれる。
次に、特定された複数の所定位置座標を基準に当該顔領域が所定矩形形状となり、かつ元顔画像の各ピクセルの位置が肌状態指標数理モデルの入力規則に対応する位置になるように、対象の顔画像の各ピクセルの位置を変換する。
そして、変換された顔画像を含む教師データを用いて、肌状態指標数理モデルを作成する。学習アルゴリズムは限定されないが、本実施形態ではディープラーニングにより行った。
このように、本実施形態で用いる「肌状態指標数理モデル」は、素肌の顔画像と所定の化粧料を塗布した顔画像の両画像と、両画像それぞれに対して上記7項目について評価した評価結果を用いて作成したものである。
なお、上記した肌状態指標(7項目)は、本実施形態において紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含む化粧料を塗布したと仮定した場合に化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定するために適した指標であるため、当該指標を算出する肌状態指標数理モデルを用いたが、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を含む化粧料以外の化粧料を塗布したと仮定した場合に化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する場合は、当該化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定するのに適した肌状態指標を算出可能な肌状態指標数理モデルを用いればよい。
また、「肌状態指標数理モデル」は、素肌の顔画像と、素肌の顔画像に対して上記7項目について評価した評価結果を用いて作成した肌状態指標数理モデル(素肌)と所定の化粧料を塗布した顔画像と、所定の化粧料を塗布した顔画像に対して上記7項目について評価した評価結果を用いて作成した肌状態指標数理モデル(塗布)の何れか、または、両方を作成し、何れか、または、両方を用いて肌状態指標(7項目)を取得してもよい。ただし、実施形態2では、ユーザの肌状態指標を取得する際にユーザの肌画像(素肌画像)を用いるため、素肌の顔画像と素肌の顔画像に対して7項目について評価した評価結果を含む肌状態指標数理モデル(素肌)を少なくとも含むことが好ましい。
【0028】
次に、塗膜推定数理モデル2について説明する。
塗膜推定数理モデル2を作成するのに用いた教師データとその条件は以下の通りである。
・所定の組成物20:化粧料C(SPF50+、剤型O/W)
・塗布面積 :4cm×4cm
・塗布量 :4cm×4cmに対し、16mg
・対象の被験者 :20名の女性の額もしくは頬
・使用カメラ :紫外線カメラ30
・塗布方法 :訓練された試験者が均一となるように塗布する
・光源 :MAX-303,朝日分光社製
・バンドパスフィルター(320nm±5nm)
・偏光板
図2‐1に示すように、被験者の肌に所定の組成物20を塗布し、被験者の肌を紫外線照射下で紫外線カメラ30によって撮影した画像データ(紫外線肌画像)を用いる。撮影した画像データから以下の手順で塗膜推定数理モデル2を作成する。なお、所定の組成物20(化粧料C)の紫外線反射率の取得方法は、実施形態1と同様である。
【0029】
1)肌上に形成されている化粧料の塗膜の紫外線反射率を算出する
被験者の肌(皮膚15)に所定の組成物20(化粧料C)を塗布した場合の化粧料Cが肌上に形成する塗膜の紫外線反射率(「紫外線反射率C」とする)を算出する。算出方法を以下に示す。
図3(a)は、被験者の肌(素肌)にUVB領域に含まれる波長320nmの紫外線(以下、「紫外光」)を照射した場合を示す。図中の「入射光」は照射した紫外光であり、「正反射光」は肌の表面で反射する紫外光であり、「内部散乱光」は肌の表面で反射しなかった紫外光が肌内部に侵入し、肌の内部で拡がり肌から出てくる紫外光である。正反射光を除去した内部散乱光の強度を取得する。これを素肌の内部散乱光強度とする。
図3(b)は、被験者の肌に所定の組成物20を塗布し、紫外光を照射した場合を示している。図中の「入射光」は照射した紫外光であり、「正反射光」は所定の組成物20の表面で反射する紫外光、および、肌の表面で反射する紫外光であり、「内部散乱光」は所定の組成物20の表面、および肌の表面で反射しなかった紫外光が肌内部に侵入し、肌の内部で拡がり肌から出てくる紫外光である。所定の組成物20として化粧料Cを塗布した場合の正反射光を除去した内部散乱光の強度を取得する。これを塗布肌の内部散乱光強度Cとする。
そして、所定の組成物20を塗布した場合の塗布肌の内部散乱光強度Cを素肌の内部散乱光強度で除算することにより、所定の組成物20を塗布した部位に存在している組成物の紫外線反射率を算出する(化粧料Cを塗布した塗布肌の内部散乱光強度C/素肌の内部散乱光強度=化粧料Cを塗布した部位に存在する化粧料Cが形成する塗膜の紫外線反射率(紫外線反射率C))。
このように、正反射光を除去し、内部散乱光の強度を用いて紫外線反射率を算出することで肌に形成される塗膜の塗布状態(塗膜の形成状態)を精度高く推定することが可能となる。
ここで、光源と紫外線カメラに偏光板を取り付けることで、化粧料Cを塗布した肌に紫外光を照射し、正反射光を除去し、反射されてきた内部散乱光を紫外線カメラ30で撮影することで、内部散乱強度を測定できる。
なお、本実施形態では、UVB領域の波長域が320~280nmであることを考慮して、波長320nmの紫外線反射率を算出するようにしたが、波長域はこれに限らず、例えば、化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定し、推定結果からUVA領域の紫外線防御効果を推定評価する場合は、波長380~320nmの何れか、例えば、波長350nmの紫外線を用いて紫外線の反射率を算出するようにしてもよい。
2)紫外線反射率に応じて2群に分ける
算出した各化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率を紫外線反射率順に並べ、紫外線反射率の高い方(50%)と低い方(50%)との2群に各被験者を分ける。紫外線反射率の高い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群」、紫外線反射率の低い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが高い群」とする。なお、各被験者から算出した各化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率が異なる(順を付けられる)のは、各化粧料の塗膜は、化粧料を塗布する肌の状態により異なるためである。なお、化粧料の塗膜の形成状態に化粧料を塗布する肌の肌状態が影響する点は、実施形態1で説明した通りである。
3)被験者の肌状態指標を計測する
上述した肌状態指標数理モデルと撮影した被験者の肌画像(素肌画像)を用いて、肌状態指標(7項目)を取得する。
4)機械学習に用いる教師データを作成する
2)で2群に分けた結果と3)の取得結果を用いて、塗膜推定数理モデル2を作成するための教師データを作成する。
5)塗膜推定数理モデル2を作成する
各評価値について標準化処理を行い、複数の分類モデル(例えば、naive bayes(NB)、logestic regression(LR)、linear discriminant analysis(LDA)、random forest(RF)、gradient boosting(GB)、support vector machine(SVM)、Gaussian process(GP))から最適なものを選択し予測モデルとし、当該予測モデルを用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測する。予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出する。分類モデルの汎化性能を一個抜き交差検証(leave-one-out cross-validation(LOOCV))で評価し、最も正解率の高い計算モデルを最適なモデル:塗膜推定数理モデル2とする。なお、本実施形態では、化粧料Cの塗膜推定数理モデル2は分類モデルRFを用いた。
【0030】
図6(a)には、塗膜推定数理モデル2を用いて化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果と実際の結果を、
図6(b)には、塗膜推定数理モデル2を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出した結果を示している。
図6(a)、
図6(b)より、塗膜推定数理モデル2を用いて化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を予測した場合、高い正解率を得られることがわかる。
したがって、肌状態指標数理モデルを用いて推定したユーザの肌状態指標と塗膜推定数理モデル2とを用いることで、所定の組成物を肌に塗布することなく当該組成物による組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定できるため、所定の組成物(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を肌に塗布しなくても、当該所定の組成物をユーザの肌に塗布した場合の、組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態の良さの高低を推定でき、これにより所定の組成物が有する機能(例えば、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料であれば紫外線防御機能)に基づく効果をどの程度期待できるか評価することも可能となる。
【0031】
上述したように、実施形態2は、複数人の被験者(例えば、女性20名)のそれぞれの肌状態指標(例えば、被験者の肌画像と肌状態指標数理モデルとを用いて算出した、7項目)と複数人の被験者の紫外線肌画像(例えば、
図2‐1に示す撮影装置で撮影した
図2‐2に示す画像)から算出した化粧料が肌上に形成する塗膜の紫外線反射率とから、肌状態指標と化粧料の塗膜の紫外線反射率との関係を示す数理モデル(塗膜推定数理モデル2)を作成する。作成した塗膜推定数理モデル2と、ユーザの肌画像(素肌画像)と肌状態数理モデルから取得したユーザの肌状態指標(例えば、上記7項目)を用いてユーザの肌に化粧料を塗布したと仮定した場合の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定することが可能となり、当該化粧料が発揮する機能を推定評価することが可能となる。
【0032】
また、実施形態1と同様に、化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態は、UVBの波長域の波長320nmの紫外光の反射率を用いて推定したため、当該化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態により、当該化粧料が有する機能(UVB領域の紫外線防御機能を備えた化粧料であれば、UVB領域の紫外線防御機能)を直接的に推定評価することが可能である。具体的には、例えば、化粧料C(SPF50+)の場合、複数の被験者(20人)それぞれの紫外線反射率を算出し、算出した紫外線反射率の標準値を特定する。本実施形態における「標準値」とは、『2)紫外線反射率に応じて2群に分ける』に記載した、紫外線反射率を紫外線反射率順に並べた際に中央に位置した紫外線反射率とする。そして、上述した方法で推定した被験者の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(紫外線反射率)が標準値の場合は、化粧料Cが訴求している効果(SPF50+相当)が期待でき、標準値より高い場合は、化粧料Cが訴求している効果(SPF50+相当)が十分期待でき、標準値より低い場合は、化粧料Cが訴求している効果(SPF50+相当)があまり期待できないと推測できる。したがって、ユーザは推定された化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態でその化粧料が自身の肌に適合するか否かの判断をすることができる。
【0033】
また、実施形態1と同様に、第一時間帯を例えば、塗布直後から1分後、第二時間帯を例えば、塗布直後から8時間後における上記塗膜推定数理モデル2を作成することにより、第一形成状態および第二形成状態を推定することが可能となる。なお、作成方法は実施形態1と同様に、実施形態2で説明した『1)肌上に形成されている化粧料の塗膜の紫外線反射率を算出する』の工程を、被験者の肌に所定の化粧料を塗布して1分経過したときと、被験者の肌に所定の化粧料を塗布して8時間経過したときと、にそれぞれ化粧料の紫外線反射率を算出し、上述した『2)紫外線反射率に応じて2群に分ける』~『5)塗膜推定数理モデル2を作成する』の工程を行い、塗布直後から1分後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル2と、塗布直後から8時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル2と、をそれぞれ構成すればよい。
このように、塗布直後から1分後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル2と、塗布直後から8時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル2と、を作成し、作成した2つの塗膜推定数理モデル2と肌状態指標数理モデルを用いて取得したユーザの肌状態指標とを用いることで、所定の化粧料をユーザの肌に塗布することなく、かつ、塗布から所定時間(本実施形態では、第一時間帯:1分、または、第二時間帯:8時間)経たなくても、塗布から所定時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定できる。
このように、所定の組成物(例えば、化粧料C)を塗布した塗布後の第一時間帯(例えば、塗布後1分)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)と当該第一時間帯よりも後の第二時間帯(例えば、塗布後8時間)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)とを推定することが可能となる。なお、第一形成状態と第二形成状態の推定とは、必ずしも両方を行う必要はなく、目的に応じて、いずれか一方のみの推定を行ってもよい。また、第三時間帯、第四時間帯など増やすことも可能である。
【0034】
また、実施形態1と同様に、第一形成状態および第二形成状態を用いることで、塗布した組成物が訴求している効果に対し、第一時間帯に期待できる効果と第二時間帯に期待できる効果それぞれを推測することが可能である。
このように、所定の化粧料は紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料(例えば、化粧料C)であり、第一形成状態および第二形成状態を推定し、当該推定した第一形成状態および第二形成状態に基づき、化粧料が発揮する機能を推定評価(化粧料が有する機能に対しどの程度、効果を期待できるか評価)することが可能である。
したがって、例えば、外出前に塗布し、8時間後に紫外線を浴びやすい状況で活動するような場合の紫外線防御効果を推定評価したければ、第二時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定すればよいし、外出前に塗布し、その後、8時間、継続して紫外線を浴びやすい状況で活動するような場合の紫外線防御効果を評価したければ、第一時間帯および第二時間帯の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態の両方を推定し、両方を用いて推定評価するといったように目的に応じた塗膜推定数理モデル2の使い分けが可能となる。
【0035】
<実施形態3>
実施形態3は、ユーザの肌(素肌)を撮影した画像から数理モデルを用いて生成した肌状態指標と、この肌状態指標と肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデルに基づき所定の組成物を塗布した場合に形成される組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する方法である。
本実施形態では、肌状態指標を生成するのに用いる数理モデルを「肌状態指標数理モデル」と称し、実施形態2で説明した「肌状態指標数理モデル」と同一である。取得する肌状態指標と肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデルを「塗膜推定数理モデル3」と称する。実施形態3では、「肌状態指標数理モデル」と「塗膜推定数理モデル3」とを用いて、ユーザの肌に組成物を塗布せずに、組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する。
肌状態指標数理モデルと塗膜推定モデル3について説明する。
【0036】
「肌状態指標数理モデル」は、複数の教師データに基づいて学習されている学習済みの判別モデルであり、少なくとも次の7つの肌状態指標を取得できるように学習されている判別モデルであり、実施形態2で説明した「肌状態指標数理モデル」と同様である。
・総合評価(総合的な肌の状態の良さ)
・肌の色(肌の白さ)
・化粧感(化粧肌らしいか否か)
・肌年齢(肌の老化程度を示す指標)
・男性・女性らしさ(肌質感が男女のどちらに近いか)
・化粧くずれ度(化粧くずれの度合いを示す指標)
・パウダリー感(肌のさらさら感を示す指標)
なお、「肌状態指標数理モデル」は、実施形態2で説明した「肌状態指標数理モデル」と同様であるため、素肌の顔画像と所定の化粧料を塗布した顔画像の両画像と、両画像それぞれに対して上記7項目について評価した評価結果を用いて作成したものである。「肌状態指標数理モデル」の作成方法についての説明は省略する。
【0037】
次に、塗膜推定数理モデル3について説明する。
塗膜推定数理モデル3を作成するのに用いた教師データとその条件は以下の通りである。
・所定の組成物20:化粧料D(SPF50+ 剤型O/W)
化粧料E(SPF50+ 剤型W/O)
・塗布面積 :全顔
・塗布量 :全顔に対し、300mg
・対象の被験者 :化粧料Dおよび化粧料Eともに20名の女性の全顔
・使用カメラ :可視光カメラ
・塗布方法 :被験者が全顔に均一となるように塗布する
図7に示すように、被験者の肌に所定の組成物20(化粧料D、化粧料E)を塗布し、撮影装置40(スマートフォン40)で撮影した画像データ(塗布肌画像)を用いる。なお、撮影装置40(スマートフォン40)はどのようなものでもよく、デジタルカメラ、ビデオカメラの他、一般的に移動端末と称される携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータが備える撮影装置でもよく、可視光を撮像するカラー画像を撮像可能なカメラであることが好ましい。本実施形態ではスマートフォンに搭載されているカメラにより撮影する。撮影した画像データ(塗布肌画像)から以下の手順で塗膜推定数理モデル3を作成する。
【0038】
1)塗布肌総合評価の評価値を取得する
上記したように、化粧料D、化粧料Eをそれぞれ塗布した複数の被験者(本実施形態では、20人の女性)の全顔の塗布肌画像を取得する。取得した全顔の塗布肌画像と「肌状態指標数理モデル」を用いて塗布肌総合評価の評価値を取得する。
「塗布肌総合評価の評価値」は、取得した全顔の塗布肌画像と「肌状態指標数理モデル」を用いて算出される肌状態指標(上記7つの項目(総合評価、肌の色、化粧感、肌年齢、男性・女性らしさ、化粧くずれ度、パウダリー感))の中の「総合評価」の評価値である。本実施形態では、ユーザの肌画像(素肌画像)と「肌状態指標数理モデル」とを用いて算出する「肌状態指標」の中の1項目である「総合評価」と区別するため、化粧料D(または化粧料E)を塗布した全顔の塗布肌画像と「肌状態指標数理モデル」とを用いて算出した「総合評価」は「塗布肌総合評価」と記載する。また、塗布肌総合評価の評価値を「塗布肌総合評価値」と記載する。
2)塗布肌総合評価値に応じて2群に分ける
各被験者から算出した各化粧料の塗布肌総合評価値を、塗布肌総合評価値順に並べ、塗布肌総合評価値の高い方(50%)と低い方(50%)との2群に分ける。塗布肌総合評価値の高い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが高い群」、塗布肌総合評価値の低い方の群を「化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群」とする。
3)被験者の肌状態指標を計測する
被験者に対して実施形態2で説明した肌状態指標数理モデルと可視光カメラで撮影した被験者の肌(素肌)画像を用いて、肌状態指標(7項目)を取得する。
4)機械学習に用いる教師データを作成する
2)で2群に分けた結果と3)の取得結果を用いて、教師データを作成する。
5)塗膜推定数理モデル3を作成する
各評価値について標準化処理を行い、複数の分類モデル(例えば、naive bayes(NB)、logestic regression(LR)、linear discriminant analysis(LDA)、random forest(RF)、gradient boosting(GB)、support vector machine(SVM)、Gaussian process(GP))から最適なものを選択し予測モデルとし、当該予測モデルを用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測する。予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出する。分類モデルの汎化性能を一個抜き交差検証(LOOCV)で評価し、最も正解率の高い計算モデルを最適なモデル:塗膜推定数理モデル3とする。なお、本実施形態では、化粧料Dの塗膜推定数理モデル3は分類モデルNBを用い、また、化粧料Eの塗膜推定数理モデル3は分類モデルLDAを用いた。
【0039】
このように、塗膜推定数理モデル3は、肌状態指標数理モデルと複数の被験者の肌画像(素肌画像)とを用いて生成した「肌状態指標(7項目)」と、肌状態指標推理モデルと複数の被験者の肌に化粧料D(または化粧料E)を塗布した全顔の塗布肌画像とを用いて生成した「塗布肌総合評価値」とを用いて学習させて作成する。肌状態指標(7項目)には、肌上に化粧料の塗膜を形成する際に影響する肌の物性値(例えば、各層水分量、水分蒸散値など)により変化する項目が含まれているため、研究を進めた結果、算出される肌状態指標(7項目)は全て用いることで正解率の高い塗膜推定数理モデル3を作成することができることがわかった。また、被験者の肌に化粧料D(または化粧料E)を塗布した全顔の塗布肌画像と肌状態指標推理モデルとを用いると肌状態指標(7項目)と同様の項目を算出できるが、本実施形態では、総合評価に相当する塗布肌総合評価の評価値である「塗布肌総合評価値」だけを用いることとした。これは、本方法では、化粧料を肌に塗布することにより肌上に形成される塗膜の形成状態を推定するため、研究を進めた結果、化粧料を塗布した肌の見た目の状態、仕上がりの状態の評価結果が肌上に形成される塗膜の形成状態を推定する際に最も重要であることがわかり、その結果、総合的な肌の状態の良さである総合評価の評価値である「塗布肌総合評価値」を用いることで正解率の高い塗膜推定数理モデルを作成することができることがわかったからである。
【0040】
図8(a)には、塗膜推定数理モデル3を用いて化粧料の塗膜の形成状態の良さが低い群に入るか、高い群に入るかを予測した結果と実際の結果を、
図8(b)には、塗膜推定数理モデル3を用いて予測された群と実際の群との一致度を正解率として算出した結果を示している。
図8(a)、
図8(b)より、塗膜推定数理モデル3を用いて化粧料の塗膜の形成状態を予測した場合、高い正解率を得られることがわかる。
したがって、肌状態指標数理モデルを用いて取得したユーザの肌状態指標(7項目)と塗膜推定数理モデル3とを用いることで、所定の組成物による組成物の塗膜の形成状態を推定できるため、所定の組成物(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を肌に塗布しなくても、当該所定の組成物をユーザの肌に塗布した場合を想定した塗膜の形成状態の良さの高低を推定でき、これにより所定の組成物が有する機能(例えば、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料であれば紫外線防御機能)に基づく効果をどの程度期待できるか推測することも可能となる。
上述したように、実施形態3は、複数人の被験者(例えば、女性20名)の肌の肌状態指標(例えば、被験者の肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルとを用いて算出した7項目)をそれぞれ取得する。化粧料(例えば、化粧料D、化粧料E)を塗布した複数人の被験者の肌(塗布肌)を撮像した肌画像(例えば、
図7に示す撮影装置で撮影した肌画像(塗布肌画像))と肌状態指標数理モデルとを用いて塗布肌総合評価値を算出する。取得した肌状態指標(7項目)と塗布肌総合評価値とから、肌状態指標と化粧料の塗膜の形成状態との関係を示す数理モデル(塗膜推定数理モデル3)を作成する。ユーザの肌画像(素肌画像)と肌状態数理モデルから取得したユーザの肌状態指標(例えば、上記7項目)と塗膜推定数理モデル3を用いてユーザの肌に化粧料(例えば、化粧料D、化粧料E)を塗布したと仮定した場合の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定することが可能となり、当該化粧料が発揮する機能を推定評価することが可能となる。
【0041】
また、実施形態1、2と同様に、第一時間帯を例えば、塗布直後から1分後、第二時間帯を例えば、塗布直後から8時間後における上記塗膜推定数理モデル3を作成することにより、第一形成状態および第二形成状態を推定することが可能となる。なお、作成方法は実施形態1、2と同様に、実施形態3に記載した『1)各塗布肌総合評価の評価値を取得する』の工程を、被験者の肌に所定の化粧料を塗布して1分経過したときと、被験者の肌に所定の化粧料を塗布して8時間経過したときと、にそれぞれ各塗布肌総合評価の評価値を取得し、実施形態3に記載した『2)塗布肌総合評価の評価値に応じて2群に分ける』~『5)塗膜推定数理モデル3を作成する』の工程を行い、塗布から1分後の化粧料の塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル3と塗布から8時間後の化粧料の塗膜の形成状態(第二形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル3をそれぞれ構成すればよい。
このように、塗布直後から1分後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル3と、塗布直後から8時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)を推定する塗膜推定数理モデル3と、を作成し、作成した2つの塗膜推定数理モデル3と肌状態指標数理モデルを用いて取得したユーザの肌状態指標とを用いることで、所定の化粧料をユーザの肌に塗布することなく、かつ、塗布から所定時間(本実施形態では、第一時間帯:1分、または、第二時間帯:8時間)経たなくても、塗布から所定時間後の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定できる。
このように、所定の組成物(例えば、化粧料D、化粧料E)を塗布した塗布後の第一時間帯(例えば、塗布後1分)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第一形成状態)と当該第一時間帯よりも後の第二時間帯(例えば、塗布後8時間)の上記組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態(第二形成状態)とを推定することが可能となる。なお、第一形成状態と第二形成状態の推定とは、必ずしも両方を行う必要はなく、目的に応じて、いずれか一方のみの推定を行ってもよい。また、第三時間帯、第四時間帯など増やすことも可能である。
【0042】
また、実施形態1、2と同様に、第一形成状態および第二形成状態を用いることで、塗布した化粧料が訴求している効果に対し、第一時間帯に期待できる効果と第二時間帯に期待できる効果それぞれを推測することが可能である。
このように、所定の化粧料は紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料(例えば、化粧料D、化粧料E)であり、第一形成状態および前記第二形成状態を推定し、当該推定した前記第一形成状態と前記第二形成状態とに基づき、化粧料が発揮する機能を推定評価(化粧料が有する機能に対しどの程度、効果を期待できるか評価)することが可能である。
【0043】
次に、実施形態1から実施形態3の方法で推定された化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を用いて、所定の機能を有する化粧料とユーザの肌との適合性を評価する方法について説明する。
上述したように、いずれの実施形態もユーザの肌に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料を実際には塗布せずとも、実際に塗布した場合に化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する。所定の化粧料は紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料であり、実施形態1および2ではUVB領域に含まれる波長320nmの紫外線反射率に基づき化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定するため、所定の化粧料が有するUVB波長域の紫外線を防御する効果に対して期待できるか否かを推測することが可能である。
また、上述したように、第一時間帯(例えば、塗布直後から1分後)の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態である第一形成状態と第二時間帯(例えば、塗布直後から8時間後)の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態である第二形成状態とを推定することも可能であるため、第一形成状態および第二形成状態を用いることで、塗布した化粧料が訴求している効果に対し、第一時間帯に期待できる効果と第二時間帯に期待できる効果をそれぞれを推測することが可能である。
そして、これらの推測結果を用いて、ユーザに適合する化粧料を提案する方法について説明する。
【0044】
図9に、化粧料1~化粧料3の3種類の化粧料を塗布した場合に推定される第一時間帯(1分後)の第一形成状態と第二時間帯(8時間後)の第二形成状態がそれぞれ標準値に対して高い/低いを示した例を示す。
ここで、化粧料1~化粧料3は何れも同じ公表紫外線防御値(本実施形態では何れもSPF50)とする。本方法では、化粧料を塗布したと仮定した場合に化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定することより、当該化粧料が訴求する効果に対して期待できるか否かを推測することが可能であるため、公表紫外線防御値が同じ化粧料を比較することは有効である。ただし、標準値は化粧料によって異なるため、例えば、化粧料1と化粧料2とが何れも標準値程度であったとしても同様の紫外線防御値を期待できるとまではいえないが、ユーザに適合する化粧料を提案する際の情報としては有効である。
図9から、例えば、化粧料2は第一形成状態と第二形成状態との何れも標準値より低いため、ユーザには均一に塗布しにくいことが推定でき、これにより化粧料2が訴求している効果を期待することは難しいことが推測できる。また、化粧料1は第一形成状態は標準値より高く、第二形成状態は標準値程度であり、化粧料3は第一形成状態は標準値程度であるが、第二形成状態は標準値より高い。したがって、ユーザが化粧料を塗布してすぐの紫外線防御効果を期待するのであれば化粧料1を提案し、外出前に塗布し所定時間後に紫外線を浴びる環境へ行くのであれば化粧料3を提案すればよい。このように化粧料を提案する際の参考情報として用いることが可能となる。
このように、化粧料(例えば、化粧料1から化粧料3)は、予め公表された公表紫外線防御値(例えば、SPF値)があり、推定された上記化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態と上記公表紫外線防御値に基づき、所定の機能として紫外線防御機能を推定評価することが可能となる。
【0045】
<推定装置>
図10‐1、
図10‐2を用いて、推定装置200について説明する。
図10‐1は、実施形態1の場合、
図10‐2は、実施形態2および3の場合を示している。
本実施形態における推定装置200は、肌状態取得部130、および塗膜推定部140で構成される。推定装置200は、汎用的なパーソナルコンピュータであり、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力装置、集積回路として実現されたCPUであるMPUなどで構成されている演算処理装、入出力インタフェース、記憶部等を備えている。肌状態取得部130は入出力インタフェースを演算処理装置がプログラムの所定の処理を実行することで、塗膜推定部140は演算処理装置がプログラムの所定の処理を実行することで実現される。また、推定装置200には、評価部150、表示部160(表示装置)を備えていることが好ましいが、表示部160は推定装置200の外部に設けられ、ネットワークなどで接続されていてもよい。また、実施形態1の場合、
図10-1に示すように肌状態指標を計測する計測器10が、実施形態2および3の場合、
図10―2に示すように肌状態指標を算出するための肌画像(素肌画像)を撮影する撮影装置40が必要である。店頭などでユーザの肌に所定の化粧料(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を実際には塗布せず、塗布した場合を想定しどの程度の効果があるかを推定し、化粧料の推奨をする場合、推定装置200に加え、計測器10または/および撮影装置40を用意することで、逐次、ユーザに所定の化粧料の紫外線防御効果の期待度や推奨する化粧料の提案を行うことが可能となる。
【0046】
肌状態取得部130は、計測器10で計測した測定値から(実施形態1)、あるいは撮影装置40で撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルとを用いて(実施形態2または3)肌状態指標(7項目)を取得する手段(肌状態取得手段)である。なお、実施形態2および実施形態3は、推定装置200とは異なる情報処理端末(図示しない)で、ユーザを撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルを用いて肌状態指標を算出し、算出した肌状態指標をネットワーク回線、媒体などを経由して推定装置200で取得できるように構成してもよいし、推定装置200に肌状態指標数理モデルを記憶しておき、撮影装置40で撮影された肌画像(素肌画像)を取得し、推定装置200で肌状態指標を算出・取得してもよい。
塗膜推定部140は、取得した肌状態指標と塗膜推定数理モデル1から3の何れかを用いて、所定の化粧料をユーザの肌に塗布したと仮定した場合の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する手段(塗膜状態推定手段)である。推定方法は上述したものと同様である。
評価部150は、塗膜推定部140で推定した化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を用いて、紫外線防御値を公表している紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料同士の比較評価やユーザの肌に適した紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料の提案をする手段である。評価部150による評価結果は、表示部160を用いてユーザが把握しやすいように表示することが好ましい。
表示部160に、評価部150による評価結果、例えば、
図9に示した図を表示することで、ユーザが推定結果・評価結果を把握しやすくなる。
推定装置200の記憶部には、上述した各数理モデルおよび上述した推定方法を実行するためのプログラムが記憶されており、肌状態取得部130で取得した肌状態指標と各数理モデルを用いてプログラムが塗膜推定部140に組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定させ、評価部150に評価をさせ、評価結果を表示部160に表示させる。なお、各数理モデルを他の装置、例えば、所定サーバ(図示しない)に記憶しておき、当該サーバに推定装置200から例えばインターネットを介してアクセスし、推定装置200が取得した肌状態指標を用いて化粧料の塗膜の形成状態を当該他の装置に推定させるなど、一部の機能を別の情報処理装置に分担させてもよい。
【0047】
<推定システム>
図11‐1、
図11‐2を用いて、推定システム400について説明する。
図11‐1は、実施形態1の場合、
図11‐2は、実施形態2および3の場合を示している。
本実施形態における推定システム400は、肌状態取得部330、および塗膜推定部340で構成される。推定システム400は各種の処理を実行可能な情報処理端末300を備え、当該情報処理端末300に、肌状態取得部330、および塗膜推定部340が備えられている。情報処理端末300は、汎用的なパーソナルコンピュータであり、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力装置、集積回路として実現されたCPUであるMPUなどで構成されている演算処理装置、入出力インタフェース、記憶部等を備えている。肌状態取得部330は入出力インタフェースを演算処理装置がプログラムの所定の処理を実行することで、塗膜推定部340は演算処理装置がプログラムの所定の処理を実行することで実現される。また、情報処理端末300には、評価部350、表示部360(表示装置)を備えていることが好ましいが、表示部360は情報処理端末300の外部に設けられ、ネットワークなどで接続されていてもよい。また、実施形態1の場合、
図11-1に示すように肌状態指標を計測する計測器10が、実施形態2および3の場合、
図11-2に示すように肌状態指標を算出するための画像を撮影する撮影装置40が必要である。店頭などでユーザの肌に所定の化粧料(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を実際に塗布せず、塗布した場合を想定し、どの程度の効果があるかを推定し、化粧料の推奨をする場合、推定システム400に加え、計測器10または/および撮影装置40を用意することで、逐次、ユーザに所定の化粧料の紫外線防御効果の期待度や推奨する化粧料の提案を行うことが可能となる。
【0048】
肌状態取得部330は、計測器10で計測した測定値から(実施形態1)、あるいは撮影装置40で撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルとを用いて(実施形態2または3)肌状態指標を取得する手段(肌状態取得手段)である。なお、実施形態2および実施形態3は、推定システム400とは異なる情報処理端末(図示しない)で、ユーザを撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルを用いて肌状態指標を算出し、算出した肌状態指標をネットワーク回線、媒体などを経由して情報処理端末300で取得できるように構成してもよいし、推定システム400に肌状態指標数理モデルを記憶しておき、撮影装置40で撮影された肌画像(素肌画像)を取得し、推定システム400で肌状態指標を算出・取得してもよい。
塗膜推定部340は、取得した肌状態指標と塗膜推定数理モデル1から3の何れかを用いて、所定の化粧料をユーザの肌に塗布したと仮定した場合の化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定する手段(塗膜推定手段)である。推定方法は上述したものと同様である。
評価部350は、塗膜推定部340で推定した化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を用いて、紫外線防御値を公表している紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料同士の比較評価やユーザの肌に適した紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料の提案をする手段である。評価部350による評価結果は、表示部360を用いてユーザが把握しやすいように表示することが好ましい。
表示部360に、評価部350による評価結果、例えば、
図9に示した図を表示することで、ユーザが推定結果・評価結果を把握しやすくなる。
情報処理端末300の記憶部には、上述した各数理モデルおよび上述した推定方法を実行するためのプログラムが記憶されており、肌状態取得部330で取得した肌状態指標と各数理モデルを用いてプログラムが塗膜推定部340に組成物が肌上に形成する塗膜の形成状態を推定させ、評価部350に評価をさせ、評価結果を表示部360に表示させる。なお、各数理モデルを他の装置、例えば、所定サーバ(図示しない)に記憶しておき、当該サーバに推定システム400から例えばインターネットを介してアクセスし、推定システム400が取得した肌状態指標を用いて化粧料の塗膜の形成状態を当該他の装置に推定させるなど、一部の機能を別の情報処理装置に分担させてもよい。
【0049】
<アプリケーションプログラム>
推定装置200には、上述した推定方法を推定装置200に実行させるためのアプリケーションプログラム(以下、本プログラムともいう)がインストールされている。
同様に、情報処理端末300には、上述した推定方法を情報処理端末300に実行させるためのアプリケーションプログラム(以下、本プログラムともいう)がインストールされている。本実施形態では、アプリケーションプログラムは、ユーザの肌に組成物を塗布せず、塗布した場合の組成物の塗膜の形成状態を推定するアプリケーションソフトである。
本プログラムには、肌状態取得処理と塗膜推定処理が含まれている。
肌状態取得処理は、計測器10で計測した肌状態指標、撮影装置40で撮影したユーザの肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルを用いて算出した肌状態指標を取得する処理である。なお、実施形態2および実施形態3は、ユーザを撮影した肌画像(素肌画像)と肌状態指標数理モデルを用いて肌状態指標を推定装置200または情報処理端末300とは異なる情報処理端末(図示しない)で算出し、算出した肌状態指標をネットワーク回線、媒体などを経由して推定装置200または情報処理端末300で取得できるように構成してもよいし、推定装置200または情報処理端末300に肌状態指標数理モデルを記憶しておき、撮影装置40で撮影された肌画像(素肌画像)を取得し、推定装置200または情報処理端末300で肌状態指標を算出・取得してもよい。
塗膜推定処理は、取得した肌状態指標と塗膜推定数理モデル1から3の何れかを用いて、所定の化粧料をユーザの肌に塗布したと仮定した場合の化粧料の塗膜の形成状態を推定する処理である。
また、本プログラムには、評価処理、表示処理をさらに備えていることが好ましい。
評価処理は、推定処理で推定した化粧料が肌上に形成する塗膜の形成状態を用いて、紫外線防御値を公表している所定の紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料との比較評価やユーザに適した紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料の提案をする処理である。
表示処理は、評価処理による評価結果、例えば、
図9に示した図を表示することで、ユーザが推定結果・評価結果を把握しやすいようにすることが可能となる。
【0050】
<情報処理端末>
推定システム400にはネットワークを介して情報処理端末(図示しない)がネットワークを介して接続されていてもよい。情報処理端末は、例えば、店頭に設けられたタブレット端末、スマートフォンやユーザが所有するタブレット端末、スマートフォンなどであってもよい。
情報処理端末には、ユーザの肌特性を示す肌状態指標を求めるためのデータ(例えば、肌画像(素肌画像))を送信する送信手段(例えば、入出力インタフェースが相当)と塗膜推定手段(塗膜推定部340)から送られる推定結果を受信する受信手段(例えば、入出力インタフェースが相当)を備えている。
このように、データ(例えば、肌画像(素肌画像))を送信する送信手段を備えた情報処理端末があると、例えば、情報処理端末はユーザが所有するタブレット端末、スマートフォンであれば、店頭で素肌の顔画像を撮影することに抵抗のあるユーザが自宅などでユーザが所有するタブレット端末、スマートフォンでユーザの素肌の顔画像を撮影し、その素肌の顔画像をユーザの肌画像(素肌画像)として店頭にある推定システム400が備えた情報処理端末300に送信することで、所定の化粧料を塗布したと仮定した場合の塗膜の形成状態を推定することが可能となる。また、情報処理端末に推定結果を受信する受信手段があれば、推定結果をユーザが所有するタブレット端末、スマートフォンで確認することも可能となる。なお、上述したように推定システム400には評価部350を備えることが好ましいため、評価部350を備えている場合であれば受信手段は評価結果を受信できることが好ましい。
【0051】
<推定結果の表示方法>
本推定方法を用いて取得した肌状態指標に基づき、肌タイプに分類した画像を肌分類画像として表示することができる。また、所定の組成物を組成物分類画像として表示し、上記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態の推定結果に基づく評価を、前記肌分類画像と前記組成物分類画像との組み合わせにより表示することができる。
上述されたように、本推定方法によって推定された結果、または推定された結果を用いて評価された結果は、表示部160、表示部360、または情報処理端末に表示される。表示形態について
図12(a-1)から(d-2)を用いて、説明する。
図12(a‐1)から(a‐3)の肌情報分類画像50は、ユーザの肌タイプを3つの肌タイプ(肌タイプA、肌タイプB、肌タイプC)に分類したときの肌情報分類画像50の例である。
図12(a‐1)から(a‐3)は、肌情報分類画像50を示しており、肌タイプAの肌情報分類画像50、肌タイプBの肌情報分類画像50、肌タイプCの肌情報分類画像50である。また、
図12(b‐1)から(b‐3)は、3つの組成物(組成物1、組成物2、組成物3)の組成物分類画像60を示すときの表示例であり、組成物1の組成物分類画像60、組成物2の組成物分類画像60、組成物3の組成物分類画像60である。このように、肌情報分類画像50および組成物分類画像60は、全て異なる画像である。また、肌情報分類画像50は肌タイプを想起する画像を、また、組成物分類画像60は組成物を想起する画像を設定するようにしてもよい。例えば、肌タイプAがうるおいの多い肌タイプの場合、うるおいを想起するデザイン、またはうるおいを想起する色の画像としてもよい。このようにすることで、ユーザが、ユーザ自身が分類された肌タイプをイメージしやすくなる。
【0052】
例えば、ユーザの肌タイプと組成物との相性を肌情報分類画像50と組成物分類画像60の組み合わせによっても表示することが出来る。例えば、ユーザの肌タイプが肌タイプAのとき、組成物1を選択すると、
図12(a‐1)の肌情報分類画像50と
図12(b‐1)の組成物分類画像60との画像が徐々に重なりあう動画像とすることで、ユーザに肌タイプAと組成物1との適合結果をわかりやすく表示することが可能となる。
図12(c‐1)は、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを重ね合わせる際の途中状態を示した画像である。
図12(d‐1)、(d‐2)は、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせ、推定結果を示した適合性画像70である。
図12(d‐1)は肌情報分類画像50と組成物分類画像60とがぴったり重なった状態の画像とし、ユーザの肌タイプと組成物との適合性が高い場合に用い、一方、
図12(d‐2)は肌情報分類画像50と組成物分類画像60とがずれた状態の画像とし、ユーザの肌タイプと組成物との適合性が低い場合に用いるようにしてもよい。このように、適合性画像70の重なり度合いによって肌タイプと組成物との相性をユーザが把握できるようにしてもよい。また、推定結果は、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせて表示すればよく、組み合わせ方(重ね方)や組み合わせた画像の作成の仕方はどのようなものでもよい。例えば、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを並べて表示する。例えば、肌情報分類画像50および組成物分類画像60それぞれの透過画像を作成し、重ね合わせて表示する。例えば、肌情報分類画像50および組成物分類画像60それぞれ一部分を透過画像とし、両方の透過画像部分(透過画素部分)を重ね合わせて表示する。例えば、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを重ね合わせた画像を予め作成しておき、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを重ねるタイミングで予め作成された重ね合わせた画像を表示することで、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせて(重ねて)表示する。例えば、肌情報分類画像50および組成物分類画像60に対しそれぞれ間引き処理(肌情報分類画像50と組成物分類画像60とで間引き箇所(間引きライン)をずらす)を施し重ねて表示するなどどのような方法でもよい。また、例えば、ユーザの肌タイプと組成物との適合性が高いときは、肌情報分類画像50の透過率を高くし、組成物分類画像60の透過率を低くする一方、ユーザの肌タイプと組成物との適合性が低いときは、肌情報分類画像50の透過率を低くし、組成物分類画像60の透過率を高くするようにしてもよい。このような肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせて表示することで、適合性画像70の表示態様からユーザの肌タイプと組成物との適合性を把握することが可能となる。また、例えば、ユーザの肌タイプと組成物との適合性が低いときは、適合性が高いときに比べて、組成物分類画像60を小さく表示してもよい。このようにすることで適合性が高いときは、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とが同じ大きさで重なりあうのに対し、適合性が低いときは、肌情報分類画像50の一部分(例えば、中心部分)に組成物分類画像60が重なり合うように表示できるため、適合性画像70の表示態様からユーザの肌タイプと組成物との適合性を把握することが可能となる。また、例えば、ユーザの肌タイプと組成物との適合性によって、組成物分類画像60の明度または彩度を変更し、当該変更した組成物分類画像60を肌情報分類画像50と組み合わせて表示してもよい。このようにすることでもユーザの肌タイプと組成物との適合性を適合性画像70から把握することが可能となる。上記した内容は一例であり、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせて表示するとは、肌情報分類画像50と組成物分類画像60とを組合わせて表示することが把握できればどのような表示方法、表示態様でもよい。
また、肌情報分類画像50と組成物分類画像60との組み合わせの表示に加えて、ユーザの肌タイプと組成物との適合性を数値化した値をあわせて表示することもできる。
【0053】
以上のように、具体的な実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
<変形例>
本実施形態では、第一形成状態と第二形成状態とを推定する際に、複数の被験者の肌に所定の化粧料を塗布してから第一時間帯が経過したとき、および第二時間帯が経過したときの塗膜推定数理モデルを作成したがこれに限らず、どのような環境で第一時間帯および第二時間帯が経過したか、環境の違いに応じて塗膜推定数理モデルを作成してもよい。例えば、炎天下の下で経過した場合、海水浴をして経過した場合で異なった塗膜推定数理モデルを作成することで、ユーザが所定の化粧料(紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料)を使用する環境に応じた最適な化粧料を提案することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、所定の化粧料として紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料を塗布したが、これに限らず、紫外線吸収剤のみや紫外線散乱剤のみ、または両方が配合されている日焼け止め化粧料が好ましい。
【0055】
本実施形態では、化粧料Aは剤型W/O、化粧料Bは剤型W/O、化粧料Cは剤型O/W、化粧料Dは剤型O/W、化粧料Eは剤型W/Oを用いたが、これに限らない。また、本実施形態で用いた化粧料A~Eは、化粧料に対し紫外線吸収剤が0~15パーセント、紫外線散乱剤が5~30パーセントの範囲で添加されている化粧料であるが、化粧料に添加されている紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤の割合はこれに限らない。なお、化粧料に対し紫外線吸収剤が0~15パーセント、紫外線散乱剤が5~30パーセントの範囲で添加されている化粧料が好ましい。
【0056】
本実施形態では、所定の化粧料として予め紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤が添加された化粧料を塗布したが、これに限らず、紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤が添加されていない化粧料に対し、所定割合(例えば、化粧料に対し、1質量パーセント以上30質量パーセント未満、好ましくは5質量パーセント以上20質量パーセント未満)の紫外線吸収剤または紫外線散乱剤を添加することで、紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤が添加されていない化粧料を実際に肌に塗布しなくとも、仮に実際に肌に塗布した場合に形成される塗膜の形成状態を推定することが可能である。この場合、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の何れを添加してもよいが、紫外線吸収剤を添加するほうが好ましい。紫外線吸収剤を添加する方が添加される化粧料の塗膜の形成に影響をおよぼす可能性が低いためである。
【0057】
上述したように、本実施形態では、実施形態1から3の3種類の推定方法を説明した。推定する場所や推定目的に応じて何れかの推定方法を選択すればよい。また、実施形態3は、塗膜推定数理モデル3を作成する際に、複数の被験者の肌に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が添加された化粧料を塗布するが、紫外線を照射させずに被験者の肌を撮影(実施形態1および2のように撮影装置30(紫外線カメラ30)で撮影するのではなく、撮影装置40(スマートフォン40)で撮影)するため、塗膜推定数理モデル3を作成する際の被験者の肌への負担を軽減することが可能となる。
【0058】
上述したように、本実施形態では、実施形態1は化粧料A、化粧料Bを、実施形態2は化粧料Cを、実施形態3は化粧料D、化粧料Eを塗布したと仮定した場合の塗膜の形成状態を推定したが、例えば、実施形態1の方法で化粧料Cの塗膜の形成状態を推定することも可能である。推定する化粧料に応じた塗膜推定数理モデル1~3を作成しておけばよい。
【0059】
上述したように、本実施形態では、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を添加した化粧料を塗布した際の塗膜の形成状態を推定し、推定結果に基づき、ユーザの肌との適合性を評価したがこれに限らない。所定の組成物が有する機能(例えば、紫外線防御機能、かゆみ止め機能、メイクアップ機能、美白機能など)がどの程度発揮できるかを、推定した塗膜の形成状態から評価してもよい。塗膜の形成状態の良さが高ければ、所定の組成物が有する機能を高く発揮できると推測できるからであり、例えば、開発時の一指標として用いることが可能となる。
【0060】
上述したように、本実施形態では、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を添加した化粧料を塗布した際の塗膜の形成状態を推定し、推定結果に基づき、当該化粧料とユーザの肌との適合性を評価したがこれに限らない。組成物の塗膜の形成状態の推定結果に基づき、当該組成物とユーザの肌との適合性を評価することも可能である。
【0061】
上述したように、本実施形態では、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を添加した化粧料を塗布したと仮定した際の塗膜の形成状態を推定し、推定結果に基づき、紫外線防御機能を高く期待できるかあまり期待できないかを評価することで、ユーザの肌との適合性を評価したがこれに限らない。例えば、美白成分が含有されている化粧料を塗布したと仮定した場合に、当該化粧料を塗布したことにより形成される塗膜の形成状態の良さが高ければ、肌に対してまんべんなく美白成分を与えられると推測できるため、所定の機能(美白機能)を有する化粧料と肌との適合性を評価することも可能である。
【0062】
上述したように、本実施形態では「標準値」は、『2)紫外線反射率に応じて2群に分ける』に記載した、紫外線反射率を紫外線反射率順に並べた際に中央に位置した紫外線反射率としたがこれに限らない。例えば、紫外線反射率順に並べた際の上位所定割合の値(例えば、上位25パーセント以内となる値)を標準値とし、標準値より上位であれば、当該化粧料の訴求する効果が期待できると評価してもよい。また、塗布肌総合評価値を塗布肌総合評価値順に並べた際の上位所定割合の値(例えば、上位25パーセント以内となる値)を標準値とし、標準値より上位であれば、当該化粧料の訴求する効果が期待できると評価してもよい。また、標準値を複数準備して3群以上に分けてもよい。
【0063】
本実施形態では、第一形成状態と第二形成状態とを個々に用いてそれぞれの時間帯の紫外線防御効果をそれぞれ推測したがこれに限らない。例えば、第一形成状態と第二形成状態との平均値を算出し、平均値から第一時間帯から第二時間帯の期待できる紫外線防御効果を推測してもよいし、第一形成状態と第二形成状態の何れかに所定の重み付(例えば、塗布からの経過時間が長い方である第二形成状態の値を優先する、第一形成状態と第二形成状態とのうち、塗膜の形成状態が高い方を優先するなど)を行った後に平均値を算出し、第一時間帯から第二時間帯の期待できる紫外線防御効果を推測してもよい。このように、第一形成状態と第二形成状態とを用いて第一時間帯から第二時間帯の期待できる紫外線防御効果を推測することにより、塗布からの時間経過に伴い変化する紫外線防御効果を推測することが可能となるため、ユーザが必要としている情報をより細かく提供することが可能となる。
【0064】
本実施形態では、ユーザは例えば、店頭に化粧品を探しに来た客を想定したがこれに限らない。例えば、化粧品の開発時に研究所などで行われる評価時のモニタでもよい。本実施形態における「ユーザ」は、塗膜推定数理モデル1から3を用いて、肌に所定の組成物を塗布せず、当該所定の組成物を塗布した場合の肌上に形成される塗膜の形成状態を推定する肌の人であり、「被験者」は各数理モデルを作成する際の教師データの肌の人である。
【0065】
(追加試験例1)
図13は、上述した化粧料C乃至EのUV防御効果の比較試験の結果を示した図である。同図に示すように、上記肌状態指標数理モデルによって判定した「総合評価」および「肌の色」について中央値を閾値として、それぞれ2群に分類した4群を作成し、群ごとに化粧料C(実施形態2)、化粧料D(実施形態3)、化粧料E(実施形態3)のUV防御効果を比較した。
【0066】
その結果、UV防御効果としては、総合評価が高く肌の色値も高い群1では化粧料Eが推奨され、総合評価が高く肌の色値は低い群2では化粧料Cが推奨され、総合評価が低く肌の色値が高い群3では化粧料D及びEが推奨され、総合評価が低く肌の色値も高い群4では化粧料C及びEが推奨されることが分かった。
【0067】
このように、上述の実施形態における7項目の肌状態指標を説明変数として用いる場合のみならず、「総合評価」および「肌の色」の2項目を説明変数として4群の肌タイプに分類した場合でも、当該肌タイプにUV防御効果が高い化粧料をユーザに推薦することができる。
【0068】
(追加試験例2)
図14は、上述した化粧料C乃至EのUV防御効果の他の比較試験の結果を示した図である。上記肌状態指標数理モデルによって判定した「総合評価」、「肌の色」、「化粧感」、「肌年齢」、「男性・女性らしさ」、「化粧くずれ度」、「パウダリー感」の7項目を用いて非階層的クラスタリング手法(k‐means法)により試験参加者を5群に分類し、群ごとに化粧料C(実施形態2)、化粧料D(実施形態3)、化粧料E(実施形態3)のUV防御効果を比較した。
【0069】
その結果、群1~群5においてそれぞれ、化粧料C乃至EのUV防御効果に相違が見られた。UV防御効果としては、群1では化粧料Dが推奨され、群2では化粧料Cが推奨され、群3では化粧料C及びDが推奨され、群4では化粧料Eが推奨され、群5では化粧料Dが推奨されることが分かった。
【0070】
このように、上述の実施形態における7項目の肌状態指標を説明変数として5群の肌タイプに分類した場合でも、当該肌タイプにUV防御効果が高い化粧料をユーザに推薦することができる。
【0071】
(ユーザへの肌タイプに応じた化粧料提案処理)
上述の実施形態では、推定した肌状態指標に基づき、肌タイプに分類した画像を肌分類画像としてユーザの情報処理端末に表示させるとともに、所定の組成物を組成物分類画像としてユーザの情報処理端末に表示させ、上記ユーザの肌に所定の組成物を塗布したと仮定した場合の組成物の塗膜の形成状態の推定結果に基づく評価を、前記肌分類画像と前記組成物分類画像との組み合わせにより表示させる例を示した。
【0072】
この際、推定装置200または推定システム400は、上記分類した肌タイプの特徴を示す情報をユーザの情報処理端末に表示させ、さらに、当該肌タイプに対応する化粧料ごとのユーザの肌タイプとの相性(UV防御効果)を示すスコアをユーザの情報処理端末に表示させてもよい。
【0073】
図15は、推定装置200または推定システム400による肌画像に基づく肌タイプ特徴情報及び化粧料スコア情報の提示処理の流れを示したフローチャートである。以下の説明では、便宜上、推定装置200を動作主体とするが、当該動作は、推定装置200または推定システムのCPU、通信部、記憶部等のハードウェアと記憶部に記憶されたソフトウェア(プログラム)との協働により実行される。
【0074】
同図に示すように、推定装置200は、ユーザの情報処理端末から当該情報処理端末で撮影されたユーザの素顔の肌画像を受信する(ステップ11)。
【0075】
続いて推定装置200は、上記受信した肌画像と上記肌状態指標数理モデルを基に肌状態指標値を取得する(ステップ12)。
【0076】
続いて推定装置200は、上記取得した肌状態指標値を基にユーザをいずれかの肌タイプに分類する(ステップ13)。
【0077】
当該肌タイプの分類情報を生成する際、推定装置200または推定システム400は、例えば
図16に示すように、各肌タイプの特徴を説明するための特徴情報を生成して記憶する。当該特徴情報は、上記肌状態指標値や、被験者の肌質に関する意識を基に各肌タイプを評価することで生成されたものである。
【0078】
またそれとともに推定装置200または推定システム400は、上記肌タイプごとの塗膜の形成状態に基づいて、複数種類の化粧料のUV防御効果に関するスコアを示すスコア情報を生成して記憶する。
【0079】
スコア情報は、例えば
図17に示すように、肌タイプと化粧料とでマトリックスを作って生成する。スコア情報は例えば塗膜のUV反射率、塗布直後や塗布後時間経過後の総合評価値を用いて数値で算出する。同一肌タイプ間で比較した際に、点数が高いほど高いUV防御効果を示す。
【0080】
当該スコア情報は、上述のように0~100の値で表されるものに限られず、例えば0~10の値で表されてもよいし、例えばA,B,C,D,E(または星の数等)の5段階の評価情報等、いかなる評価情報であってもよい。
【0081】
続いて推定装置200は、
図18(A)に示すように、上記分類したユーザの肌タイプの情報とともに、上記記憶された特徴情報のうち、当該肌タイプに対応する特徴情報をユーザの情報処理端末に表示させる(ステップ14)。同図の例では、ユーザが肌タイプAに分類され、当該肌タイプAの情報とともに、それに応じた特徴情報(うるおいがある肌タイプ)が示されている。
【0082】
そして推定装置200は、
図18(B)に示すように、例えば上記表示された特徴情報に対してユーザがスクロール/タップ操作した場合や、表示開始から所定時間が経過した場合等に、肌タイプにおいて、UV防御効果が高い化粧料の情報及びそのスコア情報をユーザの情報処理端末に表示させる(ステップ15)。
【0083】
ここで、表示される化粧料及びスコアは、分類された肌タイプにおいて少なくとも最もスコアが高い化粧料が表示されるが、上位複数(1位~3位等)の化粧料の情報及びそのスコアが表示されてもよい。
【0084】
このように、ユーザの肌画像と肌状態指標数理モデルを基に取得した肌状態指標に基づき、ユーザを複数種類の肌タイプの何れかに分類し、当該肌タイプの特徴情報及び当該肌タイプにおいてUV防御効果の高い化粧料の情報をユーザに提示し把握させることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 計測器
15 皮膚
20 組成物
30 撮影装置(紫外線カメラ)
40 撮影装置(スマートフォン)
50 肌情報分類画像
60 組成物分類画像
70 適合性画像
130 肌状態取得部
140 塗膜推定部
150 評価部
160 表示部
200 推定装置
330 肌状態取得部
340 塗膜推定部
350 評価部
360 表示部
400 推定システム