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特開2025-104785タイヤ用ゴム組成物、及び、スタッドレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104785
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、及び、スタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20250703BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250703BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250703BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250703BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250703BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20250703BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20250703BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/013
C08L75/04
C08G18/00 A
C08L7/00
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222851
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA08
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC18
4J002AC01W
4J002AC02W
4J002AC03X
4J002CK02Y
4J002DA037
4J002DJ016
4J002EX038
4J002FA09Y
4J002GN01
4J034BA03
4J034DB05
4J034DB07
4J034GA33
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA11
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC61
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA03
4J034JA15
4J034JA27
4J034KA01
4J034KB01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC18
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA08
4J034QA02
4J034QA03
4J034QB14
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】破断伸びが大きく氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤30~100質量部と、平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン微粒子1~30質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤30~100質量部と、平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン微粒子1~30質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン微粒子が、オイル中でポリオールとポリイソシアネートと水とを反応させることで得られたポリウレタン微粒子である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン微粒子を構成するポリオールが、水酸基価が10~200mgKOH/gのひまし油系ポリオールを含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン微粒子を構成するポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネートを含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタン微粒子を得る反応において、活性水素基に対するイソシアネート基にモル比が0.8~4.0である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム及びブタジエンゴムを含み、
前記ジエン系ゴム全体に対する前記ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いて製造された、スタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及び、スタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能を向上させる観点から、種々添加剤を配合したタイヤ用ゴム組成物が検討されている。
例えば、特許文献1では、氷上性能等を向上させる観点から、特定のポリウレタン系微粒子を配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-164378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、タイヤ(特にトレッド部)に使用されるゴム組成物に対して、安全性等の観点から、タイヤにしたときの氷上性能(以下、単に「氷上性能」とも言う)のさらなる向上が求められている。また、加硫後の破断伸び(以下、単に「破断伸び」とも言う)のさらなる向上も求められている。
このようななか本発明者らが特許文献1に記載のタイヤ用ゴム組成物について検討したところ、将来的な要求まで考慮した場合、破断伸び及び氷上性能のさらなる向上が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、破断伸びが大きく氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、表面に空孔を有する特定のポリウレタン粒子を配合することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤30~100質量部と、平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン微粒子1~30質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記ポリウレタン微粒子が、オイル中でポリオールとポリイソシアネートと水とを反応させることで得られたポリウレタン微粒子である、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記ポリウレタン微粒子を構成するポリオールが、水酸基価が10~200mgKOH/gのひまし油系ポリオールを含む、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記ポリウレタン微粒子を構成するポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネートを含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) 上記ポリウレタン微粒子を得る反応において、活性水素基に対するイソシアネート基にモル比が0.8~4.0である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6) 上記ジエン系ゴムが、天然ゴム及びブタジエンゴムを含み、
上記ジエン系ゴム全体に対する上記ブタジエンゴムの割合が、30質量%以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(7) 上記(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いて製造された、スタッドレスタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、破断伸びが大きく氷上性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、及び、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
図2】微粒子4の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物等について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、「破断伸びが高い」ことを、「破断伸びが優れる」とも言う。
また、「破断伸び及び氷上性能が優れる」ことを、「本発明の効果が優れる」とも言う。
【0011】
[1]タイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ジエン系ゴム100質量部と、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤30~100質量部と、平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン微粒子1~30質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物である。
本発明の組成物を用いて製造されたタイヤは、表面に空孔を有する特定のポリウレタン粒子が氷盤路に対する摩擦を高めるため、優れた氷上性能を示すものと考えられる。
【0012】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0013】
[ジエン系ゴム]
本発明の組成物はジエン系ゴムを含有する。
本発明の組成物は1種のジエン系ゴムを含有するのでも2種以上のジエン系ゴムを含有するのでもよい。
【0014】
〔具体例〕
ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合ゴムなどが挙げられる。
ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム及び天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムを含むのがより好ましい。
【0015】
ジエン系ゴムが天然ゴムを含む場合、ジエン系ゴム全体に対する天然ゴムの割合は、本発明の効果がより優れる理由から、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
ジエン系ゴムがブタジエンゴムを含む場合、ジエン系ゴム全体に対するブタジエンゴムの割合は、本発明の効果がより優れる理由から、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
〔分子量〕
ジエン系ゴムの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~2,500,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましく、150,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100,000~5,000,000であることが好ましく、200,000~3,000,000であることがより好ましく、300,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0017】
なお、本明細書において数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値である。
【0018】
[充填剤]
本発明の組成物はカーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む充填剤を含有する。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラック及び白色充填剤(特にシリカ)の両方を含有するのがより好ましい。
【0019】
〔カーボンブラック〕
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m/gであることが好ましく、70~150m/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0020】
〔白色充填剤〕
上記白色充填剤は特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、シリカが好ましい。
【0021】
上記シリカは特に限定されないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカであることが好ましい。
【0022】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~400m/gであることが好ましく、150~300m/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0023】
〔含有量〕
本発明の組成物において、充填剤の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、30~100質量部である。なかでも、50~90質量部であることが好ましく、60~80質量部であることがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましい。
【0025】
本発明の組成物が白色充填剤(特に、シリカ)を含有する場合、白色充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、10~90質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。
【0026】
[特定微粒子]
本発明の組成物は、平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン微粒子(以下、「特定微粒子」とも言う)を含有する。
以下、特定微粒子について説明する。なお、特定微粒子の製造方法については後述する。
【0027】
〔ポリウレタン微粒子〕
ポリウレタン微粒子は、ポリウレタンの微粒子である。
ここでポリウレタンとは、ウレタン結合(-NH-COO-)を複数有するポリマーを指す。
ポリウレタンは、本発明の効果がより優れる理由から、ウレタン結合に加えて、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有するのが好ましい。
【0028】
<好適な態様>
ポリウレタンは、本発明の効果がより優れる理由から、ポリオールとポリイソシアネートとの重合体であることが好ましい。
【0029】
<ポリオール>
ポリオールは、ヒドロキシ基(水酸基)を2個以上有する化合物である。
ポリオールは、20℃、1気圧において、液体であることが好ましい。
【0030】
(具体例)
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール;ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるひまし硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオール;ポリエステルポリオール(特にセバシン酸系ポリエステルポリオール);アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオール、等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ひまし油系ポリオールが好ましい。
なお、ひまし油系ポリオールとは、ひまし油又はひまし油の誘導体であるポリオールを意味する。
【0031】
(水酸基価)
ポリオールの水酸基価は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1~400mgKOH/gであることが好ましく、5~300mgKOH/gであることがより好ましく、10~200mgKOH/gであることがさらに好ましく、20~100mgKOH/gであることが特に好ましい。
なお、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。
【0032】
(好適な態様)
ポリオールは、本発明の効果がより優れる理由から、水酸基価が10~200mgKOH/gのひまし油系ポリオールであることが好ましい。
【0033】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートは、イソシアネート基(-NCO)を2個以上有する化合物である。
【0034】
(具体例)
ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;
これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
上記MDIとしては、モノメリックMDI、ポリメリックMDI、変性MDI(例えば、カルボジイミド変性MDI)等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリメリックMDIが好ましい。
【0036】
(平均官能基数)
ポリイソシアネートの平均官能基数は、本発明の効果がより優れる理由から、2.1以上であることが好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、2.7以上であることが特に好ましく、2.9以上であることが最も好ましい。
ポリイソシアネートの平均官能基数の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
なお、平均官能基数は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の平均の数を表す。
【0037】
(NCO%)
ポリイソシアネートのNCO%は、本発明の効果がより優れる理由から、5~80%であることが好ましく、10~50%であることがより好ましく、20~40%であることがさらに好ましい。
なお、NCO%は、ポリイソシアネート全体に対してイソシアネート基が占める割合(質量%)を表す。
【0038】
〔平均粒子径〕
特定微粒子の平均粒子径は1~300μmである。
上記平均粒子径は、本発明の効果がより優れる理由から、2~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、10~40μmであることがさらに好ましく、20~30μmであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置で測定した体積平均径である。
【0039】
〔空孔〕
特定微粒子は表面に空孔を有する。
微粒子が表面に空孔を有することは、微粒子の走査電子顕微鏡(SEM)による表面観察によって判断できる。なお、特定微粒子における「空孔」とは、SEM写真上の径(円相当径)が0.01μm以上のものとする。また、本明細書において、「空孔の径」とは、SEM写真上の径(円相当径)とする。
【0040】
空孔の径(円相当径)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.05~100μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがより好ましく、0.5~5μmであることがさらに好ましい。
【0041】
<平均径>
空孔の平均径は、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~10μmであることが好ましく、0.3~5μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることがさらに好ましい。
なお、空孔の平均径は、任意に選択された10個の微粒子についてSEMによる表面観察を行い、空孔(円相当径が0.01μm以上)の径(円相当径)を算術平均することで求める。
【0042】
<空孔率>
特定微粒子の空孔率は特に制限されないが、1~80%であることが好ましく、2~70%であることがより好ましく、3~40%であることがさらに好ましい。
なお、空孔率は、任意に選択された10個の微粒子についてSEMによる表面観察を行い、SEM写真上の微粒子の面積に対する空孔(円相当径が0.01μm以上)が占める割合を算術平均することで求める。
【0043】
〔見かけ密度〕
特定微粒子の見かけ密度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.10~2.00g/cmであることが好ましく、1.00g/cm超1.50g/cm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、ポリウレタン微粒子の見かけ密度は、JIS K7112に準拠して、水中置換法によって求めるものとする。
【0044】
〔好適な態様〕
特定微粒子は、本発明の効果がより優れる理由から、後述する本発明の製造方法1によって製造されたポリウレタン微粒子(以下、「特定微粒子1」とも言う)であることが好ましく、後述する本発明の製造方法2によって製造されたポリウレタン微粒子(以下、「特定微粒子2」とも言う)であることがより好ましい。
【0045】
なお、特定微粒子1~2に関し、以下のとおり、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが」が不可能又はおよそ非実際的である事情が存在する。
【0046】
後述する本発明の製造方法1~2においては、ポリオールのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基との反応(ウレタン結合の形成)、ポリイソシアネートのイソシアネート基と水との反応(アミノ基の生成)、水との反応によって生成したアミノ基とポリイソシアネートのイソシアネート基との反応(ウレア結合の形成)が競合する。すなわち、上記重合工程においては、ポリイソシアネートとして、水と反応して一部のイソシアネート基がアミノ基になったもの、水と反応して全てのイソシアネート基がアミノ基になったもの、水と反応せずに全てのイソシアネート基がそのまま残ったものが混在し、これらがポリオール又はポリイソシアネートと反応する。そのため、特定微粒子1~2の構造は極めて複雑なものとなり一般式で表すことは到底できない。このことは当業者の技術常識である。そして、構造が特定されなければそれに応じて決まるその物質の特性も容易には分からないこと、及び、異なる複数のモノマーを反応させるにあたっては、それらの配合比、反応条件を変化させれば、得られるポリウレタン微粒子の特性が大きく変化することから、特性で表現することも到底できない。すなわち、特定微粒子1~2は、その構造又は特性により直接特定することが不可能であり、プロセスによって初めて特定することが可能なものである。
【0047】
[任意成分]
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、上述した充填剤以外の充填剤、シランカップリング剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0048】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に限定されない。
上記加水分解性基は特に限定されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0049】
上記有機官能基は特に限定されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-S-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0051】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した充填剤(特にシリカ)の含有量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0053】
[タイヤ用ゴム組成物の製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~155℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫又は架橋条件で加硫又は架橋することができる。
【0054】
[2]特定微粒子の製造方法
上述した特定微粒子の製造方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、オイル中でポリオールとポリイソシアネートと水とを反応させることでポリウレタン微粒子を得る方法(以下、「本発明の製造方法1」とも言う)であることが好ましく、下記工程を備える方法(以下、「本発明の製造方法2」とも言う)であることがより好ましい。
(1)分散工程
オイルに、水と、ポリオールとを分散させることで、分散系を得る工程
(2)重合工程
上記分散系にポリイソシアネートを混合することで、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得る工程
【0055】
本発明の製造方法1~2(以下、まとめて「本発明の製造方法」とも言う)においては、ポリオールのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合(-NH-COO-)を形成する。また、水とイソシアネート基が反応して、アミノ基を生成する。このとき二酸化炭素が発生する。さらに、生成したアミノ基はイソシアネート基と反応して、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を形成する。結果として、ウレタン結合及びウレア結合を有するポリウレタンが生成する。このとき、オイルに分散した分散系で上記重合が進み、また、上述のとおり二酸化炭素が発生するため、表面に空孔を有するポリウレタン微粒子が得られる。
【0056】
以下、本発明の製造方法で使用される各成分等について説明する。
【0057】
[オイル]
オイルは特に制限されず、具体例としては、鉱物油、植物油が挙げられる。
オイルは、本発明の効果がより優れる理由から、プロセスオイルであることが好ましい。
【0058】
〔鉱物油〕
鉱物油は特に制限されず、その具体例としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等が挙げられる。
【0059】
〔植物油〕
植物油は特に制限されず、その具体例としては、大豆油、ナタネ油、ヤシ油、アマニ油油等が挙げられる。
【0060】
〔使用量〕
オイルの量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、後述するポリオール100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、200~500質量部であることがより好ましい。
【0061】
[ポリオール]
ポリオールの定義、具体例及び好適な態様は上述のとおりである。
【0062】
〔活性基水素基の合計に対する割合〕
活性水素基の合計に対するポリオール(後述するモノオールを使用する場合にはポリオール及びモノオール)のヒドロキシ基(水酸基)の割合(モル比)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~1.0であることが好ましく、0.2~0.8であることがより好ましく、0.3~0.7であることがさらに好ましい。
【0063】
[モノオール]
本発明の製造方法においては、ポリオールに加えて、モノオールを使用してもよい。
モノオールは、ヒドロキシ基(水酸基)を1個有する化合物である。
モノオールの具体例としては、アルコール(メタノール、エタノール等)が挙げられる。
【0064】
〔使用量〕
モノオールの使用量は、上述したポリオール100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
【0065】
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートの定義、具体例及び好適な態様は上述のとおりである。
【0066】
[水]
【0067】
〔使用量〕
水の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~2質量部であることがより好ましい。
【0068】
〔水/イソシアネート基〕
上述したポリイソシアネートのイソシアネート基に対する水のモル比(以下、「水/イソシアネート基」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~0.6であることが好ましく、0.2~0.5であることがより好ましい。
【0069】
[触媒]
本発明の製造方法においては、本発明の効果がより優れる理由から、触媒を使用するのが好ましい。
【0070】
触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応、又は、ポリイソシアネートと水との反応を促進する触媒であれば特に制限されないが、ポリイソシアネートと水との反応を促進する触媒であることが好ましい。
【0071】
触媒は、本発明の効果がより優れる理由から、反応性触媒であることが好ましい。
ここで、反応性触媒の反応性とは、イソシアネート基と反応し得ることを意味する。
反応性触媒は、本発明の効果がより優れる理由から、アミン、ヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基を有するアミン(特に、ヒドロキシ基を有する3級アミン)であることがより好ましく、アルコール基(-ROH、R:アルキレン基)を3個有する3級アミンであることがさらに好ましく、トリエタノールアミンであることが特に好ましい。
【0072】
〔使用量〕
触媒の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したポリオール100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。
【0073】
〔活性基水素基の合計に対する割合〕
活性水素基の合計に対する触媒の活性水素基(アミノ基、ヒドロキシ基)の割合(モル比)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.05~0.8であることが好ましく、0.1~0.5であることがより好ましく、0.15~0.3であることがさらに好ましい。
【0074】
[整泡剤]
本発明の製造方法においては、本発明の効果がより優れる理由から、整泡剤を使用するのが好ましい。
整泡剤は、本発明の効果がより優れる理由から、非イオン系界面活性剤又はシリコーン系整泡剤であることが好ましい。
【0075】
〔非イオン系界面活性剤〕
非イオン性界面活性剤は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。具体例としては、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレン脂肪族炭化水素アミン(例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキレンアミン)、ポリオキシエチレン脂肪族炭化水素アミド(例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキレンアミド)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0076】
〔シリコーン系整泡剤〕
シリコーン系整泡剤は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
シリコーン系整泡剤は、ポリシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖を有し、主鎖であるポリシロキサン鎖に、ポリオキシアルキレン鎖が変性されたものであることが好ましい。
上記ポリシロキサン鎖は、オルガノポリシロキサン鎖であることが好ましい。オルガノポリシロキサン鎖の具体例としては、ポリジメチルシロキサン鎖が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等の1種のオキシアルキレン基から構成されたポリオキシアルキレン鎖、及び、オキシエチレンオキシプロピレンブロック鎖、オキシエチレンオキシプロピレンランダム鎖等の2種以上のオキシアルキレン基から構成されたポリオキシアルキレン鎖が挙げられる。
【0077】
〔使用量〕
整泡剤の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したポリオール100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0078】
[イソシアネート基/活性水素基]
本発明の製造方法において、活性水素基に対するイソシアネート基のモル比(以下、「イソシアネート基/活性水素基」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、0.5~6.0であることが好ましく、0.8~4.0であることがより好ましく、2.0~4.0であることがさらに好ましい。
ここで、活性水素基とは、ポリオール及びモノオールのヒドロキシ基を指し、触媒としてアミンやヒドロキシ基を有する化合物を使用する場合には、ポリオール及びモノオールのヒドロキシ基に加えて、上記アミンのアミノ基や上記ヒドロキシ基を有する化合物のヒドロキシ基を指す。なお、水のヒドロキシ基(水酸基)は、活性水素基に含まれない。
【0079】
[分散体中の微粒子の含有率]
本発明の製造方法によって、オイル中に分散したポリウレタン微粒子が得られる。
分散体中のポリウレタン微粒子の含有率(分散体全体に対してポリウレタン微粒子が占める割合)(以下、「分散体中の微粒子の含有率」とも言う)は、本発明の効果がより優れる理由から、10~60質量%であることが好ましい。
【0080】
[3]タイヤ
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたタイヤである。本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
本発明のタイヤは、氷上性能に優れるため、スタッドレスタイヤに特に有用である。
【0081】
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。ただし、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0082】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部(トレッド部)を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
少なくともタイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物によって形成されている。
【0083】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例0084】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
[微粒子の製造]
以下のとおり、各微粒子を製造した。
【0086】
なお、微粒子1~5は、後述のとおり平均粒子径が1~300μmの表面に空孔を有するポリウレタン粒子であるため、上述した特定微粒子に該当する。一方、比較微粒子1は、後述のとおり表面に空孔を有さないため、上述した特定微粒子に該当しない。また、比較微粒子2は、後述のとおり表面に空孔を有するものの平均粒子径が300μmを超えるため、上述した特定微粒子に該当しない。
【0087】
また、微粒子1~5について、空孔の平均径は0.5~3μm、空孔率は5~40%、見かけ密度は1.00g/cm超1.50g/cm以下であった。
【0088】
〔微粒子1〕
【0089】
<分散工程>
ひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC AC-009、水酸基価が223mgKOH/g)100gと、トリエタノールアミン(東京化成工業製)10gと、シリコーン系整泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク社製Niax silicone L-5111)2gと、水1gと、オイル(シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S)262gとを自転公転攪拌機で3分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0090】
<重合工程>
得られた分散系に、ポリメリックMDI(東ソー社製ミリオネートMR-400、NCO%が30%)150gを投入し、30分間攪拌することで、ポリオールとイソシアネートとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を微粒子1とも言い、オイル中に分散した微粒子1の分散体を微粒子分散体1とも言う。
【0091】
得られた微粒子1についてSEM観察を行ったところ、微粒子1は、平均粒子径が10μmの表面に空孔を有する微粒子であった。
【0092】
〔微粒子2〕
上記URIC AC-009の代わりにひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価が43mgKOH/g)を使用し、上記ミリオネートMR-400の代わりにイソホロンジイソシアネート(東京化成工業製、NCO%が38%)を使用し、上記トリエタノールアミンの量を20gに変更し、上記オイルの量を272gに変更した以外は微粒子1と同様の手順に従って、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を微粒子2とも言い、オイル中に分散した微粒子2の分散体を微粒子分散体2とも言う。
【0093】
得られた微粒子2についてSEM観察を行ったところ、微粒子2は、平均粒子径が36μmの表面に空孔を有する微粒子であった。
【0094】
〔微粒子3〕
上記URIC AC-009の代わりにひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC H-1830、水酸基価が82mgKOH/g)を使用し、上記トリエタノールアミンの量を5gに変更し、上記ポリメリックMDIの量を200gに変更し、上記オイルの量を307gに変更した以外は微粒子1と同様の手順に従って、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を微粒子3とも言い、オイル中に分散した微粒子3の分散体を微粒子分散体3とも言う。
【0095】
得られた微粒子3についてSEM観察を行ったところ、微粒子3は、平均粒子径が65μmの表面に空孔を有する微粒子であった。
【0096】
〔微粒子4〕
上記URIC AC-009の代わりにひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価が43mgKOH/g)を使用した以外は微粒子1と同様の手順に従って、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。得られたポリウレタン微粒子を微粒子4とも言い、オイル中に分散した微粒子4の分散体を微粒子分散体4とも言う。
【0097】
得られた微粒子4についてSEM観察を行ったところ、微粒子4は、平均粒子径が28μmの表面に空孔を有する微粒子であった。図2に、微粒子4の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0098】
〔微粒子5〕
【0099】
〔分散工程〕
ひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価が43mgKOH/g)100gと、トリエタノールアミン(東京化成工業製)10gと、シリコーン系整泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク社製Niax silicone L-5111)2gと、水1gと、オイル(シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S)297gとを、自転公転攪拌機で3分間攪拌した。このようにして分散系を得た。
【0100】
〔重合工程〕
得られた分散系に、ポリメリックMDI(東ソー社製ミリオネートMR-400、NCO%が30%)150gを投入し、30分間攪拌した。次いで、エタノール(東京化成工業製)40gを投入し、10分間撹拌することで、ポリオールとイソシアネートとエタノールとを重合させるとともに二酸化炭素を発生させて、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を微粒子5とも言い、オイル中に分散した微粒子5の分散体を微粒子分散体5とも言う。
【0101】
得られた微粒子5についてSEM観察を行ったところ、微粒子5は、平均粒子径が20μmの表面に空孔を有する微粒子であった。
【0102】
〔比較微粒子1〕
ひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC HF-2009、水酸基価が43mgKOH/g)55gと、ジメチルチオトルエンジアミン(クミアイ化学社製ハートキュア30)14gと、液状イソプレン重合体(クラレ社製LIR-30)92gと、ソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW‐O320V)1gとを、自転公転攪拌機で2分間攪拌した。このようにして分散系を得た。得られた分散系に、ポリメリックMDI(東ソー社製コロネート1331、NCO%が32%)11gを投入し、2分間攪拌した。次いで、無水マレイン酸変性ポリイソプレン(クラレ社製LIR‐403)11gを加え、1時間攪拌することで、ポリオールとイソシアネートとを重合させて、液状イソプレン中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を比較微粒子1とも言い、液状イソプレン中に分散した比較微粒子1の分散体を比較微粒子分散体1とも言う。
【0103】
得られた比較微粒子1についてSEM観察を行ったところ、比較微粒子1は、平均粒子径が12μmの表面に空孔を有さない微粒子であった。
【0104】
なお、比較微粒子分散体1は、特開2022-164378号公報の段落[0037]に記載の粒子分散体1とほぼ同じものである。
【0105】
〔比較微粒子2〕
上記URIC AC-009の代わりにひまし油系ポリオール(伊藤製油社製URIC H-1830、水酸基価が82mgKOH/g)を使用し、上記水の量を13gに変更し、上記オイルの量を262gに変更した以外は微粒子1と同様の手順に従って、オイル中に分散したポリウレタン微粒子を得た。分散体中の微粒子の含有率は50質量%であった。得られたポリウレタン微粒子を比較微粒子2とも言い、オイル中に分散した比較微粒子2の分散体を比較微粒子分散体2とも言う。
【0106】
得られた比較微粒子2についてSEM観察を行ったところ、比較微粒子2は、平均粒子径が322μmの表面に空孔を有する微粒子であった。比較微粒子2が他の微粒子よりも大きい理由は明らかではないが、水によって微粒子同士の架橋(ウレア結合)が進み、より大きな微粒子が生じたことが考えられる。
【0107】
[タイヤ用ゴム組成物の製造]
下記表1~2に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。具体的には、まず硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤をオープンロールで混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。なお、微粒子分散体中のオイル又は液状イソプレン重合体と、オイル(アロマオイル)との合計が20質量部になるように、オイル(アロマオイル)の質量部を調整した。
【0108】
[評価]
得られたタイヤ用ゴム組成物について、以下の評価を行った。
【0109】
〔破断伸び〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。その加硫ゴム試験片を使用し、JIS K6251に準拠してダンベルJIS3号形試験片を作製し、室温(20℃)で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、破断したときの引張り破断伸びを測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1~2に示した。この指数が大きいほど引張破断伸びが大きいことを意味する。指数は106以上であることが好ましい。
【0110】
〔氷上性能〕
得られたタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いて、加硫成型し、空気入りタイヤ(タイヤサイズ:215/60R16)を製造した。上記空気入りタイヤを、16×7Jのリムに組み付け、空気圧(220[kPa])を充填し、試験車両(国産2リットルセダンFF車)に装着した。続いて、氷盤路であるテストコースにて上記試験車両により初速40[km/h]から急制動して、完全停止するまでの制動距離を測定した。上記のとおり測定された制動距離の結果を、標準例1の逆数を100とする指数として、表1~2に示した。この指数が大きいほど氷上性能が優れることを意味する。指数は106以上であることが好ましい。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
表1~2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、ボンバンディット社製STR20(ガラス転移温度:-65℃)
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220(ガラス転移温度:-110℃)
・シリカ:エボニック・デグッサ社製ULTRASIL VN3
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339
・シランカップリング剤:エボニック・デグッサ社製Si69
・酸化亜鉛:正同化学社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂社製ビーズステアリン酸YR
・老化防止剤:アミン系老化防止剤、フレクシス社製サントフレックス 6PPD
・ワックス:大内新興化学社製パラフィンワックス
・オイル:アロマオイル、シェルルブリカンツジャパン社製エキストラクト4号S
・硫黄:細井化学社製5%油処理硫黄
・加硫促進剤:スルフェンアミド系加硫促進剤、三新化学社製サンセラーCM-G
・微粒子分散体1~5:上述のとおり製造した微粒子分散体1~5
・比較微粒子分散体1~2:上述のとおり製造した比較微粒子分散体1~2
・比較微粒子3:ポリアクリル酸エステル多孔質状微粒子、積水化成品工業社製テクポリマーACP-8C(平均粒子径:8μm)
【0114】
なお、表1~2中の「イソシアネート基/活性水素基」及び「平均粒子径」は、それぞれ特定微粒子の上述した「イソシアネート基/活性水素基」及び「平均粒子径」を表す。
【0115】
表1~2から分かるように、特定微粒子を含有する実施例1~6は、いずれも優れた破断伸び及び氷上性能を示した。
実施例1~4及び6の対比(ジエン系ゴム100質量部に対する特定微粒子の含有量が5質量部の態様同士の対比)から、特定微粒子のイソシアネート基/活性水素基が0.8~4.0である実施例1~2、4及び6は、より優れた破断伸び及び氷上性能を示した。なかでも、特定微粒子を構成するポリオールの水酸基価が10~200mgKOH/gである実施例2、4及び6は、さらに優れた氷上性能を示した。そのなかでも、特定微粒子を構成するポリイソシアネートがポリメリックMDIである実施例4及び6は、さらに優れた破断伸び及び氷上性能を示した。
実施例4~5の対比(特定微粒子の含有量のみが異なる態様同士の対比)から、ジエン系ゴム100質量部に対する特定微粒子の含有量が20質量部以下である実施例4は、より優れた破断伸びを示した。
【0116】
一方、表面に空孔を有さない微粒子を含有する比較例1、表面に空孔を有するものの平均粒子径が300μmを超える微粒子を含有する比較例2、及び、ポリアクリル酸エステル多孔質状微粒子を含有する比較例3は、破断伸び及び氷上性能が不十分であった。
【符号の説明】
【0117】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1
図2